タイトル: | 公開特許公報(A)_アクアポリン機能亢進剤 |
出願番号: | 2014206245 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 31/728,A61P 43/00,A61P 17/16,A61P 13/02,A61P 17/04,A61P 17/02,A61P 3/04,A61P 3/06,A61P 1/16,A61P 1/12,A61P 27/02,A61P 1/02,A61P 11/00,A61P 15/00 |
羽鳥 由信 JP 2015096493 公開特許公報(A) 20150521 2014206245 20141007 アクアポリン機能亢進剤 日本新薬株式会社 000004156 桝井 康司 100126446 羽鳥 由信 JP 2013210635 20131008 A61K 31/728 20060101AFI20150424BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150424BHJP A61P 17/16 20060101ALI20150424BHJP A61P 13/02 20060101ALI20150424BHJP A61P 17/04 20060101ALI20150424BHJP A61P 17/02 20060101ALI20150424BHJP A61P 3/04 20060101ALI20150424BHJP A61P 3/06 20060101ALI20150424BHJP A61P 1/16 20060101ALI20150424BHJP A61P 1/12 20060101ALI20150424BHJP A61P 27/02 20060101ALI20150424BHJP A61P 1/02 20060101ALI20150424BHJP A61P 11/00 20060101ALI20150424BHJP A61P 15/00 20060101ALI20150424BHJP JPA61K31/728A61P43/00 105A61P17/16A61P13/02A61P17/04A61P17/02A61P3/04A61P3/06A61P1/16A61P1/12A61P27/02A61P1/02A61P11/00A61P15/00 3 OL 7 4C086 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA25 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA34 4C086ZA59 4C086ZA67 4C086ZA70 4C086ZA73 4C086ZA75 4C086ZA81 4C086ZA89 4C086ZB22 4C086ZC33 本発明は、ヒアルロン酸を含有するアクアポリン機能亢進剤に関するものである。 アクアポリン(AQP)は細胞への水取り込みに関与する蛋白質で300以下のアミノ酸からなる比較的小さい蛋白質である。通常、細胞膜を6回貫通し、N末端とC末端はいずれも細胞内に伸びる構造を有している。アスパラギン、プロリン、アラニンからなる保存された領域(NPAボックス)が配列中に2回存在し、これはほぼ全てのアイソフォームで保存されており、水の透過性を規定する役割をしている。細胞膜では通常4分子が集まって4量体で存在し、1つの分子に1つずつ約0.3nmの小さな孔が開いており、水分子だけを選択的に通すことができる。アクアポリンには水だけでなく、水よりも分子径が大きく細胞内での水保持に重要なグリセロールや尿素などの分子を通過させる一群が存在し、アクアグリセロポリンと呼ばれる。アクアグリセロポリンでは、孔の径が少し広めになっている。このように、アクアポリンは水チャネルとして水透過に働く以外にもグリセリンや尿素などの小物質やガスの透過、細胞接着、細胞遊走などに働き、多様性があることが明らかになってきている。 アクアポリンは細菌から哺乳類、植物にまで普遍的に存在し、哺乳類では現在までに13種類のアクアポリンアイソフォームの存在が確認されている。アクアポリンのアイソフォームは水を選択的に透過させるAQP0、AQP1、AQP2、AQP4、AQP5と、水のほかにグリセロールや尿素などの小分子を透過させるアクアグリセロポリンであるAQP3、AQP7、AQP9、AQP10、さらには、いずれにも分類されがたいAQP6、AQP8、AQP11、AQP12の3つのグループに分けられる(非特許文献1)。 