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タイトル:公開特許公報(A)_ビフィズス菌醗酵方法及び増殖方法
出願番号:2014158382
年次:2015
IPC分類:C12N 1/20,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

安田 直美 清水 康光 JP 2015198638 公開特許公報(A) 20151112 2014158382 20140804 ビフィズス菌醗酵方法及び増殖方法 サンスター株式会社 000106324 安田 直美 清水 康光 JP 2014072724 20140331 C12N 1/20 20060101AFI20151016BHJP A23L 1/30 20060101ALI20151016BHJP JPC12N1/20 AA23L1/30 Z 6 OL 11 4B018 4B065 4B018LB08 4B018MD87 4B018ME02 4B018MF13 4B065AA21X 4B065AC20 4B065BB26 4B065CA42 本発明は、ビフィズス菌の増殖を促進すると共に、ビフィズス菌の生残菌数を向上させるビフィズス菌醗酵方法またはビフィズス菌増殖方法に関する。より詳細には、ビフィズス菌のカボチャ破砕物またはカボチャ搾汁を使用した醗酵方法及び腸内細菌におけるビフィズス菌の増殖方法に関する。 食に対する意識が向上し、日常の食生活を通して健康を増進したり疾病を予防したりすることに対し、関心を持つ消費者が増加している状況下において、「腸内フローラバランスを改善することにより動物に有益な効果をもたらす生菌添加物」であるプロバイオティクスについては、各種栄養素の摂取強化とは異なる観点で健康増進等を維持向上させる手段として注目されている。プロバイオティクスの条件としては、「安全であり、腸内細菌叢を構成する微生物であり、胃液などの消化液に対して生存耐性を有し、腸管に定着し易く、有用な性質を有する、一定以上の生菌数を一度に摂取できる」ことなどが挙げられ、中でも、一定以上の数の生きた微生物を経口摂取することがプロバイオティクスを有効に活用するための重要な要因の一つとなっている。このプロバイオティクスにおいて代表的な微生物としては、Lactobacillus属細菌、Enterococcus属細菌やBifidobacterium属細菌(以下、「ビフィズス菌」という。)が知られている。 ビフィズス菌は、生誕時の腸内において優勢な細菌であるが、その後徐々にLactobacillus属細菌や生体に悪影響を及ぼす可能性がある細菌に置換され腸内細菌におけるビフィズス菌の占める割合が徐々に低下して行くことが知られている。このことに着目し、ビフィズス菌をプロバイオティクスとして活用する試みがなされている。一方、ビフィズス菌は、偏性嫌気性菌であるため生育において酸素の影響を受け、また、増殖を促進させる因子を添加しなければ特に乳系培地で十分な増殖ができなかったり、増殖しても生菌率が高くないなどの課題を有しており、生きた状態のビフィズス菌を密度高く含有する経口組成物を工業的に如何に安価で製造するかが大きな課題点となっていた。 そこで生菌数の多い経口組成物を得る技術がいくつか提案されている。例えば、ラクトコッカス・ラクティスと混合して培養する技術(特許文献1)さつまいもと焼酎粕を用いてビフィズス菌の増殖を促進する技術(特許文献2)醗酵過程の糖の添加時期を制御することでビフィズス菌を増殖させる技術(特許文献3)醗酵処理を2回に分けてビフィズス菌を増殖させる技術(特許文献4)などが挙げられる。しかし、ビフィズス菌以外の細菌が並存したり、特殊な風味から用途が限定されたり、製造管理上の高度な技術が要求されたり、製造コストを要したりすることから、未だ満足できる技術を見出すに至っていない。特開平10−229819号公報特開2009−125055号公報特開2012−105577号公報特開2013−090604号公報 生菌状態のビフィズス菌を高濃度に含有する組成物を得るためのビフィズス菌醗酵方法および増殖方法を提供することを課題とする。