生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_安全性評価方法(動物実験代替)
出願番号:2014116955
年次:2014
IPC分類:G01N 33/15,G01N 33/50,G01N 33/48


特許情報キャッシュ

相葉 摩紀 太枝 志帆 廣田 衞彦 上月 裕一 跡部 朋美 JP 2014211442 公開特許公報(A) 20141113 2014116955 20140605 安全性評価方法(動物実験代替) 株式会社 資生堂 000001959 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 渡辺 陽一 100117019 中島 勝 100141977 池田 達則 100138210 相葉 摩紀 太枝 志帆 廣田 衞彦 上月 裕一 跡部 朋美 JP 2013119262 20130605 G01N 33/15 20060101AFI20141017BHJP G01N 33/50 20060101ALI20141017BHJP G01N 33/48 20060101ALI20141017BHJP JPG01N33/15 ZG01N33/50 ZG01N33/48 N 5 11 OL 23 2G045 2G045AA29 2G045AA40 2G045JA03 本発明は、皮膚一次刺激性試験、単回投与毒性試験、皮膚感作性試験、眼刺激性試験、光毒性試験、光感作性試験、遺伝毒性試験、反復投与毒性試験、生殖発生毒性試験及び暴露試験から成る安全性保証評価系において、標的物質の安全性保証濃度を算定するための方法であって、(a)in vitro 及び/又はin silico 試験により標的物質の安全性を評価し、評価された安全性に基づき標的化合物の配合上限濃度を予測する工程、(b)標的物質の毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類に基づき、化学物質の毒性情報が格納された複数のデータベースから類似物質を選定し、その中から最も強い毒性を示す類似物質の安全性情報を読み込むことで、標的物質の安全性を予測する工程、及び(c)工程(a)で評価された安全性と工程(b)で予測された安全性とを比較し、工程(b)で予測された安全性の方が低い場合には、標的物質の安全性保証濃度を工程(a)で予測された配合上限濃度よりも低く設定する工程、を含んで成る方法、に関する。 出願人は、全ての製品について高い安全性を保証することを最優先しており、それと同時に安全性の確認にあたっては、できる限り動物実験を実施しないようにするとともに、代替法の開発を積極的に推進してきた。一方、世界的に自然志向や動物愛護の考え方が広がるなか、動物実験廃止の取り組みに最も先進的な欧州では、2013年の廃止を目指すEU化粧品指令が制定された。EU化粧品指令(第7次改正)は、化粧品に関する動物実験の禁止を定めたものであり、当該指令下においては、EU域内での動物実験が禁止され(製品:2004年9月までに禁止、原料:2009年3月11日以降に禁止)、EU域外を含め動物実験した製品や、同原料を配合した製品をEU域内で販売することが禁止されている(2009年3月11日以降に禁止、ただし、代替法が確立していなかった反復投与毒性、生殖発生毒性試験等については、2013年3月10日まで猶予されている)。 こうした背景のもと、出願人は高い安全性を確保しながら、動物愛護の観点から化粧品における動物実験の廃止を目指す」ことを2011年に宣言した。 これまで、感作性物質のin vitro 評価方法(特許文献1)や、in silico 手法を用いた安全性評価方法(特許文献2)が知られているが、これまで知られているin vitro/in silico 評価方法は安全性を担保するには不十分である。特に感作性や全身毒性試験など関しては、未だ世界的に見てもin vitroよる代替法が極めて困難と位置付けられている。そこで出願人は、in vitro 試験法だけでなく、素材の化学構造から得られる物性値と、安全性データを統計学的手法に解析するin silico モデル、カテゴリー分類による類似素材の情報から、安全性を予測するエキスパート・システムの開発を行い、それらを組み合わせることで、動物実験に依存しない化粧品の新安全性保証体系を確立した。特開2001−221796号公報特開2008−150360号公報 本発明の課題は、動物実験に依存しない化粧品の新規な安全性保証体系を提供することにある。 出願人は、in vitro 試験法だけでなく、素材の化学構造から得られる物性値と、安全性データを統計学的手法に解析するin silico モデル、カテゴリー分類による類似素材の情報から、安全性を予測するエキスパート・システムの開発を行い、それらを組み合わせることで、動物実験に依存しない化粧品の新安全性保証体系を確立した。 