アクアポリンは、全身の臓器に分布しており、様々な疾病と関係があることも知られている(非特許文献2、3、4、5)。AQP2は腎臓の集合管に存在して尿濃縮に重要な役割を果たしており、この遺伝子変異により腎性尿崩症になる。また、目の水晶体に存在するAQP0の遺伝子変異では白内障が起こる。一方、後天的な病気であるドライアイ、ドライマウスを主訴とするシェーグレン症候群では、AQP5の細胞内での分布異常が原因であることが報告されている。ノックアウトマウスやラットの解析などからは、AQP1、3、4が尿濃縮に、AQP1、2、3、が膣の潤滑に、AQP3が皮膚の湿潤保持、創傷治癒や小腸での水の吸収に、AQP5が唾液分泌に、AQP7がグリセロールの代謝を介して脂質代謝に、AQP4が脳浮腫形成に関与していること等が分かってきている。 ヒアルロン酸は、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸が二糖単位で直鎖状に結合した繰り返し構造を有している。生体内に極めて高分子で存在し、分子量は100万以上になると言われる。生体内では、関節、硝子体、皮膚、脳など広く細胞外マトリックスに存在する。 ヒアルロン酸は、その優れた保水力や粘弾性をはじめとする様々な作用が注目され、化粧品、医薬品、食品の形態で利用されている。分子量約95万または100万の高分子ヒアルロン酸は、線維芽細胞増殖促進作用を有することが報告されている(非特許文献6)。また、4糖からなるヒアルロン酸(HA4)は、細胞保護作用を有することが報告されている(非特許文献7)。しかし、ヒアルロン酸がアクアポリンの機能を亢進することは知られていない。Annu Rev Physiol、70、301−327、2008日本薬理学雑誌 122(3), 280,273, 2003第19回「大学と科学」 みずみずしい体のしくみ−水の通り道「アクアポリン」の働きと病気−、102−118、154−169、2005J.Mol.Med.86、221−231、2008J.Sex.Med.2008、5、77−82J Cell Sci. 、90 、265−273、1988J Biol Chem. 10;277 (19):17308−17314、2002 本発明は、アクアポリン機能亢進剤を提供することを主な目的とする。 本発明者は、上記課題を解決すべく検討した結果、ヒアルロン酸がアクアポリンの機能を亢進する作用を有することを見出し、本発明を完成した。 本発明として、下記のものを挙げることができる。(1)ヒアルロン酸又はその塩を有効成分として含有する、アクアポリン機能亢進剤。(2)アクアポリン機能亢進剤が、アクアポリン2機能亢進剤またはアクアポリン3機能亢進剤である、上記(1)に記載のアクアポリン機能亢進剤。(3)アクアポリン機能亢進剤が、皮膚の乾燥治療剤、腎性尿崩症及び多尿治療剤、皮膚掻痒症及び皮膚潰瘍治療剤、創傷治癒剤、肥満若しくは脂肪肝の治療剤、小腸及び大腸での水分吸収促進剤、眼、口腔、鼻粘膜及び気管の分泌促進剤、または、膣の潤滑剤である、上記(1)または(2)に記載のアクアポリン機能亢進剤。。 本発明に係るアクアポリン機能亢進剤(以下、本発明機能亢進剤という。)は、アクアポリンおよびアクアグリセロポリンの機能を亢進することから、腎臓では尿濃縮作用(腎性尿崩症や多尿の改善)が期待され、小腸・大腸では水分吸収を促進することが期待され、眼、口腔、鼻粘膜、気管の分泌促進や膣の潤滑に有用であることが期待される。また、アクアグリセロポリンは水だけでなくグリセロールの取り込みや代謝に関与することから、本発明機能亢進剤は、皮膚では乾燥、皮膚掻痒症や皮膚潰瘍の治療、創傷治癒にも有効であると期待され、肝臓では、脂肪細胞からのグリセロールの流出に関与することから、肥満や脂肪肝への有用性も期待される。また、本発明機能亢進剤は、生体成分由来であることから、安全性が高いものである。ヒアルロン酸がアクアポリン2(AQP2)の水透過性に及ぼす影響を示す図である。横軸は、添加したヒアルロン酸のサンプル名を表す。縦軸は、ヒアルロン酸無添加時を100としたときのAQP2の水透過性を表す。ヒアルロン酸がアクアポリン3(AQP3)の水透過性に及ぼす影響を示す図である。横軸は、添加したヒアルロン酸のサンプル名を表す。縦軸は、ヒアルロン酸無添加時を100としたときのAQP3の水透過性を表す。