タイトル: | 公開特許公報(A)_室温保存用凍結乾燥製剤 |
出願番号: | 2014183992 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 38/00,A61K 38/22,A61K 47/26,A61K 9/19,C07K 14/58 |
川村 洋央 吉田 俊彦 JP 2015078177 公開特許公報(A) 20150423 2014183992 20140910 室温保存用凍結乾燥製剤 第一三共株式会社 307010166 石橋 公樹 100146581 北野 範子 100113583 竹元 利泰 100161160 児玉 博宣 100164460 金原 玲子 100119622 川村 洋央 吉田 俊彦 JP 2013187908 20130911 A61K 38/00 20060101AFI20150327BHJP A61K 38/22 20060101ALI20150327BHJP A61K 47/26 20060101ALI20150327BHJP A61K 9/19 20060101ALI20150327BHJP C07K 14/58 20060101ALN20150327BHJP JPA61K37/02A61K37/24A61K47/26A61K9/19C07K14/58 11 OL 19 4C076 4C084 4H045 4C076AA29 4C076BB11 4C076CC50 4C076DD67 4C076FF63 4C076GG07 4C084AA03 4C084BA01 4C084BA19 4C084BA44 4C084CA62 4C084DB02 4C084MA44 4C084NA03 4H045BA18 4H045CA40 4H045DA32 4H045EA20 4H045GA45 本発明は、室温保存において安定な凍結乾燥製剤に関する。 従来の注射用ハンプ製剤は、添加剤としてマンニトールを配合した凍結乾燥製剤である。この製剤は、安定性の観点から冷所保存が必要であり、医療現場からは、より取り扱いが簡便な、室温保存が可能な製剤が求められていた。室温保存を貯法とする製剤については、一定の温度変動の下での保存でも品質を保証するため、動的な準苛酷条件(40〜50℃下、1〜3ヶ月間保管)においても、可能な限り品質が保たれていることが必要とされる。 凍結乾燥製剤において、主薬(ペプチド、タンパク質)の化学的な保存安定性を改善する添加物としては、シュクロース(精製白糖)等の二糖類が知られている(特許文献1)が、この文献では、実験室レベルの少量を用いて、主薬の化学的安定性を評価しているのみであり、凍結乾燥製剤の品質の観点からも安定であるかは不明であった。特に、精製白糖は、代表的な安定化剤の一つであり、医薬品添加物としての使用実績量も多く製剤設計における使用量の自由度が高いといえる。しかしながら、凍結乾燥製剤の製造において乾燥対象物の量や濃度を高くすると、安定性やその他の製剤特性を含め、重要な品質が損なわれる危険性がある。日本特許第3555961号公報 本発明は、精製白糖を主成分として一定量以上含み、室温保存において、主薬が化学的に安定であると共に、その他の製剤品質も安定な、生理活性ペプチドを有効成分として含有する凍結乾燥製剤を提供することを課題とする。 カルペリチドの凍結乾燥製剤の再溶解液は、直接患者へ投与される可能性があるため、注射用水により等張が得られるように調製される必要がある。再溶解液量が少ない場合、薬液がバイアルに残留することによる投与保証量の低下の影響が大きくなるため、一定量以上の再溶解液を用いることが望ましく、精製白糖の量は当該液量で等張を得るため、一定量以上を使用する必要がある。 凍結乾燥製剤において、凍結乾燥体の外観形状と含有水分量は、製品の重要品質を確保する上で指標となる製剤特性である。外観形状が不良である凍結乾燥体は、再溶解時の溶解不良や溶解時間の長時間化等を引き起こす可能性があり、医療現場において問題が生じる可能性がある。また、凍結乾燥体の含有水分量が多い場合、凍結乾燥体としてのガラス転移温度を引き下げて、主薬の化学的安定性を損ねる原因、あるいは、保存中の凍結乾燥体の外観形状変化を促す原因となる可能性がある。 凍結乾燥体の外観形状を適切に確保するには、製造(真空凍結乾燥の工程中)及び凍結乾燥後の製品保管において凍結乾燥体が外観異常を来たさないことが必要となる。 製造工程(真空凍結乾燥)の途上において、凍結乾燥体に外観異常が生じる代表的な原因として、水蒸気による既乾燥部のコラプス(微小構造の融解様の崩壊)が挙げられる。また、製品保管における凍結乾燥体の外観変化の代表的な現象例として、暴露温度に対する凍結乾燥体の熱耐性の限界に起因するシュリンク(形状の縮み)等が挙げられる。 製造時のコラプスは、真空凍結乾燥工程の昇華過程において、既乾燥部における水蒸気の通過経路の狭窄または閉塞による水蒸気通過(昇華)の妨害、即ち、水分除去プロセスの異常により促進される。真空凍結乾燥工程においては、製剤容器に充填された凍結乾燥用液の上面から下面方向(深さ方向)へ向かって昇華が進行するため、真空凍結乾燥プロセスにおいて、コラプスは水分除去効率の低下要因になり、凍結乾燥体の水分量を高く推移させることとなる。即ち、製造段階で、既に異常な外観形状と高い水分量を有する凍結乾燥体が得られる場合があり、このとき、高い水分量は、製造段階における外観形状の変化の結果であると共に、凍結乾燥体のガラス転移温度を低下させ製剤保管中の化学的安定性の低下やシュリンクの原因にもなりうる。 製品保管時などの熱暴露によるシュリンクは、凍結乾燥体のガラス転移温度が、保管温度に対して適切に設計されていない場合に生じる可能性が高い。