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タイトル:公開特許公報(A)_経鼻投与用ワクチンを用いるインフルエンザの予防方法
出願番号:2014206998
年次:2015
IPC分類:A61K 39/145,A61K 39/39,A61K 47/32,A61P 31/16


特許情報キャッシュ

長谷川 秀樹 真鍋 貞夫 谷本 武史 宮▲崎▼ 隆 上下 泰造 JP 2015028070 公開特許公報(A) 20150212 2014206998 20141008 経鼻投与用ワクチンを用いるインフルエンザの予防方法 国立感染症研究所長 591222245 一般財団法人阪大微生物病研究会 000173692 東興薬品工業株式会社 390002705 渡邉 潤三 100116838 長谷川 秀樹 真鍋 貞夫 谷本 武史 宮▲崎▼ 隆 上下 泰造 US 61/165,098 20090331 A61K 39/145 20060101AFI20150116BHJP A61K 39/39 20060101ALI20150116BHJP A61K 47/32 20060101ALI20150116BHJP A61P 31/16 20060101ALI20150116BHJP JPA61K39/145A61K39/39A61K47/32A61P31/16 10 2011541970 20100331 OL 39 本発明は、インフルエンザの予防用ワクチン、およびインフルエンザの予防方法に関する。 インフルエンザは、毎年抗原を変化させつつ流行を繰り返すウイルス性感染症である。日本において、その予防のためのワクチンは皮下接種するもののみが認可されている。このワクチン接種によって血清中に中和活性を持つIgG抗体が誘導されるため、肺炎などの重症化の予防には有効性が高い。しかし、感染箇所である上気道粘膜においては、IgAが感染防御の主体であり、これは皮下接種では誘導されないため、感染防御効果は十分とは言えない。そのため、感染を防御できるワクチンの開発が長年の課題となっている。 本発明者らは、感染防御効果に優れる、二本鎖RNAとインフルエンザウイルス抗原を含む粘膜投与用インフルエンザワクチンを開発してきた(特許文献1)。WO2005/014038 従って、本発明の目的は、インフルエンザの予防に有用な新規ワクチン、およびインフルエンザの予防方法を提供することである。 上記目的を達成するため、本発明者らは、種々の成分を添加することによるワクチン効果の検証を試み、本発明を完成させるに至った。 即ち、本発明は以下を提供する。[1]インフルエンザウイルス抗原、ポリリボイノシン酸・ポリリボシチジル酸(poly (I:C))またはその誘導体およびカルボキシビニルポリマーを含有する、経鼻粘膜投与用ワクチン組成物。[2]前記抗原がサブユニット抗原または不活化抗原である、[1]に記載の組成物。[3]前記サブユニット抗原がインフルエンザウイルスのHA、NA、M1、M2、NP、PB1、PB2、PAおよびNS2からなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原を含む、[2]に記載の組成物。[4]前記サブユニット抗原がHAおよびNAからなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原を含む、[2]に記載の組成物。[5]前記誘導体がpoly (I:C12U)である、[1]に記載の組成物。[6]有効量のインフルエンザウイルス抗原およびpoly (I:C)またはその誘導体、ならびにカルボキシビニルポリマーを含むワクチン組成物を、それを必要とする対象に、少なくとも1回鼻粘膜に投与する工程を含む、インフルエンザの予防方法。[7]前記抗原がサブユニット抗原または不活化抗原である、[6]に記載の方法。[8]前記サブユニット抗原がインフルエンザウイルスのHA、NA、M1、M2、NP、PB1、PB2、PAおよびNS2からなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原を含む、[7]に記載の方法。[9]前記サブユニット抗原がHAおよびNAからなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原を含む、[7]に記載の方法。[10]前記誘導体がpoly (I:C12U)である、[6]に記載の方法。