タイトル: | 公表特許公報(A)_病理学的瘢痕の予防および治療のためのオリゴサッカライド化合物の使用 |
出願番号: | 2014519615 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 31/7024,A61P 17/02,A61P 43/00,A61P 31/04,A61P 25/04,A61P 29/00,A61P 17/04,A61P 17/00,A61P 25/20,A61P 17/16,A61P 39/06,A61K 45/00,A61K 9/08,A61K 9/107,A61K 9/06,A61K 9/16,A61K 9/48,A61K 9/70,A61L 15/44 |
マリエル・ブシュバシュル クリステル・ロランス JP 2014520837 公表特許公報(A) 20140825 2014519615 20120712 病理学的瘢痕の予防および治療のためのオリゴサッカライド化合物の使用 ラボラトワール・ウルゴ 513323151 ソシエテ・ドゥ・デヴェロプマン・エ・ドゥ・ルシェルシュ・アンデュストリエル 514009225 村山 靖彦 100108453 志賀 正武 100064908 渡邊 隆 100089037 実広 信哉 100110364 マリエル・ブシュバシュル クリステル・ロランス FR 1156436 20110713 A61K 31/7024 20060101AFI20140730BHJP A61P 17/02 20060101ALI20140730BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140730BHJP A61P 31/04 20060101ALI20140730BHJP A61P 25/04 20060101ALI20140730BHJP A61P 29/00 20060101ALI20140730BHJP A61P 17/04 20060101ALI20140730BHJP A61P 17/00 20060101ALI20140730BHJP A61P 25/20 20060101ALI20140730BHJP A61P 17/16 20060101ALI20140730BHJP A61P 39/06 20060101ALI20140730BHJP A61K 45/00 20060101ALI20140730BHJP A61K 9/08 20060101ALI20140730BHJP A61K 9/107 20060101ALI20140730BHJP A61K 9/06 20060101ALI20140730BHJP A61K 9/16 20060101ALI20140730BHJP A61K 9/48 20060101ALI20140730BHJP A61K 9/70 20060101ALI20140730BHJP A61L 15/44 20060101ALI20140730BHJP JPA61K31/7024A61P17/02A61P43/00 121A61P31/04A61P25/04A61P29/00A61P17/04A61P17/00A61P25/20A61P17/16A61P39/06A61K45/00A61K9/08A61K9/107A61K9/06A61K9/16A61K9/48A61K9/70A61L15/03 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA FR2012051668 20120712 WO2013007960 20130117 30 20140306 4C076 4C081 4C084 4C086 4C076AA09 4C076AA11 4C076AA17 4C076AA31 4C076AA53 4C076AA71 4C076BB31 4C076CC19 4C076DD21 4C076DD30 4C076DD37 4C076DD38 4C076DD39 4C076DD41 4C076DD44 4C076DD45 4C076EE27 4C076EE30 4C076EE33 4C076EE53 4C076EE55 4C076FF70 4C081AA02 4C081AA12 4C081BB06 4C081CA212 4C081CE02 4C081DA05 4C081DC03 4C084AA19 4C084MA02 4C084MA17 4C084MA22 4C084MA28 4C084MA37 4C084MA41 4C084MA63 4C084NA14 4C084ZA052 4C084ZA082 4C084ZA892 4C084ZB112 4C084ZB352 4C084ZC212 4C084ZC751 4C084ZC752 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA03 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA05 4C086MA17 4C086MA22 4C086MA28 4C086MA37 4C086MA41 4C086MA63 4C086NA14 4C086ZA89 本発明の対象は、病理学的瘢痕に至る創傷の治療におけるその使用のための、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、その塩、またはその錯体から選ばれる化合物である。 創傷の治癒は、自然の生物学的現象であり、ヒトおよび動物組織は、その特異的な修復および再生過程によって局在性の患部を修復することができる。 創傷治癒の迅速性および質は、罹患生物の全身状態、創傷の原因、創傷の状態および位置、ならびに起こるかもしれない感染の発生、そして治癒障害の素因となりうる遺伝因子にも依存する。 創傷の自然治癒は、主に3つの連続した段階:炎症期、肉芽形成期(または増殖期)および瘢痕形成期にしたがって行われ、これらの各段階は、正確な時間的順序にしたがって進行する修復過程をもたらす特異的な細胞活性を特徴とする。 第1段階である炎症期は、血管が破裂するとすぐに開始し、主にフィブリンおよびフィブロネクチンから成る血餅の形成(血液凝固)を引き起こし、一時的なマトリックスを構成する。このマトリックスは、患部を部分的に満たし、創傷の清浄化を行うために動員された炎症細胞が損傷部位内に遊走することを可能とする。存在する血小板も、炎症細胞(好中球多形核細胞およびマクロファージ)、線維芽細胞および内皮細胞などの治癒的細胞(healing cells)の動員を可能とする放出因子(例えば、サイトカイン、成長因子)も放出する。 第2段階は、肉芽組織の発達に対応する。線維芽細胞増殖による創傷のコロニー形成が最初に観察される。次いで、健康な血管からの内皮細胞の遊走が、損傷された組織の新生血管形成または血管新生を可能とする。肉芽組織においては、線維芽細胞が活性化され、アクチンマイクロフィラメントによりもたらされるかなりの収縮性を有する筋線維芽細胞に分化し、創傷の収縮を可能とする。これらのマイクロフィラメントは、タンパク質:α平滑筋アクチンによって表される。