従って、本発明の目的は、高度な製造技術を要求せず安価な原料を用いて、生菌状態のビフィズス菌を高濃度に含有する組成物を得るための汎用性の高いビフィズス菌醗酵方法および経口摂取による腸内におけるビフィズス菌の増殖方法、腸内細菌のフr−ラ改善方法ならびにそれらに使用する組成物を提供することにある。 本発明者らは、かかる事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、驚くべきことにカボチャの破砕物等をビフィズス菌で醗酵処理することにより、ビフィズス菌の増殖が大幅に促進されるとともに生菌数が多いビフィズス菌醗酵物が得られること、およびビフィズス菌とカボチャ破砕物等を同時に経口摂取することにより腸内に存在するビフィズス菌の増殖を促進し、腸内細菌フローラにおけるビフィズス菌の存在割合を大きく増加させ、腸内フローラの改善ができることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、項1ないし項6のビフィズス菌の増殖方法、増殖促進剤或いは醗酵物を提供するものである。 項1.下記の(A)または(B)のカボチャ処理物を含有する組成物を用いてビフィズス菌を増殖する方法。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 項2.下記の(A)または(B)のカボチャ処理物を含有する組成物からなるビフィズス菌の増殖促進剤。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 項3. 下記の(C)または(D)のカボチャ処理物を含有する組成物のビフィズス菌醗酵物。(C)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(D)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 項4.下記の(A)または(B)のカボチャ処理物とビフィズス菌とを含有する経口組成物を用いて腸内ビフィズス菌を増殖する方法。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 項5.下記の(A)または(B)のカボチャ処理物とビフィズス菌とを含有する経口組成物からなる腸内ビフィズス菌の増殖促進剤。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 項6. (A)または(B)のカボチャ処理物とビフィズス菌のみからなる経口組成物であることを特徴とする項5に記載の腸内ビフィズス菌の増殖促進剤。 本発明によれば、食品素材として種々の栄養素を豊富に含有し栄養価の高いカボチャを用いてビフィズス菌を増殖させることから、得られるビフィズス菌醗酵物はカボチャのビフィズス菌醗酵処理物であるとも言える。従って、本発明の方法で得られるビフィズス菌醗酵物は、生菌状態の高濃度ビフィズス菌のリソースとしてそのまま利用したり他の経口組成物に配合したりする事ができる。加えて、ビフィズス菌の醗酵処理によりカボチャが有する独特の風味も改善できることから、幅広い用途に適合できるカボチャ食品素材としても提供することができる。また、カボチャと生菌状態のビフィズス菌を同時に摂取すると、腸内のビフィズス菌を増殖させ、かつ腸内細菌におけるビフィズス菌の存在比率を高めることができることから、ビフィズス菌数を増加させ腸内菌叢を望ましい状態に近づけるための方法および当該方法に用いる経口組成物を提供することができる。 本発明で用いるビフィズス菌は、グラム陽性無芽胞桿菌のビフィドバクテリウム属の細菌をいう。具体的には、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・カテヌラタム(Bifidobakuterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム(Bifidobacterium pseudolongum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)などが挙げられる。