タイトル: | 特許公報(B1)_連鎖移動剤を含む歯科用硬化性組成物 |
出願番号: | 2014193776 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 6/083,A61C 13/087,C08F 2/38 |
中塚 稔之 北村 敏夫 後藤 正憲 甲斐 智明 高野 左敏 上月 礼亨 JP 5736082 特許公報(B1) 20150424 2014193776 20140924 連鎖移動剤を含む歯科用硬化性組成物 株式会社松風 390011143 中塚 稔之 北村 敏夫 後藤 正憲 甲斐 智明 高野 左敏 上月 礼亨 20150617 A61K 6/083 20060101AFI20150528BHJP A61C 13/087 20060101ALI20150528BHJP C08F 2/38 20060101ALI20150528BHJP JPA61K6/083 500A61C13/087C08F2/38 A61K 6/00−6/10 A61C 13/087 C08F 2/38 特表2007−526270(JP,A) 特開2004−307767(JP,A) 特開2012−211279(JP,A) 7 30 20141114 鶴見 秀紀 本発明は、天然歯の一部又は全体を代替し得る歯科材料、歯科切削加工用レジン材料として好適に用いられる歯科用硬化性組成物、該歯科用硬化性組成物により製造された歯科切削加工用レジン材料、レジン人工歯及びコンポジットレジン人工歯に関する。 従来から歯科分野の治療の一つとして、樹脂若しくは樹脂と無機フィラーを混合したコンポジットを人工歯の形態に成型し用いられていた。人工歯の成型時には、金型内に人工歯の材料を充填し硬化させるが、硬化時にひずみが生じ、クラックやチッピングの発生の原因になっていた。 また近年、歯科用CAD/CAMシステムが普及してきており、補綴物の作製できる程度に精度よく切削加工できるようになってきた。切削加工される材料としての柔軟さを併せ持つレジンブロック及びコンポジットレジンブロックは、セラミックス系ブロックと比較して、技工室やチェアサイドにおける咬合調整、研磨作業が容易であり、また材料自身が削れることによって対合歯を損傷しにくいといった特徴を有している。しかし、人工歯同様に金型内に材料を充填し硬化させるが、硬化時にひずみが生じ、クラックやチッピングの発生の原因になっていた。 特許文献1には、メタクリレート又はアクリレートのモノマー、及び加熱重合開始剤からなる歯科用レジン材料が開示されている。しかし、この歯科用レジン材料に含まれている(メタ)アクリレート系のモノマーは熱硬化反応速度が速いために金型が接している成形物の表面付近から急激に硬化が始まったり、またそれらモノマーの重合による体積収縮が局部的に起こったりする等、成形物内部でひずみが発生するためにクラックやチッピングが起こり均一な成形物が得られないなどの問題があった。 また、レジンブロック及びコンポジットレジンブロックは、大きな形状の加工用材料を製作する成型技術も求められるようになってきている。大きな成型物は、気泡の混入、ひずみの存在、及びクラックや欠け等がない均一な成型物を製作することは難しい。特にメチルメタクリレートは低沸点で且つ重合性が高いために、ひずみの発生や発泡による気泡の混入などが起こりやすく、均一に重合硬化させるためには長い時間を掛けて重合させる必要があるなど生産性という観点からも多くの課題があった。 特許文献2には、特定の分子量を持ったポリエチレングリコールジメタクリレートを特定量含有することによってクラックやチッピング等を発生することなく成形できるとことが開示されている。しかしながら、均一に熱硬化したレジン成形物を得ることはできず、依然に成形物内部でひずみが発生するためにクラックやチッピングが発生するなどの問題が起こるものであった。 特許文献3には、殺菌効果を得るためにテルピネン-4-オールを配合した殺菌性根管充填用シーラーの発明が記載されている。 特許文献4及び特許文献5には、安定剤としてテルピネンを配合した人工歯用材料等の歯科用材料が記載されている。特開平10-323353号公報特開2012-214398号公報特開2011-037726号公報特表2009-541375号公報特表2007-526270号公報 暫間補綴物や義歯床に用いられる大きな形状の歯科切削加工用レジン材料(レジンブロック)はポリメチルメタクリレートを主成分とする粉材とメチルメタクリレート主成分とする液材を混和後、その混和物を金型中に填入して、加圧・加熱により成型加工することによって製作するが、それらの混和物の熱伝導率が高いために金型近傍にある部分から急速に重合が始まる。そのため金型近傍と金型内部との間にひずみが発生するためクラックやチッピングが起こることが問題として挙げられる。また、メチルメタクリレートが低沸点の重合性単量体であるために、金型温度の昇温過程において発泡が起こるために成型物内部に気泡が発生するなどの問題もあった。 暫間補綴物や義歯床等を作製する為の歯科切削加工用レジン材料(コンポジットレジンブロック)は歯冠補綴物に求められる審美性や機械的特性を発揮するためにシリカ充填材や有機無機複合充填材等の充填材が高密度に配合されている。その場合、その充填材の周囲には重合性単量体が重合硬化して存在するという材料構造になっている。このコンポジットレジンブロックは例えば、金型中にこれら充填材と重合性単量体からなるペースト状の歯科用硬化性組成物を填入して、加圧・加熱により成形加工することによって製作するが、充填材と重合性単量体との熱伝導率が大きく異なることから、ブロック内部でミクロ的なひずみが発生し、クラックやチッピング等の問題が起こる原因となる。これはブロックを製作する加圧加熱時において熱の伝わり方が速い重合性単量体が急激に熱重合するためである。また金型中でペースト状の歯科用硬化性組成物を加圧加熱する成形加工時において、金型近傍にあるペーストは熱が伝わりやすいために瞬時に熱重合するものの、熱が伝わりにくい金型から離れた内部付近にあるペーストはそれらに比較して熱重合が遅れて進むこととなる。このようにペーストの位置によって熱重合の進み方が不均一になると、ブロック内部においてマクロ的なひずみが発生しクラックやチッピング等の問題が起こる原因にもなっている。また、メチルメタクリレート等の低沸点の重合性単量体を使用した場合、金型温度の昇温過程において発泡が起こるために成型物内部に気泡が発生するなどの問題もあった。 またレジン人工歯やコンポジット人工歯においては、ペースト状の混和物の原料として金型に填入して加圧・加熱する圧縮成形法やその混和物を原料として金型中に一定の圧力により打ち込む射出成型法等により、それぞれの層を積層しながら重合硬化させて、天然歯類似の形態を作り上げている。しかし、積層する層の成分組成及び厚みが均一ではなく、同一層内においても薄い部分と厚い部分が存在すること、また、金型中に混和物を填入した時の金型からの位置関係(金型近傍や金型内部等)等によって熱の伝わり方が異なる。その結果、重合硬化の速度も変わるため、ミクロ的・マクロ的なひずみが発生して、加圧・加熱による成形時において部分的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの欠陥が起こるなどの問題があった。また、それぞれの層を順次重合硬化させながら積層していく段階において、硬化した層表面に新しい層を重合硬化させるための原料を圧接した時の馴染みや重合硬化時における重合収縮応力等の影響により層間の接着性等が不十分になり、意図した物理学的特性が発現しないなどの問題も有していた。 さらに、レジン人工歯の成分として主に使用される単官能性(メタ)アクリレートモノマーは、低沸点であるために、重合硬化時において急激な温度上昇により発泡して気泡が混入しやすい状況にある。均一な状態で重合硬化させるためには長い時間を掛けて重合硬化させる必要があるなど生産性という観点からも多くの課題があった。 以上のことから、本発明の課題は暫間補綴物、義歯床及び歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を維持した上で、歯科切削加工用レジン材料として用いることができるブロック形状やディスク形状の成型物を製作する段階において成型物内部で発生するひずみを低減し、クラックやチッピングが起こらず且つ発泡による気泡混入がない加圧加熱による成形加工が可能な歯科用硬化性組成物を提供することにある。 また本発明の課題は、レジン人工歯のそれぞれの層を重合硬化させて積層しながら天然歯類似の形態を再現する加圧・加熱の成形加工段階において、各層の成分組成や層構造の厚み等の影響を受けることなく、均一に重合硬化し、レジン人工歯の内部で発生するひずみを低減することにより局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良の発生を抑制し、且つ発泡による気泡混入がない加圧加熱条件下による成形加工が可能であり、しかも各層間が強固に接着して材料特性に悪影響を与えないレジン人工歯を提供することにある。 上記課題を解決するために、歯科切削加工用レジン材料として用いるブロック形状やディスク形状の成型物を製作する加圧加熱の加工成形段階において、金型を介した熱により重合硬化するペースト状の歯科用硬化性組成物に含まれる各成分の熱伝導性の違いや、金型近傍と内部の位置によって成型物の重合速度が異なることがミクロ的・マクロ的なひずみを生じクラックやチッピングを引き起こしていること、また沸点の低い重合性単量体が含まれる場合には、金型の温度上昇により成型物内部で発泡するために気泡が混入すること等を見出し、本発明を完成させるに至った。 詳しくは歯科用硬化性組成物に含まれる成分の中でも熱伝導性が高く、熱によって急激に重合が開始する重合性単量体の熱重合速度を連鎖移動材の添加により遅延させることによって、均一な熱重合が進むことから、ミクロ的・マクロ的なひずみの発生を抑制し、クラックやチッピングを抑制しうることが可能となった。さらにこの連鎖移動材の添加は、沸点の低い重合性単量体の発泡も抑制できるために気泡の混入も抑制でき、しかも、熱伝導性が低い充填材を多量含む歯科用硬化性組成物を加圧加熱により成形加工する場合においてより効果が認められたのである。 上記課題を解決するために、それぞれの層を重合硬化させて積層しながら天然歯類似の形態を再現するレジン人工歯の成形加工段階において、レジン人工歯の成分として連鎖移動剤を配合することにより、層の成分組成、層構造の厚みや金型中における原料の位置関係等に影響を受けることなく重合硬化の速度を遅延させ、均一な重合硬化をもたらすことができ、また発泡による気泡の混入も低減でき、しかも各層間も強固に接着させることができることにより成形時に発生する各種不良を低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。 具体的には(a)重合性単量体と(b)充填材とを重量比で、10:90〜70:30の割合で含み、(a)重合性単量体100重量部に対して(c)重合開始剤を、0.01〜10重量部、(d)テルペノイド系化合物である連鎖移動剤を0.001〜1重量部含む歯科用硬化性組成物を提供する。 本発明は、暫間補綴物、義歯床及び歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を維持した上で、歯科切削加工用レジン材料として用いることができるブロック形状やディスク形状の成型物を製作する段階において成型物内部で発生するひずみを低減し、クラックやチッピングが起こらず且つ発泡による気泡混入がない加圧加熱による成形加工が可能な歯科用硬化性組成物を提供する。 