したがって、これらの筋線維芽細胞は、患部の治癒に至る肉芽組織の形成および成熟において主な役割を演じる。次いで、ケラチノサイトの遊走および表皮の再構築が起こる。 瘢痕の形成または成熟である、修復過程の第3段階は、肉芽組織のリモデリングを伴う。細胞外マトリックスの一部がプロテアーゼ(本質的に、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)およびエラスターゼ)により消化され、細胞外マトリックスが徐々に再構築されることが観察される。肉芽組織中で優勢なIII型コラーゲンが、主要な真皮のマトリックス構成要素であるI型コラーゲンに徐々に置き換わる。成熟期の最後に、線維芽細胞、筋線維芽細胞および血管細胞の増殖および/または活性が低減する。次いで、過剰の細胞がアポトーシスにより死ぬ。細胞外マトリックスのリモデリングおよび過剰の細胞のアポトーシスと並行して、炎症状態が徐々に低下する。この段階が最も長い。約一年後、瘢痕はリモデリングされ、もはや赤くも強固でもなく、痛みも引き起こさず、平坦になる。 しかしながら、一定の場合には、治癒はさほど成功せず、病理学的瘢痕が形成しうる。その時、治癒障害という用語が使用される。後者は従来、治癒の中断として定義され、数種の徴候の群をなす。 - 慢性潰瘍、これは、治癒に非常に長期間かかるか、または全く治癒しない創傷である。一定の場合、例えば静脈潰瘍では、創傷は肉芽組織の形成または治癒開始をすることなく、数か月間弛緩性のままでありうる(「Managing chronic venous leg ulcers: time for a new approach?」、Brown A.、J Wound Care、2010年2月、19(2)、70〜4. Review); - 特に外傷または重度のにきびもしくは水痘などの皮膚の病理によってもたらされる中身の損失を呈する、萎縮性瘢痕。これらの瘢痕は、皮膚表面の多少の深い陥没を呈し、したがって、あばたのある外観を与える(M. Chivot、H. Pawin、C. Beylot、O. Chosidow、B. Dreno、M Faure、F. Poli、J. Revuz -Cicatrices d'acne: epidemiologie, physiopathologie, clinique, traitement [Acne scars: epidemiology, physiopathology, clinical aspect, treatment]-Ann. Dermatol. Venereol. 2006; 133:813-24); - 肉芽組織が異常に過増殖し(「Cellular and molecular pathology of HTS: basis for treatment.」Armor A、Scott PG、Tredget EE、Wound Repair Regen.、2007年9月〜10月;15 Suppl 1:S6〜17、Review。Wound Repair Regen.、2008年7月〜8月; 16(4):582中の正誤表)、特に創傷がコラーゲンに富む真皮網状層(真皮深部とも呼ばれる)に達する場合に発生する、肥厚性瘢痕; - 陥没性瘢痕、その一部は、隣接組織を引き寄せる治癒領域の収縮に起因する。それらは、ある特定の解剖学的領域における火傷の結果であることが最も一般的である。 したがって、治癒障害は、正常な治癒過程とは非常に異なる病態の群をなす。 本発明は、肥厚性瘢痕および陥没性瘢痕、または萎縮性瘢痕(重度のにきび瘢痕)さえ生成する創傷をより特に対象とする。 一旦瘢痕が形成された時点での病理学的瘢痕を治療するための方法は、広く文献に記載されている。これは、例えば、弾力性のある圧縮性衣類により実施される「加圧治療(pressotherapy)」またはコルチゾンベースの製品の瘢痕への注入による「コルチコ療法(corticotherapy)」を含む。萎縮性瘢痕のためには、レーザーまたはピーリング治療がしばしば使用される。しかしながら、これらの治療は時には侵襲性であり、最も一般的に数か月間または数年間のフォローアップさえ必要とし、これは患者にとって制約的である。 European Journal of Plastic Surgery (2007)、30巻、25〜28頁に公開されたBirol Civelekによる「The effect of sucralfate, an agent for gastroprotection on the healing of split thickness graft donor sites」という文献は、移植目的のための皮膚の切除によりもたらされた創傷の、スクラルファートによる治療を記載する。しかしながら、前記文献において研究された創傷は、肥厚性瘢痕に至ることはできない。なぜならば、例えば、Techniques chirurgicales-Chirurgie plastique reconstructrice et esthetique [Surgical techniques-Reconstructive and esthetic plastic surgery]、(2010)、45-070に公開されたRevolらによる文献「Greffes cutanees」[Skin grafts]において説明されるとおり、ドナー部位内に上皮断片を保持し、移植片中の基底層からケラチノサイトを取り除くような方法で薄い皮膚移植片が採取されなければならないからである。したがって、電動採皮刀は、真皮の頂点または真皮乳頭のレベルを通過しなくてはならず、これは、真皮乳頭層、すなわち、真皮の表層内に創傷を作ることとなる。したがって、薄い皮膚移植片の採取に起因する創傷は、真皮網状層、すなわち、真皮深部には到達せず、したがって、真皮の深い部分の破壊を生じることはない。したがって、薄い皮膚サンプルの採取は肥厚性瘢痕に至ることはできない。一方、全層皮膚移植が実施される場合、すなわち、表皮、真皮およびその毛嚢脂腺付属器を含む皮膚の層が採取される場合には、ドナー部位に肥厚性瘢痕が発生しうることが知られており、これは、前記従来技術に関する文献と異なる。 最後に、Birol Civelekらの文献において、創傷がスクラルファートで治療されるか否かにかかわらずその後肥厚性瘢痕を発症することがなく、これが、これらの瘢痕がその治療とは無関係に肥厚性瘢痕に至ることができないということを明白に確証しているのは、注目すべきである。FR-A-2916355WO2006/007814FR2783412FR2392076FR2495473「Managing chronic venous leg ulcers: time for a new approach?」、Brown A.、J Wound Care、2010年2月、19(2)、70〜4. ReviewM. Chivot、H. Pawin、C. Beylot、O. Chosidow、B. Dreno、M Faure、F. Poli、J. Revuz -Cicatrices d'acne: epidemiologie, physiopathologie, clinique, traitement [Acne scars: epidemiology, physiopathology, clinical aspect, treatment]-Ann. Dermatol. Venereol. 