タイトル: | 特許公報(B1)_新規微生物 |
出願番号: | 2014222126 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12N 1/20,B09B 3/00 |
岡村 好倫 山村 正一 JP 5689560 特許公報(B1) 20150206 2014222126 20141031 新規微生物 株式会社 山有 598052089 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 岡村 好倫 山村 正一 20150325 C12N 1/20 20060101AFI20150305BHJP B09B 3/00 20060101ALI20150305BHJP JPC12N1/20 AC12N1/20 DC12N1/20 FB09B3/00 A C12N B09B GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN) PubMed 特開2011−024569(JP,A) 特開2008−278890(JP,A) 特開2005−013063(JP,A) 9 NPMD NITE BP-01764 NPMD NITE BP-01948 NPMD NITE BP-01949 NPMD NITE BP-01950 NPMD NITE BP-01925 40 20141031 櫛引 明佳 本発明は、新属フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種となる新規微生物に関する。さらに詳しくは、次の1)〜10)の特性を有するフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)に関する。1)グラム染色が陰性であり、胞子を形成する2)オキシダーゼテストは陰性、カタラーゼテストは陽性で好気性である3)1%の糖および2.0%のNaClを含むLB培地(pH8.0)に、該糖としてD−ガラクトースまたはシュークロースを加えた場合には酸生成を行わないが、D−グルコース、ラクトース、D−マンニトール、グリセリンまたはN−アセチルグルコサミンを加えた場合には酸生成を行う4)至適生育温度は45℃〜55℃であり、35℃以下または65℃以上では増殖が確認されない5)至適pHは7.0〜8.0であり、pH5.7以下またはpH10.0以上では増殖が確認されない6)CYC培地にNaClを終濃度7%まで添加しても増殖が確認される7)主要なメナキノンはMK7である8)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む9)ゲノムDNAのGC含量は51.2%〜52.4%である10)最も主要な菌体脂肪酸はiso−C16:0である 従来の堆肥化の過程では、カビなどの真菌、放線菌と呼ばれるアクチノマイセテイルズ目(Actinomycetales目)の細菌、サーモアクチノミセス属(Thermoactinomyces属)などサーモアクチノマイセタジー科(Thermoactinomycetaceae科)の細菌、バチラス属(Bacillus属)やゲオバチラス属(Geobacillus属)などバチラジー科(Bacillaceae科)の細菌が有機物を分解・資化して、堆肥化を担っている。これらの微生物は胞子形成能を有し、各個体の生育温度以上に昇温した環境では胞子の状態で耐熱性を示して安定的に堆肥内に留まることができるため、生育適温において有機廃棄物を分解・資化した後も、戻し堆肥として繰り返し堆肥化に利用することができる。 堆肥化では、嫌気的発酵よりも好気的発酵のほうが有機物の分解が早く、悪臭も低減できるため望ましい。好気的発酵による堆肥化の過程では、通気による好気的な発酵を開始して10日以内に堆肥内部の温度が45℃を越える高温となり、高温状態は堆肥化終了まで長期的に維持される。45℃〜70℃の堆肥内の高温環境ではミクロモノスポラジー科(Micromonosporaceae科)、ストレプトマイセタジー科(Streptomycetaceae科)、サーモモノスポラジー科(Thermomonosporanceae科)、ストレプトスポランジアジー科(Streptosporangiaceae科)などアクチノマイセテイルズ目(Actinomycetales目)の放線菌群、好熱性で糸状性の形態を有するサーモアクチノマイセタジー科(Thermoactinomycetaceae科)の細菌群が有機物の分解を担っている(非特許文献1)。また、ゲオバチラス属(Geobacillus属)が属するバチラジー科(Bacillaceae科)の細菌群も高温環境下の堆肥内に存在している(非特許文献2、非特許文献3)。高温状態の堆肥内部ではこれらの限られた分類学群内に属した菌群が主に堆肥化を担っているが、各科(family)内の菌種は性状の似た菌で構成されているので、一般的に高温になって以降の堆肥内部の菌群は多様性が低い状態である。 特許文献1にはAnoxybacillus属の菌株を用いて堆肥を製造する方法、特許文献2にはBacillus属の菌株を用いて堆肥を製造する方法が記載されているが、いずれもバチラジー科(Bacillaceae科)の細菌を利用している。 一方、廃棄物処理に出される有機廃棄物は有機性汚泥、食品残渣物、動物糞尿など多岐に渡り、廃棄物原料の種類によって堆肥内のpHや塩濃度、腐植酸濃度、C/N比は大きく変わる。このため、多様な有機廃棄物を効率的に堆肥化処理するためには、既存の菌群と異なる菌群を添加して堆肥中で生育させ、多様な菌種により有機物を分解・資化することが望ましい。また、添加する菌群は胞子形成能を有することで休眠状態を維持でき、環境の変化に耐えられるものが望ましい。安定した胞子の状態は保管、運搬が容易であり、さらに、戻し堆肥として繰り返し使用できるために経済的である。 これまで本発明者らは、堆肥化に利用できることができる新規の細菌を探索し、80℃以上の環境下で生育する新規な属に属する超好熱菌を見出している(特許文献3)。特開2011−24569号公報特開2008−278890号公報特開2005−13063号公報Journal of bioscience and bioengineering, Vol.99, p1−11, 2005International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, Vol.52, p2251−2255, 2002Systematic and Applied Microbiology, Vol.34, p419−423,2011 本発明は、し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用な新規微生物の提供を課題とする。 本発明者らは、新規微生物を見出し、これを単離、同定することにより、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は以下の通りのものである。〔1〕フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種であり、次の1)〜10)の特性を有するフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。1)グラム染色が陰性の桿菌であり、胞子を形成する2)オキシダーゼテストは陰性、カタラーゼテストは陽性で好気性である3)1%の糖および2%のNaClを含むLB培地(pH8.0)に、該糖としてD−ガラクトースまたはシュークロースを加えた場合には酸生成を行わないが、D−グルコース、ラクトース、D−マンニトール、グリセリンまたはN−アセチルグルコサミンを加えた場合には酸生成を行う4)至適生育温度は45℃〜55℃であり、35℃以下または65℃以上では増殖が確認されない5)至適pHは7.0〜8.0であり、pH5.7以下またはpH10.0以上では増殖が確認されない6)CYC培地にNaClを終濃度7%まで添加しても増殖が確認される7)主要なメナキノンはMK7である8)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む9)ゲノムDNAのGC含量は51.2%〜52.4%である10)最も主要な菌体脂肪酸はiso−C16:0である〔2〕配列番号1、または配列番号8〜配列番号19のいずれかに示す塩基配列に対して98.7%以上の相同性を有する塩基配列からなる16S rRNA遺伝子を有する、上記〔1〕に記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔3〕YM17株(NITE BP−01764)、YM17−2株(NITE BP−01948)、YM17−3株(NITE BP−01949)、YM17−4株(NITE BP−01950)またはYM17−5株(NITE