タイトル: | 公表特許公報(A)_サーマルシフトアッセイを使用した、標的タンパク質とのリガンド結合を決定するための方法 |
出願番号: | 2014505717 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | G01N 33/53 |
ノードルンド, ペール JP 2014513293 公表特許公報(A) 20140529 2014505717 20120418 サーマルシフトアッセイを使用した、標的タンパク質とのリガンド結合を決定するための方法 エビトラプロテオマ アーベー 513257476 EVITRAPROTEOMA AB 池田 成人 100107456 野田 雅一 100123995 山口 和弘 100148596 ノードルンド, ペール GB 1106548.9 20110418 G01N 33/53 20060101AFI20140502BHJP JPG01N33/53 D AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN GB2012050853 20120418 WO2012143714 20121026 36 20131204発明の詳細な説明 本発明は、タンパク質とリガンドとの結合相互作用を調べる方法に関し、特にサーマルシフト分析の使用による方法に関する。 より詳細には、本発明は、非精製標的タンパク質とリガンドを加熱するステップ、及び生成物を分析して可溶性標的タンパク質を検出するステップを含む、非精製標的タンパク質とのリガンド結合を決定するための方法に関する。ある特定の実施形態では、本発明の方法は、熱処理後に不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための分離ステップを使用して、可溶性標的タンパク質、及びしたがって熱安定性リガンド結合標的タンパク質の量を推定する。さらに本発明は、加熱手段、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段、及び標的タンパク質の存在に関して可溶性タンパク質又は不溶性タンパク質を分析するための手段を含む、上記方法中で使用するための器具に関する。本発明の方法中での抗体又は非タンパク質融合タグを含むキットの使用も記載する。 タンパク質とのリガンド結合の検出は、生物学及び医学の多くの異なる分野において重要である。特に、薬剤への化合物の開発中、化合物が薬剤標的と相互作用するかどうかを知ることは重要である。したがって、標的タンパク質とリガンドとの相互作用のモニタリングは、大規模な化合物ライブラリー由来のリガンドの相互作用に関する初期スクリーニング、及び候補薬剤への初期リガンドの最適化中に使用することができる。さらに、他のタンパク質と薬剤との相互作用(いわゆる「オフターゲット相互作用」)を理解することが重要であり、この場合このような相互作用は治療の副作用をもたらす可能性がある。 他の医学的用途では、特定薬剤が(疾患の)患者又は動物モデルにおいて標的タンパク質と結合することができるかどうか、決定することは重要である。薬剤は有効であるために、胃/消化管中に吸収されること(又は注射の場合、薬剤は血液中に入らなければならない)、身体中の正確な位置に運ばれることが必要である。薬剤が細胞外タンパク質又は受容体を標的化しない場合、薬剤は、細胞内に運ばれて標的タンパク質にアクセスできることがさらに必要である。全てのこれらの輸送プロセス中、薬剤は安定している必要があり、腎臓からの排出、及び例えば肝臓中での分解、又は細胞代謝酵素による分解を回避することが必要である。さらに薬剤は、P450酵素による分解又は多剤排出チャンネルによる移動等の、細胞性薬剤耐性プロセスを生き延びることが必要である。最後に薬剤は、薬剤標的タンパク質と結合可能であることが必要である。癌及び感染療法における薬剤耐性は、標的タンパク質における薬剤結合部位の領域中の微妙な突然変異が時折原因である。しかしながら、薬剤から標的への経路において、薬剤は身体の多くの異なる環境に遭遇し、途中で多くの異なるタンパク質とおそらく相互作用し得る。 薬剤が標的タンパク質における結合部位に達するまでの薬剤に関する経路の高い複雑性は、おそらく、臨床診断、発現プロファイル及び配列決定のみに基づく現代の予想法が、治療有効性の予想において成功が限られている1つの理由である。薬剤が標的に達したかどうかを測定するための考えられる手段は、身体の標的細胞中での薬剤と標的タンパク質との相互作用の直接的な測定を実施することである。これは薬剤標的の下流の事象は測定し得ないが、前に記載したような薬剤から標的までの全てのステップを統合し得る。したがって、このような測定は治療上有効な多くの重要なステップを包含することができ、多くの薬剤の有効性、したがって臨床診断ツールとしての貴重な予想指標であり得る。したがって、非精製サンプル、例えば患者由来のサンプルにおけるリガンドとタンパク質との相互作用の検出を可能にして、薬剤の相互作用及び有効性を研究することが望ましい。 サーマルシフトアッセイが当技術分野で開発されており、タンパク質が精製型である場合、そのアッセイは、タンパク質とリガンドとの結合を評価することができる。これらのアッセイは、2つの原理、すなわち特定温度で精製タンパク質が溶融しアンフォールディング状態になること、及びタンパク質とリガンドとの結合がタンパク質を熱的に安定化させることに基づいて開発されてきた。したがって、タンパク質とリガンドとの結合は、リガンドが結合した後に精製タンパク質が熱安定性の増大を示すこと、したがってリガンドが結合した後に、精製タンパク質単独より高い温度でタンパク質が溶融することに基づいて検出することができる。Vedadiら(PNAS、103(43)、15835〜15840、2006)は、タンパク質の安定性、結晶化及び構造決定を助長するリガンドを同定するための化学的スクリーニング法を評価した。これらの方法では、低分子ライブラリーに対するスクリーニング後に組換え精製タンパク質の熱安定性を評価した。タンパク質の熱安定性、したがってリガンド結合の増大は、蛍光測定法(蛍光プローブを使用した場合)又は静的光散乱法のいずれかを使用して測定した。しかしながら前に論じたように、この方法は(非結合タンパク質を使用し参照サンプルによって決定したように)特定温度で溶融した精製タンパク質を使用し、測定した溶融温度での安定性を増大させた。 Moreauら(Mol.BioSyst、6、1285〜1292、2010)は近年、レポーター系としてGFPを使用し、標的タンパク質の安定性及び標的タンパク質のリガンド関連安定性を決定しており、この場合GFPは標的タンパク質と融合させた。しかしながら、この方法は理想的ではない。第一にこの方法は、融合タンパク質の構築及び発現を必要とし、したがって天然細胞及び組織では使用することはできないが、形質転換細胞のみで使用することができる。さらにこの方法は、GFPより安定性が低いタンパク質とのリガンド結合を検出するためのみに使用することができる。最後に、添加剤又は塩の使用はGFPの安定性に影響を与え、したがって各実験用に対照GFPを使用しなければならない。 このように、従来技術で記載されたサーマルシフトアッセイは、精製タンパク質に関して、又は一例(Moreauら、上記)では、GFPと融合した精製後の1つの他のタンパク質と混合した精製タンパク質に関してのみに使用された。これとは対照的に、本発明者らは、融合した任意のタグ又はペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない非精製タンパク質とリガンドの結合を決定するために使用することができるアッセイを開発している。したがって本発明者らは、例えば細胞、細胞溶解物又は多くの異なる生体分子を含有する他の複合液中の非精製タンパク質を、精製タンパク質と類似した方法において特徴的な温度依存性で、アンフォールディング状態にし沈殿させることが可能であることを示している。この発見は予想外であった。細胞中及び非精製サンプル中に存在する条件は、精製サンプル中の条件とは全く異なるからである。したがって、非精製サンプル中又は細胞中では、幾つかの異なるプロセスがタンパク質の可溶性に影響を与える可能性があり、異なるタンパク質の凝集効果又は部分的にアンフォールディング状態のタンパク質の異なるシャペロン又は膜相互作用等に並行して作用し得ると予想される。本発明者らは前に論じたようにこの発見を使用し、特徴的温度で溶融する非精製タンパク質の能力に基づいて、非精製サンプルにおけるタンパク質とのリガンド結合を検出することができるサーマルシフトアッセイを開発した。従来技術の方法とは異なり、この方法は包括的であり、大部分の標的タンパク質とリガンドとの組合せに使用することができる。このアッセイは特定温度における非精製型の標的タンパク質の熱安定性を調べ、この場合熱安定性の増大はリガンド結合を示す。したがって、リガンドを加えた非精製標的タンパク質の熱安定性を、リガンドを含まない非精製標的タンパク質の熱安定性と比較する。リガンドを含まない非精製標的タンパク質と比較した、リガンドを加えた非精製標的タンパク質の熱安定性の任意の増大は、リガンドが非精製標的タンパク質と結合したことを示す。特に、熱処理後に標的タンパク質が可溶性であるかどうか検出することによって、熱安定性の任意の増大を決定する。したがって本発明のアッセイは、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離して任意の可溶性標的タンパク質を同定する、簡潔なステップを利用する。前に論じたように、このような可溶性タンパク質は、サンプルに施した温度で熱的に安定していること、したがって結合したリガンドを有することと関連している。したがって、可溶性タンパク質と不溶性タンパク質とを区別するための分離ステップは、任意の標的タンパク質を検出するための本発明のアッセイの使用を可能にし、したがって包括的方法をもたらす。 したがって、一態様において本発明は、標的タンパク質と結合することができるリガンドを同定するための方法であって、前記標的タンパク質が非精製状態であり、 (a)前記標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に、前記非精製標的タンパク質及び試験分子を含むサンプルを曝すステップ、 (b)ステップ(a)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び (c)標的タンパク質の存在に関してステップ(b)の可溶性タンパク質を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法を提供する。 したがって前に論じたように、本発明の方法は、非精製サンプルにおける標的タンパク質とのリガンド結合の検出に関するものであり、この場合驚くことに、このようなサンプルにおける標的タンパク質は特徴的温度で溶融又はアンフォールディング状態になり得る。標的タンパク質がリガンドと結合するとき、標的タンパク質の熱安定性は一般に増大し、したがって標的タンパク質は、リガンド不在時よりリガンド結合時により高温で溶融し得る。したがって、非結合標的タンパク質を通常溶融する/アンフォールディング状態にする温度をサンプルに施すことによって、アンフォールディング状態である非結合標的タンパク質、及び高度にフォールディング状態であるリガンドが結合した標的タンパク質が生じる可能性がある。したがって、高レベルのフォールディング状態の標的タンパク質の検出は、リガンドの結合を示す。フォールディング状態の標的タンパク質は一般に可溶性であり、一方アンフォールディング状態のタンパク質は一般に不溶性である。したがって、タンパク質の溶解性はその熱安定性と関係がある。したがって、標的タンパク質が通常沈殿し始め不溶状態になる温度を使用した、熱処理後の高レベルの可溶性標的タンパク質の検出は、増大した熱安定性したがってリガンド結合がある、フォールディング状態の標的タンパク質の存在を示す。 本発明は不純物サンプルの分析に関する。これは、「バイオセンサー」型の方法で使用される技術を可能にする。対象のリガンドを含有する可能性がある非精製サンプル、特に臨床又は環境サンプルは、サンプルに標的タンパク質を、精製タンパク質として、又は非精製サンプル状態のいずれかで(例えば、細胞溶解物として)加えることによって分析することができる。このような方法は、標的タンパク質が血清中に元来存在しない場合でさえ、血清サンプル中の薬剤又は他の検体の存在の定量化を可能にする。例えば薬剤の標的細胞由来の、標的タンパク質を含有する細胞溶解物を、臨床サンプルに加えることができる。 したがって本発明は、非精製サンプルが、対象のリガンドと結合した標的タンパク質を含有するかどうか決定する一層包括的な方法であって、 (a)前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に前記非精製サンプルを曝すステップ、 (b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び (c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法を提供する。 当業者は、精製タンパク質のサーマルシフト分析、及び分析によって生じる溶融点曲線に精通している。溶融点曲線の中間点はタンパク質の溶融点であると考えることができ、この温度はリガンド結合によって変わる可能性がある。リガンド結合によって引き起こされるシフトの性質に応じて、ある特定温度において、結合タンパク質と非結合タンパク質との両方のある程度の溶融(沈殿)があり得るが、非結合タンパク質に関して高い程度で沈殿が生じることは理解される。シフトが目に見え沈殿タンパク質の量が異なる温度は識別可能な温度であり、その範囲内の温度は前述のステップ(a)に従い1つの識別可能な温度として使用することができる。