[11]前記ワクチン組成物が少なくとも2回投与される、[6]に記載の方法。[12]前記ワクチン組成物が少なくとも1週間の投与間隔で投与される、[11]に記載の方法。 本発明の特徴および利点は、以下の本発明の詳細な説明から明らかである。図1はAmpligenとCVP基剤を併用添加したインフルエンザワクチンの経鼻接種 試験の免疫応答を示す。図2は実施例2のマウス免疫試験の流れ図である。図3は実施例2のワクチン接種試験のまとめを示す。図4は実施例3のサル免疫試験の流れ図である。図5は実施例3の血清IgG ELISAの結果を示す。図6は実施例3の鼻腔拭い液 IgA ELISAの結果を示す。図7は実施例3のワクチン接種試験のまとめを示す。 本発明において、インフルエンザウイルスは、現在知られているすべての亜型、および将来単離、同定される亜型をも含む。これまでにヒトでの流行が観察されておらず、今後ヒトへの感染を有効に防止するという観点から、インフルエンザウイルスは、H1およびH3を除くH1〜H16(すなわち、H2およびH4〜H16)から選ばれる型とN1〜N9から選ばれる型との組合せからなる亜型が好ましい。これらの亜型は、新型インフルエンザウイルスとも称される。前記亜型は、H5、H7およびH9から選ばれる型とN1〜N9から選ばれる型との組合せからなる亜型がより好ましい。インフルエンザウイルスは、同一の亜型に属する1種の株であってもよく、同一の亜型に属する2種以上の株であってもよく、別の亜型に属する2種以上の株であってもよい。 本発明のワクチン組成物に含有されるインフルエンザウイルス抗原は、不活化抗原とサブユニット抗原に大別される。 本発明において用語「不活化抗原」とは、ワクチン用抗原として使用される、感染能を失わせた抗原をいい;そのような抗原としては、完全ウイルス粒子であるビリオン、不完全ウイルス粒子、ビリオン構成粒子、ウイルス非構造タンパク質、感染防御抗原、中和反応のエピトープなどが挙げられるがそれらに限定されない。本発明において、用語「不活化抗原」とは、感染力を失わせるが免疫原性を保持させた抗原をいい;そのような抗原がワクチンとして使用されるときは、「不活化ワクチン」という。抗原の不活化方法としては、例えば、物理的(例えば、X線照射、熱、超音波)、化学的(ホルマリン、水銀、アルコール、塩素)または別の操作が挙げられるが、それらに限定されない。サブユニット抗原自体も、通常感染力が喪失されていることから、不活化抗原の定義内に入る。あるいは、死滅したウイルスを使用してもよい。 本発明において、用語「サブユニット抗原」とは、インフルエンザウイルス由来の成分をいい、ヘマグルチニン(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、マトリクス(M1、M2)、非構造(NS)、ポリメラーゼ(PB1、PB2:塩基性ポリメラーゼ1および2、酸性ポリメラーゼ(PA))、核タンパク質(NP)などがあげられ、ウイルス粒子の表面に出ているHAまたはNAであることが好ましい。HAの種類はHA1〜HA16が知られており、NAの種類はNA1〜NA9が知られている。サブユニット抗原は、天然のウイルス等の病原体から精製してもよく、合成または組換え技術により作製してもよい。そのような方法は当該分野において周知であり、慣用されるものであり、市販される機器、試薬、ベクターなどを用いて実施することができる。 本発明のワクチン組成物に含有されるインフルエンザウイルス抗原の量は、分泌型IgAを産生するに十分な量であれば特に限定されるものではなく、また、後述するpoly (I:C)またはその誘導体との比率も勘案して適宜設定することができる。例えば、抗原としてHAを用いた場合、その濃度が10〜500μg HA/mL(HA換算)であることが好ましく、30〜400μg HA/mL(HA換算)がより好ましい。前記濃度は、HAタンパク質の濃度を測定することにより得られる。 本発明のワクチン組成物に含有されるpoly (I:C)とは、ポリイノシン酸(pI)とポリシチジル酸(pC)とを含む二本鎖RNA (dsRNA)である。 poly (I:C)の誘導体とは、不対塩基の導入によるpoly (I:C)の構造的特徴における改変によって得られるミスマッチdsRNAをいい、poly (I:CxU)、poly (IxU:C) (ここでxは平均で3〜40の数である)などがあげられる。好ましくは、poly (I:C)の誘導体は、アンプリゲン(Ampligen,登録商標)なる商品名で市販されているpoly (I:C12U)またはpoly (C:I12U)である。 