BP−01925)とのDNA−DNAハイブリダイゼーション相同値が70%以上である、上記〔1〕または〔2〕に記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔4〕さらに、菌体脂肪酸として、anteiso−C15:0、C16:0、anteiso−C17:0、iso−C17:0のいずれか一種以上を含む、上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔5〕菌体脂肪酸としてiso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、anteiso−C17:0、iso−C17:0を含むフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔6〕菌体脂肪酸としてiso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、C16:0、anteiso−C17:0を含むフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔7〕有機廃棄物の処理に使用する、上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔8〕有機廃棄物がし尿、有機性汚泥、食品残渣物、又は動物糞尿である、上記〔7〕に記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔9〕YM17株(NITE BP−01764)、NaCl_20131016_04株、YM17−2株(NITE BP−01948)、YM17−3株(NITE BP−01949)、YM17−4株(NITE BP−01950)、NaCl_20131016_19株、YM17−5株(NITE BP−01925)、NaCl_20131016_24株、NaCl_20131016_28株、NaCl_20131016_30株、NaCl_20131016_34株、NaCl_20131016_37株またはNaCl_20131016_38株のいずれかである、上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を使用する、有機廃棄物の処理方法。〔11〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を使用する、タンパク質の分解方法。 本発明によって得られた新規微生物は、新属フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種である。この新規微生物はし尿、汚泥等の有機廃棄物の処理、タンパク質の分解等に有用であり、また、様々な用途に使用し得る。YM17株の細胞写真を示した図である(実施例1)。近隣結合法により作成された系統樹を示した図である(実施例1)。YM17株と分離した12株の16S rRNA遺伝子による系統樹を示した図である(実施例2)。堆肥培養中の菌の状態を示した図である(実施例2)。ゼラチンザイモグラフィーの結果を示した図である(実施例2)。 本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)とは、次の1)〜10)の特性を有する新属フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種のことをいう。1)グラム染色が陰性であり、胞子を形成する2)オキシダーゼテストは陰性、カタラーゼテストは陽性で好気性である3)1%の糖および2.0%のNaClを含むLB培地(pH8.0)に、該糖としてD−ガラクトースまたはシュークロースを加えた場合には酸生成を行わないが、D−グルコース、ラクトース、D−マンニトール、グリセリンまたはN−アセチルグルコサミンを加えた場合には酸生成を行う4)至適生育温度は45℃〜55℃であり、35℃以下または65℃以上では増殖が確認されない5)至適pHは7.0〜8.0であり、pH5.7以下またはpH10.0以上では増殖が確認されない6)CYC培地にNaClを終濃度7%まで添加しても増殖が確認される7)主要なメナキノンはMK7である8)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む9)ゲノムDNAのGC含量は51.2%〜52.4%である10)最も主要な菌体脂肪酸はiso−C16:0である この「主要なメナキノン」としてMK7を81.8%以上含むものが挙げられる。 また、「主要な菌体脂肪酸」として、iso−C16:0を34.1%以上42.6%以下含むものが挙げられる。 さらに「菌体脂肪酸」として、iso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、C16:0、anteiso−C17:0、iso−C17:0のいずれか一種以上を含むものであっても良い。本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)はこれらの脂肪酸を合計して86.1%以上含むものであることが好ましい。 さらに、本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)は、配列番号1、または配列番号8〜19のいずれかに示す塩基配列に対して98.7%以上の相同性を有する塩基配列からなる16S rRNA遺伝子を有するものであることが好ましい。 さらに、本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)はYM17株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株またはYM17−5株とDNA−DNAハイブリゼーションの相同値が70%であることが好ましい。 このような本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)として、上記1)〜10)の性質を有し、さらに、菌体脂肪酸としてiso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、anteiso−C17:0、iso−C17:0を含むフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)が挙げられる。 このようなフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)として、YM17株、YM17−5株等が挙げられる。 また、本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)として、上記1)〜10)の性質を有し、さらに、菌体脂肪酸としてiso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、C16:0、anteiso−C17:0を含む、フラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)も挙げられる。 このようなフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)として、NaCl_20131016_04株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、NaCl_20131016_19株、NaCl_20131016_24株、NaCl_20131016_28株、NaCl_20131016_30株、NaCl_20131016_34株、NaCl_20131016_37株およびNaCl_20131016_38株等が挙げられる。 本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)として挙げられるYM17株は、上記の特性を有するとともに、16SrRNAの塩基配列が配列表配列番号1に記載の塩基配列と100%同一である。 本菌株は本出願人の申請により、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センターにブタペスト条約に基づく国際寄託されている。以下に、寄託を特定する内容を記載する。(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01764(4)識別のための表示:YM17(5)原寄託日:2013年11月29日 また、同様に本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)として挙げられるYM17−2株、YM17−3株、YM17−4株およびYM17−5株についても、本出願人の申請により、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センターにブタペスト条約に基づく国際寄託されている。これらの寄託を特定する内容は実施例等に示した。 本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)には、このフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)に該当する菌株の変異株も含まれる。