タイトル: | 公開特許公報(A)_鼻粘膜ワクチン組成物 |
出願番号: | 2014204025 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 39/39,A61K 39/02,A61K 39/12,A61P 31/00,A61P 31/04,A61P 31/12,A61P 37/04,A61P 35/00,A61P 43/00 |
清遠 英司 堀 光彦 大久保 勝之 浅利 大介 岡崎 有道 深坂 昌弘 松下 恭平 JP 2015091795 公開特許公報(A) 20150514 2014204025 20141002 鼻粘膜ワクチン組成物 日東電工株式会社 000003964 特許業務法人 安富国際特許事務所 110000914 清遠 英司 堀 光彦 大久保 勝之 浅利 大介 岡崎 有道 深坂 昌弘 松下 恭平 JP 2013208665 20131003 A61K 39/39 20060101AFI20150417BHJP A61K 39/02 20060101ALI20150417BHJP A61K 39/12 20060101ALI20150417BHJP A61P 31/00 20060101ALI20150417BHJP A61P 31/04 20060101ALI20150417BHJP A61P 31/12 20060101ALI20150417BHJP A61P 37/04 20060101ALI20150417BHJP A61P 35/00 20060101ALI20150417BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150417BHJP JPA61K39/39A61K39/02A61K39/12A61P31/00A61P31/04A61P31/12A61P37/04A61P35/00A61P43/00 121 4 OL 17 4C085 4C085AA03 4C085AA38 4C085BA07 4C085BA51 4C085BB01 4C085EE06 4C085FF14 4C085FF19 4C085GG10本発明は、感染症や癌の予防又は治療剤として有用な鼻粘膜ワクチン組成物に関する。特に本発明は、特定のリポポリサッカライドをアジュバントとして、抗原とともに鼻粘膜に投与することで、安全で、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導せしめることが可能な鼻粘膜ワクチン組成物に関する。ワクチン製剤の剤形としては、現在製品化されているもののほとんどが注射剤である。注射型ワクチンは、血中(全身性)の免疫応答(IgG抗体の産生)を誘導するが、粘膜での免疫応答(IgA抗体の産生)は誘導せず、感染後による病原体の増殖を防ぐことはできるが、粘膜経路による病原体の感染自体を防御することは困難であるという問題点があった。そこで、近年、粘膜からのワクチン接種に注目が集まっており、なかでも、インフルエンザウイルスを抗原として用いた粘膜投与(経鼻投与)型ワクチンの開発が脚光を浴びている。粘膜投与型ワクチンは、全身性免疫(IgG抗体の産生)を誘導するだけでなく、粘膜免疫(IgA抗体の産生)を誘導することが可能である。このIgA抗体は、対象となる疾患の病原体のタイプをあまり厳格に区別しないのが特徴であり、年々変わる病原体の流行型が変化しても対応することが可能であり、パンデミック防止に効果的であると考えられている。また、経鼻投与型ワクチンが脚光を浴びているのは、消化管粘膜への抗原の投与では胃酸の影響やタンパク分解酵素の影響を受けやすく、これらを防ぐことが困難であるのに対し、経鼻粘膜への抗原の投与ではこれらの影響がないことがその理由の1つとして挙げられる。更に、鼻腔粘膜上にはNALTと呼ばれる抗原認識組織があり、免疫応答に効果的であることも理由の1つである。経鼻投与型ワクチンの例としては、例えば、以下の報告がなされている。例えば、特許文献1には、パントエア菌由来リポポリサッカライド(lipopolysaccharide,LPS)が提案され、従来のLPSよりも安全性が高く、抗原と同時に投与した場合に免疫反応が増強されることが記載されている。しかしながら、特許文献1には、獲得免疫への使用については明確な言及や例示がなく、また、最適なアジュバント/抗原の比率についての言及もなされていない。更に、特許文献1には、パントエア菌由来LPSの粘膜ワクチンとしての使用についての明確な言及もされていない。また、特許文献2には、病原体の不活化抗原、並びに、免疫賦活化剤(アジュバント)として、Poly(I:C)及びザイモザンの組み合わせを含むワクチンが提案され、アジュバントとして、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)に由来するリポポリサッカライド(LPS)を用い、病原体としてインフルエンザウイルスを用いた例が記載されている。