タイトル: | 公開特許公報(A)_耐酸性錠剤 |
出願番号: | 2014116330 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 9/24,A61K 47/38,A61K 47/10,A61K 31/59,A61K 9/26 |
中村 達雄 久保田 喜子 JP 2015229648 公開特許公報(A) 20151221 2014116330 20140605 耐酸性錠剤 株式会社ファンケル 593106918 長谷部 善太郎 100122954 山田 泰之 100162396 中村 理弘 100194803 中村 達雄 久保田 喜子 A61K 9/24 20060101AFI20151124BHJP A61K 47/38 20060101ALI20151124BHJP A61K 47/10 20060101ALI20151124BHJP A61K 31/59 20060101ALI20151124BHJP A61K 9/26 20060101ALI20151124BHJP JPA61K9/24A61K47/38A61K47/10A61K31/59A61K9/26 7 1 OL 7 4C076 4C086 4C076AA44 4C076AA45 4C076AA95 4C076BB01 4C076CC30 4C076DD38H 4C076EE32H 4C076EE51H 4C076FF21 4C076FF25 4C086AA10 4C086DA14 4C086MA03 4C086MA05 4C086MA35 4C086MA52 4C086NA10 4C086NA13 本発明は、耐酸性の錠剤に関する。 生理活性成分を含む経口製剤は、胃で溶解し、小腸において活性成分が吸収される。しかし周知のように、胃酸や消化酵素によって活性成分が失活し、吸収部位である小腸の吸収量が低下し、バイオアベーラビリティーが低下する原因の一つとなっている。これを防止するために、錠剤にあってはシェラックなどのワックス類で表面をコーティングして、胃における製剤の溶解を抑制する手段が採用されている。 また、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルギン酸塩などの多糖類(特許文献1)やアクリル酸アルキルエステル(特許文献2)でコーティングする方法などが提案されている。特許第3798625号公報特許第3727290号公報 本発明は、耐酸性に優れた新規錠剤を提供することを課題とする。 本発明者は耐酸性の錠剤を研究する過程で、シェラック被覆耐酸錠剤の表面をさらにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールから選択されるいずれか1以上の物質により被覆するとシェラックによる耐酸性の効果が最適化されることを見いだし、本発明を完成させた。 本発明の主な構成は以下の通りである。(1)生理活性成分を含有する錠剤であって、錠剤の表面をシェラックによる第一被覆層と該被覆層をさらにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールから選択されるいずれか1以上の物質による被覆層で被覆した第2被覆層の2重の被覆層を有する耐酸性錠剤。(2)第2被覆層がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールの混合物である(1)記載の耐酸性錠剤。(3)第2被覆層のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールの混合物の重量比率がHPMC:HPC:エリスリトール=4〜6:2〜4:1.5〜2.2である(2)に記載の耐酸性錠剤。(4)生理活性成分の錠剤中にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が含有されている(1)〜(3)のいずれかに記載の耐酸性錠剤。(5)被覆前の錠剤中のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の含有量が10質量%以上である(4)に記載の耐酸性錠剤。(6)生理活性成分がビタミンDである(1)〜(5)のいずれかに記載の耐酸性錠剤。(7)ビタミンDがマイクロカプセル化されている(6)記載の耐酸性錠剤。 本発明により、耐酸性に優れた錠剤が提供される。実施例の錠剤及び比較例の錠剤を崩壊試験に供した際の、残存物中のビタミンDの残量を測定した結果を示すグラフである。 