タイトル: | 特許公報(B1)_タウリンの製造方法 |
出願番号: | 2014264789 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07C 303/44,C07C 309/14 |
金山 裕亮 田口 ひかる 南部 宏介 中塚 正博 山根 克哉 JP 5795426 特許公報(B1) 20150821 2014264789 20141226 タウリンの製造方法 株式会社サンアクティス 596177272 株式会社ヒューマン・モア 510073257 鮫島 睦 100100158 山田 卓二 100101454 西下 正石 100122297 金山 裕亮 田口 ひかる 南部 宏介 中塚 正博 山根 克哉 20151014 C07C 303/44 20060101AFI20150928BHJP C07C 309/14 20060101ALI20150928BHJP JPC07C303/44C07C309/14 C07C 303/00 C07C 309/00 CAplus/REGISTRY(STN) 特開昭60−061558(JP,A) 特開昭63−287461(JP,A) 特開昭61−044188(JP,A) 特開昭60−061559(JP,A) 特開昭59−073561(JP,A) 9 8 20150309 前田 憲彦 本発明はタウリンの製造方法に関し、特に、天然物からタウリンを製造する方法に関する。 タウリンには、血圧やコレステロールの低下、心臓の機能強化など、身体各部の機能を高める作用があり、食品素材又は食品添加物として有用である。タウリンは水溶性であり、魚介類、牛の胆汁等に多く含まれる。しかし、天然物に含まれるタウリンは、低分子タンパク質、アミノ酸及び塩分等の水溶性成分と共存しているために単離することが困難である。 特許文献1には、カキ肉を熱水抽出し、抽出液にエタノールを添加して沈殿処理した上清を濃縮し、濃縮液を摂氏零度以下に冷却してタウリンを析出させるタウリンの抽出方法が記載されている。 しかし、この方法では、カキ肉を熱水抽出した抽出液に含まれるタウリンのうち、析出するものの割合が低く、回収効率が低い。また、析出したタウリンは純度が70%と品質が悪い。タウリンの純度を食品添加物として使用可能な90%以上に高めるために、更に精製及び再結晶を行っており、操作が煩雑で、工数が多く、製造コストが高い。特開2005−179215 本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、簡単な操作により高い回収効率で高純度のタウリンを製造する方法を提供することにある。 本発明は、タウリンを含む天然物を熱水抽出して得られた抽出液に水溶性アルコールを添加してタンパク質等を沈殿させ、抽出液から沈殿物を除去する工程; 得られる上清液を脱塩及び限外ろ過する工程;及び 脱塩限外ろ過液を冷却してタウリンを析出させる工程;を包含する、タウリンの製造方法を提供する。 ある一形態においては、前記タウリンを含む天然物が魚介類の身、内臓、及び牛の肝臓又は胆汁から成る群から選択される少なくとも一種である。 ある一形態においては、前記魚介類が二枚貝、イカ又はタコである。 ある一形態においては、前記水溶性アルコールがエタノールを含む。 ある一形態においては、前記脱塩は電気透析法を使用して行われる。 ある一形態においては、前記限外ろ過に使用するろ過膜は、MF膜又はUF膜である。 本発明のタウリンの製造方法では、工数が少なく、タウリンの回収効率が高く、析出するタウリンは高純度である。そのため、追加の精製工程が不要であり、簡便に低コストで高品質のタウリンが製造される。電気透析装置の構造を示した模式図である。 タウリンを含む天然物には、タウリンを含む魚介類等の海産物、動物の部位が含まれる。二枚貝の身、カキ、ホタテ貝の中腸線、イカ、タコ、魚、これらの内蔵、魚の血合い、牛の肝臓、胆汁等には、タウリンの含有量が高いことが知られており、これらはタウリンを含む天然物として好ましい。 