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タイトル:公開特許公報(A)_抗トレポネーマ属(Treponema)抗体の検出のためのTpN17に基づくイムノアッセイにおける、抗干渉添加剤としてのコレラ菌(Vibriocholerae)リポタンパク質15(Lp15)変異体
出願番号:2014146428
年次:2015
IPC分類:G01N 33/571,G01N 33/53,G01N 33/531,C07K 19/00,C07K 14/28,C07K 14/245,C12N 15/09


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エルケ・ファーツ ペーター・シャアーシュミット ウルバン・シュミット クリスティアン・ショルツ JP 2015028479 公開特許公報(A) 20150212 2014146428 20140717 抗トレポネーマ属(Treponema)抗体の検出のためのTpN17に基づくイムノアッセイにおける、抗干渉添加剤としてのコレラ菌(Vibriocholerae)リポタンパク質15(Lp15)変異体 エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー 591003013 F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 竹内 茂雄 100101373 山本 修 100118902 國枝 由紀子 100187540 エルケ・ファーツ ペーター・シャアーシュミット ウルバン・シュミット クリスティアン・ショルツ EP 13003633.8 20130718 G01N 33/571 20060101AFI20150116BHJP G01N 33/53 20060101ALI20150116BHJP G01N 33/531 20060101ALI20150116BHJP C07K 19/00 20060101ALI20150116BHJP C07K 14/28 20060101ALI20150116BHJP C07K 14/245 20060101ALI20150116BHJP C12N 15/09 20060101ALI20150116BHJP JPG01N33/571G01N33/53 NG01N33/531 ZC07K19/00C07K14/28C07K14/245C12N15/00 A 12 OL 26 4B024 4H045 4B024AA13 4B024BA31 4B024CA04 4B024CA07 4B024DA06 4B024EA04 4B024GA11 4B024HA03 4H045AA30 4H045BA41 4H045CA11 4H045DA86 4H045EA52 本発明は、単離試料において、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)のTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、コレラ菌(Vibrio cholerae)リポタンパク質15(VcLp15)のペプチド配列を、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる、前記方法に関する。さらに、本発明は、VcLp15ペプチド配列およびシャペロンを含む融合ポリペプチド、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための、イムノアッセイにおける添加剤としての該融合ポリペプチドの使用、ならびにTpN17抗原および前記VcLp15−シャペロン融合ポリペプチドを含む単離試料において、梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体を検出するための試薬キットに関する。 梅毒(Syphilis、またLuesとも呼ばれる)は、スピロヘータ細菌科に属する梅毒トレポネーマによって引き起こされる重症感染性疾患である。梅毒は、主に、性的接触によって伝染するが、また、妊婦である母親から妊娠中に胎児にうつる可能性もある。この疾患は、別個の臨床段階および長期間の潜伏性無症候性感染によって特徴付けられる。多くの感染個体は症状に気づかず、そしてしたがって梅毒感染に何年も気づかない。一次感染は限定され、そして通常、小さい無痛の潰瘍を引き起こす(第一段階、「梅毒I」)。ペニシリンによって治療されずに放置されると、疾患は第二段階の梅毒IIに進行し(感染約8週後)、これはインフルエンザ様症状、かゆみのない皮膚発疹およびリンパ節腫脹を伴う。数年後、梅毒IIIの段階で、梅毒性結節が全身に現れる。最終段階(梅毒IV)は、中枢神経系の崩壊によって特徴付けられ、最終的に、神経学的障害および心臓障害、全身麻痺、運動失調、認知症および失明につながる。 20世紀半ばにペニシリンが導入されて以来、有効な療法が利用可能になっているが、梅毒はなお、毎年、全世界で1200万人の新規感染があると概算される、重要な世界的健康問題であり続けている。抗生物質療法を開始し、そしてしたがって梅毒のさらなる蔓延を防止するため、トレポネーマ属に感染した患者を信頼可能に同定することが必須である。そのため、梅毒トレポネーマに対する抗体の検出のため、イムノアッセイなどの信頼性がある診断ツールを提供する必要がある。さらに、血清学的適用における特異的化合物として用いるため、組換え由来タンパク質は、可溶性、安定性および抗原性などのいくつかの必要条件を満たす必要がある。 成熟型では134アミノ酸残基からなる小分子タンパク質であるTpN17(梅毒トレポネーマ株ニコルス(Nichols)、17kDa)は、梅毒の原因病原体である梅毒トレポネーマの免疫優性抗原である(J. Clin. Lab. Immunol.(1998), 50, 27−44; Folia Microbiol.(2003)48(4), 549−553)。TpN17に向けられる抗体は、トレポネーマ属に感染した個体において頻繁にそして豊富に見られ、そしてトレポネーマ属感染の高感度でそして信頼性がある検出を目的とするイムノアッセイにおいて、TpN17を使用することが必須である。 しかし、本発明者らは、TpN17を抗原として用いるイムノアッセイが、偽陽性結果を示す傾向があり、すなわち見かけ上、陽性のシグナルを提供するが、実際にはトレポネーマ属に対する抗体がその試料中にまったく存在しないことを観察した。これらの干渉は稀であるが、有意な現象である。これらはイムノアッセイの特異性を損ない、そしてこれらは、明らかに、梅毒イムノアッセイにおいて実質的に不可欠である梅毒トレポネーマ抗原TpN17を使用しているためである。J. Clin. Lab. Immunol.(1998), 50, 27−44Folia Microbiol.(2003)48(4), 549−553 本発明の根底にある問題は、したがって、抗トレポネーマ属抗体の検出のための、TpN17に基づくイムノアッセイの偽陽性結果を回避し、そして特異性を増加させるための手段および方法を提供する際に明らかになりうる。 