タイトル: | 特許公報(B1)_ビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル |
出願番号: | 2014501782 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07C 69/33,C10M 105/38,C10N 30/02,C10N 30/06,C10N 30/10,C10N 40/30 |
中山 真吾 西村 拓也 稲山 俊宏 JP 5538636 特許公報(B1) 20140509 2014501782 20131022 ビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル KHネオケム株式会社 312004880 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 中山 真吾 西村 拓也 稲山 俊宏 JP 2012234841 20121024 20140702 C07C 69/33 20060101AFI20140612BHJP C10M 105/38 20060101ALI20140612BHJP C10N 30/02 20060101ALN20140612BHJP C10N 30/06 20060101ALN20140612BHJP C10N 30/10 20060101ALN20140612BHJP C10N 40/30 20060101ALN20140612BHJP JPC07C69/33C10M105/38C10N30:02C10N30:06C10N30:10C10N40:30 C07C C10M CAplus/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2012−102046(JP,A) 特開2011−195631(JP,A) 特開2009−079144(JP,A) 特開2009−079141(JP,A) 米国特許第2464430(US,A) 5 JP2013078512 20131022 14 20140115 馬籠 朋広 本発明は、冷凍機油組成物等の工業用潤滑油等に用いられるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルに関する。 近年、オゾン破壊係数がゼロであり、地球温暖化係数(GWP)がより低いハイドロフルオロカーボン(HFC)が冷凍機用の冷媒として使用されている。HFCはクロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)と比較し安定な冷媒であり、潤滑油、有機材、金属に対する影響は少ない。反面、冷媒自体の潤滑性が期待できないことから摺動部の発熱による冷凍機油の熱・酸化劣化が促進されるため、熱・化学安定性の高い冷凍機油が要求されている(非特許文献1)。 また、一般に冷凍サイクルにおいて、冷凍機油は冷媒とともに一部サイクル内を循環しているため、高温域と低温域とに曝される。特に低温域では、コンプレッサーから吐出される冷凍機油が一部滞留することがある。低温域に長期間冷凍機油が残留すると、これが結晶化し、冷凍サイクルで冷媒の循環量が低下し、冷却不良になるといった問題が発生することがある。したがって、低温域においても長期間析出しない安定性の高い冷凍機油の開発が冷凍装置の信頼性の点から極めて重要である(特許文献1)。 特許文献2には、ジペンタエリスリトールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのヘキサエステルを主成分とする冷凍機油の耐熱性が記載されているが、該ヘキサエステルの低温特性は満足するものではなく、冷凍機油等の工業用潤滑油等に要求される性能のバランスがよくない。 非特許文献2には、ビスペンタエリスリトールモノホルマールと酢酸とのヘキサエステルが、ビスペンタエリスリトールモノホルマールの合成の中間生成物として記載されているが、該ヘキサエステルの工業用潤滑油としての使用、および低温特性や酸化安定性は記載も示唆もされていない。特許第4936656号公報特開平4−72390号公報「月刊トライボロジー」,1998年,7月号,p.45「South African Journal of Chemistry」,1991年,44巻,4号,p.122 本発明の目的は、低温特性および酸化安定性等の優れた性能をバランスよく有する、冷凍機油組成物等の工業用潤滑油等に用いられるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを提供することにある。 本発明は、以下の[1]〜[5]を提供する。[1]式(I)で表されるビスペンタエリスリトールモノホルマールと、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸とからなるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル。[2]前記カルボン酸が炭素数9の分岐脂肪族モノカルボン酸である[1]に記載のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル。[3]前記カルボン酸が3,5,5−トリメチルヘキサン酸である[1]に記載のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル。[4][1]〜[3]のいずれかに記載のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを含有する冷凍機油組成物。[5][4]に記載の冷凍機油組成物と、冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物。 本発明により、低温特性および酸化安定性等の優れた性能をバランスよく有する、冷凍機油組成物等の工業用潤滑油等に用いられるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを提供できる。 本発明のヘキサエステルは、式(I)で表されるビスペンタエリスリトールモノホルマールと、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸とからなるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルである。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルには、ビスペンタエリスリトールモノホルマールの水酸基の一部がエステル化されずに水酸基のまま残っているビスペンタエリスリトールモノホルマールの部分エステルが不純物として含まれていても良い。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを構成する炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸としては、例えば、2−メチルヘプタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸、2−エチル−2−メチルペンタン酸、2−エチル−4−メチルペンタン酸、2−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等が挙げられる。中でも、酸化安定性の観点から、2−メチルオクタン酸、2,2−ジメチルヘプタン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等の炭素数9の分岐脂肪族モノカルボン酸が好ましく、3,5,5−トリメチルヘキサン酸がより好ましい。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを構成するビスペンタエリスリトールモノホルマールは、公知の方法、例えば非特許文献2に記載の方法に準じて、ペンタエリスリトールを無水酢酸によってトリアセチル化させ、得られたペンタエリスリトールトリアセテートを酸触媒の存在下でジメトキシメタンと縮合させ、得られた縮合物のアセチル基を加水分解することにより得ることができる。また、例えば米国特許第2464430号明細書に記載の方法に準じて、アセトアルデヒドとホルムアルデヒドとを塩基の存在下で反応させてペンタエリスリトールを製造し、その過程で副生するビスペンタエリスリトールモノホルマールを、酢酸ブチル等によって抽出することにより得ることもできる。また、その他の方法として、後述の製造例1に記載のとおり、ペンタエリスリトールと1,1,1−トリメトキシエタンとを反応させ、得られた化合物(後述の化合物(i))を塩基の存在下でジブロモメタンと反応させ、得られた化合物(後述の化合物(ii))のオルトエステル基を加水分解することにより得ることができる。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、例えば、ビスペンタエリスリトールモノホルマールと、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸とを、120〜300℃で、5〜60時間反応させることにより製造することができる(以下、この方法を製造法1という)。 製造法1において、触媒を用いてもよく、触媒としては、例えば、鉱酸、有機酸、ルイス酸、有機金属、固体酸等が挙げられる。鉱酸の具体例としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等が挙げられる。有機酸の具体例としては、例えば、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ブタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、エタンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。ルイス酸の具体例としては、例えば、三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化スズ、四塩化チタン等が挙げられる。有機金属の具体例としては、例えば、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン等が挙げられる。固体酸の具体例としては、例えば、陽イオン交換樹脂等が挙げられる。 製造法1において、生成する水を反応混合物から取り除きながら反応を行うことが好ましい。