poly (I:C)またはその誘導体は、分泌型IgAを産生するに十分なサイズで提供される。そのようなサイズとしては、例えば、100bp以上であり、好ましくは300bp以上であるがそれらに限定されない。サイズの上限は限定されないが、例えば、108bpが挙げられる。 poly (I:C)またはその誘導体は、分泌型IgAを産生するに十分な濃度で存在する。そのようなpoly (I:C)またはその誘導体の濃度は、例えば、0.1〜10mg/mLであり、より好ましくは、0.5〜2mg/mLであり、さらに好ましくは、約1mg/mL(例えば、0.8〜1.2mg/mL)である。 本発明のワクチン組成物に含有されるインフルエンザウイルス抗原とpoly (I:C)またはその誘導体との重量比は、1:1〜1:50が推奨される。 本発明のワクチン組成物に含有されるカルボキシビニルポリマー(CVP)は、アクリル酸を主要なモノマー成分として重合して得られる親水性ポリマーであり、通常のもの、たとえば米国Lubrizol Advanced Materials社より市販されているカーボポール(登録商標)等が挙げられる。本発明に用いるCVPの濃度は、通常、0.1〜2.0重量%の範囲である。 本発明のワクチン組成物においては、CVPを増粘させるため、水溶性塩基物質をさらに含有してもよい。水溶性塩基物質の具体例としては、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン等のアルキルアミン、たとえばジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン等のジアルキルアミン、たとえばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン等のトリアルキルアミン、たとえばメタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン等のアルカノールアミン、たとえばジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン等のジアルカノールアミン、たとえばトリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等のトリアルカノールアミン、たとえばアルギニン、リジン、オルニチン等のアミノ酸、等の有機塩基を挙げることができる。これら水溶性塩基は、CVPを中和して水溶液を所望のpH値に調整するのに必要な量で用いられる。 本発明のワクチン組成物のpH値は、インフルエンザウイルス抗原の安定性、吸収性等を考慮した上で所望のpHになるように水溶性塩基物質で調整するか、または別途pH調整剤で調整する。好ましいpH範囲は6.0〜8.0である。 粘度の調整は、ワクチンの剤型に応じて行うことができる。例えば、0.1〜2.0重量%に相当するCVPを水溶性塩基物質で増粘させ、これを外部からせん断力を与えて粘度を調整するか、または粘度調節剤と外部からのせん断力で粘度を調整して、噴霧器からの噴射角度、噴射密度を目的に適するように管理した基剤に調製する。その後、インフルエンザウイルス抗原およびpoly (I:C)を混和する。 本発明のワクチン組成物には、適当な併用可能な活性薬物、希釈剤、殺菌剤、防腐剤、界面活性剤、安定剤等が含有されていてもよい。 本発明は、有効量のインフルエンザウイルス抗原およびpoly (I:C)またはその誘導体、ならびにカルボキシビニルポリマーを含むワクチン組成物を、それを必要とする対象に、少なくとも1回鼻粘膜に投与する工程を含む、インフルエンザの予防方法に関する。 本発明のワクチン組成物の投与対象は、特に限定されず、ヒトを含む哺乳類、鳥類等があげられる。 ワクチン組成物の鼻粘膜への投与は、適切な形態で行われ得る。噴霧、塗布または直接ワクチン液を滴下するなどの種々の方法が用いられる。 本発明のワクチン組成物の投与回数は、少なくとも1回であるが、有効性の観点から、少なくとも2回が好ましい。更なる投与を時に追加免疫といい、これにより、より効果の高い感染防御効果を奏することができる。追加免疫の間隔は、少なくとも1週間が推奨され、1〜4週間の間隔が好ましい。 以下、下記実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明を限定するものと解釈されるものではない。