本願は以下の発明を包含する:[1] 皮膚一次刺激性試験、単回投与毒性試験、皮膚感作性試験、眼刺激性試験、光毒性試験、光感作性試験、遺伝毒性試験、反復投与毒性試験、生殖発生毒性試験及び暴露試験から成る安全性保証評価系において、標的物質の安全性保証濃度を算定するための方法であって、(a) in vitro 及び/又はin silico 試験により標的物質の安全性を評価し、評価された安全性に基づき標的化合物の配合上限濃度を予測する工程、(b) 標的物質の毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類に基づき、化学物質の毒性情報が格納された複数のデータベースから類似物質を選定し、その中から最も強い毒性を示す類似物質の安全性情報を読み込むことで、標的物質の安全性を予測する工程、及び(c) 工程(a)で評価された安全性と工程(b)で予測された安全性とを比較し、工程(b)で予測された安全性の方が低い場合には、標的物質の安全性保証濃度を工程(a)で予測された配合上限濃度よりも低く設定する工程、を含んで成る方法。[2] 前記工程(b)において、安全性保証項目が皮膚感作性である場合、毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類が、タンパク結合性、経皮吸収率(%)、毒性ポテンシャル、毒性アラート及び感作アラートであることを特徴とする、[1]に記載の方法。[3] 前記工程(b)において、データベースで検索される化学物質が、 標的物質とタンパク質分類が一致するか又は構造類似性が75%以上であり、 標的物質と経皮吸収率において10%以上又は10%未満のいずれかで一致し、かつ 標的物質と毒性ポテンシャル又は毒性アラートが一致するか、あるいは感作アラートがある場合に類似物質として選定され、但し、上記化学物質が皮膚代謝物である場合には、皮膚吸収率(%)については考慮されないことを特徴とする、[2]に記載の方法。[4] 前記工程(b)において、安全性保証項目が反復投与毒性である場合、毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類が、毒性発現分類、腸管吸収性、毒性ポテンシャル及び毒性アラートであることを特徴とする、[1]に記載の方法。[5] 前記工程(b)において、データベースで検索される化学物質が、 標的物質と毒性発現分類が一致するか又は構造類似性が75%以上であり、 標的物質と腸管吸収性が類似し、かつ 標的物質と毒性ポテンシャル又は毒性アラートが一致する場合に選定され、但し、上記化学物質が肝代謝物である場合には、腸管吸収性については考慮されないことを特徴とする、[4]に記載の方法。 本発明により、動物実験に依存することなく、十分な信頼性を伴い、標的物質(化粧品素材)の安全性保証濃度を決定することが可能となる。皮膚一次刺激性(in vitro)保証系フローを示す。単回投与毒性(in vitro/in silico)保証系フローを示す。皮膚感作性(in vitro/in silico)保証系フローを示す。眼刺激性(in vitro)保証系フローを示す。光毒性(in vitro/in silico)保証系フローを示す。光皮膚感作性(in vitro/in silico)保証系フローを示す。反復投与毒性(in silico)、生殖発生毒性(in silico)、及び暴露(in silico)を含む全身毒性保証系フローを示す。安全性保証項目が皮膚感作性である場合のエキスパート・システムにおける化粧品の毒性発現プロセスを基にした類似素材構築の考え方を表す。安全性保証項目が反復投与毒性である場合のエキスパート・システムにおける化粧品の毒性発現プロセスを基にした類似素材構築の考え方を表す。in vitro/in silico 試験を保証のメインとした本発明の安全保証体系全体のフローを示す。エキスパート・システムを保証のメインとした本発明の安全保証体系全体のフローを示す。 本発明により提供される新規な安全性保証体系においては、皮膚一次刺激性試験、単回投与毒性試験、皮膚感作性試験、眼刺激性試験、光毒性試験、光感作性試験、遺伝毒性試験、反復投与毒性試験、生殖発生毒性試験、及び暴露試験から成る安全性保証項目が評価される。(1)皮膚一次刺激性(in vitro) 1. 既存情報やエキスパート・システム等から得られる情報から、in vitro 試験実施の有無や結果の取り扱いを判断する。 2. in vitro 3次元皮膚モデル試験にて配合濃度での刺激性の有無を判断する。3次元皮膚モデルは、特に制限されることなく使用できるが、例えば、MATREX TMLDM-001(東洋紡績株式会社)などを用いることができる。 