中でもタウリンを含む天然物として好ましいものは、安全性の観点から、魚介類、及び魚介類の部位であり、より好ましいものは、カキ、ホタテ貝、イカ、タコの肉、身及び内蔵である。特に好ましい該天然物はカキの殻を取り除いた部位、いわゆるカキ肉である。 熱水抽出は、タウリンを含む天然物を水と混合し、加熱して該天然物に含まれるタウリンを水に溶解させ、混合物から固体を除去する操作をいう。天然物等と水との混合は、通常の形態のまま行ってもよく、天然物を適当な大きさに裁断するか又は粉砕して混合してもよい。使用する天然物の種類によっては、裁断又は粉砕した場合、タウリンの溶解効率が向上することがある。 水は、天然物に対し、1〜10倍量、好ましくは1〜3倍量の重量比で混合する。混合する水の量が1倍量未満であるとタウリンの溶解効率が低下し、10倍量を超えるとタウリンの析出効率が低下する。 次いで、得られる混合物を加熱する。加熱は混合物を60〜110℃、好ましくは80〜100℃に保持することにより行う。加熱温度は処理する天然物の種類に依存して、この範囲内で適宜決定される。 加熱温度が60℃未満であるとタウリンの抽出効率が低下するか処理に長時間を要する。加熱温度が110℃を越えると抽出液の着色性が顕著となる。加熱時間は加熱温度に依存して適宜決定される。タウリンの溶解効率及び作業効率の観点から、加熱時間は20分〜5時間、好ましくは30分〜2時間である。 加熱を行った後、混合物から固液を分離し、固体を除去する。固液の分離方法は特に限定されず、遠心分離法、ろ過法等を単独で又は組み合わせて用いればよい。分離した水溶液には、タウリン、低分子タンパク質、アミノ酸及び塩分等の天然物から抽出された水溶性成分が含まれている。この水溶液を抽出液と呼ぶ。 得られた抽出液に、次いで、水溶性アルコールを添加してタンパク質等を沈殿させる。水溶性アルコールとしてはエタノールを使用することができる。水溶性アルコールを添加することで水の溶質に対する溶解力を低下させることができる。水溶性アルコールの量は沈殿が多くなるように適宜調節されるが、20〜200体積%(V/V)、好ましくは、30〜120%(V/V)、より好ましくは50〜80%(V/V)である。 抽出液から沈殿物を除去して上清液を得る。抽出液から沈殿物を除去する操作は遠心分離、ろ過等、加熱後の混合物から固液を分離した操作と同様にして行えばよい。 得られる上清液は、Brix値が5〜60%(w/w)、好ましくは10〜50%(w/w)、より好ましくは20〜40%(w/w)である。上清液のBrix値が5%(w/w)未満であると、析出するタウリンの量が少なくなり、60%(w/w)を超えると、析出するタウリンの純度が低下する。 上清液は、塩化ナトリウム濃度が0.5〜10%(w/w)、好ましくは2〜8%(w/w)、より好ましくは4〜7%(w/w)である。上清液の塩化ナトリウム濃度が0.5%(w/w)未満であると、析出するタウリンの量が少なくなり、10%(w/w)を超えると、析出するタウリンの純度が低下する。 また、上清液は、タウリン濃度が0.1〜20%(w/w)、好ましくは1.0〜10%(w/w)、より好ましくは1.5〜3.0%(w/w)である。上清液のタウリン濃度が0.1%(w/w)未満であると、析出するタウリンの量が少なくなり、20%(w/w)を超えると、析出するタウリンの純度が低下する。 上清液を脱塩する。脱塩とは、上清液に含まれる塩分を除去することをいう。上清液の塩分を除去することにより、析出するタウリンの純度が向上する。上清液は脱塩を行う前に適宜濃度調節してよいが、濃度が高くなると析出するタウリンの純度が低下するおそれがある。そのため、上清液は濃縮しないことが好ましい。 脱塩及び限外ろ過する工程とは、脱塩する工程と限外ろ過する工程を両方行うことを意味する。脱塩する工程と限外ろ過する工程は順番に行えばよく、どちらの工程を先に行ってもよい。 脱塩は電気透析法を使用して行うことができる。電気透析法とは、次に動作原理を説明する電気透析装置を使用して溶液に含まれる溶質を分離する方法をいう。電気透析法を使用して行う脱塩によって、上清液中の塩化ナトリウム濃度は1%(w/w)以下、好ましくは0.5重量%(w/w)以下、より好ましくは0.2重量%(w/w)以下に低減される。 