凍結乾燥体が暴露される温度が、凍結乾燥体に含まれる成分のガラス転移点を上回る場合、凍結乾燥体における化学反応速度が大きくなる、あるいは、凍結乾燥体の形状が変化するなどの確率が高くなる。例えば、主成分がシュクロースである凍結乾燥体の場合、凍結乾燥体が暴露される温度がシュクロースのガラス転移温度以下のとき、シュクロースは非晶質固体として存在するが、ガラス転移温度付近またはそれ以上の温度に暴露されたとき、相状態はゴム領域となる可能性が高くなる。こうした相変化が起こる場合、ペプチドなどの医薬活性成分を含有する凍結乾燥体においては、化学的反応速度が顕著に大きくなり、シュクロースによる活性成分の化学的な安定化効果は失われる。即ち、シュクロースの相変化は、上で述べた、凍結乾燥体の形状変化という物理的な特性変化の一因になると同時に、主薬の化学的安定化効果の低下原因にもなる。 このように、精製白糖を一定量以上用いた凍結乾燥製剤において、製剤の品質を適切に維持できる製剤設計を行う必要があり、また、製剤設計においては、製剤品質の確保のため、外観形状や水分含量を指標とすることができる。 本発明者等は、室温保存において安定な生理活性ペプチドの凍結乾燥製剤について鋭意検討した結果、内径22.1mmの円筒形ガラスバイアルを用いて、精製白糖の含有量を100〜1000mgで変動させた凍結乾燥製剤を作製し、製造時の特性評価や熱苛酷保管後の安定性試験を行った結果、精製白糖300〜500mg、溶解液の白糖濃度125mg/mL以下の製剤では良好な外観形状と水分含量を維持したこと、精製白糖が100mg又は1000mgの製剤では、製造時または熱苛酷試験において良好な外観形状と水分含量を保てなかったことを見出し、さらに検討を進めて本発明を完成するに至った。 本発明は、以下を提供するものである。(1) 有効量のペプチド性薬物、及び、容器の内部断面積に対して、約0.50〜1.85mg/mm2の精製白糖、を含有し、且つ、室温保存において安定であること、を特徴とする凍結乾燥製剤。(2) 40℃、1ヶ月保管後において、凍結乾燥体が良好な外観形状を呈し、且つ、含有水分が1%以下であることを特徴とする、(1)の凍結乾燥製剤。(3) 50℃、1ヶ月保管後において、凍結乾燥体が良好な外観形状を呈し、且つ、含有水分が1%以下であることを特徴とする、(1)の凍結乾燥製剤。(4) 精製白糖の含有量が、容器の内部断面積に対して、約0.75〜1.35mg/mm2、である、(1)の凍結乾燥製剤。(5) 容器が、内径が約20〜29 mmの円柱バイアルであり、精製白糖を約300〜500mg含有する、(1)の凍結乾燥製剤。(6) 円柱バイアルの内径が約22.1 mmである(5)の凍結乾燥製剤。(7) 精製白糖濃度が140mg/mL以下の溶解液を凍結乾燥することで製造された、(1)乃至(6)の何れかに記載の凍結乾燥製剤。(8) ペプチド性薬物として、1mgのカルペリチドを含有する、(1)〜(7)の何れかに記載の凍結乾燥製剤。(9) 固形成分として、実質的に精製白糖及びペプチド性薬物からなる(1)〜(8)の何れかに記載の凍結乾燥製剤。(10) 精製白糖140mg/mL以下、及び、有効量のペプチド性薬物、を含有する水性溶液を、容器に、該容器の内部断面積に対して、約0.50〜1.85mg/mm2となるように充填し、当該充填された容器を凍結乾燥する工程を含む、室温保存において安定であること、を特徴とする凍結乾燥製剤の製造方法。(11) 製造される凍結乾燥製剤において、良好な製剤品質特性を有する製剤の割合が約80%以上であることを特徴とする、(10)に記載の製造方法。 本発明に係る凍結乾燥製剤は、室温保存において、有効成分の化学的安定性のみならず、凍結乾燥体の物理的安定性も確保されているため、流通、医療現場での保管場所として冷蔵庫等の設備を必要としないばかりでなく、使用に当っての薬剤の準備においても室温に戻すような手間も無く、更に注射溶液による再溶解時には、短時間で均一な溶液を得ることができる。図1は、本実施例で採用した外観評価の判定基準において、○判定基準(良好な形状)に相当する外観例の写真である。図2は、本実施例で採用した外観評価の判定基準において、△判定基準(おおむね良好な形状)に相当する外観例の写真である。図3は、本実施例で採用した外観評価の判定基準において、×判定基準(不良形状)に相当する外観例の写真である。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明は、有効量のペプチド性薬物、及び、容器の内部断面積に対して、約0.50〜1.85mg/mm2の精製白糖、を含有し、且つ、室温保存において安定であること、を特徴とする凍結乾燥製剤を提供する。 本発明において、「凍結乾燥製剤」とは、所定の組成からなる成分の溶液(「溶解液」という)を、容器に所定量注入し、真空凍結乾燥法により乾燥させた固形物(「凍結乾燥体」、又は、「凍結乾燥ケーキ」という)とそれを含む密閉の容器施栓系からなる製剤である。医療現場での使用時には、所定の水性成分を所定量容器に添加して、凍結乾燥体を溶解(「再溶解」という)して、溶液として対象へ投与される。 本発明において「容器の内部断面積」とは、凍結乾燥に用いられる容器の胴ストレート部の水平方向の断面における内部断面積をいう。ここで、容器の胴ストレート部とは、容器下部の垂直方向の一定範囲において、水平方向の断面が均一な部分である。内部断面積とは、容器の水平方向の断面において、容器壁の内側の面積を意味する。 本発明において、「室温保存」とは、製剤の製造から使用までの期間、冷蔵庫、冷凍庫、保温庫などの温度調節設備を用いずに保存されることを意味する。