非結合及び結合標的タンパク質の溶融点が知られているときこれは特に当てはまり、サンプル中の標的タンパク質及び/又はリガンドの存在に関するアッセイとして方法を実施する。したがって、リガンドをサンプルに加えて標的タンパク質の存在を確認することができる。 本発明の方法は、非精製サンプルにおけるリガンドと標的タンパク質の結合を決定するための包括的方法である。文脈から他に明らかではない限り、「非精製タンパク質」という本明細書中の論述は、必要な変更を加えて「非精製サンプル」に適用する。この方法は、当技術分野の方法に優る多くの利点を有する。第一にこの方法は、タンパク質を精製する必要をなくしてリガンド結合を調べる。さらにこの方法は、標的タンパク質の組換え発現又は融合レポータータンパク質を含有するタンパク質の産生(Moreauら、上記中など)を必要としない。この方法は、細胞培養、動物又は患者サンプルにおけるリガンド結合を調べることをさらに可能にし、これは以前にサーマルシフト結合アッセイを使用して不可能であった。前に論じたように、これは特定薬剤を有効に使用して特定患者における疾患を治療することができるか、及び薬剤の最適用量の決定に役立つことができるかどうかを分析するのに重要である。例えば、薬剤耐性が頻繁に生じ得る場合、これは癌及び感染症の治療に重要な効果がある。薬剤で有効に治療し得ない患者を検出することができるような場合、他の療法を開始することができるか、又は薬剤用量を調節することができる。 さらに、本発明の方法の検出ステップは高価な装置又は器機の使用を必要とせず、実際、フィルター及び、例えば抗体を使用して検出する標的タンパク質を使用して、分離ステップを実施することができる。本発明の方法を任意のタンパク質に使用して、リガンドの結合を検出することができる。方法中で検出するそれぞれのタンパク質に関して、特異的プローブ等を設計する必要はない。したがって本発明の方法は、非精製サンプルにおけるタンパク質とリガンドとの結合を決定する有効で信頼できる方法となる。その上、以下でさらに論じるように、本発明の方法は容易に多重化することができ、相互作用に関してリガンド又はタンパク質のライブラリーをスクリーニングするために使用することができる。 本明細書中で使用する場合、用語「標的タンパク質」は、リガンド結合に関して本発明の方法中で評価するタンパク質を指す。したがって標的タンパク質は、サンプル中に存在する任意のタンパク質であってよい。標的タンパク質は、例えば細胞若しくは細胞溶解物又は動物若しくは患者サンプル中に元来存在してもよく、組換えによって発現させることが可能であり、例えば細胞中に形質転換したプラスミドから発現させることが可能である。前述のように、標的タンパク質が最初はサンプル中に存在しない可能性はあるが、サンプルに加えて開始サンプル中のリガンドの存在を調べることは可能である。したがって本発明によれば、「サンプル」はステップ(a)中で処理される試験サンプルであり、このサンプルは開始サンプル、例えば臨床サンプルとは異なる可能性がある。同様に、リガンドは開始サンプルに加えることができる。既知量の標的タンパク質又はリガンドの添加は、定量データを得る際に役立ち得る。 標的タンパク質はそれが通常天然に存在するような、すなわち野生型であってよく、又は1つ若しくは複数の突然変異を含む可能性がある。したがって、タンパク質をコードする遺伝子/cDNA/コード領域を突然変異させて、そのタンパク質の変異体、例えばリガンドと結合する様々な能力を有する突然変異体を生成することが可能である。以下でさらに論じるように、これらの突然変異体は発現系において生成することができ、例えば高いリガンド結合性を有する変異体を、本発明の方法を使用して選択することができる。 典型的には、標的タンパク質は天然又は天然様形状を有し、可溶性である。天然又は天然様タンパク質は可溶型で発現される、及び/又は正確にフォールディング状態になる。天然様膜タンパク質は溶液中に遊離状態で存在する必要はないが、封入体より細胞膜又は膜小胞体中に存在し得る。したがって天然様タンパク質は一般に不溶性でなく、封入体に存在せず、凝集又はミスフォールディング状態ではない。 標的タンパク質は、動物集団中で多数の変異体の型で存在し得る。これらの変異体は健常動物集団内に存在する可能性があり、又はタンパク質の変異が集団内の疾患若しくは薬剤耐性をもたらす可能性がある。本発明の方法は、一定範囲の異なる標的タンパク質変異体全体のリガンドをスクリーニングする手段をもたらす。このような情報は、ある特定のタンパク質変異体と特異的に結合するリガンドを開発するため、又はどの型の療法が本来発現するタンパク質変異体に基づき患者に最も適切であり得るかを、決定するために有用である可能性がある。したがって上記方法は、同じタンパク質の変異体である2つ以上の標的タンパク質で反復することができる。 「可溶性タンパク質」は、天然又は天然様形状の保持を参考にして定義することができる。さらに可溶性タンパク質は、サンプルの遠心分離後に(前記タンパク質が細胞内に存在する場合、事前の溶解ステップあり)、上清中に残存するタンパク質として記載することができる。遠心分離は、典型的には100gと20000gの間で実施することができる。遠心分離の時間は1分から少なくとも1時間であってよく(典型的には少なくとも10分)、遠心力が増大すると必要とされる時間は一般に減少する。生成上清中に可溶性タンパク質のみを与えるのに特に適した条件は、3000gで30分又は20000gで15分を含む。 用語「非精製標的タンパク質」は、単離型ではないとき、又は代替的に他の化合物、例えばタンパク質と共に存在するときに見られる標的タンパク質を指す。本発明の方法中で使用する非精製標的タンパク質は、試験分子(潜在的リガンド)の添加前又は試験分子の不在下で非精製型である。したがって、非精製標的タンパク質は、標的タンパク質のリガンドであるかどうか決定するために試験する試験分子(潜在的リガンド)以外の化合物と共に存在する。したがって、非精製標的タンパク質は、患者(ヒト患者又は動物患者又は疾患モデル、例えばイヌ、ネコ、サル、ウサギ、マウス、ラット等)から直接得た細胞、細胞溶解物及びサンプル、例えば組織サンプル、血液、血清、血漿、リンパ等の内部又は表面に含まれるとき標的タンパク質を含む。非精製標的タンパク質は、1つ又は複数の細胞コロニー中に含まれるときの標的タンパク質を含み、この場合細胞コロニーは、固体又は半固体培地(すなわち、0.1%以上の寒天を加えた培養培地)で増殖した単細胞又は小細胞群に通常由来する限局性の群の細胞として定義される。非精製標的タンパク質は、細胞の液体培養液中に含まれる可能性もある。細胞の液体培養液は全てが単細胞に由来する細胞を含む可能性がある、すなわち、液体培養液内の細胞はクローン性である可能性があり、又は液体培養液は異なる細胞の縣濁液を含む可能性がある。コロニー又は液体培養液中の細胞は原核生物、すなわち細菌、又は真核生物細胞、例えば酵母、リーシュマニア(Leishmainia)等の単細胞真核生物、昆虫細胞若しくは哺乳動物細胞又は細胞株である可能性がある。液体培養液中の細胞又はコロニーとして増殖する細胞は、大腸菌(E.coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、ストレプトコッカスラクチス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカスリビデンス(Streptococcus lividens)、ラクトコッカスラクチス(Lactococcus lactis)、スタフィロコッカスアウレス(Staphylococcus aureas)、クロコウジカビ(Aspergillus niger)、ピチアパストリス(Picia pastoris)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)又はシゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccaromyces pombe)として形成され得る。前述の全てが、標的タンパク質を含むサンプルの例である。 前述のように、本発明の要所は、「不純」サンプルはサーマルシフト分析を施すと、信頼できる情報をもたらし得るという発見である。したがって、(a)におけるサンプルは非精製状態であるが、精製標的タンパク質を不純な開始サンプルに加えた情況があり得る。このサンプルは非精製状態であり、「非精製標的タンパク質」の文脈で本明細書中に記載する、例えば他のタンパク質、細胞残骸、核酸等の構成要素を含有する。 典型的には、非精製標的タンパク質は、標的タンパク質の精製をもたらし得る精製プロセスに曝されていない。このような精製プロセスは幾つかのステップを含むことができ、したがって本発明において使用する非精製標的タンパク質は、精製タンパク質を生成するのに必要な全てのこのようなステップに曝されていない。例えば、タンパク質が組織中に存在する場合、例えば遠心分離又はクロマトグラフィーによる抽出、沈殿及び分離のステップを使用してタンパク質を精製することができる。本発明の非精製標的タンパク質が全てのこのようなステップに曝される可能性はなく、したがって精製標的タンパク質が単離される可能性はない。精製プロセスが終了しておらず精製タンパク質が単離されていない限り、非精製標的タンパク質が1つ又は複数のステップ、例えば精製プロセスの抽出ステップに曝された可能性があると考えられる。したがって非精製標的タンパク質は典型的には他の化合物又はタンパク質と共に存在し、したがって標的タンパク質は単離型で存在しない。 本明細書中で使用する場合、用語「試験分子」は、それが標的タンパク質のリガンドであるかどうか決定するため本発明の方法中で試験する、任意の分子又は化合物を指す。もう1つの観点では、試験分子は標的タンパク質の潜在的リガンドである。したがって、試験分子又はリガンドは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、RNA、又はDNA分子であってもよい。特定の実施形態では、分子/リガンドは、例えば血清中の、薬剤又は医薬品、細胞代謝産物又はホルモンであってもよい。試験分子又はリガンドは天然に存在してもよく、又は既に記載した若しくは以下でさらに論じる任意の方法を使用して、合成若しくは組換えによって生成することができる。 使用する試験分子は標的タンパク質と結合することができる、又は結合することができない。一態様では、本発明の方法は、特定の分子又は化合物が標的タンパク質と結合することができるかどうか、すなわち試験分子又は化合物がリガンドであるかどうか決定又は評価する。したがって本発明を使用して、標的タンパク質と結合することができる分子に関して、低分子ライブラリーをスクリーニングすることができる。幾つかの試験分子は標的タンパク質と結合することができず、一方他の試験分子は標的タンパク質と結合することができる。さらに、本発明の方法を使用して、高いアフィニティーで(又は代替的に低いアフィニティーで)標的タンパク質と結合することができる、標的タンパク質と結合することが知られている低分子の変異体を同定することができ、これが熱安定性の度合いに反映されることが多い。したがって試験分子は、突然変異リガンド又は知られている(若しくは知られていない)標的タンパク質結合パートナーであり得る。このような突然変異分子の生成は、本明細書に記載する任意の突然変異プロセスの使用によって実施される。 したがって、一態様では、本発明は、標的タンパク質と結合することができるリガンドを同定するための方法であって、 (a)標的タンパク質の初期溶融温度以上である温度を含めた一連の異なる温度に、前記標的タンパク質及び試験分子を含む非精製サンプルを曝すステップ、 (b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び (c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法を提供する。 本明細書中で使用する場合、用語「リガンド」は、標的タンパク質と結合することができる試験分子、又はより一般的には化合物を指す。標的タンパク質はそれと結合した補助因子又は生理的基質を有する可能性があるが、本発明の方法は、リガンドと結合していないときの標的タンパク質(非結合標的タンパク質)と比較して、対象のリガンドと結合した標的タンパク質の溶融点を調べる。対象のリガンドはタンパク質上の他の箇所で結合する可能性があり、又は例えば生理的リガンドとの、結合に関して競合する可能性がある。対象のリガンドは、薬剤若しくは薬剤候補、又は本来存在する結合パートナー、生理的基質等であってもよい。したがって、リガンドは標的タンパク質と結合して、より大きな複合体を形成することができる。リガンドは標的タンパク質と任意のアフィニティー、すなわち高い又は低いアフィニティーで結合することができる。一般に、高いアフィニティーで標的タンパク質と結合するリガンドは、低いアフィニティーで標的タンパク質と結合するリガンドと比較して、より熱的に安定した標的タンパク質をもたらす可能性がある。典型的には、標的タンパク質と結合することができるリガンドは、少なくとも0.25又は0.5℃、及び好ましくは少なくとも1、1.5又は2℃の標的タンパク質の熱安定化をもたらす可能性がある。 したがって、試験分子が標的タンパク質と結合する(したがって標的タンパク質のリガンドである)ことが既に知られているとき、本発明の方法を使用して、標的タンパク質とリガンドとの結合を評価する、例えば相互作用の強度を決定することができる。この態様では、本発明は、標的タンパク質とのリガンド結合を評価するための方法であって、前記標的タンパク質が非精製状態であり、a)前記標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に、前記標的タンパク質と前記リガンドを含むサンプルを曝すステップ、b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及びc)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法を提供する。 