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タイトル:公開特許公報(A)_ヒドロキシメチルフルフラールの合成方法
出願番号:2014092995
年次:2015
IPC分類:C07D 307/50,C07D 307/48


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川波 肇 小川 佳代子 石坂 孝之 JP 2015209411 公開特許公報(A) 20151124 2014092995 20140428 ヒドロキシメチルフルフラールの合成方法 国立研究開発法人産業技術総合研究所 301021533 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 川波 肇 小川 佳代子 石坂 孝之 C07D 307/50 20060101AFI20151027BHJP C07D 307/48 20060101ALI20151027BHJP JPC07D307/50C07D307/48 12 OL 15 (出願人による申告)平成25年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/研究開発項目(2)木質系バイオマスから化学品までの一貫製造プロセスの開発/木質バイオマスから各種化学品原料の一貫製造プロセスの開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願 4C037 4C037HA21 4C037HA22 本発明は、5−ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)の製造方法に関する。さらに詳しくは、木質バイオマスを直接の原料として、効率的にHMFを製造する方法に関する。本発明は、セルロースやグルコース、フルクトースを含む木質バイオマス原料から、当該原料にアルコール等を含む高温高圧水を用いた処理を施すことにより、木質バイオマスに含まれるセルロース、ヘミセルロースがグルコース、フルクトースへと糖化分解されると同時に、脱水反応を起こしHMFを安定的に合成する新技術を提供するものである。 従来、バイオマスに含まれるセルロース等を水熱条件等で処理すると、主に炭素数が1個から6個の炭化水素を基本骨格とした多くの化合物が得られる。その化合物の中で、おもにHMFは、炭素数は6個で、化1に示した化合物を経由して得られること(HMF生成ルート)が知られている。 近年HMFが注目される理由として次の点が挙げられる。石化資源を経ずバイオマスを原料として容易に得られる化合物の一つであり、各種生理活性が見られることが最近の研究により報告され、環境にやさしい製造を目指す各種メーカーにとって、医薬品やその原料、そし各種化学原料や燃料改質剤等としての利用価値が急激に上がってきたことがある。実際、HMFを医薬品や機能性食品、化粧品、浴用品、医薬部外品に配合することで、安全性が高く容易に製造することができる新しい抗アレルギー剤、抗炎症剤を調整したり(特許文献1)、HMFを混合した鋳型造型用粘結剤(特許文献2)、その他HMFを原料としてバイオプラスチック、医薬、農薬、殺虫剤、抗菌剤、香料、バイオ燃料等を製造することができる(特許文献3)。 HMFの合成は、様々な特徴のある手法を用いた合成方法が、特許文献4〜8、非特許文献1〜4等にて報告されている。しかし、現時点でHMFの製造方法は、フルフラールにホルムアルデヒドでヒドロキシメチル化させて合成するもので、HMF生成ルートは用いられていない。理由はフルクトースからの脱水で容易に得られるが、フルクトースは高価であること、又グルコースからの収率が低いことが挙げられる。 この問題を解決するため、グルコースからHMFへの合成において、様々な手法が開発されている。手法は、溶媒の改良による方法、酸触媒の改良による方法の2つに大別される。溶媒の改良については、イオン液体を用いる手法が、多く報告されている。即ち、室温で液体の塩を溶媒として用い、そこに硫酸やCrなどの酸触媒を用いる(非特許文献1)。しかし、フルクトースを原料とした場合は、塩化ブチルメチルイミダゾリウム塩を媒体にして、硫酸を酸触媒とし、120℃で30分の反応で、96%のHMF収率を誇るが、グルコースを原料にすると途端に収率は11%となる(非特許文献2)。そのため、塩化クロムを触媒に添加することで、グルコースからの収率を91%に改善させている。しかし、更に原料をセルロースとした場合は、0%とHMFは生成しない(非特許文献3)。そのため、更に塩酸を触媒に加えることで、53%の収率を得ている(非特許文献4)。 イオン液体を用いる場合は、イオン液体自体が特殊な溶媒で、価格が通常の溶媒と比べて著しく高価であり、更にCrを触媒にするため、HMFを原料とした医薬品などに用いるには、好ましくない。また、これら以外の報告でも、特にセルロースを原料としたときにHMFの収率は高くない。