2006; 133:813-24「Cellular and molecular pathology of HTS: basis for treatment.」Armor A、Scott PG、Tredget EE、Wound Repair Regen.、2007年9月〜10月;15 Suppl 1:S6〜17、ReviewWound Repair Regen.、2008年7月〜8月; 16(4):582中の正誤表European Journal of Plastic Surgery (2007)、30巻、25〜28頁に公開されたBirol Civelekによる「The effect of sucralfate, an agent for gastroprotection on the healing of split thickness graft donor sites」Techniques chirurgicales-Chirurgie plastique reconstructrice et esthetique [Surgical techniques-Reconstructive and esthetic plastic surgery]、(2010)、45-070に公開されたRevolらによる文献「Greffes cutanees」[Skin grafts] したがって、治癒の間の肉芽組織の異常な過増殖または異常な線維化を制限し、したがって病理学的瘢痕形成のリスクを低減するように、病理学的瘢痕に至る創傷を上流において予防的に治療することが好ましいであろう。 第1の態様による本発明の対象は、好ましくは肥厚性または陥没性瘢痕、あるいはさらに萎縮性瘢痕から選ばれる病理学的瘢痕に至る創傷の治療におけるその使用のための、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、その塩、またはその錯体から選ばれる化合物である。 第2の態様による本発明の対象はまた、肥厚性または陥没性瘢痕、あるいはさらに萎縮性瘢痕を発症する素因を有する対象における創傷の治療におけるその使用のための、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、その塩、またはその錯体から選ばれる化合物である。 別の実施形態によれば、本発明は、重度のにきび瘢痕から選ばれる病理学的瘢痕に至る創傷の治療におけるその使用のための、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩から構成される。 この治療は、それらの位置はどこであれ、すべてのタイプおよびすべてのサイズの病理学的瘢痕の治療に特に好適である。さらに、瘢痕形成後に適用される通常の治療とは対照的に、本発明による治療は病理学的瘢痕形成のリスクを有する創傷に対して予防的に用いられる。 正常な創傷の治癒過程において、例えば、微生物または外来物質による創傷への侵入、およびその結果としての創傷の感染を防ぐために、創傷閉鎖現象を促進することが重要である。例として、文献FR-A-2916355は、治癒速度を高めるために特別なコポリマーを用いて線維芽細胞の増殖および/または分化を促進することを教示する。次いで、表皮を再構築するためにケラチノサイトの遊走を促進することが望ましい。 しかしながら、肥厚性瘢痕の特別な場合には、線維芽細胞によって形成された肉芽組織が異常に過増殖する。線維芽細胞が筋線維芽細胞に分化するとき、この過剰の線維組織が収縮し、真皮内のより密な組織を伸長させる。 したがって、肥厚性または陥没性の病理学的瘢痕に至るこのタイプの特定の創傷に関しては、筋線維芽細胞の増殖および分化を促進することは望ましくない。 反対に、病理学的瘢痕を生成するこのタイプの創傷に関しては、真皮の線維化の発症を制限する観点から、筋線維芽細胞を制御することが望ましい。 したがって、別の態様による本発明の対象は、肥厚性または陥没性瘢痕、あるいはさらに萎縮性瘢痕から選ばれる病理学的瘢痕に至る創傷の治癒の間の、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を阻害することにおけるその使用のための、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、その塩、またはその錯体から選ばれる化合物である。 驚くべきことに、本発明者らは、病理学的瘢痕に至りうる創傷への本発明による化合物の適用は、肥厚性、陥没性または萎縮性瘢痕の形成を効果的に予防することを可能とすることを発見した。 本願は、病理学的瘢痕タイプの発症の素因を有する対象において特に好ましい。 本発明者らは、実際に、本願の文脈において、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を阻害することが、肉芽組織の異常な過増殖を制御および/または制限し、および/または病理学的瘢痕に至る創傷の治癒の間の創傷の収縮を制限し、したがって形成される瘢痕の質の改善を可能とすることを示した。 本発明はまた、特別な硫酸化オリゴサッカライド化合物の使用が、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化に影響を与えることも実証した。線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化に対する、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩KSOSの効果を示す図である。特に、4つの条件(TGF-βを含まない未分化対照、TGF-βを含む分化した対照、TGF-βを含まないが、KSOSを含む、未分化対照、ならびにTGF-βおよびKSOSを含む分化した対照)下での定量的RT-PCRによる、α-SMAメッセンジャーRNAの発現を示す。線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化に対する、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩KSOSの効果を示す図である。ウエスタンブロット法により、α-SMAタンパク質の発現を示す。線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化に対する、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩KSOSの効果を示す図である。免疫蛍光法により可視化したα-SMAタンパク質の発現を示す。線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化に対する、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩KSOSの効果を示す図である。