(実施例1)AmpligenとCVPを併用した新型インフルエンザ用全粒子ウイルスワクチンのマウスを用いた経鼻接種試験 経鼻接種型インフルエンザワクチンの開発においては、流行性インフルエンザに対応したワクチンの方が季節性インフルエンザ用のワクチンよりも、重要性・緊急性が高いため、これを優先して開発する必要がある。そこで、季節性インフルエンザHAワクチンと同様にして、新型インフルエンザワクチン(PR8-IBCDC-RG2株:A/Indo/5/2005(H5N1)の弱毒株)にAmpligenをHA抗原の10倍量添加した試作ワクチンを作製した。この試作ワクチンは、ワクチンの鼻粘膜からのクリアランスを遅らせることにより鼻粘膜での免疫応答を増進するための添加剤として、アレルギー治療薬にも応用されているCVP基剤 [0.55% CVP、1.2% L-アルギニン、1% グリセリンの混合物]を含むものであった。 経鼻接種試験には、7週齢、雌のBALB/cマウスを一群5匹用い、抗原は0.033〜1μg HA/頭接種した。比較対照としてCVP基剤を併用せずワクチンにAmpligenをHA抗原の10倍量添加した群、CVP基剤を併用せずワクチンにAmpligenをHA抗原の20倍量添加した群、ワクチンにCVPのみを添加した群、無添加ワクチン・経鼻接種群、無添加ワクチン・筋肉内接種群、も設けた。ワクチンは3週間隔で2回接種し、追加免疫の2週間後に鼻腔洗浄液と血清を回収した。鼻腔洗浄液からは特異的IgA-ELISA抗体価を、血清からは血球凝集阻止(HI)、中和抗体、特異的IgG-ELISAの抗体価を調べた。試作ワクチンの粘性が高いため、これまでのマイクロピペットによる点鼻からマイクロシリンジにブラント針(27G, 0.4mm×38mm)を接続したものを約4mm挿入して注入する接種手法に変更した。 結果を表1〜9に示す。2008.9.30 一次免疫2008.10.21 二次免疫2008.11.4 採材抗原はPR8-IBCDC-RG2株:A/Indo/5/2005(H5N1)の弱毒ウイルス株, Lot FPBMW0612-0 3110μgPTN/mL. 約1048μgHA/mL))AmpligenはHemispherx社製、Lot R-01:45.7mg/mLCVPは東興薬品工業製、Lot No.INF-9B8, 調製用基剤(#03-01)注1:マウス300匹分調製抗原:マウス300匹×0.3μg/匹/1.048μg/μl=85.9μlBALB/cマウス ♀、7wを使用した。(結果)AmpligenとCVP基剤を併用した新型インフルエンザ用全粒子ウイルスワクチンのマウスを用いた経鼻接種試験 AmpligenとCVP基剤を併用したワクチンを接種した群において、粘膜と血清に、Ampligen単独添加群には見られなかった顕著な免疫増強効果を確認した。血清の特異的IgG、HIおよび中和抗体価(NT)は、筋肉内注射群(アジュバント無)と同等のレベルまで上昇した。 鼻粘膜での免疫応答を増進するための添加剤として、アレルギー治療薬にも応用されているCVP基剤を併用した流行性インフルエンザワクチンを試作して経鼻接種試験に用いた。 今回、経鼻接種方法の利便性を検討していたところ、鼻粘膜の免疫応答が顕著に向上するとともに、血清の特異的抗体価もアジュバント無添加の筋肉内注射と同等となるなど、予想外の効果を得た。より実用に近いワクチンが得られた。(実施例2)マウスによる経鼻免疫を介した評価系 (マウスにおける至適用量と投与回数の検討) 既存の組成および接種方法の既存ワクチンと比較して、「高濃度の新型インフルエンザウイルス抗原」を用いてマウスにおける至適用量と投与回数を、AmpligenおよびCVP等を抗原に添加後の血清特異的IgG抗体価、HI抗体価を測定して検討した。(材料)1.交叉性抗体価判定用の新型インフルエンザワクチン原液およびウイルス:新型インフルエンザワクチン原液:ロット番号;FPBMW0612-c(蛋白質濃度:3110 μg/mL、HA含量992 μg HA/mL、由来ウイルス株:A/Indo/5/2005 (H5N1)/PR8-IBCDC-RG2)(一般財団法人阪大微生物病研究会)2.