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タイトル:公開特許公報(A)_ラジカルスカベンジャー及び抗酸化剤アルファ−1−ミクログロブリンの医薬的使用
出願番号:2014236500
年次:2015
IPC分類:A61K 38/16,A61P 9/10,A61P 25/00,A61P 29/00,A61P 19/02,A61P 39/06,C07K 16/18


特許情報キャッシュ

アケルストロム,ボー ハンソン,ステファン オルソン,マーティン,レナース オルソン,マグナス JP 2015071620 公開特許公報(A) 20150416 2014236500 20141121 ラジカルスカベンジャー及び抗酸化剤アルファ−1−ミクログロブリンの医薬的使用 エー1エム ファーマ エービー 513013241 A1M Pharma AB 野河 信太郎 100065248 甲斐 伸二 100159385 金子 裕輔 100163407 稲本 潔 100166936 冨田 雅己 100174883 アケルストロム,ボー ハンソン,ステファン オルソン,マーティン,レナース オルソン,マグナス US 61/135,338 20080718 DK PA200801024 20080718 DK PA200801116 20080818 US 61/189,381 20080818 US 61/197,506 20081027 DK PA200801478 20081027 A61K 38/16 20060101AFI20150320BHJP A61P 9/10 20060101ALI20150320BHJP A61P 25/00 20060101ALI20150320BHJP A61P 29/00 20060101ALI20150320BHJP A61P 19/02 20060101ALI20150320BHJP A61P 39/06 20060101ALI20150320BHJP C07K 16/18 20060101ALN20150320BHJP JPA61K37/04A61P9/10 101A61P25/00A61P29/00 101A61P19/02A61P39/06C07K16/18 6 2011517819 20090717 OL 62 本発明は、酸化ストレスが疾患の進行の原因因子である疾患の治療又は予防におけるアルファ-1-ミクログロブリン(A1M)の医薬的使用に関する。特に、本発明は、対象者におけるフリーラジカル及び/又は遊離ヘモグロビンの存在を伴う疾患又は状態の治療又は予防におけるアルファ-1-ミクログロブリンの医薬的使用に関する。 本発明の発明者らは、例えばヒトで見出される小タンパク質であるアルファ-1-ミクログロブリンが、抗酸化剤及びラジカルスカベンジャーとして著しい特性を示すことを見出した。特に、A1Mの抗酸化特性が、生理的に損なわれた細胞における酸化ストレスを最小限にするために特に適することが開示される。 多くの疾患は、組織における細胞及び分子の望ましくない酸化を伴い、非常に反応性が高いフリーラジカルの形成を導き、これが次に組織損傷を導き得る。抗酸化特性を有する薬剤は、過去数十年の間に開発されているが、酸化ストレスエレメントを有する疾患又は状態の治療又は予防のための広い治療可能性を有する安全な薬剤の開発に対する必要性がまだ存在する。酸化ストレス 酸化は、電子の喪失を伴う化学プロセスであり、すなわち、化合物は、1つ以上の電子がそこから除去されると酸化される。逆の化学プロセスは、還元と呼ばれる。ヒト生体における酸化ストレスは、組織における細胞及び分子の望ましくない酸化の増大として規定される(1で概説される)。これは、酸化ストレスのメディエーターである酸化剤と、酸化を妨げるか、酸化剤を解毒化するか又は酸化された分子を修復するかの何れかができる剤である抗酸化剤との間の不均衡により生じる(図1)。ヒト及び動物における最も重要な酸化剤は、活性酸素種(ROS)であり、これは、過酸化水素、スーパーオキシド及びヒドロキシラジカルを含む。後者の2つは、フリーラジカルと呼ばれる化合物群に属する。フリーラジカルは、外側電子殻での不対電子の存在により、非常に反応性が高い化合物である。ROS及びフリーラジカルの形成は、例えば、金属と酸素結合性有機化合物であるヘムとにより誘導できる。ヘムは、ヘモグロビン及びチトクロムの鉄含有成分であり、これらは、酸素の利用に参加するタンパク質である(以下を参照)。ROS、酸化剤及びフリーラジカルは、タンパク質、DNA及びその他の細胞及び組織の分子成分と反応し、このことが、標的分子の望ましくない修飾と、結局は細胞機能の喪失とを導く。 フリーラジカル及び酸化剤は、環境(食品、空気、煙など)を介して外因的に、そして通常の代謝の副産物として内因的にヒトの体に常に導入される(図1)。内因性のフリーラジカル及び酸化剤は、動物の生体における代謝の重要な成分である。ある量が「ハウスキーピング」細胞プロセスにとって必要である。例えば、生理的細胞シグナル伝達は、細胞性抗酸化剤の複雑な系により制御される細胞性フリーラジカルの連続的な生成に依存する(2に概説される)。つまり、細胞は、通常のよく制御された還元/酸化(レドックス)バランスを、細胞内及び細胞外の両方で維持する必要がある。酸化ストレスは、レドックスバランスが乱されたときに生じる。フリーラジカル及び強力な酸化剤である次亜塩素酸塩(HOCl)も、細菌及び真菌への感染の間に、病原体を死滅させる武器として白血球細胞において生成される(3に概説される)。このことも、酸化ストレスを導く。ヘモグロビン及びその他のヘム含有タンパク質 ヘモグロビンは、ヒトの体内で最も一般的なタンパク質の1つである。これは、赤血球において大量に見出され、その機能は、酸素を肺から全ての細胞へ運ぶことである。酸素は、鉄含有ヘム基に結合し、これがヘモグロビン分子に赤色を与える。全てのヘモグロビンは、通常、赤血球の内部に保持され、よって、その他の細胞及び細胞外成分と接触することが妨げられる。このことは重要である。なぜなら、ヘモグロビンは、強い酸化特性のために毒性であるからである。自己免疫性溶血性貧血、鎌状赤血球貧血及びマラリアのような疾患、又は不適合輸血、幹細胞及び実質臓器の移植並びに大手術を含む医原性の状況において赤血球が破壊されると(溶血)、オキシヘモグロビン(ヘモグロビンと酸素)が赤血球から放出される。オキシヘモグロビンは、自己酸化と呼ばれるプロセスにおいて電子を再編成することにより、それ自身と自発的に反応して、フリーラジカルであるスーパーオキシドと、タンパク質の酸化型であるメトヘモグロビンを形成する。メトヘモグロビンは分解を続け、最終的には遊離のグロビン、ヘム及び鉄を形成する。生成物は、上記のように酸化的である。疎水性分子である遊離のヘムは、細胞膜を横切る拡散により、又は膜を溶解して細胞に浸入できる。遊離ヘモグロビン(赤血球の外側にある)は、よって、多くの疾患及びその他の病状の間の組織損傷の誘導剤である。さらに、遊離オキシヘモグロビンは、間接的に血管収縮剤である。なぜなら、これは、小さい血管及び毛管の最も重要な拡張剤の1つである酸化窒素(NO)と強く結合するからである。遊離のオキシヘモグロビンによるNO除去は、NOの消費と、その後の毛管の構築を導き、高血圧をもたらす。 その他のヘム含有タンパク質は、NADPHオキシダーゼ、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)及びミトコンドリアチトクロムを含む。酵素であるNADPHオキシダーゼ及びミエロペルオキシダーゼは、白血球の2つのサブセットである単球及び好中性顆粒球で見出される。酸化バーストと呼ばれるプロセスにおいて、これらの酵素は、それぞれスーパーオキシドラジカル及び過塩素酸塩を生成し、これらはともに、微生物感染に対する防御に関与する。ミトコンドリアチトクロムのうちで最も重要なものは、チトクロムc及びNADH脱水素酵素である。これらの酵素は、栄養素、貯蔵脂肪などからの電子を用いることにより酸素を水に変換する呼吸複合体I〜IVの成分である。このプロセスにおいて、ほとんどがスーパーオキシドアニオンである大量のフリーラジカルが、ミトコンドリア酵素により中間代謝物として生成される。抗酸化剤 通常、酸化剤の活性は、酸化剤を消去するか又はそれらの酸化反応を妨げる保護因子である抗酸化剤の活性により、均衡が保たれている。しかし、著しく酸化ストレスの条件では、抗酸化剤は圧倒され、分子及び/又は細胞並びに組織に酸化的損傷が導かれることがある。 内因性及び外因性の両方の抗酸化剤について記載されている。20年前に、ヒトのホメオスタシスは、外的に加えられた抗酸化剤に、例えば食物摂取を介するものに依存するというのが優勢な見方であった。今日では、発見されるヒト抗酸化剤の数は増加し、体内で構成的に、すなわち通常の非ストレス条件下で生成されることが示されている。抗酸化剤は、フリーラジカル及び酸化剤を消去することにより働く。これらは、このことを、3つの主な機構により達成できる(詳細については図2A及び図の凡例を参照):1)細胞性好気的代謝又はその他の供給源に由来する電子の、酸化剤への酵素的付加、2)抗酸化剤分子自体からの電子の、酸化剤への非酵素的付加、及び3)ラジカル/酸化剤の、抗酸化剤への結合(除去)。第1のカテゴリーの例は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ及びヘムオキシゲナーゼである。第2のカテゴリーの例は、チオレドキシン、グルタチオン及びアルファ-リポ酸である。ビタミンC及びE、不飽和脂肪酸並びに植物フラボノイドは、外因性のカテゴリー2の抗酸化剤であり、これらは体内で生成されないが、食物中に見出される。第2のカテゴリーの抗酸化剤のいくつか、例えばチオレドキシン及びグルタチオンは、他の供給源からの電子の還元により再生できる(図2A)。食物中のほとんどの抗酸化剤は、それらの標的と反応した後にはほとんど再生されない。よって、消費された(=酸化された)ビタミンC及びEなどは、迅速に除去されない限りは、組織に対して酸化ストレスを示す。 細胞性好気的代謝により生成される電子(結局は、電子輸送体であるNADHを介して栄養素、例えばグルコース、脂質、タンパク質に由来する)は、カテゴリー2の抗酸化剤を再生するとき、及び除去プロセスにおいて(カテゴリー3)、カテゴリー1の抗酸化剤の還元性等価物を提供する(図2A)。よって、ほとんどの抗酸化剤は、無傷の細胞代謝に依存し、細胞内でのみ働く。実際に、細胞内にあるほとんどの抗酸化剤は、通常の細胞性「ハウスキーピング」装置の一部である。 いくつかの抗酸化剤は、ヘモグロビンにより誘導された酸化ストレスに対して専門化されている。血漿タンパク質であるハプトグロビン、ヘモペキシン及びトランスフェリンは、血液中の遊離の細胞外ヘモグロビン、ヘム及び鉄にそれぞれ結合する。細胞タンパク質であるフェリチンは、遊離の細胞性鉄に結合してそれを貯蔵する。ヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1)は、ヘモグロビン、ヘム及びフリーラジカルの濃度の増加に応答してほとんどの細胞において生成され、ビリルビン、一酸化炭素及び遊離の鉄に分解することによりヘムを消去する。 しかし、上記の抗酸化剤のいずれも、3つ全ての機構により作用するものはなく、このような抗酸化剤の全般的な治療的使用は制限されている。全ての作用機構を有する抗酸化剤は、これがより普遍的な使用を有し、機能するために細胞ホメオスタシスにあまり依存しないので、有利であろう。略語ABTS、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾ-チアゾリン-6-スルホン酸)二アンモニウム塩α1M又はA1M、α1-ミクログロブリン又はアルファ-1-ミクログロブリンt-α1M;切断型α1-ミクログロブリン又はアルファ-1-糖タンパク質AGP、α1-酸性糖タンパク質DTT、ジチオトレイトールG3DPH、グリセルアルデヒド-3-ホスフェート脱水素酵素Hb、ヘモグロビンH2DCFDA、2',7'-ジクロロジヒドロフルオレセインジアセテートIVF、体外受精IVH、脳室内出血NEM、N-エチルマレイミドPE、妊娠高血圧腎症PI、ヨウ化プロピジウムROS、活性酸素種;5-IAF、5-ヨードアセトアミド-フルオレセインRIA、ラジオイムノアッセイMPO、ミエロペルオキシダーゼ定義 開示される主題を説明し、請求する場合に、以下の用語を、以下に記載する定義に従って用いる。そうでないと定義しない限り、本明細書において用いられる全ての技術的及び科学的用語は、本開示が属する当該技術における当業者により一般的に理解されるのと同じ意味を有する。いくつかの場合において、一般的に理解される意味を有する用語は、明瞭にする及び/又は参照を容易にするために本明細書において定義され、そのような定義を本明細書に含めることは、当該技術において通常理解されていることに対して実質的な違いを表すと必ずしも解釈されない。本明細書において説明されるか又は参照される技術及び手順は、当業者により、通常、よく理解され、従来の方法論を用いて一般的に用いられる。適切であれば、市販で入手可能なキット及び試薬の使用を含む手順は、そうでないと記載しない限り、製造業者により規定されたプロトコル及び/またはパラメータに従って、通常は行われる。本明細書に記載されるものと同様又は等しい任意の方法及び材料を本開示の実施又は試験において用いることもできるが、好ましい方法及び材料は、本明細書に記載される。 本明細書において、そうでないと記載しない限り、「a」又は「an」は、「1以上」を意味する。 異なる形態のヘモグロビンが存在する。成体ヘモグロビン(ヘモグロビンA)は、2つのアルファポリペプチド鎖及び2つのベータポリペプチド鎖(Hbα、Hbβ)からなり、それぞれは、単一の酸素分子に可逆的に結合する非ペプチドヘム基を含有する。別の成体ヘモグロビン成分であるヘモグロビンA2は、2つのアルファ鎖及び2つのデルタ鎖で構成される(Hbα、Hbδ)。胎児ヘモグロビン(ヘモグロビンF)は、一方、胎児におけるヘモグロビンの主要成分である。このヘモグロビンは、2つのアルファポリペプチド鎖と2つのガンマポリペプチド鎖を有する(Hbα、Hbγ)。 本明細書中の「遊離ヘモグロビン」の用語は、全般的な遊離ヘモグロビンのことであり、全遊離ヘモグロビン、遊離ヘモグロビンA、遊離ヘモグロビンA2、遊離ヘモグロビンF、いずれの遊離ヘモグロビンサブユニット(例えばHbα、Hbβ、Hbδ又はHbγ鎖)又はそれらの任意の組み合わせを含む。これは、治療の標的として用いる場合を除いて、ポリペプチド(タンパク質)又はヌクレオチド(RNA)のいずれかの形態にあるこれらのヘモグロビン物質をさらに含む。「遊離胎児ヘモグロビン」の用語は、遊離ヘモグロビンF又はヘモグロビンFの任意のサブユニットのことをいい、治療の標的として用いる場合を除いて、ポリペプチド(タンパク質)又はヌクレオチド(RNA)の形態にあるヘモグロビンFを含む。 本明細書において、なかでも「遊離ヘモグロビン」又は「遊離ヘモグロビンサブユニット(例えばHbα、Hbβ、Hbδ又はHbγ鎖)」との表現において用いられる場合の「遊離」との用語は、細胞内にとどまる分子のことをいう細胞性ヘモグロビンに対抗して、生物学的流体中を自由に循環するヘモグロビン又はヘモグロビンサブユニットのことをいう。この意味における「遊離」との用語は、よって、無傷の赤血球中に存在するヘモグロビンから遊離ヘモグロビンを区別するために主に用いられる。 本発明に関して種々の文法的形態での「治療又は予防」との用語は、(1)障害の有害な影響、(2)障害の進行又は(3)障害の原因物質を妨げ、治癒し、逆行させ、減弱化し、緩和し、改善し、阻害し、最小限にし、抑制し、又は停止することをいう。 本発明に関する「有効量」との用語は、ある状態及び投与計画について治療的効果を与える量のことをいう。これは、必要とされる添加剤及び希釈剤、すなわち担体又は投与賦形剤とともに所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の予め決められた量である。さらに、これは、活性の臨床的に著しい欠如及び宿主の応答を低減し、最も好ましくは妨げるのに十分な量を意味することを意図する。或いは、治療有効量は、宿主における臨床的に著しい状態の改善を引き起こすのに十分である。当業者により認識されるように、化合物の量は、その比活性に依存して変動し得る。適切な投与量は、必要とされる希釈剤、すなわち担体又は添加剤とともに所望の治療効果を生じるように計算された活性組成物の予め決められた量を含有し得る。さらに、投与される投与量は、用いられる1つ以上の有効成分、治療される患者の年齢、体重などに依存して変動するが、一般的に、0.001〜1000 mg/kg体重/日である。さらに、用量は、投与経路に依存する。 用語「ポリペプチド」は、タンパク質及びそのフラグメントを含む。ポリペプチドは、アミノ酸残基の配列として本明細書に開示される。これらの配列は、アミノ末端からカルボキシ末端の方向に左から右に記載される。標準的な命名法に従って、アミノ酸残基の配列は、以下の示すように3文字又は1文字コードのいずれかで称する:アラニン(Ala、A)、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、システイン(Cys、C)、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly1 G)、ヒスチジン(His、H)、イソロイシン(Iie、I)、ロイシン(Leu、L)、リジン(Lys、K)、メチオニン(Met、M)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、セリン(Ser、S)、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)及びバリン(Val、V)。 