タイトル: | 公開特許公報(A)_酸化亜鉛多結晶薄膜を用いたガスセンサ |
出願番号: | 2014145377 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 27/12 |
山本 哲也 宋 華平 牧野 久雄 野本 淳一 JP 2015062007 公開特許公報(A) 20150402 2014145377 20140715 酸化亜鉛多結晶薄膜を用いたガスセンサ 公立大学法人高知工科大学 509093026 清原 義博 100082072 山本 哲也 宋 華平 牧野 久雄 野本 淳一 JP 2013172637 20130822 G01N 27/12 20060101AFI20150306BHJP JPG01N27/12 C 5 1 OL 14 2G046 2G046BA01 2G046BA09 2G046FB02 2G046FE03 2G046FE48 本発明は、種々の可燃性ガス(アクリロニトリル、アクロレイン、アセチレン、アセトアルデヒド、アルシン、アンモニア、一酸化炭素、エタン、エチルアミン、エチルベンゼン、エチレン、塩化エチル、塩化ビニル、クロルメチル、酸化エチレン、酸化プロピレン、シアン化水素、シクロプロパン、ジシラン、ジボラン、ジメチルアミン、水素、セレン化水素、トリメチルアミン、二硫化炭素、ブタジエン、ブタン、ブチレン、プロパン、プロピレン、ブロムメチル、ベンゼン、ホスフィン、メタン、モノゲルマン、モノシラン、モノメチルアミン、メチルエーテル、硫化水素、空気中の爆発下限界が10%以下のガス、爆発限界の上限界と下限界の差が20%以上のガス)の検出に用いることができる酸化亜鉛多結晶薄膜を用いたガスセンサに関するものである。詳しくは、増幅回路を使用しなくても高いセンサ感度を有するガスセンサに関するものである。 環境とエネルギー問題への解決策の1つとして期待される燃料電池車の安全性向上には、水素センサが不可欠である。水素(H2)は漏れやすく、火花でも着火しやすいため、最も危険な爆発力のあるガスである。 また、他の可燃性ガス(例:一酸化炭素など)についても、安全のためにガスセンサは不可欠なものとなっている。 従来の半導体ガスセンサでは、室温では絶縁性である多結晶酸化スズ(SnO2)半導体などを用いた感ガス材料とその感ガス材料の加熱用ヒータとから形成する構造を採用している。従来のガス検知の機構は、吸着ガスを水素ガス(H2)に例として挙げると次のように考えられてきた。感ガス材料(SnO2など)表面あるいは粒界に存在するマイナス電荷を有した酸素イオン(O−、O2−)と表面吸着したH2との間で、酸化還元反応(H2+O−→ H2O+自由電子e-、H2+O2−→H2O+自由電子2e-)が生じることによって生成される自由電子e-を使うことにある。その自由電子密度に応じた電流が付加される電圧下で流れることで、抵抗が小さくなり、すなわち、半導体材料の抵抗値が変化し、この抵抗値の変化を測定してガス検知を行う。ガス検知には、抵抗値の変化を測定する場合と、出力信号として前記電流増加を測定してガス検知を行う場合がある。 前記従来のガス検知の機構には、感ガス材料の表面あるいは粒界に酸素イオンを生成するための捕獲される電子を供給する必要があり、ガス検知材料への加熱温度制御が必要不可欠である。室温で絶縁(高い抵抗値)である材料では、電子は材料を構成する原子(例:SnO2ではスズSnと酸素O)間の化学結合を構成する結合性電子としての役割を担う。しかし、この結合性電子は動くことができない、すなわちキャリアとして働かない。そこで、価電子帯中にある結合性電子を熱で励起し、キャリアとして働くことが可能となる伝導帯へエネルギー的に上げなければならない。この電子が中性状態にあった酸素原子に捕獲されて生成されるのが前記酸素イオン(O−、O2−)である。 従来の半導体ガスセンサは、室温で絶縁(高い抵抗値)である材料を用いるために出力信号である電流の大きさがマイクロアンペアオーダーと小さいため、増幅回路を用いて出力信号を増幅する必要があった。さらに、従来の半導体ガスセンサの感度は、温度に強く依存するため、従来の半導体ガスセンサでは、感ガス材料とヒータとを同じ基板上に形成する構造を採用している(特許文献1)。従来のガスセンサのセンサ感度は、温度の上昇に伴い上昇し、350〜500℃で最大感度を示し、さらに高温では低下する。 このように、従来のガスセンサは出力信号が小さいため、センサ感度としての高さを制御するためには増幅回路が必要であった。また、常にヒータで感ガス材料を非常に高温(350〜500℃)に加熱する必要があり、変動の少ない電源を使用することが必要となる。