問題は、請求項によって特徴付けられるような本発明によって解決される。特に、本発明は、単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、コレラ菌リポタンパク質15(VcLp15)のペプチド配列またはその部分配列を、干渉を減少させるため、すなわち偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる、前記方法に関する。VcLp15ポリペプチド配列の前記部分配列は、配列番号1のアミノ酸26〜163を含むことも可能である。さらなる態様において、前記VcLp15ペプチド配列またはその部分配列をシャペロンに融合させる。 本発明はまた、配列番号1記載のVcLp15ペプチド配列またはその部分配列およびシャペロンを含む、融合ポリペプチドにも関する。好ましい態様において、VcLp15ペプチド配列に融合させるシャペロンを、SlyD、SlpA、FkpA、およびSkpからなる群より選択する。 さらなる好ましい態様において、融合ポリペプチドは、大腸菌(E. coli)SlyDおよびVcLp15の融合ポリペプチド(EcSlyD−VcLp15)である配列番号3を含む。 本発明にやはり含まれるのは、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための、イムノアッセイにおける添加剤としての、VcLp15ペプチドおよび場合によってシャペロンを含む、融合ポリペプチドの使用である。 さらなる態様において、本発明は、イムノアッセイにより、単離試料において、梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体を検出するための試薬キットであって、TpN17抗原、ならびにVcLp15ペプチドおよび場合によってシャペロンを含む融合ポリペプチドを含む、前記試薬キットに関する。 本発明はまた、単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、 a)体液試料を、前記試料中に存在する前記抗体が特異的に結合可能な特異的結合パートナーと混合することによって、免疫反応混合物を形成し b)VcLP15ペプチドおよび場合によってシャペロンを含む融合ポリペプチドを、前記特異的結合パートナーを前記試料に添加する前、添加すると同時、または添加した後のいずれかに、前記免疫反応混合物に添加し、 c)前記体液試料中に存在する抗体が、前記特異的結合パートナーと免疫反応して、免疫反応産物を形成することを可能にするのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持し;そして d)前記免疫反応産物のいずれかの存在および/または濃度を検出する工程を含む、前記方法にも関する。図1は、本発明記載の融合ポリペプチドEcSlyD−VcLp15の近UV CDスペクトル(紫外円二色性スペクトル)を示す;より詳細には、CD分光測定によって監視した際のEcSlyD−VcLp15の熱誘導性アンフォールディングを記載する、実施例4を参照されたい。図2は、近UV領域においてCD分光測定によって監視するような、本発明記載の融合ポリペプチドEcSlyD−VcLp15の融解曲線を示す。詳細には、実施例4を参照されたい。 表1は、本研究(実施例2)で用いる融合ポリペプチドのタンパク質パラメータを示す。 表2〜5は、梅毒イムノアッセイにおけるコレラ菌Lp15の抗干渉活性に対する、実施例5にしたがって行う実験の結果を示す。 表2は、単量体VcLp15(シャペロンとしてのSlyDと融合)を干渉減少のために添加する、トレポネーマ属特異的抗原としてのオリゴマーTpN17に関する結果を示す。 表3は、単量体VcLp15(シャペロンとしてのSlyDと融合)を干渉減少のために添加する、トレポネーマ属特異的抗原としての単量体TpN17に関する結果を示す。 表4は、オリゴマーVcLp15(シャペロンとしてのSkpと融合)を干渉減少のために添加する、トレポネーマ属特異的抗原としてのオリゴマーTpN17に関する結果を示す。 表5は、オリゴマーVcLp15(シャペロンとしてのSkpと融合)を干渉減少のために添加する、トレポネーマ属特異的抗原としての単量体TpN17に関する結果を示す。 配列番号1は、公的データベースUniProt、寄託番号Q9KQN6から回収可能であるような、コレラ菌リポタンパク質15(VcLp15)の完全アミノ酸配列(163残基)を示す。アミノ酸残基1〜25は、シグナル配列を構成し;成熟VcLp15はアミノ酸残基26〜163(下線)を含む。 配列番号2は、異なるシャペロン・モジュールとの融合に用いられるようなVcLp15配列(26〜163)を示す。成熟VcLp15配列(アミノ酸残基26〜163)はN末端シグナル配列(アミノ酸1〜25)を欠き、そしてシステイン残基を欠く。再フォールディングプロセスを容易にし、そしてジスルフィド付加物形成を抑制するため、74位および77位[前駆体タンパク質の番号付け]のVcLp15の2つの真正のシステイン残基をアラニン残基によって置換した−下線−。VcLp15は、精製を容易にし、そして金属カラム(Ni、Zn、Cu)を通じたマトリックスカップリング再フォールディングを可能にするため、C末端にヘキサ−ヒスチジンタグ(下線)を所持する。 配列番号3は、本発明記載の融合ポリペプチドであり、シャペロンとして大腸菌SlyDの1分子および成熟VcLp15配列(26〜163、下線)を含む、EcSlyD−VcLp15を示す。 配列番号4は、本発明記載の融合ポリペプチドであり、シャペロンとして大腸菌Skpの1分子および成熟VcLp15配列(26〜163、下線)を含む、EcSkp−VcLp15を示す。 配列番号5は、UniProt ID P29722の元にアクセス可能な公的データベースUniProtから回収されるような梅毒トレポネーマの完全TpN17配列(アミノ酸残基1〜156)を示す。 配列番号6は、実施例5に用いるようなTpN17配列を示す。このイムノアッセイのため、シグナル配列(アミノ酸残基1〜22)を欠く成熟TpN17タンパク質(アミノ酸残基23〜156)を用いた。本発明者らは、TpN17の4つの真正システイン残基が、該タンパク質の抗原性に不可欠であることを見出した(データ未提示)。したがって、再フォールディングプロセスを容易にし、そしてジスルフィド付加物形成などの有害な副反応を抑制するため、25位、29位、42位および58位(前駆体タンパク質の番号付け)のシステイン残基をアラニン残基によって置換した(下線)。 配列番号7は、異なるシャペロン・モジュールとの融合に用いられるようなTpN17配列アミノ酸残基23〜156(配列番号6も参照されたい)を示す。TpN17は、精製を容易にし、そして金属カラム(Ni、Zn、Cu)を通じたマトリックスカップリング再フォールディングを可能にするため、C末端にヘキサ−ヒスチジンタグ(下線)を所持する。