また、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸の使用量が、ビスペンタエリスリトールモノホルマールの水酸基に対して、1.1〜1.4倍モルであるのが好ましい。 また、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、例えば、ビスペンタエリスリトールモノホルマールと、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸の無水物とを、50〜100℃で、1〜10時間反応させることにより製造することもできる(以下、この方法を製造法2という)。 製造法2において、触媒を用いてもよく、触媒としては、例えば、有機塩基、有機塩、固体酸等が挙げられる。有機塩基の具体例としては、ピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン等が挙げられる。有機塩の具体例としては、酢酸ナトリウム、スカンジウム(III)トリフルオロメタンスルホン酸イミド、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル等が挙げられる。固体酸の具体例としては、例えば陽イオン交換樹脂等が挙げられる。 製造法2において、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸の無水物の使用量が、ビスペンタエリスリトールモノホルマールの水酸基に対して、0.5〜1.4倍モルであるのが好ましい。 製造法1および製造法2において、溶媒を用いてもよく、溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、イソヘキサン、イソオクタン、イソノナン、デカン等の炭化水素系溶媒等が挙げられる。 製造法1および製造法2において、反応後、必要に応じて、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを有機合成化学で通常用いられる方法(水および/またはアルカリ水溶液を用いた洗浄、活性炭、吸着剤等による処理、各種クロマトグラフィー、蒸留等)で精製してもよい。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、優れた低温特性、優れた酸化安定性、および十分な熱安定性等を有している。さらに、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、ヘキサエステルを構成するカルボン酸が一種類であるために、製造が容易であり、品質が安定化するといった利点がある。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルにおいて、特に、ビスペンタエリスリトールモノホルマールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのヘキサエステルは、低温特性および酸化安定性等の優れた性能をバランスよく有する。また、該ヘキサエステルは、従来より使用されている冷凍機油用基油(具体的には、ペンタエリスリトールと2−エチルヘキサン酸と3,5,5−トリメチルヘキサン酸との混合エステル)と比較して、非常に優れた酸化安定性を有する。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを冷凍機油組成物に用いるとき、該ヘキサエステル中の水酸基の残存量が多いと、冷凍機油組成物が低温で白濁し、冷凍サイクルのキャピラリー装置を閉塞させる等、好ましくない現象が起こるため、該ヘキサエステルの水酸基価は20mgKOH/g以下であるのが好ましく、10mgKOH/g以下であるのがより好ましい。 本発明の冷凍機油組成物は、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを含有するものをいい、例えば、該ヘキサエステルのみからなる冷凍機油組成物であってもよく、また該ヘキサエステルとその他の冷凍機油用基油とからなる冷凍機油組成物であってもよい。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、核磁気共鳴分光法(以下、NMRという)、ガスクロマトグラフィー(以下、GCという)、ガスクロマトグラフ質量分析法(以下、GC−MSという)等の分析方法により同定される。また、本発明の冷凍機油組成物において、冷凍機油組成物中に含まれる本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、同様の分析方法により同定されるが、必要に応じて、カラムクロマトグラフィー、蒸留、溶媒抽出、晶析等の方法により、冷凍機油組成物からビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを予め分離しておくことで、同定が容易となる。 本発明の冷凍機油組成物において、その他の冷凍機油用基油としては、例えば、鉱物油、合成基油等が挙げられる。 鉱物油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、ナフテン基系原油等が挙げられる。また、これらを蒸留等により精製した精製油も使用可能である。 