しかしながら、特許文献2に記載のワクチンは、経鼻投与について、インフルエンザウイルス以外の抗原で効果を奏するか否かは不明であった。特許第4043533号特開2009−242367号公報本発明は、上記現状に鑑み、安全で、感染症や癌の予防又は治療剤として有用で、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることのできる鼻粘膜ワクチン組成物を提供することを課題とする。本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、鼻粘膜投与において、特定のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩をアジュバントとして、インフルエンザ以外の抗原と共に鼻粘膜に投与することで、安全で、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、ヒト又は動物の鼻粘膜に投与される鼻粘膜ワクチン組成物であって、少なくとも一種類の抗原(但し、インフルエンザウイルス由来抗原を除く)と、免疫賦活化剤として、Serratia、Leclercia、Rahnella、Acidicaldus、Acidiphilium、Acidisphaera、Acidocella、Acidomonas、Asaia、Belnapia、Craurococcus、Gluconacetobacter、Gluconobacter、Kozakia、Leahibacter、Muricoccus、Neoasaia、Oleomonas、Paracraurococcus、Rhodopila、Roseococcus、Rubritepida、Saccharibacter、Stella、Swaminathania、Teichococcus、Zavarzinia、Pseudomonas、Achromobacter、Bacillus、Methanoculleus、Methanosarcina、Clostridium、Micrococcus、Flavobacterium、Pantoea、Acetobacter、Zymomonas、Xanthomonas、及び、Enterobacterからなる群より選択される少なくとも1種のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩を含むことを特徴とする鼻粘膜ワクチン組成物である。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物において、上記免疫賦活化剤と抗原との質量比(免疫賦活化剤の総質量/抗原の総質量)が、0.002〜500であることが好ましい。また、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、液性免疫を誘導するために用いられるものであることが好ましい。また、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物において、抗原が、感染症由来抗原又は癌抗原であることが好ましい。以下、本発明を詳細に説明する。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、少なくとも一種類の抗原と免疫賦活化剤とを含有する。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物において、上記免疫賦活化剤と上記抗原との質量比(免疫賦活化剤の総質量/抗原の総質量)が、0.002〜500であることが好ましい。0.002未満であると、充分な強さの免疫が誘導されないことがあり、500を超えると、安全面での問題が生じる恐れがある。上記免疫賦活化剤と上記抗原との質量比のより好ましい下限は0.01、より好ましい上限は100である。上記免疫賦活化剤と上記抗原との質量比がこの範囲にあることで、安全性を確保しつつ、充分な強さの免疫が誘導できる。本明細書にいう「抗原の質量」は、特記する場合を除き、ワクチン中の抗原に含まれる抗原タンパク質の質量のことである。したがって、抗原が、ウイルス等生体由来物質である場合は、その抗原に含まれる全タンパク質の質量を意味する。上記抗原とは、インフルエンザ由来抗原を除く感染症由来抗原、あるいは癌抗原を選択することができる。インフルエンザウイルスは、変異速度の速いウイルスであるため、毎年、流行するウイルス株が変わり、そのウイルス株に対応した抗原でワクチンを製造する必要があり、ワクチン組成物の安定性などの特性にさらなる配慮を要する。本発明では、変異の少ない抗原、好ましくは感染性病原体由来の抗原を対象とする趣旨から、インフルエンザ由来抗原を除外している。本発明で使用する抗原としては、インフルエンザ由来抗原を除く感染症由来抗原又は癌抗原であることが好ましい。感染症由来抗原では、疾患の予防を目的とし、ワクチン投与によりあらかじめ抗体を形成させておく必要があるため、本発明を利用することが望ましいといえる。本発明の粘膜ワクチン組成物は、液性免疫を活性化させることに適している。