タイトル: | 公開特許公報(A)_カルバゾール誘導体、および有機エレクトロルミネッセンス素子 |
出願番号: | 2014117511 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C07D 405/14,H01L 51/50,C07D 409/14,C07F 7/10,C07F 7/30,C09K 11/06 |
糸井 裕亮 上野 雅嗣 JP 2015229661 公開特許公報(A) 20151221 2014117511 20140606 カルバゾール誘導体、および有機エレクトロルミネッセンス素子 三星ディスプレイ株式會社 512187343 Samsung Display Co.,Ltd. アイ・ピー・ディー国際特許業務法人 110000981 糸井 裕亮 上野 雅嗣 C07D 405/14 20060101AFI20151124BHJP H01L 51/50 20060101ALI20151124BHJP C07D 409/14 20060101ALI20151124BHJP C07F 7/10 20060101ALI20151124BHJP C07F 7/30 20060101ALI20151124BHJP C09K 11/06 20060101ALI20151124BHJP JPC07D405/14H05B33/14 BH05B33/22 DC07D409/14C07F7/10 QC07F7/30 FC09K11/06 690C09K11/06 610 12 1 OL 27 3K107 4C063 4H049 3K107AA01 3K107BB01 3K107CC04 3K107CC12 3K107CC21 3K107DD53 3K107DD59 3K107DD68 3K107DD71 3K107DD78 3K107FF15 3K107FF19 3K107FF20 4C063AA03 4C063BB01 4C063CC76 4C063CC94 4C063DD08 4C063EE10 4H049VN01 4H049VN02 4H049VP01 4H049VQ84 4H049VR24 4H049VU24 4H049VW01 4H049VW02 本発明は、カルバゾール誘導体、および有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。 近年、自発光型の発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(Organic Electroluminescence Diode)の開発が盛んに行われている。有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子という)は、発光層において陽極および陰極から注入された正孔および電子を再結合させることにより、発光材料を発光させる発光素子である。 ここで、一般的な有機EL素子は、発光層、および該発光層にキャリア(carrier)である正孔や電子を輸送する正孔輸送層や電子輸送層などの層が複数積層された構造を有する。このような有機EL素子では、発光効率および発光寿命の向上のために、各層の材料として様々な化合物が検討されている。 例えば、有機EL素子材料として、従来、芳香族アミン(amine)化合物が提案されている。具体的には、特許文献1には、カルバゾール(carbazole)環によって置換されたヘテロ(hetero)環化合物が開示されており、該ヘテロ環化合物が発光層のホスト(host)材料として用いられることが開示されている。また、特許文献2には、縮合環によって置換されたカルバゾール誘導体が開示されており、該カルバゾール誘導体が正孔輸送材料として用いられることが開示されている。特開2009−267255号公報特開2009−029726号公報 しかし、特許文献1および2に記載された化合物は、電子耐性が十分ではないため、これらの化合物を用いた有機EL素子は、発光寿命が短いという問題点があった。そのため、有機EL素子の発光寿命をさらに向上させることが可能な材料化合物が求められていた。 そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、有機EL素子の発光寿命を向上させることが可能な、新規かつ改良されたカルバゾール誘導体、および該カルバゾール誘導体を含む有機EL素子を提供することにある。 上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、下記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体が提供される。 前記一般式(1)において、 2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール(dibenzoheterole)環の置換位置は、互いに同一であり、 Xは、O、S、SiR11R12、またはGeR13R14であり、 R1〜R14は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン(halogen)、置換もしくは無置換のシリル(silyl)基、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル(alkyl)基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール(aryl)基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール(heteroaryl)基からなる群より選択されたいずれかの置換基、または任意の隣接したR1〜R14が少なくとも2つ以上縮合して形成された置換もしくは無置換のアリールもしくはヘテロアリール基であり、 Ar1およびAr2は、互いに独立して、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基であり、 aおよびbは、互いに独立して、0〜3の整数である。 この構成によれば、上記カルバゾール誘導体の安定性が向上するため、上記カルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、発光寿命を向上させることができる。 前記Xは、O、S、またはSiR11R12であってもよい。 この構成によれば、上記カルバゾール誘導体の安定性がさらに向上するため、上記カルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、発光寿命をさらに向上させることができる。 前記ジベンゾヘテロール環の置換位置は、前記カルバゾール環の3位または6位であってもよい。 この構成によれば、上記カルバゾール誘導体の正孔移動度が向上するため、上記カルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、駆動電圧を低下させ、発光効率を向上させることができる。 前記R1〜R14、Ar1およびAr2は、互いに独立して、水素、重水素、フェニル(phenyl)基、およびナフチル(naphthyl)基からなる群より選択されたいずれかの置換基であってもよい。 この構成によれば、上記カルバゾール誘導体の安定性がさらに向上するため、上記カルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、発光寿命をさらに向上させることができる。 前記カルバゾール誘導体のHOMO(Highest Ocuppied Molecular Orbital)準位は、−5.8eV以上−5.5eV以下であってもよい。 この構成によれば、上記カルバゾール誘導体のHOMOが好適な準位となるため、上記カルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命を向上させることができる。 前記カルバゾール誘導体の三重項励起状態T1と、基底状態S0とのエネルギー(energy)準位の差は、2.4eV以上3.2eV以下であってもよい。 この構成によれば、上記カルバゾール誘導体の三重項励起状態T1が好適な準位となるため、上記カルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命を向上させることができる。 また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、発光層中に上記カルバゾール誘導体を含む、有機EL素子が提供される。 