合成基油としては、例えば、ポリ−α−オレフィン(ポリブテン、ポリプロピレン、炭素数8〜14のα−オレフィンオリゴマー等)、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル以外の脂肪族エステル(脂肪酸モノエステル、多価アルコールの脂肪酸エステル、脂肪族多塩基酸エステル等)、芳香族エステル(芳香族モノエステル、多価アルコールの芳香族エステル、芳香族多塩基酸エステル等)、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、アルキルベンゼン等が挙げられる。前記多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール(ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、テトラペンタエリスリトール等のペンタエリスリトールの縮合物)、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等のヒンダードアルコールが挙げられる。 前記のその他の冷凍機油用基油の含有量は、低温特性および酸化安定性等の各種性能を損なわない限りにおいて特に制限されない。 本発明の冷凍機油組成物は、必要に応じて潤滑油用添加剤を含有していてもよい。潤滑油用添加剤としては、例えば、金属不活性化剤、酸化防止剤、摩耗低減剤(耐摩耗剤、焼付き防止剤、極圧剤等)、摩擦調整剤、酸捕捉剤、防錆剤、消泡剤等が挙げられる。これらの添加剤の含有量は、冷凍機油組成物中、それぞれ、0.001〜5重量%であるのが好ましい。 本発明の冷凍機油組成物は、ビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを含有しているため、低温特性および酸化安定性等の優れた性能を有している。 冷凍機油組成物は、家庭用ルームエアコン等の冷凍機に使用されるが、該冷凍機の設置時に、冷凍サイクル内に空気が混入し、冷凍機油組成物が酸素の影響を受けることがある。そのため、冷凍機油組成物は高い酸化安定性が必要となる。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル、および冷凍機油組成物の酸化安定性は、酸化安定度試験によって、RBOT寿命等を測定することにより評価できる。本明細書において、RBOT寿命は後述の試験例に記載の方法で測定したものをいう。 また、冷凍機油組成物は、温度変化が大きい場所で長期間保管するまたは使用する場合には、高温域での揮発性等がなく、低温域での固化や析出等がない冷凍機油組成物が好ましい。温度範囲としては特に制限はないが、高温域では150℃程度、低温域では−20℃程度で安定して使用できる冷凍機油組成物が好ましい。本明細書において、低温域で、固化や析出物が出ない特性を低温特性と定義する。一般的に低温特性は該ヘキサエステルの化学構造に影響される。例えば、エステルを構成するカルボン酸が一種類であると結晶化しやすく、冷凍機器の冷媒の循環量が低下する傾向がある。ところが、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、ヘキサエステルを構成するカルボン酸が一種類であるにも関わらず、優れた低温特性を有する。 本発明の冷凍機用作動流体組成物は、本発明の冷凍機油組成物と冷媒とを含有するものをいう。本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、該冷凍機用作動流体組成物の冷凍機油組成物に用いられる。本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルと冷媒とを混合する割合は特に制限されないが、冷媒100重量部に対して、本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル1〜1000重量部であるのが好ましく、2〜800重量部であるのがより好ましい。 ここで冷凍機用作動流体組成物の冷媒としては、例えば、含フッ素冷媒、自然冷媒等が挙げられる。 含フッ素冷媒としては、例えば、ジフルオロメタン(HFC32)、トリフルオロメタン(HFC23)、ペンタフルオロエタン(HFC125)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC134)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC143a)等のハイドロフルオロカーボン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234yf)、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ze)、1,2,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO1234ye)、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO1225ye)等の不飽和フッ化炭化水素およびこれらの混合物等が挙げられる。 自然冷媒としては、例えば、プロパン、ブタン、イソブタン等の炭化水素、二酸化炭素、アンモニア等が挙げられる。 