このような室温保存が可能な医薬品は、その保存条件において、所定の期間安定した品質を維持することが確認されていなければならない。室温条件を貯法とする製剤では、一定範囲での暴露温度の変動が想定されるため、特に、40℃、50℃、60℃といった高温において、一定期間(例えば、1ヶ月間〜6ヶ月間)保存した、いわゆる熱苛酷保管での品質の安定性が確認されていることが推奨されている。 本発明において、「製剤が安定」、「品質が安定」または「製剤品質が安定」とは、重要な製剤特性及び/又は製品品質が良好に維持されること、例えば、製剤中に含有される有効成分が化学的に安定であること、及び、凍結乾燥体を注射用水等で再溶解する際の溶解性が良好に維持されることなど、製剤が物理的にも安定であること、を意味する。有効成分が安定であるとは、有効成分を含む凍結乾燥製剤中で、当該有効成分が、含量低下、活性低下、純度低下、分解物の生成(類縁物質の生成)などが少ないことなどを意味する。 更に、このような凍結乾燥製剤の化学的安定性や物理的特性・安定性に影響を及ぼす可能性のある特性として、凍結乾燥体の外観(色、形状等)、含有水分量等の物性も挙げることができ、これらの物性も重要な製剤特性とみなすことができる。即ち、凍結乾燥製剤の安定性試験を経てもこのような物理的特性の少なくとも一つ,好ましくは全てが良好に保持されていることが望ましい。例えば、外観形状は、凍結乾燥体の再溶解性に影響する。また、凍結乾燥工程で生じる形状変化は水分除去効率に影響し、変化が生じると水分が適切に除去されず、製造時の水分含量が多くなる可能性が高くなる。また、水分含量が多くなると凍結乾燥体の主基材のガラス転移温度を低下させ、主薬の化学的安定性が低下する可能性、また、製剤保管時の形状変化が生じる可能性が高くなる。このように、凍結乾燥体の外観形状と水分含量は、密接に関連して製剤の重要品質に影響を及ぼす可能性のある製剤特性であり、安定性や溶解性などの重要な製品品質を確保する上で指標となる。 常温(25℃)での保存安定性を確保するためには、製品のガラス転移温度は常温より20℃ほど高い、45℃以上であることが望ましいとされる(F. Franksら「蛋白質・核酸・酵素」p.810-816, 41(6), 1996)。精製白糖のガラス転移温度は、上述の通り、水分0%で70℃前後、保有水分が1%では40〜50℃、2%では30〜40℃と考えられる。そのため、精製白糖を主成分とする凍結乾燥製剤が、室温(25℃)での保存安定性を確保するためには、凍結乾燥体の含水率としては1%以下であることが望ましい。 本明細書において、数値の記載に「約」が付加されている場合、明示された数値の上下30%の範囲が許容されることを意味する。ここで、「約」が数値範囲の記載に付加された場合、前記した許容される範囲は、下限の数値の下30%から上限の値の上30%までが許容されることを意味する。許容される範囲は、好ましくは20%、より好ましくは15%、さらに好ましくは10%、さらにより好ましくは5%である。 次に、本発明の凍結乾燥製剤の各成分について詳細に説明する。 本発明の凍結乾燥製剤は、有効成分としては、様々なペプチド性薬物を用いることができるが、好ましくはカルペリチドである。本明細書中において、「カルペリチド」とは、28個のアミノ酸:SLRRSSCFGG RMDRIGAQSG LGCNSFRY(配列番号1)からなるペプチドホルモンであり、α―ヒト型心房性ナトリウム利尿ペプチド(「α―hANP」又は、単に「hANP」とも表記される)とも呼ばれる。カルペリチドは、例えば、生体に由来する組織からの抽出・精製、遺伝子組み換え法等による生物工学的合成、ペプチドの固相合成法のような化学合成等、公知の種々の方法により製造することができる(例えば、再表01/85945号公報等参照)。また、カルペリチドを1バイアル中に1mg含有する、冷暗所保存の凍結乾燥製剤が、「ハンプ注射用1000」として、販売されている。本発明の凍結乾燥製剤においても、生理活性ペプチドとしてカルペリチドを用いる場合、1バイアル当たりの含有量を1mgとするのが好ましい。 本発明の凍結乾燥剤には、安定化剤として、所定量の精製白糖を含有する。本発明の精製白糖は、第十六改正日本薬局方に収載されている精製白糖を好適に使用することができる。精製白糖は、本発明の凍結乾燥製剤における有効成分ペプチドに、常温保存時の化学的安定性を与え、かつ、その他の製剤品質や製剤特性に悪影響を及ぼさない外観及び最終水分含有量を達成できる添加量である必要がある。凍結乾燥工程において、溶解液の水分は液面(凍結乾燥体の上部)のみから蒸発するため、水分除去の効率は容器内の固体成分の深さに大きな影響を受ける。容器内の固体成分が浅い場合、水分が効率よく除去され易い。一方で、容器内の固形成分が深い場合水分が除去されにくくなり、最終的な凍結乾燥体の含有水分量が高くなる可能性がある。すなわち、凍結乾燥体の物理的安定性は、凍結乾燥に用いられる容器の胴部の内部断面積に対する精製白糖の含有量に依存する。本発明において、容器の内部断面積に対する精製白糖の含有量は、約0.50〜1.85mg/mm2であり、好ましくは約0.65〜1.60mg/mm2であり、より好ましくは約0.75〜1.35mg/mm2、さらにより好ましくは約1.30mg/mm2である。 精製白糖の、凍結乾燥体当りの含有量は、容器のサイズに応じて適宜選択される。例えば、容器として、内径22.1mmの円筒形バイアルを採用した場合の、凍結乾燥体当りの精製白糖量は、通常約200〜700mgであり、好ましくは約250〜600mgであり、より好ましくは約300〜500mgであり、さらにより好ましくは、約500mgである。 