「バリアント」とは、参照するポリペプチド又はポリヌクレオチドとは異なるが、必須の特性を保持するポリペプチド又はポリヌクレオチドのことをいう。ポリペプチドの典型的なバリアントは、別の参照するポリペプチドからはアミノ酸配列が異なる。一般的に、違いは、参照するポリペプチドとバリアントの配列が全体的に密接に類似しており(相同)、多くの領域において同一であるように限定される。バリアントと参照されるポリペプチドは、1つ以上の改変(例えば置換、付加及び/または欠失)によりアミノ酸配列が異なり得る。置換又は挿入されたアミノ酸残基は、遺伝子コードによりコードされるものであるか、又はそうでない。ポリペプチドのバリアントは、対立遺伝子バリアントのような天然に存在するものであり得るか、又はこれは天然に存在することが知られていないバリアントであり得る。 当該技術において知られるように、「同一性」は、配列同士を比較することにより決定される2つ以上のポリペプチド配列間の関係である。当該技術において、「同一性」は、ポリペプチド間の配列関係性の程度のことでもあり、このような配列の一続き同士の間の一致により決定される。「同一性」及び「類似性」は、既知の方法により容易に計算できる。 本明細書で用いる場合、「実質的に類似」との用語は、一般的に、天然の、予期される又は平均のものに十分に近い機能、活性又は挙動のことをいい、全ての実際的な目的のために、交換可能であるとみなされる。例えば、実質的に類似の活性を有するタンパク質は、天然のタンパク質より実質的に多少は活性であるとみなされない活性レベルを有するものであろう。 「プロドラッグ」との用語は、インビボで生物活性形態に変換される、核酸及びタンパク質を含む作用剤のことをいう。例えば、プロドラッグは、いくつかの状況において、親化合物よりも容易に投与し得るので、プロドラッグはしばしば有用である。これらは、例えば、経口投与により、生体に利用可能であり得るが、親化合物はそうではない。プロドラッグは、親薬剤よりも、医薬組成物中での溶解性が改善され得る。プロドラッグは、酵素プロセス及び代謝的加水分解を含む種々の機構により親薬剤に変換され得る。 本明細書で用いる場合、「機能的バリアント」とは、必ずしも同じレベルではないが、元のタンパク質又はポリペプチドと同じ機能又は活性を奏し得るタンパク質又はポリペプチドのバリアント(例えば、さらなる配列変更を含むか又は含まない円順列変異タンパク質)のことをいう(例えば、バリアントは、基本的な機能を保持する限り、機能が増進、低減又は変化し得る)。ヒトの健康は、酸化剤と抗酸化剤との均衡に依存する。酸化剤は、通常の代謝の結果として生体内で連続的に生成され、食物、空気などにより外部から導入される。抗酸化剤は、体と、より重要性が低いが、食物により生成される。酸化剤と抗酸化剤との不均衡は、外因性酸化剤の生成若しくは摂取の増加、又は内因性抗酸化剤の生成の減少を原因とし得る。これは、酸化ストレス及び本明細書に記載される種々の疾患をもたらす。A.主要な抗酸化機構。1.細胞代謝又はその他の供給源に由来する電子を用いる酸化剤の触媒的還元。2.抗酸化剤自体に由来する電子を用いるが、細胞代謝又はその他の供給源に由来する電子を用いて抗酸化剤を再生する酸化剤の非触媒的還元。3.抗酸化剤への共有結合による酸化剤の除去。除去反応が酸化的である場合、電子は細胞代謝又はその他の供給源に由来する。大きい丸:抗酸化剤:小さいアメーバ:有害な酸化剤(ラジカル);小さい丸:解毒化された酸化剤(ラジカル)。B.A1Mの抗酸化機構。1.細胞代謝又はその他の供給源に由来する電子を用いる酸化剤の触媒的還元。2.A1M自体に由来する電子を用いる酸化剤の非触媒的還元。3.抗酸化剤への共有結合による酸化剤の除去。除去反応は還元的であり、すなわち、電子が反応により生成する。4.酸化的修飾の修復。 大きい丸:A1M;小さいアメーバ:有害な酸化剤(ラジカル)又は細胞若しくは分子の酸化的修飾。小さい丸:解毒化された酸化剤(ラジカル)又は細胞若しくは分子の還元修飾。A1Mの構造のモデル。モデルは、記載されたようにして調製した(参考文献29)。リボンとして示す8つのβ鎖は、疎水性の内部「リポカリンポケット」を有するわずかに円錐形の円柱を形成する。リポカリンポケットの片側は開放され(矢印で示す)、すなわち小分子の侵入を可能にする。反対側は閉じられている。2つのαへリックスは、円柱として示す。3つの炭化水素基(T5; N17; N96)及び還元酵素活性に関与する4つの側鎖(C34; K92; K118; K130)の位置を示す。A1Mの抗酸化特性。ヘム及びヘモグロビンで例示される酸化剤は、フリーラジカル及び活性酸素種(ROS)の形成を誘導する。これらは、組織成分の有害な酸化反応により、酸化的損傷を引き起こす。A1Mは、このプロセスに干渉する=抗酸化。ヘモグロビン及び酸化剤は、A1Mの合成を刺激する。酸化的損傷は、妊娠高血圧腎症により例示される疾患の発生に関与する。A1Mは、抗酸化により疾患に関与し、その合成は、疾患の間に酸化剤により刺激される。赤色の線:阻害;青色の矢印:正の効果。異なる歯車、すなわち血液代謝物(赤色)、虚血(緑色)、炎症(黄色)及び環境因子(青色)により回転される赤色の車輪として示される酸化ストレス装置。A1MとABTS-ラジカルとの間の反応の暫定的な機構。この図は、電子の流れ、反応機構及びA1Mのラジカル除去機構の反応性アミノ酸側鎖同士の構造的関係を模式的に示す。A1Mは、Y132と強調したC34のチオレート基とを有する「リポカリン」バレル(図2を参照)により表される。後者は、大きいフレキシブルループ上にある。C34チオレート基は、ABTS-ラジカルと反応し、チオリルラジカルと還元されたABTSとが形成される。チオレートは、次いで、Y132との分子内反応により再生され、チロシルラジカルを生成する。その後、チロシルラジカルは、別のABTS-ラジカルと反応して、安定な紫色のtyr-ABTS付加物を形成する。同じ反応が、Y22と、未知の位置のさらなるチロシンについても提案される。A1Mは、沈着したヘムからK562細胞を浄化する。A:K562細胞を、バッファー又は10μMのヘムと30分間培養し、洗浄し、A1Mと2時間インキュベートし、洗浄し、1%NP-40中に懸濁することにより可溶化した。培養培地及び細胞懸濁物を、次いで、吸光度スペクトルを読み取ることにより分析した。B:細胞を、バッファー又は10μMのヘムと30分間インキュベートし(ステップ1)、洗浄し、次いでバッファー、10μM A1M又は10μM AGPと2時間インキュベートした(ステップ2)。上清及び1%NP-40中で可溶化した細胞を、別々に写真撮影した。照射誘導細胞死の阻害。A:ヒト肝細胞癌(HepG2)細胞を、集密まで成長させ、1.3Gyのアルファ粒子を照射し、次いで3日間培養した。照射面積は50μmであった。照射スポット(「照射細胞」)又は照射スポットから0.5 cm (「周囲細胞」)の細胞死を、照射後の種々の時点で蛍光顕微鏡を用いることにより、ヨウ化プロピジウムの取り込みにより測定した。照射は、培地で培養した細胞(●)、培地+5μM A1Mで培養した細胞(▲)に対して行った。培地中で培養した対照細胞(■)には照射しなかった。B及びC:ヒト肝細胞癌(HepG2)細胞を、集密まで成長させ、0.2Gyのアルファ粒子を照射した。0又は10μMのA1Mを含む新鮮な培地を加え、細胞を0〜72時間インキュベートした。全てのインキュベーションの終点にて、細胞を回収し、タンパク質カルボニル基濃度(B)及びHO-1 mRNAレベル(C)を、それぞれELISA及びリアルタイムPCRにより分析した。照射以外の全てのステップは、同一の対照培養とともに行った。10μMのA1M (▼)又は培地のみ(○)とインキュベートした培養物、及び10μMのA1Mとの非照射培養物(△)を調べた。非照射細胞培養物をゼロに設定した。HO-1閾値サイクルの値を、G3DPHに対して標準化し、ΔΔCtを、非照射細胞培養物に対して標準化することにより計算した。3重の実験からの結果を、平均±SDで表す。群同士の統計的比較は、スチューデントのt検定を用いて行った。*P<0.05; ***P<0.001。A1Mの溶血抵抗性効果。赤血球を密度勾配遠心により調製し、PBSで洗浄し、PBS中に1%で懸濁した。A及びB:一定量を、20時間、37℃にて、バッファー(対照)、50μMのFe3+と20μMのH2O2と250μMのアスコルベート(フェントン反応試薬)、フェントン反応試薬+2μMのA1M、又はフェントン反応試薬+10μMのA1Mと、インキュベートした。遠心分離の後に、上清の吸光度を、走査型分光光度法により読み取り(A)、LDH濃度を、比色アッセイにより決定した(B)。C:細胞を、5分間、1時間及び20時間、37℃にて、バッファー(「対照」)、50μMのFe3+と20μMのH2O2と250μMのアスコルベート(「フェントン」)、フェントン反応試薬+5μMの組み換えA1M (「α1-ミクログロブリン」)、又はフェントン反応試薬+5μMのAGP (「オロソムコイド」)とインキュベートした。遠心分離の後に、上清の吸光度を、走査型分光光度法により読み取り、415 nmでの吸光度を時間に対してプロットした。ヘムにより誘導される細胞内酸化。K562細胞を、3μMの酸化感受性プローブH2DCFDAで30分間標識し、洗浄し、新鮮な培地に再懸濁した。A:細胞を、ヘム(5〜20μM)と2時間培養し、フローサイトメトリーで分析した。B:細胞を、バッファーのみ(△)又は10μMのヘム(○)とインキュベートした。細胞懸濁物を、0、2、6又は20時間後に回収し、フローサイトメトリーで分析した。C: A1M (2、5又は10μM)、AGP (2、5又は10μM)又はアスコルベート(10μM)を細胞に加え、その後、10μMのヘムを加えた。細胞を2時間インキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。D:細胞を、10μMのヘムと30分間インキュベートし、PBSで2回洗浄し、A1M (2、5又は10μM)と2時間インキュベートし、フローサイトメトリーで分析した。E:細胞を2時間、培養培地のみ、ヘム(10μM)、A1M (10μM)又はAGP (10μM)のいずれかと培養した。細胞懸濁物を回収し、フローサイトメトリーで分析した。10000細胞の相対的蛍光強度(励起488 nm、発光530 nm)を、3重の平均+/−sdとしてプロットし、100%を、10μMのヘムにより誘導される平均蛍光強度(MFI)と規定した。統計解析を、コンピュータプログラムOrigin (Microcal Software, Inc., バージョン6)で行い、群同士をスチューデントのt検定を用いて比較した。*P<0.05; **P<0.01; ***P<0.001。H2O2及びフェントン反応により誘導される細胞内酸化の阻害。A及びB: K562細胞を、3μMの酸化感受性プローブH2DCFDAで30分間標識し、洗浄し、新鮮な培地中に再懸濁した。細胞をH2O2 (50〜250μM)と0〜20時間培養し、細胞懸濁物をフローサイトメトリーで分析した(A)。10又は20μMのA1Mを細胞に加え、その後、50μMのH2O2を加えた。細胞を6時間培養し、細胞懸濁物をフローサイトメトリーで分析した(B)。10000細胞の相対的蛍光強度(励起488 nm、発光530 nm)を、3重の平均+/−sdとしてプロットし、100%を、250μM (A)又は50μM (B)のH2O2により誘導される平均蛍光強度(MFI)と規定した。図A及びBにおける統計解析を、コンピュータプログラムOrigin (Microcal Software, Inc., バージョン6)で行い、群同士をスチューデントのt検定を用いて比較した。*P<0.05; **P<0.01。C〜F:細胞内タンパク質チオール酸化を、SDS-PAGEにより、Batyら(7)に従って、材料及び方法に記載されるようにして測定した。2〜10μMのA1Mを細胞に加え、その後、10μMのヘムを加え、フローサイトメトリーにより視覚化し(C)、画素密度分析により定量した(E)。2〜10μMのA1Mを加え、その後、10μMの(NH4)Fe(SO4)2+100μMのアスコルベート+20μMのH2O2を含む混合物(図中でFeとして示す)を加え、フローサイトメトリーにより視覚化し(D)、画素密度分析により定量した(F)。1つの代表的な実験を、それぞれ図CとE、及びDとFに示す。A1M-ヘム複合体の生化学的及びレドックス特性。K562細胞(0.5〜1×106)を、バッファー又は50μMのヘムと30分間インキュベートし、洗浄し、次いで、10μMのA1Mと2時間インキュベートした。遠心分離後に、上清を分析した。A:ゲルろ過を、25 ml-Superose 12 HR 10/30カラムで、0.5 mlの試料注入ループを備え、溶出液を280(実線)及び405 nm (点線)にてモニターし、0.5 mlのフラクションを回収する高速・高性能液体クロマトグラフィー(FPLC)装置を用いて行った。カラムは、20 mM Tris-HCl、pH 8.5; 0.1 M NaCl; 0.02% NaN3で平衡化して溶出した。B: ABTS-ラジカル還元活性を、3μMのA1Mの最終濃度を与える細胞上清(△:細胞+ヘム; ●: 細胞+A1M; ○: 細胞+ヘム+A1M)を、35□MのABTS-ラジカルと、25 mMのリン酸Na、pH 8中で混合し、一定間隔で735 nmの吸光度を読み取ることにより測定した。対照反応:3μMのA1M+10μMのヘム、細胞なし(■)。C:反応速度を、0時点を含む最初の40秒間の点の回帰分析により描かれる直線の勾配の絶対値として計算した。細胞の同じ数を、ABTS還元速度の比較のために用いた。全ての値は、3回の別々の実験からの平均及びSDを表す。統計解析を、コンピュータプログラムOrigin (Microcal Software, Inc., バージョン6)で行い、群同士をスチューデントのt検定を用いて比較した。*P<0.05。A:酸化剤により誘導されるHO-1発現の阻害。リアルタイムPCRを用いて、ヘム、過酸化水素又は(NH4)Fe(SO4)2と過酸化水素とアスコルベートとの混合物(フェントン反応)に曝露したK562細胞におけるHO-1 mRNAの発現を調べた。HO-1発現も、A1Mを全ての条件に加えることにより分析した。B〜C:ヘムにより誘導される細胞死の阻害。K562細胞を、ヘムと、A1M又はAGPとともに又はなしで4時間培養した。細胞懸濁物を回収し、10μMのPI (最終濃度)と混合し、フローサイトメトリーで分析した。10000細胞のうちのPI陽性細胞(=死滅細胞)のパーセンテージ(PE-チャネル、フィルタ設定556 LP及び576/26 BP)を、3重の平均+/−sdとしてプロットした。D:A1Mの上方制御。リアルタイムPCRを用いて、ヘム、過酸化水素又は(NH4)Fe(SO4)2と過酸化水素とアスコルベートとの混合物(フェントン反応)に曝露したK562細胞におけるA1M mRNAの発現を調べた。E: A1M発現の停止。K562細胞に、5 nMのA1M特異的siRNAを形質移入し、24時間培養し、洗浄し、材料及び方法に記載されているようにしてH2DCFDAを載せ(右のパネル)、20μMのヘムに2時間曝露した。細胞を、次いで、リアルタイム-PCR (左のパネル)又はフローサイトメトリー(右のパネル)により分析した。RNA抽出、cDNA調製及びPCR増幅は、材料及び方法に記載されるようにして行った。10000細胞の相対的蛍光強度(励起488 nm、発光530 nm)を、3重の平均+/−sdとしてプロットし、100%を、20μMのヘムで攻撃した細胞におけるA1Mにより誘導される平均蛍光強度(MFI)と規定した。全ての発現レベルを、G3DPHに対して標準化し、図にΔΔCtとして示す。統計解析を、コンピュータプログラムOrigin (Microcal Software, Inc., バージョン6)で行い、群同士をスチューデントのt検定を用いて比較した。*P<0.05; **P<0.01。ネガティブ染色及び透過型EMにより視覚化される酸化コラーゲンフィブリルの修復。フィブリルを、I型コラーゲン(0.4 mg/ml)を37℃にて24時間インキュベートすることにより形成した。次いで、フィブリルを、バッファー(A)又はフェントン反応により作製されたヒドロキシラジカル:100μM Fe3+、200μM H2O2、1 mMアスコルベート(フェントン反応) (B)と37℃にて24時間インキュベートした。次いで、A1Mを加え(7μM)、37℃にて24時間インキュベートした(C)。血漿及び尿中のA1Mの定量。試料は、無併発性の通常妊娠(C)、及び妊娠高血圧腎症(PE)と診断された女性からであった。血漿(上)及び尿(下)中のA1M濃度を、RIAにより決定した。分析からの結果を、個別の患者データのスキャッタグラムとして、及び平均±SEMとしてプロットした。***P<0.001、*P<0.05。胎盤中のA1M及び遊離ヘモグロビンとのその相関。試料は、無併発性の通常妊娠(C、○)、及び妊娠高血圧腎症と診断された女性(PE、●)からであった。胎盤(A)中のA1Mタンパク質濃度を、RIAにより決定した。トータルRNAを、ホモジナイズした細胞から抽出し、cDNAを、逆転写により調製し、A1MのmRNA発現を、リアルタイムPCRを用いて分析した(B)。増幅を、明細書に記載されるようにして行った。平均の標準化したCt値を、それぞれの群について示す。胎盤/血漿A1Mと血漿ヘモグロビンとの相関を調べるために、それぞれの患者の試料の胎盤A1M (C)及び血漿A1M (D)の濃度を、血漿ヘモグロビン濃度(材料及び方法に記載されるようにして測定)に対してプロットした。分析の結果を、個別の患者のスキャッタグラム及び平均±SEMとしてプロットした。*P<0.05。A1MはECM成長を刺激する。A:対照胎盤におけるよく組織化されたコラーゲン繊維束(矢印)を示す。B:遊離Hbで潅流した胎盤を示し、分散したコラーゲン繊維束に注目されたい、C:A1M潅流が、コラーゲン生成をどのようにして誘導するかを示す。