特開2004−37224号公報 本発明は、上述したような問題点を解決すべくなされたものであって、増幅回路を使用しなくても高いセンサ感度を有する酸化亜鉛多結晶薄膜を用いたガスセンサを提供するものである。 請求項1に係る発明は、基板と、該基板上に形成された透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜からなるガス検知層と、前記ガス検知層に接触して設けられた電極と、を備えるガスセンサであって、前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜は、酸化亜鉛にGa及び/又はAlからなる元素が添加されてなるとともに、キャリア密度3.0×1020/cm3以下、膜厚50nm以下の多結晶薄膜であることを特徴とするガスセンサに関する。 請求項2に係る発明は、前記キャリア密度が4.0×1019/cm3以上、3.0×1020/cm3以下であることを特徴とする請求項1記載のガスセンサに関する。 請求項3に係る発明は、前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の、X線回折(XRD)測定で得られる(0002)面からの回折ピークのωロッキングカーブの半値幅FWHM(ω)が、FWHM(ω)>3.5°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサに関する。 請求項4に係る発明は、前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の膜厚が20〜50nmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のガスセンサに関する。 請求項5に係る発明は、交流回路からなるセンサ回路を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のガスセンサに関する。 請求項1に係る発明によれば、ガス検知層を形成する透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜が、酸化亜鉛にGa及び/又はAlからなる元素が添加されてなるとともに、キャリア密度3.0×1020/cm3以下、膜厚50nm以下の多結晶薄膜であることにより、多結晶薄膜の粒界に可燃性ガスが吸着し易くなり、この吸着したガスによりガス検知層に流れる電流が減少する。この電流の減少を測定することでガス検知を行うことができ、この出力信号はミリアンペアオーダーと従来のガスセンサに比べて大きいため、増幅回路を用いることなくガス検知が可能となる。さらに、このガス検知機構によるセンサ感度は、温度依存性が低く、低温でも良好なセンサ感度を得ることができる。よって、非常に高温での加熱が必要なく、電力消費を抑えることができる。 請求項2に係る発明によれば、透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度が4.0×1019/cm3以上、3.0×1020/cm3以下であることにより、室温付近でホール移動度が温度に大きく依存しない薄膜電気特性とすることができる。 請求項3に係る発明によれば、前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の、X線回折(XRD)測定で得られる(0002)面からの回折ピークのωロッキングカーブの半値幅FWHM(ω)が、FWHM(ω)>3.5°であることにより、粒界に可燃性ガスが吸着し易くなり、その結果、ガス検知層に流れる電流が減少する。この電流の減少を測定することでガス検知を行うことができる。 請求項4に係る発明によれば、前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の膜厚が20〜50nmであることにより、十分な強度を有する低温でも良好なセンサ感度を持つガスセンサとすることができる。 請求項5に係る発明によれば、温度上昇による電圧の変化(温度ドリフトと呼ばれる)を回避することができ、これにより、センサ感度の精度の低下を防止することができる。本発明に係るガスセンサの構成を説明するための概略図である。本発明に係るガスセンサの酸化亜鉛多結晶薄膜の製造に用いるイオンプレーティング装置の概略図である。実施例及び比較例のガスセンサを評価するための測定装置の概略図である。 以下、本発明に係るガスセンサについて説明する。 図1は、本発明に係るガスセンサの構成を説明するための概略図である。 