また、本発明で使用する抗原としては、インフルエンザ由来抗原を除く感染症由来抗原が好ましく、該感染症由来抗原としては、インフルエンザ由来抗原を除く、感染性病原体及び感染性病原体由来の抗原であれば特に限定されない。上記感染性病原体から罹る疾患としては、インフルエンザ由来抗原を除く以外には特に限定されず、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、HSV−I、HSV−II、CMV、又は、VZV)、ポックスウイルス(例えば、痘瘡若しくはワクシニア、又は、伝染性軟属腫などのオルトポックスウイルス)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス又はエンテロウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、おたふく風邪ウイルス、はしかウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV))、コロナウイルス(例えば、SARS)、パポバウイルス(例えば、生殖器疣、尋常性胱贅、又は、足底疣費を引き起こすものなどのヒト乳頭腫(パピローマ)ウイルス)、ヘパドナウイルス(例えば、肝炎Bウイルス)、フラビウイルス(例えば、肝炎Cウイルス又はデングウイルス)、又は、レトロウイルス(例えば、HIVなどのレンチウイルス)などのウイルス感染から罹る疾患などのウイルス疾患、エシェリキア属、エンテロバクター、サルモネラ、ブドウ球菌、赤痢菌、リステリア、アエロバクター、ヘリコバクター、クレブシエラ、プロテウス、シュードモナス、連鎖球菌、クラミジア、マイコプラズマ、肺炎球菌、ナイセリア、クロストリジウム、バシラス、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、カンピロバクター、ビブリオ、セラチア、プロビデンシア、クロモバクテリウム、ブルセラ、エルシニア、ヘモフィルス、又は、ボルデテラなどの細菌感染から罹る疾患などの細菌疾患、クラミジア、カンジダ症、アスペルギルス症、ヒストプラスマ症、クリプトコックス髄膜炎をはじめとするがこれに限定されるものではない真菌疾患、マラリア、ニューモシスティスカリニ肺炎、レーシュマニア症、クリプトスポリジウム症、トキソプラズマ症、及び、トリパノソーマ感染等が挙げられる。本発明において、上記感染症由来抗原は、ヒトパピローマウイルス由来抗原、及び、肺炎球菌由来抗原からなる群より選択される少なくとも1種類であることが好ましい。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物において、上記抗原は有効量含有されていればよいが、例えば、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物中、1回投与量当たり0.01〜10000μgの範囲で含有されていることが好ましい。0.01μg未満であると、感染症や癌の予防又は治療剤としての機能が不充分となることがあり、10000μgを超えると、安全性に関して問題となることがある。上記抗原含有量のより好ましい下限は0.1μg、より好ましい上限は5000μgである。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、免疫賦活化剤を含有する。上記免疫賦活化剤としては、トール様受容体4(TLR4)アゴニストが挙げられ、本発明では、該トール様受容体4(TLR4)アゴニストとして、特定のリポポリサッカライド又はその誘導体若しくは塩が用いられる。なお、本明細書にいう「リポポリサッカライド」は、リポポリサッカライドそれ自体のほか、その性質を有する限りその誘導体であることができる。本明細書にいう塩とは、任意の有機酸または無機酸であってよいが、好ましくは薬学的に許容される塩である。ここで、リポポリサッカライド(lipopolysaccharide、以下、LPSと記載することがある)について説明する。上記LPSは、大腸菌、サルモネラ菌、百日咳菌等のグラム陰性細菌細胞壁のペプチドグリカンを囲む外膜に存在している脂質及び糖からなる複合化合物であり、O抗原及びエンドトキシンの活性成分として知られている[ジェー・エム・ギューセン及びアール・ハッケンベック(J.M.Ghuysen and R.Hakenbeck)編、「ニュー・コンプリヘンシブ・バイオケミストリー(New Comprehensive Biochemistry)」、第27巻、バクテリアル・セル・ウオール(Bacterial Cell Wall)、第18ページ、エルセヴィア(Elsevea)、1994年]。上記LPSの基本構造は、特異な脂質を有するリピドA、それに共有結合したRコアと呼ばれるオリゴ糖、さらにO特異多糖の3成分よりなっている(「日経バイオテクノロジー最新用語辞典」、第431ページ、日経マグロウヒル社、1985年)。上記O特異多糖の構造は、構成成分の中で最も多様であり、菌種に特異的であって、いわゆるO抗原としての活性を示す。