天然様コンホメーションにあるタンパク質の成熟(プロセシング)型を得るために、TpN17のN末端シグナル配列(アミノ酸残基1〜22)を除いた。 配列番号8は、大腸菌SlyDの2分子(「タンデムSlyD」)がN末端に融合しているTpN17配列(下線)を示す;この分子はまた、EcSlyD−EcSlyD−TpN17またはEcSS−TpN17と称される。 配列番号9は、パスツレラ・マルトシダ(Pasteurella multocida)SlyDの2分子(「タンデムSlyD」)がN末端に融合しているTpN17配列(下線)を示す;この分子はまた、PmSlyD−PmSlyD−TpN17またはPmSS−TpN17と称される。 配列番号10は、大腸菌FkpAの1分子がN末端に融合しているTpN17配列(下線)を示す;この分子はまた、EcFkpA−TpN17と称される。 配列番号11は、大腸菌Skpの1分子がN末端に融合しているTpN17配列(下線)を示す;この分子はまた、EcSkp−TpN17と称される。 配列番号12は、いくつかのシャペロン部分間の、柔軟で、可溶性であり、そしてプロテアーゼ耐性であるスペーサーまたはリンカーとして使用可能な、グリシンリッチスペーサー(セリンによって分離される3つのグリシン単位を含む)のアミノ酸配列を示す。 発明の詳細な説明 梅毒トレポネーマに対する抗体の検出のためのイムノアッセイは、本発明者らによって立証可能であるように、偽陽性結果を示す傾向がある。特に、トレポネーマ属抗原TpN17を用いる場合、偽陽性シグナルの数は、有意に上昇する。この現象は、抗トレポネーマ属陰性であると間違いなく性質決定されているヒト血清で観察されてきている:TpN17抗原を用いる場合、かなりの数の偽陽性が見出された(実施例5を参照されたい)。それでも、TpN17は、トレポネーマ属感染における非常に重要な免疫原および梅毒血清学における最重要抗原である。その結果、TpN17抗原を単に除くことによって、この干渉問題を回避するのは、実行可能なオプションではない。 本発明者らは、したがって、抗TpN17抗体の信頼性があり、そして高感度である検出を可能にする、組換えTpN17変異体の設計から始めた。より正確には、本発明者らは、TpN17を、グリシンおよびセリン残基が豊富で柔軟なリンカーを通じて、可溶性を与えるシャペロン(タンデムSlyD、すなわちEcSlyD−EcSlyDおよびPmSlyD−PmSlyD)に融合させた。融合したフォールディングヘルパーの有益な影響のため、生じる融合ポリペプチドは、血清学的目的のための(すなわちイムノアッセイにおいて使用するための)優れた抗原の、物理化学的および免疫学的必要条件すべてを満たす。 本発明者らが自動化梅毒イムノアッセイのために設計したシャペロン−TpN17融合タンパク質は、非常に可溶性でそして反応性であり、そして二重抗原サンドイッチ形式で好適に使用される。上述のように、梅毒イムノアッセイのための実行可能性研究中、TpN17は、実際に、驚くべき診断重要性を持つ、免疫優性トレポネーマ属抗原であることがわかった。言い換えると、望ましい感受性を保証するため、梅毒イムノアッセイにおいてTpN17変異体を用いることが不可欠である。しかし、TpN17のシャペロンポリペプチド融合構築物を二重抗原サンドイッチ(DAGS)形式で用いる場合、問題が明らかになった:TpN17融合構築物が非対称形式で設計されている(すなわち、DAGS形式の対称性を、ビオチン側およびルテニウム側で、異なる融合パートナーを使用することによって、故意に無効にした)ものの、そして抗干渉添加剤としてシャペロン・ポリマーを使用しているにもかかわらず、よく性質決定された抗トレポネーマ属陰性ヒト血清の一団において、かなりの数の陽性結果が生じ、アッセイ特異性の実質的な悪化を導いた。明らかに、いくつかの抗トレポネーマ属陰性ヒト血清は、TpN17抗原と特異的に相互作用することが可能な、少なくとも1つの未知の因子を含有した。 驚いたことに、特定の配列相同性があるにもかかわらず、梅毒トレポネーマとはまったく関連しない生物であるヒト病原体コレラ菌由来の組換え由来タンパク質Lp15(VcLp15)をイムノアッセイ混合物に添加すると、実施例5および表2〜5に見られうるように、偽陽性のシグナル上昇が、陰性血清のシグナルレベルにまで減少することがわかった。本発明者らは、VcLp15が(非標識型で添加された際)、TpN17に対して向けられる未知の干渉因子(単数または複数)を認識し、これに結合し、そしてこれを抑えることが可能であると結論づける。実際、VcLp15が、偽陽性結果を減少させ、そしてトレポネーマ属抗原TpN17に基づく梅毒イムノアッセイの特異性を改善するための、非常に有益なツールであることがわかった。 詳細には、本発明は、単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、コレラ菌リポタンパク質15(VcLp15)のペプチド配列またはその部分配列を、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる、前記方法に関する。 抗原のコンホメーションが、試料中に存在する抗体によって認識されるために十分に天然様であるという条件で、任意のTpN17抗原またはその変異体を使用可能である。自然宿主、梅毒トレポネーマにおいて、TpN17のN末端シグナル配列(残基1〜22)は前駆体タンパク質から切断され、成熟TpN17部分が天然コンホメーションにフォールディングすることが可能になる。言い換えると、TpN17を原核宿主、例えば大腸菌において組換え的に産生する場合には、シグナル配列はなくてもよい。シグナル配列は、むしろ、ターゲット分子の適切なフォールディングを妨げ、そしてしたがって除かれる。好ましくは、UniProt ID P29722(配列番号5)または配列番号6記載のペプチド配列、あるいは配列番号5または6の部分配列を用いる。部分配列は、配列番号5または6の少なくとも約100アミノ酸を含む。最も好ましいのは、配列番号5のアミノ酸残基23〜156または配列番号6のアミノ酸残基1〜134を含むアミノ酸配列である。 好ましいTpN17抗原は、配列番号7〜11記載のポリペプチドであり、ここで、TpN17は、多様なシャペロンペプチド配列に融合している。精製後の再フォールディングプロセスを容易にし、そしてジスルフィド付加物形成を抑制するため、すべての予測されるTpN17抗体中のシステイン残基を、他のアミノ酸残基、例えばアラニンまたはセリンによって置換してもよい。これらの残基は、システイン側鎖の酸化感受性チオール部分を置換するが、サイズがシステイン残基とほぼ同じである。したがって、これらは通常、全体の三次元タンパク質構造に適合し、そしてシステイン不含タンパク質変異体のフォールディングおよび安定性をひどくは損なわない。 本発明の方法にしたがって、コレラ菌リポタンパク質15(VcLp15)のペプチド配列またはその部分配列を、干渉を減少させるための、すなわち偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる。好ましくは、VcLp15の前記部分配列は、配列番号1または2のアミノ酸残基26〜163を含む。配列番号1の残基1〜25を含むN末端シグナル配列はなくてもよい。本発明のさらなる様式において、配列番号1または2のアミノ酸残基26〜163の前記VcLp15部分配列を、N末端またはC末端あるいは両端で1〜5アミノ酸、一部切除(truncated)することも可能である。別の態様において、配列番号1または2のアミノ酸残基26〜163の前記VcLp15部分配列は、例えば、セリン残基またはシステインによるアラニン残基の置換のように、保存的アミノ酸置換を導入可能であるような方式で、修飾可能である。これらの3つのアミノ酸のいずれも、他の2つのアミノ酸によって置換可能である。当業者に知られる保存的アミノ酸置換の他の例は、セリン/システイン/アラニン、イソロイシン/バリンまたはフェニルアラニン/チロシンである。任意のこれらの修飾のため、コレラ菌リポタンパク質15(VcLp15)の三次元構造が不変のままであることが重要である。 好ましくは、上述の方法において用いるVcLp15ペプチド配列またはその部分配列を、シャペロンに融合させて、高い発現収量を提供し、そして精製後の再フォールディングプロセスを容易にする。 本発明のさらなる側面は、配列番号1または2記載のVcLp15ペプチド配列あるいは配列番号1または2の部分配列およびシャペロンを含む融合ポリペプチドである。 困難なターゲット抗原配列にシャペロンを融合させて、該配列を可溶化し、そしてより良性にする、ポリペプチド融合タンパク質の使用が、当該技術分野に周知であり、そして国際特許出願WO 2003/000878などに以前に非常に詳細に記載されてきている。有用な融合シャペロンの、既知であり、そしてよく文書化された例は、SlyD、FkpA、SkpおよびSlpAである。欧州特許出願EP2127678A1もまた参照されたい。 したがって、本発明のさらなる側面は、VcLp15ペプチド配列およびシャペロンを含む融合ポリペプチドである。好ましい態様において、シャペロンは、SlyD、SlpA、FkpAおよびSkpからなる群より選択される。これらのシャペロンは多様な生物から生じることも可能であり、好ましくは、シャペロン配列は大腸菌由来である。 本発明の別の態様において、VcLp15ペプチド配列を含む融合ポリペプチドは、配列番号3(EcSlyD−VcLp15)を含む。 干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための、イムノアッセイにおける添加剤としての、VcLp15ペプチドおよびシャペロンを含む融合ポリペプチドの使用もまた、本発明の側面である。 本発明の別の側面は、TpN17抗原、ならびに上記にさらに詳細に記載するような、VcLp15ペプチド配列およびシャペロンを含む融合ポリペプチドを含む、イムノアッセイにより単離試料において梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体を検出するための、試薬キットである。 さらに、本発明は、単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、 a)体液試料を、前記試料中に存在する前記抗体が特異的に結合可能な特異的結合パートナーと混合することによって、免疫反応混合物を形成し b)上に定義するようなVcLp15ペプチド配列を含む融合ポリペプチドを、前記特異的結合パートナーを前記試料に添加する前、添加すると同時、または添加した後のいずれかに、前記免疫反応混合物に添加し、 c)前記体液試料中に存在する抗体が、前記特異的結合パートナーと免疫反応して、免疫反応産物を形成することを可能にするのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持し;そして d)前記免疫反応産物のいずれかの存在および/または濃度を検出する工程を含む、前記方法を含む。 本発明の融合ポリペプチドを、前記結合パートナーを試料に添加する前、添加すると同時、または添加した後のいずれかに、イムノアッセイ混合物(試料および試料中の分析物抗体に特異的に結合する結合パートナーを含む)に添加してもよい。好ましくは、融合ポリペプチドを、分析物抗体を含有する体液試料を特異的結合パートナーと接触させる前に、試験試薬に添加する。 本発明の1つの態様において、いわゆる二重抗原サンドイッチ概念(DAGS)にしたがって、単離試料における抗トレポネーマ属抗体を検出するためのイムノアッセイを実行する。ときに、このアッセイ概念はまた、二重抗原架橋概念とも称され、これは2つの抗原が抗体分析物によって架橋されるためである。こうしたアッセイにおいて、抗体が、2つ(IgG、IgE)、4つ(IgA)または10/12(IgM)のパラトープで、所定の抗原の少なくとも2つの異なる分子と結合する能力が必要であり、そしてこうした能力が用いられる。 より詳細には、2つの異なるTpN17抗原、すなわち第一の(「固相」)TpN17抗原および第二の(「検出」)TpN17抗原と、抗トレポネーマ属抗体を含有する試料をインキュベーションすることによって、二重抗原架橋形式にしたがった抗トレポネーマ属抗体の決定のためのイムノアッセイを行い、ここで前記抗原は各々、前記抗トレポネーマ属抗体に特異的に結合する。第一の抗原は、固相に直接または間接的に結合するかまたは結合可能であり、そして通常、ビオチン/アビジンのようなバイオアフィン(bioaffine)結合対の一部であるエフェクター基を所持する。例えば、第一の抗原をビオチンにコンジュゲート化させた場合、固相をアビジンまたはストレプトアビジンのいずれかでコーティングする。第二の抗原は、検出可能標識を所持する。次いで、第一の抗原、試料抗体および第二の抗原を含む免疫反応混合物が形成される。前記抗原に試料を添加する前、または免疫反応混合物が形成された後のいずれかに、第一の抗原が結合可能な固相を添加する。体液試料中の前記TpN17抗原に対する抗トレポネーマ属抗体が、前記TpN17抗原と免疫反応して、免疫反応産物を形成するのに十分な期間、この免疫反応混合物を維持する。次の工程は、液相を固相から分離する分離工程である。最終的に、任意の前記免疫反応産物の存在を、固相または液相あるいは両方で検出する。 前記DAGSイムノアッセイにおいて、「固相抗原」および「検出抗原」の基本構造は同じである。二重抗原架橋アッセイにおいて、免疫学的に交差反応性である、類似であるが異なるTpN17抗原を使用することもまた可能である。こうしたアッセイを実行するための本質的な必要条件は、単数または複数の適切なエピトープが両方の抗原上に存在することである。本発明にしたがって、各TpN17抗原に関する異なる融合部分を用いることが望ましく(例えばEcFkpAを固相側でTpN17に融合させ、そしてEcSkpを検出側でTpN17に融合させる)、これはこうした変動が、DAGS形式の対称性を壊し、そしてしたがって、イムノアッセイの偽陽性結果を導くであろう融合シャペロンの抗体仲介性架橋の問題を減少させるためである。