ガスセンサ(4)は、基板(1)と、基板(1)上に形成された透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜からなるガス検知層(2)と、ガス検知層(2)に接触して設けられた電極(3)とを有している。 基板(1)の材料としては、ガラス、単結晶半導体、多結晶半導体、セラミックス、ポリマー、酸化物ナノシート等を用いることができる。例えば、無アルカリガラス、シリコン単結晶(Si)、シリコン多結晶(Si)、サファイア単結晶(α−Al2O3)、アルミナ(Al2O3)、セルロース系フィルム(例:トリアセチルセルロース(TAC))、ポリエステル系フィルム(例:ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)、ポリカーボネート(PC)系フィルム、及び非晶性ポリオレフィン(PO)系フィルム等が用いられるが、これらに限定されない。 ガス検知層(2)は、酸化亜鉛にGa及び/又はAlからなる元素が添加されてなる透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜からなる。 Ga及び/又はAlからなる元素は導電性付与成分として添加される。 酸化亜鉛多結晶薄膜に含まれる元素の比率は、好ましくは0.1〜6重量%である。 この元素の比率が0.1重量%未満であると、酸化亜鉛多結晶薄膜の導電性を充分に向上させることができないため、好ましくない。 この元素の比率が6重量%を超えると、導電性が急激的に減少するため好ましくない。 本発明において、ガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度は、3.0×1020/cm3以下であり、好ましくは、4.0×1019/cm3以上、3.0×1020/cm3以下である。 酸化亜鉛多結晶薄膜は、単結晶状態となっている結晶子と、結晶子と結晶子との境界となる粒界とからなる。 酸化亜鉛多結晶薄膜の自由電子の移動度を決める主散乱機構は、キャリア密度3.0×1020/cm3を境に異なる。 キャリア密度が3.0×1020/cm3以下である場合、自由電子の移動度を決める散乱機構子は粒界散乱機構である。一方、キャリア密度が3.0×1020/cm3を超える場合、自由電子の移動度を決める主散乱機構は結晶子内散乱や熱による格子振動からの散乱機構である。 本発明のガスセンサ(4)は、ガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度が3.0×1020/cm3以下であることにより、ガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜の粒界に可燃性ガスが吸着し易い。この吸着したガスは、粒界に流れる電流を反射させる役割を担うことから、ガス検知層(2)に流れる電流を抑止し、この電流値を減少させる。本発明に係るガスセンサ(4)は、この電流の減少を出力信号として測定することでガス検知を行うものであり、微量電流の微量増加を測定してガス検知を行う従来のガスセンサとは、ガス検知の機構が全く異なるものである。 また、この特性を有する酸化亜鉛透明導電膜をガス検知層(2)に用いることにより、出力信号がミリアンペアオーダーと従来のガスセンサに比べて大きくなる。よって、増幅回路を用いることなく高いセンサ感度でのガス検知が可能となる。さらに、このガス検知機構によるセンサ感度は、温度依存性が低く、低温でも良好なセンサ感度を得ることができる。よって、350〜500℃といった非常に高温の加熱が必要なく、電力消費を抑えることができる。 ガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度が3.0×1020/cm3を超える場合、キャリア散乱機構は格子の熱運動による散乱機構が支配的となり、出力信号の温度制御が困難となる。このため、電流の減少によるガス検知ができなくなるため好ましくない。 また、耐環境性(温度など)に優れたガスセンサであって、キャリア密度が優先的にセンサ感度を決めるためには、室温付近でホール移動度が温度に大きく依存しないことが望ましい。酸化亜鉛多結晶薄膜においては、キャリア密度が4.0×1019/cm3以上となると、縮退半導体と呼称されるホール移動度が室温付近で温度に大きく依存しない状態となる。よって、酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度が4.0×1019/cm3以上であることが好ましい。 