皮膚一次刺激保証系の具体的なフローを図1に示す。(2)単回投与毒性(in vitro/in silico) 1. 既存情報やエキスパート・システム等から得られる情報から、in vitro/in silico 試験実施の有無や結果の取り扱いを含め毒性の判断をする。 2. 水溶性物質については例えばウサギ角膜由来細胞(SIRC)試験のようなin vitro単層培養系の細胞毒性試験を実施する。 3. 非水溶性物質については、in vitro 3次元皮膚モデル試験、例えば、MATREX TMLDM-001(東洋紡績株式会社)などにて細胞毒性試験を実施し、毒性のポテンシャルを判断する。 4. 細胞毒性試験で高い毒性のポテンシャルが得られたものであっても、活性剤であるものについては、 in silico 試験を用いて判断する。 単回投与毒性保証系の具体的なフローを図2に示す。(3)皮膚感作性試験(in vitro/in silico) 化粧品素材のうち、構造既知のものに関しては、in vitro モデルとin silico モデルを用いて配合可能濃度を予測し、両モデルより得られた予測値の低値を用いることとする。また構造未知の素材や高分子に関しては、in vitro モデルのみで配合可能濃度を予測することとする。in vitro 予測モデルとは、酸化ストレスを指標にした試験法(例えばAREアッセイ)、細胞へのタンパク結合を指標にした試験法(例えばSHテスト)、樹状細胞の活性化を指標にした試験法(例えばh-CLAT)のそれぞれの試験法について、in vivo の配合可能濃度と相関が得られた指標を用いてコンピューター学習モデル(例えば、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23))により配合可能濃度を算出できるように設定したものである。in silico モデルについては、in vivo 感作性試験による配合可能濃度との相関のある、物質の構造から得られる記述子(例えばHeat of formation、Sum H, Polarizabilityα, Polarizabilityγ)を指標として用いてコンピューター学習モデル(例えば、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23))により配合可能濃度を算出できるように設定したものである。得られた濃度の妥当性はエキスパート・システムを用いて収集した懸念情報を基に判断され、特に懸念すべき場合には、算出された値にふさわしいマージンを置いて配合濃度を決定する。 皮膚感作試験保証系の具体的なフローを図3に示す。(4)眼刺激性試験(in vitro) 化粧品素材のうち、水溶性のものに関しては、ウサギ角膜由来細胞(SIRC)を用いた試験を用いてIC50を算出する。得られたIC50値から眼刺激性を評価する。非水溶性のものに関しては、コラーゲンゲル試験を実施し、(1)の皮膚刺激性試験と同様の基準で合格した場合、配合可能とする。 眼刺激性試験保証系の具体的なフローを図4に示す。(5)光毒性試験(in vitro) 化粧品素材のうち、希望配合濃度でUV吸収性のある場合、光毒性試験を実施する。水溶性物質(1mg/mlで溶解または均一分散)については、3T3 NRU光毒性試験(OECDガイドライン法)を実施し、PIFが2未満(「光毒性なし」)となったものに関しては、配合可能と判断し、それ以外の場合は、配合不可とする。 一方その他の非水溶性物質については、コラーゲンゲル光毒性試験を実施し、UV照射、非照射時の生存率差に明確な差異が認められる(「光毒性あり」)の場合は、配合不可とする。 光毒性試験保証系の具体的なフローを図5に示す。(6)光感作性試験(in vitro/in silico) 化粧品素材のうち、希望配合濃度でUV吸収性のある場合、光感作性試験を実施することとする。評価法としては、ハザード評価(陽性陰性評価)、リスク評価(配合可能濃度算出評価)の順で行い、配合可能濃度を決定する。 ハザード評価の方法としては、まずモル吸光係数(MEC)を算出し、MECの大小により光感作性を評価する。MECの値により判断できない場合は、ROS アッセイによる評価を行う。ROS活性で陰性となった場合及びMES値から陰性と判断できる場合は「光感作性なし」とし、感作性試験から得られた配合可能濃度を引用することとする。ROS アッセイが陽性となった場合、またはMEC値により陽性と判断できる場合、あるいは分子量不明素材については「光感作性の可能性あり」として、引き続き光感作リスク評価を行うこととする。 リスク評価の方法としては、構造既知のものに関しては、in vitro モデルとin silico モデルを用いて配合可能濃度を予測し、両モデルより得られた予測値の低値を用いる。