2重胎盤潅流システムを示す。システムは、母性(右)及び父性(左)の血流を伴う胎盤(楕円)からなる。本明細書で言及する配列の配列表を示す。 本発明において、A1Mが、酸化ストレスにより引き起こされる傷害を回避するか又は最小限にするのに適する広い抗酸化特性を有することが開示される。今回のコンセプトは、A1Mの生理的機能が、組織をフリーラジカル及び酸化剤、おそらく特にヘムから連続的に「掃除機で掃除し」、生成物を、分解及び/又は排出のために腎臓に送達することであるということである。第2の生理的機能は、酸化剤並びに酸化された細胞成分及び組織分子を還元することである。抗酸化剤としての価値に加えて、A1Mの重要な特性は、最大限の量でラジカルと結合し、かつ/又は酸化剤若しくは酸化生成物を還元した後のタンパク質は、組織成分に対して酸化ストレスを示さないことである。言い換えると、ROS、ラジカル及びその他の酸化剤はA1Mにより消去されるので、A1Mは、ラジカルの「シンク」とみなし得る。この特徴は、細胞内ホメオスタシスプロセスが損なわれ、よって、ビタミンE及びDのようなその他の抗酸化剤が作用の後に細胞に与える酸化ストレスを除去できない損傷細胞又はその他の細胞において特に重要である。アルファ-1-ミクログロブリン A1Mは、肝臓において高速で合成され、血流中に分泌され、血管壁を横切って、全ての器官の血管外区画へ輸送される。このタンパク質は、その他の組織(血液細胞、脳、腎臓、皮膚)でも合成されるが、より低い速度である。サイズが小さいので、遊離のA1Mは、腎臓において血液から迅速にろ過される。AIMは、全般的に、そして特に遊離ヘモグロビンに対して優れた抗酸化特性を有する;この特性により、酸化ストレスを伴うか、又は遊離ヘモグロビンの存在が疾患若しくは状態を誘導又は悪化させる種々の疾患の治療又は予防においてそれを用いることが適切になる。 アルファ-1-ミクログロブリン(A1M)は、幾つかの様式で抗酸化を提供する内因性抗酸化剤である(図2B及び図の凡例)。つまり、本発明は、酵素的還元酵素(カテゴリー1)、非酵素的還元(カテゴリー2)及びラジカル除去(カテゴリー3)の特性を組み合わせたことが見出されたA1Mに関する。さらに、非酵素的還元機構(カテゴリー2)は、電子供与の幾つかのサイクルを用いて繰り返し利用できる。さらに、ラジカルスカベンジャー機構(カテゴリー3)は、タンパク質の抗酸化能をさらに増加させる電子の正味の生成をもたらす。言い換えると、タンパク質は、それ自体で電子を供給し、細胞代謝に依存せず、細胞内及び細胞外の両方で働くことができる。さらに、A1Mは、組織成分に負荷された酸化的損傷を修復できる(カテゴリー4に割り当てられる独特の特性)。ラジカル除去機構の詳細な記載について、以下も参照されたい。 A1Mは、保存された三次元構造を有するが、非常に多様な機能を有する、動物、植物及び細菌からのタンパク質の群であるリポカリンスーパーファミリーのメンバーである。それぞれのリポカリンは、160〜190アミノ酸の鎖からなり、これは、疎水性内部を有するβ-バレルポケットに折り畳まれる。12個のヒトリポカリン遺伝子が知られている。ヒトリポカリンのうち、A1Mは、現在までに哺乳類、鳥類、魚類及びカエルで同定されている26 kDaの血漿及び組織タンパク質である。A1Mの三次元構造のモデルを、図3に示す。A1Mは、肝臓において高速で合成され、血流中に分泌され、血管壁を横切って、全ての器官の血管外区画へ迅速に(T1/2=2〜3分)輸送される。このタンパク質は、その他の組織(血液細胞、脳、腎臓、皮膚)でも合成されるが、より低い速度である。A1Mは、血液中及び間質組織中で、遊離の単量体の形態と、より大きい分子(IgA、アルブミン、プロトロンビン)との共有結合複合体との両方で見出される。サイズが小さいので、遊離のA1Mは、腎臓において血液から迅速にろ過される。主要な部分は、次いで、再び吸着されるが、著しい量が尿に排出される。A1Mの配列及び構造特性 ヒトA1Mの完全な配列は、Kaumeyerら(5)により最初に報告された。このタンパク質は、183アミノ酸残基からなることが見出された。これ以来、さらに10個のA1M cDNA及び/又はタンパク質が、他の哺乳類、鳥類、両生類及び魚類から検出され、単離され、かつ/又は配列決定されている。A1Mのペプチド鎖の長さは、C末端の変動を主な理由として、種のうちでわずかに異なる。異なる推定アミノ酸配列のアラインメント比較は、同一性のパーセンテージが、げっ歯類又は有蹄動物(ferungulates)とヒトとの間のおよそ75〜80%から、魚類と哺乳類との間のおよそ45%まで変動することを示す。34位の遊離のシステイン側鎖は、保存されている。この基は、レドックス反応(以下を参照)、他の血漿タンパク質との複合体形成、及び黄褐色発色団への結合に関与する。他のリポカリンの既知のX線結晶構造に基づくコンピュータ3Dモデルは、Cys34が溶媒に曝露され、リポカリンポケットの開口部近くにあることを示唆する(図3を参照)。別のリポカリンである補体因子C8γも、34位に不対Cysを有し、これは、活性C8複合体の形成に関与する。 本明細書において、「アルファ-1-ミクログロブリン」との用語は、配列番号1(ヒトA1M)及び配列番号2(ヒト組み換えA1M)において同定されるアルファ-1-ミクログロブリンとともに、類似の治療効果を有するそのホモログ、フラグメント又はバリアントをカバーすることを意図する。好ましい態様において、アルファ-1-ミクログロブリンは、本明細書において同定される配列番号1又は2のとおりである。図19に、ヒトA1M及びヒト組み換えA1M (それぞれ配列番号1及び2)のアミノ酸配列、並びに対応するヌクレオチド配列(それぞれ配列番号3及び4) の配列表を示す。 上記のように、A1Mのホモログは、本明細書の記載に従って用いることもできる。理論的には、最も初期に見出された魚類(プレイス(plaice))からのものを含む全ての種からのA1Mを用いることができる。A1Mは、ヒト、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウシ及びプレイスからの単離形態でも利用可能である。 A1Mのホモログ、バリアント及びフラグメントを考慮して、以下のものが、抗酸化効果についてのタンパク質の重要な部分として同定されている:Y22 (チロシン、22位、塩基対64〜66)C34 (システイン、34位、塩基対100〜102)K69 (リジン、69位、塩基対205〜207)K92 (リジン、92位、塩基対274〜276)K118 (リジン、118位、塩基対352〜354)K130 (リジン、130位、塩基対388〜390)Y132 (チロシン、132位、塩基対394〜396)L180 (ロイシン、180位、塩基対538〜540)I181 (イソロイシン、181位、塩基対541〜543)P182 (プロリン、182位、塩基対544〜546)R183 (アルギニン、183位、塩基対547〜549)(この書類を通してのアミノ酸及びヌクレオチドの番号付けは、配列番号1及び3を参照する。図3及び6も参照されたい。他の種からの他のA1M、A1Mアナログ又はその組み換え配列を用いるならば、当業者は、活性部位又は酵素活性を担う部位のアミノ酸をどのように同定するかを理解している。) ヒトA1Mは、3つの位置にてオリゴ糖で置換されており、これらは、2つのシアリル化複合型の、おそらくはAsn17及びAsn96に結合した2本のアンテナ状の炭水化物と、Thr5に結合したもう1つの単純オリゴ糖である。異なる種からのA1Mタンパク質の炭水化物含量は、ツメガエル(Xenopus leavis)での全くグリコシル化がないものから、異なるグリコシル化パターンのスペクトルまでの範囲で大きく異なる。しかし、ヒトにおけるAsn96に相当する1つのグリコシル化部位は、哺乳類において保存され、このことは、この特定の炭水化物が機能的に重要であろうことを示唆する。 A1Mは、血漿又は尿から精製したときに黄褐色である。この色は、ポケットの入口に主に存在する種々のアミノ酸側基に共有結合した不均質な化合物により引き起こされる。これらの修飾は、A1Mによりインビボで共有的に捕捉された有機酸化剤、例えばヘム、キヌレニン及びチロシルラジカルの酸化分解生成物をおそらく代表する(6〜8、10)。 A1Mは、電荷及びサイズも不均質であり、より茶色に着色されたA1M分子は、より負に荷電されている。この不均質性についての可能性のある説明は、異なる側基が異なるラジカルで種々の程度に修飾されることと、これらの修飾がタンパク質の正味の電荷を変化させることである。共有結合着色物質は、Cys34及びLys92、Lys118及びLys130に局在化し、後者は100〜300 Daの分子質量を有する。トリプトファン代謝生成物であるキヌレニンは、血液透析患者の尿からのA1Mにおいてリジル残基に共有結合していることが見出され、この場合のタンパク質の茶色の原因であるようである(6)。合成ラジカルABTS (2,2'-アジノ-ジ-(3-エチルベンゾチアゾリン)-6-スルホン酸)の酸化フラグメントは、Y22及びY132の側鎖に結合した(10)。 C34は、A1Mの反応中心である(9)。これは非常に電気陰性になり、このことは、K69、K92、K118及びK130の正に荷電された側鎖が近傍にあることにより電子を提供する高い能力を有することを意味し、このことは、硫黄原子の酸化に必要なC34チオール基の脱プロトン化を誘導する。予備的なデータは、C34が、既知の最も電気陰性基の1つであることを示す。 理論的には、以下により詳細に記載するA1Mの独特の酵素的及び非酵素的なレドックス特性を特徴付けるアミノ酸(C34、Y22、K92、K118、K130、Y132、L180、I181、P182、R183)を、別のフレームワーク、例えば同じ全体的な折り畳みを有するタンパク質(別のリポカリン)或いは可塑性ポリマー、ナノ粒子若しくは金属ポリマーのような完全に人工の有機又は無機分子上で類似の三次元構造に組み立てることができる。 これらのアミノ酸の幾つか(青色の卵形、リジンは「+」で示す)、A1Mフレームワーク(バレル)、電子の流れ及びラジカル捕捉の三次元の配置を、図6に示す。 よって、反応中心及び上記のようなその周辺を含む構造を含むホモログ、フラグメント又はバリアントが好ましい。 本開示のポリペプチドの構造に改変及び変更を行うことができ、このポリペプチドと同様の特徴を有する分子がまだ得られる(例えば保存的アミノ酸置換)。例えば、あるアミノ酸を、認識される活性の喪失なく配列中で他のアミノ酸に置換できる。これは、ポリペプチドの生物学的機能活性を規定するそのポリペプチドの相互作用能力及び性質であるので、あるアミノ酸配列置換をポリペプチド配列中で行うことができ、それにもかかわらず、同様の特性を有するポリペプチドが得られる。 このような変更を行う場合、アミノ酸の疎水性親水性指標を考慮できる。ポリペプチドに対して相互作用の生物学的機能を与えることにおけるアミノ酸の疎水性親水性指標の重要性は、当該技術において通常理解されている。あるアミノ酸を、同様の疎水性親水性指標又はスコアを有する他のアミノ酸に置換でき、同様の生物活性を有するポリペプチドがまだ得られる。それぞれのアミノ酸は、その疎水性及び電荷特性に基づいて、疎水性親水性指標を割り当てられる。これらの指標は、次のとおりである:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。 アミノ酸の相対的な疎水性親水性の特徴は、得られたポリペプチドの二次構造を決定し、これが次いで、酵素、基質、受容体、抗体、抗原のようなその他の分子とのポリペプチドの相互作用を規定すると考えられている。アミノ酸を、同様の疎水性親水性指標を有する別のアミノ酸分子により置換して、機能的に等価なポリペプチドがまだ得られることが当該技術において知られている。このような変更において、その疎水性親水性指標が±2以内であるアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらにより好ましい。 特に、それにより創出される生物学的機能が等価なポリペプチド又はペプチドを、免疫学的実施形態において用いることを意図する場合は、類似のアミノ酸の置換は、親水性に基づいて行うこともできる。以下の親水性の値が、アミノ酸残機に対して割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);プロリン(-0.5±1);トレオニン(-0.4);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。アミノ酸を、類似の親水性の値を有する別のもので置換でき、生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なポリペプチドがまだ得られることが理解される。このような変更において、親水性の値が±2以内のアミノ酸の置換が好ましく、±1以内のものが特に好ましく、±0.5以内のものがさらにより好ましい。 上記で概説したように、アミノ酸置換は、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えばそれらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに一般的に基づく、上記の特徴の1つ以上を考慮した置換の例は、当業者に公知であり、これらに限定されないが、以下のものを含む(元の残基:置換の例):(Ala: Gly、Ser)、(Arg: Lys)、(Asn: Gln、His)、(Asp: Glu、Cys、Ser)、(Gln: Asn)、(Glu: Asp)、(Gly: Ala)、(His: Asn、Gln)、(Ile: Leu、Val)、(Leu: Ile、Val)、(Lys: Arg)、(Met: Leu、Tyr)、(Ser: Thr)、(Thr: Ser)、(Trp: Tyr)、(Tyr: Trp、Phe)及び(Val: Lle、Leu)。よって、この開示の実施形態は、上記のようなポリペプチドの機能的又は生物学的等価物を意図する。特に、ポリペプチドの実施形態は、興味対象のポリペプチドの約50%、60%、70%、80%、90%及び95%の配列同一性を有するバリアントを含み得る。 本明細書において、2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列の間の相同性は、「同一性」のパラメータにより記載される。配列のアラインメント及び相同性スコアの計算は、タンパク質及びDNAの両方のアラインメントに有用な完全Smith-Watermanアラインメントを用いて行い得る。デフォルトスコア付け行列BLOSUM50及び単位行列を、タンパク質及びDNAのアラインメントのためにそれぞれ用いる。ギャップにおける1つ目の残基についてのペナルティは、タンパク質について-12であり、DNAについて-16であるが、ギャップにおける追加の残基についてのペナルティは、タンパク質について-2であり、DNAについて-4である。アラインメントは、FASTAパッケージバージョンv20u6を用いて行い得る。 タンパク質配列の多重アラインメントは、「ClustalW」を用いて行い得る。DNA配列の多重アラインメントは、タンパク質アラインメントを鋳型として用い、アミノ酸を、DNA配列からの対応するコドンに置き換えることにより行い得る。 或いは、異なるソフトウェアを、アミノ酸配列及びDNA配列を整列させるために用い得る。2つのアミノ酸配列のアラインメントは、例えば、EMBOSSパッケージ(http://emboss.org)バージョン2.8.0からのNeedleプログラムを用いることにより決定される。Needleプログラムは、記載される全体的なアラインメントアルゴリズムを実行する。用いられる置換行列はBLOSUM62であり、ギャップ開始ペナルティは10であり、ギャップ伸長ペナルティは0.5である。 アミノ酸配列同士、例えば配列番号1と別のアミノ酸配列(例えば配列番号2)との間の同一性の程度は、2つの配列のアラインメントにおける厳密な一致の数を、「配列番号1」の長さ又は「配列番号2」の長さの何れか最も短いほうで除することにより計算される。結果は、パーセント同一性として表される。 厳密な一致は、二つの配列が、オーバーラップの同じ位置に同一アミノ酸残基を有する場合に生じる。 適切であれば、2つのヌクレオチド配列間の同一性の程度は、同一性テーブル(identity table)及び以下の多重アラインメントパラメータ:ギャップペナルティ10、及びギャップ長ペナルティ10でのLASER-GENE(商標)MEGALIGN(商標)ソフトウェア(DNASTAR, Inc., Madison, Wl)を用いるWilbur-Lipman法により決定できる。対アラインメントパラメータは、Ktuple=3、ギャップペナルティ=3、及びウィンドウ=20である。 ある特定の実施形態において、配列番号1のアミノ酸との又はこれに対するポリペプチドのアミノ酸配列の同一性のパーセンテージは、i)2つのアミノ酸配列を、BLOSUM62置換行列、ギャップ開始ペナルティ10、及びギャップ伸長ペナルティ0.5を用いるNeedleプログラムを用いて整列させ、ii)アラインメントにおける厳密な一致の数を計数し、iii)厳密な一致の数を、2つのアミノ酸配列のうちの最も短いものの長さで除し、iv) iii)の除算の結果をパーセンテージに変換することにより決定される。本発明のその他の配列に対する又はそれとの同一性のパーセンテージは、同様の様式で計算される。 例えば、ポリペプチド配列は、参照配列と同一、すなわち100%同一であり得るか、又はこれは、%同一性が100%未満になるように、参照配列と比較してある整数の数までのアミノ酸の変更を含み得る。