ウイルスおよび不活化ワクチン抗原の由来株:特異的抗体価測定用:A/Indo/5/2005(H5N1)/PR8-IBCDC-RG2株:A/Indonesia/5/2005 (H5N1)の弱毒株(clade 2.1)交叉性抗体価測定用:A/Anhui/01/2005(H5N1)/PR8-IBCDC-RG5株:A/Anhui/01/2005(H5N1)の弱毒株(clade 2.3)A/bar-headed goose/Qinghai/1A/2005株:A/Qinghai/1A/2005 (H5N1)の弱毒株(clade 2.2)NIBRG-14株:A/Vietnam/1194/2004 (H5N1)の弱毒株(clade 1)3.アジュバント:Ampligen(登録商標):Hemispherx社製、2.5 mg/mLのAmpligenを含有する4.試験方法 図2に試験の流れの概略図を示す。 A/Indo/5/2005 (H5N1)/PR8-IBCDC-RG2ウイルス抗原を含有するワクチン(AmpligenをHA抗原の20倍濃度となるように添加し、CVP基剤(1.1 % カルボキシビニルポリマー、2.4 % L-アルギニン、2.0 % グリセリン)を全体の50.0 v/v%添加して得られたもの)をBALB/cマウスに経鼻接種し、3週間後に採材(鼻腔拭い液および血清)した。この際、一部のマウスからは採材せず、追加接種を1〜3回行った。2回または3回追加接種を行うマウスについては、追加接種の間隔は2週間にした。最終追加接種から2週間後に採材し、全ての検体が揃った時点で免疫応答を確認した。比較対照として、AmpligenおよびCVP基剤の添加の効果を確認するため、同一の抗原用量でAmpligenおよびCVP基剤を含まない無添加ワクチン経鼻接種群(高用量・中用量・低用量)と陰性対照群(生理食塩水1回経鼻接種)を置くと共に、既存の剤型・接種方法のワクチンとの比較のために無添加ワクチン筋肉内接種群(高用量)を置いた。上記試験から、用量および投与回数と免疫応答との関係を評価した。また、抗原性の異なるウイルス株との免疫応答も調査し、交叉反応性についての知見を得た。5. 動物およびワクチン(表10)被験動物:BALB/cマウス(♀、試験開始時6週齢)、10匹/群試験検討用試作ワクチンおよびアジュバント用量:高用量群: [0.3 μg HA + 6 μg Ampligen] /dose中用量群: [0.1 μg HA + 2 μg Ampligen] /dose低用量群: [0.033 μg HA + 0.66 μg Ampligen] /dose 陰性対照として生理食塩水接種群を置いた。また、ワクチン添加物の効果を確認するために同一の抗原用量でAmpligenとCVP基剤を含まない無添加ワクチン経鼻接種群(高用量・中用量・低用量)を置くと共に、従来型のワクチン(既存の剤型・接種方法)との比較のために筋肉内接種群(高用量)を置いた。ワクチン組成:高用量群:[ワクチン 0.3 μL + Ampligen 2.4 μL + CVP基剤2.5 μL] /dose中用量群:[ワクチン 0.1μL + Ampligen 0.8 μL + M/75 PBS (PH7.2) 1.6 μL + CVP基剤2.5 μL]] /dose低用量群:[ワクチン 0.033 μL + Ampligen 0.26 μL + M/75 PBS (PH7.2) 2.207 μL + CVP基剤2.5 μL] /dose陰性対照として用いる無添加経鼻接種用ワクチンは、上記の組成からAmpligenとCVP基剤を除き、それに相当する容量のM/75 PBS(pH7.2)を加えて得た。また、無添加筋肉内接種用ワクチンは、[ワクチン0.3 μL + M/75 PBS (pH7.2) 49.7 μL]/doseとした。ワクチン投与容量:(表11) 経鼻接種群は片方の鼻腔に6 μL接種し、対照の無添加ワクチン皮下接種群は片側大腿部に50 μL接種した。6. 測定項目(表12-19)鼻腔拭い液:特異的IgA-ELISA抗体価および交叉性IgA-ELISA抗体価:血清特異的IgG-ELISA抗体価、特異的HI(赤血球凝集阻止)抗体価および交叉性HI抗体価、特異的中和抗体価および交叉性中和抗体価を測定した。上記測定項目の内、ELISA抗体価の測定法の概略は以下の通りである。 ワクチン抗原(蛋白濃度 1μg/mLとなるように100 mM炭酸緩衝液(pH9.6)で希釈)を100 μL/wellとなるように96穴ELISAプレートに固層化(4℃、一晩)し、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した。2倍段階希釈した検体または陰性対照を100 μL/well添加した。その後、プレートを37℃、1時間インキュベーションし、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した。