α-SMAを発現する分化細胞のパーセンテージを図示する。様々な条件下でのD1およびD7上のコラーゲン格子の写真により、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩(KSOS)を含有するUrgotul(登録商標)Start創被覆材(dressing)の、培養1日および7日後のコラーゲン格子収縮阻害効果を示す図である。 病理学的瘢痕 本発明は、3つのタイプの病理学的瘢痕:肥厚性瘢痕、陥没性瘢痕および萎縮性瘢痕を生成する創傷に関する。 肥厚性または陥没性瘢痕は、共通の起源として、高強度性および/または持続時間の長い最初の過形成期を有し、この段階は再構築されない真皮中の過剰の密な繊維組織をもたらす。これらの病理学的瘢痕は、大きく、ふくれて、赤くそして硬く、かゆみを引き起こす。それらは、表皮の損傷された深部層に由来する真皮コラーゲンの、プロテオグリカンのおよびフィブロネクチンの沈着増加ならびに表皮下の組織水を特徴とする。 肥厚性または陥没性瘢痕は、火傷の後にしばしば形成するが、深部の傷害(例えば、外科的切開)後にも発症しうる。それらは、元の創傷の限界内に限局されたままである。顕微鏡的に、それらは細いコラーゲン繊維、およびα-平滑筋アクチンを大量に発現する筋線維芽細胞を提示する。肥厚性または陥没性瘢痕において観察される陥没は、筋線維芽細胞の収縮能に起因する。したがって、筋線維芽細胞は、真皮の深部層におけるコラーゲン束の破壊に関与する。実際に、コラーゲン束は、通常は平坦であるが、筋線維芽細胞の収縮の影響下では、表皮下でのコラーゲン結節の形成に導くコイル状の形状をとる。 関節(曲がっている内側)または割線のレベルに位置する場合、肥厚性瘢痕は陥没性瘢痕と同様、無能力化した陥没となりうる。それらは正常な皮膚よりも大量に血管新生化し、血管はより膨らんでいる。1〜2年持続しうる活動期(active phase)の後、肥厚性瘢痕は徐々に退行するが、まれにしか完全に消滅することはない。 陥没性瘢痕は、それらが発生した領域の機能を制限するという意味で非機能性の瘢痕である。それらは、治癒領域および隣接領域の可動性の喪失に至り、これは動き(例えば肘および腕の可動性)を完全に制限しうる。 萎縮性瘢痕は、周囲の皮膚のレベルの下に位置する。それらは、小さなへこみを形成し、治癒過程の間に生成される新しい結合組織繊維が少なすぎる場合に、出現する。重度のにきび瘢痕または水痘瘢痕は、萎縮性瘢痕の典型例である。本発明の目的のために、用語「重度のにきび瘢痕」は、表皮のみでなく真皮の層に達する病変の結果であるにきび瘢痕を意味することが意図される。重度のにきび瘢痕は、フィステル(集簇性にきび)に進行しうる、5mmより大きな直径を有する硬化したフルンケル症様の結節(結節性にきび)などの炎症性病変をもたらす、結節性にきび、電撃性にきび(acne fulminans)または集簇性にきびなどのにきびの形態の結末であることが最も一般的である。重度のにきび瘢痕は、非常に多様な形態をとりうる。「クレーター」と呼ばれる第1の形態は、底の平らなクレーターに似たくぼみを有する広く丸い瘢痕に相当する。小さくそしてしばしば「クレーター」瘢痕よりも深い「アイスピック」にきび瘢痕は、皮膚が先の尖った道具で突かれた印象を与える。それらは、最も治療の難しい瘢痕である。これらの瘢痕は、瘢痕を強固なものとし、通常の治療を妨害する線維症の源である。 病理学的瘢痕の出現を促進する多くの因子がある。病理学的瘢痕の形成のためのリスク因子の中でも: - 顔色:(アフリカ北部またはアフリカ起源の)濃い顔色を有する集団は、白人集団よりもずっと肥厚性瘢痕を生じやすい。さらに、非常に薄い顔色の対象も、肥厚性瘢痕を発症する傾向がある; - 年齢:肥厚性瘢痕は子供において頻繁であるが、年配の対象では稀である; - ホルモン:ホルモンの強力なバースト(思春期、妊娠)に関連した、人生のいくつかの時点も、異常な瘢痕の発症およびにきび瘢痕にとってより好都合である; - 体の位置:例えば、皺のある領域、関節領域、(肘、肩、胸部などの)伸張する領域、胸骨、首、耳または顔などの体のいくつかの部分は、病理学的瘢痕をより生じやすい; - 萎縮性瘢痕(水痘瘢痕、重度のにきび)を生成する感染性の病理を挙げることができる。 本願の目的のために、病理学的瘢痕に至る創傷は、真皮に到達する創傷、好ましくは(深部真皮とも呼ばれる)真皮網状層に到達する創傷と定義される。したがって、病理学的瘢痕に至る創傷は、0.30mmを超える、より優先的には0.35mmを超える、さらに優先的には0.40mmを超える深さを有する創傷と定義されうる。 本願の目的のために、病理学的瘢痕に至る創傷は、例えば、皺のある領域、関節領域、(肘、肩、胸部などの)伸張する領域、胸骨、首、耳または顔などの体の一定の部分に位置する創傷であるとも定義されうる。 本願の目的のために、病理学的瘢痕に至る創傷は、例えば、濃いもしくは非常に薄い顔色を有する対象、子供、思春期の若者または妊婦などの、肥厚性瘢痕、陥没性瘢痕、または萎縮性瘢痕を発症する素因を有する対象において発生する開放創とも定義されうる。 本発明による特別なオリゴサッカライド化合物は、したがって、濃いもしくは非常に薄い顔色を有する対象、子供、思春期の若者または妊婦などの、肥厚性または陥没性または萎縮性瘢痕を発症する素因を有する対象における創傷の治療を非常に特に対象とする。 1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド 本発明の文脈において使用されるオリゴサッカライドは、一般にお互いにアルファまたはベータグリコシド結合を介して結合した、1〜4個のモノサッカライド単位、好ましくは1または2個のモノサッカライド単位から作られる合成オリゴマーである。言い換えれば、それらは、モノ-、ジ-、トリ-またはテトラサッカライド、好ましくはモノサッカライドまたはジサッカライドである。 これらのポリサッカライドのモノサッカライド単位の性質に関する特別な制限はない。それらは、ペントースまたはヘキソースであることが好ましいだろう。モノサッカライドの例として、グルコース、ガラクトースまたはマンノースを挙げることができる。ジサッカライドの例として、マルトース、ラクトース、スクロースまたはトレハロースを挙げることができる。トリサッカライドの例として、メレジトースを挙げることができる。テトラサッカライドの例として、スタキオースを挙げることができる。 オリゴサッカライドは、好ましくはジサッカライド、より好ましくはスクロースである。 本願の目的のために、用語「多硫酸化オリゴサッカライド」は、その各モノサッカライドの少なくとも2つ、好ましくはすべてのヒドロキシル基がスルフェート基で置換されたオリゴサッカライドを意味することが意図される。 本願の文脈において使用される多硫酸化オリゴサッカライドは、好ましくはスクロースオクタスルフェートである。 本発明の文脈において使用される多硫酸化オリゴサッカライドは、塩または錯体の形態であることができる。 