タイトル: | 公開特許公報(A)_神経突起伸長抑制剤、痛み抑制剤および痒み抑制剤 |
出願番号: | 2014089089 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61K 36/48,A61K 36/53,A61K 36/75,A61K 36/73,A61K 36/71,A61K 36/23,A61K 36/28,A61K 36/25,A61K 36/07,A61K 36/899,A61P 25/00,A61P 43/00,A61P 29/00,A61P 17/04 |
中村 元一 渡部 晋平 村山 千明 範本 文哲 JP 2015205858 公開特許公報(A) 20151119 2014089089 20140423 神経突起伸長抑制剤、痛み抑制剤および痒み抑制剤 クラシエ製薬株式会社 306018343 相原 礼路 100150142 森脇 理生 100174849 医療法人社団中村皮ふ科クリニック 514130301 中村 元一 渡部 晋平 村山 千明 範本 文哲 A61K 36/18 20060101AFI20151023BHJP A61K 36/48 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/53 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/75 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/73 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/71 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/23 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/28 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/25 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/07 20060101ALI20151023BHJP A61K 36/899 20060101ALI20151023BHJP A61P 25/00 20060101ALI20151023BHJP A61P 43/00 20060101ALI20151023BHJP A61P 29/00 20060101ALI20151023BHJP A61P 17/04 20060101ALI20151023BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 JA61K35/78 QA61K35/78 KA61K35/78 HA61K35/78 FA61K35/78 NA61K35/78 TA61K35/78 MA61K35/84 AA61K35/78 UA61P25/00A61P43/00 105A61P29/00A61P17/04 3 1 OL 15 4C088 4C088AA04 4C088AB12 4C088AB14 4C088AB17 4C088AB18 4C088AB26 4C088AB28 4C088AB32 4C088AB33 4C088AB37 4C088AB38 4C088AB40 4C088AB41 4C088AB52 4C088AB54 4C088AB58 4C088AB59 4C088AB60 4C088AB62 4C088AB71 4C088AB77 4C088AB80 4C088AC01 4C088AC03 4C088AC12 4C088BA06 4C088BA09 4C088NA14 4C088ZA01 4C088ZA08 4C088ZA21 4C088ZA89 4C088ZB21 本発明は、神経突起伸長抑制剤に関し、より詳細には、神経成長因子(NGF)により誘発した後根神経節(DRG)の突起伸長抑制剤に関する。また、本発明は、この神経突起伸長抑制剤を含む痛み抑制剤および痒み抑制剤にも関する。 神経成長因子(nerve growth factor,以下「NGF」とも称する)は、1951年に同定された最初のニューロトロフィンであり、末梢および中枢神経の分化・成長に係わる重要な分泌タンパク質である。 一方、NGFは、炎症性サイトカインとして、痛み(痛覚過敏)や痒み(痒み過敏)の調節において重要な役割を示すことが明らかになっている。 末梢からの刺激や興奮を中枢へ伝達する神経は、一次感覚神経と呼ばれ、その軸索は末梢神経系の膨大なネットワークを形成し、中枢神経系に達している。一次感覚神経の細胞体は、後根神経節(dorsal root ganglion,以下「DRG」とも称する)に存在し、刺激を末梢から脊髄へと伝達する。 一次感覚神経軸索の径は様々であり、その太さは接続している感覚受容器の種類に関係している。皮膚の感覚受容器からの神経線維は、径の太いものから順に、Aα、Aβ、Aδ、C線維と呼ばれる。そのうち、C線維を除く全てのものは髄鞘(活動電位の伝達を決定するもの)を有する。有髄の細いAδ線維と無髄のC線維は、痛みを伝達する一次感覚神経線維として機能しており、速く鋭い痛みである一次痛を伝えるのがAδ線維、遅く鈍い痛みである二次痛を伝えるのが最も細いC線維である。 痛み刺激の変換は、このC線維とAδ線維の自由神経終末で起こる。自由神経終末とは、中枢側と末梢側に分かれる一次感覚神経の末梢側の軸索の末端が形態学的に特殊化したものである。この痛覚受容器は、異なる刺激(例えば機械的刺激または熱刺激など)に対する選択性を示す。 