また、フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)のうち、フラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)やフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)の変異株も含まれる。 本発明におけるこの変異株とは化学的変異導入、自然突然変異、形態変異、トランスフェクション等の遺伝子工学的手法により、その物理的特性や化学的特性が改変されたものであり、上記1)〜10)の全ての特性を有するもののことをいう。 本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)は、有機性汚泥、食品残渣物、又は動物糞尿等の有機廃棄物の処理に使用することができる。これらの有機廃棄物に、フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を加えることにより、堆肥等を製造することも可能である。 本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を使用する有機廃棄物の処理方法では、有機廃棄物にフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を加えるのみならず、有機廃棄物の処理において有用なその他の工程を含んでいても良い。 さらに、本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)は、タンパク質の分解に使用することができる。 本発明のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を使用するタンパク質の分解方法では、タンパク質やタンパク質を含む分解対象にフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を加えるのみならず、タンパク質の分解において有用なその他の工程を含んでいても良い。 以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。〔実施例1〕フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)の単離・同定1.菌株の単離 鹿児島県曽於市の堆肥化場の堆肥からYM17株を単離した。 即ち、50μg/mL Novobiocin を含む4mLの1/2Nutrient培地(ペプトン:0.25%、塩化ナトリウム:0.25%、酵母エキス:0.1%、肉エキス:0.05%、pH7.4)に該堆肥400mgを加え、55℃で2日間培養した後、この液体培養液を50μg/mL Novobiocinを含む1/2Nutrient寒天培地に塗布して4日間培養しYM17株のコロニーを単離した。2.分類学的性質A.試験方法 菌株の分類学的性質は「新生化学実験講座第17巻微生物実験法(東京化学同人発行)」、「改訂版微生物の分類と同定<下>(学会出版センター発行)」、「微生物の分類・同定実験法(シュプリンガー・ジャパン発行)」、BERGEY’S MANUAL OF Syetematic Bacteriologyに記載の方法に従って分析した。単離菌株の分類と同定はInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology誌に記載されている種との比較により行った。 この解析により得られた形態的性質、培養的性質、生理学的性質、生育範囲、及び化学分類学的性質を表2−1、表2−5に示した。また、YM17株を55℃で培養した細胞写真を図1に示した。図1において、YM17株は桿菌であり、細胞の末端に胞子を形成することが確認できた。図1のバーは10μmを表す。なお、表2(表2−1〜表2−5)には、実施例2において分離した12菌株の分類学的性質も合わせて示した。B.試験培地 各培地のpHは表2−1中に記載したとおりである。リトマスミルクを除く各培地は121℃で15分間オートクレーブ滅菌をした。リトマスミルクは110℃で10分間オートクレーブ滅菌をした。クリステンセン尿素培地の尿素、OFテスト培地の糖、糖からの酸生成を調べた糖類はフィルター滅菌を行い、記載した終濃度になるように各培地に加えた。なお、糖からの酸生成は1%の糖と2%のNaClを含むLB培地(pH8.0)を用いて調べた。(1)CYC寒天培地(スクロース:3%、カザミノ酸:0.6%、硝酸ナトリウム:0.3%、酵母エキス:0.2%、リン酸水素二カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.05%、硫酸鉄七水和物:0.001%、寒天:1.5%)(2)CYC液体培地(スクロース:3%、カザミノ酸:0.6%、硝酸ナトリウム:0.3%、酵母エキス:0.2%、リン酸水素二カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.05%、硫酸鉄七水和物:0.001%)(3)肉汁寒天培地(肉エキス:1%、ペプトン:1%、塩化ナトリウム:0.5%、寒天:1.5%)(4)肉汁液体培地(肉エキス:1%、ペプトン:1%、塩化ナトリウム:0.5%)(5)リトマスミルク(スキムミルク:10%、1%リトマス液:数滴)(6)VP培地(酵母エキス:0.1%、トリプトン:0.7%、ソイトン:0.5%、グルコース:1%、塩化ナトリウム:0.5%、寒天:0.3%)(7)SIM培地(肉エキス:0.3%、ペプトン:3%、チオ硫酸ナトリウム:0.005%、塩酸システイン:0.02%、クエン酸鉄アンモニウム:0.05g、寒天:0.5%)(8)LB寒天培地(トリプトン:1%、塩化ナトリウム:0.5%、酵母エキス:0.5%、寒天:1.5%)(9)SY寒天培地(硫酸アンモニウム:0.2%、リン酸水素二ナトリウム:0.14%、リン酸二水素カリウム:0.07%、硫酸マグネシウム七水和物:0.02%、硫酸鉄七水和物:0.0005%、硫酸マンガン五水和物:0.0005%、グルコース:1%)(10)Nutrient寒天培地(肉エキス:0.3%、ペプトン:0.5%、寒天:1.5%)(11)Simmons培地(リン酸二水素アンモニウム:0.1%、リン酸水素二カリウム:0.1%、塩化ナトリウム:0.5%、クエン酸ナトリウム:0.2%、硫酸マグネシウム七水和物:0.02%、寒天:1.5%、BTB:0.008%)(12)Christensen培地(酵母エキス:0.05%、システイン塩酸塩:0.01%、塩化ナトリウム:0.5%、クエン酸ナトリウム:0.3%、グルコース:0.02%、リン酸二水素カリウム:0.1%、寒天:1.5%、フェノールレッド:0.0012%)(13)硝酸塩培地(グルコース:1.0%、リン酸二水素カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.02%、硝酸ナトリウム:0.1%)(14)アンモニウム塩培地(グルコース:1.0%、リン酸二水素カリウム:0.1%、硫酸マグネシウム七水和物:0.05%、塩化カリウム:0.02%、硫酸アンモニウム:0.078%)(15)クリステンセン尿素培地(ペプトン:0.1%、塩化ナトリウム:0.5%、グルコース:0.1g、KH2PO4:0.2%、フェノールレッド:0.0008%、寒天:1.5%、尿素:2%)(16)OFテスト培地(ペプトン:0.2%、塩化ナトリウム:0.5%、リン酸水素二カリウム:0.03%、寒天:0.2%、BTB:0.008%、糖:1%)C.脂肪酸の分析1)試料調整とガスクロマトグラフィーによる分析 5Lの三角フラスコに3LのCYC液体培地を入れた本培養培地に、種培養した菌を植菌し、52℃で対数増殖期後期から定常期初期まで培養し、遠心により菌体を回収した。回収した菌体は生理食塩水にて2回洗浄した。約500mg〜700mgの湿菌体をスクリューキャップ付遠心管に入れた。1mLのアルカリけん化液を加え、密栓し100℃で5分間保った。5分後、10秒間よく振り、さらに100℃で30分間保った。遠心管を冷却した後、2mLの塩酸メタノール試薬を加え、密栓し、80℃で10分間保った。遠心管を冷却した後、1.25mLの抽出用溶媒を加え、10分間ゆっくり撹拌した。遠心管を1000rpmで5分間遠心した後、上層を別のスクリューキャップ付遠心管に移し、3mLの洗浄液を加えた。再び密栓して5分間撹拌した。この遠心管を1000rpmで5分間遠心した後、溶媒層をガラスアンプルに取り、窒素ガスで乾燥させた。各試薬の組成は下記に示した。得られた乾燥試料を脂肪酸分析試料として、株式会社テクノスルガ・ラボでガスクロマトグラフィーにより分析した。得られた結果を表1に示した。2)試薬(1)アルカリけん化液(水酸化ナトリウム:7.5g、メタノール:25mL、超純水:25mL)(2)塩酸メタノール試薬(6N塩酸:21.7mL、メタノール:18.3mL)(3)抽出用溶媒(ヘキサン:10mL、t−ブチルメチルエーテル:10mL)(4)洗浄液(水酸化ナトリウム:0.586g、超純水:48.8mL)D.細胞壁ペプチドグリカン1)試料調整 約2gの湿菌体を6mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)に懸濁し、超音波破砕機(TAITEC社製VP−30S)により30分間処理して細胞を破砕した。