重合時におけるミクロ的・マクロ的なひずみが緩和されることから、チッピングやクラック等がない均一で様々な形状の歯科切削加工用レジン材料を製造することができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は連鎖移動材の添加によって均一に熱重合が進むために、歯科用硬化性組成物中に充填材を多く配合することができ、歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を高いレベルで安定的に発現させることができる。 また、本発明の歯科用硬化性組成物は、低沸点の単官能性重合性単量体を含んでも、連鎖移動剤の添加により、重合硬化がゆっくりと均一に進むために発泡することがなく、またひずみも緩和されるために、気泡、チッピング、クラック等がない均一な成型物である歯科切削加工用レジン材料を製造することができる。さらに、本発明の歯科用硬化性組成物は連鎖移動材の添加によって均一に重合が進むために、硬度、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性を安定的に発現させることができ、またチェアサイドや技工サイドで製作した暫間補綴物や義歯床の材料特性と比較しても高いレベルを維持することができる。 本発明のレジン人工歯は、低沸点で且つ重合性が高い、単官能性(メタ)アクリレートモノマーを含んでいるにも関わらず、連鎖移動剤の効果により重合硬化の速度を遅延させて、均一に重合硬化させることができる。そのため重合硬化時におけるひずみの発生や発泡による気泡の混入を抑制することができるため、局所的な収縮、割れ、白濁、欠け、気泡などの不良を低減することができる。また、それぞれの層を積層しながら重合硬化させて天然歯類似の形態を再現するレジン人工歯の成形加工段階においても層構造の厚みや金型中における原料の位置関係等による影響が受けにくく、局所的な収縮、割れ、白濁、欠け、気泡などの不良を低減することができる。 本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するコンポジットレジン層は、熱伝導率の異なる充填材と重合性単量体を含んでいるが、連鎖移動剤の効果により重合硬化の速度を遅延させて、均一に重合硬化することから、それら両者の界面で発生するミクロ的な歪を抑制することができ、その結果局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良が起こらない。また、本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するアクリリックレジン層は熱伝導率が高いレジン成分と有機充填材を主成分として含んでいることから、加圧・加熱により急激に重合硬化が進むものの、連鎖移動剤の効果により重合硬化の速度を遅延させて、均一に重合硬化することから、ミクロ的な歪が発生しにくく、その結果局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良が起こらない。さらにそれらの同一層内における厚みが局所的に異なるものの、連鎖移動剤の効果により重合硬化の速度を遅延させることから、厚みの影響を受けることなく均一に重合硬化させることができ、その結果局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良が起こらない。また、連鎖移動剤の配合は重合度が低い状態で重合性単量体が重合硬化する。そのため、硬化した層の上に原料を置き加圧・加熱により重合硬化させて積層した場合において両者の濡れ性が向上し、強固な層間の接着を得ることができる。その結果、局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良が起こらないだけでなく、優れた物理学的特性も発現することができる。成型良品試験において使用した模擬人工歯界面接着状態確認試験における加圧試験の方向を示す図以下に本発明を詳細に説明する。本発明は、歯科用硬化性組成物であって、(a)重合性単量体と(b)充填材とを重量比で、10:90〜70:30の割合で含み、(a)重合性単量体100重量部に対して(c)重合開始剤を、0.01〜10重量部、(d)テルペノイド系化合物である連鎖移動剤を0.001〜1重量部を含むことを特徴としている。 また、本発明の歯科用硬化性組成物を成型し製造される歯科切削加工用レジン材料の成型体の大きさは、1〜350cm3であり、例えば立方体形状とすることができる。 本発明に用いることができる(a)重合性単量体は、一般に歯科分野で用いられている公知の単官能性及び多官能性の重合性単量体のうちから、何等制限なく使用することができる。一般に好適に使用される代表的なものを例示すれば、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート単量体または(メタ)アクリロイル重合性単量体である。なお、本発明においては(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリロイルをもってアクリロイル基含有重合性単量体とメタクリロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。 (a)重合性単量体として用いることができる(メタ)アクリレート重合性単量体を具体的に例示すれば次の通りである。 単官能性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート(n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート)、ヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の窒素含有化合物が挙げられる。 芳香族系二官能性単量体としては、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2(4−(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2、2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン等が挙げられる。 脂肪族系二官能性単量体としては、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 三官能性単量体としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 四官能性単量体としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 ウレタン系重合性単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ハイドロキシプロピル(メタ)アクリレートのような水酸基を有する重合性単量体と、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルメチルベンゼン、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物との付加物から誘導される二官能性または三官能性以上のウレタン結合を有するジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。 これらの(メタ)アクリレート重合性単量体以外に分子内に少なくとも1個以上の重合性基を有するオリゴマーまたはプレポリマーを用いても何等制限はない。また、フルオロ基等の置換基を同一分子内に有していても何等問題はない。 以上に記載した重合性単量体は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。 本発明の歯科用硬化性組成物を成型物の製造に使用する場合、歯科切削加工用レジン材料として使用する場合、レジン人工歯として使用する場合には、これらの単官能性単量体の中でも、50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であることが好ましい。50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体を具体的に例示するとメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの単官能性重合性単量体のなかでも沸点が70〜170の範囲であるメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、より好ましくは沸点が100〜120の範囲であるメチルメタクリレート、エチルメタクリレートを用いることである。これらの単官能性重合性単量体の中でもメチルメタクリレートを用いることが好ましい。 また、これらの単官能性重合性単量体は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。 なお、本発明のレジン人工歯においては、ブロック形状又はディスク形状等の成型物を製造するための製造条件、その成型物の状態や材料特性、そして切削加工における加工条件、レジン人工歯における物理学的特性や成形加工性等に影響を与えない程度であれば、50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体以外の単官能性及び/又は多官能性重合性単量体を併用することもできる。一般に好適に使用される代表的なものを例示すれば、アクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する重合性単量体であり、例えば上述の、単官能性単量体、芳香族系二官能性単量体、脂肪族系二官能性単量体、三官能性単量体、四官能性単量体及びウレタン系重合性単量体等を併用することもできる。 本発明の歯科用硬化性組成物に用いることができる(a)重合性単量体の含有量は特に制限はないが、歯科用硬化性組成物中において(a)重合性単量体と、(b)充填材とを、重量比で、10:90〜70:30の割合で含むことが好ましく、より好ましくは10:90〜50:50の割合、さらに好ましくは20:80〜40:60の割合である。(b)充填材に対する(a)重合性単量体の重量比の割合が10:90よりも小さい場合には、均一に充填材が分散した組成物を得ることが難しく、また70:30よりも大きい場合には十分な機械的強度を得ることができず、また表面硬度が低下するなど材料特性が低下する。また、(b)充填材が、非架橋性(メタ)アクリレートポリマーの場合では、10未満の場合には、非架橋性(メタ)アクリレートポリマーが十分に膨潤せず、成型体を得ることができず、70を超える場合には、レジン成分が多くなるために重合硬化が速くなるなど、成形技術の制御が困難になり、また十分な物理学特性が得られないなどの問題等が認められる。 本発明に用いることができる(b)充填材は一般に歯科用複合材料に用いられている公知の充填材を使用することができる。(b)充填材としては無機充填材、有機充填材、有機無機複合充填材などがあげられるが、それらは単独の使用だけでなく、充填材の種類に関係なく複数を組み合わせて使用することができる。 