この中でもビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis)が好ましく、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium infantis)がより好ましく、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)が最も好ましい。これらのビフィドバクテリウム属の桿菌は、単独もしくは複数の菌を組み合わせて用いることができる。 本発明で用いるカボチャ(南瓜)は、ウリ科カボチャ属(学名 Cucurbita)の一年草または多年草植物の果実を意味する。別名、ナンキン、トウナス(唐茄子)、南京瓜、南蛮瓜、ボウブラとも称される。カボチャの品種は、日本カボチャ(別称、東洋カボチャ:学名 Cucurbita moschata Duchesne ex Poir.)、西洋カボチャ(学名 Cucurbita maxima Duchesne ex Lam.)、ペポカボチャ(学名 Cucurbita pepo L.)、ミクスタ(別称、種間雑種:学名 Cucurbita mixta)に大別されるが、このうち日本カボチャおよび西洋カボチャが好ましく、西洋カボチャが最も好ましい。品種名としては、黒皮南瓜、小菊南瓜、三毛門南瓜、会津南瓜、菊座南瓜、鹿ヶ谷南瓜、縮緬南瓜、さくら南瓜、えびす南瓜、みやこ南瓜、味平南瓜、くりゆたか、打木赤皮栗南瓜、坊ちゃん南瓜、宿儺南瓜、芳香青皮栗南瓜、新土佐南瓜、会栗南瓜、平和親善南瓜、ターバン、デリシャス、ハッパード、ズッキーニ、花ズッキーニ、ミニズッキーニ、金糸瓜、コリンキー、バターナッツスカッシュ、エイコンスカッシュ、サマースカッシュ、スパゲッティスカッシュなどが挙げられる。本発明において、カボチャ(果実)を破砕処理して得られる「カボチャ破砕物」を用いることができるほか、カボチャやカボチャ破砕物を搾汁処理して得られる「カボチャ搾汁」も最適に用いることができる。前記「カボチャ破砕物」とは、カボチャやカボチャ破砕物などを破砕処理してピューレ状やペースト状としたものであり、さらに濃縮処理や乾燥処理を行った濃縮物や乾燥物も包含する。カボチャ破砕物は、例えば、カボチャの果実を必要に応じて破砕処理する前に加熱処理(ブランチングと呼ばれる)を行った後に、ハンマークラッシャー、電動ミル、コミトロール、マスコロイダー、フードプロセッサー、パルパーフィニッシャー等の破砕機や裏ごし機を用いて粉砕することで得られる。好ましいカボチャ破砕物は、破砕物全量に対して不溶性固形分量が30質量%以上のものを使用でき、40質量%以上のものが好ましく使用できる。ここで言う不溶性固形分量とは、果汁飲料の不溶性固形分分析法、すなわち試料10gを遠沈管に採取し、ローター半径14.5cmの遠心分離機を用いて、毎分3000回転、10分間遠心分離を行い、上清部と沈殿部を分けて質量測定し、沈殿部分の質量パーセントを測定する事により得られる数値である。流動性が悪く前記遠心分離の条件では分離しにくい場合は、精製水により正確に2倍希釈して均一分散した試料を遠心分離し、沈殿物の質量%を2倍して不溶性固形分量とすることにより測定することも可能である。前記「カボチャ搾汁」とは、カボチャを必要に応じて加熱処理(ブランチングと呼ばれる)した後にそのまま圧搾処理したり、前記の破砕物を連続遠心分離機やろ過機などを用いた固液分離処理して、カボチャ破砕物の固形分の一部またはすべてを除去し液状にした組成物や、破砕物に適量の精製水を添加し必要に応じて加熱しつつ十分に攪拌した後に固液分離処理して得られる搾汁や、搾汁液を濃縮処理した搾汁濃縮物、乾燥させた粉末等形状の搾汁乾燥物を包含するものである。以下において記載する「カボチャ破砕物等」とは、前記で規定する「カボチャ破砕物」及び「カボチャ搾汁」の両方を包含する。 ビフィズス菌を用いた醗酵は、以下に例示する方法などにより行うことができる。なお、「被醗酵物」とは、ビフィズス菌の増殖時、すなわちビフィズス菌醗酵処理時において、ビフィズス菌を接種する時点(スターターを使用する場合はスターター添加時)における被醗酵処理物を意味する。 ビフィズス菌を用いた醗酵を行う前に、必要に応じてカボチャ破砕物等へ適宜精製水を添加することができる。例えば、乾燥物や濃縮処理したカボチャ破砕物等を使用する場合には、濃縮・乾燥処理前のカボチャ破砕物等と同様な状態とするために精製水を添加して乾燥物や濃縮処理したカボチャ破砕物等を溶解・分散させることができる。