破砕液を温度4℃にて3000rpmで10分間遠心をして、上清を回収した。上清を温度4℃にて9000rpmで60分間遠心をして、上清を取り除き、沈殿物を新しい遠心管に移した。沈殿物に6mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)を加えて洗浄した後、温度4℃にて9000rpmで60分間遠心をして、上清を取り除いた。沈殿物に2mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)と400μLの25%SDSを加え、100℃で40分間保った。65℃に温めておいた10mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)をさらに加え、撹拌した後、温度30℃にて9000rpmで60分間遠心した。 上清を取り除き、沈殿物に65℃に温めておいた5mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)を加えて洗浄した後、温度30℃にて9000rpmで30分間遠心をして上清を取り除いた。この洗浄作業を2回行った。洗浄後、沈殿物に2mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.6)と100μLの1mg/mL Pronase液を加え、37℃で2時間保った。このPronase反応後の液に5mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.6)を加え、細胞壁成分を洗浄した後、温度4℃にて9000rpmで30分間遠心をして上清を取り除いた。この洗浄作業を2回行った。 洗浄後の沈殿物に2mLの5%トリクロロ酢酸水溶液を加え、100℃で20分間保った。この懸濁液をガラス製のスクリューキャップ付遠心管に移し、5mLの50mMリン酸緩衝液(pH7.2)を加えて洗浄した後、室温にて1000rpmで1分間遠心をして、上清を取り除いた。この洗浄作業を2回行った。洗浄後の沈殿物に3mLのエタノールを加え、室温にて1000rpmで1分間遠心をして、上清を取り除いた。沈殿物に3mLのジエチルエーテルを加え、室温にて1000rpmで1分間遠心をして、上清を取り除き、沈殿物を乾燥させて細胞壁試料とした。2)TLCによる分析 5mgの細胞壁試料に250μLの4N塩酸を加え、100℃で16時間加水分解反応を行った。加水分解反応後、水酸化カリウムを置いたデシケーター内で塩酸を取り除き、得られた処理液をTLCに供試した。 TLCプレートはMerck社製TLCセルロースプレートNo.1.05716.0001を用いた。構成アミノ酸の検出では一次元目をイソプロパノール:酢酸:超純水=75:10:15の展開溶媒で展開し、二次元目をメタノール:ピリジン:10N塩酸:超純水=64:8:2:14で展開した。展開後TLCプレートにニンヒドリン試薬をスプレーし、細胞壁ペプチドグリカンに含まれるアミノ酸を検出した。また、ジアミノピメリン酸の異性型の検出は同じTLCプレートを用いて、メタノール:ピリジン:10N塩酸:超純水=64:8:2:14で展開し、標準品との移動度の比較により特定した。その結果、細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含むことが確認された。E.メナキノン1)試料調整 約500mgの乾燥菌体に20mLのクロロホルム:メタノール=2:1液を加え、冷暗所で一晩、緩やかに撹拌した。この懸濁液を濾過し、濾液を湯浴温度30℃のロータリーエバポレーターで濃縮乾固した。乾固物を3mLのアセトンに溶かし、窒素ガスで約200μLに濃縮した。Merck社製HPTLCシリカゲル60 F254プレートNo.1.05628.0001にこの濃縮液を供試し、トルエンを展開溶媒として展開した。展開後にTLCプレートを乾燥して、メナキノンのバンドをUVランプ(254nm)の下で確認し、その部分のシリカゲルをスパーテルでかき取り、試験管に入れた。かき取ったシリカゲルに4mLのアセトンを加えて緩やかに撹拌し、フィルター濾過してシリカゲル粒子を除去した。得られた上清を窒素ガスによって約200μLまで濃縮し、HPLCの試料とした。2)HPLCによる分析 試料25μLをHPLCに注入した。カラムはODSカラム(SHISEIDO社製 CAPCELL PAK C18 UG120 S−5)を用い、展開溶媒にはメタノール:イソプロパノール=2:1液を用いた。移動速度1.5mL/分、カラム温度40℃で展開し、UV(270nm)で検出した。HPLCの機械はHEWLETT PACKART社製SERIES 1100を用いた。この分析を複数回行ったところ、MK7の含有量が1回目は83.9%であり、2回目は85.2%であったことから、主要なメナキノンがMK7であることが確認された。F.GC含量1)DNA調整 ゲノムDNAの抽出は参考文献1の方法に従って行った。 即ち、0.9g〜1.6gの湿菌体をSaline−0.1M EDTA(pH8.0)で洗浄後、5mLの同溶液に懸濁した。卵白リゾチームを終濃度1mg/mLで添加して35℃にて溶菌させた後、溶菌液を凍結させた。凍結品に等量のTris−SDS(pH 9.0)を加え、60℃の湯浴で融解し、10分間保った。その後、氷冷し、等量の水飽和フェノールを加えて10分間振盪した。遠心して上清を回収し、2倍量のエタノールを加えて繊維状のDNAをガラス棒で巻き取った。巻き取ったDNAを70%、90%、99.5%のエタノールで段階的に洗浄し、フェノールを除去した。DNAを乾燥後、適量の0.1XSSC溶液で溶解し、RNaseを加えて35℃で30分以上反応させ、RNAを除去した。氷冷後、1/5量の水飽和フェノールを加えて、同様に振盪、遠心、エタノール沈殿、フェノール除去、0.1XSSC溶液で溶解、RNase処理を行った。 RNase処理後のDNAをフェノール処理し、遠心してDNA溶解画分を分取し、DNA溶解画分に1/10量のAcetate−EDTAと0.6倍量のイソプロパノールを加えてDNAを再度巻き取った。巻き取ったDNAを70%、90%、99.5%のエタノールで洗浄し、乾燥後、DNA濃度が500μg/mL以上となるように0.1XSSC溶液で溶解した。DNAの純度が低い場合には、フェノールによるタンパク質の除去とRNase処理を繰り返した。参考文献1:Saito,H.&Miura,K.1963.Preparation of transforming deoxyribonucleic acid by phenol treatment.Biochim.Biophys.Acta 72:619−629.2)試薬(1)Saline−0.1M EDTA(NaCl:8.77g、EDTA・2Na・2H2O:37.22g、pH:8.0、超純水:総液量が1000mLとなるように加えた)(2)Tris−SDS(Tris:12.1g、SDS:20.0g、pH9.0、超純水:総液量が1000mLとなるように加えた)(3)20XSSC(NaCl:175g、Trisodium citrate:77.4g、超純水:総液量が1000mLとなるように加えた。0.1XSSCと1XSSCは20XSSCを超純水で希釈して作成した)(4)Acetate−EDTA(A液:CH3COONa・3H2O:81.65g/超純水200mL、B液:CH3COOH:36.03g/超純水200mL。A液とB液を混合してpH7.0に調整した。EDTA・2Na・2H2O:74.45mg/調整液200mLとしてAcetate−EDTAとした)3)GC含量の測定 GC含量の測定はDNA GC kit(ヤマサ醤油株式会社社製)を用いた。7μg相当量のDNAを20μLの0.1XSSCに溶解し、100℃で10分間熱変成させ、すぐに氷冷した。氷冷後、20μLの4U/mLヌクレアーゼP1溶液を加え、50℃で1時間反応させた。ヌクレアーゼP1処理後、20μLの2.4U/mLアルカリフォスファターゼ溶液を加え、37℃で1時間反応させたものをHPLCに供試した。 HPLCのカラムはODSカラム(SHISEIDO社製 CAPCELL PAK C18 UG120 S−5)を用い、展開溶媒には0.02M NH4H2PO4:アセトニトリル=20:1液を用いた。移動速度1.0mL/分、カラム温度40℃で展開し、UV(270nm)で検出した。DNA GC kitに付属のスタンダードを基準としてYM17株のGC含量を計算したところ、GC含量は51.4%であった。G.16S rRNA遺伝子の塩基配列の解析1)PCR反応 YM17株の16S rRNA遺伝子をコロニーダイレクトPCR法により増幅した。PCR反応にはTks Gflex(登録商標) DNA Polymerase(タカラバイオ社)とEU10Fプライマー(配列表配列番号2)、EU1500Rプライマー(配列表配列番号3)を用いた。PCR反応液の組成はTks Gflex(登録商標) DNA Polymeraseの説明書に記載されている混合割合に従った。PCR反応は94℃で1分の熱処理を1サイクル行った後、98℃で10秒、55℃で15秒、68℃で1分30秒の反応を30サイクル行った。