この構成によれば、安定性の高いカルバゾール誘導体を含むため、上記有機EL素子は、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命を向上させることができる。 また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、陽極と発光層との間に位置する少なくとも1つ以上の層中に上記カルバゾール誘導体を含む、有機EL素子が提供される。 この構成によれば、上記有機EL素子は、安定性の高いカルバゾール誘導体を含むため、発光寿命を向上させることができる。 前記カルバゾール誘導体が含まれる層の厚さは、3nm以上30nm以下であってもよい。 この構成によれば、上記有機EL素子は、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命を向上させることができる。 前記発光層は、縮合多環芳香族化合物を含んでもよい。 この構成によれば、上記有機EL素子は、上記カルバゾール誘導体に好適な発光層材料を含むため、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命をさらに向上させることができる。 前記縮合多環芳香族化合物は、アントラセン(anthracene)誘導体、ピレン(pyrene)誘導体、フルオランテン(fluoranthene)誘導体、クリセン(chrysene)誘導体、ベンゾアントラセン(benzoanthracene)誘導体、およびトリフェニレン(triphenylene)誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の化合物であってもよい。 この構成によれば、上記有機EL素子は、上記カルバゾール誘導体に好適な発光層材料を含むため、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命をさらに向上させることができる。 前記縮合多環芳香族化合物は、ピレン誘導体、および下記一般式(2)で表されるアントラセン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の化合物であってもよい。 前記一般式(2)において、 R21〜R30は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基、または任意の隣接したR21〜R30が少なくとも2つ以上縮合して形成された置換もしくは無置換のアリールもしくはヘテロアリール基であり、 cおよびdは、互いに独立して、0〜5の整数である。 この構成によれば、上記有機EL素子は、上記カルバゾール誘導体に好適な発光層材料を含むため、駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命をさらに向上させることができる。 以上説明したように本発明によれば、有機EL素子の発光寿命を向上させることができる。本発明の一実施形態に係る有機EL素子の一例を示す概略図である。本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体を用いて作製した有機EL素子の一例を示す概略図である。本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体を用いて作製した有機EL素子の他の一例を示す概略図である。 以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。 <1.本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体> まず、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体について説明する。本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、有機EL素子において発光層のホスト材料、または正孔輸送材料として用いることが可能な化合物である。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、下記一般式(1)で表される化合物である。 上記一般式(1)において、 2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール環の置換位置は、互いに同一であり、 Xは、O、S、SiR11R12、またはGeR13R14であり、 R1〜R14は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基、または任意の隣接したR1〜R14が少なくとも2つ以上縮合して形成された置換もしくは無置換のアリールもしくはヘテロアリール基であり、 Ar1およびAr2は、互いに独立して、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基であり、 aおよびbは、互いに独立して、0〜3の整数である。 上記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環をジベンゾヘテロール環で連結した構造を有する。ジベンゾヘテロール環は、高い電子耐性を有するため、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、ジベンゾヘテロール環を有さないカルバゾール誘導体よりも電子耐性を向上させることができる。したがって、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、有機EL素子の発光寿命を向上させることができる。 また、上記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、平面性が高いカルバゾール環およびジベンゾヘテロール環にて構成される。したがって、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、分子全体としても平面性が高く、耐熱性の指標であるガラス転移点Tgを高くすることができる。そのため、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、高い耐熱性を有し、有機EL素子の発光寿命をより向上させることができる。また、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、分子全体として高い平面性を有し、分子間における正孔の移動(ホッピング(hopping))効率が高いため、高い正孔輸送能を有することができる。したがって、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、有機EL素子の発光効率を向上させることができる。 また、上記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、ジベンゾヘテロール環の3位および7位がカルバゾール環で置換される。このような置換位置にカルバゾール環が置換することにより、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、窒素原子とヘテロ原子とによるラジカル(radical)開裂を抑制することができる。したがって、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、分子の安定性が高く、有機EL素子の発光寿命をより向上させることができる。 さらに、上記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール環の置換位置が互いに同一である。この構成によれば、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、分子の対称性が高いため、分子間相互作用により正孔移動度を向上させることができる。そのため、正孔移動度が向上した一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体を用いた有機EL素子は、発光効率をより向上させることができる。 特に、上記一般式(1)において、ジベンゾヘテロール環の置換位置は、カルバゾール環の3位または6位であることが好ましい。ジベンゾヘテロール環がカルバゾール環の3位または6位に置換されている場合、2つのカルバゾール環の窒素同士が共役系により繋がるため、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、正孔移動度がより向上する。