また、特に、カボチャ破砕物等において、醗酵処理の観点から粘度が高すぎる場合や、醗酵処理装置の構造上の理由から被醗酵物の粘度を低下させる必要が存在する場合、醗酵処理前に予め精製水、カボチャ以外の野菜搾汁、果汁等の本願発明の効果を損なわない程度の液体成分をカボチャ破砕物等に添加し、醗酵処理を行うに適正な粘度に調整した上でビフィズス菌を用いた醗酵に供することができる。なお、カボチャ破砕物等に他成分を添加する場合、添加する量は特定するものではないが、濃縮・乾燥処理を行っていないカボチャ破砕物等に換算したときのカボチャ破砕物等の質量よりすくない添加量に設定すると、本願発明の所期の効果を得られ易いため好ましい。すなわち、ビフィズス菌を用いて醗酵させる被醗酵物の50質量%以上が濃縮・乾燥処理を行っていないカボチャ破砕物等であることが好ましい。さらには75質量%以上が濃縮・乾燥処理を行っていないカボチャ破砕物等であることが好ましく、他の成分を混合することなくビフィズス菌を用いた醗酵に供することが最も好ましい。また、従来、ビフィズス菌の被醗酵物として使用されている、乳、ホエイ、アブラナ科植物の破砕物等、果汁などをカボチャ破砕物等に混合した組成物をビフィズス菌を用いた醗酵処理の被醗酵物として供することもできる。但し、この場合において、濃縮等の処理を行っていないカボチャ破砕物の場合、カボチャ破砕物の被醗酵物全量に対する含有量は30質量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることが更に好ましく、50質量%以上であることが最も好ましい。カボチャ破砕物を濃縮・乾燥処理して得られたカボチャ破砕物の濃縮物や乾燥物を用いる場合は、各々の処理を行う前のカボチャ破砕物の質量に換算したときの含有量が前記で規定する被醗酵物全量に対する含有量となるようにする。また、濃縮等の処理を行っていないカボチャ搾汁の場合、搾汁の被醗酵物全量に対する含有量は、12質量%以上であることが好ましく、16重量%以上であることが更に好ましく、20質量%以上であることが最も好ましい。カボチャ搾汁の濃縮・乾燥処理して得られたカボチャ搾汁の濃縮物や乾燥物を用いる場合は、各々の処理を行う前のカボチャ搾汁の質量に換算したときの含有量が前記で規定する被醗酵物全量に対する含有量となるようにする。 ビフィズス菌を用いた醗酵は、前記のカボチャ破砕物等にビフィズス菌のスターターを接種することで開始する。ビフィズスのスターターは、常法を用いて調製することができ、スターターの性状、組成などに特に制限はない。本発明で用いるビフィズス菌のスターターの形態としては、液状、凍結状、粉末状とすることができる。但し、液状以外のスターターを使用する場合は、接種前に精製水やスターターの被醗酵物を用いて液状としてから接種することが好ましい。なお、カボチャ以外の成分を添加しないカボチャ破砕物等を用いてスターターを調製する場合、均一な醗酵を行うため、予めカボチャ破砕物等に水を添加して適正な粘度に調整することもできる。但し、水を添加する場合、不溶性固形分量が5質量%以上とすることが必要である。好ましく使用できるビフィズス菌のスターターは、接種時のスターター1gあたり、少なくとも10の8乗個以上、より好ましくは10の9乗個以上の生菌状態のビフィズス菌を含んでいることが必要である。 スターターの接種時の添加量は、特に限定するものではないが、通常、被醗酵物1グラムあたり少なくとも10の6乗個以上、好ましくは10の7乗個の生菌状態のビフィズス菌となるようなスターターの量とする。 予め接種時(被醗酵物へのスターター添加時)のカボチャ破砕物等の温度は30〜43℃の範囲であれば特に制限されるものではないが、35〜42℃が好ましく、36〜40℃がもっとも好ましい。醗酵時のカボチャ破砕物等の温度は、18〜45℃とする。中でも25〜42℃の温度領域で醗酵させることが好ましく、35〜42℃の温度領域がもっとも好ましい。ビフィズス菌を用いた醗酵処理時間は醗酵時の温度条件などにより適宜調整されるが、通常6〜30時間であり、好ましくは8〜26時間である。 前記醗酵処理時において、ビフィズス菌以外の細菌の増殖を抑制する目的で、適宜少量の緑茶カテキンに代表される植物抽出物等をビフィズス菌被醗酵物に添加することができる。