本発明は、生理活性成分を含有する錠剤であって、錠剤の表面をシェラックによる被覆層と該被覆層をさらにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールから選択されるいずれか1以上の物質による被覆層で被覆した2重の被覆層を有する耐酸性錠剤である。 シェラックは、ラックカイガラムシの滲出物であり、水には不溶性であるがエタノールなどの有機溶媒には溶解する天然材料である。シェラックは、酸性条件では不溶性であるが、pH6.5より高いpHでは溶解性となるので、耐酸性コーティング材料として好適である。シェラックコートは腸の上部で溶解しない性質を有する。 シェラックによる被覆は、エタノールもしくは適切な有機溶媒にシェラックを溶解し、これを錠剤の表面に噴霧するか、あるいは糖衣錠のコーティング装置を用いて表面コーティングを行う。シェラックのコーティング量、錠剤重量に対して0.5〜2質量%、好ましくは0.8〜1.2質量%とすることが好ましい。 ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下HPMCという) は、メチルセルロース(MC)に2−ヒドロキシプロピル基を導入したセルロースエーテルであり、食品添加物公定書に収載されているカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)やカルボシキメチルセルロースカルシウム(CMC−Ca)と同じ範疇にあるセルロースの誘導体(セルロースエーテル類)であり、メチルセルロース と同様、欧米を中心に一般食品用添加物若しくはダイエタリーサプリメント用のカプセル基剤、錠剤の結合剤、又はコーティング剤として広く使用されている。一般食品用については、例えば可食性フィルムとして使用され、冷凍ピザ(トッピングから生地への水分の移行防止、トッピングの形状保持)、ナッツ製品(酸化防止効果)、肉製品(保水性、退色の防止)、フライドポテト(吸油の防止)等に応用されている。 ヒドロキシプロピルセルロース(以下HPCという)はセルロースの水酸基を酸化プロピレンでエーテル化することで得られ、多数のヒドロキシプロピル基を持ち、食品添加物として広く利用される化合物である。 エリスリトールはメロン、ブドウや梨などの果実や醤油・味噌・清酒などの発酵食品に含まれている天然の糖アルコールであり、ブドウ糖を発酵させることにより作られる。非う蝕性でありカロリーがほとんど無いため、食品に広く利用されている。 HPMC、HPC、エリスリトールの各成分は、単独で錠剤を被覆しても良いし、2又は3成分を混合したもので被覆しても良い。3成分の混合物による被覆が、耐酸性剤とする上で好ましい。3成分の混合比率は、重量比でHPMC:HPC:エリスリトール=4〜6:2〜4:1.5〜2.2とするのが好ましく、特に好ましくはHPMC:HPC:エリスリトール=5.3:3:2.2である。 第2被覆層は、耐酸性錠剤あたり5〜8質量%となるように被覆するのが好ましい。被覆に当たっては、耐酸性錠剤を製造するために行うフィルム化コーティング法で行うことができる。また糖衣錠のコーティングに用いられる方法であっても良い。 被覆される錠剤は、生理活性成分と賦形剤、結着剤、滑沢剤などを混合し、必要により造粒化し、通常の錠剤製造に用いられる打錠装置を用いて打錠する。錠剤の設計に当たっては、あらかじめ結着剤としてHPMCを5〜15質量%、好ましくは10質量%以上を配合すると、耐酸性錠剤の耐酸性機能を高めることができる。 この錠剤を、前述したとおり2段階の被覆工程で製剤化することによって、所望する活性成分を含有する耐酸性錠剤とすることができる。 以下に実施例及び比較例の錠剤を用いた試験例を示し、本発明を詳細に説明する。1.錠剤の製造 下記の表1の配合で錠剤を調製した。(1)秤量・混合 表1の配合にしたがって30Kg分の成分を秤量し、ついで各原料のうち、ショ糖エステルを除く原料を30#の振動篩にて篩過したのち、V型混合機(V−100型)にて26rpm10分間混合した。前混合物の一部とショ糖エステルを予備混合し、再度30#振動篩にて篩過し、前混合物が入っている混合機に投入、さらに26rpm10分間混合して、打錠末とした。(2)打錠 ロータリー式打錠機(畑鉄工所製:型式 HA−AP22SS−II)に打錠末をセットし、回転数30rpm、本圧力1200kg、予備圧力300kgにて打錠し、7mmФ、5.5R、150mg/粒の錠剤を得た。(3)第1層被覆 日本シェラック工業株式会社より販売されているラックグレーズ10E(商品名)を用いてシェラックコーティングを行った。 