一般に数種の単糖からなるオリゴ糖の繰返し構造を特徴とするが、同一単糖からなるもの、または繰返し構造でないものも知られている。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、上記免疫賦活化剤として、特定のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩を含む。これらは、多くの食品、漢方薬に含まれ、生体への安全性が担保されており、これらの菌由来の抽出物又はその改変体をそのまま用いることも可能である。上記免疫賦活化剤に用いられるリポポリサッカライドの由来細菌としては、Serratia(Pantoea菌近種/パン、肉類、牛乳、常在細菌の一種)、Leclercia(Pantoea菌近種/食品全般(土壌菌))、Rahnella(Pantoea菌近種/常在細菌の一種)、Acidicaldus(酢酸菌類/発酵食品製造)、Acidiphilium(酢酸菌類/発酵食品製造)、Acidisphaera(酢酸菌類/発酵食品製造)、Acidocella(酢酸菌類/発酵食品製造)、Acidomonas(酢酸菌類/発酵食品製造)、Asaia(酢酸菌類/発酵食品製造)、Belnapia(酢酸菌類/発酵食品製造)、Craurococcus(酢酸菌類/発酵食品製造)、Gluconacetobacter(酢酸菌類/発酵食品製造)、Gluconobacter(酢酸菌類/発酵食品製造)、Kozakia(酢酸菌類/発酵食品製造)、Leahibacter(酢酸菌類/発酵食品製造)、Muricoccus(酢酸菌類/発酵食品製造)、Neoasaia(酢酸菌類/発酵食品製造)、Oleomonas(酢酸菌類/発酵食品製造)、Paracraurococcus(酢酸菌類/発酵食品製造)、Rhodopila(酢酸菌類/発酵食品製造)、Roseococcus(酢酸菌類/発酵食品製造)、Rubritepida(酢酸菌類/発酵食品製造)、Saccharibacter(酢酸菌類/発酵食品製造)、Stella(酢酸菌類/発酵食品製造)、Swaminathania(酢酸菌類/発酵食品製造)、Teichococcus(酢酸菌類/発酵食品製造)、Zavarzinia(酢酸菌類/発酵食品製造)、Pseudomonas(シュードモナス菌類/牛肉、卵、肉類、魚介類、野菜)、Achromobacter(アクロモバクター菌類/魚介類、肉類)、Bacillus(バシラス菌類/米、野菜)、Methanoculleus(メタン産生菌類/動物の腸に寄生するメタン産生菌)、Methanosarcina(メタン産生菌類/動物の腸に寄生するメタン産生菌)、Clostridium(クロストリジウム菌類/肉類、牛乳、野菜、缶詰)、Micrococcus(放射菌類/肉類、魚介類)、Flavobacterium(バクロイデス菌類/食品の腐敗菌)、Pantoea、Acetobacter、Zymomonas、Xanthomonas、及び、Enterobacterが挙げられる。これらは、多くの食品に含まれるものであるか、食品の製造工程で用いられるものであるため、生体への安全性が担保されている。なかでも、Serratia、Leclercia、Rahnella、Acidicaldus、Acidiphilium、Acidisphaera、Acidocella、Acidomonas、Asaia、Belnapia、Craurococcus、Gluconacetobacter、Gluconobacter、Kozakia、Leahibacter、Muricoccus、Neoasaia、Oleomonas、Paracraurococcus、Rhodopila、Roseococcus、Rubritepida、Saccharibacter、Stella、Swaminathania、Teichococcus、Zavarzinia、Pantoea、Acetobacter、Zymomonas、Xanthomonas、及び、Enterobacterからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。より好ましくは、上記グラム陰性細菌としては、Pantoea、Acetobacter、Zymomonas、Xanthomonas、及び、Enterobacterからなる群より選択される少なくとも1種である。特にPantoea由来リポポリサッカライドは、現在健康食品として用いられており、特に粘膜面に投与する際により有効であるといえる。これらの菌由来の抽出物又はその改変体をそのまま用いることも可能である。また、上記グラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩を用いる場合には、一般的には生体への安全性を加味する必要があり、これらを解毒化するための改変体として用いることもできる。また、上記トール様受容体4(TLR4)アゴニストとしては、上記特定のリポポリサッカライドの誘導体、例えば、多糖部分を除去したリピドA又はモノホスホリルリピッドA、3−脱−アシル化MPL等が挙げられ、若しくは塩であってもよい。