2)シークエンス反応 得られたPCR反応物はWizard(登録商標) SV Gel and PCR Clean−Up System(Promega社)により精製した。精製産物とEU10Fプライマー、EU520Fプライマー(配列表配列番号4)、EU907Rプライマー(配列表配列番号5)、又はEU1500Rプライマーを用いてシークエンス反応を行い、単離菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を決定した。 YM17株の16S rRNA遺伝子の塩基配列を配列表配列番号1に示した。 YM17株の16S rRNA遺伝子塩基配列について、遺伝子データベースであるThe National Center for Biotechnology Information のBLASTホモロジー検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行った結果、YM17株の16S rRNA遺伝子と最も高い相同性を示す種はメカカリマイセス アスポロフォリゲネンス(Mechercharimyces asporophorigenens)であり、相同性は91%であった。 続いてYM17株に近縁種の16S rRNA遺伝子をThe National Center for Biotechnology Informationの遺伝子データベースより収集し、系統解析を行った。 収集した16S rRNA遺伝子塩基配列をClustal X 2.0.12プログラムによりアライメントし、近隣結合法により系統樹を作成した。得られた系統樹を図2に示した。括弧内の数字はGenBankのアクセッション番号を示し、YM16は本発明と同様の方法で本発明者らが単離した菌株を示す。H.YM17株の同定と分類1)YM17株 図2の系統解析に示すようにYM17株の16S rRNA遺伝子はバチラジー科(Bacillaceae科)やアリシクロバチラジー科(Alicyclobacillaceae科)、サーモアクチノマイセタジー科(Themoactinomycetaceae科)とは大きく分かれる枝分かれを形成する。 YM17株が示す桿菌の形態や細胞内で芽胞形成する形態はバチラジー科(Bacillaceae科)やアリシクロバチラジー科(Alicyclobacillaceae科)で見られる性質であり、糸状性の菌糸を形成するサーモアクチノマイセタジー科(Themoactinomycetaceae科)とは明らかに異なる。 YM17株とバチラジー科(Bacillaceae科)、及びアリシクロバチラジー科(Alicyclobacillaceae科)に属する種の16S rRNA遺伝子配列の相同性を比較した。結果を表3に示す。全ての属で相同性は89%以下となり、YM17株はバチラジー科(Bacillaceae科)、及びアリシクロバチラジー科(Alicyclobacillaceae科)に属する種とは分類学的に大きく異なる。図2の系統樹においてYM17株と分岐が近いアリシクロバチラス アシドカルダリウス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、カルディテリコラ サツメンシス(Calditerricola satsumensis)、カルダルカリバチラス サーマラム(Caldalkalibacillus thermarum)、カルディバチラス デビリス(Caldibacillus debilis)とYM17株との分類学的性質の比較を行った。結果を表4に示す。 表4のうちYM17株以外のデータはInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2002),52,1681−1685、Journal of General Microbiology (1971),67,9−15、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2011),61,631−636、International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2006),56,1217−1221、及びInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (2004),54,2197−2201から得た。 アリシクロバチラス属(Alicyclobacillus属)は主要な脂肪酸にω−Cyclohexane−C17:0、ω−Cyclohexane−C19:0を有することが属の特徴的な性質であり、YM17株と異なる。 カルディテリコラ属(Calditerricola属)は75℃以上で生育できる高度好熱性細菌でありYM17株と異なる。 カルダルカリバチラス属(Caldalkalibacillus属)はグラム染色が陽性であること、DNAの塩基組成が45%であることがYM17株と異なる。 カルディバチラス属(Caldibacillus属)は65℃以上でも生育し、グルコースからの酸生成が見られないため、YM17株と異なる。 以上よりYM17株は新科(フラテリバチラジー科)、新属(フラテリバチラス属)の新種と判定し、YM17株をフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)(以下、単にフラテリバチラス フラボアルバスと示す場合がある)と命名した。〔実施例2〕フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)種の分離 上記の実施例1により、フラテリバチラス フラボアルバス種は既知の科・属・種と異なることが示された。そこで、フラテリバチラス フラボアルバス種の特性を明確にするため、YM17株以外のフラテリバチラス フラボアルバス種に属する菌株の分離を行った。1.フラテリバチラス フラボアルバス種の分離 鹿児島県曽於市の堆肥化場および鹿児島市の堆肥化場の堆肥を分離源としてフラテリバチラス フラボアルバス種の菌株の分離を試みた。 上記の実施例1におけるYM17株の培養性状を参考にして、CYC寒天培地に7%または10%の塩化ナトリウムと50μg/mLアンピシリンを添加または無添加したものを分離培地とし、55℃の培養温度で6日間培養して菌の分離を行ったところ、糸状性細菌の多数のコロニーと桿菌状の細菌のコロニーが分離培地上に現れた。 この中から桿菌状の細菌のコロニーを分離して、次の2.に示したフラテリバチラス フラボアルバス種を検出するための特異的PCRによって判定を行ったところ、表5に示すように、合計12菌株がフラテリバチラス フラボアルバス種と判定された。 特にCYC寒天培地に7%塩化ナトリウムと50μg/mLアンピシリンを添加した培地での分離頻度が高く、この培地を用いて55℃で培養することによりフラテリバチラス フラボアルバス種を効率的に分離することが可能であった。 分離した12菌株について、それぞれNaCl_20131016_04株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、NaCl_20131016_19株、YM17−5株、NaCl_20131016_24株、NaCl_20131016_28株、NaCl_20131016_30株、NaCl_20131016_34株、NaCl_20131016_37株またはNaCl_20131016_38株とした。 このうち、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株およびYM17−5株については、本出願人の申請により、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)特許微生物寄託センターにブタペスト条約に基づく国際寄託されている。以下に、寄託を特定する内容を記載する。YM17−2株(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01948(4)識別のための表示:YM17−2(5)原寄託日:2014年10月6日YM17−3株(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01949(4)識別のための表示:YM17−3(5)原寄託日:2014年10月6日YM17−4株(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580 (3)受託番号:NITE BP−01950(4)識別のための表示:YM17−4(5)原寄託日:2014年10月6日YM17−5株(1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−012925(4)識別のための表示:YM17−5(5)原寄託日:2014年8月28日2.フラテリバチラス フラボアルバス種を検出するための特異的PCR フラテリバチラス フラボアルバス種を検出するための特異的PCRを次のように行った。まず、YM17株の16S rRNA遺伝子に特異的な塩基配列を用いて、TIP155F1プライマー(5‘−ATACCGGATAAGAGGCTTTT−3’)(配列表配列番号6)とTIP155R1プライマー(5‘−TGGTACCGTCACGCTAAGA−3’)(配列表配列番号7)を作成した。 