無機充填材を具体的に例示すると、シリカ、アルミニウムシリケート、アルミナ、チタニア、ジルコニア、種々のガラス類(フッ素ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、バリウムアルミニウムシリカガラス、ストロンチウムやジルコニウムを含むガラス、ガラスセラミックス、フルオロアルミノシリケートガラス、また、ゾルゲル法による合成ガラスなどを含む)、アエロジル(登録商標)、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、雲母、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、ゼオライト等が挙げられる。これら無機充填材は凝集体として用いてもよく、例としてシリカゾルとジルコニアゾルを混合し、噴霧乾燥及び熱処理をすることで得られるシリカ−ジルコニア複合酸化物凝集体などが挙げられる。 有機充填材としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、スチレンーブタジエンゴム等のエラストマー類、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸プロピル、ポリメタクリル酸ブチル等の単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の単独重合体である非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体と2個以上の官能基を有する重合性単量体を共重合させた架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 また、有機無機複合充填材としては、例えば充填材の表面を重合性単量体により重合被覆したもの、充填材と重合単量体を混合・重合させた後、適当な粒子径に粉砕したもの、あるいは、予め重合性単量体中に充填材を分散させて乳化重合または懸濁重合させたものが挙げられるが、これらに何等限定するものではない。 これら充填材は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状の充填材を用いることができる。また、充填材の平均粒子径は充填材の種類によって異なるものであり、無機系充填材の場合は0.05〜200μmの範囲であれば用いることができ、この好ましくは0.5〜100μmの範囲、より好ましくは1〜20μmの範囲にあることである。また、有機‐無機複合系充填材の場合は0.05〜150の範囲であれば用いることができ、この好ましくは0.5〜100μmの範囲、より好ましくは1〜20μmの範囲にあることである。さらに有機系充填材の場合は平均粒子径に特に制限はなく、いずれの範囲の平均粒子径のものでも用いることができる。なお、平均粒子径の情報は、レーザー回折式粒度測定機によって調べることができる。(b)充填材が凝集体である場合、上記の平均粒子径は凝集体の平均粒子径である。また、充填材の平均粒子径は0.5〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmの範囲にあることである。尚、平均粒子径、粒子径の変動係数等の情報は、レーザー回折式粒度測定機によって調べることができ、(b)充填材が凝集体である場合、上記の平均粒子径は凝集体の平均粒子径である。平均粒子径が0.5μm未満では、歯科用硬化性組成物にべたつきが生じ、気泡を混入しやすくなる。100μmを超えると、(b)充填材が組成物中で沈降しやすくなり、均一に分散しないおそれがある。 さらに充填材の表面を、表面処理剤等を用いた表面処理法により多機能化してもよく、これらの表面処理充填材も何等制限なく用いることができる。充填材の表面を多機能化するために用いる表面処理剤を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、各種カップリング材(チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤やシランカップリング剤)、金属アルコキシド化合物等が挙げられる。また表面処理方法を具体的に例示すると充填材を流動させた状態で上部から表面処理剤を噴霧する方法、表面処理剤を含んだ溶液中に充填材を分散させる方法及び充填材表面に数種類の表面処理剤を多層処理する方法等が挙げられる。しかしながら表面処理剤及び表面処理方法は、これらに限定されるものではない。また、これらの表面処理剤や表面処理方法はそれぞれ単独または複合的に組み合わせて用いることができる。 本発明に用いることができる(b)充填材の含有量は特に制限はないが、歯科用硬化性組成物中において30〜90重量部であることが好ましく、より好ましくは50〜90重量部である。(b)充填材の含有量が30重量部未満の場合には、十分な機械的強度を得ることができず、また90重量部を超える場合には均一に充填材が分散した歯科用硬化性組成物を得ることが難しい。 また、本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するコンポジットレジン層に用いることができる(b)充填材の含有量は特に制限はないが、コンポジットレジン層中において30〜90重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜60重量部範囲である。充填材の含有量が30重量部未満の場合には表面硬度が低下するなど材料特性が低下し、一方90重量部を超える場合にはレジン成分が少なくなるため各層間の濡れ性が低下し、十分な接着が得られないために材料特性が低下する等の問題が生じる。 これらの充填材は、公知のチタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤やシランカップリング剤により表面処理を施しても何ら問題はない。シランカップリング剤としては、例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。好ましくはγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが用いられる。凝集物や充填材の表面処理は同種のカップリング剤で行ってもよく、異種のカップリング剤で行ってもよい。 本発明の歯科用硬化性組成物は、(a)重合性単量体が、50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体である場合には、(b)充填剤は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを用いることが好ましい。非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーは、単官能性重合性単量体により膨潤するものであれば特に限定されず、(メタ)アクリレート系重合性単量体を単独に重合させたポリマーやそれら複数種類の(メタ)アクリレート系重合性単量体を共重合させたポリマー、さらに他の重合性単量体と共に共重合させたポリマー等が何等制限なく用いることができる。それらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを具体的に例示するとポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等の単独重合ポリマーやメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の中から二種類以上を組み合わせた共重合コポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーは単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの中でもポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合コポリマーを用いることが好ましい。ポリメチルメタクリレートが最も好ましい。 これら非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重合方法においても何等制限はなく、乳化重合、懸濁重合等のいずれの重合方法で製造されたものであっても何等問題はない。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの形状は球状、破砕状、中空状のいずれの形状であっても何等制限なく用いることができるが、好ましくは球状である。非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径(50%)は1〜300μmの範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは1〜200μmの範囲、さらに好ましくは5〜150μmの範囲である。また、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量は1万〜200万の範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは5万〜150万の範囲であり、さらに好ましくは10万〜150万である。 また、有機充填材、無機充填材、有機‐無機複合充填材や有機・無機化合物、さらに有機・無機顔料等の表面を非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーで被覆する等の表面改質処理や複合化処理等を二次的に加工したものであっても、何等制限なく用いることができる。 本発明の歯科用硬化性組成物に用いられる非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量は30〜90重量部の範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは40〜90重量部、より好ましくは50〜90重量部、さらに好ましくは50〜80重量部、最も好ましくは60〜80重量部である。 非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量が30重量部未満の場合は50〜200℃の沸点を有する単官能性重合性単量体が過剰となり膨潤が均一に起こらないという問題がある。一方、90重量%を越える場合は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーが過剰となり、硬化が均一に起こらないため、成型時に不均一なものができるという問題がある。またレジン人工歯に用いた場合には、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量が30重量部未満の場合は単官能性重合性単量体が過剰となるため、重合硬化が速くなり成形性に悪影響を及ぼしたり、また十分な物理学特性を得ることができない。一方、90重量部を越える場合は、単官能性重合性単量体が過剰量の非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーを均一に膨潤させることができず、成型性に問題が発生する。 