上記リポポリサッカライドの多糖部分を除去したリピドAとしては、上記特定のグラム陰性細菌由来の単離物であればよく、あるいはこれらのグラム陰性細菌由来の単離物と同じ構造になるように合成した物を用いてもよい。また、上記リピドAの改変体としては、脱リン酸化を行ったモノホスホリルリピッド(MPL)又は塩も好適に用いられる。なお、本明細書にいうモノホスホリルリピッドは、モノホスホリルリピッドそれ自体のほか、その性質を有する限りその誘導体であることができる。特に既に医療用途で免疫賦活化剤として実績がある3−脱−アシル化物モノホスホリルリピッド(3D−MPL)、又は、米国特許出願公開第2010/0310602号明細書で提案されている脱アシル化されていない合成Glucopyranosyl lipidが生体への安全性の観点から好ましい。また、上記モノホスホリルリピッドとしては、安全性及び使用前例のあるサルモネラ菌由来のものも好適に用いられる。本発明では、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)由来LPSがさらに好ましく用いられる。なかでも、パントエア・アグロメランス由来LPSは、タンパク質マーカーを用いてSDS−PAGE法で測定した分子量が、5000±3000、好ましくは、5000±2000であるパントエア・アグロメランス由来LPSが好ましい。ここにいう分子量は、タンパク質マーカーを用いたSDS−PAGE法による染色帯の位置により測定され、詳細は後述する。本発明でも好ましく用いられるパントエア・アグロメランス由来LPSは、O−抗原部分がラムノースとグルコースとの繰返し構造であることを特徴とするリポポリサッカライドである。上記パントエア・アグロメランス由来LPSは、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)を、常法により培養し、培地から菌体を集め、集めた菌体から公知の方法により精製して製造できる。なお、上記パントエア・アグロメランス由来LPSの分子量は、以下の方法で測定できる。すなわち、配合物として用意したパントエア・アグロメランス由来LPS、あるいはワクチン組成物から適当な方法で抽出精製したパントエア・アグロメランス由来LPSについて、以下の方法で分子量を測定できる。パントエア・アグロメランス由来LPSを蒸留水に溶解して1mg/mLの濃度の溶液を調製し、その溶液と、Sample buffer solution 2ME+(WAKO社製)を等量混合し、5分間沸騰水浴中に浸し、その後直ちに氷水中に浸して急冷する。ランニングバッファー(アトー社製)をスラブゲル電気泳動槽(マリソル社製)に満たし、20%ポリアクリルアミドゲルを泳動槽に固定し、サンプル溝に10μLずつ検体を入れ、電圧を100Vにて少なくとも1時間、色素がゲルより溶出するまで泳動を継続する。泳動終了後に、銀染色キット161−0443(バイオラッド社製)により室温で銀染色を行い、挙動を確認する。また、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、上述した免疫賦活化剤として、特定のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩を含有するものであれば、これらと他の従来公知の免疫賦活化剤を組み合わせて用いてもよい。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、上述した抗原及び免疫賦活化剤に、必要に応じて他の成分(例えば、リン酸緩衝溶液等)を加え、公知の方法で攪拌混合することで、及び必要に応じて公知の方法で、さらに加熱、冷却、又は非加熱乾燥することで調製することができる。また、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物を用いて、液剤、半固形剤、固形製剤、噴霧剤を調製することが可能であり、上述した材料以外に、所望により、賦形剤、結合剤、香料、矯味剤、甘味剤、着色剤、防腐剤、抗酸化剤、安定化剤、界面活性剤等を適宜使用してもよい。これらの材料としては特に限定されず、従来公知のものが使用できる。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、液剤、噴霧剤、半固形製剤、又は、固形製剤であることが好ましい。後述のように、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物が液剤、噴霧剤、半固形剤又は固形剤であることで、ヒト又は動物の鼻粘膜に好適に投与することができる。また、本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、ヒト又は動物の鼻粘膜に投与されるものであるので、上記半固形製剤及び固形製剤は、体液及び/又は体温によって溶解するものであることが好ましい。