検出用抗体(アルカリホスファターゼ標識抗マウスIgGまたはビオチン標識抗マウスIgA)を100μL/well添加した。プレートを37℃、1時間インキュベーションし、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した(IgA検出の場合はアルカリホスファターゼ標識ストレプトアビジンを100 μL/well添加し、37℃、1時間インキュベーションし、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した)。 次いで、4-ニトロフェニルホスフェート(1 mg/mL、0.1 M ジエタノールアミン(pH 9.8)に希釈)を100 μL/well添加し、プレートを遮光した。室温で30分インキュベーションした後、405 nmの吸光度を測定した。 検体の吸光度が陰性対照の吸光度平均+2SDをこえる吸光度を得る最大希釈倍率を検体の抗体価とした。特異的抗体価は接種ワクチン抗原と同一株、交叉抗体価は異なった株のワクチン抗原を用いた。以下、HI・中和抗体価も同様に測定した。特異的HI(赤血球凝集阻止)抗体価および交叉性HI抗体価:「病原体検出マニュアル」(国立感染症研究所編)の記述に従って試験を実施した。赤血球は鶏由来のものを用いた。特異的中和抗体価および交叉性中和抗体価:「病原体検出マニュアル」(国立感染症研究所編)の記述に従って試験を実施した。ウイルス感染後の培養日数は4日間とした。また、ウイルス感染細胞と非感染細胞の識別には0.1% Naphtol Blue Black/0.1% 酢酸ナトリウム/9% 酢酸を用いて細胞を染色し、細胞培養プレートを乾燥させ、0.1M 水酸化ナトリウムを添加して630nmの吸光度を測定することを含む方法を用いた。(結果) BALB/cマウス(♀、試験開始時6.5w)を用い、抗原をA/Indonesia/5/2005(H5N1)とし、AmpligenをHA抗原の20倍の比率添加し、CVPを加えたものを1〜4回経鼻接種したときの免疫応答を、試験群の前半は抗原+Ampligen+CVP経鼻接種群、後半は抗原のみ経鼻接種/抗原のみ筋肉内接種/生理食塩水経鼻接種を比較対照として用いている。結果を表12-19および図3に示す。 抗原+Ampligen+CVP群では抗原のみ経鼻接種群の数倍〜十数倍の粘膜IgA/血清IgGおよびNT抗体価が認められ、用量および投与回数の少ないものほど差が顕著であった。 経鼻接種型ワクチンは、皮下または筋肉内に接種するワクチンと比較して、特異的な中和抗体、血清の特異的IgG抗体価、HI抗体価は低くなるのが、今までの常識であった。しかし、今回評価したワクチンがAmpligen(登録商標)等の添加により従来型の組成および接種方法のワクチンと同等以上の特異的な中和抗体、血清特異的IgG抗体価およびHI抗体価を獲得できることが分かった。 さらに、今回の試験で得られた検体について、接種抗原と同一の株および抗原性の異なる株との免疫応答を調査し、交叉反応性を確認した。(実施例3)カニクイザル(Macaca fascicularis)を用いた経鼻接種型インフルエンザワクチン(H5N1型)の接種および免疫応答評価試験 実施例2のマウスを用いた実験から得られた接種用量、用法と免疫応答の関係をもとに、ヒトに近い動物として、カニクイザル(Macaca fascicularis)を用いた接種試験を行い、経鼻接種型ワクチンとして最適な剤型、組成の探索と感染防御の観点による有用性を調査した。 具体的には、(1)経鼻接種型ワクチン候補を接種した後の免疫応答を比較することによる、最適な剤型・組成の探索、(2)ワクチン接種後の血清、粘膜抗体価測定による、感染防御能から見た実用性の評価、を行った。 探索は、血清の免疫化学試験(インフルエンザHI抗体価、IgG-ELISA抗体価、および中和抗体価)および鼻腔拭い液の免疫化学試験(インフルエンザ特異的IgA-ELISA抗体価)によって行った。 (試験方法)1. インフルエンザワクチン原液:インフルエンザワクチン(H5N1株)原液(ロット番号、FPBMQI0813、蛋白質濃度:816μg/mL、HA含量324μg HA/mL、由来ウイルス株:A/Bar-headed Goose/Qinghai/1A/2005 (H5N1))2. 