生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ガン細胞増殖阻害作用増強剤とその製造方法及び食品
出願番号:2014093523
年次:2015
IPC分類:A61K 31/352,A61K 31/341,A61P 35/00,A61P 35/02,A23L 1/30,C12P 17/04,C12R 1/01


特許情報キャッシュ

中島 範行 川崎 安貴子 JP 2015209418 公開特許公報(A) 20151124 2014093523 20140430 ガン細胞増殖阻害作用増強剤とその製造方法及び食品 富山県 000236920 川崎 安貴子 514109282 廣澤 勲 100095430 中島 範行 川崎 安貴子 A61K 31/352 20060101AFI20151027BHJP A61K 31/341 20060101ALI20151027BHJP A61P 35/00 20060101ALI20151027BHJP A61P 35/02 20060101ALI20151027BHJP A23L 1/30 20060101ALI20151027BHJP C12P 17/04 20060101ALI20151027BHJP C12R 1/01 20060101ALN20151027BHJP JPA61K31/352A61K31/341A61P35/00A61P35/02A23L1/30 ZC12P17/04C12P17/04C12R1:01 7 OL 9 4B018 4B064 4C086 4B018MD08 4B018ME08 4B064AE45 4B064CA02 4B064CC03 4B064CD08 4B064DA05 4B064DA10 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA04 4C086BA03 4C086BA08 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA05 4C086ZB26 4C086ZB27 本発明は、ガン細胞増殖阻害作用を有する化合物であって、薬剤や食品として用いることができるガン細胞増殖阻害作用増強剤とその製造方法及び食品に関する。 白血病は、骨髄の白血球細胞が自律増殖する疾患、いわゆる血液のがんであって、貧血、白血球増多症、血小板減少症などを起こし、しばしば肝臓、脾臓、リンパ節などの他の臓器に二次的浸潤病巣(転移)又は二次的造血病巣をつくることが知られている。 このような白血病の治療薬としては、これまで種々の合成物質、抗生物質、天然由来物質、あるいはインターフェロン、インターロイキン、TNF(腫瘍壊死因子)、CSF(コロニー形成刺激因子)抑制物質などのバイオテクノロジー製品が開発されている。これらは、白血病細胞に作用して、その増殖を阻害する。あるいは、壊死すなわちネクローシスを起こさせて、疾病を治療するものである。 しかしながら、上記ネクローシスによる細胞死は、往々にして病態細胞のみでなく、周囲の正常細胞にも及び新たな疾患を惹起するという重大な欠陥がある。したがって、周囲の正常細胞に影響を与えずに、病態細胞のみに作用し、その増殖を阻害又は壊死させる治療薬が望ましい。 最近、このような要求を満たす治療薬として、アポトーシス誘導性の抗白血病細胞増殖抑制剤が見出され、これまでに、ヤナギマツタケ(Agrocybe cylindracea)の果肉から抽出されたレクチンタンパク質、トウアズキ(Abrus precatorius)の種子から分離されたレクチンタンパク質、ヒノキ科植物から抽出されるヒノキチオールなどが提案されている。ここで、アポトーシスとは、修復することが困難な障害をもたらされた細胞がそのまま存続することが不利である場合、その細胞が一連のプログラムに沿って積極的に自己消化する生命現象のことであり、アポトーシス誘導性の抗白血病細胞増殖抑制剤を用いれば、血液中の白血病細胞が選択的に自己消化するため、正常細胞に対する影響が少ない状態で白血病治療を行うことができる。 その他、特許文献1にアポトーシス誘導性を利用した抗白血病治療薬として、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドを有効成分として含有するアポトーシス活性増強剤が開示されている。また、特許文献2には、抗白血病薬としての薬草分子として、パイパー・ベテル(P i p e r b e t e l)の草本部分のいずれか又は他の天然又は合成原料のいずれかから単離される有効量のクロロゲン酸(CA)及び/又は3-o-p-クマリル・キナ酸(PCQ )を含む前記組成物が開示されている。 一方、最近、茶、大豆、柿、ブドウなどに含まれているポリフェノール類は、各種疾病の原因となる活性酵素の消去や、その他の生態調節に有効であることが見出され、その生理活性を利用した各種用途の開発が行われている。このポリフェノール類は、分子内に複数個のフェノール性水酸基をもつ化合物の総称で、植物成分として、陸上植物のほとんど全てに代謝産物として存在している。そして、その主体はフラボノイド、すなわちピラン環(C環)を介して結合する2個のベンゼン環(A環及びB環)を基本構造としたものである。これらA環、C環、B環の結合状態、二重結合の有無、水酸基の数やその結合位置の差異により、さらにフラボン、フラボノール、フラバノン、イソフラボン、カテキン、カルコン、アントシアニンなどに分類されている。この中で、生理的、薬理的に注目されているのは、下記化学式(1)で示されるフラバン−3−オールの構造を有するカテキン及びその誘導体である。 