塩の例として、ナトリウム、カルシウムもしくはカリウム塩などのアルカリ金属塩;銀塩;またはその他アミノ酸塩を挙げることができる。 錯体の例として、ヒドロキシアルミニウム錯体を挙げることができる。 本発明の文脈において、特に好ましい化合物は、 - スクロースオクタスルフェートのカリウム塩、 - スクロースオクタスルフェートの銀塩、および 一般にスクラルファートと呼ばれる、スクロースオクタスルフェートのヒドロキシアルミニウム錯体である。 特に、本発明の文脈において、使用される多硫酸化オリゴサッカライドは、スクロースオクタスルフェートのアルミニウム塩よりもカリウム塩が好ましい。 本発明の文脈において使用される多硫酸化オリゴサッカライドは、微粒化粉末の形態または可溶化形態であることができる。 本発明の文脈において使用される多硫酸化オリゴサッカライドの例は、Laboratoires URGOにより製品Urgotul(登録商標)Startとして販売される(略称KSOSとして知られる)スクロースオクタスルフェートのカリウム塩である。 追加の活性物質 一般に、本発明によるオリゴサッカライド化合物は、単独でまたはそれらのうちの2つもしくはそれを超える混合物として、またはそうでなければ、1つ(もしくは複数)の他の活性物質と併せて使用されうる。 一般に、活性剤は、抗細菌剤、防腐剤、鎮痛剤、抗炎症剤、治癒を促進する活性剤、脱色素剤、かゆみ止め薬、UV遮断剤、鎮静薬、保湿剤および抗酸化剤、ならびにそれらの混合物から選ばれる。 一般に、活性剤は、 - ポリミキシンB、ペニシリン(アモキシシリン)、クラブラニン酸、テトラサイクリン、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、アミノグリコシド、アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、銀およびその塩(銀スルファジアジン)、プロバイオティクス、銀塩などの抗細菌剤; - チオメルサール、エオシン、クロルヘキシジン、ホウ酸フェニル水銀、過酸化水素水溶液、デーキン溶液、トリクロサン、ビグアナイド、ヘキサミジン、チモール、ルゴール溶液、ヨウ化ポビドン、メルブロミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、エタノールまたはイロプロパノールなどの防腐剤; - パラセタモール、コデイン、デクストロプロポキシフェン、トラマドール、モルヒネおよびその誘導体、またはコルチコイドおよび誘導体などの鎮痛剤; - グルココルチコイド、非ステロイド抗炎症剤、アスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナック、アセクロフェナック、ケトロラック、メロキシカム、ピロキシカム、テノキシカム、ナプロキセン、インドメタシン、ナプロキシノド、ニメスリド、セレコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、フェニルブタゾン、ニフルミン酸またはメフェナミン酸などの抗炎症剤; - レチノール、ビタミンA、ビタミンE、N-アセチルヒドロキシプロリン、センテラ・アジアチカ(Centella asiatica)抽出物、パパイン、シリコーン、タイムの、ニアオウリの、ローズマリーの、およびセージのエッセンシャルオイル、ヒアルロン酸、メトホルミン、アラントイン、Hema'tite(登録商標)(Gattefosse)、ビタミンC、Tego(登録商標)Pep 4-17(Evonik)、Toniskin(登録商標)(Silab)、Collageneer(登録商標)(Expanscience)、Timecode(登録商標)(Seppic)、Gatuline(登録商標)スキンリペア(Gattefosse)、パンテノール、PhytoCellTec(登録商標)Alp Rose (Mibelle Biochemistry)、Erasyal(登録商標)(Libragen)、Serilesine(登録商標)(Lipotec)、Heterosides of Talapetraka(Bayer)、Stoechiol(Codif)、マカロース(Sensient)、Dermaveil(Ichimaru Pharcos)、フィコサッカライドAI(Codif)またはメトホルミンなどの治癒を促進する活性剤; - コウジ酸(Kojic Acid SL(登録商標)-Quimasso(Sino Lion))、アルブチン(Olevatin(登録商標)-Quimasso(Sino Lion))、パルミトイルプロリンナトリウムおよびヨーロッパ水仙抽出物の混合物(Sepicalm(登録商標)-Seppic)またはウンデシルエノイルフェニルアラニン(Sepiwhite(登録商標)-Seppic)などの脱色素剤; - ヒドロコルチゾン、エノキソロン、ジフェンヒドラミン、局所適用される抗H1抗ヒスタミン剤などのかゆみ止め薬; - Xpermoist(登録商標)(Lipotec)、ヒアルロン酸、尿素、脂肪酸、グリセロール、ろうまたはExossine(登録商標)(Unipex)などの保湿剤、 - Parsol(登録商標)MCXまたはParsol(登録商標)1789などのUV遮断剤; - カモミール、ビサボロール、Zanthalene(登録商標)、グリシルレチン酸、タナクチン(tanactin)(CPN)またはCalmiskin(登録商標)(Silab)などの鎮静薬; - ビタミンEなどの抗酸化剤から選ばれる。 好ましい一実施形態によれば、本発明によるオリゴサッカライド化合物は、抗酸化剤と併せて使用されうる。 ガレヌス形態 本発明の文脈において使用される化合物は、それらを創傷に直接塗布することを可能とする、ナノメーターまたはマイクロメーターからミリメーターまでにわたる様々なサイズのガレヌス製剤、例えばゲル、溶液、エマルジョン、クリーム、顆粒またはカプセルにおいて採用されてよい。あるいは、本発明の文脈において使用される化合物は、皮下注射のための溶液において採用されうる。 それらのうちの2つまたはそれを超えるものの混合物として、あるいは、1つまたは複数の他の活性物質と併せてそれらが採用される場合、これらの化合物は同じガレヌス製剤中または異なるガレヌス製剤中に取り入れられうる。 もちろん、ガレヌス製剤中で使用される本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライドの量はまた、所望の速度論およびその性質に結び付いた特定の制約、溶解度、熱耐性などにしたがって調整される。 一般に、ガレヌス製剤中で使用される場合、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物は、製剤の総重量に対して0.1から50重量%の間の含有量で取り入れられうる。 創被覆材 本発明の文脈において使用される合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物またはそれらを含有するガレヌス製剤は、優先的に創被覆材に取り込まれるであろう。 