生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B1)_ビールテイストの発酵アルコール飲料およびその製造方法
出願番号:2014256659
年次:2015
IPC分類:C12G 3/02


特許情報キャッシュ

松尾 壮昌 大橋 慎司 片山 貴仁 JP 5759610 特許公報(B1) 20150612 2014256659 20141218 ビールテイストの発酵アルコール飲料およびその製造方法 キリン株式会社 311002447 横田 修孝 100107342 松尾 壮昌 大橋 慎司 片山 貴仁 20150805 C12G 3/02 20060101AFI20150716BHJP JPC12G3/02 C12C 5/02,12/02 C12G 3/00−3/14 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2014−117204(JP,A) 国際公開第2009/051127(WO,A1) 8 8 20150130 柴原 直司 本発明はビールテイストの発酵アルコール飲料とその製造方法に関し、より詳細にはプリン体含有量が0.5mg/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料とその製造方法に関する。 近年の健康志向の高まりにより低プリン体のビールテイスト飲料が求められている。これまでに低プリン体のビールテイスト飲料を目指して様々な技術が開発されてきた。このような技術としては、例えば、吸着剤を用いてプリン体を除去する技術(特許文献1)やプリン体の生成量が少ない発泡アルコール飲料の製造方法(特許文献2)がある。 しかし、低プリン体であるとともに、人工的ではなくビールとしての自然な味わいが付与されたビールテイストの発酵アルコール飲料はこれまでに知られていない。WO2012/008100号公報特開2014−117205号公報 本発明は、ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感を備えた、プリン体ゼロのビールテイストの発酵アルコール飲料とその製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、ビールテイストの発酵アルコール飲料を製造する際に、香料を発酵後ではなく発酵前に添加することによって、人工的ではなくビールとして自然な香味を飲料に付与できることを見出した。香料をビールテイスト飲料に使用する場合、従来はビールらしい香りが主として付与されることが期待されてきた。しかし、香料由来の人工的な香りは、ビールらしい自然な香りには及ばず、さらに香料を単に添加してもビールらしい飲み応えやキレ感を付与するには至っておらず、香料を使用したビールテイスト飲料は、ビールらしさを欠く印象を与えていた。このような背景のもと、香料の存在下で発酵を実施することにより、ビールらしい飲み応えやキレ感を発酵アルコール飲料にバランスよく付与できること、さらには人工的ではなく自然な味わいが付与できることは本発明者らにとって非常に意外なことであった。本発明はこの知見に基づくものである。 本発明によれば以下の発明が提供される。(1)プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法であって、香料の存在下でビール酵母による発酵を行うことを特徴とする、製造方法。(2)香料がビールテイストを付与するものである、前記(1)に記載の製造方法。(3)炭素源、窒素源および水溶性食物繊維を含む発酵前液を発酵させる、前記(1)または(2)に記載の製造方法。(4)水溶性食物繊維を製造された飲料100ml当たり1.0〜4.0g含有するよう発酵前液に配合する、前記(3)に記載の製造方法。(5)発酵前液が窒素源の少なくとも一部として、大豆タンパク分解物を含む、前記(3)に記載の製造方法。(6)ビールテイストの発酵アルコール飲料の糖質含有量が0.5g/100ml未満である、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。(7)ビール酵母による発酵の後に、アルコールを添加する工程を含んでなる、前記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載の製造方法により製造された、プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料。 本発明によればプリン体ゼロでありながら、ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感をバランスよく備えたビールテイストの発酵アルコール飲料を提供することができる。また、本発明のビールテイストの発酵アルコール飲料はアルコール発酵を経て製造されるのでビールらしい自然な味わいが付与され、人工的な香味が抑制されている点でも有利である。