したがって、ジベンゾヘテロール環がカルバゾール環の3位または6位に置換されているカルバゾール誘導体は、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、発光効率をより向上させることができるため、より好ましい。 なお、本明細書では、ジベンゾヘテロール環の置換位置の番号付けについては、ヘテロ原子が下側に配置されるようにジベンゾヘテロール環を置いた場合に最右に位置する環の骨格原子(ただし、縮合位置の炭素を除く)から順に時計回りに付した。また、カルバゾール環の置換位置の番号付けについては、窒素原子が上側に配置されるようにカルバゾール環を置いた場合に最右に位置する環の骨格原子(ただし、縮合位置の炭素を除く)から順に時計回りに付した。 ここで、上記一般式(1)において、Xは、O、S、またはSiR11R12であることが好ましい。ここで、XがGeR13R14である場合、2つのカルバゾール環は、ジベンゾゲルモール(dibenzogermole)環によって連結されるが、ジベンゾゲルモール環は、他のジベンゾヘテロール環よりも安定性が低い。そのため、一般式(1)において、XがGeR13R14であるカルバゾール誘導体は、有機EL素子に対する発光寿命の向上量が小さい。したがって、上記一般式(1)において、Xは、O、S、またはSiR11R12であるほうが、有機EL素子の発光寿命をより長寿命化させることができるため、好ましい。 なお、上記一般式(1)において、R1〜R14、Ar1およびAr2は、互いに独立して、任意の置換基であってもよい。ただし、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環、および1つのジベンゾヘテロール環にて構成されるため、分子量が大きい。そのため、一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体は、R1〜R14、Ar1およびAr2が比較的分子量の小さい置換基で置換されることにより、分子量が大きくなりすぎないようにすることが好ましい。例えば、R1〜R14、Ar1およびAr2は、互いに独立して、比較的分子量が小さい水素、重水素、フェニル基、およびナフチル基からなる群より選択されたいずれかの置換基で置換されていることが好ましい。 ここで、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体の具体例である化合物1〜40の構造式を以下に示す。しかしながら、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体は、下記の化合物に限定されるものではない。 以上にて、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体について詳細に説明した。 本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、例えば、発光層におけるホスト材料として好適に用いることができる。後述する実施例にて実証されるように、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を発光層におけるホスト材料として用いた場合、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命を向上させることができる。 ここで、発光層におけるホスト材料として本実施形態に係るカルバゾール誘導体を用いる場合、該カルバゾール誘導体の三重項励起状態T1と、基底状態S0とのエネルギー準位の差は、2.4eV以上3.2eV以下であることが好ましい。三重項励起状態T1が上記範囲のエネルギー準位であることにより、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、りん光ドーパント(dopant)に対して効率的に励起エネルギーを移動させることができる。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、特に緑色りん光ドーパントに対するホスト材料として好適に用いることができ、有機EL素子の発光効率を向上させることができる。 また、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、例えば、有機EL素子の発光層と陽極との間に位置する少なくとも1つ以上の層(例えば、正孔輸送層)中に含まれ、正孔輸送材料として好適に用いることができる。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、正孔輸送材料として正孔注入層、または正孔輸送層などに含まれてもよい。後述する実施例にて実証されるように、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体を正孔輸送材料として用いた場合、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、発光効率および発光寿命を向上させることができる。 本実施形態に係るカルバゾール誘導体が正孔輸送材料として用いられる場合、該カルバゾール誘導体のHOMO(Highest Ocuppied Molecular Orbital)準位は、−5.8eV以上−5.5eV以下であることが好ましい。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環の間にジベンゾヘテロール環を導入することによって、正孔輸送材料として好適なHOMO準位を実現することができる。特に、後述する実施例にて実証されるように、本実施形態に係るカルバゾール誘導体のHOMO準位が上述の範囲に含まれる場合、該カルバゾール誘導体を正孔輸送材料として用いた有機EL素子は、駆動電圧をさらに低下させ、発光効率をさらに向上させることができる。 また、上記範囲のHOMO準位を有することにより、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、発光層に対してより効率良く正孔を輸送することができる。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、青色発光または緑色発光の有機EL素子における正孔輸送材料としてより好適に用いることができ、有機EL素子の駆動電圧を低下させ、発光効率を向上させることができる。 また、本実施形態に係るカルバゾール誘導体が正孔輸送材料として用いられる場合、該カルバゾール誘導体を含む層の厚さは、3nm以上30nm以下であることが好ましい。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を含む層の厚さが3nm未満である場合、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、正孔輸送能を十分に発揮することができなくなるため、好ましくない。一方、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を含む層の厚さが30nmを超える場合、有機EL素子全体の膜厚が増加し、駆動電圧が増加するため、好ましくない。 さらに、本実施形態に係るカルバゾール誘導体が正孔輸送材料として用いられる場合、発光層は、縮合多環芳香族化合物を含むことが好ましい。具体的には、発光層は、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、クリセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、およびトリフェニレン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の縮合多環芳香族化合物を含むことが好ましい。より具体的には、発光層は、ピレン誘導体、および下記一般式(2)で表されるアントラセン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の縮合多環芳香族化合物を含むことが好ましい。なお、縮合多環芳香族化合物は、発光層にホスト材料として含まれてもよいし、ドーパント材料として含まれてもよい。 上記一般式(2)において、 R21〜R30は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基、または任意の隣接したR21〜R30が少なくとも2つ以上縮合して形成された置換もしくは無置換のアリールもしくはヘテロアリール基であり、 cおよびdは、互いに独立して、0〜5の整数である。 上記の縮合多環芳香族化合物は、例えば、青色または緑色発光の発光層中において、ドーパント材料またはホスト材料として機能する化合物である。