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、ヒト又は動物(哺乳類、鳥類等)の鼻粘膜へ投与されるものである。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物の投与方法としては、従来公知の方法が挙げられる。また、その投与量としては、動物種、対象の年齢、性別、体重等を考慮して決められるが、例えば、抗原として肺炎球菌を用いた場合、通常0.1μg〜50μgを1回又は2回以上投与することができる。好ましくは複数回の投与であり、この場合、1〜4週間の間隔をあけて投与することが好ましい。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、少なくとも一種類の抗原とともに、上述した特定の免疫賦活化剤を併用するため、鼻粘膜への投与により、安全で、効果的に液性免疫、例えば、全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることができる。実施例1〜5、比較例1〜4のマウス鼻腔洗浄液中肺炎球菌特異的IgA力価の結果を示すグラフである。実施例1〜5、比較例1〜4のマウス血清中肺炎球菌特異的IgG力価の結果を示すグラフである。実施例6〜10、比較例5〜7のマウス鼻腔洗浄液中HPV16組み換えタンパク質特異的IgA力価の結果を示すグラフである。実施例6〜10、比較例5〜7のマウス血清中HPV16組み換えタンパク質特異的IgG力価の結果を示すグラフである。以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(実施例1〜5、比較例1〜4)各投与群は10匹分として調製した。肺炎球菌莢膜ポリサッカライド含有溶液(Pneumovax NP、MSD株式会社製)(1150μg/mL)と、Pantoea agglomerans由来リポポリサッカライド(自然免疫応用技研社製)溶液(50mg/mL)を、表1の各群の投与量となるように調製し、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加えて100μLのワクチン組成物を調製した。例えば実施例1では肺炎球菌莢膜ポリサッカライド含有溶液を8.7μL加え、Pantoea agglomerans由来リポポリサッカライド溶液を20μL加えたのちにリン酸緩衝液を加えて総量100μLとした。その他の実施例、比較例も適宜希釈し投与量に相当する含量となるように調製し、比較例4ではワクチン抗原やアジュバントを加えずに、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)のみをマウスに投与した。マウス(メス8週齢BALB/Cマウス、日本エスエルシー社)6匹に麻酔後、それぞれのマウスに調製したワクチン組成物を10μL経鼻投与した。当該投与から1週間後、再度マウスに麻酔をかけ、それぞれのマウスに調製したワクチン組成物を10μL経鼻投与した。2度目の投与から更に1週間後に、マウスの血清及び鼻腔洗浄液を採取し、血清中肺炎球菌特異的IgG力価及び鼻腔洗浄液中肺炎球菌特異的IgA力価の測定をELISA法により測定を行った。ここで、アジュバント量1000μgの投与(比較例1)は、一回目の投与24時間後にマウスの毛並の悪化、体重減少が見られ、安楽死処分したため、後の抗体価の測定は行っていない。アジュバントは、免疫を賦活させる物質であり、添加量が多いほど免疫が得られやすいことは明白であるが、過剰量を投与することは安全上の問題があり、マウスにおける1000μgの投与は比較例1以降行っていない。なお、詳細な測定方法は後述する。(実施例6〜10、比較例5〜7)肺炎球菌莢膜ポリサッカライド含有溶液をHPV16組み換えタンパク質含有溶液(HPV16、PROSPEC社製)(820μg/mL)に変更した以外は基本的に実施例1〜5、比較例1〜4に準ずる操作で表2に相当するワクチン組成物を調製した。例えば実施例6ではHPV16組み換えタンパク質含有溶液を12.2μLとPantoea agglomerans由来リポポリサッカライド溶液を20μL加えたのちにリン酸緩衝液を加えて総量100μLとした。マウス(メス8週齢BALB/Cマウス、日本エスエルシー社)6匹に麻酔後、それぞれのマウスに調製したワクチン組成物を10μL経鼻投与した。当該投与から1週間後、再度マウスに麻酔をかけ、それぞれのマウスに調製したワクチン組成物を10μL経鼻投与した。2度目の投与から更に1週間後に、マウスの血清及び鼻腔洗浄液を採取し、血清中HPV16組み換えタンパク質特異的IgG力価及び鼻腔洗浄液中HPV16組み換えタンパク質特異的IgA力価の測定をELISA法により測定を行った。なお、詳細な測定方法は後述する。