本発明の凍結乾燥製剤に用いられる容器は、容器の下方部に胴ストレート部を含むものであり、凍結乾燥操作の温度変化により、変質や変形を生じないものであれば、バイアル、アンプル、注射用シリンジ等、様々なものを使用することができる。胴ストレート部分の断面は様々な形であってよく、例えば、四角形、六角形などの多角形(多角柱バイアル)でもよく、円形(円柱バイアル)であっても良い。容器の大きさとしては、凍結乾燥が可能な大きさであれば特に制限はないが、通常利用される円筒形バイアルの内径は12mm〜50mm程度であり、採用する精製白糖量に応じて適切な内径のバイアルを選択することができる。例えば、精製白糖を300mg用いる場合、内径が約14.6〜29mm(好ましくは、約16〜24mm)の円筒形バイアルが採用される。また、精製白糖として500mgを用いる場合、内径が約19〜34mm(好ましくは、約21〜31.4mm)の円筒形バイアルを用いることができる。<精製白糖以外の添加剤> 本発明の凍結乾燥製剤は、実質的にカルペリチドと精製白糖のみからなる製剤であってもよく、また、必要に応じて、その他の成分(精製白糖以外の安定化剤、緩衝剤、pH調整剤、界面活性剤、溶解補助剤、酸化防止剤、無痛化剤、等張化剤など)をさらに含有しても良い。これら、主薬と精製白糖以外の成分の含有量としては、凍結乾燥体のガラス転移温度に、実質的に影響しない、あるいは、該影響が小さい量、および/もしくは精製白糖による主薬の安定化効果を低下させない量である必要があり、、当該成分を用いる場合の含有量は、その総量として、好ましくは、精製白糖の20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下であり、さらにより好ましくは、1重量%以下である。 精製白糖以外の安定化剤としては、トレハロース、ラクトース、マルトースなどの精製白糖と同じく二糖類に属する糖、従来安定化剤として用いられていたグリシン、アラニン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、メチオニンなどのアミノ酸、ヘパリン、デキストラン硫酸などの多糖類、ソルビトール、マンニトールなどの糖アルコール、卵アルブミン、血清アルブミンなどの蛋白質などを好適に使用できる。これらのうち、二糖類が好ましく、とりわけトレハロースが好ましい。これらの精製白糖以外の安定化剤の添加量は特に制限されないが、精製白糖の20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましい。 本発明で用いられる緩衝剤としては、例えばリン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン・塩酸緩衝液などが挙げられる。緩衝剤は、必要に応じ、再溶解後の水溶液のpHを調整し、カルペリチドの溶解性や安定性を保つために使用することができる。緩衝剤としては、再溶解後の水溶液のpHが4.0〜6.5となるものが好ましく、また、カルペリチドの塩析を防止するため、ナトリウム塩やカリウム塩などの電解質を含有しないものが好ましく、特に好ましい緩衝液として、例えば、グリシン・塩酸緩衝液が挙げられる。緩衝剤の添加量は、凍結乾燥製剤を製造する際の凍結乾燥直前の溶解液中の濃度が、1〜100mMの範囲となるようにするのが好ましい。 本発明で用いられる界面活性剤としては、例えばポリソルベート20、ポリソルベート80、プルロニックF−68、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、二種以上を併用してもよい。界面活性剤として、ポリソルベート系界面活性剤が好ましく、とりわけポリソルベート80が好ましい。界面活性剤は、例えば、水溶液中でのカルペリチドの、容器への吸着を防止するため、必要に応じて添加することができる。界面活性剤の添加量は、凍結乾燥製剤を製造する際の凍結乾燥直前の溶解液中の濃度が、0.001〜2.0重量%の範囲であるのが好ましい。 本発明の凍結乾燥用組成物には、その再溶解液のpHを調整するため、さらに酸、又は、塩基を、pH調整剤として含んでもよい。本発明の凍結乾燥製剤にさらに添加してもよい酸としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)、有機酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)等から選択される1種又は複数種の酸が挙げられる。 なかでも塩酸、酢酸が好ましい。これらの酸の量は特に限定されず、凍結乾燥用組成物の再溶解液のpHを所定範囲に調整し得る量で当該凍結乾燥用組成物に添加すればよい。本発明で用いられる酸化防止剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、L-システイン塩酸塩、チオグリコール酸などの自己酸化性(還元性)を有する物質、メチオニンなどのアミノ酸類が挙げられる。但し、カルペリチドと還元性物質が共存する場合、ペプチドがジスルフィド結合の還元開裂により分解する可能性がある。そのため、ペプチドの酸化を防止する物質として、好ましくはメチオニンなどのアミノ酸類が挙げられ、精製白糖1重量部に対し、0.001〜0.1重量部の範囲で用いることが好ましい。 本発明で用いられる等張化剤としては、例えば、ブドウ糖などの単糖類、マンニトールなどの糖アルコール類、塩化ナトリウムなどの無機塩類が挙げられ、好ましくはブドウ糖などの単糖類もしくはマンニトールなどの糖アルコール類が挙げられ、精製白糖1重量部に対し、0.001〜0.2重量部の範囲で用いることが好ましい。