特開2010−248107号公報特開2013−212536号公報特表2011−506478号公報特開2013−231061号公報特開2009−057345号公報特開2007−145736号公報特開2005−200321号公報特開2005−232116号公報Malgorzata E. Zakrzewska, Ewa Bogel-Lukasik, and Rafal Bolgel-Lukasik,Ionic Liquid-Mediated Formation of 5−Hydroxymethylfurfural - A Promising Biomass-Derived Building Block -, Chemical Review, 2011, 111, p.397-417C. Sievers, I. Musin, T. Marzialetti, M. B. Valenzuela-Olarte, P. K. Agrawal, C. W. Jones, ChemSUSChem, 2009, 2, p.665S. Lima, P. Neves, M. M. Antunes, M. Pillinger, N. Ignatyev, A. A. Valente, Applyied Catalysis, A, 2009, 363, p.93J. B. Binder, R. T. Raines, Journal of American Chemical Society, 2009, 131, p.1979 本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであって、セルロースを原料として、環境にもやさしく、入手が容易な水等を媒体にしつつ、Crなどの触媒を用いることなく、効率的にヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法を提供することを目的とするものである。 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、水等の溶媒を用いて、比較的安価なアンモニウム塩などの有機塩とごく微量有機酸を触媒とし、かつ高温高圧条件下で、複数段階に反応温度を変化させたところ、セルロースからHMFを比較的短い反応時間で高い収率で合成する方法を見出すことに成功し、本発明を完成するに至った。 本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。[1]セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料又は該原料の分解物から5−ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法であって、高温高圧下で、セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料の水溶液または水分散液或いは該原料を分解して得られた各種糖を含む水溶液に、有機酸を加えて反応させてなる反応液を、触媒としての4級アンモニウム塩の存在下で、水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に混合して、前記反応液の反応温度とは温度を変えて反応させることを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[2]前記反応液として、セルロースおよびオリゴ糖を含む原料の水溶液または水分散液或いは該原料を分解して得られた各種糖を含む水溶液に、カルボン酸を加えてなる反応液を用い、該反応液を前記水又はアルコール又は水とアルコールの混用溶媒に混合する前と後を含めた少なくとも2段階以上の複数段階で反応温度を変化させながらさらに反応させることを特徴とする上記[1]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[3]T字型マイクロミキサーを含む高温高圧用のマイクロ反応デバイスを用いて、前記反応液を、前記の水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に急速に混合するとともに、温度を急速に変化させて、前記反応液を反応させることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[4]前記セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料が、杉、ユーカリ等の木質由来のバイオマスであることを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[5]前記オリゴ糖が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの少なくとも1種類以上の単糖類から構成されるオリゴ糖であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[6]前記オリゴ糖が、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースの少なくとも1種類以上の二糖類であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれ1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[7]前記単糖類が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースの少なくとも1種類以上であることを特徴とする上記[1]〜[6]の何れかに1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[8]前記アルコールが、炭素数1〜10の脂肪族系アルコールまたは芳香族系アルコールであって、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、フェノール、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、クミニルアルコール