また構造未知の素材や高分子に関しては、in vitro モデルのみで配合可能濃度を予測する。in vitro 予測モデルとは、酸化ストレスを指標にした試験法(例えば光AREアッセイ)、細胞へのタンパク結合を指標にした試験法(例えば光SH/NH2テスト)を用いて、それぞれの試験法について、in vivoの配合可能濃度との相関のある得られた指標を用いてコンピューター学習モデル(例えば、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23))を用いて配合可能濃度を算出できるように設定したものである。in silico モデルについては、in vivo 光感作性試験による配合可能濃度と相関のある、物質の構造から得られる記述子(例えばHeat of formation、Sum H, Electronic energy, Gamma average)を指標として用いてコンピューター学習モデル(例えば、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23))により配合可能濃度を算出できるように設定したものである。濃度の妥当性はエキスパート・システムを用いて収集した懸念情報を基に判断する。 光感作性試験保証系の具体的なフローを図6に示す。(7)遺伝毒性(in vitro) 1. 既存情報やエキスパート・システム等から得られる情報から、in vitro 試験実施の有無を含めて毒性を判断する。 2. Ames試験や染色体異常などのin vitro 試験を行い、毒性のポテンシャルを判断する。(8)反復投与毒性(in silico) 1. 既存情報やエキスパート・システム等から得られる情報から、曝露量評価・in silico 試験実施の有無や結果の取り扱いを含めて毒性を判断する。 2. 曝露量評価は、in silico 試験にて求めた経皮吸収率と製品の使用方法に基づいて算出し、その値を保証可能濃度判断の指標のひとつとして判断をする。 3. さらにin silico 試験にて反復投与毒性無影響量 (NOEL: No Observed Effect Level)(mg/kg)を求め、それを曝露量で割ることで求まる安全倍率の値を保証可能濃度判断の指標のひとつとして判断をする。このような安全性評価方法は、特開2008-150360に詳しく開示されている。具体的には、既存化学物質毒性データベース(http://dra4.nihs.go.jp/mhlw_data/jsp/Search Page.jsp) から、ラットを用いた421検体の28日間反復経口投与毒性試験のNOELの結果が採集され、更に、化合物の3 次元構造から得られる分子軌道の記述子を計算し、統計学的手法により抽出した独立かつ予測に有効な記述子から、artificial neural network解析を用いてNOELが予測されている。抽出される記述子としては、例えば、SumN (窒素原子の総電荷)、SumS (硫黄原子の総電荷)、Polarizability γ (分極率γ)、Total energy (全エネルギー)、Heat of formation (生成熱)、Ionization Potential (イオン化ポテンシャル)、性別などが挙げられる。(9)生殖発生毒性(in silico) 1. 既存情報やエキスパート・システム等から得られる情報で判断し、in silico 試験実施の有無を含めて毒性を判断する。 2. in silico 試験にてそれぞれ、発生・生殖のNOAELを求め、それらと反復投与毒性のNOAELの値との比較に基づいてポテンシャルを評価し、判断をする。(10)曝露(in silico) 1. in silico 試験を用いて得られる経皮吸収率と製品の使用方法に基づく係数を基に曝露量を算出し、その値を保証可能濃度判断の指標のひとつとして判断する。 上記反復投与毒性、生殖発生毒性及び曝露を含む全身毒性保証系のフローを図7に示す。 これらのin vitro 及び/又はin silico 試験によって、標的物質の安全性を評価することができ、その結果に基づき、標的化合物の配合上限濃度を予想することができる。エキスパート・システムの構築 「エキスパート・システム」とは、一般的にin silico 試験と称される定量的構造活性相関性から安全性を予測するものとは異なり、化学構造のみならず、毒性発現機構に基づき、被験物質(化粧品素材)の類似物質の抽出を行い、得られた類似物質の詳細情報を読み込むことで、被験物質の安全性を評価するためのシステムを意味する。