非精製標的タンパク質とのリガンド結合を評価若しくは決定するため、又は非精製標的タンパク質のリガンドを同定するため、試験分子又はリガンドを典型的にはサンプルに加える。しかしながら、試験分子又はリガンドが非精製標的タンパク質を含むサンプル中に既に存在する、例えば本来存在することが考えられる。したがって本発明は、標的タンパク質と結合することができるリガンドを同定するための方法であって、前記標的タンパク質が非精製状態であり、 (ai)前記非精製標的タンパク質に試験分子を加えるステップ、 (a)前記標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度にステップ(ai)の生成物を曝すステップ、 (b)ステップ(a)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び (c)標的タンパク質の存在に関してステップ(b)の可溶性タンパク質を分析するステップを含み、標的タンパク質の存在が、前記分子が前記標的タンパク質と結合し、前記標的タンパク質と結合することができるリガンドであることを示し、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法も提供することができる。 典型的には、試験分子(潜在的リガンド)が細胞外、例えば溶液中に存在する場合、試験分子(潜在的リガンド)を非精製標的タンパク質に簡潔に加えることができる、例えばこれも溶液中に存在する場合非精製標的タンパク質と一緒に混合することができ、又は例えば標的タンパク質が採取した細胞のアリコート中に存在する場合、標的タンパク質に滴下することができる。あるいは、試験分子(潜在的リガンド)を、試験分子をコードするベクターから組換えによって発現させることが可能である。したがって試験分子を加えるステップは、試験分子をコードするベクターを含む細胞サンプルの形質転換若しくはトランスフェクト及び/又は形質転換若しくはトランスフェクションを実施した後の、細胞サンプル中のベクターからの試験分子の発現の誘導を含むことができる。試験分子を加えるステップは、細胞サンプル中に本来存在する遺伝子によってコードされる試験分子の発現の誘導をさらに含む。 さらに、標的タンパク質が細胞内に存在する場合、上記方法において、標的タンパク質との接触のために、細胞外試験分子又はリガンドが細胞内に運ばれることが必要とされ得る。しかしながら、細胞表面上の標的タンパク質と結合する試験分子又はリガンドに関しては、細胞中への輸送は必要とされない。代替的又は追加的に、標的タンパク質が細胞内(又は細胞表面上)に存在する場合、溶解のステップを、試験分子若しくはリガンドを加える前、それと同時又はその後に実施することができる。このような溶解ステップは、標的タンパク質と試験分子若しくはリガンドとの間の接触、及び/又は、試験分子若しくはリガンドと標的タンパク質との間の任意の結合の後評価を可能にする。したがって、任意の必要な溶解ステップは一般に、本発明の方法の分離ステップの前に実施する。標的タンパク質が細胞内に含まれる場合、溶解のステップのみをサンプルに実施することが必要とされ得ることは明らかである。溶解ステップは熱依存性であり得る、すなわち溶解は特定温度、例えばサーマルサイクルの最後でのみ起こり得る。 本発明の溶解ステップは、任意の溶解ステップ前後に細胞に熱処理を施すかどうかに応じて、異なる要件を有する。熱処理前に溶解を施す細胞に関しては、溶解ステップは非変性で、標的タンパク質を天然型、すなわち正確にフォールディングされた状態又は天然型様形状に保持することが好ましい。これは本明細書中では天然型溶解(native lysis)と呼ぶ。これは化学的に、又は他の場合は、当技術分野でよく知られている試薬、例えば尿素、リゾチーム含有バッファー又は洗浄剤を使用して実施することができる。溶解の程度は、細胞のタンパク質を細胞外に自由に移動させる程度に十分でなければならない。典型的には、膜結合タンパク質を処理するとき、洗浄剤又は両親媒性化合物、例えばTriton X−100又はドデシルマルトシドの存在下で溶解を実施して、膜からタンパク質を切り離す。あるいは、溶解ステップは、細胞又はコロニーの凍結解凍によって実施することができる。より好ましくは、天然型溶解バッファーと細胞の凍結解凍との両方を使用して溶解を実施する。溶解バッファーは好ましくは例えば50〜750μg/ml、より好ましくは100〜200μg/mlのリゾチームを含有する。DNAseも、好ましくは例えば250〜750μg/mlで天然型溶解バッファーにおいて見ることができる。天然型溶解バッファーは、例えば20mMのトリス、pH8、100mMのNaCl、リゾチーム(200μg/ml)及びDNAseI(750μg/ml)を含有してもよい。細胞膜中に挿入されることが知られている標的タンパク質用に、1%n−ドデシル−β−マルトシド等の洗浄剤を、天然型の膜挿入タンパク質を可溶化することが知られている典型濃度で、溶解バッファーに加えることが可能である。典型的には、細胞は15〜60分間、好ましくは約30分間、溶解バッファーに曝す。凍結解凍のステップは反復することが好ましい、すなわち2サイクル以上、好ましくは3サイクル以上の凍結解凍を実施する。好ましい一実施形態では、溶解バッファーと室温で30分間のインキュベーション及び3×10分間の凍結解凍によって溶解を実施する。 典型的には、溶解ステップ中のサンプル内の溶解細胞(例えば、細胞コロニー又は細胞培養物)の割合は5〜100%である。したがって、溶解のステップを実施するとき、サンプル内の全ての細胞を溶解することは必要ではない。十分な標的タンパク質を切り離してリガンドと接触させる及び/又は分離ステップを施すために、わずかな割合の細胞のみを溶解することが必要である。 前で簡潔に論じたように、標的タンパク質を含むサンプル中に、試験分子又はリガンドが既に存在することが考えられる。この場合、例えばバッファーでサンプルを希釈すること、及びリガンド放出時に標的タンパク質の熱安定性の任意の負のシフトを検出することによって、標的タンパク質と天然リガンドとの結合を調べることが可能である。 本発明の方法は、「前記標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度」に、非精製サンプルを曝すことを必要とする。これは、試験分子(潜在的リガンド)の不在下で標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度を指す。同様に非精製サンプルは、「前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度」に曝す。「非結合」は、対象のリガンドと結合していないとき、すなわち対象のリガンドの不在下における標的タンパク質を指す。 したがって前に論じたように、本発明者らは、非精製型のタンパク質は一般に、非精製サンプル内及び特に細胞内で見られる様々な状態にもかかわらず、精製タンパク質と類似した形式で、(すなわち、異なる溶融温度を有する)特定温度依存性で沈殿することを発見している。したがってタンパク質は、狭い温度範囲で沈殿し得る。時折いくつかのタンパク質は、一定温度範囲で加熱中に、その状態の数回の遷移を経る可能性があり、サンプル中にいくつかの型のタンパク質が存在することを示す(例えば、異なるスプライシング型、リン酸化型、又は他のタンパク質と結合した)。この状況では、試験分子/リガンドは、全ての遷移状態で全ての型のタンパク質と結合するわけではないと考えられる。したがって試験分子又はリガンドは、1つ又は複数のその遷移状態でのみタンパク質と結合することができる。したがって、試験分子/リガンドはある特定の遷移状態又は型のタンパク質を熱的に安定化させることが単に可能であり、安定性のサーマルシフトはこれら遷移状態に関してのみ見られると考えられる。 標的タンパク質が狭い温度範囲で沈殿する場合、初期溶融温度はその範囲内の最初の温度であり、最終溶融温度はその範囲内の最後の温度である。したがって、初期溶融温度は標的タンパク質が沈殿し始める、例えば少なくとも5%の標的タンパク質が沈殿する最も低い温度であり、最終溶融温度は可溶性標的タンパク質が検出されない、例えば5%未満の標的タンパク質が可溶型である最初の温度である。典型的には、少なくとも95%の標的タンパク質が溶融し沈殿する。 したがって、標的タンパク質が一定温度範囲で沈殿するとき、標的タンパク質は、その時点で存在する可溶性標的タンパク質の量が減り始め、存在する不溶性標的タンパク質の量が増大する特定温度で(熱安定性は可溶性と関係があるので)、沈殿又はアンフォールディング状態になり始める可能性がある。したがって、その時点で可溶性タンパク質がほとんど又は全く検出可能でない若干高い温度を施すまで、初期溶融温度でいくつかの可溶性タンパク質は依然として検出可能であり得る。 したがって、タンパク質の最終溶融温度は、検出する可溶性タンパク質の顕著な減少がある、典型的には少なくとも95%のタンパク質が不溶性である特定温度である。多数回の遷移を有する問題のタンパク質に関して、これらの遷移の各々によって不溶性になる少量のタンパク質が生じる可能性はあるが、これは依然として測定するのに十分顕著であり得る(例えば、少なくとも10%のタンパク質が各々の遷移で可溶状態になる)。タンパク質が狭い温度範囲で沈殿する場合、可溶性タンパク質が検出可能ではなくなる、したがってタンパク質が完全にアンフォールディング又は沈殿状態になるまで可溶性タンパク質の割合が減少する場合、初期及び最終溶融温度を決定することができる。したがって、このような温度範囲の初期溶融温度、すなわち標的タンパク質が溶融又は沈殿し始める最も低い温度では、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%の標的タンパク質が溶融又は沈殿する可能性がある。もう1つの観点では、一定温度範囲の初期溶融温度では、検出する可溶性標的タンパク質の量は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%減少する。さらに、存在する不溶性標的タンパク質の量は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90又は95%増大する可能性がある。 1つの特定温度で、標的タンパク質がアンフォールディング及び沈殿状態になる可能性があることも考えられる。この場合、少なくとも95%の標的タンパク質が特定温度で不溶型であることが好ましく、したがってタンパク質は狭い温度範囲で沈殿しない可能性がある。したがって、このようなタンパク質の初期溶融温度は最終溶融温度に近い可能性がある。 本発明において施すことができる温度は、標的タンパク質がアンフォールディングし始める初期溶融温度からの任意の温度であってよい。初期溶融温度以上の任意の温度は、標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である。したがって、リガンド結合が原因で高い熱安定性を有する標的タンパク質は、この温度では一般にアンフォールディング又は沈殿状態ではなく、完全にアンフォールディング状態又はアンフォールディングし始めたいずれかの標的タンパク質単独と比較して、より多量の可溶性タンパク質が検出される。したがってこの温度は識別可能であり、対象のリガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である。 試験分子の不在時に存在する可溶性標的タンパク質の量と比較した、試験分子の存在時の特定温度での多量の可溶性標的タンパク質の検出は、分子が標的タンパク質のリガンドであること、及び試験分子が標的タンパク質と結合したことを示す。本発明中で使用する温度が初期溶融温度、又は初期溶融温度と最終溶融温度との間の温度である(すなわち、少なくとも95%の標的タンパク質が不溶であることにつながる温度(最終溶融温度又はこれより高い温度)ではない)場合、リガンドが存在しない標的タンパク質に関する対照反応を同時に実施して、両者で検出される可溶性タンパク質の量を比較すること、標的タンパク質単独と比較して多量の可溶性標的タンパク質が存在する場合、リガンドを含むサンプルを検出することが必要とされる可能性がある。これは典型的には、類似の非精製サンプルにおけるタンパク質の溶融曲線を測定することによって行う。しかしながら、可溶性標的タンパク質が全く検出されない又は非常にわずかな可溶性標的タンパク質(すなわち、リガンドを含まない標的タンパク質)が検出される温度、例えば最終溶融温度を本発明中で使用する場合、それぞれの測定に関する比較又は対照を使用する必要はない。この場合、方法中の可溶性タンパク質の任意の検出が、熱安定性の存在を示し、したがってリガンド結合した標的タンパク質の存在を示す。このような温度は、典型的には最終溶融温度以上であり得る。 さらに、高いアフィニティーで標的タンパク質と結合するリガンドのみをスクリーニングするための温度を、本発明中で選択することができる。したがって典型的には、可溶性タンパク質、したがって熱安定性リガンド結合標的タンパク質が検出される温度が高くなると、標的タンパク質とのリガンド結合のアフィニティーは高くなる可能性がある。したがって、高アフィニティー相互作用のみを検出することが必要とされる場合、最終溶融温度より高い温度、例えば最終溶融温度より3、4、5、6、7、8、9、10℃又はそれより高い温度を選択することができる。したがって、選択する温度は、一定温度範囲の最終溶融温度より高いことが好ましい。あるいは、標的タンパク質と結合した全ての分子/リガンドを同定することが望ましい場合、より低い温度、例えば一定範囲の初期溶融温度と等しい温度を使用することができる。