さらに、本発明の製造方法はプリン体を除去する工程を必要としないことから簡易な製法である点でも有利である。発明の具体的説明 本発明において「ビールテイストの発酵アルコール飲料」とは、炭素源、窒素源、および水などを原料として酵母により発酵させた飲料であって、ビールテイスト(ビール風味)を有するアルコール飲料を意味する。本発明において「ビールテイスト」とは、通常にビールを製造した場合、すなわち、酵母等による発酵に基づいてビールを製造した場合に得られるビール特有の味わい、香りをいう。 本発明の製造方法で製造される「ビールテイストの発酵アルコール飲料」としては、原料として麦または麦芽を使用しないビールテイスト発酵飲料(例えば、酒税法上、「その他の醸造酒(発泡性)(1)」に分類される醸造系新ジャンル飲料)や、原料として麦芽を使用するビール、発泡酒およびこれらにアルコールを添加してなる飲料(例えば、酒税法上、「リキュール(発泡性)(1)」に分類されるリキュール系新ジャンル飲料)が挙げられる。 本発明の製造方法で使用される「香料」はビールテイスト(ビール風味)を付与する香料から選択することができ、1種単独で使用しても、複数種を組み合わせて使用してもよい。本発明の製造方法で使用される「香料」は、エステルフレーバー、ホップフレーバー、カラメルフレーバー、アルコールフレーバー、ビールフレーバー、モルトフレーバー、フルーツフレーバー、含硫化合物やダイアセチルなどのオフフレーバー並びにこれらの一部および全部の組み合わせから選択することができる。 本発明の製造方法では香料は発酵前あるいは発酵中に添加することができるが、発酵前の添加が好ましい。発酵前の添加は、発酵前液の煮沸、静置、および冷却が終了した後に、すなわち、主発酵の直前に行うことができる。香料の添加量は使用原料に対して8〜20質量%(固形分当たり)とすることができ、好ましくは、10〜18質量%(固形分当たり)である。 本発明において「水溶性食物繊維」とは、食物繊維のうち水溶性のものを意味し、ヒトの消化酵素によって加水分解されない難消化性の多糖類等をいう。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、分岐マルトデキストリン、イヌリン、グアーガム分解物などが挙げられ、好ましくは難消化性デキストリン、ポリデキストロースおよびこれらの組み合わせが挙げられる。水溶性食物繊維は製造された飲料100ml当たり1.0g〜4.0gの量で含まれるように発酵前液に配合することができる。 本発明で使用する「難消化性デキストリン」とは、澱粉に微量の塩酸を加えて加熱し、酵素処理したもので、衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)で測定される難消化性成分を含むデキストリンをいい、水素添加により製造されるその還元物を含む意味で用いられる。食新発0217001号および0217002号に記載の食物繊維のエネルギー換算係数によれば、難消化性デキストリンのエネルギー値は1kcal/gである。 本発明では麦芽(エキス化したものを含む);大麦や小麦などの未発芽麦類(エキス化したものを含む);穀物原料(例えば、トウモロコシ、大豆、エンドウ、米、こうりゃん)並びに穀物原料由来のタンパク質(例えば、トウモロコシタンパク質、大豆タンパク質、エンドウタンパク質)およびその分解物を窒素源として使用することができ、これら以外の他の原料(例えば、馬鈴薯、でんぷん、糖類(例えば、液糖)等の酒税法で定める副原料などを炭素源および/または窒素源として使用することができる。 本発明では、必要に応じて、ホップ、色素、起泡・泡持ち向上剤、甘味料(高甘味度甘味料を含む)、水質調整剤、発酵助成剤等のその他の添加物等を発酵前液に添加することができる。ホップは、発酵前液を煮沸する前に、発酵前液を煮沸中に、または発酵前液を煮沸した後に、添加することができる。ここでいう「煮沸」は、発酵原料の酵素処理後に行われる煮沸工程である。 本発明の製造方法では、香料の存在下でビール酵母による発酵が行われること以外は、ビールテイストの発酵アルコール飲料の公知の製法に準じて実施することができる。すなわち、香料が発酵前に発酵前液に添加されるか、あるいは発酵中に発酵液に添加すること以外は常法に従って本発明の製造方法を実施することができる。例えば、少なくとも水、麦芽、ホップ、水溶性食物繊維、大豆タンパク分解物および液糖を使用原料とする発酵前液(仕込液)を調製し、発酵用ビール酵母を添加して発酵(主発酵)を行い、香料を発酵前あるいは発酵中に添加して発酵液を調製することができる。必要に応じて低温にて貯蔵して熟成させた後、ろ過工程により酵母などを除去することによりビールテイストの発酵アルコール飲料を製造することができる。次いで所望により炭酸ガス付与、殺菌などの最終製品化に必要な工程を行ってもよい。 