毒性発現機構に基づく類似性は、評価すべき安全性保証項目(すなわち、皮膚一次刺激性、単回投与毒性、皮膚感作性、眼刺激性、光毒性、光感作性、遺伝毒性、反復投与毒性、生殖発生毒性、暴露)に応じて、既知物質・化合物の安全性情報が得られる複数のデータベースに基づき判断することができる。例えば、安全保証項目が皮膚感作性である場合には、タンパク質結合性、経皮吸収率、毒性ポテンシャル、毒性アラート、感作アラートなどの安全性情報が得られるデータベースを用いることができ、また、安全保証項目が反復投与毒性である場合には、毒性発現分類、腸管吸収性、毒性ポテンシャル、毒性アラートなどの安全性情報が得られるデータベースを用いることができる。エキスパート・システムにおける化粧品素材の毒性発現プロセスを基にした類似素材構築の考え方として、安全性保証項目が皮膚感作性及び反復投与毒性である場合の決定樹をそれぞれ図8及び図9に示す。 その後、複数のデータベースから得られた類似物質の安全情報を抽出し、最も強い毒性を示す類似物質の詳細情報を読み込むことにより、被験物質の安全性を予測することができる。 エキスパート・システムを構築するためのデータベースとしては、既存の商用データベースソフトやフリーソフトなどを用いてもよく、例えば、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。・Derek for Windows(CTCラボラトリーズ) 化合物の構造からその毒性を予測する知識ベースであり、他の毒性予測プログラムの様に、統計解析的な手法を用いた定量的毒性予測ではなく、多くの知見から得られた部分構造活性相関(SAR)の経験則をルール化した知識ベースにより、定性的毒性予測を行う。Derek for Windowsで用いられる知識ベースは、毒性のある化合物から共通のルールを導き出し作成されている。知識ベースの内容はユーザに公開されており、現在697種のルール(Alert)が収録されている。予測可能な毒性エンド・ポイントとしては、例えば、変異原性、発がん性、染色体損傷、遺伝毒性、肝毒性、hERGチャネル阻害、催奇形性、甲状腺毒性、皮膚感作性、刺激作用、呼吸器感作性などが挙げられる (http://www.ctcls.co.jp/products/list/lhasa.html)。・ADMEWORKS(富士通九州システムズ) ADMEWORKSは、化合物特性予測モデル作成・特性解析支援ソフトウェアであり、化学性に基づいた化合物群の解析と予測モデルを構築することができる。該ソフトウェアでは、クラス分類を行う定性モデル、数値に基づく定量モデルを作成することができる。800を超える化学パラメーターを利用することができ、さらに、独自の部分構造パラメーター、外部パラメーターを追加できる(http://jp.fujitsu.com/group/kyushu/services/lifescience/admeworks/)。・有害性評価支援システム統合プラットフォーム(NITE 独立行政法人 製品評価技術基盤機構) 有害性評価支援システム統合プラットフォーム(HESS)は、ラットを対象とした化学物質の反復投与毒性試験データ及び毒性にかかわる作用機序情報などを集積した毒性知識情報データベースとラットやヒトなどのほ乳類における化学物質の代謝情報から構成される知識情報データベースの2つのデータベース(HESS DB)を備えたシステムである。また、これら2つのデータベースから必要な情報を抽出し、各化学物質間のデータの比較や化学物質の分子構造、物理化学的性質などによる化学物質の分類(カテゴリー化)を行うことを支援し、カテゴリーアプローチによる未試験化学物質の反復投与毒性の評価を支援することが可能である(http://www.safe.nite.go.jp/kasinn/qsar/hess.html)。・OECD QSAR Toolbox(経済協力開発機構:OECD) OECD QSAR Toolboxは、既知化合物の毒性・有害性情報から未評価化合物の活性を推定するためのアプリケーションである。該ソフトウェアには、多様な毒性・有害性の実測値がデータベースとして搭載されており、化学構造に基づき、物理化学的性質や、毒性・有害性に関する情報を取得することができる(http://www.oecd.org/env/ehs/risk-assessment/theoecdqsartoolbox.htm)。 対応する安全性保証項目において、エキスパート・システムで予測された安全性と、in vitro 及び/又はin silico 試験により評価された安全性とを比較し、エキスパート・システムで予測された安全性の方が低い場合には、標的物質の安全性保証濃度を、in vitro 及び/又はin silico 試験で予測された配合上限濃度よりも低く設定することにより、化粧品としての安全性が担保される。 