このような変更は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換又は非保存的置換を含む)又は挿入から選択され、この変更は、参照ポリペプチド配列のアミノ若しくはカルボキシ末端の位置、又は参照配列内のアミノ酸のうちで個別に、又は参照配列内で1つ以上の連続する基のいずれかに散在されたこれらの末端位置の間のいずれかの場所で生じ得る。 保存的アミノ酸バリアントは、非天然アミノ酸残基も含み得る。非天然アミノ酸は、限定することなく、トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、N-メチル-グリシン、アロトレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシ-エチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-及び4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニル-アラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン及び4-フルオロフェニルアラニンを含む。幾つかの方法が、タンパク質中に非天然アミノ酸残基を組み込むために当該技術において知られている。例えば、化学的にアミノアシル化したサプレッサーtRNAを用いてナンセンス変異を抑制するインビトロ系を用いることができる。アミノ酸及びアミノアシル化tRNAを合成する方法は、当該技術において知られている。ナンセンス変異を含むプラスミドの転写及び翻訳は、大腸菌(E. coli) S30抽出物と、市販の酵素と、その他の試薬とを含む無細胞系において行われる。タンパク質は、クロマトグラフィーにより精製される。2番目の方法において、翻訳は、ツメガエル(Xenopus)の卵母細胞において、変異mRNAと化学的にアミノアシル化したサプレッサーtRNAとをマイクロインジェクションすることにより行われる。3番目の方法において、大腸菌細胞を、置き換えられる天然アミノ酸(例えばフェニルアラニン)の非存在下で、かつ所望の非天然アミノ酸(例えば2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン又は4-フルオロフェニルアラニン)の存在下で培養する。非天然アミノ酸は、その天然の対応物の場所にて、タンパク質中に組み込まれる。天然アミノ酸残基は、インビトロ化学修飾により、非天然の種に変換できる。化学修飾は、部位特異的突然変異誘発と組み合わせて、置換の範囲をさらに拡張できる。A1Mの抗酸化特性を支持するのに十分な三次元構造を提供する代替の化学構造は、別の技術、例えば人工足場、アミノ酸置換などにより提供され得る。さらに、上記に列挙し、図3及び6に示すようなA1Mの活性部位を模倣する構造は、A1Mと同じ機能を有すると考えられる。酸化ストレスに関連する疾患 以下において、酸化ストレスを伴う疾患及び状態を記載する。A1Mを、以下の記載するいずれの疾患の治療にも用い得ると考えられる。 酸化ストレスは、種々の疾患において報告されている。上記のように、酸化ストレスは、フリーラジカルと保護的抗酸化剤との間の不均衡がある状況である。酸化ストレスは、種々の生物活性因子を放出する広範囲の急性又は長期の生理的反応を誘導できる。次いで、これらは、酸化ストレスなどをさらに加速させるさらなる酸化/フリーラジカル形成を促進できる。よって、生理的反応と酸化ストレスは、歯車として互いに相互作用し、これらは一緒に、酸化ストレス装置をますます速く回転させる(図5)。より重要な歯車のいくつかは、炎症、虚血及び再潅流、血液ヘモグロビン及び環境/食物由来の因子であり、これらについては以下に論じる。A) 感染及び炎症 炎症は、全ての種類の感染に対する広範囲の二次免疫反応についての集合的な用語であり、自己免疫疾患のような幾つかのその他の疾患も特徴付ける。体は、細菌感染に対して、白血球(単球及び顆粒球)を感染部位に動員することにより応答する。上記のように、白血球は、スーパーオキシドアニオンと過塩素酸塩とを生成する。鉄を得るために、多くの細菌は溶血性であり、すなわち、これらは、赤血球の破壊とその周囲の(bystander)組織成分へのヘモグロビンの曝露とを誘導する分子を生成する。さらに、炎症は、壊死を特徴とし、すなわち、感染部位にて細胞は、破壊されて死ぬ。このことは、例えば、フリーラジカルを生成するミトコンドリア呼吸酵素の曝露を導く。TNF-アルファのような炎症誘発性サイトカインは、細胞内抗酸化剤、スーパーオキシドジスムターゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼを損なう。このようにして、感染及び炎症の間に、多くの因子が酸化ストレスに貢献する。 この群における疾患の例は、炎症性肺疾患である慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。肺及び気道の炎症性疾患は、血管外組織の強い病原性酸化を伴う。これは、好中球及び好酸性顆粒球の活性化、及びそれらによるペルオキシダーゼの分泌、並びに分子状酸素からの攻撃により媒介される。 関節炎は、炎症を伴う様式で関節が損傷される疾患の群である。関節炎は、多くの原因、例えば強制外傷、細菌感染、痛風及び自己免疫攻撃を有し得る。関節の炎症は、軟骨、結合組織及び細胞の高いレベルの酸化ストレス及び酸化的修飾に関連する。 高いレベルの炎症を有する状態のその他の例は:・ 自己免疫疾患(関節リウマチ、甲状腺疾患など)・ 感染性疾患・ 神経変性性疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病、ALS、ハンチントン病及び多発性硬化症MS)・ 炎症性腸疾患・ 関節炎である。B) 虚血及び再潅流に関連する疾患 血管が永続的若しくは間欠的に閉塞又は損傷された場合、血流の減少及び低酸素(虚血)に起因する細胞死により、フリーラジカルの形成が増加する。血流が回復したときに(再潅流)、局所酸素供給の急激な上昇が、細胞成分と酸素との反応からのROSの劇的な増加を導く。例えば、DNA代謝の必須で豊富な成分である酵素、キサンチン脱水素酵素は、血液の酸素を用いてスーパーオキシドアニオンを形成する。再潅流が長期間持続する場合、ROSの形成が、内因性抗酸化剤の能力を超え、酸化ストレスが生じる。内皮の傷害は酸化ストレスにより誘導され、これが次いで、血小板を活性化し、血栓形成を誘導し、血管の閉塞のさらなる脅威となる。 脳卒中は、血栓症、塞栓症、出血などによる血流の閉塞を原因とする脳の虚血-再潅流に関連する状態である。臓器、例えば心臓の梗塞は、血液の閉塞及び虚血-再潅流効果による組織の壊死を伴う状態である。アテローム性動脈硬化症は、動脈の血管に影響する疾患である。これは、マクロファージ型の白血球の蓄積が原因の一部であり、低密度リポタンパク質(LDL)により促進される動脈壁での慢性炎症性応答である。酸化ストレスは、アテローム性動脈硬化症の発生における強力な成分である。つまり、酸化剤とフリーラジカルは、LDL、内皮細胞膜及び血管のその他の成分の酸化的修飾に参加する。酸化されたLDL (ox-LDL)は、内皮の特異的受容体に結合し、ox-LDLの局所的蓄積は単球の動員を導き、これが特定の部位にてマクロファージに分化する。このことが、炎症、顆粒球の誘引、並びにNADPH-オキシダーゼ、MPO及びその他の供給源からのROSの局所的生成の増加を導く。アテローム性動脈硬化プラークをもたらす局所的内皮損傷は、結局は血流を閉塞させる。・ 動脈硬化症・ 虚血性心臓疾患・ 脳卒中及び虚血に対して二次的なその他の状態・ 高血圧障害・ 代謝障害(糖尿病、脂質代謝異常、高コレステロール血症) 医原性の虚血及び再潅流に関連する損傷は、原疾患の治療に対して二次的に生じる。治療中に、図5に示す異なるギアが、酸化ストレスを駆動し得る。 例えば、透析の種々の方法が、喪失された腎臓機能を置き換えるために行われる。腎臓の非常に複雑な機能は、体の水と塩の均衡を維持することと、有害で毒性の分解生成物を除去することに要約できる。腎臓は、血液の連続的なろ過と、その後の適切な量の水を含むほとんどの成分の能動的再吸収並びに過剰の水、塩及び毒性の分解生成物の排出とにより働く。フリーラジカル及びROS、特に尿酸塩及び3-ヒドロキシ-キヌレニンのような小さい遊離の有機ラジカルは、腎臓により血液から通常は除去される毒性物質の例である。透析は、腎臓の完全な置き換えからは遠く、透析患者は、よって、酸化ストレスに苦しむ。さらに、透析プロセス自体がこれもまた酸化ストレスに寄与する炎症性応答を誘導することが示されている。推測では、透析患者のうちでのアテローム性動脈硬化症のより高い発生率は、よって、腎臓不全及び透析プロセスに関連する酸化ストレスにより説明され得る。 虚血性心臓患者は、日常的なベースでバイパス術を受ける。手術中に、心臓-肺の装置は血液をポンピングする。この間に、赤血球の多くは破壊され、上記のように効力のある酸化剤である遊離ヘモグロビンをもたらす。さらに、冠状動脈手術及びその他の血管手術は、手順の間に血流を停止することを必要とする。血流が再び確立されたときに、再潅流損傷が生じる。 細胞及び臓器の移植。細胞及び臓器の移植が遭遇する問題の1つは、貯蔵の間に臓器及び細胞においてROSが形成されることである。この状況は、虚血-再潅流の間に遭遇する問題と似ている。この酸化ストレスは、ROSスカベンジャーを用いることにより、動物モデルにおいて妨げられるか又は少なくとも低減させることができる。移植に用いるための実質臓器の貯蔵及び輸送に用いられる媒体を最適化するための試みに対して、多くの努力がなされている。特別に設計された栄養素を含む冷却塩溶液が、この目的のために今日用いられている。しかし、許容される虚血時間(酸素なしの時間)は、心臓、肺、腎臓及び肝臓のような臓器についてはまだ非常に制限される。興味深いことに、膵島細胞及び種々のいわゆる幹細胞(例えば造血及び間葉系の対応物(dito))も、移植の目的のために世界中を輸送されるようになっている。同様に、網膜組織の移植は、動物において現在試みられている将来の可能性のある治療である。網膜の酸化的損傷を特徴とする疾患は、しばしば、網膜移植の適応症である。網膜組織を予め条件付けすること(pre-conditioning)により、それを酸化的細胞死から保護できることが最近示された。 その例は、よって、以下のものを含む:・ 腎臓透析の使用・ 心臓及び肺の装置の使用・ 血管手術・ 細胞及び臓器の移植C)遊離ヘモグロビン、ヘム及び鉄イオンの結果としての酸化ストレス 以前に記載されるように、遊離ヘモグロビン及びその代謝産物は、最も強い内因性の酸化剤に含まれる。いくつかの保護的抗酸化酵素及びタンパク質系は、酸化を妨げるために天然に存在する。多くの疾患において、出血は、病態生理学の一部であり、酸化ストレスを増進する。医原性の原因も一般的である。出血は、全身又は閉鎖区画内、すなわち、頭蓋内、関節内、胃腸管内及び皮膜に包まれた臓器内のいずれかで生じることができる。 赤血球の制御されない破壊は、ヘモグロビン血症及びヘモグロビン尿症、すなわちそれぞれ血液及び尿中のヘモグロビン濃度の上昇を導き得る。血漿ヘモグロビンは、腎臓の糸球体を通してろ過され、尿細管細胞により再吸収され、ここでこれは、ヘモグロビン過剰の状態の間にヘモジデリンとよばれる沈殿物の形成を導いて、酸化的損傷を引き起こし得る。ヘモグロビン過剰が高すぎて治療ができない場合、腎臓は不可逆的に損傷され、透析又は腎臓移植が必要とされる。 赤血球が溶解される疾患は、血管の内側又は血管の外側のいずれかの溶解事象の位置により分類される。血管内及び血管外の溶血はともに貧血を引き起こし、これは、溶解の原因に応じて異なるカテゴリーに分けることができる。すなわち、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の3つの主要な群は、温式IgG媒介AIHAと、寒冷IgM媒介AIHA又は寒冷凝集素症候群と、薬物誘導免疫溶血性貧血である。これらの疾患の全てにおいて、抗体は、患者の外被(patient coat)により作られ、赤血球を破壊する。抗体媒介溶血性貧血の別の特別な形態は、出生児における赤血球表面上に父方の抗原に対する血液型抗体を作成するための免疫された胎児/新生児から母親において見出される。新生児の溶血性疾患は、潜在的に致死的な疾患である。なぜなら、これは、危険な低いヘモグロビンの値と、ヘモグロビンを循環できる赤血球の相対的な欠如により乳児が水を蓄積する危険な状態である胎児水腫とを導き得るからである。 赤血球代謝の多くの異なる酵素の欠損も、溶血性症候群に関連し得る。機械的溶血、及びグリコシルホスファチジルイノシトールにより繋留された補体調節タンパク質の欠如による後天性の血管内溶血性疾患である発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は、血管内溶血のその他のあまり一般的でない形態である。さらに、臨床的な輸血又は移植の後に、即時型又は遅延型の溶血が有害事象として生じ得る(以下を参照)。骨髄異形成症候群及び赤血球異形成貧血の患者も、非効率なRBC生成と、その後の溶解とに罹患し得る。過剰の遊離ヘモグロビンに関連する状態に加えて、ヘモクロマトーシスを含む鉄代謝障害の患者は、酸化ストレスの増加に苦しみ、溶血性疾患の同様の患者は、上方制御された抗酸化機構から利益を得ることができる。 これらの溶血性の状態に起因するヘム及び遊離ヘモグロビンはともに、種々の活性酸素種(ROS)の発生に関連し、これが、基質分子、細胞膜及び上記のようなその他の組織成分に酸化的損傷を誘導できる。特に、血管内溶血は、血漿中の遊離ヘモグロビンの許容できないほど高い濃度をもたらし、これが、高血圧、腎臓損傷及び循環虚脱を導き得る。これは、誤ったABO型の血液単位の投与の後に、急性溶血性輸血反応の一部として、最も劇的で潜在的に致死的な形態として観察できる。全体的な状態は、酸化ストレス応答の免疫的誘導を特徴とする。例えば、血漿中のヘモグロビン結合性ハプトグロビンの供給は、迅速に取って代わられる。なぜなら、ヘモグロビンとハプトグロビンとの複合体は、CD163受容体により血流中から迅速に除去されるからである。よって、血漿中のハプトグロビンの低下又は不在は、溶血の診断マーカーとして用いられる。同様に、遊離ヘムは、血漿中のヘモペキシンと結合し、この複合体は、次いで、CD91受容体との相互作用により血漿中から除去される。 感染は、溶血を導き得る疾患のさらに別の型である。マラリアにおいて、赤血球には、寄生体であるプラスモジウム(Plasmodium)が侵入し、これが、供給し、繁殖させ、間欠的に細胞を破壊させる。パルボウイルスB19は、P血液型抗原を介して赤血球前駆細胞に付着し、それらに優先的に感染する。小児では、このような感染は、赤血球破壊を引き起こす自己抗P抗体の生成によりしばしば特徴付けられる。同様に、マイコプラズマ(Mycoplasma)感染は、病原体及びI血液型としばしば交差反応する抗体応答を上昇させ、よって、時に生命を脅かし得る血管内溶解を引き起こす。 溶血性成分を有する別の群の疾患は、世界中の多数の人で見出される。ヘモグロビンの遺伝的障害の多数の変形が存在するが、最も重要なもののいくつかをここに記載する:ヘモグロビンの変異がHbSバリアントをもたらす鎌状赤血球貧血は、特に、酸素分圧が低下する場合に、赤血球の形成異常及び不安定化を伴う。サラセミアは、ヘモグロビン合成を低減し、ときに溶血を導く遺伝的障害の別の群である。鎌状赤血球患者とサラセミアはともに、鉄過剰、炎症及び酸化ストレスに罹患することが示されている。興味深いことに、別のリポカリンメンバーであるNGALは、酸化ストレスが増加することが知られているサラセミア患者において上方制御されることが最近示された。これらの種類の障害は、ヘモグロビンの曝露と、上記の下流の事象:ROS、遊離ヘム、遊離鉄の形成、酸化ストレス及び血管収縮とを導く。無細胞ヘモグロビンに関連する医原性状態 輸血。血液ドナーからの赤血球が患者に輸血される場合に、血液単位の貯蔵は、4℃にて最大で42日間である。これは、プラスチックバッグ内での細胞要素の最適以下の機能及び安定性をもたらす。例えば、輸血される血液成分の最適な質を確実にする規制があるが、細胞からのある程度の量のヘモグロビン漏出は、回避できず、予測される。細胞骨格タンパク質の進行性の酸化と、貯蔵赤血球における変性ヘモグロビンの蓄積も存在する。さらに、損傷された細胞のかなりのパーセンテージが、溶解されるか又は注入の際にレシピエントの血流中から迅速に除去される。よって、血液センターでの交差適合などにより最良の可能な血液型の適合が確実にされたとしても、レシピエントは輸血の後に遊離ヘモグロビンの量の増加に苦しみ、結局はここでもまた酸化ストレスの負の影響に苦しむ。 このことにもかかわらず、年間でほぼ0.5百万の血液単位がスウェーデンにおいて与えられ、よって、世界全体では数百万である。今日では、輸血は、手術処置、安全な産科の活動、癌の造血抑制性攻撃的化学療法処置、及び幹細胞又は臓器の移植を含む近代的な医療に必須であるとみなされている。 代用血液。輸血可能な血液に対する必要性が、実際の供給量を連続して超過しているので、血液の代替の供給源が定常的に要求されている。いくつかの代用血液製品が、今日、北米並びに欧州及びスウェーデンで臨床試験されている。代用血液の主要な群は、ヘモグロビンベースの酸素担体(HBOC)である。これらは、ヘモグロビン分子の有害な影響を最小限にするためにとにかく改変された無細胞ヘモグロビンの濃縮溶液からなる。HBOCは、今日では臨床的に用いられていないが、外傷により誘導される出血性ショックのような適応症及び低血圧の予防のための現実性は、代用血液を用いる治療の前に時間の問題のみであると考えられている。 上記のようなその最もよい状態での輸血の状況に加えて、遊離ヘモグロビン及びヘムの負担(よって酸化ストレス)の危険性がさらに増加うする3つの状況がある:1) 多くの先進国での今日のヘモビジランス(すなわち血液サーベイランス)システムからの現在の統計は、輸血に伴う最も頻度が高く重篤な事変が血液型に関連することを明確に示している。