本発明の透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の、X線回折(XRD)測定で得られる(0002)面からの回折ピークのωロッキングカーブの半値幅FWHM(ω)は、FWHM(ω)>3.5°であることが好ましい。つまり粒界における原子密度が低く、結晶子同士の粒界の間隙が大きいことが好ましい。これにより、粒界に可燃性ガスが粒界に吸着し易くなり、この吸着した可燃性ガスによりガス検知層に流れる電流が減少する。この電流の減少を測定することでガス検知を行うことができる。 本発明の透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の膜厚は、50nm以下であり、好ましくは20〜50nmである。膜厚が50nm以下であることにより、可燃性ガスの膜厚方向での密度勾配が拡散駆動となる多結晶薄膜内拡散の影響を小さくすることができる。膜厚が50nmを超える場合は、膜厚が基板界面から50nmまでとそれ以上とでミクロ原子構造の違いやそれが原因となる多結晶薄膜内原子密度の違いが前記可燃性ガスの多結晶薄膜内拡散を促進させるために電流減少抑止効果として現われるため好ましくない。加えて、基板がポリマー基板である場合、酸化亜鉛透明導電膜の線熱膨張係数と1桁異なることが原因で、膜厚が厚くなると成膜後の残留応力分布が一様でなくなるために、成膜プロセスの制御が難となるため、プロセスコスト増大を招くことに因る経済効果が見通せなくなる課題を有し、好ましくない。膜厚が20nm未満である場合は、十分な強度が得られないため好ましくない。 電極(3)は、ガス検知層(2)の電流値の減少を測定するために備えられる。電極(3)としては、金(Au)やパラジウム(Pb)等の金属電極を用い、この電極(3)には電流値の減少を測定するためのリード線(図示せず)が取り付けられる。 本発明のガスセンサ(4)は、交流回路からなるセンサ回路を有することが好ましい。 絶縁物をガス検知の感材とする従来のガスセンサは、抵抗値(インピーダンス)が大きいために、交流回路の使用は難しく直流回路を使用していた。一方、本発明のガスセンサ(4)は、ガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜の抵抗値(インピーダンス)が小さいために、交流回路の使用が可能となる。 センサ回路に直流回路を用いると、温度上昇による直流電圧の変化(温度ドリフトと呼ばれる)が生じる。この温度ドリフトが、センサ感度の精度に悪い影響を及ぼす。 本発明のガスセンサ(4)は、上記理由によりセンサ回路に交流回路を用いることができるため、温度ドリフトを回避することができる。これにより、センサ感度の精度の低下を防止することができる。 本発明のガスセンサは、種々の可燃性ガスの検出に用いることができ、例えば、アクリロニトリル、アクロレイン、アセチレン、アセトアルデヒド、アルシン、アンモニア、一酸化炭素、エタン、エチルアミン、エチルベンゼン、エチレン、塩化エチル、塩化ビニル、クロルメチル、酸化エチレン、酸化プロピレン、シアン化水素、シクロプロパン、ジシラン、ジボラン、ジメチルアミン、水素、セレン化水素、トリメチルアミン、二硫化炭素、ブタジエン、ブタン、ブチレン、プロパン、プロピレン、ブロムメチル、ベンゼン、ホスフィン、メタン、モノゲルマン、モノシラン、モノメチルアミン、メチルエーテル、硫化水素、空気中の爆発下限界が10%以下のガス、爆発限界の上限界と下限界の差が20%以上のガスの検出に用いることができる。 次いで、本発明のガスセンサの製造方法について、図を参照して以下に説明する。 まず、本発明のガスセンサ(4)のガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜の製造方法を実施するのに好適なイオンプレーティング装置について図2を参照して説明する。 図2は、本発明のガスセンサ(4)のガス検知層(2)を形成する酸化亜鉛多結晶薄膜の製造方法に用いるイオンプレーティング装置の概略図である。 イオンプレーティング装置(10)は、成膜室である真空容器(12)と、真空容器(12)中にプラズマビームPBを供給するプラズマ源であるプラズマガン(プラズマビーム発生器)(14)と、真空容器(12)内の底部に配置されてプラズマビームPBが入射する陽極部材(16)と、成膜の対象である基板Wを保持する基板保持部材WHを陽極部材(16)の上方で適宜移動させる搬送機構(18)とを備える。 プラズマガン(14)は、圧力勾配型であり、その本体部分は真空容器(12)の側壁に備えられる。