本発明により提供される安全性保証体系においては、in vitro/in silico 試験による保証とエキスパート・システムによる保証のいずれをメインに行ってもよい。例えば、本発明の一態様においては、情報保証の後、皮膚一次刺激、単回投与毒性、皮膚感作性、眼刺激、光毒性、光感作性、遺伝毒性、反復投与毒性、生殖発生毒性及び暴露から成る群から選択される安全評価項目におけるin vitro/in silico 試験を保証をメインに行い、その後、皮膚感作性と全身毒性(反復投与毒性、生殖発生毒性及び曝露)に関しては、エキスパート・システムを実施し、保証濃度が決定される(図10を参照のこと)。あるいは、エキスパート・システムを保証のメインとし、全安全性保証項目の保証を実施した後、さらに各安全性保証項目についてin vitro/in silico 保証を行ってもよい(図11を参照のこと)。エキスパート・システムによる保証をメインとすることにより、さらに信頼性の高い安全性保証評価系が提供される。 安全保証濃度が決定された後、感作性の評価ではリンパ球幼若化試験かHuman Repeated Insult Patch Test (RIPT)、光感作性の評価ではHuman Photomaximization test (光MAX)、全身毒性の評価では安全性薬理を必要に応じて行い、ヒト試験を行った後に保証としての最終判断が行われる。 以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 図7のフロー図に従ってエチルアニリン(Cas No. 103-69-5)を0.5%配合した際の安全性を評価した例を示す。1. In silico予測モデルを用いた安全性評価 まず、エチルアニリンを0.5%配合した際の安全性を以下のとおり評価した。化合物や溶媒のオクタノール/水分配係数と、化合物の分子量からなる記述子を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したin silico予測モデルを用いて経皮吸収率を算出したところ83%であり、0.5%配合した場合の全身曝露量は大きいと判断し、次に反復投与毒性NOELの予測を行った。化合物の分子軌道から得られる記述子を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したin silico NOEL予測モデルを用いて、反復投与毒性のNOELを算出したところ、ターゲットのNOEL予測値は11.6 mg/kg/dayと算出された。この値をもちいて、0.5%配合した場合の安全倍率(MoS)を算出すると36となった。安全倍率が100以下となったことから、エチルアニリンを0.5%配合する際の安全性は不合格と判断した。2. エキスパート・システムを用いた反復投与毒性評価 次にエチルアニリンの配合可能濃度を算出するために、化学構造のみならず、毒性発現機構を考慮した類似素材の安全性情報から予測するエキスパート・システム(データベースは、OECD QSAR Toolbox、HESSを用いた。)を用いた反復投与毒性の評価を行った。エチルアニリンの毒性発現分類は「Anilines (Hemolytic anemia with methemoglobinemia) Rank A|Anilines (Hepatotoxicity) Rank C」に分類された。また、腸管吸収性が高く、毒性アラートも骨髄毒性・染色体損傷・肝毒性・腎毒性・脾臓毒性・皮膚感作性に関するアラートを有し、毒性ポテンシャルが高い(class 3レベル)となった。フローに従って化合物を選抜したところ、これの類似素材該当した化合物は他に17品が抽出された。 抽出された類似化合物17品のCas No.を以下に示す。 95-51-2、108-42-9、99-09-2、108-44-1、536-90-3、87-59-2、87-62-7、95-64-7、95-68-1、97-52-9、100-61-8、108-69-0、156-43-4、121-69-7、89-63-4、99-88-7、20265-96-7 この中で、最も低いNOELを示した化合物は121-69-7の1 mg/kg/dayであった。この値から、安全倍率(MoS) 100を確保可能な配合可能濃度を算出すると、0.02%未満となった。 以上の評価結果からエチルアニリンの0.5%配合は安全性上不合格と判定した。皮膚感作性評価 図3の感作性評価フローにしたがって、p-フェニレンジアミン(Cas No. 106-50-3)を0.005%配合した際の安全性を以下のとおり評価した。 p-フェニレンジアミンをin vitro感作性試験h-CLAT、SHテスト、AREアッセイを実施したところ、すべて陽性であり、算出された配合上限は、0.008%と算出された。