簡潔には、構造的に離れた融合パートナーをDAGS形式の両側で使用すると、望ましくない免疫学的交差反応が減少し、そしてしたがって特異性が改善される。 したがって、本発明はまた、単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、VcLp15のペプチド配列を、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる、前記方法にも関する。前記方法は、該アッセイが二重抗原サンドイッチ形式(DAGS)で実行されることでさらに特徴付けられる。さらに、前記アッセイは、2つのTpN17抗原融合ポリペプチド−第一および第二のTpN17抗原−を用い、ここで、どちらのTpN17抗原も同一であるか、または少なくとも同じ抗体に対して免疫学的に交差反応性であり、したがって、試料中に存在する抗体によって、両方の抗原が架橋されることが可能である。さらに、第一および第二の抗原を、先行する段落に記載するように、異なるシャペロンに融合させる。 さらに、SkpおよびFkpAのような特異的シャペロン融合パートナーの使用は、かなり改善されたIgM認識および検出を容易にしうる。結合のアビディティ様式のため、IgM分子は、中程度から高いエピトープ密度を所持するポリマー性抗原としか反応できない。SkpおよびFkpAの両方は、グラム陰性細菌の周辺質におけるフォールディングヘルパーとしての役割を果たすオリゴマーシャペロンである。驚いたことに、本発明者らは巨大ターゲット分子がシャペロンのC末端に融合した際、SkpおよびFkpAのクオータリー(quartery)構造が維持されることを見出している。その結果、FkpA−TpN17およびSkp−TpN17融合タンパク質は、IgM分子を検出するのに十分な定義されるエピトープ密度を持つ天然オリゴマーを、再現可能に形成する。高感度でそして特異的なIgM検出は、初期および一次梅毒感染の信頼性がある検出を保証する、非常に重要な特徴である。本発明者らは、総免疫グロブリン検出(すなわちIgGおよびIgM両方の検出)のためのイムノアッセイを発展させることを目的としているため、オリゴマー抗原モジュールFkpA−TpN17およびSkp−TpN17は、DAGS形式の両側の特定因子として、好適に使用可能である(例えばFkpA−TpN17−ビオチンおよびSkp−TpN17−ルテニウム)。FkpAおよびSkpは構造の点では非常に別個の型であるため、望ましくない免疫学的交差反応および融合パートナーを通じた架橋のリスクは非常に低い。化学的に重合させたFkpAおよびSkp抗干渉添加剤をアッセイに添加することによって、これはさらに減少する。 分析物を検出するためのイムノアッセイの多様なさらなる形式および原理、ならびに異なる様式の検出が、広く記載されてきており、そしてこれらは、当業者によく知られる。 本発明にしたがって、トレポネーマ属抗体が検出可能でありうる任意の生物学的単離試料が使用可能である。特に、ヒト血液、血清、血漿または唾液は、試料材料として適切である。 本発明はさらに、実施例セクションに例示される。 実施例1 TpN17およびVcLp15シャペロン融合ポリペプチドのクローニングおよび精製 発現カセットのクローニング Novagen(米国ウィスコンシン州マディソン)のpET24a発現プラスミドに基づいて、TpN17およびVcLp15融合タンパク質をコードする発現カセットを、本質的に記載されるように得た(Scholz, C.ら, J. Mol. Biol.(2005)345, 1229−1241)。TpN17およびVcLp15抗原の配列を、SwissProtデータベース(それぞれ、SwissProt ID P29722およびQ9KQN6)から回収した。インフレームでN末端に融合させたグリシンリッチリンカー領域を含む、成熟TpN17 aa 23〜156(アミノ酸残基1〜22に渡るシグナルペプチドを除いた)をコードする合成遺伝子をMedigenomix(ドイツ・マルティンスリート)から購入した。酸化または分子間ジスルフィド架橋などの望ましくない副次的影響を防止するため、25位、29位、42位および58位のTpN17のシステイン残基を、アラニン残基に変化させた。BamHIおよびXhoI制限部位は、それぞれ、TpN17コード領域の5’および3’端であった。グリシンリッチリンカー領域を通じて連結され、そしてC末端にさらなるリンカー領域部分を含む、2つのEcSlyD単位(配列番号1記載の残基1〜165、SwissProt寄託番号第P0A9K9号)をコードするさらなる合成遺伝子を、同様に、Medigenomixから購入した。NdeIおよびBamHI制限部位は、それぞれ、このカセットの5’および3’端であった。単純な連結による、シャペロン部分EcSlyD−EcSlyDおよびTpN17抗原部分のインフレーム融合を可能にするように、遺伝子および制限部位を設計した。偶発的な組換えプロセスを回避し、そして大腸菌宿主における発現カセットの遺伝的安定性を増加させるため、EcSlyD単位をコードするヌクレオチド配列を、伸長されたリンカー領域をコードするヌクレオチド配列と同様に、縮重させ、すなわち、同一のアミノ酸配列をコードするように、異なるコドンの組み合わせを用いた。 pET24aベクターをNdeIおよびXhoIで消化し、そしてインフレームでトレポネーマ属TpN17 23〜156に融合させたタンデム−SlyDを含むカセットを挿入した。パスツレラ・マルトシダSlyD(1〜156、SwissProt ID Q9CKP2)あるいは大腸菌Skp(21〜161、SwissProt ID P0AEU7)またはFkpA(26〜270、SwissProt ID P45523)を含む発現カセットを、それに応じて構築し、同様に、TpN17と異なるターゲットポリペプチド、特にコレラ菌リポタンパク質Lp15(26〜163、SwissProt ID Q9KQN6)を含む発現カセットを構築した。TpN17でのように、酸化または分子間ジスルフィド架橋などの望ましくない副次的影響を防止するため、74位および77位(前駆体Lp15の番号付け)のVcLp15の真正システイン残基をアラニン残基に変化させた。すべての組換え融合ポリペプチド変異体は、Ni−NTA補助精製および再フォールディングを容易にするためC末端ヘキサヒスチジンタグを含有した。QuikChange(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)および標準的PCR技術を用いて、それぞれの発現カセットにおいて、点突然変異、欠失、挿入および伸長変異体または制限部位を生成した。 以下の図は、N末端にインフレームで融合した2つのSlyDシャペロン単位を所持するトレポネーマ属TpN17全長抗原23〜156のスキームを示す。SlyD融合パートナーが大腸菌起源であることを示すため、図示する融合ポリペプチドは、EcSlyD−EcSlyD−TpN17(23〜156)と命名されている;配列番号8も参照されたい。 