本発明のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルは、冷凍機油組成物および冷凍機用作動流体組成物に用いられる他、エンジン油、ギア油、ハイブリッド車や電気自動車に利用されるモーター油、グリース、潤滑油用添加剤、金属部品の洗浄剤、可塑剤、化粧品等にも用いることができる。また、本発明の冷凍機油組成物および冷凍機用作動流体組成物は、ルームエアコン、パッケージエアコン、カーエアコン、除湿機、冷蔵庫、冷凍庫、冷凍冷蔵庫、自動販売機、ショーケース、化学プラント等の冷凍機等に好ましく用いられる。 以下、製造例、実施例、比較例および試験例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。<NMR> 以下の製造例1、実施例1および実施例2で得られたビスペンタエリスリトールモノホルマールおよびエステルをNMRで測定した。NMRでの測定は、以下の測定機器、測定手法により行った。 測定機器;GSX−400(400MHz)(日本電子社製) 測定条件; ・核種;1H ・標準物;テトラメチルシラン ・溶媒;CDCl3またはd6−DMSO<GC> 以下の製造例1で得られたビスペンタエリスリトールモノホルマールの純度をGCで測定した。GCでの測定は、以下の方法で検液を調製後、以下の測定機器、測定条件により行った。 検液の調製法;反応器に以下の製造例1で得られたビスペンタエリスリトールモノホルマール10mgとトリメチルシリル化剤(東京化成工業社製、製品名:TMS−HT)1mLとを仕込み、混合液を80℃で10分間攪拌した。反応後、反応液をメンブレンフィルター(PTFE、0.5μm)で濾過し、濾液を検液とした。 測定機器;Agilent7890A(アジレント・テクノロジー社製) 測定条件; ・カラム;HP−5(長さ30m×内径0.320mm×膜厚0.25μm)(アジレント・テクノロジー社製) ・キャリアガス;窒素、流量1.0mL/分 ・INJ/DET温度;330℃/350℃ ・注入法;スプリット法(1μL注入、比1/50) ・検出器;FID ・測定プログラム;100℃から10℃/分の速度で昇温し、325℃に達してからその温度で17.5分間保持<GC−MS> 以下の実施例1および2で得られたエステルを、GC−MSで測定した。GC−MSでの測定は、以下の測定機器、測定条件により行った。 測定機器;Agilent7890A(アジレント・テクノロジー社製) 日本電子JMS−T100GCv質量分析計(日本電子社製) 測定条件; ・カラム; DB−5(長さ30m×内径0.25mm×膜厚0.25μm)(アジレント・テクノロジー社製) ・キャリアガス;ヘリウム、流量1.0mL/分 ・注入温度;300℃ ・注入法;スプリット法(比1/50) ・イオン化法;CI(反応ガス;アンモニア)、EI ・測定プログラム;100℃から10℃/分の速度で昇温し、325℃に達してからその温度で97.5分間保持<高速液体クロマトグラフィー> 以下の製造例1で得られたビスペンタエリスリトールモノホルマールの純度を高速液体クロマトグラフィー(以下、LCという)で測定した。LCでの測定は、以下の方法で検液を調製後、以下の測定機器、測定条件により行った。 検液の調製法;以下の製造例1で得られたビスペンタエリスリトールモノホルマール2.5mgと0.1重量%リン酸水溶液497.5mgとを混合し、検液とした。 測定機器;Agilent1200Series(アジレント・テクノロジー社製) 測定条件; ・カラム;YMC−Pack ODS−AM(球状、粒子径5μm、細孔径12nm、長さ300mm×内径4.6mm)(ワイエムシィ社製) ・展開液;0.1重量%リン酸水溶液、流速0.7mL/分 ・カラム温度;40℃ ・サンプル注入量;5μL ・検出器;RI[製造例1][ビスペンタエリスリトールモノホルマールの製造] (1)化合物(i)の製造 ディーンスタークトラップを取り付けた反応器にペンタエリスリトール544.6g(4.00モル、広栄化学工業社製、製品名;ペンタリット−S)と1,1,1−トリメトキシエタン480.6g(4.00モル、東京化成工業社製)とp−トルエンスルホン酸一水和物6.9g(0.04モル、東京化成工業社製)とトルエン2Lとを仕込み、混合液を70〜100℃で14時間撹拌した。ディーンスタークトラップを、モレキュラーシーブスを充填した滴下漏斗に取り替えた後、混合液を110〜120℃で10時間攪拌した。反応後、反応液を濃縮し、トリエチルアミン20.4gを添加した。これをジクロロメタン2.6Lで晶析して、化合物(i)を234.6g得た。1H−NMR(CDCl3、δppm);1.46(s、3H)、3.47(s、2H)、4.02(s、6H)(2)化合物(ii)の製造 反応器に流動パラフィンで希釈した水素化ナトリウム72.8g(水素化ナトリウムの濃度60重量%、東京化成工業社製)と化合物(i)224.2gとジメチルホルムアミド3.5Lとを仕込み、ジブロモメタン121.7g(0.70モル、東京化成工業社製)を0℃で滴下した。混合液を室温で1時間攪拌後、メタノール130mLを添加した。反応後、反応液を1.3kPaの減圧下、70℃で濃縮した。濃縮液をジクロロメタン2.5Lで希釈し、水1Lで洗浄した。有機層を濃縮し、濃縮物をメタノール10.6Lで晶析して、化合物(ii)を62.7g得た。