電気透析装置は、図1に、脱塩における一般的な構造を示すように、透析槽1内に陽極2と陰極3とを備え、その陽極と陰極との間に複数枚のカチオン交換膜Cと複数枚のアニオン交換膜Aとを交互に配列して、濃縮室4と脱塩室5とを形成したものであり、濃縮室では、イオン交換膜を透過してイオンが流入して濃縮され、脱塩室では、イオン交換膜を透過してイオンが流出して脱塩される。イオン交換膜は価数選択性を有し、一価イオンを交換するけれども、二価イオンは交換しない種類のものを使用する。 イオン交換膜電気透析処理において、陰極と陽極の間の電圧は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜の1対当たり、0.2〜2Vであることが好ましく、0.5〜1.5Vであることがより好ましい。陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の1対当たりの電圧が0.2V未満であると、イオン交換膜電気透析処理に長時間を要するおそれがある。陰イオン交換膜と陽イオン交換膜の1対当たりの電圧が2Vを超えると、イオン交換膜が化学的に劣化するおそれがある。また、イオン交換膜に流れる電流は、イオン交換膜1dm2当たり0.1〜3Aであることが好ましい。 イオン交換膜電気透析処理における通電時間は上清液の塩分濃度に依存して適宜調節される。一般には、30〜800分、好ましくは60〜600分、より好ましくは120〜400分である。 脱塩した上清液を限外ろ過する。限外ろ過とは、孔の寸法が微細な多孔性膜を透過させるろ過をいう。限外ろ過に使用される多孔性膜の孔の寸法は高分子量物質よりも小さいため、限外ろ過を行うことにより高分子量物質を除去することができる。脱塩した上清液は限外ろ過を行う前に適宜濃度調節してよいが、濃度が高くなると析出するタウリンの純度が低下するおそれがある。そのため、脱塩した上清液は濃縮しないことが好ましい。 得られる脱塩限外ろ過液は、Brixが35%(w/w)以下、好ましくは10〜25%(w/w)である。高分子量物質を除去しておくことにより、析出するタウリンの純度が向上する。脱塩限外ろ過液のBrixが35%(w/w)を超えると析出するタウリンの純度が低下することがある。 多孔性膜の孔の寸法は、0.001〜5μm、好ましくは0.01〜0.5μm、より好ましくは0.05〜0.15μmである。多孔性膜の孔の寸法が0.01μm未満であると高分子量物質の付着により短時間のうちに膜が閉塞するのでろ過操作が煩雑になり、5μmを超えると高分子量物質の除去が不十分になる。多孔性膜としては、精密ろ過膜(MF膜)又は限外ろ過膜(UF膜)を使用する。 脱塩限外ろ過液は、次いで、冷却する。タウリンの溶解度は温度依存性があり、溶液の温度が低下すると溶解度が低下して析出する。冷却温度は−50〜0℃、好ましくは−40〜−5℃、より好ましくは−30〜−10℃である。冷却温度が−50℃未満であると脱塩限外ろ過液が凍結する可能性があり、0℃を超えるとタウリン結晶の回収率が低下する。 冷却した脱塩限外ろ過液を静置することにより、脱塩限外ろ過液中にタウリン結晶が析出する。静置時間は、一般に3〜72時間、好ましくは5〜48時間である。析出したタウリンは70%(w/w)以上、好ましくは80%(w/w)以上、より好ましくは90%(w/w)以上の純度を有し、高純度である。また、脱塩限外ろ過液に含まれるタウリンのうち、析出するものの割合が20重量%(w/w)以上、好ましくは25%(w/w)以上であり、回収効率が高い。 以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。 凍結生カキ肉1.3kgに蒸留水2.0リットルを加え、100℃で40分間加熱抽出し、固体分を除去してカキ肉の抽出液を得た。この抽出液にエタノールを最終濃度が75%(体積)となるように添加して沈澱を生じさせ、4日間そのまま常温で放置した。その後、沈澱物を除去し、上清液を得た。 