PCR反応にはTks Gflex(登録商標) DNA PolymeraseとTIP155F1プライマー、TIP155R1プライマーおよび分離菌株のDNAを用いた。PCR反応液の組成はTks Gflex(登録商標) DNA Polymeraseの説明書に記載されている混合割合に従った。PCR反応は94℃で1分の熱処理を1サイクル行った後、98℃で10秒、55℃で15秒、68℃で1分の反応を25サイクル行い、電気泳動で328bp付近に増幅産物が確認された菌株をフラテリバチラス フラボアルバス種と判定した。3.分離菌株の分類学的解析 上記1.および2.によって分離した12菌株の分類学的性質をYM17株についての実施例1と同様の方法で調べ、結果を表2−1〜表2−5に示した。4.分離離菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列の解析 上記1.および2.によって分離した12菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列をYM17株についての実施例1と同様の方法で調べた。各株の16S rRNA遺伝子の塩基配列は配列表配列番号8〜19にそれぞれ示した。配列番号8はNaCl_20131016_04株、配列番号9はYM17−2株、配列番号10はYM17−3株、配列番号11はYM17−4株、配列番号12はNaCl_20131016_19株、配列番号13はYM17−5株、配列番号14はNaCl_20131016_24株、配列番号15はNaCl_20131016_28株、配列番号16はNaCl_20131016_30株、配列番号17はNaCl_20131016_34株、配列番号18はNaCl_20131016_37株、配列番号19はNaCl_20131016_38株に対応する。 YM17株の16S rRNA遺伝子とこれらの12菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列の相同性を表6に示した。表6に示されるように、分離した12菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列はYM17株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98.7%以上の相同性があった。5.DNA−DNAハイブリダイゼーション 上記1.および2.によって分離した12菌株とYM17株のゲノムDNAを用いてDNA−DNAハイブリダイゼーション試験を行った。また、ネガティブコントロールとして近縁属であるCalditerricola satsumensisYMO81株のDNAを用いた。DNAの調整は〔実施例1〕のGC含量測定で調整した方法と同じ方法により行った。 得られたゲノムDNAはいずれも濃度が500μg/mL以上、OD260/OD280値が1.8以上、OD260/OD230値が2.0以上でRNAの混入はなく、DNA−DNAハイブリダイゼーション試験に用いることができる高い品質であった。 DNA−DNAハイブリダイゼーション試験は参考文献2と微生物の分類・同定実験法(シュプリンガー・ジャパン発行))に記載の方法に従った。 まず、DNAプレートの作成を行った。ゲノムDNA溶液を0.1XSSCで希釈し、100μg/mLとした。希釈したDNA溶液を100℃で5分間加熱して一本鎖とした後、すぐに氷冷した。熱変成したDNA溶液をPBS−Mg溶液で10倍希釈し、10μg/mLとした。10μg/mLとしたDNA溶液を100μLずつマイクロプレートのウェルに分注し、マイクロプレートにシールをして30℃で3時間以上静置した。その後、ウェル内のDNA溶液を捨てて、試験用のDNAプレートとした。バックグランドコントロールにはSalmon sperm DNAを用いた。 DNAプレートの準備と並行して、DNAのフォトビオチン標識を行った。500μg/mLのDNA溶液を30μL調整し、超音波洗浄機で10分間処理してDNAを切断した。切断したDNA溶液に25μLの1mg/mLフォトビオチン液を加え、DNAを完全に溶解した後、氷冷しながら250Wの低圧水銀ランプで30分間照射し、DNAをフォトビオチン標識した。余分なフォトビオチンを取り除くため、照射後のDNA溶液に540μLの0.1M Tris−HCl buffer(pH9.0)を加えた後、600μLの2−ブタノールを加えて混合した。15,000rpmで5秒間遠心し、過剰なフォトビオチンが含まれる上清を捨てた。2−ブタノールを加えて過剰なフォトビオチンを取り除く作業は合計2度行った。フォトビオチン標識したDNA溶液を100℃で5分間加熱した後、直ちに氷冷し、ハイブリダイゼーションに用いた。 次にハイブリダイゼーション操作を行った。DNAプレートの各ウェルに200μLのPrehybridization miixtureを分注し、37℃で15分間静置した。熱変成させた300μLのフォトビオチン標識DNA溶液を6mLのHybridazation mixtureと混合した。DNAプレートの各ウェルからPrehybridization miixtureを除き、フォトビオチン標識DNAを含むHybridazation mixtureを100μLずつ分注して、DNAプレートをシールした。このDNAプレートを46℃で2時間以上静置し、ハイブリダイゼーション処理を行った。ハイブリダイゼーション処理後、フォトビオチン標識DNAを含むHybridazation mixtureを捨て、300μLの1XSSC溶液で各ウェルを洗浄する作業を合計3度行った。 洗浄後の各ウェルに100μLのStreptavidin−enzyme溶液を分注した。37℃で30分間静置した後、Streptavidin−enzyme溶液を捨てた。100μLの1XSSC溶液で各ウェル洗浄した後、さらに300μLの1XSSC溶液で各ウェルを合計3回洗浄した。洗浄後の各ウェルに100μLの蛍光基質溶液を加え、マイクロプレートリーダーで蛍光強度を測定した(励起波長360nm,測定波長450nm)。37℃で保温し、1分毎に蛍光強度を測定した。DNAの各組み合わせの蛍光強度は6ウェルの反復の中から中央値4ウェルの平均値を算出し、Salmon sperm DNAを張り付けたウェルの平均蛍光強度値をバックグラウンド値として差し引いて算出した。相同値は同じ菌株のDNAをウェルおよび標識に用いたホモの数値に対する百分率で表示した。参考文献2:Ezaki,T.,Hashimoto,Y. &Yabuuchi,E.,1989.Fluorometric deoxyribonucleic acid−deoxyribonucleic acid hybridization in microdilution wells as an alternative to membrane filter hybridization in which radioisotopes are used to determine genetic relatedness among bacterial strains.International journal of systematic bacteriology.39:p224−229試薬(1)PBS−Mg溶液(MgCl2:0.95g/PBS100mL)(2)0.1M Tris−HCl buffer(Tris:12.1g、EDTA・2Na:0.4g、pH9.0、超純水:総液量が1000mLとなるように加えた)(3)Prehybridization miixture(20XSSC:1mL、50XDenhardt液:1mL、10mg/mL 変性Salmon DNA:0.1mL、ホルムアミド:5mL、超純水:2.9mL)(4)Hybridization miixture(20XSSC:1mL、50XDenhardt液:1mL、10mg/mL 変性Salmon DNA:0.1mL、ホルムアミド:5mL、硫酸デキストラン:0.25g、超純水:2.8mL)(5)Streptavidin−enzyme溶液(Streptoavidin−β−D−galactosidase conjugate:10μL、0.5%ウシ血清アルブミン(flaction V)/PBS溶液:10mL)(6)蛍光基質溶液(10mg/mL 4−Methylumbelliferyl−β−D−galactopyranoside溶液:100μL、PBS+1mmolMgCl2溶液:10mL) DNA−DNAハイブリダイゼーション試験の結果を表7に示した。 表7に示されるように、YM−17株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、YM17−5株、NaCl_20131016_37株およびNaCl_20131016_38株の相互のDNA−DNA相同値は全て70%以上であった。 参考文献3に示されるように、微生物分類学においてDNA−DNA相同値が70%以上であれば同種と考えられていることから、これらの8株が同種であることが確認された。参考文献3:Stackebrandt,E.