もう1つの観点では、高アフィニティー相互作用を選択するとき、ステップ(a)の識別可能な温度は、それがリガンド結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させるよりはるかに高い程度、例えば少なくとも30%超、好ましくは少なくとも50%超、より好ましくは少なくとも60、70又は80%超に、非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させる温度である。 標的タンパク質とリガンドの結合アフィニティーは、様々なリガンド濃度又は標的タンパク質濃度の範囲で、前に記載した方法ステップの実施によって決定することができる。このような方法では、ステップ(a)で処理したサンプルに既知量の標的タンパク質又はリガンドを加える。用量応答曲線をプロットすることができ、したがってリガンドの結合定数(すなわち、半数の標的タンパク質がリガンドと結合するリガンド又は標的タンパク質の濃度)を決定することができる。臨床、不純サンプルで得られるこのような結合情報は、純サンプル由来の情報と比較して、生理条件下での標的タンパク質とリガンドとの結合特性のより正確な解釈をもたらし得る。このような情報には、患者に関する用量レジメンを設定するため、又は身体の異なる臓器における見かけの結合定数の研究によって薬剤に関する治療範囲を見つけるための、有用な適用例がある可能性がある。したがって、本発明のある特定の態様は、 d)1回又は複数回(例えば、2回以上、好ましくは3回又は4回又はそれより多く)異なる濃度のリガンド又は標的タンパク質でステップa)〜c)を反復する、さらなるステップも含むことができる。 特定温度までサンプルを加熱することができる任意の熱源を使用して、加熱ステップを実施することができる。したがって、非精製標的タンパク質及び試験分子(潜在的リガンド)が液体型である場合、PCR器機を使用して、加熱ステップを実施することができることがしたがって好ましい。しかしながら、インキュベーター、水浴等を使用することもできる。標的タンパク質が細胞コロニー中に存在する場合、インキュベーターを使用して加熱ステップを実施することが好ましい。 本発明は、一定範囲の温度を標的タンパク質と試験分子とに施すこと、及びそれぞれの温度でのインキュベーション後に標的タンパク質を処理し分析して、それぞれの標的タンパク質と試験分子との組合せに関する沈殿曲線を作成することをさらに包含する。したがって、標的タンパク質(すなわち、結合リガンドを含まない)の沈殿を発生又は増大させることが可能である1つの温度を使用する限り、任意の温度範囲で標的タンパク質とリガンドとをインキュベートすることができる。したがって好ましくは、適用する温度範囲は、初期溶融温度又は初期溶融温度より高い温度でのインキュベーションを含む。非精製標的タンパク質及び試験分子を全温度範囲でインキュベートすることによって、リガンド結合時に標的タンパク質が沈殿する温度を決定することができる。さらに、リガンドを含まない非精製サンプルの対照を同じ温度でのインキュベーションに曝す場合、標的タンパク質の溶融温度に関する事前の知識なしでリガンド結合タンパク質サンプルを同定することができる。対照の任意のこのような加熱は、非精製サンプル及び試験分子/リガンドの加熱と同時に実施することが好ましい。2つ以上のリガンドを調べるとき、沈殿曲線を使用することによって、熱安定性に対して最大効果があるリガンドを決定することもできる。 典型的には、使用する温度が互いに約2、3、4、5、6、7、8、9又は10℃異なる場合、1つの温度範囲を使用して沈殿曲線を作成することができる。したがって、温度の1つが標的タンパク質の初期溶融温度以上である限り、標的タンパク質と試験分子は27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72及び75℃のいずれか1つ又は複数でインキュベートすることができる。標的タンパク質と試験分子とを一定温度範囲で加熱する場合、これはPCR器機で実施することができ、この場合初期温度を設定し次いで特定量の時間、例えば1、2、3、4又は5分後に望ましい量増大することができる。前に論じたように、わずかなアリコート又は量のサンプル(例えば、1又は2μl)を各温度での加熱後に除去することができ、標的タンパク質の可溶性を分析することができる。非精製標的タンパク質が1つ又は複数の細胞コロニー中に存在する場合、コロニーの一部分は、例えばコロニーの上部にろ紙を置くことによって、各インキュベーション後に採取することができる。 本発明の方法を適用するため、試験分子/リガンドの存在下における任意のサーマルシフトを検出することができるように、試験分子/リガンドを含まない対象の標的タンパク質の溶融温度(複数可)を決定することが必要である。したがって、標的タンパク質の溶融温度(複数可)は本発明の方法を実施する前に決定することができ、又は本発明の方法と同時の対照反応を実施することができ、この場合一定範囲の温度を、例えば前に論じたように対照及び標的タンパク質及び分子に施して沈殿曲線を作成する。精製サンプル中の多くの標的タンパク質のTms(50%のタンパク質が沈殿する温度)も当技術分野では知られており、非精製標的タンパク質に関するTmsは若干異なるが、これらは非精製タンパク質の溶融温度に関する指標として頻繁に使用され得る。 したがって、標的タンパク質の「沈殿を発生又は増大させることが可能である温度」は、低温での標的タンパク質と比較して、標的タンパク質の沈殿又はもう1つの観点ではアンフォールディング又は溶融の増大がある、前に論じた温度又は温度範囲を指す。この温度は一般に、患者内の標的タンパク質に関して、標的タンパク質が通常見られる温度、例えば37℃と比較して高い温度である。したがって、適用する温度は典型的には37℃超、好ましくは40℃超、例えば50℃超である。 したがって、本発明において使用する温度は、少なくとも5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90又は95%、標的タンパク質の沈殿の増大を引き起こすことが好ましい。タンパク質沈殿の増大は不溶性タンパク質が生成する結果を通常もたらし、したがってもう1つの観点では、本発明において使用する温度は、存在する不溶性標的タンパク質の量の増大、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90又は95%の増大を引き起こす可能性がある。本発明において、存在する可溶性標的タンパク質の量の減少又は低減、例えば少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、50、60、70、80、90又は95%の低減を測定することによって、任意の沈殿の増大を測定することができる。この減少の測定は、例えばドット−ブロット又はELISA実験を使用して行うことが可能であり、この場合結合した抗体の量は、例えば蛍光標識抗体の蛍光シグナルの集積を使用して定量化することができる。 本発明の方法は、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するために、分離ステップ(b)の使用をさらに必要とする。分離ステップは、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離することが可能である任意の分離法を含むことができる。例えば、遠心分離のステップを前に記載したように、又は好ましい実施形態中で使用することができ、濾過のステップを使用することができる。したがって、フィルターを使用して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離することができ、この場合可溶性タンパク質はフィルターを通過する。標準的なフィルター膜を、加熱サンプルを濾過するのに使用することができ、この場合フィルターは典型的には0.015μm〜12μm、好ましくは0.35〜1.2μm、より好ましくは0.45μm〜0.8μmの孔径を有する。フィルターは、好ましくは4.0μm未満、典型的には2.0μm未満、より好ましくは1.0μm未満の孔径を有する。標的タンパク質が細菌、例えば大腸菌等の細胞中で産生又は発現されるとき、最適な孔径は0.1〜1.5μmであってよい。標的タンパク質が真核生物細胞又はサンプルに由来する場合、好ましい孔径はさらに大きくなり得る。特定孔径を有するフィルターが製造及び商品化されているが、製造プロセスは時折幾つかの小さい又は大きい孔径をもたらす可能性があり、直径を指す列挙する大きさは、したがって所与のフィルターの最も一般的な孔径であることは理解される。一定範囲の考えられる孔径を言及するが、任意のシングルフィルターは1つの指定孔径、例えば0.45μmを通常有する。適切なフィルターは、(Pallからの)Super and GH polypro及び(Whatmanからの)Nucleoporeである。 真核生物及び原核生物サンプル由来の標的タンパク質並びに異なる細胞型由来の標的タンパク質は、異なる孔径を有するフィルターの使用を必要とし得ることは理解される。適切なフィルターの選択は、十分に当業者の能力の範囲内にある。例えば、望ましい細胞型又はサンプル用に一組の試験タンパク質を使用すること、及び様々な孔径のフィルターを用いてそれらの挙動を調べることによって、適切な孔径を選択することができる。 前に論じたように、標的タンパク質が細胞内に存在する場合、分離ステップの前に細胞溶解のステップを実施することができる。サンプルが細胞サンプルであり、標的タンパク質を細胞サンプルに加えてリガンドの存在に関してアッセイするときも、細胞溶解は必要とされる。本発明の方法を細胞コロニーで実施するとき、溶解はこれらのコロニーで直接実施することができる。すなわち、コロニーを採取しそれらを液体培地中で増殖させる必要はない(ただし、これを実施することはできる)。この場合、分離ステップが濾過の1つであることが好ましい。さらに、本発明の方法を細胞コロニーで実施する場合、ろ紙(フィルター紙)でコロニーを覆い、半固体又は固体増殖培地からコロニーを採取することが好ましい。あるいは、フィルターを増殖培地及びフィルター上に直接接種された細胞上に置くことができ、次いでフィルターを、フィルター上に既に存在するコロニーから単に採取することが可能である。このようなコロニーの採取は、溶解ステップの前に実施可能であることが好ましい。前に示したように、溶解はフィルター上のコロニーで直接実施することができる。コロニーが接着したフィルターは溶解バッファーで処理することができ、溶解バッファーで処理した他の膜/フィルター上に載せることができる。 濾過は、細胞の液体培養物、例えばマルチウェルプレート、例えば96ウェルプレート中で増殖した液体培養物に実施することもできる。 任意の必要な溶解ステップを実施した後、濾過を実施する。しかしながら、幾つかの細胞は他の細胞の前に溶解する可能性があり、したがって他の細胞の溶解前又はそれと同時に濾過される可能性があるので、全コロニーを考慮したとき、濾過と溶解とは同時に起こる可能性があることは理解される。 好ましくは、分離ステップが濾過である場合、フィルターを通過するタンパク質は固体担体、例えば捕捉膜上に保持されて、標的タンパク質(複数可)のスクリーニング/検出を可能にし、したがってリガンドと結合した標的タンパク質を含有するサンプル(複数可)の同定を可能にする。このような捕捉膜は、ニトロセルロースを典型的には含むことができる。しかしながら、この方法中で不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するのは第一フィルターであることは理解される。好ましい実施形態では、おそらくキャピラリー作用の結果として、タンパク質は簡単にフィルターを通過させることが可能である。別の実施形態では、力をろ紙に垂直に加えることができ、このような力は圧力又は真空圧の施用を含むことができる。 捕捉膜は個体サンプル(複数可)由来の可溶性タンパク質を固定することができ、このようにして、この方法を多重化することができる。したがって、細胞コロニー、又はサンプルスポットで方法を実施する場合、捕捉膜上の標的タンパク質(複数可)の位置は原型細胞コロニーのいずれかを有するフィルターと比較することができる。したがって、濾過ブロットから、標的タンパク質及び結合リガンドを含む原型サンプルを追跡し同定することができる。リガンドと結合した標的タンパク質を含むコロニーを同定するプロセスに助力するため、陽性対照を使用することができる。これらは最終コロニー濾過ブロットにおいて明らかに見られ、膜/ブロットを原型コロニーに対して適切に配向化することができる。したがって、任意の濾過ステップを実施した後、捕捉膜等の固体担体は、リガンドと結合した標的タンパク質を有するサンプルの容易な同定を可能にする。 別の実施形態では、熱処理サンプル(複数可)を含むフィルターをサンプルが捕捉されている面が下になるように置くことができ、(ニトロセルロース)捕捉膜を次いでフィルターの上部に置くことができ、ろ紙(とペーパータオル)の数枚の層をこの上部に置くことができる。次いで力をこの「サンドウィッチ」の上部に施すことができ、底部周辺に注がれるバッファーを理想的に移動させて、捕捉膜へのタンパク質の濾過及び移動を容易にすることができる。 別の実施形態では、フィルターをサンプルが捕捉されている面が上になるように捕捉膜上に置き、真空圧を施し、フィルター紙を介して捕捉膜上にタンパク質を「引き出す」。 濾過及び遠心分離の代わりに、可溶性タンパク質のアフィニティー捕捉を実施することができる。タンパク質のフォールディング構造を認識する多くの抗体及びアフィニティー試薬は、アンフォールディング及び沈殿状態のタンパク質よりはるかに高いアフィニティーで可溶性タンパク質と結合する。金属複合体と結合するポリ−ヒスチジンタグ等の小さなタグの認識も、これらのタグが沈殿タンパク質中でのアクセス性が低いとき、可溶性と関係があることが多い。抗体、金属複合体及び他のアフィニティー試薬は、熱処理非精製サンプルと混合した磁気ビーズ又はカラム樹脂と結合させることが可能である。