プラズマガン(14)の陰極(14a)、中間電極(14b)、(14c)、電磁石コイル(14d)およびステアリングコイル(14e)への給電を調整することにより、真空容器(12)中に供給されるプラズマビームPBの強度や分布状態が制御される。なお、参照符号(20a)は、プラズマビームPBのもととなる、Ar等の不活性ガスからなるキャリアガスの導入路を示す。 陽極部材(16)は、プラズマビームPBを下方に導く主陽極であるハース(16a)と、その周囲に配置された環状の補助陽極(16b)とからなる。 ハース(16a)は、適当な正電位に制御されており、プラズマガン(14)から出射したプラズマビームPBを下方に吸引する。ハース(16a)は、プラズマビームPBが入射する中央部に貫通孔THが形成されており、貫通孔THにターゲット(22)が装填されている。ターゲット(22)は、柱状若しくは棒状に成形されたタブレットであり、プラズマビームPBからの電流によって加熱されて昇華し、蒸着物質を生成する。ハース(16a)はターゲット(22)を徐々に上昇させる構造を有しており、ターゲット(22)の上端は常に一定量だけハース(16a)の貫通孔THから突出している。 補助陽極(16b)は、ハース(16a)の周囲に同心に配置された環状の容器で構成され、容器内には、永久磁石(24a)とコイル(24b)とが収容されている。これら永久磁石(24a)およびコイル(24b)は、磁場制御部材であり、ハース(16a)の直上にカスプ状磁場を形成し、これにより、ハース(16a)に入射するプラズマビームPBの向きが制御され、修正される。 搬送機構(18)は、搬送路(18a)内に水平方向に等間隔で配列されて基板保持部材WHを支持する多数のコロ(18b)と、コロ(18b)を回転させて基板保持部材WHを所定の速度で水平方向に移動させる図示しない駆動装置とを備える。基板保持部材WHに基板Wが保持される。この場合、基板Wを搬送する搬送機構(18)を設けることなく、真空容器(12)の内部の上方に基板Wを固定して配置してもよい。 真空容器(12)には、酸素ガス容器(19)中の酸素ガスがマスフローメータ(21)によって流量を所定量に調整されながら供給される。なお、参照符号(20b)は酸素以外の雰囲気ガスを供給するための供給路を示し、また、参照符号(20c)はAr等の不活性ガスをハース(16a)に供給するための供給路を示し、また、参照符号(20d)は排気系を示す。 上記のように構成したイオンプレーティング装置(10)を用いたイオンプレーティング方法を説明する。 まず、真空容器(12)の下部に配置されたハース(16a)の貫通孔THにターゲット(22)を装着する。 ターゲット(22)としては、Ga及び/又はAlからなる元素又はその化合物が添加された酸化亜鉛の焼結体を用いる。 イオンプレーティング用ターゲットに含まれる元素の含有量は0.1〜6重量%が好ましい。 この元素の含有量が0.1重量%未満であると、製造される酸化亜鉛多結晶薄膜の導電性を充分に向上させることができないため、好ましくない。 この元素の含有量が6重量%を超えると、製造される酸化亜鉛多結晶薄膜の導電性が急激に減少するため、好ましくない。 次いで、ハース(16a)の上方の対向する位置に基板Wを配置する。 次いで、成膜条件に応じたプロセスガスを真空容器(12)の内部に導入する。 酸素ガス容器(19)から真空容器(12)の内部に酸素が供給される。酸素流量は特に限定されないが20〜30sccmが好ましく、25〜30sccmがより好ましい。酸素流量が20sccm未満であると、酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度が3.0×1020/cm3を超えてしまうだけではなく、X線回折法(RIGAKU ATX−G)によって得られる薄膜の(0002)面ピークのωロッキングカーブの半値幅(FWHM(ω))が減少、3.5o以下となり、粒界における原子密度が高くなることから、可燃性ガスが粒界に吸着しにくくなり、その結果、電流が低下しないため、ガス検知を行うことができず好ましくない。一方、酸素流量が30sccmを超えると、得られる酸化亜鉛多結晶薄膜の比抵抗が大きくなり出力信号が小さくなるので、ガス検知の精度が低下し好ましくない。 プラズマガン(14)の陰極(14a)およびハース(16a)間に直流電圧を印加する。 そして、プラズマガン(14)の陰極(14a)とハース(16a)との間で放電を生じさせ、これにより、プラズマビームPBを生成する。プラズマビームPBは、ステアリングコイル(14)と補助陽極(16b)内の永久磁石(24a)等とによって決定される磁界に案内されてハース(16a)に到達する。