、フェネチルアルコールのいずれか1種類以上を含むことを特徴とする上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[9]前記混合溶媒を、200〜400℃、かつ0.1〜50MPaの条件下で混合することを特徴とする上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[10]前記4級アンモニウム塩が、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、又はベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩であって、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムフロリド、ヒドロキシテトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム硫酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのいずれか1種類以上の塩であることを特徴とする上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[11]前記有機酸が、カルボン酸であることを特徴とする上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。[12]前記カルボン酸が、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸のいずれか1種類以上であることを特徴とする上記[11]に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 水に溶解するグルコース等の糖類はもとより、原料にパルプ等の水に溶けないセルロースを含むバイオマスを原料にできる。一般的に糖類の水熱分解で得られる不純物の一つで、水不溶のフミン化合物等による沈殿物が殆ど無い。更に、生成したHMFの水酸基がアルコールとエーテル結合を形成すること、またはアルデヒド基がアセタールを形成して保護されることにより、HMFの多量化等を防ぐため、これらの不純物の生成が少ない。更に金属触媒等の塩を含まず、安価な4級アンモニウム塩を用いることが出来、コストもあまりかからない。結果として、フロー式またはパーコレート式の場合は、反応時間(滞留時間)自体が10分以内と短時間でありながら、HMFの選択率、収率が高くなる効果が得られる。実施例1で使用する反応装置の概略図。実施例1での反応時間に対するHMFの重量収率を示す。実施例2での反応時間に対するHMFの選択率を示す。実施例2で使用する反応装置の概略図。実施例2での反応時間に対するHMFの重量収率を示す。実施例3での水・エタノール濃度に対するHMFの収率を示す。実施例4での触媒濃度に対するHMFの収率を示す。実施例5での各種触媒に対するHMFの収率を示す。実施例6での反応圧力に対するHMFの収率を示す。 本発明は、高温高圧下で、セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料の水溶液または水分散液或いは該原料を分解して得られた各種糖を含む水溶液に有機酸を加えて反応させてなる反応液を、触媒としての4級アンモニウム塩の存在下で、水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に混合して、前記反応液の反応温度とは温度を変えて反応させることによる5−ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法である。 本発明において、原料としては、セルロースやグルコース、フルクトースを含む木質バイオマス、草本系バイオマス原料を用いることができる。木質バイオマスは主にセルロースからなり、その他ヘミセルロースとリグニンを含んでいる。バイオマスには、糖類として、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、オリゴ糖、多糖類が存在する。単糖類としてヘキソースに属する、アルドース類(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、ケトヘキソース類(プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、ヘキソースからなる二糖類(ショ糖、ラクツロース、乳糖、麦芽糖、トレハロース、セロビオース等)、同様に三糖類、四糖類、オリゴ糖、その他セルロースを含む多糖類を例示できる。また、これらの成分は水溶性で有る必要は無い。 本発明は、前記セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料が、杉、ユーカリ等の木質由来のバイオマスであること、即ち木質バイオマスを原料とすることが好ましい。 前記オリゴ糖が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの少なくとも1種類以上の単糖類から構成されるオリゴ糖である。 前記オリゴ糖が、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースの少なくとも1種類以上の二糖類である。 前記単糖類が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースの少なくとも1種類以上である。 