この混合物は後のステップにおいて適切なバルブで配置し、不溶性タンパク質がアフィニティー試薬に対して高いアフィニティーを有していないとき、洗浄して不溶性タンパク質を除去することができる。アフィニティー試薬と結合したタンパク質の量は、例えばブラッドフォードの技法、ゲル電気泳動、Elisa又は表面プラズモン共鳴による検出を使用して、後に測定することができる。 本発明の方法によれば、標的タンパク質の存在に関して不溶性画分又は可溶性画分の一方(又は両方)を分析することができる。例えば実施例3中に記載するように分析前に、不溶性画分を可溶化することが好ましく、沈殿したタンパク質は、分離ゲルに施す前にローディングバッファー中に溶かすことができる。本発明の方法は、標的タンパク質の存在に関して可溶性タンパク質を分析するステップ(c)を含むことが好ましい。したがって、分離のステップ後に得る可溶性タンパク質は、標的タンパク質の存在に関して分析することが好ましい。したがって、遠心分離による分離ステップを実施した場合、標的タンパク質の存在に関して上清を分析することができ、濾過による分離ステップを実施した場合、フィルターを通過するタンパク質、すなわち濾液を標的タンパク質の存在に関して分析することができる。 標的タンパク質は、様々な異なる方法によって検出することができる。したがって標的タンパク質は、当技術分野でよく知られている様々なタグ、例えばヒスチジンタグ、VSタグ、T7タグ、FLAGタグ、又は特異的抗体が利用可能である任意の短鎖タンパク質配列、チオレドキシン及びマルトース結合タンパク質を使用して検出することができる。タグは好ましくは1〜100アミノ酸長、好ましくは1〜70、2〜50、1〜30又は1〜20アミノ酸長である。より好ましくは、タグは3、4、5、6、7、8、9又は10アミノ酸長であってよい。しかしながら、標的タンパク質は、標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質のいかなる酵素活性に基づいても検出されない。したがって、例えば酵素活性が検出可能なシグナルの生成をもたらす、標的タンパク質と融合した任意のこのようなタグ又はタンパク質によって示される酵素活性を使用することで、標的タンパク質は検出されない。例えば、緑色蛍光タンパク質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ及びグルタチオン−S−トランスフェラーゼ等の酵素活性を有する融合タグは、本発明中では標的タンパク質の検出用に使用しない。したがって、任意のタグ/タンパク質を標的タンパク質と融合させることは可能であるが、任意のこのようなタグ又はタンパク質によって保持される酵素活性を使用することで、標的タンパク質は検出されない。したがってGFPタグの場合、緑色蛍光が酵素反応によって生じ、したがってこのような反応を使用して検出する標的タンパク質は、本発明においては特異的に除外される。したがって、GFPタグから生じる蛍光による標的タンパク質の検出は、このような蛍光がタグによって保持される酵素活性の結果であるので除外される。さらに、好ましい実施形態では、本発明の標的タンパク質は酵素活性を有するレポータータンパク質と融合させない。特に好ましい実施形態では、標的タンパク質はGFPと融合させない。したがってもう1つの観点では、標的タンパク質と融合した任意のタグは非タンパク質タグであることが好ましい。 標的タンパク質と融合したタグに関して、それは一般に単分子として標的タンパク質と共に転写及び翻訳される。したがって、標的タンパク質と結合し、HRP等で標識することができる抗体は、標的タンパク質と融合しているとは考えられない。このような場合、標的タンパク質はHRPタグを使用して検出することができる。HRPタグは、標的タンパク質との融合分子の一部分ではないからである。 したがって、融合タンパク質としてこのようなタンパク質を発現させることによって、タグを標的タンパク質と結合させることが可能である。このように、対象のタンパク質の天然様形状の維持を可能にするためには、短いタグが好ましい。さらに、C末端タグが好ましいが、N末端Hisタグも使用される。標的タンパク質と融合したタグの使用を含む検出ステップは、標的タンパク質が組換え発現系に由来する場合のみ使用することができることは理解される。したがって、一般にこの検出法は、例えば患者から標的タンパク質を得るときは使用されない。 標的タンパク質は、酵素検出法中で基質として働く融合タグによって、さらに検出することができる。Hisタグはこの点で特に適している。例えば、標的タンパク質がポリ−ヒスチジンタグ化状態又はヒスチジン多量状態のいずれかである場合、及び標的タンパク質がHisタグと結合したホースラディッシュペルオキシダーゼのニッケル活性化誘導体によって検出される場合、INDIA Hisプローブ−HRP(Pierre、Rockford IL、USA)を検出に使用することができる。標的タンパク質は、それら独自の酵素活性に基づいて検出することもできる。 あるいは、検出は、標的タンパク質と検出部分との間、又は標的タンパク質と融合したタグと、検出部分、例えば抗体、抗体断片若しくはアフィボディ(非抗体ベースのタンパク質結合パートナー)との間の、アフィニティー結合に基づくものであってよい。標的タンパク質は、タグを対象とするか又は(自力で発現するか又は融合体としての)標的タンパク質を直接対象とするいずれかの、抗体、モノクローナル又はポリクローナル抗体を使用して検出可能であることが好ましい。標的タンパク質を対象とする抗体を典型的には使用して、患者サンプルから標的タンパク質を検出する。このような方法は、それ自体は触媒活性を有さない標的タンパク質を含めた、広く様々な標的タンパク質の迅速で信頼できる分析を可能にする。 標的タンパク質は、半定量的質量分析法(MS)を使用して検出することもできる。オービトラップ型装置を使用するフーリエ変換型イオンサイクロトロン共鳴の実験では、典型的には1000〜2000のタンパク質を、溶解物由来のサンプル中で同時に検出することができる。好ましい実施形態では、細胞の温度スキャン、次に溶解、濾過、及び最終ステップ中では、スキャンの各温度での、質量分析法を使用した全ての残存可溶性タンパク質の検出によって、多くのタンパク質に関して平行して沈殿曲線を測定することができる。例えば、この包括的プロテオーム溶融曲線の分析を使用して、薬剤のいわゆるオフターゲット効果を検出すること、すなわち細胞内の他のどのタンパク質が薬剤と結合し得るかをモニタリングすることが可能である。その薬剤標的が知られていない薬剤又は薬剤候補に関する薬剤標的を検索するときも、この包括的プロテオーム溶融曲線の分析を使用することが可能である。例えば、細胞に施す化合物ライブラリーのスクリーニングは、これらの細胞において好ましい表現型をもたらす化合物を同定することができ、ある特定疾患の薬剤標的として有用である細胞中のプロセスに化合物が影響を与えることを示す。しかしながら、細胞中のどのタンパク質(複数可)と薬剤候補とが相互作用するか確認することは、通常は非常に課題が多い。サーマルシフト変化に関する包括的プロテオーム溶融曲線の分析によって、MSによって検出するのに十分なレベルで利用可能なタンパク質に関してこれを実施することができる。 標的タンパク質と分子/リガンドの結合は組換え発現系で調べることができる。したがって、標的タンパク質に関する遺伝子/cDNA/コード領域を、プラスミド、ウイルスベクター、コスミド及びYACS等のベクター/構築物において、発現系に形質転換又はトランスフェクトすることができる。このようなベクターは、当技術分野でよく知られている制御配列及び他のエレメントを含有することができる。例えば、遺伝子/cDNA/コード領域は、ベクター中のプロモーターの制御下に置かれ得る。使用するプロモーターは一般に、特定宿主内で標的タンパク質を発現させることが可能である。具体的な実施形態では、使用するプロモーターは誘導性である、すなわち標的タンパク質の発現を制御することができる。このような誘導性のプロモーター/系には、発現の誘導がIPTG及びtetの添加によってオン/オフ制御され、発現の誘導がテトラサイクリンの有無によって制御されるlacがあり、他のプロモーター/系は当技術分野で知られている。 前に記載したように、本発明の方法を使用して、標的タンパク質と結合する分子に関して低分子のライブラリーをスクリーニングすることができる。好ましい実施形態では、これはマルチウェルプレートを使用して実施し、この場合それぞれの化合物ライブラリーを細胞、又は細胞溶解物のアリコートに加える。あるいは、突然変異標的タンパク質のライブラリーをスクリーニングして、特定リガンドとの改変型結合を示す突然変異標的タンパク質を決定することができる。例えば、野生型標的タンパク質よりリガンドとの綿密又は固い結合を有する、突然変異標的タンパク質を同定することができる。突然変異標的タンパク質を評価する場合、リガンドを含まないタンパク質の安定性の測定は、安定化がリガンドの相互作用によるものか、又は突然変異体自体がより安定している、すなわち突然変異が突然変異タンパク質に対して安定効果を有することによるものなのかを決定するのに望ましい。リガンドが別のタンパク質である場合、安定性の測定をこの非突然変異タンパク質に代わりに実施することが可能であり、非突然変異タンパク質を安定化する突然変異タンパク質の変異体を選択することができる。例えば、これを使用して、例えば抗体、FAB−断片、単鎖抗体又はアフィボディ等の結合タンパク質(すなわち、リガンド)を成熟状態にすることが可能であり、この場合ランダムな突然変異を結合タンパク質に加え、明らかに改善された結合を有する変異体を、非突然変異タンパク質の改善された安定性を測定することによって検出する。このような方法では、高いアフィニティーの結合剤を低いアフィニティーの結合剤から選択することが可能である。結合タンパク質が例えば、特異的受容体又はサイトカインを対象とするタンパク質薬剤として働き得るとき、この方法を使用して、タンパク質薬剤の薬剤標的と、このような結合剤とのアフィニティーを改善することが可能である。 標的タンパク質の変異体又は標的タンパク質変異体のライブラリーを作製するために利用することが可能である、多くの異なる突然変異誘発法が当技術分野で知られている。考えられる手順には、配列の切断、エキソヌクレアーゼ酵素の使用、例えばエラープローンPCRを使用したランダム部位突然変異の導入、ランダムカセット又は部位特異的突然変異誘発の導入がある。切断に関して、除去されるヌクレオチドの数は2000未満、好ましくは1000未満、及びより好ましくは800未満であってよい。突然変異誘発のためのランダムカセットの導入は、100未満のヌクレオチドを含有するカセットを使用することが好ましい。 一組の異なる突然変異配列をスクリーニングし、それによって望ましいリガンド結合性を有する標的タンパク質変異体を同定する確率を高めることができるように、突然変異誘発を、標的タンパク質をコードする核酸配列の数コピーに実施することができる。どの特定突然変異が、例えばより強くリガンドと結合する、すなわちリガンドに対して高いアフィニティーを有する変異体を生成し得るかに関する事前の知識がない場合、ランダム突然変異誘発の使用が特に好ましい。 コード領域がランダムに突然変異誘発されている場合、及び異なる長さの構築物が塩基削除又はランダムプライミング反応によって生成している場合、タンパク質のライブラリーを作製することができる。 したがって、本発明の方法を使用して、改変されており好ましくはリガンドに対して増大した又は高いアフィニティー結合を有する、標的タンパク質変異体を検出することができる。さらに、本発明の方法を使用して、細胞培養物又は患者サンプル中の標的タンパク質が、特定試験分子、例えば薬剤と相互作用するかどうかを決定することができる。したがって、本発明の方法の好ましい使用は、この細胞型で薬剤が標的タンパク質と結合することを確認するための薬剤開発サイクル中に、細胞培養における薬剤とタンパク質の相互作用を決定することである。同様に、本発明の方法を使用して、望ましくないタンパク質と薬剤との結合、いわゆるオフターゲット結合をモニタリングすることができる。本発明の方法の別の好ましい使用は、患者サンプル(例えば組織、血液、リンパ等)における薬剤とタンパク質との相互作用を決定すること、特定薬剤療法がその患者に有効であり得るかに関する指標を与えることである。組織サンプルを調べる場合、したがって本発明の方法は、組織から標的タンパク質を抽出するステップを組み込むこともできる。追加的又は代替的に、溶解のステップを使用することができる。適切な溶解条件は前に記載されている。 標的タンパク質とリガンドとの相互作用を、本発明の方法を使用して非精製サンプルにおいて検出した後、特に標的タンパク質の変異体を調べている場合、標的タンパク質の配列又は構造を同定することは望ましい可能性がある。あるいは、前に論じたように、得られた結果を使用して、薬剤療法が患者において有効であり得るかを決定し、したがって患者に施す療法を調整することができる。 例えば実施例4、5、6及び7中に示す既知の薬剤標的と高アフィニティー薬剤との結合は典型的には、高温への溶融温度の正のシフトによって支持される、標的タンパク質の安定化をもたらす。しかしながら、標的タンパク質との結合時に、低温への溶融温度の負のシフト、すなわち不安定化を引き起こすリガンドも存在する。例えば、(幾つかの金属を含めた)標的タンパク質と共有型結合を形成するリガンドに関して、負のシフトが見られる可能性がある。共有結合の結合エネルギー、及びこのような結合の形成によって生じるエネルギー学上好ましくない歪みは、幾つかの場合、タンパク質の不安定化を助長する可能性があると推測される。例えば、Ericssonら(Anal Biochem357(2006)289〜298頁)は、塩化ルテニウム(III)六水和物等の重金属原子を含有する化合物は、結合時に幾つかの細菌タンパク質を不安定化する可能性があることを示す。 