試験に使用するウイルスおよび不活化ワクチン抗原の由来株(特異的抗体価測定用)A/Bar-headed Goose/Qinghai/1A/2005 (H5N1)株:A/青海/1A/2005 (H5N1)の弱毒株(clade 2.2)(交叉性抗体価測定用)A/Indo/5/2005(H5N1)/PR8-IBCDC-RG2株:A/Indonesia/5/2005 (H5N1)の弱毒株(clade 2.1)A/Anhui/01/2005(H5N1)/PR8-IBCDC-RG5株:A/Anhui/01/2005(H5N1)の弱毒株(clade 2.3)NIBRG-14株:A/Vietnam/1194/2004(H5N1)の弱毒株(clade 1)3. 試験に使用するアジュバントおよび添加剤Ampligen: Hemispherx社製、(10.61 mg/mLのAmpligenを含有する)カルボキシビニルポリマー(CVP): 東興薬品工業株式会社製、ロット;INF-619(1.1% CVP、2.4% L-アルギニン、2% グリセリンを含有する)ポリL-アルギニン:SIGMA社製、カタログ番号P-3892、ロット; 107K5103(MW>70,000)4. 試験方法 図4に試験の流れの概略を示す。 麻酔したカニクイザル(Macaca fascicularis)にA/Bar-headed Goose/Qinghai/1A/2005 (H5N1)株ウイルス抗原を含有するワクチンまたは生理食塩水を3週間隔で、試作品を備えた経鼻接種デバイス(試験品:東興薬品工業株式会社製、スプレーポンプ;Apta Pharma,VP-7型、噴霧用)を用いて6回、計300μlを投与し(各鼻腔に150μl(50μl×3)の経鼻接種)、それぞれの接種時、および追加接種から2週間毎に、追加接種12週後まで採材(鼻腔拭い液および血清)した。更に必要があればその後も2週間ごとに採血・鼻腔拭い液採取を行った。動物およびワクチン:動物:カニクイザル(Macaca fascicularis)(雄カニクイザル17匹、試験開始時生後46〜58ヶ月齢、2009年11月時点での体重2.8〜3.5kg)、第1群〜第4群:カニクイザル4匹/群、第5群(陰性対照):カニクイザル1匹/群試験検討用試作ワクチンおよびアジュバント用量:(1)無添加ワクチン群:[30 μg HA] /dose(2)Ampligen + CVP添加ワクチン群:[30 μg HA + 600 μg Ampligen + 0.55% CVP] /dose(3)Poly L-アルギニン + CVP添加ワクチン群:[30 μg HA + 0.5% Poly L-アルギニン + 0.55% CVP] /dose(4)陰性対照群:生理食塩水ワクチン投与容量:片鼻腔150μlずつ、計300μl5. 各検体の測定項目鼻腔拭い液(Nasal Swab):特異的IgA-ELISA抗体価およびIgA濃度鼻腔拭い液については、トータルIgA濃度を測定して、実施例2と同様の方法で算出した特異的IgA-ELISA抗体価をトータルIgA濃度1μg/mLあたりの数値となるように補正した。 血清:特異的IgG-ELISA抗体価、特異的、交叉性HI(赤血球凝集阻止)抗体価、特異的・交叉性中和抗体価 上記測定項目の内、ELISA抗体価の測定法の概略は以下の通りである。 ワクチン抗原(蛋白濃度1 μg/mLとなるように100 mM炭酸緩衝液(pH9.6)で希釈)を100 μL/wellとなるように96穴ELISAプレートに固層化(4℃、一晩)し、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した。2倍段階希釈した検体または陰性対照を100 μL/well添加した。次いで、プレートを37℃、1時間インキュベーションし、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した。検出用抗体(アルカリホスファターゼ標識・抗サルIgGまたはビオチン標識・抗サルIgA)を100μL/well添加した。プレートを37℃、1時間インキュベーションし、0.1% Tween 20を含有するPBSで3回洗浄した。基質溶液(4-NPPまたはTMB)を100 μL/well添加して混合物を遮光し、室温で30分インキュベーションした。停止液(4-NPP用2M H2SO4溶液またはTMB用650nm停止液)を加え、吸光度(405nmまたは655nm)を測定した。 検体の吸光度が陰性対照の吸光度平均+2SDをこえる吸光度を得る最大希釈倍率を検体の抗体価とした。