本発明は、前記反応液として、セルロースおよびオリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料の水溶液または水分散液或いは該原料を分解して得られた各種糖を含む水溶液に、有機酸を加えて高温高圧下で、反応させてなる反応液を用いる。該反応液を前記水又はアルコール又は水とアルコールの混用溶媒に混合する前と後を含めた少なくとも2段階以上の複数段階で反応温度を変化させながらさらに反応させることがより好ましい。 前記2段階以上の複数段階で反応温度を変化させなるとは、反応液を水又はアルコール又は水とアルコールの混用溶媒に混合する前と後を含めた段階で、反応させる温度を少なくとも二段階に変化させることをいう。まず最初の第一段階は、酸糖化と抽出によるセルロースを糖化する過程である。 次の第二段階は、糖化された糖類を、反応溶媒と触媒とで転位・脱水反応させ、HMFを合成する段階である。この際に、反応は第一段階よりも高い反応温度で行うことが好ましい。なかでも急速に昇温させないと、糖類の脱水、レトロアルドール反応等を起こして不純物を多く生成するため、マイクロミキサー等を用いて短時間で所定の温度にして反応を起こさせるのがより好ましい。 本発明における反応方法は、原料の糖化分解と同時に、脱水反応を行える方法ならば、バッチ式、フロー式、パーコレート式のいずれの方法でも行うことができる。なかでもフロー式が反応、処理効率が良いので好ましい。 本発明において、高温高圧とは、一般に、高温高圧水ならば、超臨界状態ないし亜臨界状態の水をいう。水の超臨界状態とは、水の臨界点(臨界温度Tc=374度、臨界圧力Pc=22.1MPa)を超えて、液体と気体の境界線がなくなった状態のことをいう。また、亜臨界状態とは、温度が150℃以上374℃未満、圧力が0.4MPa以上22.1MPa未満の状態で、液体と気体が併存した状態のことをいう。 本発明においては、反応溶媒として水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒を用いる。なかでも、水、又は水とアルコールの混合溶媒を用いるのが、HMFの収率からしてより好ましい。混合溶媒の場合は、アルコールが0を超え95質量%であるのが好ましく、0を超え70質量%であるのがより好ましく、10〜50質量%であるのが更により好ましい。 反応溶媒に使用する水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水等が挙げられるが、反応収率を向上させるためには、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水を使用することが好ましく、イオン交換水、蒸留水、純水、超純水を脱気した状態で使用することがより好ましい。 反応溶媒として用いるアルコールとしては、炭素数1〜10の脂肪族系アルコールまたは芳香族系アルコールを用いることができる。脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、芳香族系アルコールとしては、フェノール、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、クミニルアルコール、フェネチルアルコールなどが例示でき、これらのいずれか1種類以上を含む。なかでも脂肪族系アルコールのメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールを用いるのがより好ましい。 反応温度は、実際は、100℃〜500℃の範囲で行うことが可能であるが、反応の内容に応じて好適な温度を選べばよい。好ましくは、200℃〜400℃の範囲である。原料の糖化分解における反応、即ち糖化部分で150℃〜250℃、次の転位・脱水部分で250℃〜350℃あるのが好ましい。 反応圧力は、本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されないが、0.1MPa〜50MPaの範囲が好ましい。5MPa〜40MPaの範囲がより好ましく、15MPa〜25MPaの範囲が更により好ましく、HMFをさらに収率良く得ることができる。 反応時間は、本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されない。好ましい反応時間は、所定温度(100℃〜500℃)、所定圧力条件下(5MPa〜40MPa)によって変化するが、通常、糖化分解における反応と転位・脱水反応の双方で、バッチ式の反応方法では、数時間、フロー式の反応方法では、数十分以下、パーコレート式の反応方法では、3時間程度である。糖化分解における反応における反応時間の方が時間を要し、転位・脱水反応はより短い反応時間である。例えば、フロー式の反応方法では、糖化分解、転位・脱水時間として、反応時間自体は10分以下である。 本発明の原料の糖化分解反応には、反応溶媒と触媒を必要とする。反応溶媒としては、上記した水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒を用いるのが好ましい。なかでも、水とアルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)の混合溶媒が好ましく、混合溶媒の使用により、糖鎖からのフミン体の生成、HMFの2量化、重合等、反応中の閉塞等を抑制することができる。ここで、アルコールは、HMFの水酸基と反応してエーテル体またはアルドール体となり、HMFの重合を抑制する効果があると考えられる。 