したがって、さらなる態様において、本発明は、非精製サンプルが、対象のリガンドと結合した標的タンパク質を含有するかどうか決定する方法であって、前記リガンドが融合タンパク質ではなく、 a)非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に前記非精製サンプルを曝すステップ、 b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない、方法を提供する。 本発明のさらに別の態様は、非精製サンプルが、対象のリガンドと結合した標的タンパク質を含有するかどうか決定する方法であって、 a)非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に前記非精製サンプルを曝すステップ、 b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法を提供する。 前述の態様では、リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に非精製サンプルを曝すことが可能である。不安定状態のリガンドと結合した標的タンパク質は、非結合標的タンパク質と比較して低温で沈殿し得るからである。したがって、ステップa)中に記載したのと異なる温度では、不溶性タンパク質画分中により多くの結合タンパク質、及び可溶性タンパク質画分中により多くの非結合タンパク質が見られると予想される。 リガンド結合によって引き起こされる安定化に関して言及する、本発明の方法及び好ましい実施形態の様々な特徴の考察は、必要な変更を加えて、リガンド結合が不安定化を引き起こす本発明のこれらの態様に適用する。 幾つかの場合、リガンドをサンプルに加える前でさえ標的タンパク質と結合する、細胞溶解物中に存在するATP又はNADP等の、生理的基質又は補助因子が存在し得る。対象のリガンドをこのような溶解物に加えるとき、生理的リガンドが溶解物中に存在しないケースと比較して、高温への溶融曲線のシフトは典型的には小さい。極端なケースでは、初期薬剤リード化合物候補等の(わずかな正のサーマルシフトを典型的にもたらす)非常に低いアフィニティーのリガンドは、非常に高い濃度で、NADP等の(大きな正のサーマルシフトを典型的にもたらす)より強力な生理的リガンドと競合し得る。生理的リガンドの置換は、このようなケースでは、負のシフト、すなわち低い溶融温度へのシフトをもたらす可能性があり、このとき外見上のシフトは、2つのリガンド結合型タンパク質のシフト間の差である。このような状況下では、負のシフトは標的タンパク質の溶融温度の低下として検出可能であるので、不安定化を引き起こすリガンドに関する本発明の態様はここで適用可能である。 本発明は、本発明の方法中で使用するための器具をさらに包含し、前記器具は加熱手段、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段、及び標的タンパク質の存在に関してタンパク質を分析するため、例えば適切なタンパク質を分析するための手段を含む。 もう1つの観点では、加熱手段、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段、及び標的タンパク質の存在に関して(例えば可溶性)タンパク質を分析するための手段を含む、本発明の方法を実施するための使用に構成された器具が包含される。 さらに本発明は、本発明の方法中での、加熱手段、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段、及び標的タンパク質の存在に関して(例えば可溶性)タンパク質を分析するための手段を含む器具の使用を対象とする。 サンプルが最初に加熱手段、次いで分離手段、及び最後に分析手段と接触するように、器具を配置する。 本明細書中で使用する場合、用語「加熱手段」は、特定温度までサンプルを加熱することができる任意の熱源を指す。したがって加熱手段は、特定温度までサンプルを加熱するようプログラムすることができるホットプレートからなる、又はホットプレートを含むことができ、例えばPCR器機を使用して、サンプルをこのように加熱することができる。さらに、加熱手段はインキュベーター又は水浴を含むことが可能である。 用語「不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段」は、可溶性タンパク質と不溶性タンパク質とを分離することができる任意の知られている装置を指す。したがって、この手段はろ紙を含むことができ、この場合可溶性タンパク質はろ紙を通過する。あるいは、この手段は、加熱サンプルに遠心力を与えることができる装置、例えば遠心分離機を含むことができる。さらに、この手段は、可溶性タンパク質をアフィニティー捕捉することができる装置を含むことができる。このような装置は、可溶性タンパク質のフォールディング構造を認識することができる、抗体又は他のアフィニティー試薬を含むことができる。抗体、金属複合体又は他のアフィニティー試薬を、磁気ビーズ又はカラム樹脂と結合させることが可能である。不溶性タンパク質は洗浄によって除去することができる。 本明細書中で使用する場合、用語「標的タンパク質の存在に関して(例えば可溶性)タンパク質を分析するための手段」は、標的タンパク質を検出することが可能である任意の装置を指す。したがって、この用語は質量分析装置を指すことが可能であるが、より好ましくは、例えば、標的タンパク質と結合したHRP又は蛍光分子で標識した抗体を検出するのに必要とされる装置(すなわち、ニトロセルロース膜又は蛍光測定装置)を指すことができる。さらに、標的タンパク質の存在に関してタンパク質を分析するための手段は、標的タンパク質との結合用のアフィニティーカラムを含むことができる。標的タンパク質の存在に関してタンパク質を分析するための手段は、標的タンパク質を検出するのに必要な任意の試薬をさらに含むことができ、又は代替的に、これらは別々に提供することができる。 最後に本発明は、本発明の方法中での抗体及び/又は非タンパク質タグを含むキットの使用を包含する。 ここで本発明を、以下の非制限的な実施例中にさらに記載する。一定範囲の異なる温度への露出後に、大腸菌サンプル中で発現された3つの異なるタンパク質に関して、可溶性タンパク質の存在の評価を示す図である。知られている精製タンパク質の溶融温度を、この図の右手側に示す。リガンドボルトマニン及び3−[4−(4−モルホリニリル)チエノ[3,2−d]ピリミジン−2−イル]−フェノール(化合物15e)(+)を加えた後の、可溶性PIK3C3−タンパク質の存在の評価を示す図である。リガンドを加えない参照サンプルも示す(−)。リガンドを含むサンプルにおいてサーマルシフトを見ることができる。タンパク質及びリガンドを含むレーンは、リガンドを含まないサンプルより熱的に安定している。標的サイクリン依存性キナーゼ−2(CDK−2)(a)及びタンパク質キナーゼC(PKC)(b)のウエスタンブロット用膜を示す図である。黒いバンドは、可溶性タンパク質の存在は特定温度まで検出され、かすかな状態になり、最終的には温度が上昇すると消失することを示す(左から右)。最高温度から沈殿したタンパク質を含有するペレットはローディングバッファーに溶かし、ゲルの最終レーンに載せて、この画分中の標的タンパク質の存在を示した。哺乳動物細胞抽出物における、一定範囲の異なる温度への露出後に存在した、可溶性チミジレートシンターゼ(TS)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、CDK−2又はPKCタンパク質のレベルを示す図である。X軸は露出温度(℃)を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。阻害剤メトトレキサート(菱形印)を加えた後の、ヒト細胞抽出物由来の可溶性DHFRタンパク質の熱溶融曲線を示す図である。阻害剤を含まない参照サンプルも示す(四角印)。X軸は露出温度(℃)を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。阻害剤ラルチトレキセド(+)を加えた後の、ヒト細胞抽出物由来の可溶性TSタンパク質の熱溶融曲線を示す図である。阻害剤を含まない参照サンプルも示す(黒丸印)。X軸は露出温度(℃)を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。リガンドTNP−470(バツ印)を加えた後の、ウシ肝臓抽出物由来(a)又はヒト細胞抽出物由来(b)のいずれかの、可溶性メチオニン−アミノペプチダーゼ−2の熱溶融曲線を示す図である。リガンドを含まない参照サンプルも示す(白丸印)。X軸は露出温度(℃)を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。ウシ肝臓抽出物のTNP−470処理の用量応答曲線を示す図である。X軸は加えたTNP−470の濃度を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。標的タンパク質を含有する細胞溶解物をスパイクすることによって作製したTNP−470の用量応答曲線を示す図である。X軸は加えたTNP−470の濃度を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。リガンドSB590885を加えた後の、可溶性V600E変異体B−rafタンパク質(菱形印)又は野生型B−rafタンパク質(三角印)のいずれかの熱溶融曲線を示す図である。V600E変異体B−rafタンパク質(四角印)と野生型B−rafタンパク質(バツ印)の両方に関して、リガンドを含まない参照サンプルも示す。X軸は露出温度(℃)を表し、Y軸はウエスタンブロットからの集積強度を表す。実施例1−4つの試験タンパク質の溶融温度の決定 N末端ヒスタグを有する発現ベクターにおける3つのヒト可溶性タンパク質発現構築物を使用して、細胞中の各タンパク質の溶融温度を決定した。これは、タンパク質含有細胞を一連の高温に曝し、それぞれの温度ステップ後、溶解バッファーに浸した「溶解/濾過サンドウィッチ」に細胞をスポッティングすることによって行った。この溶解/濾過ステップを使用することによって、(そのタンパク質の特異的溶融温度まで)可溶性タンパク質を黒いスポットとして捕捉ニトロセルロース膜で検出することができ、一方沈殿タンパク質は(すなわち、その特異的溶融温度を超えた温度で)フィルター膜を通過することができず、したがって検出することができなかった。 材料及び方法 対象の3つのタンパク質を過剰発現する大腸菌細胞の液体培養を、96ウェルディープウェルプレート(Porvair Plc、UK)中の、50μg/mlのカナマイシン(Sigma−Aldrich Co、USA)及び35μg/mlのクロラムフェニコール(Duchefa Biochemie、オランダ)及びグリセロールストック由来の凍結大腸菌を含有する1mlのLuria−Bertaniブロス(LB)(Formedium Ltd、UK)に接種することによって開始した。培養物は撹拌ボードにおいて一晩、700rpm及び+37℃でインキュベートした。翌日、100μlの各一晩培養物を、900μlのLB、50μg/mlのカナマイシン、及び35μg/mlのクロラムフェニコールを含有する新たな96ウェルディープウェルプレートの対応するウェルに移した。培養物は撹拌ボードにおいて、700rpm及び+37℃でインキュベートした。1.5時間後、温度を+18℃に下げ(30分)、100mMのIPTG(Anatrace/Affymetrix Co、USA)を加えることによってタンパク質の発現を誘導した。700rpm及び+18℃で撹拌ボードにおいて、一晩細胞を増殖させた。翌日1500gで2分間の遠心分離によって細胞をペレット状にし、900μlの上清を吸引によってそれぞれのウェルから除去し廃棄した。細胞ペレットは、残存100μl培地(すなわち10倍濃縮)中に再縣濁した。細胞縣濁液は8チューブPCRストリップ(Applied Biosystems、UK)に移し、サーモサイクラー中に置いた。以下の温度プログラムを使用した。それぞれのステップで+27℃〜+75℃、3℃増分、及び3分間保持。それぞれの温度で3分間保持した後、サーモサイクラーを止め、2μlのそれぞれの細胞縣濁液を、0.45μmの孔径を有するDuraporeフィルター膜(Millipore Inc、USA)(上部層)、Protran BA45ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、ドイツ)(中間層)、及び3MM Whatman紙(VWR Int’l.Ltd、UK)からなる「溶解/濾過サンドウィッチ」に直ぐにスポッティングした。「溶解/濾過サンドウィッチ」は、天然型溶解バッファー(20mMのトリス−HCl pH8.0、100mMのNaCl、10mg/mlのライソザイム(Sigma−Aldrich Co、USA)、25U/μlのベンゾナーゼヌクレアーゼ(Novagen、デンマーク)及び完全プロテアーゼ阻害剤EDTA無含有錠剤(Roche、スイス)中に浸した。「溶解/濾過サンドウィッチ」に細胞をスポッティングした後、前述の手順をそれぞれの温度ステップで繰り返した。最後の細胞アリコートをスポッティングした後、「溶解/濾過サンドウィッチ」を室温で15分間インキュベートして、完全溶解バッファー及び液状細胞物質をフィルター膜に移した。その後「溶解/濾過サンドウィッチ」を10分間−80℃に凍結し、次いで+37℃で10分間解凍した。この凍結/解凍手順は3回繰り返した。ニトロセルロース膜は、1%BSA(VWR Int’l.Ltd、UK)を含有するTBSTバッファー(20mMのトリス−HCl pH7.5、500mMのNaCl、0.05%のTween−20)中で1時間ブロッキングした。次いでブロットを、ある程度撹拌しながら(卓上型振とう機)TBST中で10分間3回洗浄した。