合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物、特にスクロースオクタスルフェートのカリウム塩またはそれを含有するガレヌス製剤は、この化合物が直接的または間接的に創傷の表面と接触することができるという条件で、創被覆材の構造の任意の構成要素に取り入れられうる。 好ましくは、そして迅速な作用を促進するために、この化合物(またはそれを含有するガレヌス製剤)は、創傷に接触する創被覆材の層に取り入れるかまたは創傷に接触する創被覆材の表面上に沈着させるであろう。 したがって、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩(またはそれを含有するガレヌス製剤)は、 - 例えば、それを含有する溶液または懸濁液を噴霧することによって液体形態で、 - または、例えば、それを含有する粉末をふるいにかけることによって固体形態でのいずれかにおいて、創傷と接触することを意図される表面上に連続的または不連続的に有利に沈着させることができる。 創傷と接触する層または表面は、例えば、親水性で吸収性のポリウレタンフォームなどの吸収性材料;圧迫包帯、例えば、不織布、フィルム、繊維織物などの布材料;吸収性または非吸収性の接着性材料;粘着性または非粘着性の界面構造から構成されうる。 一般に、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩のための迅速なまたは遅い特定の放出プロフィールを得るために、必要に応じてガレヌス形態または創被覆材の構造を調整することが可能であろう。 もちろん、ガレヌス製剤または創被覆材中で使用されるスクロースオクタスルフェートのカリウム塩の量は、所望の速度論に、またその性質に結び付いた特定の制約、溶解度、熱耐性などにも従って調整されるであろう。 本願の目的のために、用語「創被覆材」は、創傷の治療のために使用される任意のタイプの創被覆材を示すことが意図される。 典型的に、創被覆材は、少なくとも1つの接着性または非接着性の層またはマトリックスを含む。 本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物またはそれらを含有するガレヌス製剤は、創被覆材の構造の任意の構成要素に、例えば、マトリックス中に取り入れることができる。 好ましくは、そして迅速な作用を促進するためには、この化合物(またはそれを含有するガレヌス製剤)は、創傷と接触する創被覆材の層中に取り入れるかまたは創傷と接触する創被覆材の層の表面上に沈着させることができる。 かかる沈着技術は、当業者に周知であり、例えば、特許出願WO2006/007814にいくつかが記載されている。 創被覆材の構成要素におけるその使用の文脈において、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライドは、創傷浸出液中に放出される多硫酸化オリゴサッカライドの量が0.001g/lから50g/lの間、好ましくは0.01から10g/lの間であるような量で取り入れられるであろう。 本発明の一変形によれば、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物は、ゲル化繊維に基づく吸収性創被覆材、例えばConvatec社により販売される製品Aquacel(登録商標)中に取り入れられうる。 これらの創被覆材が適用される場合、ケアスタッフは、包帯を用いてそれらを正しい位置に保持するか、またはそれらを第二の吸収性創被覆材もしくは支持包帯などの二次的構成要素で覆うことが非常に多い。したがって、ケアスタッフの手がこれらの二次的構成要素を位置決めするのに自由であるように、創被覆材が創傷に固定されたままであるのは有用である。一般に、創被覆材において一般的に採用される任意のタイプの接着剤がこの目的のために使用されうる。 健康な組織または創傷の縁を変化させないために、特に創被覆材の除去の間は、創傷に接着することなく皮膚に接着する性質を持つ接着剤が好ましいであろう。 したがって、かかる接着剤の例として、シリコーンまたはポリウレタンゲルなどのシリコーンまたはポリウレタンエラストマーに基づく接着剤およびハイドロコロイド接着剤を挙げることができる。 かかるハイドロコロイド接着剤は特に、ポリ(スチレン-オレフィン-スチレン)ブロックポリマーから選ばれる1つまたは複数のエラストマーと併せた、鉱油、粘着付与樹脂などの可塑剤から選ばれる1つまたは複数の化合物、および必要に応じて、抗酸化剤に基づく弾性マトリックスから成り、そのマトリックス中に好ましい少量(3重量%から20重量%まで)のハイドロコロイド、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはBASF社によりLuquasorb(登録商標)の名前で販売される製品などの超吸収性ポリマーが取り入れられる。 好ましい一実施形態によれば、本発明の文脈において使用される合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物またはそれらを含有するガレヌス製剤は、ハイドロコロイド接着剤を含む創被覆材中に取り込まれ、前記多硫酸化オリゴサッカライドは、接着剤の重量に対して、好ましくは1重量%から15重量%の間、より好ましくは5重量%から10重量%の間の量で前記接着剤中に取り入れられている。 かかるハイドロコロイド接着剤の処方は、本分野の当業者に周知であり、例えば、特許出願FR2783412、FR2392076およびFR2495473に記載されている。 不織布上の接着性ネットの使用は、特に有益には、織物材料の小さな原繊維が創傷と接触し、組織に付着し、そうして除去の際の痛みの感覚または創傷治癒過程に対する障害さえ引き起こすようになるリスクを低下させるかまたは回避することを可能とする。それはまた、織物材料のレベルでの液体の流れをより良く制御すること、および超吸収性繊維の使用に起因し、不織布の吸収能力を実際に制限するゲルブロッキングのリスクを低減または除去することも可能とする。 本発明の一つの好ましい実施形態の変形によれば、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物は、その溶解度および熱耐性と両立できる濃度においてかかる接着剤に取り入れられる。 これらの基準に基づいて、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物は、接着剤の総重量に対して、好ましくは1重量%から15重量%の間、より好ましくは5重量%から10重量%の間の量で使用される。 この不織布創被覆材による吸収を増加させることが望ましい場合、後者を追加の吸収層、および好ましくは、特に製品Urgotul(登録商標)DuoまたはUrgotul(登録商標)Trioにおいて使用されるものなどの圧迫包帯、好ましくは製品Cellosorb(登録商標)中で使用されるものなどの不織布よりも大きな吸収能力を有する親水性ポリウレタンフォームである吸収性の親水性フォームのようなゲル化しない吸収層と組み合わせることが可能であろう。 