上清液を高速液体クロマトグラフィーに供し、その結果として得られたスペクトルのピーク面積を標準液で得られるスペクトルのピーク面積と比較することにより、上清液に含まれるタウリンの量を測定した。その結果、上清液中のタウリン濃度は2.0%(w/w)であった。 糖度計を用いて上清液のBrix濃度を測定したところ、34.7%(w/w)であった。滴定法により上清液の塩化ナトリウム濃度を測定したところ、5.5%(w/w)であった。 電気透析装置としてアストム社製「マイクロアシライザーS3」を準備し、イオン交換膜電気透析槽の陽極と陰極の間に陽イオン交換膜と陰イオン交換膜それぞれ10枚を交互に配置した。上清液1Lをイオン交換膜電気透析槽の脱塩室に導入し、濃縮室には精製水を導入した。両液をそれぞれ循環させながら、陽極と陰極の間に10Vの一定電圧を印加し、脱塩処理を開始した。脱塩処理は6時間行った。電流は、脱塩処理開始時は0.02Aであり、脱塩処理終了時は0.13Aであった。最大電圧は0.95Aであった。 上清液と同様にして脱塩した上清液の分析を行ったところ、塩化ナトリウム濃度0.1%以下、Brix26.5%であった。 0.1μmの孔寸法を有する多孔質PVDF製MF膜を備えたろ過モジュール(旭化成ケミカルズ社製「PSP−043」)を準備した。脱塩した上清液をこのろ過モジュールに導入し、ろ過液を収集した。 上清液と同様にして脱塩限外ろ過液の分析を行ったところ、Brix22.1%であった。 この脱塩限外ろ過液1.28Lを−20℃の冷凍庫に10時間いれて冷却してタウリンを析出させ、ブフナー漏斗によって吸引ろ過してタウリンの結晶を分離した。タウリン結晶の収量は7.7gであった。母液1.27kgに含有されるタウリンは1.2%(w/w)であり、タウリンの回収率は28.6%であった。尚、タウリンの回収率は次の式に従って計算した。回収率(%)=(回収したタウリン結晶の収量×純度)÷(回収したタウリン結晶の収量×純度+母液の重量×タウリン含量)×100 また、高速液体クロマトグラフィーにてタウリン結晶の純度を測定したところ80%であった。 1…透析槽、 2…陽極、 3…陰極、 4…濃縮食塩水、 5…希薄食塩水。 タウリンを含む天然物を熱水抽出して得られた抽出液に水溶性アルコールを添加してタンパク質等を沈殿させ、抽出液から沈殿物を除去する工程; 得られる上清液を脱塩及び限外ろ過する工程;及び 脱塩限外ろ過液を冷却してタウリンを析出させる工程;を包含する、タウリンの製造方法であって、 前記上清液のタウリン濃度が1〜20%(w/w)であるタウリンの製造方法。 前記タウリンを含む天然物が魚介類の身、内臓、及び牛の肝臓又は胆汁から成る群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載のタウリンの製造方法。 前記魚介類が二枚貝、イカ又はタコである請求項1又は2に記載のタウリンの製造方法。 前記水溶性アルコールがエタノールを含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のタウリンの製造方法。 前記脱塩は電気透析法を使用して行われる請求項1〜4のいずれか一項に記載のタウリンの製造方法。 前記限外ろ過に使用するろ過膜は、MF膜又はUF膜である請求項1〜5のいずれか一項に記載のタウリンの製造方法。 前記脱塩限外ろ過液のBrixが35%以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載のタウリンの製造方法。 前記冷却は−50〜0℃の温度で行われる請求項1〜7のいずれか一項に記載のタウリンの製造方法。 該上清液を脱塩及び限外ろ過する工程は、先ず脱塩を行い、その後に限外ろ過を行うものである請求項1〜8のいずれか一項に記載のタウリンの製造方法。【課題】簡単な操作により高い回収効率で高純度のタウリンを製造する方法を提供すること。【解決手段】タウリンを含む天然物を熱水抽出して得られた抽出液に水溶性アルコールを添加してタンパク質等を沈殿させ、抽出液から沈殿物を除去する工程;得られる上清液を脱塩及び限外ろ過する工程;及び脱塩限外ろ過液を冷却してタウリンを析出させる工程;を包含する、タウリンの製造方法。【選択図】なし