これらの添加量は、たとえば緑茶カテキンでは0.01〜0.2質量%である。また、ビフィズス菌の増殖をさらに向上させるためにブドウ糖などの糖質を添加することもできる。糖質の添加量は、被醗酵物に対し0.1〜10質量%である。さらにビフィズス菌醗酵時のpH制御を目的として、pH調整剤の添加も可能である。ビフィズス菌醗酵に適したpH調整剤としては、酢酸ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムが挙げられるが、pH緩衝作用を有するものであればこれらに限定されるものではない。pH調整剤の添加量は、被醗酵物に対し0.01〜1質量%である。 発明のビフィズス菌醗酵処理を行って得られた醗酵物は、ビフィズス菌の生菌率を低下させない限り、様々な形態で使用しうる。例えば、本願の方法で得られる醗酵物を固形化し、そのまま、或いは他の固形物と混合したものを、粉末化加工、顆粒化加工、カプセル充填加工、錠剤/タブレット化加工することにより、経口組成物やヨーグルトなどの自家醗酵用のスターター、食品・医薬品等の原料などとして使用することができる。また、本願の方法で得られる醗酵物に他の原料や化合物を配合して経口組成物として使用したり、被醗酵物に必要な原料を予め配合しておくことで、本願の方法の醗酵処理を行い得られたものをそのまま経口組成物として使用することもできる。カボチャの破砕物(固形物の残存程度の選択も含む)若しくは搾汁の選択については、醗酵処理後のビフィズス菌の生菌量もしくは生菌率、醗酵処理後の加工内容、カボチャ以外の被醗酵物の存在の有無、カボチャの不溶性固形分が有する生理機能等の活用の有無などを勘案したうえで、適宜選択することが好ましい。 本発明のビフィズス菌の醗酵処理に用いる被醗酵物またはビフィズス菌の醗酵物には、本願効果を損なわない範囲でカボチャ以外の通常経口組成物に使用される食品原料や化合物を必要に応じて適宜配合することができる。 配合できる成分としては、例えば、りんご果汁など柑橘類以外の果汁、果実ピューレ、果実さのう;カボチャ以外の野菜の搾汁、エキス、破砕物、ペースト;甘味料(ショ糖、ぶどう糖、果糖、乳糖、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア抽出物など);糖アルコール類(還元麦芽糖水飴、マルチトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトールなど);オリゴ糖類(ラクチュロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ラフィノース、パラチノースオリゴ糖、キシロオリゴ糖など);甘味料(サッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、スクラロース、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、トレハロース、エリスリトール、ソルビトール、パラチノース、パラチニット、キシリトール、マルトース、ラクチトール、フルクトース、還元パラチノース、グルコース、砂糖、三温糖、精製はちみつ、未精製はちみつ、還元水飴、水飴、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖など));酸味料(クエン酸、グルコン酸、りんご酸、酒石酸などの果実酸類、酢酸、乳酸、リン酸、コハク酸、グルタミン酸など);強化剤(L−アスコルビン酸、チアミン塩酸塩、リボフラビン、ピリドキシン塩酸塩、カロテン、α−トコフェロール、コレカルシフェロール、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、グルコン酸亜鉛、クエン酸第一鉄アンモニウム、ピロリン酸第二鉄など);増粘多糖類(ペクチン、カラギーナン、グアガム、アラビアガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩、キサンタンガム、大豆多糖類、ジェランガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなど);その他の成分(色素、酸化防止剤、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、動植物エキス、アミノ酸、たんぱく質加水分解ペプチド、トレハロース、シクロデキストリン、キトサン、ヒアルロン酸、フィチン酸、酵母エキス、ビタミン類、ミネラル類、香料)などが挙げられる。 