また本発明の製造方法では、ビール酵母による発酵の後に、発酵液にアルコールを添加して最終アルコール濃度が2.0v/v%〜10.0v/v%(好ましくは2.0v/v%〜6.0v/v%)のビールテイストの発酵アルコール飲料としてもよい。発酵液に添加できるアルコールとしてはスピリッツ、ウォッカ、ラム、テキーラ、ジン、焼酎、醸造用アルコールおよび原料用アルコールからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。発酵液に添加できる好ましいアルコールとしてはスピリッツが挙げられ、より好ましくは、大麦や小麦など麦由来のスピリッツである。麦由来のスピリッツは好ましくは他の1種または2種以上のアルコール(例えば、醸造用アルコール)と組み合わせることができる。 炭素源および窒素源として麦芽を使用する場合、発酵前液(麦汁)の調製は常法に従って行うことができる。例えば、原料と醸造用水の混合物を糖化し、濾過して、麦汁を得、その麦汁にホップを添加した後、煮沸し、煮沸した麦汁を冷却することにより発酵前液を調製することができる。あるいは、本発明では麦芽エキスを使用し、糖化工程を省略してもよい。 本発明の製造方法では、最終製品中のプリン体含有量を0.5mg/100ml未満に制御できる限り、麦芽使用比率に制限はないが、例えば、50質量%未満となるように原料を準備することができる。なお、本発明において「麦芽使用比率」とは、醸造用水を除く全原料の固形分質量に対する麦芽質量の割合をいう。 本発明の製造方法では、メイラード反応物を発酵前液に添加することができる。メイラード反応物はアミノ酸等のタンパク分解物と糖とを混合して加熱することによって得ることができる褐色の液体であり、アミノ酸等のタンパク分解物と糖との加熱反応によって付与される芳香を有する。 メイラード反応物に用いる原料のうち、糖は、結晶グルコースや水飴等の液糖、あるいは麦芽や麦、米等植物澱粉の液糖等、糖が含有されているものであれば限定はされないが、取り扱いや反応の効率化の観点からは、液糖が好ましい。また、メイラード反応に寄与するのは、還元糖であることから、より好ましくは、単糖主体の液糖が用いられる。 また、メイラード反応させる原料のうち、タンパク分解物は、麦類、豆類、トウモロコシ、馬鈴薯、米等のタンパクをプロテアーゼやペプチダーゼで分解したものを用いてもよく、また、工業的に精製されたアミノ酸またはその混合物を用いることもできるが、費用や風味の観点からは、ビール酵母を用いた発酵アルコール飲料の製造原料として用いられている前者の原料が好ましい。前者の原料の中では、大豆タンパク分解物をより好ましいタンパク分解物として挙げることができる。 本発明において、メイラード反応物の調製に用いられる反応温度は、反応時間短縮の観点からは、高い温度が好ましいが、過度に高くすると糖そのものがカラメル化反応を起こし、目的の色調や風味は得られなくなる。従って、好ましくは、105〜121℃の温度が採用される。本発明の発酵アルコール飲料の製造方法において、メイラード反応物の添加時期は、特に制限されないが、メイラード反応物中に残存している糖およびアミノ酸を酵母に消費させるためには、発酵前の段階での添加が好ましい。すなわち、本発明においては、メイラード反応物を予め調製し、発酵アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に添加する。また、該反応物を添加する代わりに、発酵アルコール飲料の製造工程の発酵工程前に、反応温度105℃以上、121℃以下を用いた原料中の糖とタンパク分解物とのメイラード反応物生成工程を実施してもよい。なお、メイラード反応物の調製のための装置としては、加圧式の加熱装置を用いることができる。 本発明の製造方法により製造されるビールテイストの発酵アルコール飲料はプリン体含有量が0.5mg/100ml未満である。ここで、プリン体化合物の測定は公知の方法によって行うことができ、例えば、過塩素酸による加水分解後にLC−MS/MS(液体クロマトグラフ−質量分析法)を用いて検出する方法(「酒類中のプリン体の微量分析のご案内」、一般財団法人・日本食品分析センター、URL:http://www.jfrl.or.jp/item/nutrition/post-31.html 参照)により測定することができる。また糖質の測定も公知の方法に従って行うことができ、当該試料の質量から、水分、タンパク質、脂質、灰分および食物繊維量を除いて算出する方法(栄養表示基準(平成21年12月16日 消費者庁告示第9号 一部改正)参照)に従って行うことができる。なお、本明細書中、「プリン体含有量」とは、アデニン、キサンチン、グアニン、ヒポキサンチンのプリン体塩基4種の総量を指す。 以下の例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の例において「固形分」当たりの割合に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。また、以下の例において割合(%)は特に断りがない限り質量%を表す。