本発明で用いられる無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール、クロロブタノールなどのアルコール類や、塩酸リドカインなどが挙げられ、凍結乾燥製剤を製造する際の溶解液中の濃度が、0.001〜2.0重量%の範囲で用いることが好ましい。<凍結乾燥製剤> 本発明の凍結乾燥製剤は、公知の方法で製造することができる。例えば所定量のカルペリチド又はその塩、と、所定量の精製白糖を、所定量の水又は適当な水性溶媒(例えば、水とアルコールの混合物)に溶解して溶解液を調製し、所望により酸を添加して水性液のpHを調整し、さらに、フィルター(例えば、孔径0.22μmの除菌フィルター)等を用いて除菌濾過することにより得られる、無菌の溶解液をバイアル又はアンプルに注入し、この容器を凍結乾燥して固体状とすることにより、凍結乾燥剤を得ることができる。 上記凍結乾燥剤の調製における溶解液の調製は、公知の方法に従って、有効成分ペプチドおよび精製白糖を水又は水性溶媒(たとえば、水とアルコールの混合物)に溶解し、必要に応じて酸を添加してpHを調整すればよい。また、有効成分ペプチドおよび精製白糖を溶解させる順序は特に限定されない。 上記凍結乾燥剤の調製において、水性液中における有効成分ペプチドの濃度は、最終製品において医薬品として承認された用量となるように適宜設定されるが、通常0.01mg/mL〜5mg/mLである。カルペリチドを1mg含む凍結乾燥製剤において、バイアル当たりの溶解液の充填量が5mLの場合、溶解液のカルペリチド濃度は0.2mg/mLに調整される。 上記の凍結乾燥に供される水性溶液中の精製白糖の濃度は、他の添加物の組成にもよるが、下限は通常約10mg/mL以上である。凍結乾燥に供される溶液に含まれる固形成分の濃度は、凍結乾燥工程の水分除去効率に影響を与えるため、凍結乾燥終了時に低い水分含量を達成するためには、精製白糖濃度は低いことが望ましい。溶解液中の精製白糖濃度の上限としては通常140mg/mL以下であり、好ましくは125mg/mL以下である。 滅菌に用いるフィルターは、ポアサイズ0.22μm以下の滅菌用フィルターを使用するのが好ましい。滅菌用フィルターとしては、例えば、デュラポア(登録商標、日本ミリポア株式会社製)またはザルトポア2(登録商標、ザルトリウス株式会社製)などが挙げられる。 上記の工程により調整された溶解液は、容器に一定量充填され、当該充填された容器が凍結乾燥に供される。この際の容器当たりの溶解液の充填量は、容器のサイズに依存して変動するが、通常充填液の深さ(液深)が、3mm〜20mm程度(好ましくは5mm〜17mm程度)である。液深が小さすぎると凍結乾燥体が形成されず、逆に大きすぎる場合には、容器下部における水分除去が効率的に進行しない可能性がある。 凍結乾燥方法としては、例えば、常圧下で冷却凍結する凍結過程、溶質に拘束されない自由水を減圧下で昇華乾燥する一次乾燥過程、溶質固有の吸着水や結晶水を除去する二次乾燥過程の3つの単位操作による方法が挙げられる。凍結過程の冷却温度は−60℃〜−40℃が好ましく、一次乾燥過程の温度は−50℃〜0℃が好ましく、さらに二次乾燥過程の温度は4℃〜40℃が好ましい。一次乾燥過程の真空圧力は0.1〜50Paにコントロールされることが好ましく、特に0.5〜30Paにコントロールされることが好ましい。凍結乾燥後の乾燥庫内は復圧させる。復圧の方法としては、無菌の空気または不活性ガス(例えば、無菌窒素ガス、無菌ヘリウムガスなど)を庫内に送入して約60〜90kPaまで一次復圧し、次いで必要に応じて、更に復圧(二次復圧)する方法が好ましい。バイアルの打栓は、一次復圧後に行うのが好ましい。<製剤の使用> 本発明の凍結乾燥製剤は、使用前に用時注射用水あるいは輸液(例えば、生理食塩液、ブドウ糖液等)に再溶解して、注射、点滴等に用いることができる。但し、カルペリチドは生理食塩水で溶解する場合、溶解条件が適切でないとゲル化する恐れがあるため、再溶解後の薬物濃度の調整や使用時の状態への留意を要する。また、ブドウ糖液は、患者が糖尿病又はそのリスクを有する場合に、使用が制限される可能性がある。そのため、本発明の凍結乾燥製剤の再溶解には注射用水を用いることが望ましい。 本発明の凍結乾燥剤は、例えば、皮下注射用組成物をはじめとして、静脈注射用組成物、筋肉注射用組成物、点滴注射用組成物、無針注射用組成物等の種々の注射用組成物として用いることができる。この場合、注射時の有効成分ペプチドの注射用組成物中の濃度(凍結乾燥剤の場合は、再溶解濃度)は、通常約0.01mg/mL〜60mg/mL、好ましくは約0.05mg/mL〜20mg/mLである。 本発明の凍結乾燥剤を用時に再溶解して注射に用いる場合、公知の、例えば濾過滅菌等の無菌調製法により上記水性液を調製するのが好ましい。また本発明の凍結乾燥剤を調製する前に、糖類および界面活性剤、又は糖類、界面活性剤および必要に応じてその他の添加物との混合物を、予め脱パイロジェン処理等の除菌処理を施してから用いることもできる。 さらに、本発明の凍結乾燥製剤は、急性心不全の予防剤又は治療剤のみならず、血圧の上昇や心臓への負荷が関係する疾患の予防剤又は治療剤としても有利に使用できる。本発明の凍結乾燥製剤は、単剤として優れた血圧降下作用、心臓保護作用を有し、心疾患の予防剤又は治療剤として有効な作用を示すが、さらに他の医薬成分と併用(多剤併用)することもできる。 以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。実施例に示されたものは、本発明の実施形態の一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。 