一方、化合物の分子軌道から得られる記述子を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したin silicoモデルでは、0.029%であった。次に、化学構造のみならず、毒性発現機構を考慮した類似素材の安全性情報から予測するエキスパート・システム(データベースは、OECD QSAR Toolboxを用いた。)に供したところ、類似物質として14品(トルエン 2,5-ジアミン等)が抽出され、14品の類似化合物中に強感作原があることが判明したため、安全マージン10を計上し、p-フェニレンジアミンの配合上限は、in vitroモデルとin silicoモデルの低値に1/10をかけ、0.0008%と算出された。したがって、p-フェニレンジアミンを0.005%使用する際の安全性は不合格と判断した。 また、香料アレルゲンと知られているイソオイゲノール(Cas No. 97-54-1)を0.005%配合した際の安全性についても評価した。 イソオイゲノールのin vitro感作性試験h-CLAT、SHテスト、AREアッセイを実施したところ、SHテスト、AREアッセイが陽性であり、算出された配合上限は、0.943%と算出された。一方、化合物の分子軌道から得られる記述子を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したin silicoモデルでは、0.097%であった。次に、化学構造のみならず、毒性発現機構を考慮した類似素材の安全性情報から予測するエキスパート・システム(データベースは、OECD QSAR Toolboxを用いた。)に供したところ、類似物質として161品(イソプロピルイソオイゲノール等)が抽出され、161品の類似化合物中に強感作原があることが判明したため、安全マージン10を計上し、イソオイゲノールの配合上限は、in vitroモデルとin silicoモデルの低値に1/10をかけ、0.0097%と算出された。したがって、イソオイゲノールを0.005%使用する際の安全性は合格と判断した。光感作性評価 図6の光感作性評価フローにしたがって、1,3‐ブチレングリコール(Cas No. 107-88-0)を10%配合した際の安全性を以下の通り評価した。 化合物のUV吸収性を算出したところ、MECが10以下でありUV吸収少と判断した。 次にROSアッセイを用いた評価を行ったところ、陰性結果が得られた。この結果から、光感作性のポテンシャルを有していないと判断されたことから、1,3‐ブチレングリコールを10%配合する際の安全性は合格と判断した。 また、6‐メチルクマリン(Cas No. 92-48-8)を1%配合した際の安全性についても以下の通り評価した。 化合物のUV吸収性を算出したところ、MECが7502でありUV吸収多と判断し、「光感作性の可能性あり」として、引き続き光感作リスク評価を行うこととした。そこで次に、in vitro 予測モデルとして、酸化ストレスを指標にした試験法(光AREアッセイ)、細胞へのタンパク結合を指標にした試験法(光SH/NH2テスト)を用いて試験を行った。それぞれの試験法について、in vivoの配合可能濃度との相関の得られた指標を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したコンピューター学習モデルを用いて配合可能濃度を算出したところ、6‐メチルクマリンの配合可能濃度は0.1380%であると算出された。また、化合物の分子軌道から得られる記述子を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したin silico モデルにより配合可能濃度を算出したところ、6‐メチルクマリンの配合可能濃度は0.0350%と算出された。そのため、両モデルの低値である0.0350%を配合可能濃度とし、1%配合する際の安全性は不合格と判断した。単回投与毒性評価 図2の単回投与毒性評価フローにしたがって、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(Cas No. 122-19-0)の安全性を以下の通り評価した。 化合物は水溶性であることから、in vitro 単回投与毒性試験SIRCを実施したところ、IC50値は2.7 μg/mlと算出された。この値をもちいて、LD50値を算出すると79.8 mg/kgとなった。LD50値が900 mg/kg未満となり、構造既知の活性剤であることから、次に化合物の分子軌道から得られる記述子を、Artificial neural network (QwikNet cer.2.23)を用いて解析したin silicoモデルで解析を行ったところ、LD50値は3432.0 mg/kgと算出され、LD50値が900 mg/kg以上となった。 