&Ebers,J.,2006.Taxonomic parameters revisited:tarnished gold standards.Microbiol.Today Nov.:p152−1556.フラテリバチラス フラボアルバスの性質 上記の各解析、試験により、フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)は次の1)〜10)の特徴を性質として有する種であることが確認された。1)グラム染色が陰性であり、胞子を形成する2)オキシダーゼテストは陰性、カタラーゼテストは陽性で好気性である3)1%の糖および2.0%のNaClを含むLB培地(pH8.0)に、該糖としてD−ガラクトースまたはシュークロースを加えた場合には酸生成を行わないが、D−グルコース、ラクトース、D−マンニトール、グリセリンまたはN−アセチルグルコサミンを加えた場合には酸生成を行う4)至適生育温度は45℃〜55℃であり、35℃以下または65℃以上では増殖が確認されない5)至適pHは7.0〜8.0であり、pH5.7以下またはpH10.0以上では増殖が確認されない6)CYC培地にNaClを終濃度7%まで添加しても増殖が確認される7)主要なメナキノンはMK7である8)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む9)ゲノムDNAのGC含量は51.2%〜52.4%である10)最も主要な菌体脂肪酸はiso C16:0である7.フラテリバチラス フラボアルバス種内の亜種分類 YM17株と分離した12株(NaCl_20131016_04株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、NaCl_20131016_19株、YM17−5株、NaCl_20131016_24株、NaCl_20131016_28株、NaCl_20131016_30株、NaCl_20131016_34株、NaCl_20131016_37株およびNaCl_20131016_38株)の16S rRNA遺伝子による系統樹を図3に示した。図3に示されるようにYM17株とYM17−5株の16S rRNA遺伝子は他の菌株と分岐した。 また、表8に示したようにYM17株とYM17−5株の主要な菌体脂肪酸上位4種がiso−C16:0、anteiso−C17:0、anteiso−C15:0、iso−C17:0であるのに対して、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、NaCl_20131016_37株およびNaCl_20131016_38株はiso−C16:0、C16:0、anteiso−C17:0、anteiso−C15:0であり異なっていた。このため、YM17株・YM17−5株とその他の菌株はフラテリバチラス フラボアルバスで同種であるが、異なる亜種であった。 以上の結果より、YM17株とYM17−5株の2株をフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)と命名し、NaCl_20131016_04株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、NaCl_20131016_19株、NaCl_20131016_24株、NaCl_20131016_28株、NaCl_20131016_30株、NaCl_20131016_34株、NaCl_20131016_37株およびNaCl_20131016_38株の11株をフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)と命名した。 即ち、フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)はフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)と、フラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)の2亜種からなる新属・新種であった。8.フラテリバチラス フラボアルバスのタンパク質分解活性 次にフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)のタンパク質分解活性を調べた。基本培地(塩化ナトリウム:2.0%、酵母エキス:0.1%)に2.0%のゼラチンまたは0.4%のカゼインを加えてpHを8.0に調整した後、1.5%の寒天を加えて、120℃で20分間オートクレーブ滅菌をし、試験培地とした。 試験培地にYM17株、NaCl_20131016_04株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、NaCl_20131016_19株、YM17−5株、NaCl_20131016_24株、NaCl_20131016_28株、NaCl_20131016_30株、NaCl_20131016_34株、NaCl_20131016_37株またはNaCl_20131016_38株を塗布し、55℃で7日間培養した。培養後、試験培地に塩酸―塩化第二水銀溶液(塩化第二水銀15g、濃塩酸20mL、蒸留水100mL)を滴下し、ハロ形成によって、タンパク質の分解活性を調べた。試験の結果、13菌株全てで、ゼラチンおよびカゼインの分解活性が見られた。9.フラテリバチラス フラボアルバスの堆肥環境での生育と有機物分解活性 フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)の堆肥中での生育と有機物分解活性を調べた。 120℃、30分間のオートクレーブ滅菌を2度した10g堆肥に対して、フィルター濾過滅菌した10%酵母エキス溶液1mL、1%カゼイン溶液または滅菌水3mL、2%NaClを含むLB培地(pH8.0)を用いて55℃で1日間培養した菌の培養液1mLを添加し、水分が堆肥に全体に行きわたるように滅菌した薬さじで混合した。混合物は気相が十分にある状態で容器を密閉して、55℃で3日間培養(以下堆肥培養と称する)した。菌の培養液の代わりに滅菌した2%NaClを含むLB培地(pH8.0)を添加したものをネガティブコントロールとした。試験菌として、YM17株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、YM17−5株、NaCl_20131016_37株およびNaCl_20131016_38株を用いた。 堆肥培養3日後の培養物を顕微鏡で観察したところ、YM17株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、YM17−5株、NaCl_20131016_37株またはNaCl_20131016_38株の培養液を添加した試験区では全てにおいて良好な菌の生育が確認された。一方、菌の培養物を添加していないネガティブコントールでは菌体が見らなかった。図4にYM17株またはネガティブコントロールのカゼイン添加堆肥培養3日後の顕微鏡写真を示す。 図4、Aの丸に示されるように、YM17株については菌体の良好な生育が確認できた。一方で、図4、Bに示されるように、ネガティブコントロールでは堆肥の固形物のみが観察され、菌体は見られなかった。 堆肥培養3日後の培養物からタンパク質を抽出した。まず、培養物に30mLのTris−HCl(pH8.0)を加えて懸濁液とし、室温で3時間静置した。静置後の懸濁液を濾過(濾紙:アドバンテック東洋,型式NO.5B,110mm)し、濾液を回収した。残った残渣物をTris−HCl(pH8.0)で洗浄するようにして、濾液を総量30mLに調整した。30mLの濾液に14.2gの硫酸アンモニウムを加え、緩やかに撹拌し、硫酸アンモニウムを溶かした。硫酸アンモニウム溶解後、氷上で一晩静置した。静置後の液を4℃、10,000gで30分間遠心し、上清を取り除いて沈殿物を回収した。沈殿物を1mLのTris−HCl(pH8.0)で溶かし、溶解物を透析膜(Spectrum Laboratories,Inc.,スペクトラ/ポア(登録商標) 1,MW 6,000−8,000)に入れて、Tris−HCl(pH8.0)中で透析して脱塩処理をした。脱塩後、Tris−HCl(pH8.0)で調整して、液量を2mLとし、ザイモグラムの供試試料とした。 ザイモグラフィー用の電気泳動ゲルには基質として終濃度0.1%のゼラチンを加えた。脱塩後のタンパク質溶解液15μLとLoading Buffer5μLを混合し、20μLの混合液をザイモグラフィーに供試した。 電気泳動後のゲルを0.2%TritonXを含むTris−HCl(pH8.0)中に10分間置いた後、本バッファーを捨て、TritonXを含まないTris−HCl(pH8.0)で2度洗浄した。洗浄後のゲルを2mMのCaCl2および2mMのMgSO4を含む20mLのTris−HCl(pH8.0)に浸けて55℃で16時間静置し、活性培養を行った。活性培養後、2mMのCaCl2および2mMのMgSO4を含む20mLのTris−HCl(pH8.0)を捨ててゲルを30分間クマシー染色し、クマシー染色後に脱色をして、タンパク質の分解活性を調べた。 