特異的抗体価は接種ワクチン抗原と同一株、交叉抗体価は異なった株のワクチン抗原を用いた。以下、HI抗体価および中和抗体価も同様に測定した。特異的HI(赤血球凝集阻止)抗体価および交叉性HI抗体価:実施例2の作業手順に準じて測定した。特異的中和抗体価および交叉性中和抗体価:実施例2の作業手順書に準じて測定した。(結果) 結果を表21-30および図5-7に示す。 サルにAmpligenとCVPを含有するワクチンを経鼻噴霧投与することにより、粘膜に特異的IgA産生を誘導するとともに、血清に特異的中和抗体を誘導できることが確認された。これらの効果は添加物を含まないワクチンでは不十分であったことから、AmpligenとCVPを添加することの有用性が確認された。試験に使用するインフルエンザワクチン原液インフルエンザワクチン(H5N1株)原液:ロット番号;FPBMQI0813(蛋白質濃度:816μg/mL、HA含量324μg HA/mL)由来ウイルス株:A/Bar-headed Goose/Qinghai/1A/2005 (H5N1)試験に使用するアジュバントおよび添加剤Ampligen (Hemispherx社製):10.61 mg/mLのAmpligenを含有するカルボキシビニルポリマー(東興薬品工業株式会社製):ロット;INF-619(1.1% CVP(カルボキシビニルポリマー)、2.4% L-アルギニン、2% グリセリンを含有する)ポリL-アルギニン(SIGMA社製、カタログ番号P-3892):ロット; 107K5103 (MW>70,000)を100mg/mLに溶解して使用 本発明を好ましい実施形態に重点を置いて記載してきたが、好ましい実施形態のバリエーションが用いられ得、本明細書中に具体的に記載されたもの以外の方法で、本発明が実施され得ることが意図されることは、当業者には明らかである。従って、本発明は、以下の特許請求の範囲に規定された本発明の精神および範囲の内に包含される全ての変更物を含む。 本明細書中に引用された全ての参考文献(特許、特許出願、および刊行物を含む)は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。 本願は米国に出願された米国仮出願第61/165,098号(出願日:2009年3月13日)に基づいており、その内容は全て、参照することにより本明細書に組み込まれる。 インフルエンザウイルス抗原、ポリリボイノシン酸・ポリリボシチジル酸(poly (I:C))またはその誘導体およびカルボキシビニルポリマーを含有する、経鼻粘膜投与用ワクチン組成物。 前記抗原がサブユニット抗原または不活化抗原である、請求項1に記載の組成物。 前記サブユニット抗原がインフルエンザウイルスのHA、NA、M1、M2、NP、PB1、PB2、PAおよびNS2からなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原を含む、請求項2に記載の組成物。 前記サブユニット抗原がHAおよびNAからなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原を含む、請求項2に記載の組成物。 インフルエンザウイルス抗原の量がHA換算で10〜500μg HA/mLである、請求項1に記載の組成物。 インフルエンザウイルス抗原の量がHA換算で30〜400μg HA/mLである、請求項5に記載の組成物。 インフルエンザウイルス抗原とpoly (I:C)またはその誘導体の重量比が1:1〜1:50である、請求項1に記載の組成物。 カルボキシビニルポリマーの含有量が、0.1〜2.0重量%である、請求項1に記載の組成物。 哺乳類用または鳥類用である、請求項1に記載の組成物。 ヒト用である、請求項9に記載の組成物。 【課題】インフルエンザの予防用ワクチンおよび予防方法の提供。【解決手段】インフルエンザウイルス抗原、ポリリボイノシン酸・ポリリボシチジル酸(poly(I:C))またはその誘導体およびカルボキシビニルポリマーを含有する経鼻粘膜投与用ワクチン組成物で、前記抗原がサブユニット抗原または不活化抗原でインフルエンザウイルスのHA、NA、M1、M2、NP、PB1、PB2、PAおよびNS2からなる群より選択される少なくとも1つのサブユニット抗原であり、インフルエンザウイルス抗原とpoly(I:C)またはその誘導体との重量比が1:1〜1:50である。【選択図】なし


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