また、上述したように、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、青色または緑色発光の発光層に対して好適なHOMO準位を有する。そのため、上記の縮合多環芳香族化合物を含む発光層は、本実施形態に係るカルバゾール誘導体から効率良く正孔を受け取ることができる。したがって、発光層が上記の縮合多環芳香族化合物を含む場合、本実施形態に係る有機EL素子は、駆動電圧をより低下させ、発光効率を向上させることができる なお、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体が正孔輸送材料として用いられる場合に発光層が含む縮合多環芳香族化合物の具体例としては、以下の化合物a−1〜12が挙げられる。しかしながら、発光層が含む縮合多環芳香族化合物は、下記の化合物に限定されるものではない。 以上説明したように、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、高い電子耐性を有し、ジベンゾヘテロール環の3位および7位がカルバゾール環により置換されることでラジカル開裂等の分子内反応を抑制することができる。したがって、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、有機EL素子を長寿命化することができる。 また、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール環の置換位置が互いに同一である。そのため、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、高い対称性を有し、正孔移動度が高くなるため、有機EL素子の発光効率をより向上させることができる。 なお、本明細書において、C1〜C15のアルキル基は、直鎖状、分枝状の飽和炭化水素、または環状の飽和炭化水素の一価基を表す。C1〜C15のアルキル基の具体的な例としては、メチル(methyl)基、エチル(ethyl)基、プロピル(propyl)基、イソプロピル(isopropyl)基、シクロプロピル(cyclopropyl)基、ブチル(butyl)基、イソブチル(isobutyl)基、tert−ブチル(butyl)基、シクロブチル(cyclobutyl)基、ペンチル(pentyl)基、イソペンチル(isopentyl)基、ネオペンチル(neopentyl)基、シクロペンチル(cyclopentyl)基、ヘキシル(hexyl)基、シクロヘキシル(cyclohexyl)基、ヘプチル(heptyl)基、オクチル(octyl)基、ノニル(nonyl)基、デシル(decyl)基などを挙げることができる。 また、本明細書において、C6〜C30のアリール基は、一つ以上の芳香族環を含み、環形成炭素数が6〜30の炭素環を有する一価基を表す。C6〜C30のアリール基の具体的な例としては、フェニル(phenyl)基、ペンタレニル(pentalenyl)基、インデニル(indenyl)基、ナフチル(naphthyl)基、アントラセニル(anthracenyl)基、アズレニル(azulenyl)基、ヘプタレニル(heptalenyl)基、アセナフチレニル(acenaphthylenyl)基、フェナレニル(phenalenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、アントラキノリル(anthraquinolyl)基、フェナントリル(phenanthryl)基、ビフェニル(biphenyl)基、トリフェニレニル(triphenylenyl)基、ピレニル(pyrenyl)基、クリセニル(chrysenyl)基、ピセニル(picenyl)基、ペリレニル(perylenyl)基、ペンタフェニル(pentaphenyl)基、ペンタセニル(pentacenyl)基、テトラフェニレニル(tetraphenylene)基、ヘキサフェニル(hexaphenyl)基、ヘキサセニル(hexacenyl)基、ルビセニル(rubicenyl)基、トリナフチレニル(trinaphthylenyl)基、ヘプタフェニル(heptaphenyl)基、ピラントレニル(pyranthrenyl)基などを挙げることができる。 また、本明細書において、C1〜C30のヘテロアリール基は、N、O、PまたはSのうちから選択された1個以上のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである1以上の芳香族環を含む環を有する一価基を表す。C1〜C30のヘテロアリール基の具体的な例としては、ピラゾリル(pyrazolyl)基、イミダゾリル(imidazolyl)基、オキサゾリル(oxazolyl)基、チアゾリル(thiazolyl)基、トリアゾリル(triazolyl)基、テトラゾリル(tetrazolyl)基、オキサジアゾリル(oxadiazolyl)基、ピリジニル(pyridinyl)基、ピリダジニル(pyridazinyl)基、ピリミジニル(pyrimidinyl)基、トリアジニル(triazinyl)基、カルバゾリル(carbazolyl)基、インドリル(indolyl)基、キノリニル(quinolinyl)基、イソキノリニル基(isoquinolinyl)、ベンゾイミダゾリル(benzoimidazolyl)基、イミダゾピリジニル(imidazopyridinyl)基、イミダゾピリミジニル(imidazopyrimidinyl)基などを挙げることができる。 なお、上述したC1〜C15のアルキル基、C6〜C30のアリール基、C1〜C30のヘテロアリール基は、任意の置換基によって置換されていてもよい。 <2.本発明の一実施形態に係る有機EL素子> 次に、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る有機EL素子について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る有機EL素子の一例を示す概略図である。 図1に示すように、本実施形態に係る有機EL素子100は、基板102、基板102上に配置された陽極104、陽極104上に配置された正孔注入層106、正孔注入層106上に配置された正孔輸送層108、正孔輸送層108上に配置された発光層110、発光層110上に配置された電子輸送層112、電子輸送層112上に配置された電子注入層114、および電子注入層114上に配置された陰極116を備える。 本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、例えば、陽極104と、発光層110との間に位置する少なくとも1つ以上の層に含まれてもよい。具体的には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、正孔注入層106および正孔輸送層108のうちの少なくともいずれか1層に含まれてもよい。 また、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、例えば、発光層110にホスト材料として含まれてもよい。 なお、図1で示した有機EL素子100の構造は、あくまでも一例であって、本実施形態に係る有機EL素子は、図1の構造に限定されるものではない。例えば、本実施形態に係る有機EL素子100は、一部の層が省略されていてもよく、また他の層が追加されていてもよい。さらに、有機EL素子100の各層は、複数層で形成されていてもよい。 基板102は、有機EL素子100の各層が積層される支持体である。基板102は、例えば、透明ガラス(glass)基板、シリコン(Si)等からなる半導体基板、フレキシブル(flexible)な樹脂基板などを使用することができる。 陽極104は、基板102上に配置され、例えば、仕事関数が大きい金属、合金、導電性化合物等によって形成される。具体的には、陽極104は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などを用いて、透過型電極として形成される。また、陽極104は、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)などを用いて反射型電極として形成されてもよい。 正孔注入層106は、陽極104上に配置され、陽極104からの正孔の注入を容易にする機能を備えた層である。正孔注入層106は、例えば、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を含んで形成されてもよい。