糖衣パン(菊水製作所製)に上記の錠剤30kgをセットし、錠剤温度30℃まで予熱後、糖衣パン回転数10〜11rpm、給気温度50℃の条件下でラックグレーズ10Eを毎分約100g噴霧した。1.5mg/粒相当量を噴霧し、シェラックコーティング錠を得た。(4)第2層被覆 表2の組成のコーティング溶液により第2層コーティングを行った。 メトローズNE−4000、セルニーSL、エリスリトール微粉を予備混合し、エタノールを撹拌しつつ、少量ずつ加えた。全量投入後、10分間撹拌し、溶解分散させた(セルニーSLは溶解、メトローズ、エリスリトールは分散)。溶解分散後、30#の篩にて篩過し、ノズル目詰まりの原因となる凝集物を濾去し、コーティング液とした。なお、コーティング液は固形分が分散しているため、噴霧行程中は常に撹拌し均質性を保つ。 シェラックコーティング工程を終了した錠剤が温度30℃まで冷却されていることを確認し、糖衣パン回転数12rpm、給気温度50℃の条件下でコーティング液を毎分約100〜120g噴霧した。8.0mg/粒相当量を噴霧し、コーティング錠を得た。 得られた錠剤を実施例の耐酸性錠剤とした。(5)比較例の耐酸剤の製造 上記の被覆前の錠剤を同様に操作して、シェラック1.5mgでコーティングし、さらに上層にツェイン2.0mg相当量を噴霧し、2層コーティング錠を調整、比較例1とした。ツェインコーティング液は、エタノール77.4%、水18.0%、ツェイン4.6%の配合量(重量%)でエタノール+水の混合液を撹拌しつつ、ツェインを少量ずつ加え調整した。噴霧条件はシェラックと同様に行った。また、上記の被覆前の錠剤を同様に操作してシェラックによる被覆1.5mg/錠、0.5mg/錠の耐酸性錠剤を調整し、これを比較例2、比較例3とした。2.試験例 上記で得た実施例、比較例の錠剤を、第16改正日本薬局方の崩壊試験に記載された崩壊試験第1液を用いて2時間崩壊試験を行った。崩壊試験終了後速やかに残存した錠剤を乳鉢にて粉砕し、100mLの水に縣濁後10倍希釈し、265nm波長の吸光度を測定し、ビタミンDの残存率を求めた。 ビタミンDの残存率を図1に示す。3.結果 図1から明らかなように、実施例の錠剤のビタミンD残存量と比較すると、各比較例の錠剤のビタミンD残存量は耐酸性のコーティングを施しているにも係らず、各々62%、14%、2%であった。 本発明の製剤は耐酸性錠剤として優れた特性を有していることが確認できた。 生理活性成分を含有する錠剤であって、錠剤の表面をシェラックによる第一被覆層と該被覆層をさらにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールから選択されるいずれか1以上の物質による被覆層で被覆した第2被覆層の2重の被覆層を有する耐酸性錠剤。 第2被覆層がヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールの混合物である請求項1記載の耐酸性錠剤。 第2被覆層のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールの混合物の重量比率がHPMC:HPC:エリスリトール=4〜6:2〜4:1.5〜2.2である請求項2に記載の耐酸性錠剤。 生理活性成分の錠剤中にヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が含有されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の耐酸性錠剤。 被覆前の錠剤中のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)の含有量が10質量%以上である請求項4に記載の耐酸性錠剤。 生理活性成分がビタミンDである請求項1〜5のいずれかに記載の耐酸性錠剤。 ビタミンDがマイクロカプセル化されている請求項6記載の耐酸性錠剤。 【課題】腸吸収性の生理活性成分を含有する経口製剤であって耐酸性に優れた錠剤の提供。【解決手段】生理活性成分を含有する錠剤であって、錠剤の表面をシェラックによる第一被覆層と該被覆層をさらにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エリスリトールから選択されるいずれか1以上の物質による被覆層で被覆した第2被覆層の2重の被覆層を有する耐酸性錠剤。生理活性成分がビタミンDでありカプセル化されている耐酸性錠剤。【選択図】図1