なお、本発明のレジン人工歯の物理学的特性や審美性、そして成形性等に影響を与えない程度であれば、(b)充填材として、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー以外の充填材を用いることができる。これらの充填材は単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体に対して膨潤しないものであれば有機成分、無機成分及びそれらの混合物または複合物が該当し、何等制限なく使用することができる。 非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー以外の充填材を具体的に例示すると水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム等の炭酸塩、酸化アルミニウム等の金属酸化物、フッ化バリウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム等の金属フッ化物、タルク、カオリン、クレー、雲母、ヒドロキシアパタイト、シリカ、石英、種々のガラス類(ナトリウム、ストロンチウム、バリウム、ランタン等の重金属及び/またはフッ素を含むフルオロアルミノシリケート、ボロシリケート、アルミノボレート、フルオロアルミノボロシリケート等のガラス類)等の無機系充填材、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、スチレンーブタジエンゴム等のエラストマー類、単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体と2個以上の官能基を有する重合性単量体を共重合させた架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー等の有機系充填材、無機充填材の表面を重合性単量体により重合被覆したもの、無機充填材と重合単量体を混合・重合させた後、適当な粒子径に粉砕したもの、あるいは、予め重合性単量体中に充填材を分散させて乳化重合または懸濁重合させたもの等の有機‐無機複合系充填材等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの充填材は単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。 非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー以外の充填材は球状、針状、板状、破砕状、鱗片状等の任意の形状の充填材を用いることができる。また充填材の平均粒子径(50%)は1〜200μmの範囲であれば特に制限はないものの、好ましくは5〜100μmの範囲、さらに好ましくは10〜80μmの範囲である。 さらに非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー以外の充填材の表面を、表面処理剤等を用いた表面処理法により多機能化してもよく、これらの表面処理充填材も何等制限なく用いることができる。充填材の表面を多機能化するために用いる表面処理剤を具体的に例示すると界面活性剤、脂肪酸、有機酸、無機酸、各種カップリング材、金属アルコキシド化合物等が挙げられる。また表面処理方法を具体的に例示すると充填材を流動させた状態で上部から表面処理剤を噴霧する方法、表面処理剤を含んだ溶液中に充填材を分散させる方法及び充填材表面に数種類の表面処理剤を多層処理する方法等が挙げられる。しかしながら表面処理剤及び表面処理方法は、これらに限定されるものではない。また、これらの表面処理剤や表面処理方法はそれぞれ単独または複合的に組み合わせて用いることができる。 本発明に用いることができる(c)重合開始剤は特に限定されず、公知の重合開始剤、例えばラジカル発生剤が何等制限なく用いられる。重合開始剤としては使用直前に混合することにより重合を開始させるもの(化学重合開始剤)、加熱や加温によりにより重合を開始させるもの(熱重合開始剤)、光照射により重合を開始させるもの(光重合開始剤)に大別されるが、本発明においてはいずれの重合開始剤も何等制限なく用いることができる。また、これらの重合開始剤は重合様式や重合方法に関係なく、単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの重合開始剤は重合の安定化や重合の遅延等を実現するためにマイクロカプセルに内包する等の二次的な処理を施しても何等問題なく用いることができる。これらの重合開始剤の中でも、熱重合開始剤を用いることが好ましい。 熱重合開始剤として具体的に例示するとベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。これらの中でも有機過酸化物の使用が好ましく、より好ましくはベンゾイルパーオキサイドである。 これらの重合開始剤は重合特性を制御したり、安定性を確保するために二次的な加工を施しても何等制限はなく用いることができる。 化学重合開始剤としては、有機過酸化物/アミン化合物、有機過酸化物/アミン化合物/スルフィン酸塩、有機過酸化物/アミン化合物/バルビツール酸又はバルビツール酸誘導体、有機過酸化物/アミン化合物/ボレート化合物からなるレドックス型の重合開始系、酸素や水と反応して重合を開始する有機金属型の重合開始剤系等が用いられる。また、スルフィン酸塩類やボレート化合物類は酸性基を有する重合性単量体との反応により重合を開始させることもできるため用いることができる。 以下に化学重合開始剤の具体例を例示するがこれらに限定されるものではない。 有機過酸化物を具体的に例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエード等が挙げられる。 また、上記アミン化合物を具体的に例示すると、アミン基がアリール基に結合した第二級または第三級アミンが好ましく、具体的に例示するとp−N,N−ジメチル−トルイジン、N,N−ジメチルアニリン、N−β−ヒドロキシエチル−アニリン、N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−アニリン、p−N,N−ジ(β−ヒドロキシエチル)−トルイジン、N−メチル−アニリン、p−N−メチル−トルイジン等が挙げられる。 また、スルフィン酸塩類を具体的に例示すると、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム、ベンゼンスルフィン酸リチウム、p−トルエンスルフィン酸ナトリウム等が挙げられる。 バルビツール酸及びその誘導体を具体的に例示すると、バルビツール酸、1,3−ジメチルバルビツール酸、1,3−ジフェニルバルビツール酸、1,5−ジメチルバルビツール酸、5−ブチルバルビツール酸、5‐エチルバルビツール酸、5‐イソプロピルバルビツール酸、5‐シクロヘキシルバルビツール酸、1,3,5−トリメチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−エチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−n−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−イソブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−tert−ブチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロペンチルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−シクロヘキシルバルビツール酸、1,3−ジメチル−5−フェニルバルビツール酸、1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸、1−バンジル−5−フェニルバルビツール酸及びチオバルビツール酸類、ならびにこれらの塩(特にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましい)、例えば、5−ブチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸ナトリウム、1,3,5−トリメチルバルビツール酸カルシウム、及び1−シクロヘキシル−5−エチルバルビツール酸ナトリウム等が挙げられる。 また、ボレート化合物を具体的に例示すると、トリアルキルフェニルホウ素、トリアルキル(p−フロロフェニル)ホウ素(アルキル基はn−ブチル基、n−オクチル基、n−ドデシル基等)のナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、テトラブチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。 さらに有機金属型の重合開始材を具体的に例示すると、トリフェニルボラン、トリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物等の有機ホウ素化合物類等が挙げられる。 過硼酸塩として具体的に例示すると、過硼酸ナトリウム、過硼酸カリウム、過硼酸アンモニウム等が、また過マンガン酸塩として具体的に例示すると、過マンガン酸アンモニウム、過マンガン酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム等が、さらに過硫酸塩として具体的に例示すると、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等が挙げられる。加熱や加温による熱重合開始剤としては、上記有機過酸化物の他にアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物類が好適に使用される。 光重合開始剤としては、光増感剤からなるもの、光増感剤/光重合促進剤等が用いられる。以下に光重合開始剤の具体例を例示するが、これらに限定されるものではない。 光増感剤として具体的に例示すると、ベンジル、カンファーキノン、α−ナフチル、アセトナフセン、p,p´−ジメトキシベンジル、p,p´−ジクロロベンジルアセチル、ペンタンジオン、1,2−フェナントレンキノン、1,4−フェナントレンキノン、3,4−フェナントレンキノン、9,10−フェナントレンキノン、ナフトキノン等のα−ジケトン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル類、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、2−ヒドロキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ベンジル−ジエチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−プロパノン−1等のα−アミノアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジル(2−メトキシエチルケタール)等のケタール類、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1−ピロリル)フェニル〕−チタン、ビス(シクペンタジエニル)−ビス(ペンタンフルオロフェニル)−チタン、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−ジシロキシフェニル)−チタン等のチタノセン類等が挙げられる。 