この分子は、重合する性質をもち、2個以上の分子が結合し、自然界に存在する。例えば茶のカテキンは単量体であるが、二量体、三量体は、プロアントシアニジン、オリゴメリックプロアントシアニジンなどとして、ブドウ種子やリンゴ未熟果物中に存在している。これらのポリフェノール類が、白血病細胞に対しどのような作用を示すかについて、これまで種々の研究がなされている。 フラバン−3−オール類の中でも、茶成分として知られるエピガロカテキンガレート(EGCG, R1=R2= OH、以下EGCGと称す)は、抗アレルギー作用を有し、ヒトパピローマウィスル18型の子宮頸管内ガン細胞:HEN-18(HPV-18-immortalized endocervicalcell)や、ヒトパピローマウィスル18型の子宮頸管外ガン細胞:HEC-18(HPV-18-immortalizedectocervical cell)の細胞生存率を90%以上抑制するなど、子宮頸ガンの発ガン予防作用があると報告されている(非特許文献1)。 また、EGCGが、ヒトパピローマウィルス16型に関連する子宮頸ガン細胞のCaSki細胞の増殖を抑制することも知られている(非特許文献2)。 その他、特許文献3には、ガンの特異的な増殖抑制剤として茶カテキン含有組成物が開示され、EGCGが子宮頸ガン細胞として知られるHeLa細胞のNADH酸化活性を抑制するとの報告がある。さらに、カテキン製剤「ポリフェノンE」(三井農林株式会社)は、子宮頸部上皮内腫瘍の治療に有効であることが知られている(特許文献4)。 このように、従来から知られている子宮ガン抑制作用をもつフラバン−3−オール類は、いずれも、もともと茶に含まれている天然成分であるため、安全性が高いという利点があるが、抗ガン剤としての効果は未だ十分ではなく、更なる有効成分の探索が続けられている。特開2006−327980号公報特表2005−531593号公報WO 00/57875号公報WO 00/33832号公報Gynecologic Oncology, 2004, Vol.92, No.1, p.197-204DNA and Cell Biology, 2003, Vol.22, No 3, p.217-224 上記背景技術に開示された抗白血病薬は、合成薬剤の場合、人に投与した場合の安全性に課題があり、薬草等の生薬製剤については、安全性は高いが薬理効果の点で十分なものではなかった。 本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、安全性が高く、かつ従来よりもガン細胞の増殖抑制作用において優れているガン細胞増殖阻害作用増強剤とその製造方法及び食品を提供することを目的とする。 本発明は、従来よりも優れた効力をもつ成分を探索するため、天然由来の茶成分を用い、これらの成分の活性を増強する作用を有する化合物を見いだすことに鋭意研究を重ねたところ、フラバン−3−オール類の代謝分解物であるγ−ブチロラクトン類と共存させることで強いガン抑制作用を有することを初めて見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、前記化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類と、前記化学式(1)で表される物質が代謝分解された下記化学式(2)により表される物質とを有効成分とするガン細胞増殖阻害作用増強剤である。 前記代謝分解された化学式(2)で表される物質は、ヒトの腸内細菌により代謝分解された物質である。特に、前記化学式(1)で表される物質と前記化学式(2)で表される物質の割合がMol比で1:1〜4:1の範囲が好ましい。 前記腸内細菌は、例えばEubacterium sp. strain SDG-2やEggerthellalenta rK3とFlavonifractorplautii aK2の組み合わせなどである。 またこの発明は、前記化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類を、ヒトの腸内細菌を用いて代謝分解し、前記化学式(2)により表される物質を生成し、前記化学式(1)、(2)で表される各物質を有効成分とするガン抑制剤を製造するガン細胞増殖阻害作用増強剤の製造方法である。 またこの発明は、前記化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類を、ヒトの腸内細菌を用いて代謝分解し、前記化学式(2)により表される物質を生成し、前記化学式(1)、(2)で表される各物質を含有する液体または固体の食品である。 本発明のガン細胞増殖阻害作用増強剤は、白血病細胞の抑制作用において優れ、特にHL-60細胞等の白血病細胞に対して好適に用いることができる。その他、子宮頸ガン細胞HeLa,HeLa S3細胞、ヒト肺ガン細胞 A549細胞、肝臓ガン細胞 HepG2などのがん細胞に対しても増殖抑制作用を示す。 さらに、γ−ラクトン化合物の共存により、渋み・えぐみを示すEGCGの添加量を抑えても、EGCGの有する有効な作用効果が得られ、味の変化を気にすることなく新たな機能を有する食品に利用することが可能である。 また、安全性においても問題が無いため、医薬品としての使用はもとより、食品、化粧品、医薬品の添加剤など、多様な利用が可能である。γ−ラクトン化合物類(化合物の終濃度100mM)のヒト白血病細胞(HL-60細胞)に対する増殖抑制活性を調べた結果を示すグラフである。フラバン−3−オール化合物とγ−ラクトン化合物(化合物の終濃度100 mM+25 mM EGCG)のヒト白血病細胞(HL-60細胞)に対する増殖抑制活性を調べた結果を図に示すグラフである。 