例1:香料の添加タイミングがビールらしい香味に与える影響 本実施例では発酵麦芽飲料の製造における香料の添加タイミングが製造された飲料の香味に与える影響を検証した。具体的には、全使用原料(固形分換算)に対して、大豆タンパクの分解物の1.1%溶解液(モルトエキス含有)に水溶性食物繊維を3.5g/100ml、果糖ブドウ糖液糖を2.4g/100ml、それぞれ配合した発酵前液(糖度6°P)を調製し、該発酵前液を常法に従って7日間ビール酵母による発酵(主発酵、14℃)を行って発泡酒(アルコール濃度1.5v/v%)を製造した。試験区1のサンプルでは香料を発酵前液に配合した上で発酵を行った。一方、試験区2のサンプルでは香料を発酵済みの発酵液に添加した。試験区1および2では同じ香料(ビールテイストを付与するフレーバー成分からなる香料であって、フレーバー成分としてエステルフレーバーを含む)を用い、添加量はいずれの試験区も全使用原料(固形分換算)に対して14質量%であった。また試験区3では香料を添加せずに発酵を行った。なお、得られた飲料のプリン体含有量は0.5mg/100ml未満であった。 得られた各試料(試験区1〜3)についてビールらしい香味について官能評価を行った。官能評価は5名のパネラーにて、ビールらしい飲み応えがあるか、ビールらしいキレ感はあるか、ビールとしてバランスはよいか、の3点について実施した。官能評価は1〜5点の5段階評価で行い、評価点の平均を算出した。それぞれの点数の平均点で3点以上を合格点とした。結果は下記表に示される通りであった。 表1に示される通り、発酵前に香料を添加した試験区1の試料ではいずれの評価項目でも高い評価が得られた。一方で、発酵終了後に香料を添加した試験区2の試料では人工的な香りが強く、ビール特有のバランスやキレが欠ける結果となった。また試験区3の試料ではいずれの評価項目で非常に低い評価となった。以上から、香料を添加してから発酵することにより、プリン体ゼロ(0.5mg/100ml未満)を達成しつつ、ビールらしい飲み応え、ビールらしいキレおよびビールらしいバランスが付与されたビールテイスト飲料を製造できることが明らかとなった。例2:製造条件等のビールテイストらしい香味に与える影響 本実施例では、発酵麦芽飲料の製造条件や香料の添加量を変化させた場合に製造された飲料の香味がどのような影響をうけるかを検証した。具体的には、酒下しとその後の貯蔵工程の温度が10℃から14℃に変更された以外は試験区1と同じ条件でビールテイストの発酵アルコール飲料を製造した(試験区4)。また、酒下しとその後の貯蔵工程の温度が10℃から14℃に変更され、さらに使用するエステルフレーバーの量が1.5倍(試験区5)に増量されたこと以外は試験区1と同じ条件でビールテイストの発酵アルコール飲料を製造した。 表2に示される通り、発酵条件を変更した試験区4でも試験区1と同様にいずれの評価項目でも高い評価が得られた。また添加する香料に含まれるエステルフレーバーを1.5倍増量した場合(試験区5)でも依然としてビールらしい香味が維持された。 プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法であって、エステルフレーバーを含む香料(但し、ホップ由来成分を除く)の存在下でビール酵母による発酵を行うことを特徴とする、製造方法。 香料がビールテイストを付与するものである、請求項1に記載の製造方法。 炭素源、窒素源および水溶性食物繊維を含む発酵前液を発酵させる、請求項1または2に記載の製造方法。 水溶性食物繊維を製造された飲料100ml当たり1.0〜4.0g含有するよう発酵前液に配合する、請求項3に記載の製造方法。 発酵前液が窒素源の少なくとも一部として、大豆タンパク分解物を含む、請求項3に記載の製造方法。 ビールテイストの発酵アルコール飲料の糖質含有量が0.5g/100ml未満である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法。 ビール酵母による発酵の後に、アルコールを添加する工程を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。 請求項1〜7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された、プリン体含有量が0.5mg/100ml未満であるビールテイストの発酵アルコール飲料。【課題】ビールらしい飲み応えとビールらしいキレ感を備えた、プリン体ゼロのビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法の提供。【解決手段】プリン体ゼロのビールテイストの発酵アルコール飲料の製造方法であって、香料の存在下でビール酵母による発酵を行うことを特徴とする、製造方法。【選択図】なし


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