例えば、これは、UKにおけるSerious Hazards of Transfusion (SHOT)データベースにおける全ての重篤な事変の>80%に当てはまる。さらに、誤ってABO-不適合になった輸血は、血管内溶血と、血漿中の遊離ヘモグロビンの急性過剰及びその全ての下流の影響による致死的な有害反応とを引き起こし得る。この悲劇的な合併症は、全ての輸血関連致死率の50%ほど多くを示すことが示されている。患者がヘモグロビン過剰反応の急性段階をうまく通り抜けたとしても、永続的な腎臓損傷が持続し、後の腎臓移植についての理由になり得るようである。これらの反応は全て、レシピエントのABO血液型に依存する、血漿に存在する天然抗A及び/又は抗B抗体による、この種の溶解の発現の後に取り残された過剰量の遊離ヘモグロビン、ヘム及び細胞膜を取り扱う適切な方法の欠如による。あまり一般的でないとしても、ABO系の外側のその他の不適合血液型組み合わせも、患者を危険にさらす血管内又は血管外の溶血性事象を引き起こし得る。最も重要なことには、血液単位は、今日ではABO及びRhD状態についてのみ適合され、このことは、その他のおよそ300の血液型を適合されないままにする。患者が、これらの構造のいずれかに対する免疫応答を有するか又は開始するならば、輸血プロセスにおいて生じた誤りの必要なく、溶血が生じ得る。2) 慢性的な輸血を必要とする患者は、結局は、鉄過剰症に罹患する。なぜなら、輸血された赤血球は、レシピエントの血流中でより短い半減期を有するからである。これは、多くの因子を原因とするが、貯蔵障害が、典型的に重要であるとみなされ、輸血された患者の疾患は、一般的に、赤血球の代謝回転の増加も引き起こし得る。よって、これらの患者は、鉄イオンに結合する能力を有するキレート剤で処置されるので、酸化ストレスが低下する。しかし、慢性的な輸血に伴うヘム及びヘモグロビンの負荷の増加にも、重症型サラセミアのような溶解性障害とそれが創出する慢性的な輸血との組み合わせにより引き起こされる一般的な酸化ストレスに対処する特定の治療はない。3)最後に、照射された血液成分を必要とする患者は、標準的な貯蔵障害を超えてさらに損傷された赤血球単位を受ける。典型的には、25グレイでのガンマ線照射の線量を各血液単位に送達して、全ての細胞成分が不活性化され、すなわち、分裂及び増殖できないことを確実にする。このことは、免疫系が著しく抑制されているか又は非機能的であるいずれの患者にとっても、特に重要である。よって、この種の血液を受ける一般的な患者カテゴリーは、幹細胞移植レシピエント、ある種の化学療法剤で処置される患者、子宮内輸血された胎児及び重篤な先天性免疫不全の患者を含む。 よって、この例は、以下のものを含む:・ 溶血性障害・ 感染性疾患(マラリア、シゲラ、出血熱など)・ 代謝性疾患(鎌状赤血球貧血、サラセミア、溶血性尿毒症症候群など、血友病)・ 輸血・ 代用血液での処置・ 抗凝固療法(対処されていない(detta berors ej))・ 術前及び術後の合併症(対処されていない、治癒を阻害又は長引かせる術前又は術後の出血であり得る(detta berors ej, kan vara per och postoperative blodningar som hindrar eller fordrojer lakning))D. 環境及び食物に由来する因子の結果としての酸化ストレス 紫外(UV)光又は光子の照射は、フリーラジカル及び酸化ストレス、すなわちUV光に曝露された組織(すなわち皮膚)の損傷を誘導することが長い間知られている。この機構は、細胞のDNAのUV照射による直接的な損傷と、酸化的修飾により組織損傷を引き起こすROSの形成による間接的な損傷とを含む。後者は、光酸化ストレスとよばれる。 医原性の原因が、ここでもまた、この点において重要である。抗菌及びウイルス療法を用いる感染の治療は、炎症及び均衡を崩す酸化生成物の形成を引き起こし得る(図1)。さらに、攻撃的な細胞増殖抑制性の癌療法は、大規模な細胞死を誘導し、これが次いで、内因性の抗酸化系を枯渇させる。さらに、放射線療法は、大量のフリーラジカルを誘導する。同様に、生体組織への荷電粒子の照射は、壊死性細胞死、アポトーシス又は細胞周期の停止から、ROS形成により誘導される酸化ストレスまでの範囲の生物学的応答を誘導できる。イオン照射療法又は荷電粒子マイクロビーム照射は、癌の治療に用いられる特定の形態である。例えば、光子照射療法において、照射線量は腫瘍を標的にし、用いられる照射線量は、腫瘍細胞を死滅させるのに十分高いが、ROS形成による周辺組織への酸化損傷を最小限にするのに十分低い。この例は、以下のものを含む:・ UV光照射・ 抗感染療法(抗菌、抗ウイルス及び抗寄生体)・ 細胞増殖抑制剤・ 放射線療法・ X線 環境汚染及び毒素は、全ての生物に対して全般的に負の影響を有する。個体の抗酸化能力に応じて、これは、酸化ストレスに対して種々の程度の天然の抵抗性を有する。ラット及びゴキブリは、非常に高い抗酸化能力を有するので、これらは、核戦争後の状況のような異常な事象において非常に高い予想生存率を有する。 ヒトの抗酸化能力の大部分は内因性であるが、異なるシステムが、食物摂取により提供されるビタミン及びミネラルのような補因子に依存する。個体の栄養状態は、よって、酸化ストレスに対抗するために重要である。ビタミンC及びEを補充する抗酸化療法は、多くの状況において評価されているが、その効果は、還元された生成物が体から除去されることを必要とするので、高い酸化ストレスの状況(例えば妊娠高血圧腎症)におけるそれらの使用を支持する研究はない。E.皮膚の酸化ストレス関連障害 皮膚は、体の最大の器官であり、ヒトを環境から保護する物理的なバリアを提供する。バリア機能の破壊を伴う病態は、酸素への曝露、UV光照射、微生物侵入などにより炎症を容易に発生する。さらに、皮膚の炎症及びその他の酸化ストレス関連障害は、皮膚のECM成分、例えばコラーゲン繊維の含量が高いので特徴的な特徴を有する。コラーゲンは、酸化損傷に対して特に感受性である。なぜなら、この分子は、非常に遅い代謝回転速度を有するからである。実際に、皮膚のコラーゲン繊維は、生涯持続するように作製される。つまり、皮膚組織における酸化修飾の数は、時間が経つにつれ、年齢とともに増加する。 アトピー性皮膚炎は、鱗状の皮膚及び湿疹を導く身体的及び化学的刺激により引き起こされる(例えばアレルギー)、慢性(再発性)の炎症状態である。乾癬は、同様の状態であるが、外部の刺激物質の代わりに自己免疫により引き起こされる。 慢性下腿創傷(leg wounds)及びその他の慢性潰瘍は、糖尿病患者に一般的にみられる損なわれた血流、出血及び/又は微生物感染による持続性の炎症を特徴とする。いくつかの機構が、不完全な治癒を引き起こすと考えられる。赤血球を起源とし、血液から創傷組織へ、そして血管外壊死から遊走するヘモグロビン、ヘム及び遊離イオンは、重要な病原性因子である。ヘモグロビン分解成分により誘導されるROS及びフリーラジカルは、組織損傷及び細胞破壊を導き、よって正常な治癒を妨げる強い酸化ストレスを示す。・ UV光照射・ 加齢に関連する修飾・ 急性の創傷・ 慢性の皮膚創傷・ アトピー性皮膚炎・ 乾癬F. 酸化ストレス及び生殖 女性の生殖管は、酸化ストレスの観点から特に興味深い。通常の月経周期中に、月周期の出血、子宮内膜の排出がある。多くの女性はこのプロセス中に、疼痛、いわゆる月経困難症を経験する。我々は、最近、これらの女性からの血漿中に、高いレベルの酸化ストレスについてのマーカーを検出できた(未発表データ)。 月経困難症は、子宮内膜症の症状であり得、婦人科の分野においてはいまだ謎である。この状態において、異所性の子宮内膜組織が腹腔内に島のように広がっている。これらの島は、全身のホルモンレベル、よって月経中の出血に応答する。腹腔内の血液は疼痛と、後にブリード(bried)形成を引き起こし、帯(strings)が腸管及び卵管を塞いで、不妊症及び胃腸の問題を引き起こし得る。 着床は、受精卵が、妊娠子宮内膜である脱落膜と接触を確立したときである。子宮の血流の調節は、月経、着床の両方の間と、妊娠の間に重要である。モノアミンは、血流と、ヒスタミンの場合、毛細管の透過性を調節する有効な血管作動性メディエーターである。セロトニン及びヒスタミンは、脱落膜化、着床と、ヒスタミンの場合は免疫調節においても役割を有する。生検の採取により引き起こされる子宮内膜の局所的傷害が、IVF (人工授精)患者における着床の発生率を増加させたことが報告されている。つまり、ヒスタミンを含む炎症性メディエーターは、脱落膜化及び着床のメディエーターとして組織修復及びリモデリング機能の間に通常は放出されるようである。ラットでの着床は、最適用量以下のエストロゲンと組み合わせたヒスタミンによっても誘導されたが、ヒスタミン受容体へ阻害剤又はアンタゴニストを子宮内で用いることにより、脱落膜の形成が阻害される。調節された炎症の後の酸化ストレスは、不妊症の場合に、抗酸化系を超え、よって流産を引き起こし得る。 妊娠高血圧腎症(PE)は、2段階の疾患である。第1段階において、着床及び胎盤形成は、胎盤細胞である栄養芽細胞の、子宮内膜のらせん状動脈の筋肉層への侵入の欠損を特徴とする。これは、子宮胎盤血流の減少に寄与し、これが、酸素送達の減少と、4件のPEのうちの1件で観察される子宮内胎児発育遅延(IUGR)とをもたらす。深まりつつある証拠の実体は、この酸化ストレスが、第2段階において全般的な内皮損傷と炎症とを生じる胎盤因子の放出を引き起こすことを示唆する。我々は、酸化ストレスと炎症の両方に遺伝子が関与することを示している。特に興味深いことには、正常血圧の妊娠女性に対してPEの女性からの胎盤において著しく過剰発現されていたHbα2及びγ転写産物である。実際に、我々は、PE患者からの母体血漿及び尿において遊離ヘモグロビンのレベルが著しく増加することを示すことができた(データは示さず)。我々の作業仮説は、胎盤における局所的なHbF上方制御は、胎盤バリアの漏出と母体赤血球の溶血とを引き起こす酸化傷害であるということである。血液-胎盤関門が一旦損傷されると、胎児の細胞及び胎児のヘモグロビンは母体の血流中に入り、PEにおける第2段階を特徴付ける血管炎症を引き起こし得る。その結果としての母体の遊離ヘモグロビンの増加は、高血圧、腎臓不全及び子癇の主要な原因であり、これらは、酸化ストレス装置における全ての歯車を含むPEの特徴である(図5)。 早期収縮及び早産は、一般的な産科の問題である。早期の子宮頚部熟化及び子宮収縮を引き起こす必須の機構は、炎症である。炎症は、感染及び出血により誘導できる。酸化ストレスは、これらの状況においても主要な原因であるようである。・ 月経困難症・ 子宮内膜症・ 妊娠高血圧腎症・ 早期分娩G.新生児医療における酸化ストレス 全ての分娩のうちの高いパーセンテージが早期、すなわち妊娠第34週前である。極度の早産(妊娠第23〜28週)は、重篤な臓器損傷としばしば併発される。早産児における主な問題は、高い酸化ストレスを特徴とする状況である肺の損傷、胃腸管の壊死、大脳出血及び感染である。よって、酸化は、損傷性の共通の特徴である。内因性の抗酸化系は、子宮の外側で発生する酸化ストレスを扱うのに十分に発達及び/又は成熟していない。正常妊娠において、乳児の肺、皮膚及び胃腸管は、胎児を内側及び外側から、すなわち皮膚まで取り囲む羊水により全て保護されている。 脳室内出血(IVH)。重篤な脳性IVHは、妊娠第28週未満で出産される早産児の約15%で生じる。50%を超えるIVHの幼児が、出血後水頭症を発症し、40%が、2歳にて検出される重篤な神経損傷(主に脳性麻痺)を発症する。幼児が水頭症又は重篤な神経能力障害のいずれかを発症しないようにするために用い得る療法はない。血管外遊出した血液の溶血は、脳室内脳脊髄液(CSF)への遊離ヘモグロビンの放出を引き起こす。遊離ヘモグロビン及びその分解生成物であるヘム、CO及び遊離の鉄は、酸化ストレス及び炎症促進を高度に誘導できる。脳質周囲白質に存在する前駆オリゴデンドロサイト(pre-oligodendrocytes)は、脳性麻痺の発生を導く皮質脊髄白質路(tract)への損傷をもたらす炎症及び酸化ストレスに対して非常に易損性である。二次酸化ストレスは、溶血生成物により誘導される細胞死から生じ、遊離ヘモグロビン自体により引き起こされる酸化ストレスに加えて、主に損傷されたミトコンドリアからの酸化剤及びフリーラジカルの放出を導く。その例は、以下のものを含む:・ 呼吸困難・ 脳室内出血・ 壊死性腸炎(NEC)・ 感染・ 溶血アルファ-1-ミクログロブリンの投与の原理 上記の記載から、A1Mが流体、臓器、緩衝液などの中に、同じ生物学的検体中に存在する酸化剤の作用を妨げるか又は阻害するのに十分な時間存在しなければならないことがわかる。一方、A1Mは、浄化の目的のために、すなわち酸化剤又は酸化生成物を除去するために単独の機会に用いることもできる。よって、A1Mの医療的使用は、以下の2つの主要なタイプであり得る:1)規定された期間内で連続的に、又は2)単回/複数回用量。ほとんどの場合、単回用量での使用が、実際的な理由から用いられるが、連続的な投与も、例えば組み換えA1M生成媒体(すなわち細胞)を用いることにより可能である。 第2の分類は、A1M投与の場所に関し、すなわち、A1Mは、1)全体的/全身的又は2)局所的に加えることができる。カテゴリー1)の例は、人工透析であり、ここでは、A1Mは、透析流体への全容量の添加としてラジカル除去のために用いることができるか、又はアテローム性動脈硬化症の治療であり、ここでは、A1Mを血液に加えて、MPOにより誘導された内皮損傷を修復できる。カテゴリー2)の例は、慢性下腿損傷の治療であり、ここでは、A1Mは、創傷へ局所的に単回用量で加えて、沈着したヘム及びラジカルを「浄化」し、酸化生成物を修復できる。 A1Mの投与は、1日1回であってもよいか、又は治療される特定の疾患、処置される対象者の状態(年齢、体重、疾患の重篤度)に応じて1日あたり複数回用量に分けてもよい。A1Mの1日投与量は、通常、0.5 mg/kg-体重から100 mg/kg-体重までである。投与レジメンは、処置される疾患又は状態に依存し、1分から生涯に亘る治療までの治療を含み得る。 組成物は、典型的には、10〜99% w/wのA1Mを含むが、医薬的に実行可能であれば、極微量ほど少ない10%未満であってもよい。製剤のさらなる詳細及び例については、製剤実施例についての以下を参照されたい。 A1Mは、医薬組成物の形態で投与するのが好ましい。A1Mのポリペプチドの性質を原因として、好ましい組成物は非経口用に設計されるが、A1Mは、局所的に、例えば創傷の治癒に関連して皮膚上に、関節炎に関連して関節内に、又は脳室内出血を治療する場合には脳室内に用いてもよい。さらに、本明細書の記載から明らかなように、A1Mは、輸血を意図して血液へ、又は対象者へ移植される細胞若しくは臓器に加えることもできる。よって、A1Mは、液体、例えば溶液、分散液、エマルジョン、懸濁液などに処方できるか、又は皮膚への塗布に適する製剤、例えばローション、クリーム、軟膏、懸濁物、エマルジョン、ペースト、粉末、パッチ、プラスター、包帯剤、ソープ、シャンプー、日焼け止めローションなどに含まれ得る。さらに、A1Mは、医療デバイス又は装置に、例えばカテーテル上の放出可能なコーティングなどとして含まれてもよい。 代りにそしてさらに、活性物質を体の特定の部位に標的させるための特定の担体を含むことができる。例えば、抗体が、あるエピトープについてのその特異性により選択した位置を標的にする(「ホーミング」)、抗体-A1M複合体;このようなホーミング特性を有する幹細胞又は組み換え細胞、例えば組織に特異的であり、大量のA1Mを分泌する人工的又は天然の能力を有するインテグリン受容体。薬物は炎症、出血などの部位にて濃縮され、より少ないA1Mが必要とされるので、治療はより有効である。 非経口用に適する溶媒は、水、植物油、プロピレングリコール、及びこのような目的のために一般的に認可された有機溶媒を含む。一般的に、当業者は、特定の型の製剤についての適切な賦形剤、及び特定の製剤を調製するための方法に関して、Gennaroらにより編集された「Remington's Pharmaceutical Science」(Mack Publishing Company)、Roweらにより編集された「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(PhP Press)、及び公的なモノグラフ(例えば欧州薬局方(Ph.Eur.)又は米国薬局方(USP))において手引きを見出すことができる。治療としてのアルファ-1-ミクログロブリンについての可能性のある使用の例 以下に示す例は、単に着想として含まれ、いずれの様式でも限定するとみなされない。 本明細書で論じるその独特の特性を原因として、A1Mは、いくつかの使用における治療として現在知られる代替物よりも著しく優れるだろう。以下の列挙する使用についての主な原理は、A1Mを、酸化ストレスの予想される増加の前、又は高い酸化ストレスの状況の間若しくは後のいずれかに、酸化を平衡させるために、臨床状態に対して与えることである。高い酸化ストレスを特徴とする多くの臨床状態が、上記の黒丸の下に列挙され、選択された疾患のみを以下の例において用いるが、治療原理は全てに当てはまる。概要は、以下の表1に示す。A) 感染及び炎症 A1Mは、感染に対する従来の薬物及び抗炎症薬物と組み合わせて、例えばCOPDにおいてみられる酸化ストレスに対抗するために与えることができる。この疾患において、A1Mは、肺洗浄液に加えて、又は吸入エアロゾルとして用いることができる。この応用におけるA1Mの効果は、ラジカルを除去し、肺組織における酸化的修飾を低減/修復することである。処置は、単回又は複数回用量のタイプ並びに局所的並びに予防的及び相互作用的(pro- and interactive)効果のものであり得る。B) 虚血及び再潅流に関連する疾患 アテローム性動脈硬化症。