また、正孔注入層106は、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル(HAT(CN)6)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−[4−(フェニル−m−トリル−アミノ)−フェニル]−ビフェニル−4,4’−ジアミン(DNTPD)、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス{N,Nジフェニルアミノ}トリフェニルアミン(TDATA)、4,4’,4”−トリス(N,N−2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)、ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸(Pani/DBSA)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/カンファースルホン酸(Pani/CSA)、またはポリアニリン/ポリ(4−スチレンスルホネート)(PANI/PSS)などを用いて形成されてもよい。 正孔輸送層108は、正孔注入層106上に配置され、陽極104から発光層110へ正孔を輸送する機能を備えた層である。正孔輸送層108は、例えば、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を含んで形成されてもよい。また、正孔輸送層108は、例えば、N−フェニルカルバゾール(N−phenyl carbazole)、ポリビニルカルバゾール(polyvinyl carbazole)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N,N’,N’−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3’−ジメチルベンジジン(HMTPD)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(NPB)などを用いて形成されてもよい。 発光層110は、正孔輸送層108上に配置され、りん光、蛍光等により光を発する。発光層110は、ホスト材料、およびドーパント材料を含んで形成される。なお、ドーパント材料は、発光ドーパント、りん光ドーパントのいずれであってもよい。 発光層110のホスト材料としては、例えば、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を用いてもよい。また、発光層110のホスト材料としては、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、4,4’−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(CBP)、ポリ(n−ビニルカルバゾール)(PVK)、9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン(ADN)、4,4’,4”−トリス(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(TCTA)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、3−tert−ブチル−9,10−ジ(ナフト−2−イル)アントラセン(TBADN)、ジスチリルアリーレン(DSA)、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−2,2’−ジメチル−ビフェニル(dmCBP)などを用いてもよい。 また、発光層110の青色ドーパント材料としては、例えば、1,4−bis[2−(3−N−ethylcarbazoryl)vinyl]benzene(BCzVB)、4−(di-p-tolylamino)−4’−[(di−p−tolylamino)styryl]stilbene(DPAVB)、N−(4−((E)−2−(6−((E)−4−(diphenylamino)styryl)naphthalen−2−yl)vinyl)phenyl)−N−phenylbenzenamine(N−BDAVBi)などのスチリル(styryl)誘導体、ペリレン(perylene)および2,5,8,11−tetra−t−butylperylene(TBPe)などのペリレン誘導体、ピレン(pyrene)および1,1−dipyrene、1,4−dipyrenylbenzene、1,4−Bis(N,N−Diphenylamino)pyreneなどのピレン誘導体、ビス[2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジネート]ピコリネートイリジウム(III)(FIrpic)などのイリジウム(Ir)錯体等を用いることができる。また、発光層110の緑色ドーパント材料としては、例えば、クマリン(coumarin)およびその誘導体、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)などのイリジウム錯体等を用いることができる。さらに、発光層110の赤色ドーパント材料としては、例えば、ルブレン(rubrene)およびその誘導体、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(DCM)およびその誘導体、ビス(1−フェニルイソキノリン)(アセチルアセトネート)イリジウム(III)(Ir(piq)2(acac))などのイリジウム錯体、オスミウム(Os)錯体、白金(Pt)錯体等を用いることができる。 ここで、本実施形態に係るカルバゾール誘導体が、発光層110のホスト材料として含まれる場合、発光層110のドーパント材料は、緑色りん光ドーパントであることが特に好ましい。 また、本実施形態に係るカルバゾール誘導体が、正孔注入層106および正孔輸送層108の少なくともいずれか一方に含まれる場合、発光層110は、ホスト材料またはドーパント材料として、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、クリセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、およびトリフェニレン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の縮合多環芳香族化合物を含むことが好ましい。より具体的には、発光層110は、ピレン誘導体、および上記一般式(2)で表されるアントラセン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の化合物を含むことが好ましい。 電子輸送層112は、発光層110上に配置され、陰極116から発光層110へ電子を輸送する機能を備えた層である。電子輸送層112は、例えば、Tris(8−hydroxyquinolinato)aluminium(Alq3)や含窒素芳香環を有する材料を用いて形成されてもよい。含窒素芳香環を有する材料としては、例えば、1,3,5−tri[(3−pyridyl)−phen−3−yl]benzeneなどのピリジン環を含む材料、2,4,6−tris(3’−(pyridin−3−yl)biphenyl−3−yl)−1,3,5−triazineなどのトリアジン環を含む材料、2−(4−(N−phenylbenzoimidazolyl−1−ylphenyl)−9,10−dinaphthylanthraceneなどのイミダゾール誘導体を含む材料を挙げることができる。 電子注入層114は、電子輸送層112上に配置され、陰極116からの電子の注入を容易にする機能を備えた層である。電子注入層114は、例えば、フッ化リチウム(LiF)、塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化セシウム(CsF)、酸化リチウム(Li2O)、酸化バリウム(BaO)などを用いて形成されてもよい。 陰極116は、電子注入層114上に配置され、例えば、仕事関数が小さい金属、合金、導電性化合物等で形成される。具体的には、陰極116は、例えば、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを用いて反射型電極として形成されてもよい。また、陰極116は、酸化インジウムスズ(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などを用いて透過型電極として形成されてもよい。 