ザイモグラフィーの結果、カゼイン無添加の堆肥培養から抽出したタンパク質もゼラチン分解活性を示したが、カゼイン添加の堆肥培養から抽出したタンパク質はより強い活性を示した。また、菌の培養液を添加していないネガティブコントロールでは、カゼイン添加の有無にかかわらず堆肥培養から抽出したタンパク質はゼラチン分解活性を示さなかった。 菌の培養液を添加した場合、カゼイン無添加の堆肥培養の場合でもタンパク質の分解活性が見られたのは、基材とした堆肥中にタンパク質が残存しており、活性が誘導されているためであった。また、カゼインを添加して堆肥培養をすることで、活性誘導がより強く表れていた。 以上の結果から、YM17株、YM17−2株、YM17−3株、YM17−4株、YM17−5株、NaCl_20131016_37株またはNaCl_20131016_38株などのフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)種は堆肥中でも生育して、タンパク質分解活性を有することが示された。図5にゼラチンザイモグラフィーの結果を示した。図5、Aは、カゼイン無添加堆肥培養より抽出したタンパク質を用いたザイモグラフィーの結果であり、図5、Bはカゼイン添加堆肥培養より抽出したタンパク質を用いたザイモグラフィーの結果である。試薬(1)Tris−HCl(pH8.0)(Tris:6.1g、濃塩酸でpH8.0に調整、超純水:総液量が1000mLとなるように加えた)(2)ザイモグラム用電気泳動ゲルセパレイト層(30%Acrylamide:2000μL、1.5M Tris−HCl(pH8.5):1500μL、超純水:1800μL、10%SDS:60μL、10%APS:50μL、TEMED:5μL、1%ゼラチン:600μL)スタッキング層(30%Acrylamide:450μL、0.5M Tris−HCl(pH6.5):750μL、超純水:1700μL、10%SDS:30μL、10%APS:50μL、TEMED:5μL)セパレイト層が固化した後、スタッキング層を重層して固化させる。(3)10Xザイモグラム用電気泳動バッファー(Tris:30.3g、Glycine:144g、超純水:総液量が1000mLとなるように加えた)。ザイモグラムの電気泳動では10Xザイモグラム用電気泳動バッファーを超純水で希釈して1Xバッファーとし、終濃度0.1%となるようにSDSを加えた。 本発明によって得られた新規微生物は、新属フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種として、し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用であり、また、様々な用途に使用し得る。[寄託生物材料への言及](1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01764(4)識別のための表示:YM17(5)原寄託日:2013年11月29日[寄託生物材料への言及](1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01948(4)識別のための表示:YM17−2(5)原寄託日:2014年10月6日[寄託生物材料への言及](1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01949(4)識別のための表示:YM17−3(5)原寄託日:2014年10月6日[寄託生物材料への言及](1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01950(4)識別のための表示:YM17−4(5)原寄託日:2014年10月6日[寄託生物材料への言及](1)寄託機関名:独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(2)連絡先:〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8電話番号0438−20−5580(3)受託番号:NITE BP−01925(4)識別のための表示:YM17−5(5)原寄託日:2014年8月28日フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種であり、配列番号1、または配列番号8〜配列番号19のいずれかに示す塩基配列に対して98.7%以上の相同性を有する塩基配列からなる16S rRNA遺伝子を有し、YM17株(NITE BP−01764)、YM17−2株(NITE BP−01948)、YM17−3株(NITE BP−01949)、YM17−4株(NITE BP−01950)またはYM17−5株(NITE BP−01925)とのDNA−DNAハイブリダイゼーション相同値が70%以上であり、かつ、次の1)〜10)の特性を有する、フラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。1)グラム染色が陰性の桿菌であり、胞子を形成する2)オキシダーゼテストは陰性、カタラーゼテストは陽性で好気性である3)1%の糖および2.0%のNaClを含むLB培地(pH8.0)に、該糖としてD−ガラクトースまたはシュークロースを加えた場合には酸生成を行わないが、D−グルコース、ラクトース、D−マンニトール、グリセリンまたはN−アセチルグルコサミンを加えた場合には酸生成を行う4)至適生育温度は45℃〜55℃であり、35℃以下または65℃以上では増殖が確認されない5)至適pHは7.0〜8.0であり、pH5.7以下またはpH10.0以上では増殖が確認されない6)CYC培地にNaClを終濃度7%まで添加しても増殖が確認される7)主要なメナキノンはMK7である8)細胞壁ペプチドグリカンのアミノ酸組成としてアラニン、グルタミン酸、及びメソ型ジアミノピメリン酸(meso−DAP)を含む9)ゲノムDNAのGC含量は51.2% 〜52.4%である10)最も主要な菌体脂肪酸はiso−C16:0であるさらに、菌体脂肪酸として、anteiso−C15:0、C16:0、anteiso−C17:0、iso−C17:0のいずれか一種以上を含む、請求項1に記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。菌体脂肪酸としてiso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、anteiso−C17:0、iso−C17:0を含むフラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus subsp. flavoalbus)である、請求項1または2に記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。菌体脂肪酸としてiso−C16:0に加えて、anteiso−C15:0、C16:0、anteiso−C17:0を含む、フラテリバチラス フラボアルバス 亜種 フィメタリウム(Frateribacillus flavoalbus subsp.fimetarium)である、請求項1〜3のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。有機廃棄物の処理に使用する、請求項1〜4のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。有機廃棄物がし尿、有機性汚泥、食品残渣物、又は動物糞尿である、請求項5に記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。YM17株(NITE BP−01764)、YM17−2株(NITE BP−01948)、YM17−3株(NITE BP−01949)、YM17−4株(NITE BP−01950)またはYM17−5株(NITE BP−01925)のいずれかである、請求項1〜6のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)。請求項1〜7のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を使用する有機廃棄物の処理方法。請求項1〜7のいずれかに記載のフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を使用するタンパク質の分解方法。【課題】し尿、汚泥等の有機廃棄物の処理等に有用な新規微生物の提供を課題とする。【解決手段】フラテリバチラス属(Frateribacillus属)の新種であり、1)グラム染色が陰性であり、胞子を形成する、2)オキシダーゼテストは陰性、カタラーゼテストは陽性で好気性である、3)1%の糖および0.2%のNaclを含むLB培地(pH8.0)に、該糖としてD−ガラクトースまたはシュークロースを加えた場合には酸生成を行わないが、D−グルコース、ラクトース、D−マンニトール、グリセリンまたはN−アセチルグルコサミンを加えた場合には酸生成を行う、等の特性を有するフラテリバチラス フラボアルバス(Frateribacillus flavoalbus)を提供する。【選択図】なし配列表