(実施例11〜13、比較例8)弱毒生ロタウイルス含有溶液(ロタテック内用液、MSD社製)50μLと、Pantoea agglomerans由来リポポリサッカライド(ナカライテスク社製)溶液を実施例11では50μL(2mg/mL)、実施例12では5μL、実施例13では0.5μL、比較例8ではグルコピラノシルリピッド(MPLAs、InvivoGen社製)溶液(2mg/mL)を5μL添加し、リン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を加えて100μLのワクチン組成物を調製した。マウス(メス8週齢BALB/Cマウス、日本エスエルシー社)6匹に麻酔後、それぞれ調製したワクチン組成物を10μL経鼻投与する。当該投与から1週間後、再度マウスに麻酔をかけ、調製したワクチン組成物10μLを経鼻投与する。2度目の投与から更に1週間後に、マウスの血清及び鼻腔洗浄液を採取し、血清中抗原特異的IgG力価及び鼻腔洗浄液中抗原特異的IgA力価の測定をELISA法により測定を行う。(実施例14〜52、比較例9〜21)実施例14〜16、比較例9では不活化ポリオウイルス含有溶液(イモバックスポリオ皮下注、サノフィ社製)、実施例17〜19、比較例10では不活化A型肝炎ウイルス含有溶液(エイムゲン、化学及血清療法研究所社製)、実施例20〜22、比較例11では不活化日本脳炎ウイルス含有溶液(エンセバック皮下注用、化学及血清療法研究所社製)、実施例23〜25、比較例12では弱毒生ムンプスウイルス含有溶液(おたふくかぜ生ワクチン、北里第一三共ワクチン社製)、実施例26〜28、比較例13では弱毒生麻疹ウイルス含有溶液(はしか生ワクチン、北里第一三共ワクチン社製)、実施例29〜31、比較例14では弱毒生風疹ウイルス含有溶液(乾燥弱毒生風しんワクチン、北里第一三共ワクチン社製)、実施例32〜34、比較例15では破傷風トキソイド結合インフルエンザ菌b型多糖含有溶液(アクトヒブ、サノフィ社製)、実施例35〜37、比較例16では組換えHBs抗原タンパク質含有溶液(ビームゲン、化学及血清療法研究所社製)、実施例38〜40、比較例17では弱毒生黄熱ウイルス含有溶液(黄熱ワクチン、サノフィ社製)、実施例41〜43、比較例18では破傷風トキソイド含有溶液(破傷風トキソイド、デンカ生研社製)、実施例44〜46、比較例19では弱毒生水痘ウイルス含有溶液(乾燥弱毒生水痘ワクチン、阪大微生物病研究会社製)を用い、実施例47〜49、比較例20では生BCG含有溶液(乾燥BCGワクチン、日本ビーシージー製造社製)を用い、実施例50〜52、比較例21では不活化狂犬病ウイルス含有溶液(組織培養不活化狂犬病ワクチン、化学及血清療法研究所社製)を用いた。表3および実施例11〜13、比較例8と同様にワクチン組成物を調製した。また実施例11〜13、比較例8と同様の手法で免疫実験を行う。(マウス免疫実験)8週齢、メス、BALB/Cマウスについて2回、一週間間隔にて投与を行った。最終投与より一週間後、マウス血液及び鼻腔洗浄液を採取した。血液は4℃下3000Gで10分間遠心し、上清20μLにリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)300μLを加えて血清サンプルとし、鼻腔洗浄液は、BALB/Cマウスの気道下部に切れ込みを入れ、200μLのリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)を流し込み鼻腔に出てきたサンプルを回収し、鼻腔洗浄液サンプルとした。マウス血清中の肺炎球菌又はHPV16組み換えタンパク質特異的IgG力価を測定することにより、全身性免疫応答を評価した。また、マウス鼻腔洗浄液中の肺炎球菌又はHPV16組み換えタンパク質特異的IgA力価を測定することにより、粘膜免疫応答を評価した。それぞれの評価法に関しては次に示す。また、それぞれの評価結果を図1〜4に示した。(マウス血清中抗原特異的IgG力価測定方法(ELISA法))ELISA用96ウェルプレートに炭酸緩衝液にて希釈した各抗原(例えば肺炎球菌莢膜ポリサッカライド特異的IgG抗体価を測定する時には肺炎球菌莢膜ポリサッカライド抗原溶液)(2.5μg/mL)を100μLずつ添加し、一晩放置した。予め準備したTween20含有PBS(以下洗浄液)で3回ウェルを洗浄し、ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)を精製水で4g/400mLに希釈したブロッキング溶液を200μLずつ添加し、2時間室温で放置した。その後、洗浄液で3回ウェルを洗浄した。ブロッキング剤(Block Ace、DSファーマバイオメディカル社製)をリン酸緩衝液(ナカライテスク社製)で0.4g/100mLに希釈した溶液(以下試薬希釈液)を用いて、前述の血清サンプルを1/2倍ずつ15回段階希釈し、その溶液をそれぞれ50μLずつ添加し、2時間室温で放置した。その後、洗浄液で3回ウェルを洗浄し、試薬希釈液でHRP標識抗マウスIgG抗体(Goat−anti−mouse IgG Fc HRP、BETHYL社製)を10000倍に希釈したものを、100μLずつ添加し、1時間室温で放置した。