なお、図1にて示した有機EL素子100の各層を形成する材料は、上記に限定されるものではなく、公知の有機EL素子用材料を利用することも可能である。 ここで、上述した本実施形態に係る有機EL素子100の各層は、真空蒸着、スパッタ(sputter)、各種塗布法など、材料に応じた適切な成膜方法を選択することにより形成することができる。 例えば、陽極104および陰極116などの電極層は、電子ビーム蒸着(electron beam evaporation)法、熱フィラメント蒸着(hot filament evaporation)法および真空蒸着法を含む蒸着法、スパッタリング(sputtering)法、電気メッキ法および無電解メッキ法などのメッキ(plating)法により形成することができる。 また、正孔注入層106、正孔輸送層108、発光層110、および電子輸送層112、および電子注入層114などの層は、例えば、真空蒸着法等の物理的気相成長法(PVD法)、スクリーン印刷(screen printing)法およびインクジェット(ink jet)印刷法といった印刷法、レーザ(laser)転写法、およびスピンコート(spin coat)法等の塗布法などにより形成することができる。 以上にて、本実施形態に係る有機EL素子100の一例について説明した。 以下では、実施例および比較例を参照しながら、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体および該カルバゾール誘導体を含む有機EL素子について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも一例であって、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体および有機EL素子が下記の例に限定されるものではない。 [カルバゾール誘導体の合成] まず、本実施形態に係るカルバゾール誘導体の合成方法について、上記化合物1〜5および9の合成方法を例示して具体的に説明する。なお、以下に述べる合成方法はあくまでも一例であって、本実施形態に係るカルバゾール誘導体の合成方法が下記の例に限定されるものではない。 (化合物2の合成) 以下の反応式1によって、本実施形態に係るカルバゾール誘導体である化合物2を合成した。 化合物Aの合成 Ar雰囲気下にて、500mLフラスコ(flask)にジベンゾ[b,d]チオフェン5,5−ジオキシド(Dibenzo[b,d]thiophene 5,5−dioxide)(2.0g)と、濃硫酸(60mL)と、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(3.29g)とを加え、室温で24時間撹拌した。撹拌後、反応混合物を冷水に注ぎ、析出した固体を吸引ろ過して溶媒を留去した。得られた粗成生物を水およびメタノール(methanol)で洗浄し、白色固体の化合物A(1.6g,収率45%)を得た。 なお、化合物Aに対して1H−NMR(Nuclear Magnetic Resonance)(DMSO−d6,300MHz)測定を行ったところ、測定された化合物Aのケミカルシフト(chemical shift)値δは、8.33(d,2H)、8.11−8.16(m,2H)、7.99(dd,2H)であった。 化合物Bの合成 次に、Ar雰囲気下にて、500mLフラスコに化合物A(10.1g)と、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)(1.3g)とを加え、テトラヒドロフラン(THF)(174mL)溶媒中で、3時間加熱還流した。空冷後、混合物を酢酸エチル(ethyl acetate)で抽出し、抽出液に硫酸マグネシウム(Mg2SO4)および活性白土を加えた後、吸引ろ過して溶媒を留去した。得られた粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(silica gel column chromatography)にて、ジクロロメタン(dichloromethane)とヘキサン(hexane)との混合溶媒を用いて精製し、薄黄色固体の化合物B(4.34g,収率47%)を得た。 ここで、化合物Bに対してFAB−MS(Fast Atom Bombardment Mass Spectrometry)測定を行ったところ、測定された化合物Bの分子量は、342であった。 化合物2の合成 続いて、Ar雰囲気下にて、300mLの三つ口フラスコに化合物B(2.62g)と、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸(9−phenylcarbazole−3−boronic acid)(6.00g)と、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh3)4)(0.64g)と、炭酸カリウム(K2CO3)(1.55g)とを加えて、トルエン(toluene)(120mL)溶媒中で、90℃にて8時間加熱撹拌した。空冷後、水を加えて有機層を分取し、溶媒を留去した。得られた粗生成物は、シリカゲルカラムクロマトグラフィにて、ジクロロメタンとヘキサンとの混合溶媒を用いて精製した後、トルエン/ヘキサン混合溶媒にて再結晶し、白色固体の化合物2(2.40g,収率47%)を得た。 なお、化合物2に対してFAB−MS測定を行ったところ、測定された化合物2の分子量は、666であった。また、化合物2に対して1H−NMR(CDCl3,300MHz)測定を行ったところ、測定された化合物Aのケミカルシフト値δは、8.46(s,2H)、8.23(d,2H,J=7.82Hz)、8.04(d,2H,J=8.14Hz)、7.92(s,2H)、7.77−7.72(m,4H)、7.63−7.61(m,8H)、7.52−7.44(m,6H)、7.41−7.30(m,2H)であった。以上の結果より、反応式1にて合成された白色固体は、化合物2であることが同定された。 (化合物1の合成) 上記反応式1において、化合物Bの代わりに3,6−ジブロモジベンゾフラン(3,6−dibromodibenzofuran)を用いた以外は同様にして、化合物1を合成した。 (化合物3の合成) 上記反応式1において、化合物Bの代わりに2,7−ジブロモ−9,9−ジメチル−9H−9−シラフルオレン(2,7−dibromo−9,9−dimethyl−9H−9−silafluorene)を用いた以外は同様にして、化合物3を合成した。 (化合物4の合成) 上記反応式1において、化合物Bの代わりに2,7−ジブロモ−9,9−ジメチル−9H−9−ジベンゾゲルモール(2,7−dibromo−9,9−dimethyl−9H−9−dibenzogermole)を用いた以外は同様にして、化合物4を合成した。 (化合物13の合成) 上記反応式1において、ジベンゾ[b,d]チオフェン5,5−ジオキシドの代わりに3,6−ジブロモジベンゾフランを用い、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸の代わりに9−フェニルカルバゾール−2−ボロン酸を用いた以外は同様にして、化合物13を合成した。 (化合物17の合成) 上記反応式1において、ジベンゾ[b,d]チオフェン5,5−ジオキシドの代わりに3,6−ジブロモジベンゾフランを用い、9−フェニルカルバゾール−3−ボロン酸の代わりに9−フェニルカルバゾール−4−ボロン酸を用いた以外は同様にして、化合物17を合成した。 [カルバゾール誘導体のHOMO準位の評価] 次に、上記にて合成した化合物1〜4、13および17についてHOMO準位を測定した。HOMO準位の測定には、理研計器製AC−3を用い、紫外線光電子分光法により測定した。測定した化合物1〜4、13および17のHOMO準位を下記の表1に示す。 表1および後述する表2の結果を参照すると、化合物1〜4を用いた有機EL素子(実施例1〜4)は、化合物13または17を用いた有機EL素子(実施例5および6)よりも、駆動電圧を低下させ、発光効率を向上させることができる。したがって、本実施形態に係るカルバゾール誘導体のHOMO準位は、上述したように−5.8eV以上−5.5eV以下が好ましいとわかる。 [カルバゾール誘導体を正孔輸送材料として含む有機EL素子の評価] 続いて、真空蒸着を用い、以下の手順にて、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を正孔輸送材料として含む有機EL素子200を作製し、評価した。 (実施例1) まず、あらかじめパターニング(patterning)して洗浄処理を施したITO−ガラス基板にオゾン(ozone)による表面処理を行った。