この際、ターゲット(22)の周囲にアルゴンガスが供給されるので、容易にプラズマビームPBがハース(16a)に引き寄せられる。 プラズマに曝されたターゲット(22)は、徐々に加熱される。ターゲット(22)が十分に加熱されると、ターゲット(22)が昇華し、蒸着物質が蒸発(出射)する。蒸着物質は、プラズマビームPBによりイオン化され、基板Wに付着(入射)し、成膜される。 なお、永久磁石(24a)およびコイル(24b)によってハース(16a)の上方の磁場を制御することにより、蒸着物質の飛行方向を制御することができるため、ハース(16a)の上方におけるプラズマの活性度分布や基板Wの反応性分布に合わせて基板Wの上の成膜速度分布を調整でき、広い面積にわたって均一な膜質の多結晶薄膜を得ることができる。 得られた酸化亜鉛多結晶薄膜(サイズは10mm×5mm)上に、電極(3)を設けることにより、本発明のガスセンサを得ることができる。電極(3)は、例えば金(Au)やパラジウム(Pd)をスパッタリング法などで堆積させ、エッチングによりパターニングして形成することができる。この電極(3)には、電極用リード線を取り付ける。 以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明に係るガスセンサは、これらに限定されるものではない。実施例1及び2 ターゲットとして、Ga2O3(純度99.9%)を3重量%添加したZnO(純度99.99%)(ハクスイテック社製)の焼結体を用い、イオンプレーティング法によって膜厚50nmのガリウム添加酸化亜鉛多結晶薄膜(GZnO多結晶薄膜)を製膜した。製膜条件を下記に示す。この酸化亜鉛多結晶薄膜上に一対のAu電極を1.0mm間隔でスパッタリング及びパターニングにより形成し、実施例1及び2のガスセンサを得た。(製膜条件) 基板 :厚み0.7mmの無アルカリガラス 膜厚 :50nm 基板温度 :200℃ 製膜前の基板の予備加熱:なし 製膜時の圧力 :0.2Pa 製膜時の雰囲気ガス条件:アルゴン=140sccm、酸素=25sccm 製膜時の放電電流 :140A 製膜時間 :18秒 酸素流量 :25sccm イオンプレーティング装置:住友重機械工業社製「RPD(Reactive Plasma Deposition)装置」比較例1 酸素流量を20sccmとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、比較例1のガスセンサを得た。比較例2 酸素流量を5sccmとしたこと以外は実施例1と同じ方法で、比較例2のガスセンサを得た。比較例3 ターゲットとして、Ga2O3(純度99.9%)を3重量%、In2O3(純度99.9%)を0.25重量%添加したZnO(純度99.99%)(ハクスイテック社製)の焼結体を用い、イオンプレーティング法によって膜厚50nmのインジウム・ガリウム添加酸化亜鉛多結晶薄膜(IGZnO多結晶薄膜)を製膜した。製膜条件を下記に示す。この酸化亜鉛多結晶薄膜上に一対のAu電極を1.0mm間隔でスパッタリング及びパターニングにより形成し、比較例3のガスセンサを得た。(製膜条件) 基板 :厚み0.7mmの無アルカリガラス 膜厚 :50nm 基板温度 :200℃ 製膜前の基板の予備加熱:なし 製膜時の圧力 :0.2Pa 製膜時の雰囲気ガス条件:アルゴン=140sccm、酸素=12sccm 製膜時の放電電流 :140A 製膜時間 :18秒 酸素流量 :12sccm イオンプレーティング装置:住友重機械工業社製「RPD(Reactive Plasma Deposition)装置」(透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の特性評価) 実施例1−2及び比較例1−3のガスセンサの酸化亜鉛多結晶薄膜について、ACCENT社製のHL5500PC型HALL効果装置を用いてVan der Pauw法により、室温で比抵抗、キャリア密度、及びホール移動度を測定した。また、実施例1−2及び比較例1−3のガスセンサの酸化亜鉛多結晶薄膜のFWHM(ω)を、リガク社製ATX−Gを用いてX線回折法により測定した。結果を下記表1に示す。(試験1:COガス検知試験) 実施例1及び比較例1−2のガスセンサについて、図3に示す測定装置を用い、以下の条件で一酸化炭素(CO)ガスの挿入前と挿入後の電流減少値を測定した。図3において、TCは熱電対、Hはヒータ、Sは基板を示す。(試験条件) 熱電対温度 :230℃、250℃、330℃ COガス濃度 :0.625%、1.25%、2.5% COガス挿入時間幅 :10sec COガス流量 :2.5,5.0,10.0sccm N2ガス(輸送ガス)流量:400sccm 実施例1の電流減少値を下記表2に示す。