1H−NMR(CDCl3、δppm);1.46(s、6H)、3.24(s、4H)、3.98(s、12H)、4.53(s、2H)(3)ビスペンタエリスリトールモノホルマールの製造 反応器に化合物(ii)78.3gと水320gとを仕込み、混合液を100℃で2時間撹拌した。次いで、強塩基性陰イオン交換樹脂1905.0g(三菱化学社製、製品名;ダイヤイオンSA11A)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液を濾過した後、濾液を濃縮した。濃縮物をエタノール1.7Lで晶析して、ビスペンタエリスリトールモノホルマールを53.6g得た。1H−NMR(d6−DMSO、δppm);3.32−3.40(m、16H)、4.25(t、6H)、4.54(s、2H)GCで測定した純度:95面積%以上LCで測定した純度:95面積%以上[製造例2][3,5,5−トリメチルヘキサン酸の無水物の製造] 反応器に3,5,5−トリメチルヘキサン酸633.0g(4.00モル、KHネオケム社製)と無水酢酸817.5g(8.00モル、和光純薬工業社製)とを仕込み、混合液を120℃で1時間撹拌した。反応後、反応液を0.4kPaの減圧下、157〜162℃で蒸留して、3,5,5−トリメチルヘキサン酸の無水物を496.4g得た。[製造例3][2−エチルヘキサン酸の無水物の製造] 反応器に2−エチルヘキサン酸721.1g(5.00モル、KHネオケム社製)と無水酢酸919.7g(9.00モル、和光純薬工業社製)とを仕込み、混合液を120℃で1時間撹拌した。反応後、反応液を0.1kPaの減圧下、126〜133℃で蒸留して、2−エチルヘキサン酸の無水物を509.8g得た。[実施例1] [ビスペンタエリスリトールモノホルマールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのヘキサエステル(ヘキサエステル1)の製造] 反応器に製造例1で製造したビスペンタエリスリトールモノホルマール11.4g(0.04モル)と製造例2で製造した3,5,5−トリメチルヘキサン酸の無水物86.0g(0.29モル)とピリジン38.0g(0.48モル、和光純薬工業社製)とを仕込み、混合液を20kPaの減圧下、室温で15分間窒素バブリングを行うことで脱気した。次いで、脱気後の混合液を70〜100℃で5時間、窒素バブリングを行いながら撹拌した。反応後、反応液を1.3kPaの減圧下、150〜220℃で1時間濃縮した。濃縮液を濃縮液の酸価に対して2倍モルの水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液30mLで1回、水30mLで3回洗浄し、1.3kPaの減圧下、110℃で1時間、窒素バブリングを行いながら脱水した。次いで、吸着剤0.23g(協和化学工業社製、製品名;キョーワード500)と活性炭0.45g(日本エンバイロケミカルズ社製、製品名;白鷺P)を加え、1.3kPaの減圧下、110℃で1時間、窒素バブリングを行いながら撹拌した。次いで、メンブレンフィルター(PTFE、0.2μm)で濾過することにより、ヘキサエステル1を38.2g得た。1H−NMR(CDCl3、δppm);0.90(s、54H)、0.97(d、18H)、1.08−1.16(m、6H)、1.19−1.27(m、6H)、1.97−2.07(m、6H)、2.09−2.18(m、6H)、2.28−2.36(m、6H)、3.51(s、4H)、4.11(s、12H)、4.57(s、2H)GC−MS(CI):m/z(分子イオン) 1143([M+NH4]+)GC−MS(EI):m/z(フラグメントイオン) 141、539[実施例2][ビスペンタエリスリトールモノホルマールと2−エチルヘキサン酸とのヘキサエステル(ヘキサエステル2)の製造] 3,5,5−トリメチルヘキサン酸の無水物の代わりに、製造例3で製造した2−エチルヘキサン酸の無水物を使用する以外は、実施例1と同様に操作して、ヘキサエステル2を得た。1H−NMR(CDCl3、δppm);0.70−0.95(m、36H)、1.10−1.37(m、24H)、1.37−1.70(m、24H)、2.17−2.35(m、6H)、3.53(s、4H)、4.11(s、12H)、4.58(s、2H)GC−MS(CI):m/z(分子イオン) 1059([M+NH4]+)GC−MS(EI):m/z(フラグメントイオン) 127、497[比較例1][ジペンタエリスリトールと3,5,5−トリメチルヘキサン酸とのヘキサエステル(ヘキサエステルA)の製造] ディーンスタークトラップを取り付けた反応器にジペンタエリスリトール63.6g(0.25モル、広栄化学工業社製、製品名:ジペンタリット)と3,5,5−トリメチルヘキサン酸347.0g(2.20モル、KHネオケム社製)とを仕込み、混合液を20kPaの減圧下、室温で30分間窒素バブリングを行うことで脱気した。次いで、脱気後の混合液を170〜230℃で10.5時間窒素バブリングを行いながら撹拌した。反応後、反応液を1.2kPaの減圧下、120〜220℃で2.5時間濃縮した。濃縮液をヘキサンで希釈して、濃縮液の酸価に対して2倍モルの水酸化ナトリウムを含むアルカリ水溶液90mLで1回、水90mLで2回洗浄した。有機層を1.3kPaの減圧下、100℃で1.5時間、窒素バブリングを行いながら脱水した。次いで、吸着剤2.7g(協和化学工業社製、製品名;キョーワード500)と活性炭5.5g(日本エンバイロケミカルズ社製、製品名;白鷺P)を加え、1.3kPaの減圧下、100℃で1時間撹拌した。