ヒアルロン酸がアクアポリン3(AQP3)のグリセロール透過性に及ぼす影響を示す図である。横軸は、添加したヒアルロン酸のサンプル名を表す。縦軸は、ヒアルロン酸無添加時を100としたときのAQP3のグリセロール透過性を表す。 本発明機能亢進剤は、ヒアルロン酸またはその塩の少なくとも一方を有効成分として含有するものである。 本発明にかかるヒアルロン酸としては、例えば、市販のもの(ヒアルロン酸LM、ヒアルロン酸ST、ヒアルロン3000(全て日本新薬社製)等)を用いることができるし、通常の方法で鶏冠から抽出したものや微生物の培養液から精製したものを適宜、酵素や加水分解により低分子化して用いることもできる。かかるヒアルロン酸の平均分子量としては、10万以下が好ましく、2万以下がより好ましい。1500−5000の範囲内が特に好ましい。分子量の調製方法としては、酵素、酸あるいはアルカリの濃度及び処理時間等を適宜選択することで、目的の分子量に調製することができる。ヒアルロン酸の塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩を挙げることができる。 本発明にかかるヒアルロン酸の平均分子量は、ヒアルロン酸の極限粘度から算出された粘度平均分子量を示す。まず、適当な複数のヒアルロン酸溶液を調製し、粘度計により測定したヒアルロン酸溶液の粘度をもとに比粘度および還元粘度を算出する。次に、各ヒアルロン酸溶液について、得られた還元粘度を縦軸に、乾燥物換算のヒアルロン酸濃度を横軸にプロットして検量線を作成し、ヒアルロン酸濃度を0に外挿したときの還元粘度を求めることにより、ヒアルロン酸の極限粘度を得る。得られた極限粘度をLaurentの式(Biochem.Biophys.Acta、42、476−485、1960)に代入することで、ヒアルロン酸の極限粘度から分子量を求めることができる。 本発明機能亢進剤は、アクアポリンを活性化することで、例えば、細胞内への水及びグリセロール、尿素の取り込みを促進する。 本発明機能亢進剤は、上記のヒアルロン酸を、そのまま又は担体として使用することのできる素材と混合し、次いで、常法により粉末状、塊状、液状などの各種形態に加工することにより製造することができる。本発明機能亢進剤のヒアルロン酸の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.001重量%(以下、単に「%」という)以上が適当であり、好ましくは、0.005〜50%の範囲内である。 本発明機能亢進剤には、医薬上又は食品上許容される添加物を任意に配合することができる。かかる添加剤としては、例えば、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝剤、酸化防止剤、賦形剤、界面活性剤、紫外線防止剤、金属イオン封鎖剤、増粘剤、防腐剤、抗菌剤、保湿剤、色素を挙げることができ、これらを1種又は2種以上使用することができる。 本発明機能亢進剤は、常法により、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、シロップ剤、ドロップ錠、トニック、ローション、軟膏、クリーム等の剤型に適宜調製することができる。 本発明機能亢進剤の摂取量は、症状、剤型、投与対象者の年齢、体重等により異なるが、通常、成人1日当り、ヒアルロン酸の重量として、0.001〜100gの範囲内とするのが適当であり、0.003g〜60gの範囲内とするのが好ましいが、必ずしもこの範囲に限られるものではない。かかる1日当りの摂取量は、1回で摂取してもよく、また、2〜4回に分割して摂取してもよい。 以下に、実施例を掲げて本発明をさらに詳述する。但し、本発明が下記実施例に限定されないことは言うまでもない。参考例1 試験試料の調製 試験試料として、平均分子量3000、15000、50000、100000、500000、750000のヒアルロン酸(以下、順にHA3K、HA15K、HA50K、HA100K、HA500K、HA750Kとよぶ)を用いた。 ストレプトコッカス属の培養液より抽出・精製して得られた高分子ヒアルロン酸を原料とした。高分子ヒアルロン酸を溶解後、塩酸を加え、pHを調整したのち、酸加水分解を行うことにより適宜目的の分子量まで低分子化した。続いて、水酸化ナトリウムを加えて中和した後、エタノールを加えて、ヒアルロン酸を抽出・精製した。分子量は、上記の方法に従って算出した。なお、試験試料の濃度はいずれも0.5%となるように調製した。