光重合促進剤として具体的に例示すると、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジ−n−ブチルアニリン、N,N−ジベンジルアニリン、p−N,N−ジメチル−トルイジン、m−N,N−ジメチル−トルイジン、p−N,N−ジエチル−トルイジン、p−ブロモ−N,N−ジメチルアニリン、m−クロロ−N,N−ジメチルアニリン、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッド、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドエチルエステル、p−ジメチルアミノベンゾイックアシッドアミノエステル、N,N−ジメチルアンスラニリックアシッドメチルエステル、N,N−ジヒドロキシエチルアニリン、p−N,N−ジヒドロキシエチル−トルイジン、p−ジメチルアミノフェニルアルコール、p−ジメチルアミノスチレン、N,N−ジメチル−3,5−キシリジン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチル−α−ナフチルアミン、N,N−ジメチル−β−ナフチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジメチルヘキシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、2,2´−(n−ブチルイミノ)ジエタノール等の第三級アミン類、N−フェニルグリシン等の第二級アミン類、5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等のバルビツール酸類、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジバーサテート、ジオクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)塩、テトラメチル−1,3−ジアセトキシジスタノキサン等のスズ化合物類、ラウリルアルデヒド、テレフタルアルデヒド等のアルデヒド化合物類、ドデシルメルカプタン、2−メルカプトベンゾオキサゾール、1−デカンチオール、チオサルチル酸等の含イオウ化合物等が挙げられる。 さらに、光重合促進能の向上のために、上記光重合促進剤に加えて、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、α−オキシイソ酪酸、2−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等のオキシカルボン酸類の添加が効果的である。 これらの重合開始剤は重合様式や重合方法に関係なく、単独又は、2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの重合開始剤は必要に応じてマイクロカプセルに内包するなどの二次的な処理を施しても何等問題はない。 また、これらの重合開始剤は(b)充填材としての非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの製造時において使用するものであり、製造した非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー中にその重合開始剤が残存していることがある。そのため重合開始剤が残存している非架橋性メタ)アクリレート系ポリマーを本発明のレジン人工歯に用いる場合は、(c)重合開始剤の代わり又は一部として用いても何等問題はない。 本発明の硬化性歯科用組成物に用いる(c)重合開始剤の含有量は、使用用途及び歯科切削加工用レジン材料としてのブロックを製造する方法に応じて適宜選択することができるが、(a)重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜2重量部の範囲である。(c)重合開始剤の配合量が0.01重量部未満の場合、重合が十分に進行せずに機械的強度が低下し、10重量部を超える場合は、組成物からの析出を招くおそれがある。また、(a)重合性単量体が50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であり、(b)充填剤が非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーである場合には、重合開始剤の含有量が0.1重量部以上であれば、重合硬化を均一になり、残留未反応モノマーの存在や重合不良等により十分な物理学的特性が得られないことを抑制できる。また、5重量部以下とすると、重合硬化性が速くなって単官能性重合性単量体の重合速度を制御できず、ディスク作製時に操作余裕が取れず、すぐに硬化するという問題を抑制できる。 また、コンポジットレジン人工歯を構成するコンポジットレジン層に用いる場合には、(a)重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲であれば特に制限なく用いることができる。好ましくは0.05〜5の範囲であり、より好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。(c)重合開始剤の配合量が0.01重量部未満の場合、重合が十分に進行せずに材料特性が低下し、一方10重量部を超える場合は急激に重合硬化が起こるため局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良が発生する可能性がある。 さらに、(a)重合性単量体が50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であり、(b)充填剤が非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーであるレジン人工歯に用いる場合には、(a)重合性単量体100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜2重量部の範囲である。重合開始剤の含有量が0.1重量部より少ない場合は、重合硬化が均一に起こらず、残留未反応モノマーの存在や重合不良等により十分な物理学的特性が得られない。また5重量部より多い場合は、重合硬化が速すぎるために単官能性重合性単量体の重合速度を制御できず、均一に成型できないことから、物理学的特性が低下し、すぐに硬化するという問題が発生する。 本発明の硬化性歯科用組成物に用いる(d)連鎖移動剤は、公知の化合物が何等制限無く使用することができる。具体的に例示すると、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどのメルカプタン化合物、リモネン、ミルセン、α−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、β−ピネン、α−ピネンなどのテルペノイド系化合物、α−メチルスチレンダマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動材の中でもテルペノイド系化合物が特に好ましい。具体的にはα−テルピネン、β−テルピネン、γ−テルピネンが特に好ましい。また、これら連鎖移動剤は、1種だけでなく2種以上を組み合わせて用いることができる。特には、γ―テルピネンが最も好ましい。これら連鎖移動剤の添加量は、(a)重合性単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、また、特に0.1重量部以上0.5重量部以下であることが好ましい。(d)連鎖移動剤の配合量が0.001重量部未満の場合、歯科用硬化性組成物の重合時に生じる内部のひずみを十分に抑制できないおそれがある。また、1重量部を超えると硬化後の組成物中に未反応の重合性単量体の残存量が多くなり、機械的強度が低下するおそれがある。 また、(a)重合性単量体が50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であり、(b)充填剤が非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーである場合には、連鎖移動剤の添加量は、(a)重合性単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、また、特に0.1〜0.5重量部であることが好ましい。連鎖移動剤の含有量が0.001重量部未満の場合は重合硬化速度を遅延させることができず、成形時にひずみが発生して局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良や発泡による気泡の混入を抑制することができない。一方1重量部以上の場合は重合硬化が進まず十分な物理学的特性を得ることができない。 また、本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するコンポジットレジン層に用いる場合には(A)重合性単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲であることが好ましい。(d)連鎖移動剤の含有量が0.001重量部未満の場合、加熱加圧による成形時において急激な重合硬化が起こるため局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良が発生する可能性がある。一方1重量部を超える場合は重合硬化反応が抑制されるため未反応の重合性単量体の存在割合が多くなり、その結果材料特性が低下する恐れがある。 また、(a)重合性単量体が50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であり、(b)充填剤が非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーであるレジン人工歯に用いる場合には、連鎖移動剤の添加量は、(a)重合性単量体100重量部に対して、0.001〜1重量部であることが好ましく、0.001〜3重量部の範囲が好ましく、また、特に0.1〜0.5重量部であることが好ましい。連鎖移動剤の含有量が0.001重量部未満の場合は重合硬化速度を遅延させることができず、成形時にひずみが発生して局所的な収縮、割れ、白濁、欠けなどの不良や発泡による気泡の混入を抑制することができない。一方3重量部以上の場合は重合硬化が進まず十分な物理学的特性を得ることができない。 また、本発明の歯科用硬化性組成物には、上記の(a)〜(d)の成分以外に、フュームドシリカに代表される賦形剤、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2、5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を必要に応じて任意に添加できる。 本発明のコンポジットレジン人工歯は義歯床と化学的に接着することができるベース層を含む少なくとも1層がアクリリックレジン層であることが特徴である。