上記のように、酸化剤及び酸化ストレスは、アテローム性動脈硬化症の発生における中心であり、LDLの酸化は、アテローム性動脈硬化プラークを導く一般的な中間体である。抗酸化剤のほとんどの研究がこの疾患に対する予防的効果を示すことに失敗しているが、我々は、A1Mを、いくつかの理由から潜在的な治療剤とみている:1)これは、広い範囲の抗酸化的な武器を有する:酸化剤の酵素的及び非酵素的な還元、並びにラジカル除去;2)これは、アテローム性動脈硬化の病変に対して潜在的に重要な酸化修復能力を有する;3) A1Mは、ヘム及びROSによるLDLの酸化を阻害できる(示さず);4) A1Mは、LDLのヘム及びROSにより誘導される酸化的修飾を低減できる(示さず);5) A1Mは、内因性LDL粒子中に存在し(示さず)、このことは、これがすでにLDLにおいて抗酸化剤としての効果を有し、アテローム性動脈硬化症がA1Mの能力を超える異常な酸化の結果であることを示唆する;6) A1Mは、MPOの不活性化に参加する(示さず)。アテローム性動脈硬化症の予防及び/又は治療のためのA1Mの使用は、例えば静脈注入又は高いA1M生成能力を有する細胞性ベクターの移植を用いて連続的及び全体的に行い得る。或いは、治療は、例えば心臓冠動脈への直接注入による単回用量のタイプ及び局所的であってよい。治療は、予防的若しくは相互作用的であり得、LDL酸化及びアテローム性動脈硬化の形成を阻害するか、又はアテローム性動脈硬化プラークを治療的に修復/除去する。 脳卒中及び心筋梗塞は、A1Mを用いて酸化ストレスを阻害し、虚血-再潅流の事象により誘導される病変を修復することができる適応症である。A1Mは、全身的又は局所的に加えることができる。処置は、単回用量、複数回用量のタイプ又は連続的及び後で活性がある効果(effect post-active)のものであり得る。心筋梗塞の場合、A1M処置は、動脈拡張などを伴う手術による浸襲的な手順と組み合わせることができる。 関節炎。これらの炎症状態において、疾患部位が自然と制限されているので、A1Mでの処置が好ましい。機械論的に、抗炎症、修復及びECM促進の特性は、治療において得に価値がある。処置は、単回用量、複数回用量のタイプ又は連続的及び後で活性がある効果のものであり得る。 透析。透析の結果として誘導される酸化ストレスは、A1M処置により予防でき、透析により誘導される酸化的損傷は、A1Mにより修復される。2つの主なタイプの臨床的透析が存在する:血液透析及び腹膜透析。血液透析において、患者の血液は、透析装置を通って体外を循環し、この装置において、血液は、半透膜を通して透析液と平衡化される。A1Mは、それが血液中に入ることを可能にしない様式で透析液に加えることができる。A1Mは酸化剤/ラジカルを還元及び結合し、よって、ラジカル及び酸化剤を捕捉して消去する酸化剤又は「ラジカルのシンク」として機能して、ラジカルの消去の割合を10倍増加させる。或いは、血液を、透析装置と直結するように配置した不溶化したA1Mのカラムに通すことができる。腹膜透析において、透析液は、患者の腹腔(腸の周囲)に注入され、そこにある期間放置される。腹膜が透析膜として作用して、小分子(水、塩、ラジカルを含む小さい有機性の溶質)が平衡化することを可能にする。次いで、透析液を排出して廃棄する。この場合もまた、A1Mを、それが血液中に入ることを可能にしない様式で透析液中に加えることができ、A1Mは、酸化剤又はラジカルの「シンク」として機能する。よって、A1Mの使用の形態は、単回用量(各回の透析について反復できるが)、局所的及び予防的である。 臓器移植。細胞及び臓器の酸化的損傷は、移植の分野においてなかでも制限的な因子であることが知られているので、我々は、A1Mを、すすぎ液及び冷却貯蔵媒体に加えて、このような細胞及び臓器の生存度及び輸送時間を増加させることを提案する。このことは、移植のために日常的に用いられる全ての臓器(例えば心臓、肺、肝臓、腸、膵臓、腎臓、皮膚、骨、網膜)及び細胞(例えば膵島細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、樹状細胞及び移植片対宿主疾患を治療するためのドナーリンパ球注入のための白血球)も含む。C) 遊離ヘモグロビン、ヘム及び鉄イオンの結果としての酸化ストレス 溶血性疾患。上記のように、血管内又は血管外の赤血球の制御されない溶解を特徴とする複数の異なる疾患がある。特に、血管内溶血を伴うものは、この問題が血漿中の遊離ヘモグロビン及びヘムを含むので、A1M療法についての興味のある標的である。これらの疾患は、寒冷IgM媒介タイプの自己免疫溶血性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症及び発作性寒冷ヘモグロビン尿症を含む。治療は、治療的な様式でのA1Mの単回又は複数回(可能であれば連続的)の静脈内投与であることが構想される。これらの患者は、しばしば、残存ハプトグロビンレベルがなく、よって、遊離ヘモグロビンに結合する緩衝性防御がない。 同時に、我々は、血管外溶血の患者、例えば温式IgG媒介タイプの自己免疫溶血性貧血及び薬物誘導性溶血性貧血を含む診断の患者が、腎臓機能の欠陥を有することを認識している。彼らは、脾臓におけるマクロファージを含む細網内皮系組織が定常状態と比較してさらに数十億の赤血球を貪食するときに、彼らが処理しなければならない大量のヘモグロビン及びヘムに基づく増加した酸化ストレスにも苦しむようである。これらの患者も、A1Mによる抗酸化療法から利益を受け得ることが可能である。 輸血。我々の予備的なデータは、A1Mが溶血を妨げ(図9)、インビトロにおいて既に形成された遊離のヘム/ヘモグロビンから赤血球を保護することを示す。同時に、輸血のための赤血球の今日の貯蔵溶液は、貯蔵中の酸化的損傷に伴う問題点を考慮していない。よって、我々は、A1Mを血液チューブ又は全血単位の貯蔵媒体(示さず)にさえ加える実験を行った。 赤血球単位の質の改善:輸血のための赤血球の質を増加させるための予防的方法として、我々は、A1Mを、それがどの種類の血液成分であるかに依存して貯蔵の前及び/又は後に加えることを提案する。これは、それぞれの血液単位について予防的で単回用量スキームである。最適には、A1Mは貯蔵媒体に加えられるが、現在のところ、これを滅菌するために用いられる加熱手順により、このことは困難である。つまり、A1Mは、1)貯蔵期間の開始前(予防的);2) ある期間が経過した後に回復剤として(相互作用的);又は3) 血液単位を病室に渡す前(「浄化」/「治療的」アプローチ)に別々に加えることができる。目的は、非免疫原性で内因性のタンパク質の適切な用量を加えることにより、よりよい血液成分を患者に供給できるようにすることである。これは、血液のガンマ線照射の状況において特に魅力的である。なぜなら、これらの単位は、輸血のための一般的な血液よりも損傷を受ける傾向にあるからである。 急性型又は遅延型溶血性輸血反応の事象における療法。種々の血液成分(赤血球、血小板及び血漿)の輸血に関連するA1Mのさらに別の応用は、1つ以上の不適合単位の投与の後の溶血性輸血反応に罹患した患者を処置することである。現在、赤血球の抗体媒介溶解に起因する遊離ヘモグロビンの毒性の影響を回避するための特定の治療は存在しない。全ての利用可能な療法は、これらが問題である血漿中の遊離ヘモグロビン及びヘム並びにそれらが創出する全般的な酸化ストレスを標的にしていないので、非特異的で、広範囲であり、あまり成功していない。代わりに、伝統的な薬理学的アプローチは、これらの物質の生物学的効果に対抗する。我々は、現在の治療の武器であるステロイド、アドレナリン及びその他の薬物に加えてA1Mを用いることを提案する。 溶解は、2つのタイプのものであり得る:1)不適合ドナーの赤血球が輸血され、レシピエント抗体で被覆され、血管内又は血管外のいずれかで溶解されることを意味する能動型;及び2)患者自身の赤血球が、天然に存在する抗A又は抗B抗体を含む不適合血漿の投与により溶解されるときに生じる受動型。このシナリオは1)より危険性が低いが、血漿単位及び血小板の両方の輸血の後に生じ得る。血漿は、常に適合する様式で与えられると仮定されるが、この場合及び1)においても間違いが生じ得る。しかし、血小板については、O血小板を全ての血液型の患者に与えることが一般的であり、このことは、誤りによるのでなくても、高力価の抗A及び抗B抗体が患者に移入され、溶血を引き起こし得ることを意味する。 代用血液での治療。A1Mは、遊離又はHBOCとの融合タンパク質のいずれかの形態で、HBOC自体に加えて投与して、細胞外ヘモグロビンのいずれの可能性のある有害な影響をさらに低減させることができる。 つまり、我々は、A1Mを、患者に、遊離ヘモグロビン及びヘムにより誘導される負の結果及び酸化ストレスに対処するための手段として与えることを提案する。好ましい方法は、事変のできる限りすぐ後(間違いに気付いたとき、又は患者が赤色尿を排泄するか若しくは背中の痛み、発熱、発汗及び吐き気のような症状を訴える場合)にタンパク質を静脈内投与することである。これは、単回又は複数回用量の治療的使用である。ステロイド、アドレナリン及び強制利尿のようなその他の非特異的治療も試みる必要があろう。 A1Mは、輸血後の鉄過剰症によるか又はヘモクロマトーシス、金属イオンが患者の体内で蓄積されるウィルソン病(銅イオン過剰症)及びその他の同様の疾患の場合の酸化ストレスを予防するために療法に用い得る。慢性的に輸血される患者又は金属イオンを蓄積するその他の状態において、我々は、キレート療法(これにより2価イオンが注入される物質に結合する)にA1M注入を補って、これらの患者において証明された酸化ストレスを低減させることを提案する。D) 環境及び食物に由来する因子の結果としての酸化ストレス 標的癌放射線療法。癌は、腫瘍細胞を死滅させることを目的とする照射を用いて処置できる。照射は標的化でき、すなわち腫瘍に多少は焦点をあてることができる。この問題点は、もちろん、健常組織も影響を受けることである。この理由から、線量は低く保たれなければならず、放射線療法の効果を制限する。ここで、A1Mを、周囲の細胞及び組織成分の破壊を妨げ、より高い照射線量を用いることを可能にするために用いることができる。A1Mの使用は、単回用量、局所的及び予防的である。E) 皮膚の酸化ストレス関連障害 UV照射。A1Mは、UV照射により誘導される組織損傷を防ぐために用いることができる。損傷のある部分は酸化ストレスにより媒介されるので、A1Mの抗酸化、ラジカル除去、酸化修復及び「ラジカルのシンク」の特性により、このタンパク質は、UV光照射中の組織損傷を最小限にするための独特で強力な物質になる。例えば、A1Mは、皮膚の「日焼け止め」物質として用いて、UV光の急性の影響及び皮膚癌の発生のような長期の影響に対して保護できる。A1Mは、酸化亜鉛のような既存の皮膚保護剤に加えることができる。A1Mの使用は、単回用量、局所的及び予防的である。 加齢に関連する皮膚の変化。上記のようなA1Mのいくつかの特性は、年齢により誘導される酸化的修飾(色素沈着、カルボニル化、ヒドロキシル化、架橋など)を含む、細胞外成分であるコラーゲン及びECMの修復をA1Mが促進し得ることを示唆する。このタンパク質は、他の点では健常な皮膚にいくつかの注射部位で、又は無傷の皮膚上への局所的塗布として加えることができる。A1Mの使用は、反復局所的単回用量であり得る。 アトピー性皮膚炎及び乾癬。A1Mは、これらの状態における皮膚の炎症に関連する酸化ストレスを阻害するために用いることができる。このことは、細胞の保護、並びに細胞、コラーゲン及びECMの修復を含む。A1Mの使用は、反復局所的単回用量であり得る。 慢性下腿創傷。そのほとんどが下腿に局在する慢性の創傷は、医療提供者及びそれらの資金提供者にとって大きな健康問題であり、実質的な増加する重荷である。A1Mは、慢性下腿創傷において、ヘムに能動的に結合し、ほとんど血管の周囲でヘムに共存して見出される。潰瘍流体(ulcer fluid)中のt-A1Mの連続的な生成もみられる。このことは、A1Mが、内因性創傷治癒における活性化された防御機構であることを示唆する。A1Mが結合せず又はA1Mにより消去されない過剰のヘモグロビン、ヘム及び鉄は、ROSの誘導による慢性炎症の重要な成分であり得る。よって、A1Mを用いる慢性創傷の治療は、現在利用可能な治療よりも迅速で効果的な潰瘍治癒のためのアプローチを提供するために提案される。A1Mの抗酸化、ラジカル除去、酸化修復及び「ラジカルのシンク」の特性により、タンパク質は、慢性下腿創傷の治療のための独特で強力な物質となる。A1Mの使用は、いくつかの単回用量からなることができ、創傷に局所的に塗布されるか、又は治療剤として包帯の実質的な部分としてさえ提供される。 手術創傷治癒を含む改善された急性創傷治癒。A1MのECM促進性の特性(分子的及び遺伝子的)並びに抗炎症及び修復の効果は、このタンパク質を、創傷治癒、例えば術後に用い得ることを示唆する。さらに、これは、手術から残された血液の負の影響を低減し、遊離イオンなどに結合することにより感染を妨げることもできる。F) 酸化ストレス及び生殖 全身的又は膣坐剤として周期的な様式でA1Mを投与することにより、月経困難症を治療できる。不妊症は、一般的な問題であり、これは、A1Mを用いる治療について重要な適応症であり得る。これは、周期的な様式で又は介助妊娠、すなわちIVF、受精卵移植、精子注入、ICSIなどにおける補助として行うことができる。 今日では、PEについて対症療法のみが利用可能であり、分娩は唯一の原因療法のままである。遊離の胎児ヘモグロビン(HbF)がPEの指標であり、HbFレベル(又は一般的にはHbレベル)の低減が、疾患のいずれの進行をも低減させるようであるとの本明細書において報告される知見によると、i)遊離のHbの形成を阻害し、ii)遊離のHbと結合し、及び/又はiii)循環遊離Hbの濃度を低減する能力を有する任意の物質が、PEの効果的な治療及び/又は予防のための潜在的な物質であると考えられる。 早産は、A1M使用についての重要な適応症であり得る。ここでもまた、全身的又は膣坐剤としての投与は、早期の収縮及び子宮頚部熟化を引き起こす酸化ストレスを停止させる効果的な様式であり得る。G) 新生児医療における酸化ストレス 酸化ストレス装置(図5)の全ての成分は、ほとんどの新生児合併症の病態生理学において示されている。A1Mは、人工呼吸器において用いて、未熟な肺を保護し、代用乳処方において用いて、腸を保護できる。 脳室内出血(IVH)を含む脳出血は、A1M治療についての適応症である。まず、上記の抗溶血効果(図9)は、出血事変の後の遊離ヘモグロビン濃度の減少を導く。次に、A1Mの還元、スカベンジャー及び修復の特性は、ヘモグロビン、ヘム及びROSにより誘導される細胞並びに組織損傷に対する迅速な除去と保護の効果を達成する。出血の徴候が、リスクゾーンにある未熟児の日常的な超音波走査により得られる場合、A1Mは脳室へ直接注入できる。 胎児/新生児の溶血性疾患は、免疫グロブリンG(IgG)により常に媒介される。なぜなら、IgM分子は、母体から胎児へ胎盤を通過しないが、IgGのみが通過するからである。この状況は、よって、前のパラグラフにおいて論じた温式自己免疫溶血性貧血と似ている。我々は、A1M処置を用いて、感受性の胎児が、胎児の赤血球を破壊し、それらに含まれるヘモグロビンを放出させる、母性同種抗体(しばしばRh抗体)により引き起こされる高いレベルの酸化ストレスに対処することを補助できることを提案する。この処置は、出生前(臍帯穿刺後注入(infusion post-cordocentesis)による)又は出生後に、持続注入として、若しくはO型のRhDマイナスの血液がAB型のRhDマイナス血漿とともに輸血される交換輸血とともに行うことができる。後者は、高レベルのA1Mと混合して、これらの乳児における酸化ストレスレベルを引き下げる助けとなり得る。A1Mの効果を調べるためのインビトロモデル胎盤潅流モデル 今日では、PE(妊娠高血圧腎症)についての適切な動物モデルが存在しない。遊離ヘモグロビンの影響を研究するために、我々は、2重胎盤潅流モデルを用いる。2重胎盤還流は、インビトロでの胎盤血流を研究するためのよく確立されたモデルである(図18)。最近では、キサンチン及びキサンチンオキシダーゼを用いてROS形成を誘導することにより、PEを模倣するために、このモデルが用いられた。我々自身の非常に最近のデータは、キサンチンで潅流された胎盤が、PE胎盤と同様の遺伝子プロファイルを有することを示し、このことが、このモデルがインビトロでのPEの研究に適切であることを示した。さらに、我々は、赤血球全体を含む媒体で還流した胎盤をプロファイリングした。赤血球の溶血により、遊離ヘモグロビンのレベルは潅流中に増加し、ヘムオキシゲナーゼ及びスーパーオキシドジスムターゼ遺伝子発現の上方制御により反映される酸化的損傷を引き起こした。最近の実験において、我々は、遊離の胎児ヘモグロビン(2及び4μg/ml)を用いて胎児の回路を潅流させることにより、PEにおいて観察される状況を模倣することを目的とした。興味深いことに、潅流圧力(血圧)は、用量依存的な様式で増加し、ヘモグロビンは、母体の回路中に徐々に漏出した。我々は、ヘモグロビンでの潅流後の遺伝子及びタンパク質の発現を研究し、A1Mの保護的役割を評価するためにこのモデルを使い続ける(図17)。A1Mの影響を調べるためのインビボモデル 我々は、妊娠した雌ヒツジ(ewe)に遊離ヘモグロビンを注入することによりPEを模倣するために、雌ヒツジモデルを用いる。パイロット研究において、我々は、妊娠した雌ヒツジに遊離ヘモグロビンを注入し、血圧の上昇傾向を引き起こした。我々は、ヘモグロビンでの潅流を研修し、A1Mの保護的役割を評価するためにこのモデルを使い続ける。 子豚モデルを、A1Mを用いるIVH治療の評価のために用いる。子豚は、ヒトの新生児の脳の研究のために理想的な動物である。ヒト及び子豚の両方の脳において、出生の数週間前から出世以後数週間まで、成長速度は最大である。よって、子豚は、脳の成長の急騰中のヒトの易損性の状態を再現する。