好ましい一実施形態によれば、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物は、追加の吸収層、および好ましくは特に圧縮包帯(compress)などのゲル化しない吸収層と組み合わせた不織布創被覆材に取り入れられる。 別の好ましい実施形態によれば、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライド化合物は、追加の吸収層、および好ましくは特に吸収性の親水性フォームなどのゲル化しない吸収層、好ましくは不織布よりも大きな吸収能力を有する親水性ポリウレタンフォームと組み合わせた不織布創被覆材中に取り入れられる。 不織布およびフォームは、本分野の当業者に周知の技術によって、例えばTPU/ポリカプロラクトンポリマーに基づくホットメルトパウダーを用いるホットカレンダー処理(hot calendering)によって組み合わせることができる。 この技術は、医療市場向けの不織布を接着するために一般的に使用される。 最後に、このフォームまたは不織布(後者が単独で用いられる場合)は、外部から創傷を保護するための支持物で覆われることができる。 この支持物は、他の層よりも大きなサイズであることができ、特に創傷が平坦でない体の領域に位置する場合、使用中の正しい位置における創被覆材の保持を最適化するために、創傷と接触するようになるその面に連続的または不連続的に接着性であるように作られることができる。 この支持物およびその接着剤は、創被覆材によって吸収された浸出液の最適な管理を可能とし、浸軟の問題を回避するために、流体に対して不透過性であるが、水蒸気に対しては非常に透過性であることが好ましい。 かかる支持物は、本分野の当業者に周知であり、例えば、ポリウレタンフィルムなどの呼吸可能であり、不透過性のフィルム、またはフォーム/フィルムもしくは不織布/フィルム複合物から成る。 添加剤 活性剤に加えて、本発明によるオリゴサッカライド化合物は、1つ(または複数)の他の活性物質と併せて使用されうる。 創被覆材の調製において一般的に使用される添加剤は、特に、香料、保存剤、ビタミン、グリセロール、クエン酸などから選ばれうる。 本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライドの活性は、以下の非制限的実施例において実証された。(実施例)(実施例1) スクロースオクタスルフェートのカリウム塩(KSOS)の筋線維芽細胞の分化に対する効果の実証 1.正常なヒト真皮線維芽細胞(NHDF)の培養 正常なヒト真皮線維芽細胞(NHDF)の培養物を、5μg/mlの(Promokine社により販売された)インスリンおよび1ng/mlの(Promokine社により販売された)bFGFを含む、10%の(Invitrogen社により販売された)ウシ胎仔血清を補充した(Invitrogen社により販売された)DMEM/F12培地中で調製した。 2.分化の誘導 次いで、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を誘導した。 このために、NHDF培養物を、10%のウシ胎仔血清を補充し、10ng/mlの(Promokine社により販売された)細胞増殖および分化を制御する成長因子であるTGF-βを補充したDMEM/F12培地中、5μg/mlのコラーゲンでコーティングしたP100ディッシュ中に入れた(図1中の分化した対照)。 未分化の対照も、TGF-βを含まない、10%ウシ胎仔血清を補充したDMEM/F12中の培養物を用いて調製した。 その分化に対する効果を決定するために、2mg/mlの割合でKSOSを対照および分化した対照の培養物に添加した。 4日間の培養後に結果を分析した。 3.線維芽細胞分化の阻害の実証 線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化の阻害を実証するために、定量的RT-PCRによってα-SMA mRNAの発現を測定し、ウエスタンブロット法によってα-SMAタンパク質の存在を検出した。本発明による化合物の阻害効果の測定のために、分化を行っている培養物にKSOSを2mg/mlで添加した。 - 定量的RT-PCRによって:Trizol、クロロホルムおよびイソプロパノール法を用いて、mRNAを抽出した。 - ウエスタンブロット法によって:総細胞抽出物を調製し、ウエスタンブロットを実施した。使用した抗体は、(Promegaにより販売された)ウサギ抗α-SMA抗体およびマウス抗アクチン抗体である。 D4における分化の結果は、TGF-βの存在下での培養物におけるα-SMA発現の誘導およびKSOSを添加したときのこの誘導の阻害を明白に実証する(図1)。 - 免疫蛍光法:コラーゲンでコーティングしたカバーガラス上の12ウエルプレート中で、細胞培養物を調製した。4%ホルムアルデヒドで細胞を固定し、Tritonで透過処理した。細胞核のための(青色を与える)DAPI染色、ウサギ抗α-SMA抗体および(Promegaにより販売された)Cys3にカップリングした抗ウサギ二次抗体を用いて免疫標識を実施する。 細胞総数にわたる分化細胞の数を、細胞計数によって決定する。図1(D)のダイアグラムは、分化細胞のパーセンテージを示す。 ここでも、KSOSの添加は、TGF-βによって正常に生じた分化の阻害を引き起こす。(実施例2) コラーゲン格子の陥没に対する、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩(KSOS)の効果の実証 1.コラーゲン格子の調製 1.3mg/mlの最終濃度のI型コラーゲンのゲル中に0.8×106個の正常なヒト真皮線維芽細胞(NHDF)を播種することによって、コラーゲン格子を得た。 2.コラーゲン格子の陥没に対する、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩の効果の実証 7.5%のスクロースオクタスルフェートのカリウム塩を含む(Urgotul Startの商品名で販売された)創被覆材を、コラーゲン格子の表面に塗布した。 播種したNHDFによるコラーゲンゲルの正常な収縮を評価するために、創被覆材を含まない対照シリーズを実施した。 同様に、筋線維芽細胞に高度に分化したNHDFにより誘導された強力な収縮を可視化するために、10ng/mlの濃度のTGF-βを添加することによって、陽性対照を実施した。 インキュベーションを7日間に至るまで維持した。 3.結果 コラーゲン格子の陥没に対するスクロースオクタスルフェートのカリウム塩の効果を、写真による分析(図2)および一旦収縮した格子の面積の画像分析測定によって観察した。 コラーゲン格子の平均面積の測定の結果を以下の表(表1)に示す。 対照条件下、格子は、1日目から7日目の間に徐々に収縮した。スクロースオクタスルフェートのカリウム塩を含むUrgotul Start創被覆材の塗布は、明白に格子の収縮を遅くした。 この結果は、KSOSによる処理が、コラーゲン格子の収縮を制限することを実証しており、これは、顕著なレベルの瘢痕の陥没を伴う病理学的瘢痕の治療および予防のために非常に前向きなものである。