本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するアクリリックレジン層に用いることができる(e)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体は一般に歯科分野で用いられている公知の単官能性のアクリロイル基及び/またはメタクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系重合性単量体の中から何等制限なく使用することができる。なお、本発明においては単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体はアクリロイル基含有重合性単量体とメタクリロイル基含有重合性単量体の両者を包括的に表記する。 (e)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体を具体的に例示すれば次の通りである。単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン等のシラン化合物類、2−(N、N−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の窒素含有化合物が挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体は単独だけでなく複数を組み合わせて用いることができる。 本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するアクリリックレジン層に用いることができる(e)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量は特に制限はないが、その中でも10〜70重量部の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜50重量部の範囲、さらに好ましくは20〜40重量部の範囲である。単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体の含有量が10重量部未満の場合は義歯床との接着性が悪くなり、一方70重量部を超える場合は、レジン成分の重合収縮が大きくなるため成形性が悪くなり、安定した寸法安定性を得ることができない等の問題が生じる。 本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するアクリリックレジン層に用いることができる(f)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーは単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体により膨潤するものであれば特に限定されず、(メタ)アクリレート系重合性単量体を単独に重合させたポリマーやそれら複数の(メタ)アクリレート系重合性単量体を共重合させたポリマー、さらに他の単官能性重合性単量体と共に共重合させたポリマー等が何等制限なく用いることができる。それらの(メタ)アクリレート系ポリマーを具体的に例示するとポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソプロピル(メタ)アクリレート、ポリイソブチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート等の単独重合ポリマーやメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の中から二種類以上組み合わせた共重合コポリマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーは単独だけでなく、複数を組み合わせて用いることができる。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの中でもポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、メチルメタクリレートとエチルメタクリレートの共重合コポリマーを用いることが好ましい。 これら非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重合方法においても何等制限はなく、乳化重合、懸濁重合等のいずれの重合方法で製造されたものであっても何等問題はない。これらの非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの形状は球状、破砕状、中空状のいずれの形状であっても何等制限なく用いることができるが、好ましくは球状である。 非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの平均粒子径(50部)は1〜300μmの範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは1〜200μmの範囲、さらに好ましくは5〜150μmの範囲である。また、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの重量平均分子量は1〜200万の範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは5〜150万の範囲であり、さらに好ましくは10〜150万である。 また、有機系充填材、無機系充填材、有機-無機複合系充填材や有機・無機化合物、有機・無機顔料等の表面を非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーで被覆する等の表面改質処理や複合化処理等の二次的な加工を施したものも、何等制限なく用いることができる。 本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するアクリリックレジン層に用いることができる(f)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量は30〜90重量部の範囲であれば何等制限なく用いることができるが、好ましくは50〜90重量部、さらに好ましくは60〜80重量部である。 非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーの含有量が30重量部未満の場合は義歯床との接着性が悪くなり、一方90重量部を超える場合は、レジン成分の重合収縮が大きくなるため成形性が悪くなり、安定した寸法安定性を得ることができない等の問題が生じる。 また、本発明のコンポジットレジン人工歯を構成するコンポジットレジン層又はアクリリックレジン層には、上記の(a)〜(d)の成分以外に、フュームドシリカに代表される賦形剤、2−ヒドロキシ−4−メチルベンゾフェノンのような紫外線吸収剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2、5−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノール等の重合禁止剤、変色防止剤、抗菌材、着色顔料、その他の従来公知の添加剤等の成分を必要に応じて任意に添加できる。 本発明の歯科用硬化性組成物を用いた歯科切削加工用レジンの製造方法は何等制限されることはない。例えば熱重合開始剤を添加した歯科用硬化性組成物を金型へ充填し、加圧・加熱により作製する方法、光重合開始剤及び熱重合開始剤を添加した歯科用硬化性組成物を金型へ充填し、光照射により表層部分を重合させた後に、加熱することにより内部まで十分に硬化させる方法などが挙げられる。 本発明の歯科用硬化性組成物を用いて製造される歯科切削加工用レジン材料のサイズ、形状については何等制限されることはない。例えば、12×14×18mmの角柱状、厚み10〜30mm×直径98mmの円板状などが挙げられる。 本発明のコンポジットレジン人工歯の製造方法は何等制限されることはない。例えばペースト状又は粉材と液材を混和した餅状の原料を金型に充填して加圧加熱する圧縮成形法又は原料を金型中に一定の圧力により打ち込む射出成型法等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの中でもコンポジットレジン層又はアクリリックレジン層をそれぞれ単独で順次、加熱加圧により重合硬化させて積層していく製造する方法が好ましい。 本発明のコンポジットレジン人工歯がコンポジットレジン層からなる単層又は多層構造である場合は義歯床との化学的な接着は期待できないため、接着性プライマーを用いたり、又は機械的な勘合を得るために維持孔を形成したりしても何等制限はない。また、本発明のコンポジットレジン人工歯において少なくとも1層がコンポジットレジン層で、且つ義歯床と化学的に接着することができるベース層を含む少なくとも1層がアクリリックレジン層から構成される場合は層の数やその種類には何等制限はなく、多層構造をとることができる。またその形状や大きさにも制限はなく、様々な形状や大きさのものであっても何等問題はない。[歯科用硬化性組成物] 以下に(a)重合性単量体と(b)充填材とを重量比で、10:90〜70:30の割合で含み、(a)重合性単量体100重量部に対して(c)重合開始剤を、0.01〜10重量部、(d)テルペノイド系化合物である連鎖移動剤を0.001〜1重量部含む本発明の歯科用硬化性組成物の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例にて調製した歯科用硬化性組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。(1)クラック確認試験目的:サイズの大きいブロック硬化体作製時におけるひずみの評価方法:硬化性組成物をアルミ合金製金型に充填し、上下にナイロンフィルムを挟み、アルミ合金製平板で圧接した。その後、熱プレス機(松風社製)を用いて、プレス圧2t、プレス板温度100℃、プレス時間30分の条件下で熱プレスを行い、φ100×14mmのブロック硬化体を得た。これを5回繰り返し行い、5個のブロック硬化体を作製した。ブロック硬化体は目視において観察し、一個でもクラックが生じている場合には「あり」、クラックが認められなかった場合を「なし」と評価した。(2)曲げ強度試験目的:ブロック硬化体から切り出した試験体の曲げ強度の評価方法:歯科用硬化性組成物をアルミ合金製金型に充填し、上下にナイロンフィルムを挟み、アルミ合金製平板で圧接した。その後、熱プレス機(松風社製)を用いて、プレス圧2t、プレス板温度95℃、プレス時間10分の条件下で熱プレスを行い、12×14×18mmのブロック硬化体を得た。そのブロック硬化体を精密切断機を用いて18×2×2mmの試験片に切断後、表面をバフ研磨することにより試験体(5個作製)を得た。万能試験機を用いて、支点間距離10mm、クロスヘッドスピード1.0mm/minで試験を実施し、試験体5個の平均値で評価した。(3)落錘試験 目的:ブロック硬化体から切り出した試験体の耐衝撃性の評価方法:曲げ強度試験と同様に12×14×18mmのブロック硬化体を作製した。そのブロック硬化体を精密切断機を用いて12×14×2mmの試験片に切断後、表面をバフ研磨することにより試験体(10個作製)を得た。ステンレス製ステージに試験体を配置し、重量110gのステンレス球体を高さ3cmより自由落下させた。試験体に変化が見られない場合は落下高さを1cm上げていき、試験体に亀裂または破壊が生じた落下距離を破壊距離とし、試験体10個の平均値で評価した。 本発明の実施例に使用した化合物及び化合物の略号を以下に示す。