その後、洗浄液で3回ウェルを洗浄し、TMB溶液(ELISA POD TMBキット、ナカライテスク社製)を100μLずつ加えた。ここに1M硫酸溶液を100μLずつ加え、当該96ウェルプレートをマイクロプレートリーダー(168−11135CAM、バイオラッド社製)で450nmの吸光度を測定した。段階希釈時の吸光度を基に、その吸光度が0.1を切らない最大の希釈倍率をマウス血清中IgG力価とし、その値をLog2の値で求めた。(マウス鼻腔洗浄液中抗原特異的IgA力価測定方法(ELISA法))基本的には抗原特異的IgG力価測定方法と同様であるが、測定サンプルは鼻腔洗浄液であり、またHRP標識抗マウスIgG抗体の代わりにHRP標識抗マウスIgA抗体(Goat−anti−mouse IgA α HRP、BETHYL社製)を用いた。それ以外の操作はすべて同様である。図1〜4に示したように、実施例では、肺炎球菌又はHPV16組み換えタンパク質特異的IgG及びIgAが高レベルで産生していた。これに対し、比較例では、肺炎球菌又はHPV16組み換えタンパク質特異的IgG及びIgAのいずれも産生量が低かった。これらの結果から、抗原と免疫賦活化剤としての特定のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩との併用が、鼻粘膜での粘膜免疫誘導に有効であることが見出された。本発明の鼻粘膜ワクチン組成物は、少なくとも一種類の抗原とともに、上述した特定の免疫賦活化剤を併用するため、安全で、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導することができる。ヒト又は動物の鼻粘膜に投与される鼻粘膜ワクチン組成物であって、少なくとも一種類の抗原(但し、インフルエンザウイルス由来抗原を除く)と、免疫賦活化剤として、Serratia、Leclercia、Rahnella、Acidicaldus、Acidiphilium、Acidisphaera、Acidocella、Acidomonas、Asaia、Belnapia、Craurococcus、Gluconacetobacter、Gluconobacter、Kozakia、Leahibacter、Muricoccus、Neoasaia、Oleomonas、Paracraurococcus、Rhodopila、Roseococcus、Rubritepida、Saccharibacter、Stella、Swaminathania、Teichococcus、Zavarzinia、Pseudomonas、Achromobacter、Bacillus、Methanoculleus、Methanosarcina、Clostridium、Micrococcus、Flavobacterium、Pantoea、Acetobacter、Zymomonas、Xanthomonas、及び、Enterobacterからなる群より選択される少なくとも1種のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩を含むことを特徴とする鼻粘膜ワクチン組成物。免疫賦活化剤と抗原との質量比(免疫賦活化剤の総質量/抗原の総質量)が、0.002〜500である請求項1記載の鼻粘膜ワクチン組成物。液性免疫を誘導するために用いられる請求項1又は2記載の鼻粘膜ワクチン組成物。抗原が、感染症由来抗原又は癌抗原である請求項1、2又は3記載の鼻粘膜ワクチン組成物。 【課題】安全で、感染症や癌の予防又は治療剤として有用で、効果的に全身性免疫応答及び粘膜免疫応答を誘導させることのできる鼻粘膜ワクチン組成物を提供する。【解決手段】ヒト又は動物の鼻粘膜に投与される鼻粘膜ワクチン組成物であって、少なくとも一種類の抗原(但し、インフルエンザウイルス由来抗原を除く)と、免疫賦活化剤として、Serratia、Leclercia、Rahnella、Acidicaldus、Acidiphilium、Acidisphaera、Acidocella、Acidomonas、Asaia、Belnapia、Craurococcus、Gluconacetobacter、Gluconobacter、Kozakia、Leahibacter、Muricoccus、Neoasaia、Oleomonas、Paracraurococcus、Rhodopila、Roseococcus、Rubritepida、Saccharibacter、Stella、Swaminathania、Teichococcus、Zavarzinia、Pseudomonas、Achromobacter、Bacillus、Methanoculleus、Methanosarcina、Clostridium、Micrococcus、Flavobacterium、Pantoea、Acetobacter、Zymomonas、Xanthomonas、及び、Enterobacterからなる群より選択される少なくとも1種のグラム陰性細菌由来のリポポリサッカライド又はその塩を含むことを特徴とする鼻粘膜ワクチン組成物。【選択図】なし