TBST中に1:5000希釈したINDIA HisProbe−HRP(Thermo Scientific、USA)と共に、1時間膜をインキュベートした。次いでブロットを、TBST中で10分間3回洗浄した。ブロット上の各スポットにおける標的タンパク質発現レベルの化学発光の検出は、SuperSignal West Dura(Pierce)Extended Duration Substrate(Thermo Scientific、USA)を使用して実施した。化学発光を検出し、CCDカメラ(BioRad Laboratories、Inc、USA)を使用して記録した。 結果 可溶性タンパク質の存在を示す黒いスポットを特定温度まで検出し、それらはかすかな状態になり、最終的には高温で消失した(図1)。3個のIMAC精製タンパク質の溶融温度に関する以前のデータとの比較(右図)は、2組の結果の間の十分な相関関係を示した。溶融点が正確であるとは予想されない。タンパク質は、細胞中及び精製バッファー中で異なる溶媒環境を有するからである。この実験は、これらのタンパク質は細胞環境中で異なる溶融点を有すること、及びタンパク質の沈殿をモニタリングすることによって、これらの溶融点を容易に検出することができることを示す。実施例2−リガンドとの結合後の溶融温度の上昇の検出。 N末端ヒスタグを有する発現ベクターにおけるヒト可溶性PIK3C3タンパク質の発現構築物を使用して、2つのPIK3C3特異的阻害剤、ボルトマニン及び化合物15eの一方の添加及び結合後、PIK3C3構築物の溶融温度の上昇の可能性を調べた。2つの阻害剤の一方を用いたか又は用いない処理後、PIK3C3構築物を発現する細胞を一連の高温に曝し、それぞれの温度ステップ後、これらのタンパク質を発現した細胞は、溶解バッファーに浸した「溶解/濾過サンドウィッチ」にスポッティングした。この溶解/濾過ステップを「溶解/濾過サンドウィッチ」において使用することによって、(その構築物の特異的溶融温度まで)可溶性タンパク質を黒いスポットとして捕捉ニトロセルロース膜で検出することができ、一方沈殿タンパク質は(すなわち、その特異的溶融温度を超えた温度で)フィルター膜を通過することができず、したがって検出することができなかった。化合物15e又はボルトマニンで処理した構築物の溶融温度は、未処理サンプルの溶融温度と比較した。 材料及び方法 PIK3C3構築物を過剰発現する大腸菌細胞の液体培養を、96ウェルディープウェルプレート(Porvair Plc、UK)中の、50μg/mlのカナマイシン(Sigma−Aldrich Co、USA)及び35μg/mlのクロラムフェニコール(Duchefa Biochemie、オランダ)及びグリセロールストック由来の凍結大腸菌を含有する1mlのLuria−Bertaniブロス(LB)(Formedium Ltd、UK)に接種することによって開始した。培養物は撹拌ボードにおいて一晩、700rpm及び+37℃でインキュベートした。翌日、100μlの各一晩培養物を、900μlのLB、50μg/mlのカナマイシン、及び35μg/mlのクロラムフェニコールを含有する新たな96ウェルディープウェルプレートの対応するウェルに移した。培養物は撹拌ボードにおいて、700rpm及び+37℃でインキュベートした。1.5時間後、温度を+18℃に下げ(30分)、100mMのIPTG(Anatrace/Affymetrix Co、USA)を加えることによってタンパク質の発現を誘導した。700rpm及び+18℃で撹拌ボードにおいて、一晩細胞を増殖させた。翌日1500gで2分間の遠心分離によって細胞をペレット状にし、900μlの上清を吸引によってそれぞれのウェルから除去し廃棄した。細胞ペレットは、残存100μl培地(すなわち10倍濃縮)中に再縣濁した。それぞれの実験用に、DMSO(Sigma−Aldrich Co、USA)中に溶かした1mMのPIK3C3阻害剤化合物15e(Santa Cruz Biotechnology、Inc、USA)若しくは500μMのボルトマニン(Santa Cruz Biotechnology、Inc、USA)、又は等体積(それぞれ1μl及び0.5μl)の純DMSOを加え、サンプルは室温で30分間軽く撹拌した。細胞縣濁液は8チューブPCRストリップ(Applied Biosystems、UK)に移し、サーモサイクラー中に置いた。以下の温度プログラムを使用した。それぞれのステップで+27℃〜+75℃、3℃増分、及び3分間保持。それぞれの温度で3分間保持した後、サーモサイクラーを止め、2μlのそれぞれの細胞縣濁液を、0.45μmの孔径を有するDuraporeフィルター膜(Millipore Inc、USA)(上部層)、Protran BA45ニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell、ドイツ)(中間層)、及び3MM Whatman紙(VWR Int’l.Ltd、UK)からなる「溶解/濾過サンドウィッチ」に直ぐにスポッティングした。「溶解/濾過サンドウィッチ」は、天然型溶解バッファー(20mMのトリス−HCl pH8.0、100mMのNaCl、10mg/mlのライソザイム(Sigma−Aldrich Co、USA)、25U/μlのベンゾナーゼヌクレアーゼ(Novagen、デンマーク)及び完全プロテアーゼ阻害剤EDTA無含有錠剤(Roche、スイス)中に浸した。「溶解/濾過サンドウィッチ」に細胞をスポッティングした後、前述の手順をそれぞれの温度ステップで繰り返した。最後の細胞アリコートをスポッティングした後、「溶解/濾過サンドウィッチ」を室温で15分間インキュベートして、完全溶解バッファー及び液状細胞物質をフィルター膜に移した。その後「溶解/濾過サンドウィッチ」を10分間−80℃に凍結し、次いで+37℃で10分間解凍した。この凍結/解凍手順は3回繰り返した。ニトロセルロース膜は、1%BSA(VWR Int’l.Ltd、UK)を含有するTBSTバッファー(20mMのトリス−HCl pH7.5、500mMのNaCl、0.05%のTween−20)中で1時間ブロッキングした。次いでブロットを、ある程度撹拌しながら(卓上型振とう機)TBST中で10分間3回洗浄した。TBST中に1:5000希釈したINDIA HisProbe−HRP(Thermo Scientific、USA)と共に、1時間膜をインキュベートした。次いでブロットを、TBST中で10分間3回洗浄した。ブロット上の各スポットにおける標的タンパク質発現レベルの化学発光の検出は、SuperSignal West Dura(Pierce)Extended Duration Substrate(Thermo Scientific、USA)を使用して実施した。化学発光を検出し、CCDカメラ(BioRad Laboratories、Inc、USA)を使用して記録した。 結果 可溶性タンパク質の存在を示す黒いスポットを特定温度まで検出し、その温度を超えるとスポットはもはや目に見えなくなった(図2)。化合物15eの添加は約+55℃〜+58℃の溶融温度の上昇をもたらし、一方ボルトマニンの添加は約+55℃と+65℃との間の溶融温度の上昇をもたらした。化合物15e又はボルトマニンの添加有り又は無しでの、IMAC精製PIK3C3構築物の溶融温度に関する以前のデータとの比較は、2組の結果の間の十分な相関関係を示した。この実験は、2つのPIK3C3阻害剤ボルトマニンと化合物15eとの一方の添加及び結合後に、細胞環境中でPIK3C3構築物の溶融温度の上昇を検出することができることを示す。実施例3−哺乳動物細胞系における4つの試験タンパク質の溶融温度の決定 4つのタンパク質の溶融温度を決定するため、溶解物を培養哺乳動物細胞から調製し、一連の高温に曝した。温度ステップ後、沈殿したタンパク質を除去し、(すなわち、タンパク質の特異的溶融温度まで)検出する可溶性タンパク質のみを残した。 材料及び方法 溶解物を培養ヒト腺癌細胞(A549)から調製した。細胞は氷上ハイポトニックバッファー中で破壊し均質化した。縣濁液は多数回凍結−解凍し、全ての不溶性凝集体及び細胞残骸を、溶解終了後に遠心分離によってペレット状にした。光学的に透明なサイトゾル画分を含有する上清を8チューブPCRストリップに等分し、一連の高温に曝した。3分間の加熱後、サンプルを冷却し、沈殿したタンパク質は遠心分離によってペレット状にした。可溶性タンパク質を含有する上清は分離ゲル上に載せた。さらに、最高温度から沈殿したタンパク質を含有するペレットはローディングバッファーに溶かし、ゲルの最終レーンに載せて、この画分中のタンパク質の存在を示した。ゲルはウエスタンブロット用ニトロセルロース膜でブロッティングした。膜を洗浄しブロッキング試薬でブロッキングし、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、チミジレートシンターゼ(TS)、サイクリン依存性キナーゼ−2(CDK−2)及びタンパク質キナーゼC(PKC)に対する一次抗体でプローブ処理した。二次抗体を結合させ、結合した二次抗体からのシグナルは化学発光によって検出し、CCDカメラで記録した。強度を測定しプロットした。 結果 可溶性タンパク質の存在を示す黒いスポットを特定温度まで検出し、それらはかすかな状態になり、最終的には高温で消失した(図3)。この実験は、これらのタンパク質は細胞環境中で異なる溶融点及び挙動を有すること、並びにタンパク質の沈殿をモニタリングすることによって、これらの溶融点を容易に検出することができることを示す(図4)。実施例4−哺乳動物細胞におけるリガンドとの結合後の溶融温度の上昇の検出。 阻害剤の添加及び結合後の溶融温度の上昇又は低下の可能性を調べるため、タンパク質ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)及びチミジレートシンターゼ(TS)を培養哺乳動物細胞において試験した。 培養腺癌細胞由来の溶解物を2つの阻害剤、ラルチトレキセド又はメトトレキサートの1つで処理し、メトトレキサートの考えられる安定又は不安定効果はDHFRに関して分析し、ラルチトレキセドはTSに関して分析した。阻害剤有り又は無しで処理した後、サンプルを加熱ステップに施し、次に沈殿したタンパク質を除去した。処理サンプルの溶融温度は、未処理サンプルの溶融温度と比較した。 材料及び方法 溶解物を培養ヒト腺癌細胞(A549)から調製した。細胞は氷上ハイポトニックバッファー中で破壊し均質化した。縣濁液は多数回凍結−解凍し、全ての不溶性凝集体及び細胞残骸を、溶解終了後に遠心分離によってペレット状にした。光学的に透明なサイトゾル画分を含有する上清は4つのアリコートに分け、2つのアリコートには、そのそれぞれのリガンド及び1つの対応する陰性対照を補充した。加えたリガンドの濃度は、薬剤/標的相互作用に関して記載したIC50値の10倍であった。それぞれのリガンドはDMSO中に溶かし、最終濃度は1%に設定した。 インキュベーション後、それぞれのアリコートは8チューブPCRストリップに分け、DHFRに関して+36℃〜60℃、及びTSに関して+51℃〜+69℃の範囲の一連の温度に曝した(実施例3からの溶融曲線によって示される)。3分間の加熱後、沈殿したタンパク質は遠心分離によってペレット状にした。生成した上清は分離ゲル上に載せ、ウエスタンブロット用ニトロセルロース膜に移した。膜のブロッキング後、膜は一次抗体及び二次抗体でプローブ処理した。結合した二次抗体からのシグナルは化学発光によって検出し、CCDカメラで記録した。リガンド処理後、強度をプロットして溶融温度の変化を目に見える状態にした。 結果 メトトレキサート又はラルチトレキセドの添加は溶融温度の上昇をもたらした(図5及び6)。この実験は、それぞれの阻害剤メトトレキサート及びラルチトレキセドの添加及び結合後、細胞環境中でDHFR又はTSの溶融温度の上昇を検出することができることを示す。実施例5−リガンド結合による溶融温度の変化を決定するために、異なる細胞系及び生物において研究した細胞のサーマルシフト 異なる系におけるリガンド結合の影響を研究するため、抗血管新生薬であるリガンドTNP−470の添加による、タンパク質メチオニン−アミノペプチダーゼ−2に対して安定又は不安定効果の可能性を決定した。研究は2つの異なる系由来の細胞:a)TNP−470とインキュベートした完全ウシ肝臓生検、及びb)TNP−470とインキュベートしたヒト培養細胞に行った。全てのサンプルは、TNP−470に曝さなかった参照サンプルと比較した。阻害剤有り又は無しの処理後に、サンプルを調製し一連の高温に曝した。沈殿したタンパク質画分は遠心分離によってペレット状にし、それぞれの温度ステップからの上清はゲルにおいてウエスタンブロットによって分析した。TNP−470で処理したタンパク質の溶融融温度は、未処理サンプルの溶融温度と比較した。 材料及び方法 溶解物を培養ヒト細胞(K562)及びウシ肝臓サンプルに関して調製し、これらを氷上ハイポトニックバッファー中で破壊し均質化した。縣濁液は多数回凍結−解凍し、全ての不溶性凝集体及び細胞残骸を、溶解終了後に遠心分離によってペレット状にした。各細胞型の溶解物を2つのアリコートに分け、1つには(純DMSOに溶かした)TNP−470を補充し、もう1つには等体積の純DMSOを補充した。室温でのインキュベーション後、サンプルは8チューブPCRストリップにおいて50マイクロリットルの画分に分け、その後Veritiサーモサイクラー中に置いた。 次に、それぞれのステップで+56℃と+88℃との間の範囲、2又は4℃増分、及び3分間保持で、一連の温度を異なるサンプルに施した。加熱後、サンプルを冷却し、沈殿したタンパク質は遠心分離によってペレット状にした。20マイクロリットルの各上清を除去し、ゲルローディングバッファーを補充し、加熱によって完全に変性させた。サンプルは分離ゲル上に載せ、全泳動時間経過後ニトロセルロース膜にブロッティングした。膜を洗浄し、ブロッキング試薬でブロッキングし、一次抗体及び二次抗体でプローブ処理した。