アルファ-1-ミクログロブリンの抗酸化特性 A1Mの生理的役割は、ヘム、ヘモグロビン及びROSにより誘導される損傷に対して細胞及び組織を保護することである(図4)。以下に、この概念を支持する結果について記載する。1.還元。A1Mは、広い範囲の有機及び無機の基質を有する酵素的な還元酵素及び脱水素酵素の特性を有する。タンパク質は、ヘムタンパク質、遊離の鉄及び合成化合物であるニトロブルーテトラゾリウム(NBT)を、生物学的電子供与体であるアスコルベート及びNADH/NADPHを補因子として用いて還元する(9)。Cys34のチオール基と、K92、K118及びK130の3つのリジン残基は、活性部位にて見出される(9)。A1Mは、合成ラジカルABTSも迅速に還元する(10)。細胞の培養培地に加えられたA1Mは、細胞のサイトゾル及びサイトゾルタンパク質上のチオール基を還元する(示さず)。A1Mは、ヘム、ヘモグロビン、過酸化水素及びヒドロキシラジカルによりコラーゲン、リポタンパク質及び赤血球膜上に形成された酸化生成物も還元する。実施例1.A 細胞における細胞内酸化を測定するために、レドックス感受性プローブH2DCFDAを、無血清培地中の0.5〜1.0×106 K562細胞/mlに、3μMの最終濃度まで加えた。30分後に、細胞を、リン酸緩衝食塩水(PBS、10 mM リン酸Na pH 7.4、125 mM NaCl)で2回洗浄し、新鮮な培地中に懸濁した。ヘム、過酸化水素、アスコルベート、A1M又はAGPを、図10の凡例に記載されるようにして加え、細胞を種々の時間インキュベートした。インキュベーションの後に、懸濁物の蛍光強度を、フローサイトメトリーを用いて定量した(BD FACSAria (商標), BD Biosciences, Palo Alto, CA, USA)。分析は、10000個の細胞に対して、Coherent (登録商標) Sapphire (商標) Solid State Laser (励起:488 nm、発光:バンドパスフィルタ530/30 nm)を用いて行った。 K562細胞を、種々の濃度のヘム(5〜20μM)とともに2時間培養し、ROSの産生を、酸化されたサイトゾルH2DCFDAの量を測定することにより評価した(図10A)。相対的蛍光強度のわずかであるが有意な増加が5μMのヘムを用いて見られ、明確な増加が10及び20μMで見られた。サイトゾル酸化の時間依存性を、10μMのヘムを用いて研究した(図10B)。ヘムの添加は、相対的蛍光強度の迅速な増加を誘導し、これは、インキュベーション期間を通して維持された。用量及び時間の実験から、10μMのヘムで2時間を、さらなる酸化実験のために選択した。A1Mの影響を、2、5又は10μMのA1MをK562細胞に、ヘムの添加の前に加えることにより調べた(図10C)。10μMのヘムを次いで加え、細胞を2時間インキュベートした。およそ90%までの相対的蛍光の用量依存的な減少が、A1Mを加えたときに見られた。対照実験において、A1Mと同じ濃度のリポカリンAGPを用いると蛍光の阻害は見られず、10μMのアスコルベートは、蛍光をおよそ50%減少させた(図10C)。 これらの結果は、A1Mが、ヘムによるサイトゾル酸化を阻害することを示す。我々は、A1Mの修復効果、すなわち、A1Mがヘムと予備インキュベートされた細胞においてサイトゾルを還元できるかについても調べた(図10D)。細胞を、10μMのヘムと30分間インキュベートし、全ての未結合ヘムを洗い流した。A1M (2、5又は10μM)を加え、細胞を2時間インキュベートした。結果は、A1Mが、サイトゾル酸化を用量依存的な様式で著しく還元できたことを明らかにした。A1Mが「休止」非刺激細胞のサイトゾルを還元できるかを試験するために、これらをA1M (10μM)と2時間インキュベートした(図10E)。A1Mを細胞に加えると、A1Mを加えていない細胞と比較して、蛍光強度が明確に減少した。一方、ヘムは、予測されたように蛍光を増加させた。A1Mを用いて見られた非特異的なバックグラウンドの酸化の低減は、対照タンパク質であるAGPを加えたときには観察されなかった。 我々は、A1Mの抗酸化効果が、ヘムで酸化された細胞に限定されるのか、又はその他の酸化剤にも向けられ得るのかを調べた。H2O2 (50〜250μM)を用いて、0〜20時間酸化を誘導した(図11A)。H2O2は、H2DCFDAのレベルを6時間でピークまで上昇させ、このレベルはその後減少した。細胞をA1M (10又は20μM)及び50μMのH2O2と6時間同時にインキュベーションすると、H2O2により誘導される蛍光の用量依存的な減少が示され、これは、A1Mの阻害効果を示す(図11B)。実施例1.B チオール基に対するA1Mの還元能力を測定するために、酸化されたチオールタンパク質を用いて実験を行った。 酸化されたチオールタンパク質の蛍光標識を、K564細胞をPBS中で0.5〜1.0×106細胞/mlで洗浄して懸濁し、ヘム、NH4Fe(SO4)2、過酸化水素、アスコルベート又はA1Mと、図の凡例に記載されているようにしてインキュベートした。可逆的に酸化されたチオールタンパク質を、次いで、文献に記載されるようにしてモニターした。簡単に、還元状態のタンパク質チオールを、100 mMのNEM (N-エチルマレイミド)を含むバッファーに再懸濁し、室温にて15分間インキュベートすることによりブロックした。細胞を溶解させた後に、過剰のNEMを、Micro Bio-Spin (登録商標) 6クロマトグラフィーカラム(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA)を通して脱塩することにより除去した。酸化されたチオールを、次いで、1 mMのDTT (ジチオトレイトール)を用いて還元し、得られた遊離のタンパク質チオールを、200μMの5-IAFを加えることにより標識した。過剰の5-IAFを、Micro Bio-Spin (登録商標) 6クロマトグラフィーカラムを通して脱塩することにより除去し、60μgのタンパク質を含む試料を、10% SDS-PAGEに泳動させた。ゲル電気泳動は、Laemmli [25]に記載されるようにして、暗所で、200Vの一定電圧を用いて行った。電気泳動の完了後に、ゲルを、Molecular Imager (登録商標) FXを用いて走査した(Bio-Rad、励起:488 nm、発光:530 nm)。酸化されたチオールタンパク質を、Adobe Photoshop CS3を用いて、関係するバンドの画素密度を測定することにより定量した。 上記のように、細胞内タンパク質チオール酸化に対するA1Mの抗酸化効果を測定した。2、5及び10μMのA1Mを加えた後に10μMのヘムをK562細胞に加え、これらを次いで6時間インキュベートした。ジスルフィド特異的蛍光プローブである5-IAFで標識された細胞内タンパク質を、SDS-PAGEにより分離した。酸化されたチオールを、蛍光定量法により視覚化し(図11C及び11D)、最強のバンドを、画素密度を測定することにより定量した(図11E及び11F)。 ヘムは、タンパク質チオール酸化の増加(図11C、E)を誘導し、4つの最強のバンドのチオール標識強度(50、55、60及び66 kDaとして泳動;矢印で印を付ける)は、A1Mにより、用量依存的な様式で、休止細胞のレベルまで阻害された。よって、A1Mは、酸化されたチオール基に対して強い還元特性を示す。弱く染色されたバンドは、ヘムによる上方制御がより少なく、A1Mによる阻害もより低く(示さず)、これらは、おそらく、プローブの非特異的結合によるのであろう。さらに、A1Mは、非ヘムにより誘導されるタンパク質チオールも阻害した。Fe3+、アスコルベート及び過酸化水素(それぞれ10μM、100μM及び20μM)の混合物を用いて、フェントン反応によりヒドロキシラジカルを産生した。混合物は、酸化されたタンパク質チオールのレベルの増加をもたらし(図11D、F)、5つの最強のバンドのチオール標識強度(50、60、66、80及び120 kDaとして泳動;矢印で印を付ける)は、A1Mを加えることにより減少した。2.ラジカル除去。A1Mは、酵素的な還元酵素活性(上記を参照)と、アミノ酸側鎖への共有結合(「捕捉」)との組合せを用いることにより、小さい有機ラジカルと反応できる。ヘム、キヌレニン及びチロシンラジカルは、A1Mにより除去されるラジカルの生理的な例である(6〜8、10)。よって、A1M-発色団は、ヘム及びキヌレニン分解生成物、及びおそらくその他の同様の生成物でもあり得る。ヘム結合及び分解は、ヘモグロビンにより誘導され、A1Mの4つのC末端アミノ酸であるロイシン-イソロイシン-プロリン-アルギニンの消去をもたらす反応である(7)A1Mのタンパク質切断によりかなり増進される。より短い(切断型)形態、すなわちヘム分解特性が増進された形態を、t-A1Mと呼ぶ。ヘム除去による抗酸化は、おそらく、ヘモグロビンに限定されない。MPOとA1Mとの反応は、t-A1Mの形成と、MPOからA1Mへのヘム基の移動をもたらす(示さず)。よって、A1Mは、周囲の組織成分に対する好中性顆粒球の酸化バースト(上記を参照)の損傷効果の阻害剤として機能し得る。実施例2.A ABTSアッセイ:A1Mの還元酵素活性を、以前に記載されたような2,2'-アジノビス-(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)-ラジカル(ABTS-ラジカル)との反応により分析した。簡単に、ABTS-ラジカルを、7mMのABTSを水中の2.45 mMの二亜硫酸カリウムで少なくとも5時間、暗所にて酸化することにより調製し、得られたABTS-ラジカル溶液を24時間以内に用いた。ヘム(50μM)を、0.5〜1.0×106 K562細胞とインキュベートし、細胞を洗浄し、次いで、図の凡例に記載されるようにして10μMのA1Mと2時間インキュベートした。上清の一定量(>5μl)を、次いで、25 mMのリン酸、pH 8中のABTS-ラジカルの35μM溶液に加えて、3μMのA1Mの最終濃度を得た。ABTS-ラジカルの吸光度を10秒ごとに735 nmにて、合計で3分間読み取った(図12B)。ABTS-ラジカルの低減の割合は、最初の5点、すなわち時間0の点を含む40秒間の反応の線形回帰により見積もった。 可溶化K562細胞の吸光度の走査を、細胞をPBSに0.5〜1.0×106細胞/mlまで洗浄及び懸濁し、ヘム又はタンパク質と、図の凡例に記載されるような種々のステップにてインキュベートすることにより行った。インキュベーションの後に、培地を取りおき、細胞を洗浄し、50 mM Tris-HCl、pH 8.0; 2 mM EDTA; 1% NP-40; 1μg/μlペプスタチン; 5μg/μlアンチパイン; 10μg/μlロイペプチンを含むバッファーを用いて可溶化した。可溶化した細胞及び培地をともに、次いで、視覚的に分析し、吸光度スペクトルを読み取ることにより分光光度分析をした(300〜700 nm)。 ゲルクロマトグラフィー:K562細胞を洗浄し、バッファー又は50μMのヘムとインキュベートし(0.5〜1.0×106細胞/ml)、次いで、洗浄し、バッファー又は10μMのA1Mと、図の凡例に記載されるようにして2時間インキュベートした。インキュベーションの後に、細胞と培養培地を遠心分離により分離し、培養培地を、以下のパラグラフで論じるようにしてゲルクロマトグラフィーにより分析した。これは、25 ml-Superose 12 HR 10/30カラム(GE Healthcare)で、0.5 mlの試料注入ループを備え、溶出液を280及び405 nmにてモニターし、0.5 mlのフラクションを回収する高速・高性能液体クロマトグラフィー(FPLC)装置(Bio-Rad)を用いて行った。カラムは、20 mM Tris-HCl、pH 8.5; 0.1 M NaCl; 0.02% NaN3で平衡化して溶出した。 A1Mが、安定な有機ラジカルであるABTS-ラジカルを半触媒的な様式で低減でき、遊離の還元されたABTSの形成及びタンパク質の側基への共有結合を導くことが、最近示された[10]。我々は、タンパク質のこの特性を、細胞及び/又はヘムとのインキュベーションの後に調べた。ABTS-ラジカルの消失(abs 735 nm)が、A1M単独を用いて、又はヘム若しくはヘムと細胞とインキュベートしたA1Mを用いて見られた(図12B)。減少(反応)速度は、ヘムを載せた細胞又は10μMのヘムとA1Mをインキュベートしたときに、わずかであるが有意に増加した(P<0.05) (図12C)。バックグラウンド活性、すなわちABTS-ラジカルの非常に遅い消失が、対照を用いて観察された。 ほとんどのヘム(abs 405 nm)は、タンパク質(abs 280 nm)と共に溶出され、このことは、これがA1Mと結合していることを示す。さらに、A1Mの2量体およびより多量体の凝集物の量の増加が、ヘムなしで細胞とインキュベートしたA1Mと比較して、ヘム結合の後に見られた(図12A)。 ラジカル除去機構を研究するために、A1Mと、合成のモデルフリーラジカルであるABTSとの反応を詳細に特徴決定した。A1Mが、5〜6分子のABTS-ラジカルを、迅速な半触媒的反応で還元し、3つのさらなるABTS-ラジカルを、タンパク質に紫色を与える修飾された酸化型中のチロシン側鎖に結合することにより共有的に捕捉したことが示された(10)。修飾されたTyr残基のうち2つを同定し(Y22、Y132)、A1M分子上で、質量分析により位置決めした(図6)。 この関係において、最大量のラジカルを結合した後のA1Mが、組織成分に対していずれの酸化ストレスも示さないこと、すなわち、ラジカル及びA1Mタンパク質自体がともに、電気的に中性であることが重要である。言い換えると、ROS、ラジカル及びその他の酸化剤は、A1Mにより完全に消去され、よって、比喩的に「ラジカルのシンク」である。実施例2.B A1Mのヘム除去機構について、タンパク質と細胞結合ヘムとの相互作用を分析することによりさらに研究した。細胞を、10μMのヘムと30分間インキュベートし、過剰のヘムを洗い流し、A1M又は対照タンパク質AGPを、2又は10μMの濃度で加え、2時間インキュベートした。培養培地を取りおき、細胞を洗浄して可溶化し、培地及び可溶化した細胞をともに、分光光度法により(図7A)、そして視覚的(図7B)に分析した。細胞に取り込まれたヘムは、細胞の濃い茶色の着色として観察された;明確でないピークを有する典型的な吸収スペクトルが、400 nm付近で検出された。A1Mを加えると、ヘムは、細胞からほぼ完全に除去され、代りに培地中で見出された。同じモル濃度での対照タンパク質AGPは、細胞と結合したヘムに対してかなりより少ない効果を有した(図7B)。3.生体組織への酸化的損傷の阻害実施例3.A A1Mが、HepG2細胞単層の荷電粒子照射により誘導される細胞死の伝播を阻害することも示された。細胞に、低い線量のアルファ粒子を、およそ50μm2の面積で照射した。直接命中した細胞は死滅し、粒子が直接命中していない照射領域の周囲の細胞(=周囲の細胞)は、照射の5日後まで遅延型のゆっくり蓄積する壊死を示した。さらに、アポトーシス、タンパク質カルボニル基及びストレス応答遺伝子であるヘムオキシゲナーゼ-1の発現の著しい増加が、全体の細胞集団において観察された(図8A〜C)。A1Mを加えると、照射細胞における死滅細胞の量がおよそ50%、周囲細胞において100%減少し、照射により誘導されるアポトーシス、カルボニル基の形成およびヘムオキシゲナーゼ-1の上方制御を完全に阻害した(図8A〜C)。照射は、A1Mの内因性の合成及び分泌の上方制御と、培地からのA1Mの摂取の増加とを誘導した。周囲細胞の死滅についての可能性のある機構は、酸化剤生成及びROS生成により、A1Mによる阻害についての可能性のある機構は、抗酸化及びラジカル除去による。実施例3.B A1Mは、ヘム、過酸化水素及びヒドロキシラジカルによる低密度リポタンパク質(LDL)の酸化、ヒドロキシラジカルによる赤血球膜の酸化、及びヘム及び過酸化水素によるコラーゲン単量体の酸化を阻害した(示さず)。コラーゲン及び低密度リポタンパク質(LDL)の酸化的修飾は、関節炎、糖尿病及び心血管疾患の病因に関与する。コラーゲンは、酸化ストレスに対して特に感受性である。なぜなら、この分子は、非常に遅い代謝回転速度を有し、すなわち、フィブリルが生涯持続できるからである。よって、コラーゲンの酸化は、関節炎、糖尿病及び心血管疾患の病因に関与する。コラーゲンは、血管の基底膜、糸球体ろ過バリア及び血液脳関門の主要な構成成分でもあり、よって、コラーゲンへの酸化的損傷は、これらのバリアの機能に影響する(以下を参照)。 ヒト株化細胞における外因性の酸化ストレスに対するA1Mの細胞保護特性を調べるために、赤血球株化細胞K562を無血清成長培地でインキュベートし、細胞を種々の濃度のヘム(5〜20μM)と培養することにより、外因性酸化ストレスに曝露した(図10A、B)。図10Cに示すように、A1Mを成長培地に加えると、逆の用量依存的抗酸化効果が示され、ここでは、酸化ストレスが、A1Mの量の増加とともに減少する。結果は、A1Mがその形成中に酸化ストレスを阻害できるだけでなく、(図10Dに示すように)細胞をヘム含有倍地中で酸化ストレスの下にインキュベーションした後の酸化ストレスも除去できることを示す。 細胞生存性に対する過酷さを示すために、ヘム及びA1Mの影響を、20〜500μMのヘムをK562細胞に4時間加え、その後、PI (ヨウ化プロピジウム)での染色及びFACS分析による生存性を試験することにより、試験した。K562細胞の生存性をアッセイするために、細胞を洗浄し、PBS中で0.5〜1.0×106細胞/mlに懸濁し、ヘム、ヒトA1M及び/又はAGPと、図の凡例に示すように、インキュベートした。インキュベーションの後に、核染色色素であるPIを10μMの最終濃度まで加え、懸濁物の蛍光強度を、フローサイトメトリー(BD FACSAria (商標), BD Biosciences, Palo Alto, CA, USA)を用いて定量した。