なお、該ガラス基板におけるITO膜の膜厚は、150nmであった。オゾン処理後、直ちに正孔注入材料として、4,4’,4’’−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)を上記ITO膜上に膜厚60nmで成膜した。 次に、正孔輸送材料として、上記化合物1を膜厚30nmで成膜し、正孔輸送層(Hole Transfer Layer:HTL)とした。また、発光層として9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)(ホスト材料)に対して、2,5,8,11− テトラ−t−ブチルペリレン(TBP)(ドーパント材料)を発光層の総質量の3質量%にてドープ(dope)した膜を共蒸着によって膜厚25nmで成膜した。 続いて、電子輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を膜厚25nmで成膜した。次に、電子注入材料としてフッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで成膜し、陰極としてアルミニウム(Al)を膜厚100nmで成膜して、有機EL素子200を作製した。 (実施例2〜6) 実施例1で用いた化合物1の代わりに化合物2〜4、13および17をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。 (比較例1〜3) 実施例1で用いた化合物1の代わりに下記化合物41〜43をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、有機EL素子を作製した。なお、化合物41は、ジベンゾヘテロール環におけるカルバゾール環の置換位置が2位および8位である点において、本実施形態に係るカルバゾール誘導体と異なる化合物である。また、化合物42および43は、ジベンゾヘテロール環を有しない点において、本実施形態に係るカルバゾール誘導体と異なる化合物である。 作製した有機EL素子200の実施例1〜6、比較例1〜3の概略図を図2に示す。作製した有機EL素子200は、基板202、基板202上に配置された陽極204、陽極204上に配置された正孔注入層206、正孔注入層206上に配置された正孔輸送層208、正孔輸送層208上に配置された発光層210、発光層210上に配置された電子輸送層212、電子輸送層212上に配置された電子注入層214、電子注入層214上に配置された陰極216から構成されている。 作製した実施例1〜6、比較例1〜3の有機EL素子200の評価結果を以下の表2に示す。なお、作製した有機EL素子200の発光特性の評価には、浜松ホトニクス製C9920−11輝度配向特性測定装置を用いた。また、下記の表2において、電流密度は10mA/cm2にて測定し、半減寿命は1000cd/m2にて測定した。 表2の結果を参照すると、本実施形態に係るカルバゾール誘導体である化合物1〜4、13および17を正孔輸送材料として用いた実施例1〜6は、比較例1〜3に対して、発光寿命が長くなることがわかる。 具体的には、実施例1〜6で用いたカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環の間にジベンゾヘテロール環を導入することにより有機EL素子に好適なHOMO準位を実現している。したがって、実施例1〜6は、比較例2および3に対して駆動電圧が低下し、発光効率が向上していることがわかる。また、実施例1〜6は、電子耐性の高いジベンゾヘテロール環が導入されたカルバゾール誘導体を用いているため、比較例2および3に対して発光寿命が長くなることがわかる。 さらに、実施例1〜6で用いたカルバゾール誘導体は、ジベンゾヘテロール環におけるカルバゾール環の置換位置が3位および7位であり、窒素原子とヘテロ原子とによるラジカル開裂を抑制することができる。そのため、実施例1〜6は、ジベンゾヘテロール環におけるカルバゾール環の置換位置が異なる比較例1に対して、発光寿命が長くなることがわかる。 なお、実施例1〜6の発光層には、本実施形態に係るカルバゾール誘導体が正孔輸送材料として用いられた場合に好適なアントラセン誘導体(ADN、化合物a−2)が含まれており、発光寿命が長くなっていることがわかる。また、実施例1〜6の正孔輸送層の厚さは、30nmであり、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を含む層の好ましい範囲内の厚さになっていることがわかる。 ここで、実施例1〜3で用いたカルバゾール誘導体は、一般式(1)におけるXがO、S、またはSiR11R12であり、より安定性が高い。そのため、実施例1〜3は、XがGeR13R14であり安定性の低いカルバゾール誘導体を用いた実施例4に対して、発光寿命が長くなっていることがわかる。 また、実施例1〜4で用いたカルバゾール誘導体は、ジベンゾヘテロール環がカルバゾール環の3位に置換されることにより2つのカルバゾール環の窒素同士が共役系にて繋がるため、正孔移動度を向上させることができる。そのため、実施例1〜4は、ジベンゾヘテロール環がカルバゾール環の2位または4位に置換されたカルバゾール誘導体を用いた実施例5および6に対して、駆動電圧をさらに低下させ、発光効率をさらに向上させることができることがわかる。 また、上述した表1で示すように、実施例1〜4は、実施例5および6に対して、駆動電圧がさらに低下し、発光効率がさらに向上している。したがって、本実施形態に係るカルバゾール誘導体が有するHOMO準位の好ましい範囲は、−5.8eV以上−5.5eV以下であることがわかる。 以上説明したように、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、正孔輸送材料として用いることにより、有機EL素子の発光寿命を長くすることができる。 [カルバゾール誘導体をホスト材料として含む有機EL素子の評価] また、真空蒸着を用い、以下の手順にて、本実施形態に係るカルバゾール誘導体を発光層のホスト材料として含む有機EL素子300を作製し、評価した。 (実施例11) まず、あらかじめパターニングして洗浄処理を施したITO−ガラス基板にオゾンによる表面処理を行った。なお、該ガラス基板におけるITO膜の膜厚は、150nmであった。オゾン処理後、直ちに正孔注入材料として、4,4’,4’’−トリス(N,N−(2−ナフチル)フェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)を上記ITO膜上に膜厚60nmで成膜した。 次に、正孔輸送材料として、N,N,N’,N’−テトラ−(3−メチルフェニル)−3,3’−ジメチルベンジジン(HMTPD)を膜厚30nmで成膜した。また、発光層として、化合物1(ホスト材料,Host)に対して、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(Ir(ppy)3)(ドーパント材料)を発光層の総質量の20質量%にてドープ(dope)した膜を共蒸着によって膜厚25nmで成膜した。 続いて、電子輸送材料としてトリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)を膜厚25nmで成膜した。次に、電子注入材料としてフッ化リチウム(LiF)を膜厚1nmで成膜し、陰極としてアルミニウム(Al)を膜厚100nmで成膜して、有機EL素子300を作製した。 (実施例12〜16) 実施例11で用いた化合物1の代わりに化合物2〜4、13および17をそれぞれ用いた以外は実施例11と同様にして、有機EL素子を作製した。 (比較例11〜13) 実施例11で用いた化合物1の代わりに下記化合物41〜43をそれぞれ用いた以外は実施例11と同様にして、有機EL素子を作製した。なお、化合物41は、ジベンゾヘテロール環におけるカルバゾール環の置換位置が2位および8位である点において、本実施形態に係るカルバゾール誘導体と異なる化合物である。また、化合物42および43は、ジベンゾヘテロール環を有しない点において、本実施形態に係るカルバゾール誘導体と異なる化合物である。 作製した有機EL素子300の実施例11〜16、比較例11〜13の概略図を図3に示す。作製した有機EL素子300は、基板302、基板302上に配置された陽極304、陽極304上に配置された正孔注入層306、正孔注入層306上に配置された正孔輸送層308、正孔輸送層308上に配置された発光層310、発光層310上に配置された電子輸送層312、電子輸送層312上に配置された電子注入層314、電子注入層314上に配置された陰極316から構成されている。 