生じたプラスミドの挿入物を配列決定し、そして望ましい融合タンパク質をコードすることを見出した。TpN17およびVcLp15融合ポリペプチドの完全アミノ酸配列を配列番号2〜4(VcLp15)および7〜11(TpN17)に示す。リンカーLのアミノ酸配列を配列番号12に示す。 TpN17またはVcLp15を含む融合タンパク質の精製 実質的に同一のプロトコルを用いることによって、すべてのTpN17およびVcLp15融合タンパク質変異体を精製した。特定のpET24a発現プラスミドを宿する大腸菌BL21(DE3)細胞を、カナマイシン(30μg/ml)を加えたLB培地中、37℃で1.5のOD600まで増殖させ、そして1mMイソプロピル−β−D−チオガラクトシドを添加することによって、細胞質溶解性過剰発現を誘導した。誘導3時間後、遠心分離(5000gで20分)によって細胞を採取し、凍結し、そして−20℃で保存した。細胞溶解のため、冷却した50mMリン酸ナトリウムpH8.0、7.0M GdmCl、5mMイミダゾール中に凍結ペレットを再懸濁し、そして再懸濁物を氷上で2時間攪拌して、細胞溶解を完了させた。遠心分離および濾過(0.45μm/0.2μm)後、未精製溶解物を、5.0mM TCEPを含む溶解緩衝液で平衡化させたNi−NTAカラム上に適用した。続く洗浄工程を、それぞれのターゲットタンパク質用に調整して、そしてこれは、5〜15mMイミダゾール(50mMリン酸ナトリウムpH8.0、7.0M GdmCl、5.0mM TCEP中)の範囲であった。少なくとも10〜15体積の洗浄緩衝液を適用した。次いで、GdmCl溶液を、50mMリン酸カリウムpH8.0、100mM KCl、10mMイミダゾール、5.0mM TCEPによって置換して、マトリックスに結合したタンパク質のコンホメーション的再フォールディングを誘導した。同時精製プロテアーゼの再活性化を回避するため、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Complete(登録商標)EDTA不含、Roche)を再フォールディング緩衝液中に含んだ。総計15〜20カラム体積の再フォールディング緩衝液を一晩反応で適用した。次いで、3〜5カラム体積の50mMリン酸カリウムpH8.0、100mM KCl、10mMイミダゾールで洗浄することによって、TCEPおよびComplete(登録商標)EDTA不含阻害剤カクテルを除去した。続いて、非特異的に結合しているタンパク質混入物質を除去するため、イミダゾール濃度を、なお50mMリン酸カリウムpH8.0、100mM KCl中で、25〜50mM(それぞれのターゲットタンパク質に応じる)に上昇させた。次いで、同じ緩衝液中、500mMイミダゾールによって、天然タンパク質を溶出させた。Tricine−SDS−PAGEによって、純度に関してタンパク質含有分画を評価し、そしてプールした。最後に、タンパク質をサイズ排除クロマトグラフィ(Superdex HiLoad、Amersham Pharmacia)に供し、そしてタンパク質含有分画をプールし、そしてAmiconセル(YM10)中、10〜20mg/mlに濃縮した。 カップリングした精製および再フォールディングプロトコル後、それぞれのターゲットタンパク質に応じて、およそ10〜30mgのタンパク質収量を、1gの大腸菌湿細胞から得ることが可能であった。 実施例2 分光光度測定 Uvikon XL二重光線分光光度計を用いて、タンパク質濃度測定を実行した。Pace(1995), Protein Sci. 4, 2411−2423によって記載される方法を用いることによって、モル消光係数(ε280)を決定した。別個の融合ポリペプチドに用いたモル消光係数(εM280)を表1に明記する。 表1:本研究で用いた融合ポリペプチド変異体のタンパク質パラメータ。すべてのパラメータは、それぞれのタンパク質単量体を指す。 融合ポリペプチド変異体のアミノ酸配列を、それぞれ、配列番号3、4、8、9、10および11に示す。 実施例3 TpN17融合タンパク質へのビオチンおよびルテニウム部分のカップリング TpN17融合ポリペプチドのリジンε−アミノ基を、10〜30mg/mlのタンパク質濃度で、それぞれ、N−ヒドロキシ−スクシンイミド活性化ビオチンおよびルテニウム標識分子で修飾した。標識/タンパク質比は、それぞれの融合タンパク質に応じて、2:1〜5:1(mol:mol)で多様であった。反応緩衝液は、150mMリン酸カリウムpH8.0、100mM KCl、0.5mM EDTAであった。反応を室温で15分間行い、そして10mMの最終濃度まで緩衝L−リジンを添加することによって、停止させた。標識の加水分解不活性化を回避するため、それぞれのストック溶液を乾燥DMSO(seccosolv品質、Merck、ドイツ)中で調製した。反応緩衝液中の最大25%のDMSO濃度は、研究したすべての融合タンパク質によく許容された。カップリング反応後、未精製タンパク質コンジュゲートをゲル濾過カラム(Superdex 200 HiLoad)上に通過させることによって、未反応未結合標識を除去した。 実施例4 CDに検出される、EcSlyD−VcLp15の熱誘導性アンフォールディング サーモスタットを備えた細胞ホルダーを持つJasco−720分光旋光計を用いて、近UV CDスペクトルを記録し、そして平均残基楕円率に変換した。緩衝液は、50mMリン酸カリウムpH7.0、250mM KCl、0.5mM EDTAであった。経路長は0.2cmであり、タンパク質濃度は〜74μM(2.6mg/ml)であった。測定範囲は250〜330nmであり、バンド幅は1.0nmであり、スキャン速度は0.5nmの解像度で20nm/分であり、そして反応は1秒であった。シグナル対ノイズ比を改善するため、スペクトルを9回測定し、そして平均した。 円二色性分光測定(CD)は、タンパク質の二次構造および三次構造両方を評価する最適な方法である。芳香族領域(260〜320nm)における楕円率は、タンパク質内の三次接触(すなわち通常通りにフォールディングしたタンパク質の球状構造)に関して報告し、そして天然様フォールド(コンホメーション)のフィンガープリント領域と見なされる。 EcSlyD−VcLp15の近UV CDスペクトルを監視して、精製プロセスにおいて非常に重要な工程であるマトリックスカップリング再フォールディング法後に、融合タンパク質が秩序だったコンホメーションを採用するかどうかの疑問に取り組んだ。答えは非常に明快である:EcSlyD−VcLp15の近UV CDシグナルは、明白に、融合ポリペプチドの秩序だった三次構造を報告する。EcSlyD−VcLp15の芳香族残基は、明らかに、親油性タンパク質コア中に包埋されており、そしてしたがって、融合構築物内のEcSlyDおよびVcLp15両方が天然様コンホメーションであることを強く示す非対称環境を経験する(図1)。 EcSlyD−VcLp15の熱誘導性アンフォールディングが可逆性であるかどうかの疑問に取り組むため、281nmの検出波長の近UV領域において、融解曲線を監視した。