本実施例においては、凍結乾燥製剤の容器として、「ハンプ注射用1000」用円筒形ガラスバイアル(胴外径24.5 mm、内径22.1mm)を採用した。<実施例1:精製白糖の配合条件の検討(白糖プラセボ製剤)> 主な製剤成分として精製白糖が配合され、良好な製品特性を有する凍結乾燥製剤の製剤設計を見出すため、製剤処方及び製造工程(凍結乾燥用液)における精製白糖の配合条件(以下、「白糖配合条件」)を検討した。 本試験における精製白糖量の検討範囲は以下の理由により定めた。カルペリチド現行製品(製品名:「ハンプ注射用1000」)の用法用量においては、製剤1本(バイアル1本)を注射用水10 mLで再溶解することから、本検討においては、医療現場での投薬準備の効率性を維持もしくは向上する観点から、再溶解液の種類は変更せず、量は現行製品以下(10 mL以下)であることが望ましい。一方、医療現場における調剤において、再溶解後の溶液をシリンジ等で抜き取った後の、製剤容器への付着などによる溶液の残存率(残液率)は、溶液量が小さいほど大きくなるため、製品設計においては、この残液率ができるだけ小さくなるように再溶解液量を設定する必要がある。したがって、今回の製品設計においては、再溶解液量を1〜10 mLの範囲に設定した。 また、カルペルチド製剤は、医療現場において注射用水による再溶解後、輸液による希釈なしで直接投与される場合があるため、溶解後は等張である必要がある。精製白糖を主成分とする製剤の場合、等張確保に要する溶解液量は、精製白糖量の約10倍(精製白糖100 mgに対して注射用水約1 mL)である。今回の製品設計において、注射用水量を1〜10 mLとしたことから、精製白糖量の検討範囲は100〜1000 mgとした。 本検討においては、製剤1本(バイアル1本)あたりの精製白糖量(以下、「白糖量」)、凍結乾燥用の溶液における精製白糖の濃度(以下、「白糖濃度」)を変動要因として、また、凍結乾燥体の外観形状及び水分を製剤品質特性として評価を行った。 なお、本試験は、凍結乾燥体の外観、水分などの物理的特性に主眼を置くため、検討対象とするカルペリチド含有量と精製白糖量の比率から、カルペリチドによるこれら物理的特性への影響はほとんど無視できると判断し、本試験は、カルペリチドを含有しない製剤(白糖プラセボ製剤)を用いて実施した。(1)白糖プラセボ製剤の調製(配合例1〜17) 精製白糖(日本薬局方、塩水港精糖株式会社)を、表1の各配合例における所定の白糖濃度となるように精製水に溶解した。白糖溶液をフィルター(Stericup-GV 0.22μm、PVDF、Millipore Corporation)にて濾過した後、テーハー分注機(FH-10s、株式会社ヒラサワ)またはマイクロスケールピペット(PIPETMAN、GILSON, Inc.など)を用い、同様に所定の充填量となるようにガラスバイアル(胴外径24.5 mm)、大和特殊硝子株式会社)に充填した。充填済バイアルに、ゴム栓(V10-F8 D713 RB2-40、株式会社大協精工)を半打栓した後、凍結乾燥機(RL-30KPs、共和真空株式会社)に搬入し、予備凍結(−50℃設定)、引き続いて真空条件下(20 Pa設定)で凍結乾燥(一次乾燥:−20〜−5℃設定、二次乾燥:40℃設定)を行い、乾燥終了後にバイアル内を、窒素導入により復圧した。バイアルにゴム栓を全打栓した後、巻締機(GAC-01、株式会社稲葉機械製作所)を用いてフリップオフキャップ(APキャップ、20AP7.0H、石田プレス工業株式会社)でバイアルを巻き締めし、配合例1〜17の白糖プラセボ製剤を得た。(2)凍結乾燥製剤の熱苛酷保管後の製剤品質特性の分析 上記(1)で作製した凍結乾燥製剤を40℃75%RHに設定した恒温恒湿槽(LH31-15M型、株式会社ナガノ科学機械製作所)、または、50℃に設定した恒温槽(LH20-01型、株式会社ナガノ科学機械製作所)で1ヶ月間保管した。製剤の製造時、及び、各条件での保管前後に、凍結乾燥体の外観形状及び水分含量を、以下の方法で評価した。 [方法:凍結乾燥体の外観評価] 凍結乾燥製剤の外観形状を目視観察し、以下の通り3段階で符号判定した。製造時には、無作為に選択した23〜25本を観察した。熱苛酷保管では、各温度での保管前に外観形状が良好なものの中から3本を無作為に選択し、保管前後に同一の製剤を観察した。これらの結果を表2及び表3に示した。○:良好な形状(正常形状)△:おおむね良好な形状(正常形状と比較し、軽微な変化のみ認められる)×:不良な形状(形状不良:正常形状と比較し、著しいシュリンクなどの大きな変化が認められる)。 [方法:凍結乾燥体の水分測定] 凍結乾燥体の10 mg以上を、吸湿低減のための湿度環境下、ガラス製密栓付採取管に秤量し、電量滴定式微量水分測定装置(CA-100型、三菱化学株式会社)により水分量(凍結乾燥体重量の含水率、%)を測定した。各測定時に無作為に選抜した2または3本について測定し、含水率の平均値を表2及び表3に示した。 [結果] 配合例1〜7の製剤(白糖量1000 mgまたは500mg/バイアル)の製造時、40℃75%RH1ヶ月保管後、50℃1ヶ月保管後の外観形状、含水率を表2に示した。同様に、配合例8〜17(白糖量300 mgまたは100 mg/バイアル)の製剤の外観形状、含水率を表3に示した。各配合例について、良好な製剤品質と判定するに当たり、製造時及び熱苛酷保管の全ての時点において、外観形状が○又は△の評価であり、且つ、含水率が1%以下、であることを判定基準とした。 配合例5〜12の製剤(白糖量500 mg/バイアル(白糖濃度125 mg/mL以下)または300 mg/バイアル)は、製造時、熱苛酷保管後ともに外観、水分の判定基準に適合しており、これらの条件でカルペリチド製剤を製造したとき、熱安定性など、良好な製品特性が確保できることを示す。 