結合した二次抗体からのシグナルは化学発光によって検出し、CCDカメラで記録した。リガンド処理後、強度をプロットして溶融温度の変化を目に見える状態にした。 結果 ウエスタンブロット膜上の黒いバンドは、上清中に依然として存在する可溶性タンパク質の存在を示す。その温度を超えるとタンパク質がもはや目に見えなくなる特定温度まで、可溶性タンパク質を検出した。TNP−470の添加は溶融温度のシフト、ヒト細胞溶解物に関して62℃〜80℃(18℃のシフト)、及びウシ肝臓溶解物に関して66℃〜80℃(14℃のシフト)をもたらした(図7)。実施例6−熱安定化の濃度依存性からの用量応答曲線 見かけの結合定数を推定する目的の用量応答曲線を構築する目的で、ウシ肝臓溶解物を、メチオニンアミノペプチダーゼ−2を特異的に標的化するリガンドTNP−470の希釈系に曝した。この実施例の前に、用量を飽和レベルで設定した、処理及び未処理サンプルに対応する曲線を得ている(実施例5参照)。次いで溶融温度の差を使用して、処理サンプルが依然存在し、一方で未処理サンプルが沈殿する温度を決定することができる。この実施例用に、温度は+76℃に設定した。希釈系は10倍希釈の系として構築した。作製した曲線は、溶解物中の標的タンパク質を保証するのに必要なリガンド濃度の指標を与える。 材料及び方法 溶解物をウシ肝臓サンプルから調製した。細胞は氷上ハイポトニックバッファー中で破壊し均質化した。縣濁液は多数回凍結−解凍し、全ての不溶性凝集体及び細胞残骸を、溶解終了後に遠心分離によってペレット状にした。光学的に透明なサイトゾル画分を含有する上清は8チューブPCRストリップに分け、それぞれのチューブは、リガンドの濃度が1ピコモルと100ナノモルの間の範囲であり、DMSO濃度が最終体積の1%であるように増加量のリガンドTNP−470を含有した。サンプルをインキュベートし、その後3分間で76℃に加熱した。加熱処理後、サンプルを冷却し、沈殿した画分は遠心分離によってペレット状にした。20マイクロリットルの各上清を除去し、ゲルローディングバッファーを補充し、加熱によって完全に変性させた。サンプルは分離ゲル上に載せ、全泳動時間経過後ニトロセルロース膜にブロッティングした。膜を洗浄し、ブロッキング試薬でブロッキングし、一次抗体及び二次抗体でプローブ処理した。結合した二次抗体からのシグナルは化学発光によって検出し、CCDカメラで記録した。強度を測定しプロットした。 結果 ウエスタンブロット膜上の黒いバンドは、上清中のタンパク質の存在を示す。タンパク質が全く存在しない、又は非常にわずかなタンパク質が存在する場合、シグナルは全く目に見えない、又は非常にわずかなシグナルが目に見える。リガンドの濃度が増大すると、安定化タンパク質の量も増大する。ウエスタンブロット膜上の黒いバンドの徐々に増大するシグナルとして、これを観察する。集積強度のプロットは用量応答曲線をもたらし(図8)、これによってサンプル中の半分のタンパク質が結合リガンドによって保証された見かけの濃度(すなわち安定状態)を正確に決定することができる。これには患者に関する用量レジメンを設定する、又は身体の異なる器官における見かけの結合定数の研究によって薬剤に関する治療範囲を発見するのに有用な用途がある。実施例7−バイオセンサー的用途−複合液中のリガンドの存在の測定 同族リガンド結合タンパク質(例えば、薬剤標的)が存在するリガンド(例えば、薬剤)の存在は、標的タンパク質を欠く複合試験サンプルにおいてさえ示され得る。これは、タンパク質(例えば、標的細胞の溶解物又は精製タンパク質)を含有するサンプルのアリコートを、生体液試験サンプルに加えることによって実施する。実施例6と一致して、対象のリガンドを含有する生体液(例えば、血漿又は血清)の連続希釈液を使用して、用量応答曲線を構築することもできる。このようにして作製した曲線をスパイクによって作製した用量応答曲線に適合させ、生体液中リガンドの推定濃度を得ることができる。 材料及び方法 溶解物を培養ヒト腺癌細胞(A549)から調製した。細胞は氷上ハイポトニックバッファー中で破壊し均質化した。縣濁液は多数回凍結−解凍し、全ての不溶性凝集体及び細胞残骸を、溶解終了後に遠心分離によってペレット状にした。光学的に透明なサイトゾル画分を含有する上清を8チューブPCRストリップに等分し、それぞれのチューブは、熱処理A549溶解物中に溶けた増加量のリガンドTNP−470を含有していた(76℃での熱処理によって全ての標的タンパク質(メチオニンアミノペプチダーゼ−2)が沈殿し、リガンドが全く消費されないことが確実になった)。実施例6中と同様に、濃度は1ピコモルと100ナノモルとの間の有効濃度の範囲であった。 サンプルをインキュベートし、その後3分間76℃に加熱した。熱処理後、サンプルを冷却し、沈殿した画分は遠心分離によってペレット状にした。20マイクロリットルの各上清を除去し、ゲルローディングバッファーを補充し、加熱によって完全に変性させた。サンプルは分離ゲル上に載せ、全泳動時間経過後ニトロセルロース膜にブロッティングした。膜を洗浄し、ブロッキング試薬でブロッキングし、一次抗体及び二次抗体でプローブ処理した。結合した二次抗体からのシグナルは化学発光によって検出し、CCDカメラで記録した。強度を測定しプロットした。 結果 熱処理した溶解物を作製して、標的タンパク質を欠く生体液を模倣した。リガンド及びその連続希釈液による熱処理溶解物のスパイクによって、したがって応答曲線が生じ(図9)、in vitroに関して作製した用量応答曲線と比較及び適合させて、どの程度のリガンドがサンプル中に存在するかの推定値を得ることができた。実施例8−特定タンパク質変異体を標的化するリガンド ヒト集団内では、通常少数のアミノ酸が置換された異なる変異体として、タンパク質が存在する。幾つかの場合これらの置換は、例えば癌等の疾患を助長する。タンパク質B−rafは、制御又は機能のかく乱がこのような疾患を引き起こし得る経路と関係がある。発癌性タンパク質をもたらす、B−rafに関する多くの異なるアミノ酸置換が記載されている。アミノ酸置換によって薬剤との結合能力が低いタンパク質が生じる可能性もあり、それは癌治療中の耐性発達の背景にある一誘導要因である。 リガンドSB590885は、ソラフェニブ等の医薬品で治療するのが困難であり得るB−rafのV600E変異体と結合することが知られている。この実施例中、本発明者らは、置換タンパク質と野生型タンパク質との安定性に違いがあること、及びリガンドの結合が異なる程度でタンパク質変異体に影響を与えることを示す。 材料及び方法 B−rafのV600E置換体を含有する培養ヒトA375細胞、及びその野生型を含有するK562細胞から溶解物を調製した。細胞は氷上ハイポトニックバッファー中で破壊し均質化した。縣濁液は多数回凍結−解凍し、全ての不溶性凝集体及び細胞残骸を、溶解終了後に遠心分離によってペレット状にした。光学的に透明なサイトゾル画分を含有する上清を2本のチューブにそれぞれ等分し、それぞれのチューブはDMSOに溶かしたリガンドSB590885、又は対照用に純DMSOのいずれかを含有していた。サンプルをインキュベートし、その後50マイクロリットルの画分で8チューブPCRストリップに等分した。それぞれのステップで+44℃と+62℃の間の範囲、2℃増分、及び3分間保持で、一連の温度を異なるサンプルに施した。加熱後、サンプルを冷却し、沈殿したタンパク質は遠心分離によってペレット状にした。20マイクロリットルの各上清を除去し、ゲルローディングバッファーを補充し、加熱によって完全に変性させた。サンプルは分離ゲル上に載せ、全泳動時間経過後ニトロセルロース膜にブロッティングした。膜を洗浄し、ブロッキング試薬でブロッキングし、一次抗体及び二次抗体でプローブ処理した。結合した二次抗体からのシグナルは化学発光によって検出し、CCDカメラで記録した。リガンド処理後、強度を標準化及びプロットして溶融温度の変化を目に見える状態にした(図10)。 結果 図10中の溶融曲線は、安定状態のリガンドが存在しない場合、置換V600E B−rafは野生型より安定性が低いことを示す。処理によって、V600E置換B−rafは約6℃の溶融温度の上昇で安定化し、一方野生型タンパク質は安定化後わずか3℃の溶融温度の上昇を示した。安定化後、V600E B−rafと野生型B−rafの両方が55℃の溶融温度を示した。 非精製サンプルが、対象のリガンドと結合した標的タンパク質を含有するかどうか決定する方法であって、 a)前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に前記非精製サンプルを曝すステップ、 b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない、方法。 ステップc)に従い可溶性画分を分析する、請求項1に記載の方法。 前記非精製サンプルが細胞コロニー、細胞の液体培養液、又は患者若しくは動物サンプルである、請求項1又は請求項2に記載の方法。 前記リガンドがタンパク質、DNA若しくはRNA分子、細胞代謝産物、薬剤又は別の化学物質である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 温度が標的タンパク質の初期溶融温度以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 温度が40℃より高い、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記非精製サンプルを、標的の初期溶融温度以上である温度を含めた一連の異なる温度に曝す、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 抗体及び/又は非タンパク質融合タグを使用して標的タンパク質を同定する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。 処理ステップ(b)が遠心分離、濾過又はアフィニティー分離のステップである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。 濾過ステップ由来の濾液中の標的タンパク質を分析ステップ(c)の前に固体担体上に捕捉する、請求項9に記載の方法。 標的タンパク質をサンプルに加えて前記サンプル中の対象のリガンドの有無を決定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。 対象のリガンドをサンプルに加えて前記サンプル中の標的タンパク質の有無を決定する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。 標的タンパク質と結合することができるリガンドを同定するための方法であって、 a)標的タンパク質の初期溶融温度以上である温度を含めた一連の異なる温度に、前記標的タンパク質及び試験分子を含む非精製サンプルを曝すステップ、 b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない、方法。 対照反応において、試験分子を加えず前記標的タンパク質を含む非精製サンプルも、請求項13に記載の方法に供する、請求項13に記載の方法。 非精製サンプルが、対象のリガンドと結合した標的タンパク質を含有するかどうか決定する方法であって、前記リガンドが融合タンパク質ではなく、 a)非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に前記非精製サンプルを曝すステップ、 b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及び c)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法。 加熱手段、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段、及び標的タンパク質の存在に関してタンパク質を分析するための手段を含む、請求項1〜15のいずれか一項において使用するための器具。 請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法中での、加熱手段、不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するための手段、及び標的タンパク質の存在に関してタンパク質を分析するための手段を含む器具の使用。 標的タンパク質を検出するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法中での抗体及び/又は非タンパク質融合タグを含むキットの使用。 本発明は、非精製サンプルが、対象のリガンドと結合した標的タンパク質を含有するかどうか決定する方法であって、a)前記リガンドと結合した標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能であるよりも高い程度に、非結合標的タンパク質の沈殿を発生又は増大させることが可能である温度に前記非精製サンプルを曝すステップ、b)ステップa)の生成物を処理して不溶性タンパク質から可溶性タンパク質を分離するステップ、及びc)標的タンパク質の存在に関してステップb)の可溶性タンパク質画分と不溶性タンパク質画分との一方又は両方を分析するステップを含み、前記標的タンパク質が、前記標的タンパク質と融合したタグ、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の酵素活性に基づいて検出されない方法を対象とする。詳細には、本発明を使用して、患者由来のサンプルにおけるそれらの標的タンパク質に薬剤が結合し得るかどうか決定することができ、ある特定の薬剤をその患者の治療において使用することができるかどうか確認することができる。さらに本発明は、本発明の方法中で使用するための器具、及び本発明の方法中での抗体及び/又は非タンパク質融合タグを含むキットの使用を対象とする。【選択図】 なし