分析は、10000細胞について、Coherent (登録商標) Sapphire (商標)固体レーザ(PE-チャネル、フィルタ設定556 LP及び576/26 BP)を用いて行った。 明確な用量依存的細胞死滅が、ほぼ100%まで、500μMのヘムにて観察された(図13B)。ヘム溶媒であるDMSOを対応する量で用いて、効果は見られなかった(示さず)。死滅から細胞を救うA1Mの能力を、A1M (2、5又は10μM)又はAGP (10μM)を細胞に加え、その後、200μMのヘムを加えて4時間インキュベーションすることにより調べた。死滅細胞のおよそ70%を、最高濃度のA1Mを加えることにより救うことができた(図13C)。AGPを用いて、著しい効果は観察されなかった。実施例3.C 細胞内A1Mの役割を調べるために、3つのsiRNA標的A1MヌクレオチドをSigma-Aldrichから購入し、ヒトK562細胞におけるA1M発現を阻害/発現停止させるそれらの能力について評価した。A1M/グリセルアルデヒド-3-ホスフェート脱水素酵素 (G3DPH) mRNA比率のリアルタイムPCR分析(以下を参照)により評価した最良の結果は、A1M siRNA対(NM_001633/1):5'-CCUAUGUGGUCCACACCAA -3'及び5'-UUGGUGUGGACCACAUAGG -3'を用いて得られた。このsiRNA種を、その後、全ての実験において用いた。siRNAの形質移入を、OZ Biosciences (Marseille, France)からのプロトコルに従って行った。簡単に、siRNAを、Lullaby (登録商標)-siRNA形質移入試薬(OZ Biosciences)を含む培養培地中で、5nMの最終濃度まで希釈した。この溶液を、室温にて20分間インキュベートし、2×106細胞のペレットに滴下して加えた。細胞を、次いで、標準的な条件下で培養した。24時間後に、細胞を洗浄し、H2DCFDAを負荷し、ヘムで酸化し、上記のようにしてフローサイトメトリーで分析した。代りに、細胞を、図の凡例に従って、ヘムとともに又はヘムなしで無血清培地中に再懸濁し、リアルタイムPCRで分析した。 A1M遺伝子を、A1M特異的siRNAを加え、細胞を20μMのヘムで攻撃することにより発現停止させた。A1M mRNAを部分的に発現停止させると(図13E、左のパネル)、H2DCFDAプローブにより測定されるサイトゾル酸化剤が著しく増加した(図13E、右のパネル)。さらに、培養培地に加えたA1Mは、ヘム、過酸化水素及びヒドロキシラジカルによるサイトゾル酸化及びヘムオキシゲナーゼ-1発現を阻害した(示さず)。実施例3.D K562細胞の蛍光顕微鏡観察を、洗浄し、PBSに0.5〜1.0×106細胞/mlまで懸濁し、図の凡例に記載するようにヒトA1Mとインキュベートした。細胞を洗浄し、氷上に置き、ブロッキング溶液(5.4 mM KCl; 1.2mM KH2PO4; 0.8 mM MgSO4; 5.6 mM D-グルコース; 127 mM NaCl; 10 mM Hepes; 1.8 mM CaCl2; pH 7.3; 1% BSA; 5%ヤギ血清)中に15分間再懸濁した。まず、細胞表面染色を、氷上で15分間、A1Mに対するマウスモノクローナル抗体(5μg/ml)とインキュベートすることにより行った。その後、洗浄し、氷上で15分間、ヤギ抗マウスIgG F(ab')2フラグメント(Alexa Fluor (登録商標) 594; Invitrogen, Eugene, OR, USA)とインキュベートした。洗浄後、細胞の全体的な染色(細胞表面+サイトゾル)を、氷冷Na-培地に懸濁し、1% BD CellFIX (BD Biosciences, Belgium)で氷上にて15分間、及び室温にて45分間固定し、0.02% Triton-X中で透過にし、1% BSA、5%ヤギ血清、0.2% Tween-20中でブロッキングすることにより行った。次いで、細胞を4℃にて1晩、A1Mに対するマウスモノクローナル抗体を5μg/mlで用いて染色した。その後、ヤギ抗マウスIgG F(ab')2フラグメント(Alexa Fluor (登録商標) 488; Invitrogen, Eugene, OR, USA)を室温にて1時間用いた。細胞を、DAPI 含有ProLong Gold退色防止剤(Invitrogen)を用いて顕微鏡に載せた。視覚的検査及び画像の記録を、Hamamatsu C4742-95冷却CCDカメラを備えたNikon Eclipse TE300倒立蛍光顕微鏡を用い、Plan Apochromat 100×対物レンズを用いて行った。 内因的に生成されたA1Mは細胞から分泌されるので、このA1M及び外因的に加えたA1Mはともに、細胞の外側の細胞培地中で見出される。上記のように、蛍光顕微鏡を用いることにより、我々は、A1Mの細胞局在性を調べた。内因性タンパク質のほとんどは、透過処理及び固定の前後の抗A1Mとのインキュベーションにより示されるように、細胞の表面上のまだらな染色として検出された。細胞内区画の弱い染色も、透過処理後に観察された。細胞のおよそ60%は、A1M染色について陽性であった。しかし、より強い染色が、細胞を外因性A1Mとインキュベートした後に観察され、この場合はまた、透過処理及び固定の前後の抗A1Mとのインキュベーションにより示されるように、染色のほとんどが細胞表面に(細胞のおよそ90%)、まだらなパターンで存在した。 3重の試験からの結果の統計解析を、平均±SDとして示す。統計解析は、コンピュータプログラムOrigin (Microcal Software, Inc., バージョン6)を用いて、群同士をスチューデントのt検定を用いて比較して行った。4.細胞溶解及び細胞修復の阻害実施例4.A 照射HepG2細胞の細胞死は、上記のようにA1Mにより阻害された(図8Aに例示する)。A1Mは、K562細胞のヘム誘導性溶解も阻害した。例えば、200μMのヘムは細胞の50%を死滅させたが、2μMのA1Mを加えることにより、死滅細胞の数を15%に低下させ、すなわちおよそ70%低下させた(図13B、Cに例示)。A1Mは、ROS (過酸化水素及びヒドロキシラジカル)による赤血球の溶解も阻害できる。このことは、図9Aに例示する。フェントン反応により産生したヒドロキシラジカルは、赤血球の溶解を誘導し、溶解はA1Mにより阻害できた。5.酸化的修飾の修復 上記のように、A1Mは、細胞及び分子に対する酸化的修飾を、その形成及び酸化剤の除去(洗浄)の後に低減できる。このことは、還元、ラジカル除去又はその両方の結果によるだろう。例えば、細胞膜を通過できる疎水性分子である遊離ヘムは、細胞に吸収され、ほとんどがサイトゾルで見出され(図7C、D)、ここでこれは酸化を誘導する。A1Mを、ヘム負荷細胞に加えることにより、ヘム(図7C〜D)及びサイトゾル酸化(図7A)が効果的に除去される。実施例5.A このような回復の別の例として、A1Mは、ヘム及びROSにより誘導されるコラーゲンフィブリル形成の阻害を逆転させる(EMにより測定) (図14)。A1Mは、コラーゲンと結合し(示さず)、我々の結果は、これが、おそらく、酸化に対するフィブリルの生理的保護に関与することを示す。これらの結果は、A1Mを、ヘモグロビン又はROSにより誘導される酸化により損傷された組織を復帰又は修復する治療上の使用に用い得ることも示唆する。6.インビトロ及びインビボにおける遺伝子発現の上方制御実施例6.A A1Mの転写制御を調べるために、リアルタイムPCRを用いた。 リアルタイムPCRのために、トータルRNAを、K562細胞から、QIAGEN Sciences (Maryland, USA)により供給される酸性グアニジウムフェノールクロロホルム法を用いて単離した。RNAのOD比率(260 nm/280 nmでの光学密度)は、常に1.8より大きかった。逆転写を、3μgのトータルRNAに対して42℃にて60分間、0.5μgのオリゴ(dT)18プライマー、200Uの逆転写酵素及び20UのRiboLock (商標)リボヌクレアーゼ阻害剤の存在下で、反応バッファー中で行った(RevertAid (商標) H Minus First Strand cDNA合成キット, Fermentas GMBH, St. Leon-Rot, Germany)。リアルタイムPCRを用いて、ヘム、過酸化水素又は(NH4)Fe(SO4)2、過酸化水素及びアスコルベートの混合物に曝露したK562細胞中のA1M及びヘムオキシゲナーゼ-1 (HO-1) mRNAの発現を調べた。ヒトG3DPHを用いて、A1M及びHO-1の発現を標準化し、これらは図中にΔΔCtとして示す。プライマーは、以下のように設計した:A1Mフォワードプライマー5'-CACTCGTTGGCGGAAAGG-3'、リバースプライマー5'-ACTCATCATAGTTGGTGTGGAC-3'、HO-1フォワードプライマー5'-CAACAAAGTGCAAGATTCTG-3'、リバースプライマー5'-AAAGCC-CTACAGCAACTG-3';G3DPHフォワードプライマー5'-TGGTATCGTGGAAGGACTC-3'、リバースプライマー5'-AGTAGAGGCAGGGATGATG-3'。発現は、iQ SYBR Green Supermix (Bio-Rad)を用いて分析した。増幅は、55℃にて40サイクルを、iCyclerサーマルサイクラー(Bio-Rad)中で行い、データはiCycler iQ Optical Systemソフトウェアを用いて分析した。 ヘムオキシゲナーゼ1 (HO-1)遺伝子は、K562細胞において、ヘム曝露の結果として上方制御される。我々は、酸化剤により誘導されるHO-1発現に対するA1Mの影響を分析した(図13A)。予測されたように、HO-1は、10μMのヘム、50μMのH2O2又は10μMのFe3+と20μMのH2O2と100μMのアスコルベートの混合物により上方制御され、上方制御は、10μMのA1Mにより逆転された。ハウスキーピング遺伝子G3DPHの発現は、いずれの添加によっても影響されなかった。 少量のA1MがK562細胞から分泌され、分泌は、ヘモグロビン又はROSとのインキュベーションの後に増加したことが以前に示された。図13Dは、培地、10μMのヘム、50μMのH2O2又は10μMのFe3+と20μMのH2O2と100μMのアスコルベートの混合物とインキュベートしたK562細胞におけるA1M-mRNAのリアルタイム PCR分析を示す。これらの全ての酸化剤は、A1M mRNAのレベルの増加を誘導した。 A1Mの発現は、肝実質細胞、組織球及び赤血球の株化細胞において、細胞を、ヘモグロビン、ヘム及びROSに曝露することにより増加する。A1Mの上方制御は、ケラチノサイト及び繊維芽細胞においても、ヘモグロビン及びROSに応答して見られる(示さず)。このことは、ケラチノサイトが主な細胞タイプを構成する皮膚における抗酸化防御のために重要であり得る。さらに、内因的に生成されたA1Mは、おそらく分泌及び細胞表面受容体による取り込みの後に、K562細胞の表面上に局在化し(示さず)、外因的に加えたA1Mも、細胞表面上で主に見出される(示さず)。つまり、末梢細胞は、肝臓により生成される血漿A1Mと、局所的に合成されたA1Mとの両方により保護され得る。実施例6.B 新しい結果は、それぞれA1Mの濃度とヘモグロビンの濃度の間、及びA1Mとタンパク質カルボニル基の間の相関関係を、ヒト疾患(PE)において示す。PEは、高血圧及び蛋白尿の臨床症状を示す妊娠の疾患である。PEは、ある程度の酸化ストレスを伴う疾患であることが知られている。我々の結果は、血漿ヘモグロビン濃度と酸化ストレスのバイオマーカーである血漿タンパク質カルボニル基の濃度が、疾患と相関することを示す(示さず)。我々は、血漿及び胎盤組織抽出物中のA1Mの濃度が、PE患者において著しく上昇し、血漿ヘモグロビン及びタンパク質カルボニル基濃度と相関することも見出した(図15及び16A〜D)。これらの結果は、A1Mの合成が、酸化ストレス及びヘモグロビン濃度の上昇を伴う疾患においてインビボで上方制御されることを示す。7.細胞外マトリックス成長の刺激 上記のように、A1Mは、酸化ストレス中に、コラーゲンに対する保護及び修復の効果を有する。コラーゲンは、例えば基底膜及び皮膚組織における細胞外マトリックス(ECM)の主要な分子成分である。新しい実験結果は、A1Mが、ECM成長に対して正の効果を有することも示す(表3)。ヒト胎盤を、インビトロにてA1M又はバッファーのみで潅流し、次いで、組織を、遺伝子アレイ技術を用いるmRNAレベルの調査(表3)及び電子顕微鏡を用いる超微細構造の調査(図14)のためにサンプリングした。表3に示すように、多くの細胞外マトリックス遺伝子群が、A1M潅流により上方制御された。電子顕微鏡法は、2群のコラーゲン構造において明確な違いを示した。バッファーでの潅流は、コラーゲン繊維束の破壊、より薄いフィブリル、及び多量の散乱した単量体をもたらしたが、A1Mでの潅流は、反対の結果、すなわちフィブリルの厚さ及び数の増加をもたらした(図14)。よって、A1Mがパッチに含まれるか、包帯へ含浸されるか又はローションに含まれる製剤によりA1Mを局所的に用い得ることが考えられる。実施例7.A ミクログロブリンを全般的に、A1Mを特に炎症性皮膚疾患の治療のために用いることについての可能性を調べるために、皮膚浸透実験を行った。興味対象の皮膚疾患は、アトピー性皮膚炎及び乾癬のようなバリア機能が損なわれた炎症性疾患である。用いたモデルは、損なわれたバリア機能を考慮しており、U. Jacobi及びK. Engelら「Penetration of Pollen Proteins into the Skin」Skin Pharmacol Physiol 2007;20:297〜の文献に、アトピー性皮膚炎患者における皮膚を通してのタンパク質送達の決定のための適切なモデルとして記載されている。 bronaughセル拡散ユニットを用いる。この装置は14個のセルからなり、それぞれのセルは、レセプター媒体20mM TRIS、0.1 N NaCl、pH 8が1.4 ml/時の速度でポンピングされる下部と、生成物、この場合はA1Mの3w/w%溶液が与えられる上部とを有する。上部及び下部は、ブタの耳の皮膚の膜で分けられている。 用いた膜は、家畜のブタの内耳からの皮膚である。その理由は、浸透挙動に小さい変動を生じる長い経験と、ブタのA1Mが、ヒトの対応物から、ラジオイムノアッセイRIAにより分離可能であるということである。膜は、浸透実験の前にそれぞれ25又は50回テープ剥離する(tape-stripped)。 25回テープ剥離した膜を有するセルについて、浸透データは表1に示し、50回テープ剥離した膜の浸透データは表2に示す。実験は、24時間後に終了した。組織で見出された吸収された量、皮膚を通過した量及び組織濃度を、表2及び3に列挙する。 変動は大きいが、これは、この種の単回施与実験では通常であり、結果は、約25μg/ml、又は1μMの組織濃度が、単回施与の後に生じることを示す。この濃度は、生物学的効果を有することが以前に示されており、ヒト血漿中の濃度と同等である。A1Mをさらに用いると、より高い組織濃度が生じる。よって、A1Mが組織に送達され、効果は、バリア機能が損なわれる炎症性皮膚疾患の治療に利用できると結論付けることができる。A1Mを含む医薬組成物の処方例 以下の処方例は、単に着想として含まれ、いずれの様式でも限定するとみなされない。処方は、最適な治療及び患者の服薬遵守を支持する任意の様式で使用者により組み合わせ、調節され、用いられ得る。 これらの例は、局所及び粘膜投与用の処方、非経口投与用の処方、並びに代替の投与経路の例を含む。処方例1局所用組成物 以下の成分を含む組成物が作製される。処方例2非経口組成物 以下の成分を含む組成物が作製される。処方例3軟膏、親水性ワセリン処方例4親水性軟膏処方例5非経口投与用の液体(例えば筋肉内、静脈内、皮下又は皮内投与)。濃度範囲は推奨であり、適切であれば超過してよい。 アルファ-1-ミクログロブリンと医薬的に許容され得る賦形剤とを含む、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症又は関節リウマチの治療又は予防のための医薬組成物。 アルファ-1-ミクログロブリンが、ヒトアルファ-1-ミクログロブリン(配列番号1)である請求項1に記載の医薬組成物。 アルファ-1-ミクログロブリンが、ヒト組換えアルファ-1-ミクログロブリン(配列番号2)である請求項1に記載の医薬組成物。 アルファ-1-ミクログロブリンが、非経口投与される請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。 アルファ-1-ミクログロブリンが、局所的に、例えば体腔又は皮膚に投与される請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 前記医薬的に許容され得る賦形剤が、溶媒、pH調整剤、浸透活性剤、共溶媒、可溶化剤、乳化剤、懸濁化剤、界面活性剤、湿潤剤などから選択される請求項1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。 【課題】酸化ストレスが疾患の進行の原因因子である疾患の治療又は予防におけるアルファ-1-ミクログロブリン(A1M)の医薬的使用。特に、対象者におけるフリーラジカル及び/又は遊離ヘモグロビンの存在を伴う疾患又は状態の治療又は予防におけるアルファ-1-ミクログロブリンの医薬的使用の提供。【解決手段】アルファ-1-ミクログロブリンと医薬的に許容され得る賦形剤とを含む、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症又は関節リウマチの治療又は予防のための医薬組成物。【選択図】なし配列表


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