以上の評価結果から、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドは安全性上合格と判定した。 また、p-フェニレンジアミン(Cas No. 106-50-3)の安全性についても以下のとおり評価した。 化合物は水溶性であることから、in vitro 単回投与毒性試験SIRCを実施したところ、IC50値は33.0 μg/mlと算出された。この値をもちいて、LD50値を算出すると277.1 mg/kgとなり、LD50値が900 mg/kg未満となった。 以上の評価結果から、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウムクロリドは安全性上不合格と判定した。 皮膚一次刺激試性験、単回投与毒性試験、皮膚感作性試験、眼刺激試験、光毒性試験、光感作性試験、遺伝毒性試験、反復投与毒性試験、生殖発生毒性試験及び暴露試験から成る安全性保証評価系において、標的物質の安全性保証濃度を算定するための方法であって、(a) in vitro 及び/又はin silico 試験により標的物質の安全性を評価し、評価された安全性に基づき標的化合物の配合上限濃度を予測する工程、(b) 標的物質の毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類に基づき、化学物質の毒性情報が格納された複数のデータベースから類似物質を選定し、その中から最も強い毒性を示す類似物質の安全性情報を読み込むことで、標的物質の安全性を予測する工程、及び(c) 工程(a)で評価された安全性と工程(b)で予測された安全性とを比較し、工程(b)で予測された安全性の方が低い場合には、標的物質の安全性保証濃度を工程(a)で予測された配合上限濃度よりも低く設定する工程、を含んで成る方法。 前記工程(b)において、安全性保証項目が皮膚感作性である場合、毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類が、タンパク結合性、経皮吸収率(%)、毒性ポテンシャル、毒性アラート及び感作アラートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 前記工程(b)において、データベースで検索される化学物質が、 標的物質とタンパク質分類が一致するか又は構造類似性が75%以上であり、 標的物質と経皮吸収率において10%以上又は10%未満のいずれかで一致し、かつ 標的物質と毒性ポテンシャル又は毒性アラートが一致するか、あるいは感作アラートがある場合に類似物質として選定され、但し、上記化学物質が皮膚代謝物である場合には、皮膚吸収率(%)については考慮されないことを特徴とする、請求項2に記載の方法。 前記工程(b)において、安全性保証項目が反復投与毒性である場合、毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類が、毒性発現分類、腸管吸収性、毒性ポテンシャル及び毒性アラートであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 前記工程(b)において、データベースで検索される化学物質が、 標的物質と毒性発現分類が一致するか又は構造類似性が75%以上であり、 標的物質と腸管吸収性が類似し、かつ 標的物質と毒性ポテンシャル又は毒性アラートが一致する場合に選定され、但し、上記化学物質が肝代謝物である場合には、腸管吸収性については考慮されないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。 【課題】動物実験に依存しない化粧品の新規な安全性保証体系を提供する。【解決手段】皮膚一次刺激性試験、単回投与毒性試験、皮膚感作性試験、眼刺激試験、光毒性試験、光感作性試験、遺伝毒性試験、反復投与毒性試験、生殖発生毒性試験及び暴露試験から成る安全性保証評価系において、標的物質の安全性保証濃度を算定する方法であって、(a)in vitro及び/又はin silico試験により標的物質の安全性を評価し、その配合上限濃度を予測する工程、(b)標的物質の毒性発現メカニズムに関するカテゴリー分類に基づき、複数の毒性情報データベースから類似物質を選定し、最も強い毒性を示す類似物質の安全性情報から標的物質の安全性を予測する工程、(c)工程(a)による安全性よりも工程(b)による安全性の方が低い場合には、標的物質の安全性保証濃度を工程(a)で予測された配合上限濃度よりも低く設定する工程、を含む。【選択図】図11


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