次いで、濾過助剤(昭和化学工業社製、製品名;ラヂオライト#500)を用いて濾過することにより、ヘキサエステルAを213.1g得た。[比較例2][ビスペンタエリスリトールモノホルマールと酢酸とのヘキサエステル(ヘキサエステルB)の製造] 3,5,5−トリメチルヘキサン酸の無水物の代わりに、無水酢酸(和光純薬工業社製)を使用する以外は、実施例1と同様に操作して、ヘキサエステルBを得た。(試験例1)ヘキサエステルの動粘度の測定 キャノン−フェンスケ粘度計を用い、JIS K2283:2000の方法に準じてヘキサエステル1、ヘキサエステル2、ヘキサエステルAおよびヘキサエステルBの40℃および100℃における動粘度を測定した。結果を表1に示す。(試験例2)ヘキサエステルの低温特性の評価(−20℃での固化、析出物有無の確認) ヘキサエステル1、ヘキサエステル2、ヘキサエステルAおよびヘキサエステルBのそれぞれ1gをガラス容器に入れ、−20℃に設定した恒温器中で24時間静置した。24時間静置後の固化、析出物の有無を目視にて確認した。固化または析出物が認められなかったものを○、認められたものを×とした。結果を表1に示す。(試験例3)ヘキサエステルの酸化安定性の評価(RBOT寿命の測定) 回転ボンベ式酸化安定度試験器RBOT−02(離合社製)を用い、酸化安定度試験を行った。ヘキサエステル1、ヘキサエステル2、ヘキサエステルAおよびヘキサエステルBのそれぞれ10gと、紙やすり#400で磨いた電解銅線(直径1.6mm、長さ3m)を耐圧容器に入れ、次いで該耐圧容器に酸素を620kPaまで圧入した。該耐圧容器を150℃の恒温槽に入れ、毎分100回転で回転させて試験を開始し、この時を試験開始時として記録した。該耐圧容器の圧力が最高になったときから35kPaの圧力降下をしている点を終点とし、試験開始時から終点までの時間(RBOT寿命)を求めた。結果を表1に示す。RBOT寿命が長いほどヘキサエステルの酸化安定性が優れていることを表す。(試験例4)ヘキサエステルの熱安定性の評価(重量減少温度の測定) 示差熱熱重量同時測定装置TG/DTA6200(セイコー電子工業社製)を用い、以下の測定条件で、ヘキサエステル1およびヘキサエステル2の5%重量減少温度を測定した。結果を以下に示す。 測定条件; ・測定温度;40〜420℃ ・昇温速度;10℃/分 ・雰囲気;窒素通気(300mL/分) ・試料容器;アルミニウム製15μl(開放) ・サンプル量;3mg 表1より、ヘキサエステル1およびヘキサエステル2は−20℃で固化または析出物が認められず、優れた低温特性を示した。また、ヘキサエステル1のRBOT寿命は260分間であり、ヘキサエステル2のRBOT寿命は60分間であった。ヘキサエステル1は、ヘキサエステル2に対してRBOT寿命が4倍以上あり、非常に優れた酸化安定性を示した。この結果は、ヘキサエステルを構成するカルボン酸の構造からは予測できない驚くべき結果である。ヘキサエステル1およびヘキサエステル2は低温特性および酸化安定性がバランスよく優れていることがわかる。これに対して、ヘキサエステルAおよびヘキサエステルBは低温特性が悪く、またヘキサエステルBは酸化安定性が悪く、いずれもヘキサエステル1およびヘキサエステル2と比較して物性値のバランスが取れていない。また、ヘキサエステルBは40℃で結晶化したため、冷凍機油組成物等の工業用潤滑油としては到底使用できない。 試験例4において、ヘキサエステル1およびヘキサエステル2の5%重量減少温度は247℃以上であった。ヘキサエステル1およびヘキサエステル2は十分な熱安定性を有することがわかる。 本発明により、低温特性および酸化安定性等の優れた性能をバランスよく有する、冷凍機油組成物等の工業用潤滑油等に用いられるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを提供できる。 式(I)で表されるビスペンタエリスリトールモノホルマールと、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸とからなるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル。 前記カルボン酸が炭素数9の分岐脂肪族モノカルボン酸である請求項1に記載のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル。 前記カルボン酸が3,5,5−トリメチルヘキサン酸である請求項1に記載のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル。 請求項1〜3のいずれかに記載のビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステルを含有する冷凍機油組成物。 請求項4に記載の冷凍機油組成物と、冷媒とを含有する冷凍機用作動流体組成物。 式(I)で表されるビスペンタエリスリトールモノホルマールと、炭素数8および9の分岐脂肪族モノカルボン酸から選ばれるいずれか一種のカルボン酸とからなるビスペンタエリスリトールモノホルマールのヘキサエステル等を提供する。該ヘキサエステルは、低温特性および酸化安定性等の優れた性能をバランスよく有し、冷凍機油組成物等の工業用潤滑油等に用いられる。