作製した実施例11〜16、比較例11〜13の有機EL素子300の評価結果を以下の表3に示す。なお、作製した有機EL素子300の発光特性の評価には、上記と同様に浜松ホトニクス製C9920−11輝度配向特性測定装置を用いた。また、下記の表3において、電流密度は10mA/cm2にて測定し、半減寿命は1000cd/m2にて測定した。 表3の結果を参照すると、本実施形態に係るカルバゾール誘導体である化合物1〜4、13および17を発光層のホスト材料として用いた実施例11〜16は、比較例11〜13に対して、駆動電圧が低下し、発光効率が向上し、発光寿命が長くなっていることがわかる。 具体的には、実施例11〜16で用いられるカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環の間にジベンゾヘテロール環が導入されることにより、りん光ドーパントに好適な三重項励起状態T1のエネルギー準位を実現することができる。そのため、実施例11〜16は、比較例12および13に対して駆動電圧が低下し、発光効率が向上していることがわかる。また、実施例11〜16は、電子耐性の高いジベンゾヘテロール環が導入されたカルバゾール誘導体を用いているため、比較例12および13に対して発光寿命が長くなることがわかる。 さらに、実施例11〜16で用いたカルバゾール誘導体は、ジベンゾヘテロール環におけるカルバゾール環の置換位置が3位および7位であり、窒素原子とヘテロ原子とによるラジカル開裂を抑制することができる。そのため、実施例11〜16は、ジベンゾヘテロール環におけるカルバゾール環の置換位置が異なる比較例11に対して、発光寿命が長くなることがわかる。 ここで、実施例11〜13で用いたカルバゾール誘導体は、一般式(1)におけるXがO、S、またはSiR11R12であり、より安定性が高い。そのため、実施例11〜13は、XがGeR13R14であり安定性が低い実施例14に対して、発光寿命が長くなっていることがわかる。 以上説明したように、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、発光層のホスト材料として用いた場合にも同様に、有機EL素子の発光寿命を長くすることができることがわかる。 したがって、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、高い電子耐性を有し、ジベンゾヘテロール環の3位および7位がカルバゾール環により置換されることでラジカル開裂が抑制されるため、有機EL素子を長寿命化することができる。また、本実施形態に係るカルバゾール誘導体は、2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール環の置換位置が互いに同一であることにより分子の対称性が高くなり、正孔移動度が向上するため、有機EL素子の発光効率を向上させることができる。 以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。 なお、前述した実施例においては、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体を正孔輸送材料または発光層のホスト材料として用いた有機EL素子について説明したが、本発明は前述の実施例に限定されない。例えば、本発明の一実施形態に係るカルバゾール誘導体は、その他の発光素子又は発光装置に利用することも可能である。また、図1〜3に示す有機EL素子は、パッシブ・マトリクス(passive−matrix)駆動方式の有機ELディスプレイ(display)に利用することができるが、アクティブ・マトリクス(active−matrix)駆動方式の有機ELディスプレイに利用することも可能である。 100 有機EL素子 102 基板 104 陽極 106 正孔注入層 108 正孔輸送層 110 発光層 112 電子輸送層 114 電子注入層 116 陰極 下記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体。 前記一般式(1)において、 2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール環の置換位置は、互いに同一であり、 Xは、O、S、SiR11R12、またはGeR13R14であり、 R1〜R14は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基、または任意の隣接したR1〜R14が少なくとも2つ以上縮合して形成された置換もしくは無置換のアリールもしくはヘテロアリール基であり、 Ar1およびAr2は、互いに独立して、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基であり、 aおよびbは、互いに独立して、0〜3の整数である。 前記Xは、O、S、またはSiR11R12である、請求項1に記載のカルバゾール誘導体。 前記ジベンゾヘテロール環の置換位置は、前記カルバゾール環の3位または6位である、請求項1または2に記載のカルバゾール誘導体。 前記R1〜R14、Ar1およびAr2は、互いに独立して、水素、重水素、フェニル基、およびナフチル基からなる群より選択されたいずれかの置換基である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のカルバゾール誘導体。 前記カルバゾール誘導体のHOMO(Highest Ocuppied Molecular Orbital)準位は、−5.8eV以上−5.5eV以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカルバゾール誘導体。 前記カルバゾール誘導体の三重項励起状態T1と、基底状態S0とのエネルギー準位の差は、2.4eV以上3.2eV以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカルバゾール誘導体。 発光層中に請求項1〜6のいずれか一項に記載のカルバゾール誘導体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。 陽極と発光層との間に位置する少なくとも1つ以上の層中に請求項1〜6のいずれか一項に記載されたカルバゾール誘導体を含む、有機エレクトロルミネッセンス素子。 前記カルバゾール誘導体が含まれる層の厚さは、3nm以上30nm以下である、請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 前記発光層は、縮合多環芳香族化合物を含む、請求項8または9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 前記縮合多環芳香族化合物は、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、クリセン誘導体、ベンゾアントラセン誘導体、およびトリフェニレン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の化合物である、請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 前記縮合多環芳香族化合物は、ピレン誘導体、および下記一般式(2)で表されるアントラセン誘導体からなる群より選択されるいずれか1つ以上の化合物である、請求項11に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。 前記一般式(2)において、 R21〜R30は、互いに独立して、水素、重水素、ハロゲン、置換もしくは無置換のシリル基、置換もしくは無置換のC1〜C15のアルキル基、置換もしくは無置換のC6〜C30のアリール基、および置換もしくは無置換のC1〜C30のヘテロアリール基からなる群より選択されたいずれかの置換基、または任意の隣接したR21〜R30が少なくとも2つ以上縮合して形成された置換もしくは無置換のアリールもしくはヘテロアリール基であり、 cおよびdは、互いに独立して、0〜5の整数である。 【課題】発光寿命が向上した有機EL素子を提供する。【解決手段】下記一般式(1)で表されるカルバゾール誘導体。 【化1】 前記一般式(1)において、 2つのカルバゾール環におけるジベンゾヘテロール環の置換位置は、互いに同一であり、 Xは、O、S、SiR11R12、またはGeR13R14であり、 R1〜R14は、任意の置換基であり、 aおよびbは、互いに独立して、0〜3の整数である。【選択図】図1