温度範囲は20〜80℃であり、バンド幅は1.0nmであり、温度勾配は1℃/分であり、そして反応は4秒であった(図2を参照されたい)。 熱誘導性アンフォールディングを281nm(EcSlyD−VcLp15に関する最大シグナル振幅の波長である)で監視した。加熱した際、EcSlyD−VcLp15分子の天然コンホメーションを安定化する非共有接触は、ゆるくなり、そして最終的に分解される。この熱誘導性アンフォールディングは、図2に示すようなCDシグナル中の増加に反映される。80℃で、EcSlyD−VcLp15は、完全にアンフォールディングされる。驚くべきことに、タンパク質溶液を20℃まで冷却すると、天然様CDシグナルが再び回復する。わずかな履歴現象にもかかわらず、アンフォールディング曲線および再フォールディング曲線は、実質的に重ね合わせであり、EcSlyD−VcLp15が可逆的再フォールディングの振る舞いをすることが強く示唆される。アンフォールディングの協同性はかなり低く、そしてタンパク質融解曲線の典型的なシグモイド形状は、EcSlyD−VcLp15の場合には観察されないことを認めざるを得ない。それでも、本発明者らは、タンパク質溶液を80℃から20℃に冷却した際、明らかに、EcSlyD−VcLp15が天然様コンホメーションを再採用可能であることを見出した。実際、熱誘導性アンフォールディング前および後に監視した近UV CDスペクトルは、実質的に重ね合わせである(図1を参照されたい)。結論として、EcSlyD−VcLp15は、ロバストなフォールディング特性を所持し、これは融合ポリペプチドに関しては傑出しており、そしてイムノアッセイにおいて抗干渉添加剤として働く分子に関しては非常に望ましい。これらの良性物理化学的特性は、傑出した可溶性(リン酸緩衝生理食塩水中、>130mg/ml)および抗トレポネーマ属イムノアッセイにおいて抗干渉潜在能力を有することと組み合わせて、EcSlyD−VcLp15を、梅毒血清学において、高い特異性を保証する、非常に魅力的な分子としている。 実施例5 梅毒イムノアッセイにおけるコレラ菌Lp15の抗干渉活性 コレラ菌Lp15のポリペプチド融合変異体の抗干渉活性を、自動化Elecsys(登録商標)2010分析装置(Roche Diagnostics GmbH)において評価した。Elecsys(登録商標)は、Rocheグループの登録商標である。二重抗原サンドイッチ形式で測定を行った。 Elecsys(登録商標)2010におけるシグナル検出は、電気化学発光に基づく。ビオチン・コンジュゲート(すなわち捕捉抗原)はストレプトアビジン・コーティング磁気ビーズの表面上に固定される一方、検出抗原は、シグナル伝達部分として、複合体化されたルテニウム・カチオン(レドックス状態2+および3+の間で切り替え)を所持する。特異的免疫グロブリン分析物の存在下で、発色物質ルテニウム複合体を固相に架橋し、そして該複合体は、白金電極での励起後、620nmで光を放出する。シグナル出力は、恣意的光単位である。 組換え抗干渉Lp15ポリペプチドを二重抗原サンドイッチ(DAGS)イムノアッセイ形式で評価した。この目的に向けて、組換えトレポネーマ属抗原TpN17を、それぞれ、ビオチンおよびルテニウム・コンジュゲートとして用いて、ヒト血清中の抗TpN17抗体を検出した。TpN17は、梅毒トレポネーマの免疫優性抗原の1つであり、そしてTpN17の可溶性変異体は、本特許出願において開示するように、梅毒感染の検出のための非常に有益なツールである。抗TpN17 IgG分子を検出するため、EcSlyD−EcSlyD−TpN17−ビオチンおよびPmSlyD−PmSlyD−TpN17−ルテニウムを、それぞれ、R1(試薬緩衝液1)およびR2(試薬緩衝液2)中で用いた。抗TpN17 IgMおよびIgG分子の両方を検出するため、EcFkpA−TpN17−ビオチンおよびEcSkp−TpN17−ルテニウムを、それぞれ、R1(試薬緩衝液1)およびR2(試薬緩衝液2)中で用いた。R1およびR2中の抗原コンジュゲートの濃度は、それぞれ、各200ng/mlであった。 第一の実験において、トレポネーマ属に関して陰性であるヒト血清を、前述のDAGSイムノアッセイ・セットアップで評価した。もっぱらTpN17部分をターゲティングする偽陽性の発生率に関するヒントを得るため、抗干渉物質として通例用いられる、GDA架橋可溶性異種性SlyDポリマーであるSS−らせん(GDA、P)の存在下でスクリーニングを行った。さらに、まさにTpN17部分であるものとは異なる部分による干渉現象を排除するため、別の抗干渉モジュールであるEcSkp−EcSlyD−EcSlyDをアッセイ緩衝液に含めた。SS−らせん(GDA、P)およびEcSkp−EcSlyD−EcSlyDを、非常に過剰な量で(10μg/ml)、R1(ビオチン・コンジュゲートを含有する試薬1緩衝液)に添加した。75μl R1(試薬1緩衝液、ビオチン・コンジュゲートおよび抗干渉ポリマー)、75μl R2(試薬2緩衝液、ルテニウム・コンジュゲート)、10μl試料(ヒト血清)および40μlビーズ懸濁物を次いで混合し、そしてインキュベーションして、ほぼ200μlの反応体積を生じた。 このアプローチによって、TpN17を抗原として用いた際、抗梅毒トレポネーマ抗体に関して明らかに陰性であるが、DAGS形式で上昇したシグナルを示す、およそ8(〜2500陰性ヒト血清のうち)のヒト血清を見出すことが可能であった。しかし、TpN17の代わりにTpN15またはTpN47などの他のトレポネーマ属抗原を用いた場合、Elecsys(登録商標)シグナルは増加しなかった。この知見は、特異的抗TpN17干渉因子を示す。 表2は、オリゴマーTpN17アッセイ・セットアップにおける非標識単量体EcSlyD−VcLp15の抗干渉効果を例示する。EcFkpA−TpN17−Bi(DDS)およびEcSkp−TpN17−BPRu(SK(2)DSS)をオリゴマー検出抗原として用い、そして増加する濃度で、非標識EcSlyD−VcLp15をR1に添加した。真の陽性血清のシグナルは、Lp15の添加に際して有意に抑えられることが明らかである。それでも、陽性シグナルは、VcLp15を1μg/mlなどの高濃度でR1に添加した際であっても、明らかに陽性のままである。予期されるように、トレポネーマ属感染が明らかに排除されている、よく性質決定されたヒト血清(Trina Bioreactives AG、スイス・ネーニコン)は、VcLp15の添加とは関わりなく、システムに生得的なバックグラウンドシグナル(〜450カウント)に近い、非常に低いシグナルを示した。干渉血清、例えばC131839、C132663、C132723、R183554およびC132976は、VcLp15抗干渉モジュールがまったく添加されない場合、有意に上昇したシグナルを示す。陰性血清の平均シグナルは、〜770カウントであったため、15,146カウント(ヒト血清C132663に関するもの)または8,503カウント(ヒト血清C132723に関するもの)のシグナルレベルは、梅毒感染を疑わせる、真の陽性結果を示すであろうことが明らかである。