また、本願発明は腸内のビフィズス菌を増殖させ、腸内細菌フローラを改善させ、さらにはおなかの調子を整える目的でも使用できる。具体的には、前記カボチャ搾汁及び/またはカボチャ破砕物とビフィズス菌を含有する組成物を経口摂取することで、腸内に存在するビフィズス菌を増殖したり、腸内細菌におけるビフィズス菌の存在比率を高め、本来望ましいとされる腸内細菌フローラに近づける若しくは実現させることができる。腸内のビフィズス菌を増殖させる方法に用いる経口組成物において使用するカボチャ搾汁及び/またはカボチャ破砕物は乾燥物であることが、経口組成物の品質保持期間を大幅に向上させることができるため好ましい。当該経口組成物においてカボチャ破砕物を用いる場合は経口組成物全量に対して30質量%以上、カボチャ破砕物の替わりにカボチャ搾汁を用いる場合は経口組成物全量に対して16質量%以上含有させることが好ましい。当然、両者を混合して使用しても良い。その場合の各々の配合量は、「カボチャ破砕物は経口組成物全量に対して30質量%」を100としたときのカボチャ破砕物配合量に相当する相対値(A)、「カボチャ搾汁は経口組成物全量に対して16質量%」を100としたときのカボチャ搾汁の配合量に相当する相対値(B)としたとき、(A)と(B)の合計値が100を超えるように各々の配合量を調整することが好ましい。一方、ビフィズス菌については、経口組成物中に生菌状態で存在することが必要である、特に限定するものではないが、1回に摂取する経口組成物全量中に1*108C.F.U.以上存在することが好ましい。 以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、以下特に断りのない限り「%」は「質量%」を示す。ビフィズス菌の増殖促進効果の評価 ビフィズス菌の増殖促進効果について下記の方法に従い評価した。(被評価物の調製) 西洋カボチャを裁断し、コミトロールを用いてカボチャ破砕物を調製した。得られたカボチャ破砕物を遠心分離処理(機器名himac CR21G;日立工機(株)社製);8000r.p.m.,室温、10分)を行い、上澄を得た。この上澄を滅菌フィルター(0.45μm)を用いて除菌処理したものを評価に使用する「カボチャ搾汁」とした。(供試菌株について) 下記のビフィズス菌について評価を行なった。ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum JCM1217:表1および2では「BL」と記載する。)ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(Bifidobacterium adolescentis JCM1275:表1では「BA」と記載する。)ビフィドバクテリウム・インファンティス(Bifidobacterium infantis JCM1222:表1では「BI」と記載する。)ビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve JCM1192:表1では「BB」と記載する。)(接種ビフィズス菌の調製方法について) 変法GAM寒天「ニッスイ」(日水製薬(株)社製)に各菌株を播種し、37℃、24時間、嫌気条件下(アナエロパック使用、三菱瓦斯(株)社製)で培養し、得られたコロニーを1白金耳採取し、各々、変法GAMブイヨン「ニッスイ」(日水製薬(株)社製)に接種し、37℃、24時間、嫌気条件下(アナエロパック使用、三菱瓦斯(株)社製)で培養を行った。培養後の菌液を「ビフィズス菌培養液」とした。(評価試験方法について) 変法GAMブイヨン「ニッスイ」(日水製薬(株)社製)75質量部に、前記で調製したカボチャ搾汁若しくは除菌した精製水を25質量部加え、均一にした後、前記方法で調製した接種用の「ビフィズス菌培養液」を被醗酵物全量に対して初期の濁度が0.05〜0.1(620nm)の範囲となるよう、1〜5質量%添加し、初期の濁度(T0、C0:620nm)を測定した。