(実施例3) 以下の組成を有する、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライドを含む溶媒ベースのフィルモゲル(filmogel)タイプの製剤を調製した。 ニトロセルロースは、酢酸エチル/無水エタノール混合物で希釈した。次いで、フィルモゲルタイプの組成物を得るために、ひまし油、UV遮断剤およびKSOSを溶解するまで添加した。(実施例4) 以下の組成を有する、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライドを含む水ベースのフィルモゲルタイプの製剤を調製した。 激しく撹拌しながら、増粘剤を水中に分散させ、次いで、より良い溶解度を得るように40℃まで加熱しながら、ソルビトールとデキストランを添加した。 KSOS、パラベンおよびフェノキシエタノールを添加し、均一化するために混合物を撹拌したままにした。次いで、加熱を停止することによって、周囲温度まで放冷する一方、必要に応じて、水の損失を調整した。最後に、水酸化ナトリウムによって混合物を中和し、撹拌停止前に10分間撹拌したままにした。(実施例5) 以下の組成を有する、本発明による合成多硫酸化オリゴサッカライドを含むクリームの形態の製剤を調製した。 増粘剤を水中に分散させた。グリセロール、プロピレングリコール、KSOSおよび保存剤を添加し、混合物を均一化した。それを70℃〜75℃に加熱した。混合物が70℃〜75℃に達したら、水の量を調整し、次いで、10%の水酸化ナトリウムで混合物を中和し、温度を70℃〜75℃に戻した。 同時に、水中油型界面活性剤、乳化ろう、ステアリン酸、イソデシルイソノナノエート、シリコーン油(デカメチルシクロペンタシロキサン)およびエモリエントエステル(乳酸ミリスチル)を混合し、70℃〜75℃に加熱した。 2つの混合物が70℃〜75℃に達したら、激しく撹拌しながら第2の混合物を第1の混合物に添加し、得られた混合物を熱い状態で10分間撹拌したままにした。 次いで、シリコーン界面活性剤を添加し、得られた混合物を再度熱い状態で5分間撹拌したままにした。 最後に、加熱を停止し、混合物の粘度次第で十分な撹拌を維持する一方、周囲温度まで混合物を放冷した。約35℃で混合物は不均一な外観を呈するが、クリームはその後滑らかで光沢を有するようになる。 病理学的瘢痕に至る創傷の治療におけるその使用のための、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、その塩、またはその錯体から選ばれる化合物。 前記病理学的瘢痕が、肥厚性または陥没性瘢痕から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。 肥厚性または陥没性瘢痕から選ばれる病理学的瘢痕に至る創傷の治癒の間の、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を阻害することにおけるその使用のための、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、その塩、またはその錯体から選ばれる化合物。 好ましくはペントースおよびヘキソースから選ばれる、1または2個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライド、またならびにこれらの化合物の塩および錯体から選ばれることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。 - スクロースオクタスルフェートのカリウム塩、 - スクロースオクタスルフェートの銀塩、および - スクロースオクタスルフェートのヒドロキシアルミニウム錯体から選ばれることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。 抗細菌剤、防腐剤、鎮痛剤、抗炎症剤、治癒を促進する活性剤、脱色素剤、かゆみ止め薬、UV遮断剤、鎮静薬、保湿剤および抗酸化剤、ならびにそれらの混合物から選ばれる1つまたは複数の他の活性物質と組み合わせることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。 前記他の活性物質が抗酸化剤から選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の化合物。 前記創傷に直接塗布することを可能とするガレヌス製剤、例えばゲル、溶液、エマルジョン、クリーム、顆粒またはカプセル中に、好ましくは前記製剤の総重量に対して0.1重量%から50重量%の間の量で、存在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。 前記化合物またはそれを含有するガレヌス製剤が、創傷浸出液中に放出されるこの化合物の量が好ましくは0.001g/lから50g/lの間、より好ましくは0.01から10g/lの間であるような量で、創被覆材の構成要素中に取り込まれることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。 前記創被覆材が、追加の吸収層、および好ましくは特に圧縮包帯などのゲル化しない吸収層と組み合わせた、不織布創被覆材であることを特徴とする、請求項9に記載の化合物。 前記創被覆材が、不織布であって、追加の吸収層、および好ましくは特に吸収性の親水性フォーム、好ましくは前記不織布の吸収能力よりも大きな吸収能力を有する親水性ポリウレタンフォームなどのゲル化しない吸収層と組み合わせた、不織布を含む創被覆材であることを特徴とする、請求項9に記載の化合物。 前記創被覆材が、ハイドロコロイド接着剤を含むこと、および、前記多硫酸化オリゴサッカライドが、前記接着剤の重量に対して好ましくは1重量%から15重量%の間、より好ましくは5重量%から10重量%の間の量で、前記接着剤中に取り入れられていることを特徴とする、請求項9または10に記載の化合物。 肥厚性または陥没性瘢痕を発症する素因を有する対象における創傷の治療におけるその使用のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。 重度のにきび瘢痕から選ばれる病理学的瘢痕に至る創傷の治療におけるその使用のための、スクロースオクタスルフェートのカリウム塩。 本発明は、肥厚性、陥没性または萎縮性瘢痕の中で選択される病理学的瘢痕に至る創傷の治療に使用される、1〜4個のモノサッカライド単位を有する合成多硫酸化オリゴサッカライドならびにその塩および錯体の中で選択される化合物に関する。前記使用は、特に、肥厚性、陥没性または萎縮性瘢痕を発症する素因を有する患者において好ましい。第2の態様によれば、本発明は、肥厚性、陥没性または萎縮性瘢痕の中で選択される病理学的瘢痕に至る創傷の瘢痕化の間の、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を阻害するためのその使用における前記化合物にも関する。