実施例1のガスセンサは、いずれの温度においても電流の減少が認められ、CO濃度2.5%の場合、電流減少値はmAオーダーと非常に大きな値であった。一方、比較例1及び2のガスセンサは、表2には値を記載していないが、いずれの温度においても電流の減少を認めることができなかった。(試験2:H2ガス検知試験) 実施例2及び比較例3のガスセンサについて、試験1と同様に図3に示す測定装置を用い、以下の条件で水素(H2)ガスの挿入前と挿入後の電流減少値を測定した。(試験条件) 熱電対温度 :330℃ H2ガス濃度 :1% H2ガス挿入時間幅 :10sec H2ガス流量 :50sccm N2ガス(輸送ガス)流量:150sccm 実施例2及び比較例3の電流減少値を下記表3に示す。比較例3のガスセンサの電流減少値は100μAであるのに対し、実施例2のガスセンサの電流減少値は1.0〜1.5mAであり、比較例3に比べて10〜15倍の電流減少値であった。 以上の結果から、酸化亜鉛多結晶薄膜のキャリア密度の違いにより、電流減少値に差異があることがわかる。キャリア密度が小さい酸化亜鉛多結晶薄膜をガス検知層に用いることにより、可燃性ガスの検知を高精度で行うことができる。また、電流減少値がmAオーダーであり従来のガスセンサに比べて出力信号が大きいので、増幅回路を使用しなくても可燃性ガスの検知を行うことができる。 本発明は、種々の可燃性ガス(アクリロニトリル、アクロレイン、アセチレン、アセトアルデヒド、アルシン、アンモニア、一酸化炭素、エタン、エチルアミン、エチルベンゼン、エチレン、塩化エチル、塩化ビニル、クロルメチル、酸化エチレン、酸化プロピレン、シアン化水素、シクロプロパン、ジシラン、ジボラン、ジメチルアミン、水素、セレン化水素、トリメチルアミン、二硫化炭素、ブタジエン、ブタン、ブチレン、プロパン、プロピレン、ブロムメチル、ベンゼン、ホスフィン、メタン、モノゲルマン、モノシラン、モノメチルアミン、メチルエーテル、硫化水素、空気中の爆発下限界が10%以下のガス、爆発限界の上限界と下限界の差が20%以上のガス)を検知するためのガスセンサに好適に利用されるものである。1 基板2 ガス検知層3 電極4 ガスセンサ 基板と、 該基板上に形成された透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜からなるガス検知層と、 前記ガス検知層に接触して設けられた電極と、を備えるガスセンサであって、 前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜は、酸化亜鉛にGa及び/又はAlからなる元素が添加されてなるとともに、キャリア密度3.0×1020/cm3以下、膜厚50nm以下の多結晶薄膜であることを特徴とするガスセンサ。 前記キャリア密度が4.0×1019/cm3以上、3.0×1020/cm3以下であることを特徴とする請求項1記載のガスセンサ。 前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の、X線回折(XRD)測定で得られる(0002)面からの回折ピークのωロッキングカーブの半値幅FWHM(ω)が、FWHM(ω)>3.5°であることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。 前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜の膜厚が20〜50nmであることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のガスセンサ。 交流回路からなるセンサ回路を有することを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のガスセンサ。 【課題】増幅回路を使用しなくても高いセンサ感度を有する酸化亜鉛多結晶薄膜を用いたガスセンサを提供する。【解決手段】基板と、該基板上に形成された透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜からなるガス検知層と、前記ガス検知層に接触して設けられた電極と、を備えるガスセンサであって、前記透明導電性酸化亜鉛多結晶薄膜は、酸化亜鉛にGa及び/又はAlからなる元素が添加されてなるとともに、キャリア密度3.0×1020/cm3以下、膜厚50nm以下の多結晶薄膜であることを特徴とするガスセンサとする。【選択図】図1