測定後、37℃、24時間、嫌気条件下(アナエロパック使用、三菱瓦斯(株)社製)で培養を行い、培養直後の濁度(T24、C24:620nm)を測定した。 増殖促進倍率は下記式に従って算出した。得られた結果を表1に示した 増殖促進倍率=((T24−T0))/(C24−C0) T0:培養開始時の試験培養液の濁度(620nm) T24:培養終了直後の試験培養液の濁度(620nm) T0:培養開始時の対照培養液の濁度(620nm) C24:培養終了直後の対照培養液の濁度(620nm) 表1に示したとおり、ビフィドバクテリウム・ロンガム(27.95)、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス(3.27)、ビフィドバクテリウム・インファンティス(14.23)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ(15.54)において、カボチャ破砕物は優れた増殖促進効果を示すことがわかった。またビフィズス菌の菌種により、その効果の程度が相違し、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・ブレーベにおいて優れた効果を示し、ビフィドバクテリウム・ロンガムに対して最も優れた効果を示すことがわかった。ビフィズス菌の生菌残存効果の評価 ビフィズス菌の生菌残存効果について下記の方法に従い評価した。(被評価物の調製) 「カボチャ破砕物」としては、西洋カボチャを裁断し、コミトロールを用いて破砕したものを使用した。「リンゴ破砕物」としては、リンゴピューレ(長野興農(株)社製)を使用した。両破砕物については、90℃、10分間にて加熱処理を行い、常温に戻したものを使用した。対照としては、Difco MRS Broth(ベクトンディッキンソン社製、表では「MRS」と記載する。)および、前記MRS寒天培地にL−システインを0.05質量%添加したもの(表では「MRS+」と記載する。)(供試菌株について) ビフィズス菌は、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum JCM1217)を用いた。(接種ビフィズス菌の調製方法について) 上記評価に記載した方法で調製した接種用の「ビフィズス菌培養液」を使用した。(評価試験方法について) 前記で調製した被評価物及び対照物に、前記方法で調製した接種用の「ビフィズス菌培養液」を被醗酵物全量に対して2質量%添加し、37℃、24時間、嫌気条件下(アナエロパック使用、三菱瓦斯(株)社製)で培養した。培養後、1ml若しくは1g分取し、9mlの生理食塩水を用いて均一になるまで十分に攪拌した。攪拌後、正確に1ml分取し、9mlの生理食塩水を加えて十分に攪拌した。この処理を繰り返し行い、段階希釈した。段階希釈した各々から正確に100μlを分取後、MRS寒天培地(ベクトンディッキンソン社製)に塗抹し、37℃、48時間、嫌気条件下(アナエロパック使用、三菱瓦斯(株)社製)で培養した。段階希釈した各濃度において、コロニーの有無を目視で確認し、コロニーを確認できたもののうち最も希釈倍率が高いもののコロニー数をカウントし、その結果よりビフィズス菌の生菌数とした。結果を表2に示した。 表2に示したとおり、カボチャ破砕物は、1.5*109(CFU/g)の結果を示し、通常ビフィズス菌の培養に使用されるMRS培地(4.7*108(CFU/g))やMRS培地にシステインを添加した培地(7.1*108(CFU/g))に比べ、優れた生菌残存効果を有することが判った。一方、リンゴ破砕物(2.3*107(CFU/g))には生菌残存効果を確認できなかった。経口摂取による腸内ビフィズス菌の増殖活性評価 日本チャールス・リバー(株)より、5週齢の雄性マウス C57BL/6NCrlCrj(SPF)を購入し、入荷から実験開始まで7日間馴化・検疫を行い、7日目に群分けした(1群につき10匹のマウスを割り当て、A〜D群の4群に分けた)。どの群のマウスにも、高脂肪食飼料D12492(60 kcal%、Research Diet Inc.)を自由摂取させた。