上記触媒としては、酸触媒を用いることができる。例えば、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、スルホン酸等の有機酸類、無機酸類を例示することができる。なかでも、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸を用いることが好ましい。酸触媒濃度としては、原料に対して1μM〜1Mであることが好ましい。より好ましくは1mM〜1Mである。 次の段階の反応は、反応溶媒と触媒とで転位・脱水反応させHMFを合成する段階である。反応溶媒としては、上記した水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒を用いるのが好ましい。なかでも、水とアルコールの混合溶媒を用いるのがより好ましい。 上記転位・脱水反応させるのに触媒として、有機塩を用いるのが好ましい。なかでもテトラブチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩、4級アルキルアンモニウム塩などがより好ましい。以下、これらを4級アンモニウム塩という。また、反応溶媒が水とアルコールとの混合溶媒の場合、一般的に、相間移動触媒の部類に属する塩類が効果を発揮すると考えられる。 前記4級アンモニウム塩が、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、又はベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩であって、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムフロリド、ヒドロキシテトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム硫酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのいずれか1種類以上の塩を例示できる。 転位・脱水反応させHMFを合成する段階では、反応溶媒として、水とアルコールの混合溶媒を用い、触媒として、4級アンモニウム塩の触媒を用いる組み合わせが、より好ましくHMFをさらに収率良く得ることができる。 本発明において使用することができるマイクロミキサーおよびマイクロリアクターは、高温高圧水を使用する技術分野において通常マイクロミキサーおよびマイクロリアクターと認識することが可能なものであれば特に制限はない。 マイクロミキサーとは、例えば、複数の配管を介して導入される2流体以上を混合して混合流体を生成する混合器において、第一流体を導入または第一流体と第二流体以降の混合流体を導出するための接続配管を有し、該接続配管の外周に作られた空間を通じて、第二流体以降の流体を導入し、第一流体の接続配管の先端に設けられた空間で、第一流体と第二流体以降の流体を混合して混合流体にする構造を有することを少なくとも満たすマイクロ混合デバイスのことを指すことがあり、特開2013−039503号に開示されたマイクロ混合デバイスを例示することができる。 また、マイクロリアクターとは、通常、極小サイズの反応装置をいい、特開2011−224480号に開示されたマイクロリアクターを例示することができる。 マイクロミキサー、マイクロリアクターの材質は、耐高温高圧であれば特に限定されないが、例えば、Inconel625(Ni系合金)、Hasteroy(Ni系合金)、SUS316、SUS306、SUS304(ステンレス系)、Ti、Wなどが例示される。また、耐熱・耐圧がある材料であれば樹脂などを用いることも可能で、特に限定はされない。 本発明では、例えば、反応に高温高圧マイクロミキサーを使用することができ、より具体的な例としては、図1に示す高温高圧マイクロリアクションシステムを好適に使用することができる。また、これと同効のシステムであれば同様に使用することが可能である。当該マイクロリアクションシステムは、高温高圧水と原料水溶液を混合する混合手段、反応管から構成される反応部、これらを収容するためのオーブン設備、反応液の温度条件を所定の温度にコントロールするための熱電対、反応管で、高温高圧水条件下で反応させた反応液を所定の温度に冷却するための冷却器(熱交換器)、冷却した後に脱圧するための背圧弁などを備えている。 本発明の製造方法を実施することができる範囲のものであれば特に限定されないが、反応は、例えば、Inconel625製またはSUS316製で、外径1/16インチ、内径0.5mm、長さ11mのチューブタイプの反応管を用いて行うことができる。この場合、反応管の外径、内径、長さなどは、その実施に当たり適宜設計することが可能であり、上記反応管の材質、外径、内径、長さの条件についても適宜設定することができる。 本発明は、T字型マイクロミキサーを含む高温高圧用のマイクロ反応デバイスを用いて、前記反応液を、前記の水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に急速に混合するとともに、温度を急速に変化させて、前記反応液を反応させることができる。 本発明において、HMFの収率は、木紛に含まれるセルロースをグルコース量で換算したモル数に対する得られたサンプルのHMFの濃度より換算したHMFのモル量の百分率で表す。セルロースの転化率は、木片に含まれるセルロース量に対する、反応したセルロース量の百分率、HMFの選択率は、転化率に対するHMFの収率の百分率である。 