参考例2 cRNAの合成およびアフリカツメガエルの卵母細胞の注入 ヒトアクアポリン2(AQP2)およびヒトアクアポリン3(AQP3)を用い、cRNA合成キット(mMESSAGEmMACHINE kit、Ambion社製)を用いて、AQP2およびAQP3のcRNAを合成した。 卵母細胞は、以下のようにテイラー(T a y l o r ) らの文献( P r o c . N a tl . A c a d . S c i . U S A . , 8 2 , 6 5 8 5 − 6 5 8 9 ( 1 9 8 5 ) )に記載の方法に準じて調製した。卵塊をカエルから摘出し、コラゲナーゼ処理後、各卵母細胞にAQP2またはAQP3 cRNAを50ng/50nl注入した。ネガティブコントロールとして、卵母細胞に蒸留水を注射した。試験例1 本発明機能亢進剤のアクアポリン2水透過性(Pf)値の測定 水透過性実験は、以下のように、文献(S c i e n c e , 2 5 6 , 3 8 5 − 3 8 7 ( 1 99 2 ) 、及び、P ro c . N a t l . A c a d . S c i . U S A . , 9 1 , 6 2 6 9 − 62 7 3 ( 1 9 9 4 ) ) に記載されている方法に準じて行った。2日間培養したAQP2 cRNAを注入した卵母細胞を試験試料:Birthmedium=2:1の液中に投入し、ビデオ顕微鏡で撮影した。卵母細胞の体積変化を計算し、Pf値を算出した。さらに、ヒアルロン酸無添加群のPf値を100としたときの相対値を算出した。 図1に示すように、ヒアルロン酸はヒアルロン酸無添加時と比較してAQP2の水透過性を促進した。分子量の小さいHA3Kが特に強く促進した。実施例2 本発明機能亢進剤のアクアポリン3水透過性およびグリセロール透過性測定 AQP3の水透過性測定は、実施例1と同様の方法により行った。また、グリセロール透過性の測定は以下の方法により行った。グリセロール透過性の測定 グリセロールの測定はBioVisionFree Glycerol Assay kit(和光純薬社製)を用いて測定した。AQP3 cRNAを注入された卵母細胞を20℃で2日間、BirthMediumで培養した後、24穴プラスチック培養器に0.5%ヒアルロン酸と200mMグリセロールを添加したBirthMediumの1ml中に卵母細胞を投入し、30分間、20℃で培養した。その後、BirthMedium で3回洗浄した。卵母細胞のみチューブに移し、20%SDS添加AssayBuffer 20μlに溶解後、14,000 rpm、5分遠心し、上清10μlにキット酵素mix 10μlを加えて、30分反応後、OD562nmで吸光度を測定した。グリセロール濃度を算出したのち、ヒアルロン酸無添加のPf値を100としたときの相対値を算出した。 図2および図3に示すように、ヒアルロン酸はAQP3の機能を亢進し、水及びグリセロールの透過性を促進した。また、その効果は分子量の小さいHA3Kが特に強かった。 本発明機能亢進剤は、アクアポリン機能亢進作用を有するため、腎性尿崩症、多尿、皮膚の乾燥、皮膚掻痒症、皮膚潰瘍、創傷、肥満若しくは脂肪肝の治療剤、小腸及び大腸での水分吸収促進剤、眼、口腔、鼻粘膜及び気管の分泌促進剤、又は、膣の潤滑剤として有用である。ヒアルロン酸又はその塩を有効成分として含有する、アクアポリン機能亢進剤。アクアポリン機能亢進剤が、アクアポリン2機能亢進剤またはアクアポリン3機能亢進剤である、請求項1に記載のアクアポリン機能亢進剤。アクアポリン機能亢進剤が、皮膚の乾燥治療剤、腎性尿崩症及び多尿治療剤、皮膚掻痒症及び皮膚潰瘍治療剤、創傷治癒剤、肥満若しくは脂肪肝の治療剤、小腸及び大腸での水分吸収促進剤、眼、口腔、鼻粘膜及び気管の分泌促進剤、または、膣の潤滑剤である、請求項1または2に記載のアクアポリン機能亢進剤。。 【課題】本発明は、新規なアクアポリンおよびアクアグリセロポリン機能亢進剤を提供することを主な目的とする。【解決手段】本発明は、ヒアルロン酸またはその塩を有効成分として含有する、アクアポリンおよびアクアグリセロポリン機能亢進剤に関するものである。本発明機能亢進剤は、アクアポリンの機能を亢進し、腎性尿崩症、多尿、皮膚の乾燥、皮膚掻痒症、皮膚潰瘍、創傷、肥満若しくは脂肪肝の治療剤、小腸及び大腸での水分吸収促進剤、眼、口腔、鼻粘膜及び気管の分泌促進剤、または膣の潤滑剤として有用である。【選択図】なし