以下、この発明の実施形態について説明する。本発明は、フラバン−3−オール類の代謝分解物であるγ−ブチロラクトン類と、前記フラバン-3-オール類との混合物が白血病を抑制しうることに基づくものであり、特に、HL-60細胞等の白血病細胞に対して優れた増殖抑制作用を示す。 フラバン−3−オール類とは、一般的に前記化学式(1)で表される化合物の総称である。本発明のフラバン−3−オール類の具体例としては、EGCGを挙げることができる。本発明においては、これら成分を単独で用いても良いし、2種以上を所望とする混合比で組み合わせて用いてもよい。 本発明におけるフラバン−3−オール類は、EGCGをはじめとするガロイル基を持った単量体、その誘導体であるアセチル化EGCG、メチル化EGCG、5-ガロイル化EGCG等、それらの重合体プロシアジン類、プロデルフィニジン類、それらの誘導体である。誘導体としては、ガロイル基、アセチル基、メチル基、糖などによる誘導体があげられる。さらに、本願発明は、前記化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類が、ヒトの腸内細菌(Eubacterium sp. strain SDG-2やEggerthellalenta rK3とFlavonifractorplautii aK2の組み合わせなど)により代謝した代謝分解物である前記化学式(2)により表される物質を有効成分とするガン細胞増殖阻害増強剤である。前記化学式(1)で表される物質と前記化学式(2)で表される物質の割合がMol比で1:1〜4:1の範囲が好ましい。 この実施形態のガン抑制剤は、HL-60細胞等の白血病細胞の増殖抑制効果が大きく、抗白血病薬として用いることができる。特に、γ−ラクトン化合物の混合により、渋み・えぐみを示すEGCGの割合を抑えて、EGCGの有する白血病細胞の増殖を抑制する作用が得られ、服用しやすい薬剤として提供することができる。さらに、この実施形態のガン抑制剤は安全性が高く、医薬品としての使用意外に、食品、化粧品、医薬品の添加剤など、多様な利用が可能である。 ヒト由来ガン培養細胞を96ウエルプレートに、1ウエルあたり5,000個になるようにまき、一晩37度、二酸化炭素濃度5%の条件下で24時間培養する。γ−ブチロラクトン類とEGCGを混合してウエルに加え、24時間培養したのち、細胞数を生細胞数測定試薬SF(ナカライ)を加えて3時間インキュベートし、マイクロプレートリーダーにて450nmにおける吸光度を測定した。 芳香環部位に導入した水酸基の数が多くなる程、ヒト白血病細胞株(HL-60細胞)に対する細胞増殖抑制活性が上昇する傾向が見られた。また、S体とR体との細胞増殖抑制活性を比較したところ、R体で増殖抑制効果が強い事が確認された。阻害率については、グラフの数値が高いほど細胞の増殖を阻害したことを示す。γ−ブチロラクトン類のみではHL-60細胞に対する増殖抑制活性は見られなかったが、EGCGを添加することにより、増殖阻害率が上昇している。 そして、図1に対して図2の増殖阻害率が大きいという結果が得られ、これらの結果から、フラバン−3−オール化合物群とγ−ブチロラクトン類が、実際にヒト白血病細胞株(HL-60細胞)に対する細胞増殖抑制活性を発揮し、抗白血病治療薬として利用し得ることが示された。 下記の化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類と、前記式(1)で表される物質が代謝分解された下記の式(2)により表される物質とを有効成分とするガン細胞増殖阻害作用増強剤。 前記代謝分解された式(2)で表される物質は、ヒトの腸内細菌により代謝分解された物質である請求項1記載のガン細胞増殖阻害作用増強剤。 前記腸内細菌は、Eubacterium sp. strain SDG-2、又はEggerthellalenta rK3とFlavonifractorplautii aK2の組み合わせである請求項2記載のガン細胞増殖阻害作用増強剤。 前記式(1)で表される物質と前記式(2)で表される物質の割合がMol比で1:1〜4:1である請求項1又は2記載のガン細胞増殖阻害作用増強剤。 前記請求項1記載の化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類を、ヒトの腸内細菌を用いて代謝分解し、前記式(2)により表される物質を生成し、前記式(1)、(2)で表される各物質を有効成分とするガン抑制剤を製造することを特徴とするガン細胞増殖阻害作用増強剤の製造方法。 前記腸内細菌は、Eubacterium sp. strain SDG-2、又はEggerthellalenta rK3とFlavonifractorplautii aK2の組み合わせを用いる請求項5記載のガン細胞増殖阻害作用増強剤の製造方法。 前記請求項1記載の化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類を、ヒトの腸内細菌を用いて代謝分解し、前記化学式(2)により表される物質を生成し、前記化学式(1)、(2)で表される各物質を含有することを特徴とする食品。 【課題】安全性が高く、かつ従来よりもガン抑制作用において優れている物質を見出し、新規な抗白血病薬等のガン細胞増殖阻害作用増強剤とその製造方法及び食品の提供。【解決手段】化学式(1)により表されるフラバン-3-オール類と、式(1)で表される物質が代謝分解されたγ−ブチロラクトン類縁物質とを有効成分とするガン細胞増殖阻害作用増強剤。【選択図】なし


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