UDMA:ウレタンジメタクリレートBis-GMA:2、2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンTEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレートBPO:ベンゾイルパーオキサイドR−972:アエロジルR-972(日本アエロジル社製)γ−MPS:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランシリカ充填材の平均粒子径、細孔容積、BET比表面積のカタログ値を表1に示した。シリカ充填材(1)、(2)は適宜シラン処理を行い歯科用組成物の調製に使用した。 表2に示した組成にてレジン組成物(I1〜I9)をそれぞれ作製した。 表2記載のレジン組成物を用いて、表3の組成に従い硬化性組成物(実施例1〜7、比較例1、2)を調製した。その硬化性組成物を用いてブロック硬化体を製造後、クラック確認試験を実施し、その結果を表3に示した。 実施例1〜3は連鎖移動剤としてα−テルピネンを添加したレジン組成物I1を用い、且つ(b)充填材の添加量を変化させた系である。充填材の添加量を増加させた歯科用硬化性組成物においてもクラックが発生することなく、φ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。 実施例4は、連鎖移動剤としてα−テルピネンを添加したレジン組成物I1を用い、且つ(b)充填材の種類を変更した系である。充填材の種類を変更してもクラックが発生することなくφ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。 実施例5は、連鎖移動剤としてα−テルピネンを添加した系であるが、レジン組成物I1と比較して重合性単量体の一部を変更したレジン組成物I2を用いた系である。(a)重合性単量体の種類を変更してもクラックが発生することなくφ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。 実施例6、7においては、連鎖移動剤種をそれぞれβ−テルピネン、γ−テルピネンと変更したレジン組成物I3又はI4を用いた系である。連鎖移動剤種を変更してもクラックが発生することなくφ100×14mmのブロック硬化体を作製することができた。 比較例1、2においては、レジン組成物中に連鎖移動剤を添加していないレジン組成物I8又はI9を用いた系である。硬化組成物中に連鎖移動剤種を含んでいないことにより、ブロック硬化体に作製時に割れが生じた。 次に表2記載のレジン組成物を用いて、表4の組成に従い硬化性組成物(実施例8〜11、比較例3)を調製した。その硬化性組成物を用いてブロック硬化体を製造後、曲げ強度試験、落錘試験を実施し、その結果を表4に示した。 実施例8〜11は、連鎖移動剤の添加量を変化させたレジン組成物により調製した硬化性組成物を用いた系である。連鎖移動剤の添加量を増加させることで、製造したブロック硬化体の落錘試験による破壊距離が長くなり、耐衝撃性が向上した。実施例11は実施例8〜10に比較して、連鎖移動剤の添加量が多いレジン組成物により調製した硬化性組成物を用いていることから、曲げ強度がやや低下し、破壊距離も短くなった。 比較例3はレジン組成物中に連鎖移動剤を含んでいない硬化性組成物を用いていることから、ブロック硬化体製造時にクラックが入ると共に、落錘試験による破壊距離も実施例8〜11と比較して短かった。 次に、(a)重合性単量体は、50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であり、(b)充填材は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーである、本発明の歯科用硬化性組成物の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例・参考例及び比較例にて調製した歯科用硬化性組成物の性能を評価する試験方法は次の通りである。 本発明の実施例に使用した化合物及び化合物の略号を以下に示す。(a:50〜200℃の沸点を有する単官能性重合性単量体)MMA:メチルメタアクリレート 沸点 101℃NBMA:n−ブチル(メタ)アクリレート沸点 162℃(b:非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー)PMMA(1):ポリメチルメタクリレート粉末 D50 平均粒子径 50μm、重量平均分子量80万PMMA(2):ポリメチルメタクリレート粉末 D50 平均粒子径 100μm、重量平均分子量80万PEMA:ポリエチルメタクリレート粉末 D50 平均粒子径 50μm、重量平均分子量80万PMMA(3):ポリメチルメタクリレート粉末 D50 平均粒子径500μm、重量平均分子量200万(c:重合開始剤)BPO:ベンゾイルパーオキサイド(d:連鎖移動剤)α−テルピネンβ−テルピネンγ−テルピネンリモネン(e)(a)以外の重合性単量体EMA:エチレンジメタクリレート 沸点 260℃ 各試験の試験方法と評価方法を以下に示す。(1)クラック及び発泡、局所的な収縮確認試験目的:歯科用硬化性組成物を用いた大きいサイズの成型物作製時におけるクラック及び発泡、変形の評価方法:粉材及び液材を混和(混和比:調製済み単量体/ポリマー=40/60)した歯科用硬化性組成物をアルミ合金製金型に充填し、上下にナイロンフィルムを挟み、アルミ合金製平板で圧接した。その後、熱プレス機(松風社製)を用いて、プレス圧2t、プレス板温度80℃、プレス時間30分で熱プレスを行い、φ100×20mmの硬化体を得た。これを5回繰り返し行い、5個の硬化体を作製した。硬化体は目視において観察し、クラックもしくは内部発泡、変形の度合いと4段階で評価し、◎ 非常に良い ○ やや良い △ 少し問題があるが臨床的に問題がない × 問題があり、臨床的に使用できない。(2)曲げ強度成型体を4mm×4mm×14mmにカットし、万能試験機にてクロスヘッドスピード1mm/1分にて中央部に荷重をかけ、破断する荷重を測定し、三点曲げ強さを測定した。N数は6個としてその平均値を求めた。曲げ強度は80MPa以上が臨床上好ましく、100MPa以上がさらに好ましい。 歯科切削加工用レジン材料の作製方法は、表1記載の配合割合で、(a)(c)(e)(d)を混合して、液成分とし、(b)(f)を混合して粉成分とする。液成分と粉成分とを表1記載の配合割合になるように混合し、人工歯形状の金型内に充填し、100度で1分間加熱する。冷却は放冷にて行い歯科切削加工用レジン材料を得た。 以上の結果より比較例4の(d)成分を含まない場合、発泡が大きく臨床上使用できない。また(a)成分の沸点が高い実施例25は、使用に耐えうるものの、クラックや局所的な収縮が大きくなる。[コンポジットレジン人工歯]次に、単層もしくは多層構造のコンポジットレジン人工歯であって、そのコンポジットレジン層が (a)重合性単量体 (b)充填材 (c)重合開始剤 (d)連鎖移動剤 を含む本発明のコンポジットレジン人工歯、及び、少なくとも1層が(a)重合性単量体(b)充填材(c)重合開始剤(d)連鎖移動剤からなるコンポジットレジン層と義歯床と化学的に接着することができるベース層を含む少なくとも1層が(e)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体 (f)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー (c)重合開始剤 (d)連鎖移動剤 からなるアクリリックレジン層から構成される本発明のコンポジットレジン人工歯の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例にて調製したコンポジットレジン人工歯の性能を評価する試験方法は次の通りである。 (1)曲げ試験評価目的:コンポジットレジン組成物を成形した試験体の曲げ強度を評価する。 評価方法: 調製したコンポジットレジン組成物をステンレス製金型(25×2×2mm:直方体型)に充填後、金型プレス圧:3t、成型温度:ベース層100℃・エナメル層120℃、プレス時間:10分の条件にて加圧・加熱成形を行った。その後、金型から成形物を取り出した後、37℃、24時間水中に浸漬したものを試験体とした。 曲げ試験の測定はインストロン万能試験機(インストロン5567,インストロン社製)を用い支点間距離20mm,クロスヘッドスピード1mm/minにて曲げ強度を測定した。 (2)成型良品試験評価目的:模擬人工歯金型(層厚みが移行的に異なるベースアクリリックレジン層とコンポジットレジン層を積層した2層構造:図1)を用いて成形した2層構造(アクリリックレジン組成物とコンポジットレジン組成物)の成型物における成型特性を評価する。 評価方法:図1に示した模擬人工歯金型(10mm×10mm×5mm)の下部に位置する移行的に厚みが変化しているベース層にアクリリックレジン組成物を充填後、加圧・加熱成形を行った。その後、硬化したアクリリックレジン層の上部に位置する移行的に厚みが変化しているコンポジットレジン層にコンポジットレジン組成物を充填後、加圧・加熱成形を行った。この成形体物を100個作製し、模擬人工歯に発生する割れや欠け等を確認することにより成形特性を評価した。なお、加圧・加熱成形は金型プレス圧:3t、ベース層成形温度:100℃、コンポジットレジン層成形温度:120℃、プレス時間:10分の条件にて行った。その結果、成形物に全く割れや欠け等の不良がないものを良品とし、良品率を算出した。良品率90部以上を適合範囲とする。(3)界面接着状態確認試験 評価目的:模擬人工歯金型(層厚みが移行的に異なるベースアクリリックレジン層とコンポジットレジン層を積層した2層構造:図1)を用いて成形した2層構造(アクリリックレジン組成物とコンポジットレジン組成物)の成型物に強制的な加圧負荷を与えた時の界面(ベース層とコンポジットレジン層の接着面)に生じる影響を観察する。評価方法:成型良品試験により良品と判断された模擬人工歯100個の中から無作為に10個を抜き取り試験体として用いた。この試験体の耐圧縮性(加圧試験)をインストロン万能試験機(インストロン5567,インストロン社製)を用いて測定した。試験体の加圧方向は図2.に示す。測定条件は、クロスヘッドスピード1mm/minであり、0.5mm変位させた時の界面に生じる影響を観察し評価した。評価基準は、○:不変、△:部分的に白化、×:界面全体が白化又は界面で分離とした。 本発明の実施例に使用した化合物及び化合物の略号を以下に示す。 (a)重合性単量体UDMA:ウレタンジメタクリレートBis-GMA:2、2−ビス(4−(3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパンTEGDMA:トリエチレングリコールジメタクリレート(b)充填材シリカ:平均粒子径0.9μm、BET比表面積:4.0m2/g、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランによりシラン処理を行い組成物の調製に使用した。