一方、配合例1〜4の製剤(白糖量1000 mg/バイアルまたは500 mg/バイアル(白糖濃度160 mg/mL以上)は、いずれも製造時に明らかな外観不良(1割以上の×判定)を生じ、また、製造時の水分は1%以上であり、外観、水分共に判定基準に不適合であった。配合例1及び配合例4の製剤のうち、製造時の外観が良好であった製剤について、熱苛酷保管後の評価を実施したところ、50℃保管で外観不良(判定基準へ不適合)となる検体を認めた。これは、水分が判定基準を満足しない製剤には、その熱安定性に不安があることを示している。 配合例13〜17の製剤(白糖量100 mg/バイアル)は、製造時は外観、水分共に判定基準を満足するが、熱苛酷1ヶ月保存後に水分が1%以上への増加(判定基準への不適合)を認めた。白糖量が少ない製剤では、製剤容器の密栓に使用するゴム栓の保有水分の影響を受け、保管中に水分含量が上昇し、製品特性が変化する可能性が示唆された。※:製造時の外観評価が○判定(外観変化がなし)の製剤を無作為に選抜して各温度下で保管。外観は実測値(製剤3本の判定符号)を記載.−:測定せず.※:外観評価が○又は△判定(外観変化がなし又は軽微)の製剤を無作為に選抜して各温度下で保管。外観は実測値(製剤3本の判定符号)を記載.−:測定せず. これらの結果から、凍結乾燥のための容器として胴外径24.5 mm(内径22.1mm)のガラスバイアルを用い、精製白糖を主な固形成分とする凍結乾燥製剤の製造において、外観形状、水分の判定基準を満足する白糖配合条件は、白糖量については300 mg(容器内部断面積当り0.78 mg/mm2)〜500 mg/バイアル(容器内部断面積当り1.30mg/mm2)、白糖濃度については48〜125 mg/mL(充填量は2.5 〜6.25 mL/バイアル)であることが示された。 当該条件において、製造時の品質特性に着目してみると、バイアル当りの精製白糖量が多い、又は、充填液の白糖濃度が高い場合には、製造時の外観不良の割合が高く、含有水分も高い傾向があった。これらの凍結乾燥体では凍結乾燥工程における水分除去が正常に進行しなかったものと考えられる。凍結乾燥工程の水分除去は、凍結した水分が昇華し、凍結乾燥体の上面から放出されることで進行するため、凍結乾燥体上面の面積(容器の内部断面積)当たりの白糖量が少ないほど、水分の除去効率は高くなると考えられる。本検討においても、同一サイズのバイアルにおいて、白糖量が少ないほど、及び、白糖濃度が低いほど、製造時の含水率が低い傾向があった。従って、製造時に良好な製剤品質特性を確保するためには、容器内部断面積当たりの精製白糖量を少なくする(通常約1.85mg/mm2以下)する必要がある。また、同様の目的で、凍結乾燥に用いる充填液の濃度は、配合例4(160mg/mL)の場合の品質特性が、基準にわずかに届かなかったことを考慮すると、140mg/mL以下程度であることが望ましいと考えられる。 また、熱苛酷保管後において良好な品質特性を確保するためには、製造時の含有水分が少ないことが重要であるが、製造時の水分含量が十分に低い場合であっても、バイアル当たりの白糖量が少なすぎる場合には、ゴム栓等に含まれる水分を保管中に凍結乾燥体が吸収してしまうことの影響が無視できず、保管後の水分含量が規定値以上となってしまうことが示唆された。ゴム栓のサイズは、バイアル径に比例して大きくなることから、ゴム栓の水分の影響を考える場合にも容器の内部断面積当たりの白糖量として考える必要があり、内部断面積当たり約0.50mg/mm2以上とする必要があるものと考えられる。<実施例2:実薬製剤の製造及び評価> 実施例1で好ましいと判断された白糖配合条件(内径22.1mmのバイアル1本につき300〜500 mg)、白糖濃度(125 mg/mL以下)によりカルペリチド含有製剤(カルペリチド1mg含有)を製造し、製造時の特性、及び、熱安定性を評価した。 (1)配合例A(カルペリチド1 mg/バイアル、白糖量500 mg/バイアル(1.30mg/mm2)、白糖濃度100mg/mL(10%))の凍結乾燥製剤の製造 カルペリチド 81.6 mg(カルペリチドの設計含量1mg設計に対し、2%の増仕込み)及び精製白糖(日本薬局方、塩水港精糖株式会社)40 gを精製水に溶解した後、精製水で全量を400mLとした。この溶液をフィルター(Stericup-GV 0.22μm、PVDF、Millipore Corporation)にて濾過した後、テーハー分注機(FH-10s、株式会社ヒラサワ)またはマイクロスケールピペット(PIPETMAN、GILSON, Inc.など)を用い、5 mLをガラスバイアル(胴外径24.5 mm、内径22.1 mm)、大和特殊硝子株式会社)に充填した。充填済バイアルに、ゴム栓(V10-F8 D713 RB2-40、株式会社大協精工)を半打栓した後、凍結乾燥機(RL-30KPs、共和真空株式会社)に搬入し、予備凍結(−50℃設定)、引き続いて真空条件下(20 Pa設定)で凍結乾燥(一次乾燥:−20〜−5℃設定、二次乾燥:40℃設定)を行い、乾燥終了後にバイアル内を窒素導入により復圧した。バイアルにゴム栓を全打栓した後、巻締機(GAC-01、株式会社稲葉機械製作所)を用いてフリップオフキャップ(APキャップ、20AP7.0H、石田プレス工業株式会社)でバイアルを巻き締めし、配合例Aのカルペリチド含有製剤を得た。 (2)配合例B(カルペリチド1 mg/バイアル、白糖量300 mg/バイアル(0.78 mg/mm2)、白糖濃度75 mg/mL(7.5%))の凍結乾燥製剤の製造 カルペリチド 102 mg(カルペリチドの設計含量1mg設計に対し、2%の増仕込み)及び精製白糖(日本薬局方、塩水港精糖株式会社)30 gを精製水に溶解した後、精製水で全量を400mLとした。