次に、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例などによって何ら限定されるものではない。[実施例1] 反応は、図1に示した通りの装置を用いて反応を行った。反応装置は、ヒーターで温度制御された反応器1(SUS316製内径0.9cm×長さ15cm(容量9.53cm3)、同じくヒーターで温度制御された反応器2(反応管長(SUS316製内径0.1cm×長さ500cm(容量3.92cm3))、冷却器と背圧弁からなる装置を用いた。反応器1に未精製パルプ(0.9245g)を充填し、ポンプを用いて0.1%ギ酸水溶液を15MPa、225℃、0.5mL/分で流し、未精製パルプに含まれるセルロース成分のみを酸糖化と抽出を行いながら反応器2に導入した。同じくポンプを用いて0.1Mテトラブチルアンモニウムブロマイド溶液(エタノール:水=1:1)を15MPaの条件下、ヒーターで280℃まで加熱し、T字マイクロミキサーで先のパルプの糖化水溶液と混合させ、混合後の溶液の温度を急速に270℃にした後、そのまま反応器2中で270℃で反応させた。この時の反応器1での酸糖化+抽出時間(滞在時間)は、1.90秒、反応器2での反応時間(滞在時間)は、0.79秒、合計2.7秒である。反応後は、冷却器で冷却され、背圧弁にて常圧に圧力を下げ、5−ヒドロキシフルフラール含有水溶液を得た。 得られたHMF水溶液は、20分毎(100mL)にサンプリングし、直ぐに其々のサンプルに含まれるHMFの含有量を液体クロマトグラフィー(条件を入力)にて分析を行った。得られたHMFの重量収率は、240分後に71.6%(図2、表1)となり、反応器1には未精製パルプの残渣は殆ど無く100%近くが変換された。また、各サンプルの選択率は、71.5%〜100%であった(表1)。[実施例2] 実施例1と同様の条件で、T字マイクロミキサーを反応器2中に設置し、反応管長2の長さはそのままに、反応管長1を100cmにして、触媒温度を反応器2と同じ温度(270℃)にして反応を行った(図4)。T字マイクロミキサーにおいて混合直後の温度は、250℃程度に下がり、その後反応管2中に滞在する中で270℃となる。その結果、最終的なHMFの重量収率は、240分後に48.3%(図5)で、各サンプルにおける選択率は59.9%〜100%であった(図3)。[実施例3] 実施例2と同様の反応装置を用いて、原料にグルコースを用い、触媒(テトラブチルアンモニウムブロマイド)の溶液におけるエタノールと水の比について検討を行った。各エタノール比を、0%(水のみ)から100%(エタノールのみ)の条件で検討を行い、HMFの収量の変化を見た(図6)。なお、反応管長2を500cmと300cmの2通りで検討を行った。その結果、500cmの時は、エタノール濃度が50%の時に最大となり(HMF収率:28.6%)、300cmの時は10%〜30%の時に最大となった(HMF収率:26.3%)。[実施例4] 実施例2と同様の反応装置を用いて、原料にグルコースを用い、触媒(テトラブチルアンモニウムブロマイド)の濃度について検討を行った。濃度0M〜0.3Mと各濃度において検討を行った。その結果、15MPa、500cmの時は、0.1Mの時に、最も良い値(HMF収率:33.9%)であることが分かった(図7)。[実施例5] 実施例2と同様の反応装置を用いて、原料にグルコースを用い、各種無機塩を触媒として、水に溶解させて検討を行い、HMFの収量の変化を見た(図8)。その結果、触媒を加えない水のみのケースが最も良く(HMF収率:26.3%)、無機塩による大きな効果は見られなかった。[実施例6] 実施例1と同様の反応装置を用いて、原料にグルコースを用い、触媒にテトラブチルアンモニウムブロマイドを用いて、圧力効果によるHMFの収量の変化を見た(図9)。その結果、溶媒として、水:エタノール=50:50の時は、15MPa以上であれば、HMF収率が、ほぼ100%のとなり、また、60:40の場合は、10MPaで、ほぼ100%の収率を得、100:0(水のみ)の場合は、15MPaでも30%であった。 本発明は、水に溶解するグルコース等の糖類はもとより、原料にパルプ等の水に溶けないセルロースを含むバイオマスを原料として使用できる。本発明の合成方法では、一般的に糖類の水熱分解で得られる不純物の一つで、水不溶のフミン化合物等による沈殿物が殆ど無い。更に、生成したHMFの水酸基がアルコールとエーテル結合を形成すること、またはアルデヒド基がアセタールを形成して保護されることにより、HMFの多量化等を防ぐため、これらの不純物の生成が少ない。 更に金属触媒等の塩を含まず、安価な4級アンモニウム塩を用いることが出来、コストもあまりかからない。結果として、フロー式またはパーコレート式の場合は、反応時間(滞留時間)自体が10分以内と短時間でありながら、HMFの選択率が71%、収率が72%と高くなる効果が得られる。 本発明は、水に溶解するグルコース等の糖類はもとより、原料にパルプ等の水に溶けないセルロースを含むバイオマスを原料として使用でき、本発明の合成方法では、HMFの多量化等を防ぐため、これらの不純物の生成が少ない。更に、反応時間(滞留時間)自体が従来より短時間でありながら、HMFの選択率、収率が高くなる効果が得られ有用である。 セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料又は該原料の分解物から5−ヒドロキシメチルフルフラールを製造する方法であって、 高温高圧下で、セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料の水溶液または水分散液或いは該原料を分解して得られた各種糖を含む水溶液に、有機酸を加え反応させてなる反応液を、触媒としての4級アンモニウム塩の存在下で、水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に混合して、前記反応液の反応温度とは温度を変えて反応させることを特徴とする5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記反応液として、セルロースおよびオリゴ糖を含む原料の水溶液または水分散液或いは該原料を分解して得られた各種糖を含む水溶液に、カルボン酸を加えてなる反応液を用い、該反応液を前記水又はアルコール又は水とアルコールの混用溶媒に混合する前と後を含めた少なくとも2段階以上の複数段階で反応温度を変化させながらさらに反応させることを特徴とする請求項1に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 T字型マイクロミキサーを含む高温高圧用のマイクロ反応デバイスを用いて、前記反応液を、前記の水又はアルコール又は水とアルコールの混合溶媒に急速に混合するとともに、温度を急速に変化させて、前記反応液を反応させることを特徴とする請求項1又は2に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記セルロース、オリゴ糖または単糖類の少なくとも一種を含む原料が、杉、ユーカリ等の木質由来のバイオマスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記オリゴ糖が、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースの少なくとも1種類以上の単糖類から構成されるオリゴ糖であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記オリゴ糖が、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、セロビオースの少なくとも1種類以上の二糖類であることを特徴とする請求項1〜5のいずれ1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記単糖類が、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトースの少なくとも1種類以上であることを特徴とする請求項1〜6の何れかに1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記アルコールが、炭素数1〜10の脂肪族系アルコールまたは芳香族系アルコールであって、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、フェノール、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、クミニルアルコール、フェネチルアルコールのいずれか1種類以上を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記混合溶媒を、200〜400℃、かつ0.1〜50MPaの条件下で混合することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記4級アンモニウム塩が、テトラブチルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、又はベンジルジメチルオクタデシルアンモニウム塩であって、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラブチルアンモニウムフロリド、ヒドロキシテトラブチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート、テトラブチルアンモニウム硫酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートのいずれか1種類以上の塩であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記有機酸が、カルボン酸であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 前記カルボン酸が、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸のいずれか1種類以上であることを特徴とする請求項11に記載の5−ヒドロキシメチルフルフラールの製造方法。 【課題】セルロースを含むバイオマスやグルコース等の糖類から、ヒドロキシメチルフルフラールの高効率合成方法を提供する。【解決手段】ヒドロキシメチルフルフラールを効率的に合成する方法であり、原料として、セルロースを含むバイオマスやグルコース等の糖類を使用し、当該原料の混合物または水溶液を所定の温度圧力条件の高温高圧の水等で糖化しつつ、水等中で、有機塩を触媒としつつ、温度200℃〜500℃の範囲で急速に昇温させて反応を行うことによりヒドロキシメチルフルフラールを合成する。水に溶解するグルコース等の糖類はもとより、原料にパルプ等の水に溶けないセルロースを含むバイオマスを原料にでき、更にフミン化合物等の精製による沈殿物が殆ど無く、反応時間(滞留時間)は10分以内と短時間で、HMFの選択率、収率が高い。【選択図】なし


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