R1中、1.0μg/mlの濃度でVcLp15を添加すると、シグナル上昇が、正常のバックグラウンドシグナルレベルまで減少し、推定上の陽性結果が偽陽性であることが明らかになることは注目に値する。同じことは、非標識単量体EcSlyD−VcLp15を単量体TpN17 DAGSセットアップで添加した場合にも当てはまる(表3)。この場合も、EcSlyD−VcLp15を1.0μg/mlの濃度でR1に添加した際、ヒト血清C132663と同様に、有意に上昇したシグナルレベルが、11,128カウントから651カウントに減少する。逆に、オリゴマーVcLp15(EcSkp−VcLp15)は、それぞれ、上昇してそして偽である陽性シグナルを、オリゴマー(表4)および単量体(表5)TpN17 DAGSセットアップの両方において、陰性シグナルバックグラウンドまで効率的に抑える。 梅毒トレポネーマ由来のTpN17およびコレラ菌由来のリポタンパク質15は、97アミノ酸残基のストレッチに渡って、34%の配列同一性および55%の相同性を共有する。免疫学的交差反応が起こるのは、おそらく、この共有配列(およびおそらく構造的)モチーフを通じてであり、高いシグナルを誘発し、そしてしたがってTpN17抗原に基づくトレポネーマ属アッセイにおける陽性結果を偽する。表2〜5に示すように、アッセイ混合物にVcLp15抗干渉タンパク質を添加すると、上昇したシグナルが正常の陰性にまで減少する。開示するデータは、非常に強い干渉があったとしても、すなわち高い偽陽性であったとしても、単量体型またはオリゴマー型のコレラ菌リポタンパク質15を添加することによって、効率的に排除可能であるという説得力がある証拠を提供する。表2〜5に示す結果の結論は、以下の通りである:DAGSイムノアッセイにおいて組換えTpN17抗原を使用したための干渉は、かなり頻繁であり(500の陰性血清中、>1)、そしてこれらは、梅毒トレポネーマから系統樹的にかなり遠い細菌属であるコレラ菌由来のリポタンパク質15を添加することによって効率的に軽減可能である。簡単に言うと、本出願は、容易に入手可能な組換えタンパク質の添加が、抗トレポネーマ属抗体の検出のためのTpN17に基づく梅毒イムノアッセイの特異性を有意に改善することを開示する。 表2: オリゴマーTpN17;単量体VcLp15の添加 表3: 単量体TpN17;単量体VcLp15の添加 表4: オリゴマーTpN17;オリゴマーVcLp15の添加 表5: 単量体TpN17;オリゴマーVcLp15の添加 単離試料において、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)のTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、コレラ菌(Vibrio cholerae)リポタンパク質15(VcLp15)のペプチド配列を、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる、前記方法。 UniProtID Q9KQN6(配列番号1)または配列番号2記載のペプチド配列、あるいは配列番号1または2の部分配列を用いる、請求項1記載の方法。 VcLp15の前記部分配列が、配列番号1または2のアミノ酸26〜163を含む、請求項2記載の方法。 前記VcLp15ペプチド配列またはその部分配列がシャペロンに融合している、請求項1〜3のいずれか記載の方法。 配列番号1または2記載のVcLp15ペプチド配列あるいは配列番号1または2の部分配列およびシャペロンを含む、融合ポリペプチド。 前記シャペロンがSlyD、SlpA、FkpAおよびSkpからなる群より選択される、請求項5記載の融合ポリペプチド。 配列番号3を含む請求項5または6記載の融合ポリペプチド。 干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするためのイムノアッセイにおける添加剤としての、請求項5〜7記載の融合ポリペプチドの使用。 TpN17抗原および請求項5〜7記載の融合ポリペプチドを含む、イムノアッセイにより単離試料において梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体を検出するための、試薬キット。 単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、 a)体液試料を、前記試料中に存在する前記抗体が特異的に結合可能な特異的結合パートナーと混合することによって、免疫反応混合物を形成し、 b)請求項5〜7のいずれか記載の融合ポリペプチドを、前記特異的結合パートナーを前記試料に添加する前、添加すると同時、または添加した後のいずれかに、前記免疫反応混合物に添加し、 c)前記体液試料中に存在する抗体が、前記特異的結合パートナーと免疫反応して、免疫反応産物を形成することを可能にするのに十分な期間、前記免疫反応混合物を維持し;そして d)前記免疫反応産物のいずれかの存在および/または濃度を検出する工程を含む、前記方法。 2つのTpN17抗原、 第一のTpN17抗原であって、TpN17配列および第一のシャペロンを含み、固相に結合可能である、前記の第一のTpN17抗原、 第二のTpN17抗原であって、TpN17配列および第二のシャペロンを含み、検出可能標識を所持する、前記の第二のTpN17抗原を、単離試料中で検出しようとする抗体に関する特異的結合パートナーとして用い、どちらのTpN17抗原も同一であるかまたは免疫学的に交差反応性であり、したがって、これらは試料中に存在する抗体によって特異的に結合可能であり、そして第一および第二のシャペロンが異なる請求項10記載の方法。 第一のTpN17抗原がシャペロンとして大腸菌(E. coli)FkpAを含み、そして第二のTpN17抗原がシャペロンとして大腸菌Skpを含む、請求項11記載の方法。 【課題】抗トレポネーマ属抗体の検出のための、TpN17に基づくイムノアッセイの偽陽性結果を回避し、そして特異性を増加させるための手段および方法を提供する。【解決手段】単離試料において、梅毒トレポネーマのTpN17抗原に対する抗体を検出するための方法であって、コレラ菌リポタンパク質15(VcLp15)のペプチド配列またはその部分配列を、干渉を減少させるため、すなわち偽陽性結果を最小限にするための試薬として用いる、前記方法に関する。さらに、VcLp15ペプチド配列およびシャペロンを含む融合ポリペプチド、干渉を減少させ、そして偽陽性結果を最小限にするための、イムノアッセイにおける添加剤としての該融合ポリペプチドの使用、ならびにTpN17抗原および前記VcLp15−シャペロン融合ポリペプチドを含む単離試料において梅毒トレポネーマ抗原に対する抗体を検出するための試薬キットに関する。【選択図】なし配列表


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