また、これに加えて、B群のマウスにはビフィドバクテリウム・ブレーベ菌末をC群のマウスにはビフィドバクテリウム・ブレーベ菌末及びカボチャ粉末を、それぞれ与えた。つまり、以下のように各群に餌を与えた。A群:高脂肪食飼料B群:高脂肪食飼料+ビフィドバクテリウム・ブレーベ菌末C群:高脂肪食飼料+ビフィドバクテリウム・ブレーベ菌末+カボチャ粉末 (カボチャ粉末:日本粉末薬品(株)社製、カボチャ末) なお、ビフィドバクテリウム・ブレーベ菌末投与量は10mg(5×108CFU相当)、野菜粉末の投与量は100mg/30g体重・日とし、これらは経口ゾンデを装着した注射筒(ディスポーザブルシリンジ,テルモ(株))に充填して1回/日の頻度でマウスへ経口投与した。 投与期間は84日間とし、84日目糞便の採取を行い、糞便中の全細菌量に対するビフィズス菌量の割合を、株式会社 テクノスルガ・ラボ(リアルタイムPCR法)に委託を行い測定した。 高脂肪食誘導肥満マウスを用いた、ビフィズス菌及びカボチャの摂取によるビフィズス菌増殖促進効果の測定結果を表3に示す。具体的には、高脂肪食飼料、ビフィズス菌(ビフィドバクテリウム・ブレーベ菌末)、カボチャ粉末を組み合わせて摂取させたマウスの糞便中の全細菌量に対するビフィズス菌量の割合(n=10の平均値)を示す。 対照群であるA群(高脂肪食群:0.1)に比べて、B群及びC群共にマウスの糞便中の全細菌量に対するビフィズス菌の割合が顕著に高くなり、かつ、B群(ビフィズス菌末単独投与群:5.0)に比べ、C群(ビフィズス菌・カボチャ併用投与群:6.3)における「マウスの糞便中の全細菌量に対するビフィズス菌の割合」高くなっていることを確認した。処方例:飲料カボチャ破砕物30質量部、ブロッコリピューレ20質量部、フレーバーからなる被醗酵物を、ビフィドバクテリウム・ロンガムを用いて、37℃で24時間、嫌気性下で醗酵処理させて得られたビフィズス菌の醗酵物をそのまま飲料組成物とする。 下記の(A)または(B)のカボチャ処理物を含有する組成物を用いてビフィズス菌を増殖する方法。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 下記の(A)または(B)のカボチャ処理物を含有する組成物からなるビフィズス菌の増殖促進剤。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 下記の(C)または(D)のカボチャ処理物を含有する組成物のビフィズス菌醗酵物。(C)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(D)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 下記の(A)または(B)のカボチャ処理物とビフィズス菌とを含有する経口組成物を用いて腸内ビフィズス菌を増殖する方法。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 下記の(A)または(B)のカボチャ処理物とビフィズス菌とを含有する経口組成物からなる腸内ビフィズス菌の増殖促進剤。(A)組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物(B)組成物全量に対して16質量%以上のカボチャ搾汁 (A)または(B)のカボチャ処理物とビフィズス菌のみからなる経口組成物であることを特徴とする請求項5に記載の腸内ビフィズス菌の増殖促進剤。 【課題】ビフィズス菌の醗酵処理を促進すると共にビフィズス菌の生存残菌数を向上させるビフィズス菌醗酵方法及び増殖方法の提供。【解決手段】カボチャの処理物を含有する組成物を用いてビフィズス菌で醗酵処理することにより、ビフィズス菌の増殖が大幅に促進され、かつ生菌数が多い醗酵処理組成物が得られることを見出し、ビフィズス菌の醗酵処理を促進すると共に、ビフィズス菌の生存残菌数を向上させるビフィズス菌醗酵方法及び増殖方法。前記カボチャ処理物を含有する組成物は、組成物全量に対して30質量%以上のカボチャ破砕物か又は16質量%以上のカボチャ搾汁からなる、ビフィズス菌発酵方法及び増殖方法。【選択図】なし


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