(c)重合開始材BPO:ベンゾイルパーオキサイド(e)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体MMA:メチルメタアクリレート(f)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーPMMA:ポリメチルメタクリレート 50部平均粒子径 50μm(d)連鎖移動剤α-テルピネンβ-テルピネンγ-テルピネン 表6に示した組成に従い、アクリリックレジン組成物(B1〜B9及びBC1)を調製した。 表7に示した組成に従い、コンポジットレジン組成物(E1〜E11及びEC1)を調製した。 調製したコンポジットレジン組成物を用いて曲げ試験を実施し、その結果を表8に示す。 コンポジットレジン組成物E1〜E3は(b)成分である充填材の配合量を変更した系である。(b)充填材の量が増えるほど曲げ強さは高くなる。 コンポジットレジン組成物E2とE4は、(a)重合性単量体の種類(UDMAとBis-GMA)が一部変更した系である。連鎖移動剤の種類と配合量は同じであるものの、重合性単量体の種類の影響により、曲げ強さに少し差があるものの十分な曲げ強さを示した。 コンポジットレジン組成物E2・E5・E6は、(c)重合開始材の配合量を変更した系である。連鎖移動剤の種類と量は同じであり、曲げ強さに影響することなく同等レベルであった。 コンポジットレジン組成物E2・E7・E8は、(d)連鎖移動剤の配合量は同じであるものの種類(γ-テルピネン、α-テルピネン、β-テルピネン)を変更した系である。連鎖移動剤の種類が変わっても曲げ強さに影響することなく同等レベルであった。 コンポジットレジン組成物E2・E9・E10・E11は、(d)連鎖移動剤の配合量を変更した系である。連鎖剤移動材の配合量が0.06(E9)〜0.6(E10)重量部の範囲においては曲げ強度に影響を与えず同等レベルであったが、1.0(E11)重量部においては曲げ強さが少し低下することが認められた。 コンポジットレジン組成物EC1は、(d)連鎖移動剤が未配合であるため、気泡を多く巻き込み、且つクラックも発生することから曲げ試験体を作製することが出来なかった。 次に、調製したコンポジットレジン組成物及びアクリリックレジン組成物を用いて成型良品試験及び界面接着状況確認試験を実施し、その結果を表9に結果を示す。 表9に示すように実施例26〜41は、連鎖移動剤を配合したアクリリックレジン組成物及びコンポジットレジン組成を用いて模擬人工歯を成形した。その結果、気泡の発生は全く認められず、一方クラックは一部発生したものの極端に少なく、良品率がすべて90部以上であった。またその良品である模擬人工歯を用いて界面接着状況確認試験を実施した結果、界面には問題が認められず強固に二つの組成物が接着していることが確認された。 表9に示すように比較例5及び比較例6は、連鎖移動剤が配合されていないコンポジットレジン組成物を用いて模擬人工歯を成形した。いずれの場合においても気泡やクラックの発生が非常に多く、模擬人工歯を成形できない状況であり良品率が比較例5で16部、比較例6で8部と非常に低いことが認められた。その中でも良品であった試料を取出して界面接着状況確認試験を実施した結果、すべての試料において二つの組成物が接着している界面の全体が白化する又は分離脱落する状況が確認された。 コンポジットレジン人工歯の組成に、連鎖移動剤を配合することにより、均一に重合硬化させることが可能となり、連鎖移動剤の配合による材料特性の低下も認められず、局所的に発生する収縮、割れ、白濁、欠けを抑制し、優れた物理学特性を達成した。 次に、(a)50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体(b)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー(c)重合開始剤(d)連鎖移動剤を含む本発明のレジン人工歯の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例・参考例及び比較例にて調製したレジン人工歯の性能を評価する試験方法は次の通りである。(1)クラック及び発泡確認試験目的:レジン組成物の成形時におけるクラック、内部発泡、局所的な収縮の評価方法:液材組成物と粉材組成物を各実施例の配合比にて混和し、その混和物をアルミ合金製金型(キャビティ部分:10mm×10mm×10mm)へ填入後、上からナイロンフィルムを挟み、アルミ合金製平板で圧接した。その後、熱プレス機(松風社製)を用いて、プレス圧2t、プレス板設定温度100℃、プレス時間10分で熱プレスを行い、10mm×10mm×10mmの硬化体を得た。硬化体は目視において観察し、「クラック」もしくは「内部発泡」、「局所的な収縮」に関して4段階で評価し(◎:非常に良い、○:やや良い、△:少し問題があるが臨床的に問題がない、×:問題があり臨床的に使用できない)、◎〜△を良品とした。良品率は90部以上が望ましい。(2)表面硬度試験目的:レジン組成物の成形時における表面硬度(物性)の評価方法:上述の(1)クラック及び発泡確認試験で成型した硬化体の表面硬度をビッカース硬度計を用いて測定を行った。5点の表面硬度を測定し、平均値を算出した。レジン人工歯としては15以上、好ましくは18以上の硬度が適合範囲とする。 本発明の実施例に使用した化合物及び化合物の略号を以下に示す。(a)50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体MMA(メチルメタアクリレート) 沸点 101℃(b)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーPMMA(1)(ポリメチルメタクリレート粉末)平均粒子径(D50)50μm、重量平均分子量80万PMMA(2)(ポリメチルメタクリレート粉末)平均粒子径(D50)100μm、重量平均分子量80万(c)重合開始剤BPO:ベンゾイルパーオキサイド(d)連鎖移動剤α-テルピネンβ-テルピネンγ-テルピネン(e)(a)以外の重合性単量体EMA:エチレングリコールジメタクリレート 沸点 260℃(f)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー以外の充填材FASG:フルオロアルミノシリケートガラス粉末 平均粒子系(D50)10μm 人工歯の作製方法は、表10記載の配合割合で、(a)(c)(e)(d)を混合して、液成分とし、(b)(f)を混合して粉成分とする。液成分と粉成分とを表10記載の配合割合になるように混合し、人工歯形状の金型内に充填し、100度で1分間加熱する。冷却は放冷にて行い人工歯を得た。 実施例42、43は(b)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー(ポリメチルメタクリレート粉末)の違いを検討したものであり、いずれのポリメチルメタクリレート粉末を用いてもクラック、発泡、局所的な収縮の問題となる不良は認められなかった。 また実施例44は(b)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー(ポリメチルメタクリレート粉末)を複数種類組み合わせて添加した系であるが、発泡や局所的な収縮はわずかであり、クラックは認められなかった。 実施例45は(b)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー(ポリメチルメタクリレート粉末)に(f)成分として(b)成分の非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー以外の充填材を添加したものであるが、発泡や局所的な収縮はわずかであり、クラックは認められなかった。 実施例43、46、49は連鎖移動剤の違いを検討したものであり、いずれの連鎖移動剤を用いてもクラックの発生及び発泡は認められなかった。 実施例47、48、49、50及び比較例7は連鎖移動剤の添加量を検討したものである。実施例47、48、49、50はクラックの発生や局所的な収縮はわずかに認められた程度であったが、比較例7の場合、(d)連鎖移動剤が添加されていなかったため、内部発泡が多数認められた。 実施例51及び52は単官能性重合性単量体に(e)成分として(a)成分以外の重合性単量体を添加した系である。いずれの場合においてもクラックの発生及び局所的な収縮はわずかに認められた程度であった。 実施例53、54は液材組成物と粉材組成物の配合比を検討したものである。実施例53は発泡がわずかに認められた程度であった。実施例54においては問題なく成型できていたことを確認した。 実施例42から54及び比較例7の表面硬度(物性)に関しては、(d)連鎖移動剤が(a)成分100重量部に対して3重量部添加している実施例50で表面硬度が少し低下する傾向が認められたものの、その低下は問題ないレベルであると考えられたため、連鎖移動剤の添加の有無による表面硬度(物性)への影響はなかったと判断できた。 実施例55は、実施例の成分組成のうち、(a)成分をすべて(e)成分に置換したものである。実施例55はクラックや局所的な収縮が発生していることを確認した。(a)重合性単量体と(b)充填材とを重量比で、10:90〜70:30の割合で含み、(a)重合性単量体100重量部に対して(c)重合開始剤を、0.01〜10重量部、(d)テルペノイド系化合物である連鎖移動剤を0.001〜1重量部含む成型用歯科用硬化性組成物。前記(d)連鎖移動剤がαテルピネン、βテルピネン、γテルピネンの内一つ以上である請求項1記載の成型用歯科用硬化性組成物。(a)重合性単量体は、50〜200℃までの沸点を有する単官能性重合性単量体であり、(b)充填材は、非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマーである、請求項1または2に記載の成型用歯科用硬化性組成物。請求項1、2、3のいずれかに記載の成型用歯科用硬化性組成物を1〜350cm3に成型した歯科切削加工用レジン材料。請求項1、2、3のいずれかに記載の成型用歯科用硬化性組成物により製造されたレジン人工歯。請求項1、2、3のいずれかに記載の成型用歯科用硬化性組成物により製造されたコンポジットレジン層を備える単層もしくは多層構造のコンポジットレジン人工歯。前記コンポジットレジン人工歯は、多層構造であって、少なくとも1つの前記コンポジットレジン層と、(e)単官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体(f)非架橋性(メタ)アクリレート系ポリマー(c)重合開始剤、及び、(d)連鎖移動剤を含む少なくとも1層のアクリリックレジン層とを備える請求項6に記載のコンポジットレジン人工歯。 【課題】歯科医療の分野において、歯科切削加工用レジン材料として好適に使用できる歯科用硬化性組成物の提供。歯冠補綴物に求められる硬さ、曲げ強度、圧縮強度等の機械的特性や審美性を維持した上で、歯科切削加工用レジン材料として用いるブロック形状の製作時にブロック内部で発生する歪を低減し、クラックやチッピングが起こらない加圧加熱による成形加工が可能な歯科用硬化性組成物の提供。【解決手段】(a)重合性単量体と(b)充填材とを重量比で、10:90〜70:30の割合で含み、(a)重合性単量体100重量部に対して(c)重合開始剤を、0.01〜10重量部、(d)テルペノイド系化合物である連鎖移動剤を0.001〜1重量部含む歯科用硬化性組成物。多層構造であって、歯科用硬化組成物により製造されたコンポジットレジン層とアクリリックレジン層とを備えるコンポジットレジン人工歯。【選択図】なし