この溶液をフィルター(Stericup-GV 0.22μm、PVDF、Millipore Corporation)にて濾過した後、テーハー分注機(FH-10s、株式会社ヒラサワ)またはマイクロスケールピペット(PIPETMAN、GILSON, Inc.など)を用い、4 mLをガラスバイアル(胴外径24.5 mm、内径22.1 mm)、大和特殊硝子株式会社)に充填した。以下、配合例Aと同じ方法により、配合例Bのカルペリチド含有製剤を得た。 (3)カルペリチド含有製剤の熱苛酷保存安定性の評価 配合例A及びBの製剤を40℃75%RHに設定した恒温恒湿槽(LH31-15M型、株式会社ナガノ科学機械製作所)で1ヶ月間もしくは3ヶ月間、または、50℃に設定した恒温槽(CH-P 30-01型、株式会社ナガノ科学機械製作所)で1ヶ月間保管した。これらの製剤について、製造時、各保管前及び保管後に、実施例1と同様の基準で目視による外観判定(製造時:9本、保管後:3本)を行った。また、保管後の製剤について、以下の方法でカルペリチド及び類縁物質の含有量を測定した。 [方法:製剤中のカルペリチド含量及び類縁物質の測定] 製剤1本につき、希酢酸を添加して内容物を溶解してから全量を10 mLとし、試料溶液とした。また、この試料溶液を希酢酸で20倍に希釈し、類縁物質用標準溶液とした。カルペリチド定量用標準溶液は、別途調製したものを用いた。 高速液体クロマトグラフ装置(株式会社島津製作所)により、固定相にODSカラム、移動相に水/アセトニトルを用いる逆相分離系で、試料溶液、カルペリチド定量用標準溶液、類縁物質試験用標準溶液を測定した(測定本数:3本)。 含量は次のように算出した。高速液体クロマトグラフ法(検出:紫外吸光度法)による試料溶液、カルペリチド定量用標準溶液の測定結果から、1バイアル当りのカルペリチド量を算出し、カルペリチドの設計含量(1mg)に対する比率を求め、これをカルペリチド含量(%)とした。 類縁物質は次のように算出した。高速液体クロマトグラフ法(紫外吸光度検出)による試料溶液、類縁物質用標準溶液の測定結果から、試料溶液の類縁物質ピークエリアの、類縁物質用標準溶液のカルペリチドピークエリアの20倍値に対する比を求め、これを類縁物質量(%)とした。 [結果:カルペリチド含有製剤の製剤特性と熱安定性] 配合例AおよびBの製剤の製造時の外観形状、並びに、40℃75%RH1ヶ月および3ヶ月保管時、50℃1ヶ月保管時の外観形状及び含有成分の評価結果を表4に示した。 配合例A(白糖量:500 mg/バイアル、1.30mg/mm2、白糖濃度:100 mg/mL)、及び、配合例B(白糖量:300 mg/バイアル:0.78mg/mm2、白糖濃度:75 mg/mL)のカルペリチド含有製剤は、いずれも製造時、40℃75%RH3ヶ月、50℃1ヶ月の熱苛酷期間を通じ、外観形状は正常形状から変化なく良好に維持されていることが明らかである。また、これらの熱苛酷保管期間においてカルペリチド含量の低下、及び、類縁物質の増加はほとんど認められず、主薬の化学的安定性も極めて良好であることがわかる。また、配合例A、Bと同様の精製白糖配合条件で別途同様の試験を行い、製造時、熱苛酷保管時の含水率はいずれも0.5%以下であった。以上のことから、これらの配合条件で作製した凍結乾燥製剤は室温保存を貯法とする製剤に適した品質特性を有することが示された。 ※:実測値(製剤3本の判定符号)を記載. 有効量のペプチド性薬物、及び、容器の内部断面積に対して、約0.50〜1.85mg/mm2の精製白糖、を含有し、且つ、室温保存において安定であること、を特徴とする凍結乾燥製剤。 40℃、1ヶ月保管後において、凍結乾燥体が良好な外観形状を呈し、且つ、含有水分が1%以下であることを特徴とする、請求項1の凍結乾燥製剤。 50℃、1ヶ月保管後において、凍結乾燥体が良好な外観形状を呈し、且つ、含有水分が1%以下であることを特徴とする、請求項1の凍結乾燥製剤。 精製白糖の含有量が、容器の内部断面積に対して、約0.75〜1.35mg/mm2、である、請求項1の凍結乾燥製剤。 容器が、内径が約20〜29 mmの円柱バイアルであり、精製白糖を約300〜500mg含有する、請求項1の凍結乾燥製剤。 円柱バイアルの内径が約22.1 mmである請求項5の凍結乾燥製剤。 精製白糖濃度が140mg/mL以下の溶解液を凍結乾燥することで製造された、請求項1乃至6の何れかに記載の凍結乾燥製剤。 ペプチド性薬物として、1mgのカルペリチドを含有する、請求項1〜7の何れかに記載の凍結乾燥製剤。 固形成分として、実質的に精製白糖及びペプチド性薬物からなる請求項1〜8の何れかに記載の凍結乾燥製剤。 精製白糖140mg/mL以下、及び、有効量のペプチド性薬物、を含有する水性溶液を、容器に、該容器の内部断面積に対して、約0.50〜1.85mg/mm2となるように充填し、当該充填された容器を凍結乾燥する工程を含む、室温保存において安定であること、を特徴とする凍結乾燥製剤の製造方法。 製造される凍結乾燥製剤において、良好な製剤品質特性を有する製剤の割合が約80%以上であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。 【課題】 室温保存において安定な凍結乾燥製剤を提供すること。【解決手段】 有効量のペプチド性薬物、及び、容器の内部断面積に対して、約0.50〜1.85mg/mm2の精製白糖、を含有し、且つ、室温保存において安定であること、を特徴とする凍結乾燥製剤など。【選択図】なし配列表