組織が損傷されると、内因性の発痛物質が産生遊離され、痛覚受容器にある受容体に結合し、膜のイオン透過性の変化によって活動電位が発生し、痛みの神経線維(C線維とAδ線維)を介してその情報は中枢側へ伝達される。これらの受容器は、通常、刺激が組織を損傷するのに十分な強さの時に応答する。しかし、すでに損傷や炎症が起こっている皮膚、関節および筋などでは、著しく感受性が高くなり、この現象は痛覚過敏症(hyperalgesia)と呼ばれる。痛覚過敏症は、痛みに対する閾値の低下および痛みの増加、または自発的な痛みを誘発する。 炎症および末梢神経障害等により生じる痛覚過敏およびしびれ感などは、臨床上重要な問題である。痛覚過敏の病態は近年、分子レベルで解明されつつあり、NGFが重要な役割を示すことが明らかとなっている(非特許文献1)。 NGFは、個体の発達過程においては、神経の生存・分化に必須であるが、成長した後は炎症部位で炎症細胞(マクロファージおよび肥満細胞など)および線維芽細胞によって産生され、痛覚受容器の熱に対する反応や機械刺激に対する反応を感作し、痛覚過敏に大きな役割を担う。 また、NGFは、一次感覚神経の中でも痛覚を伝える神経(C線維)に対する神経栄養因子であることがわかり、標的組織である皮膚等で発現し、神経終末に作用して痛覚機能の調節を生理的に行っている(非特許文献2)。 腰椎椎間板、膝関節および手関節は、あるNGFにより成長が誘導される神経細胞により特異的な支配を受けている。これらは、病的状態ではNGFに反応し、病的軸索を発芽させ、疼痛を惹起していると考えられる。臨床では、腰痛症の年間有病率は30%、生涯罹患率は80%と言われている。椎間板の変性は腰痛の原因であると認識されている。椎間板が変性すると、椎間板髄核および線維輪細胞より様々なサイトカイン・神経栄養因子が出されることが報告され、それらが椎間板周囲にしか存在しない自由神経終末を活性化させ内層に侵入させている。(非特許文献3)。 近年、このNGFが炎症細胞の出現なしに筋で増加することが見出された。不慣れな運動をすると、運動後に遅れて筋痛が出現することを遅発性筋痛と言う。遅発性筋痛において、NGFが運動後12時間程度遅れて筋において増大し、2日後まで持続されることが報告されている。このことから、NGFは、筋C線維受容器を感作して痛覚過敏状態を引き起こしている可能性が示唆されている(非特許文献4)。 従来、痒みは痛みの強度レベルの低いものであると考えられていたが、最近の神経生理学の進歩により、痒みは痛みとは異なるメカニズムであり、痒みを伝える神経はC線維であることが分かっている。 健常人では、一次感覚神経線維は、表皮・真皮の境界部までしか突起を伸ばしていない。しかし、アトピー性皮膚炎の皮膚や乾燥した皮膚では、多数の一次感覚神経線維が表皮内に進入・伸展していることが知られている。痒み刺激によって表皮内のC線維が活性されると、生じた活動電位が脊髄、脊髄視床路および視床を経由して大脳皮質に直接に伝達される。そのため、痒みに対しては、抗ヒスタミン薬などのケミカルメディエイターをターゲットとした痒み抑制剤が奏功しないことがある(非特許文献5)。 表皮細胞、即ちケラチノサイトでは、各種刺激によりNGFが分泌され、これにより表皮・真皮境界部に存在する自由神経終末の表皮内への進展が促進されると報告されている。さらに、NGFは、一定の実験条件下ではマスト細胞からのヒスタミン放出を誘導することで、掻痒の増強を引き起こすものと考えられる。そこで、ケラチノサイトからのNGF産生を抑制する目的として、特許文献1および特許文献2には、神経成長因子産生抑制剤が開示されている。 しかし、神経線維の表皮侵入には、ケラチノサイトから遊離されるNGFだけではなく、アンフィレギュリン(amphiregulin)やゲラチナーゼ(gelatinase)などの様々な因子が関与していることが報告されている(非特許文献5)。さらに、前述のように、活性された表皮内のC線維により生じた活動電位が脊髄などを経由して直接に大脳皮質に伝達されるため、表皮内でのNGF産生抑制のみでは、痒みに対する効果は限定的なものであると考えられる。特開2009-84222号公報特開2005-350412号公報松田浩珍、松本正博,炎症性サイトカインとしての神経成長因子,日本獣医師会雑誌,48,167−172,1995関山 裕詩,かゆみの基礎知識,Anesthesia 21 Century,1,3−32,2008.“腰椎グループの研究”[online]、千葉大学整形外科、(2014年4月15日検索)、インターネット<URL:http://www.chiba-orthopaedics.com/group/lumbar_gr/lumbar_research.html>水村和枝、鍼灸刺激の受容器(結穴)の有力候補ポリモーダル受容体について、日本東洋医学誌,62,196−205,2011高森建二、痒みを科学する―特に難治性かゆみの発現メカニズムと対策―、順天堂医学、53、193−199、2007 上述したように、従来技術は、表皮内でのNGF産生を抑制するものであり、NGF以外の因子に起因する神経突起伸長を抑制することはできない。そこで、一次感覚神経の突起伸長または増加それ自体を抑制することができれば、局所における様々な痛みや痒みの刺激に対する過敏応答を抑制することが可能であると考えられる。 したがって、本発明は、神経の突起伸長を抑制することができ、一次感覚神経の伸長による痛覚過敏や痒み過敏を抑制することが可能な、神経突起伸長抑制剤、痛み抑制剤および痒み抑制剤を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、NGFによるDRG神経細胞の突起伸長を抑制する活性を有する成分をスクリーニングした。その結果、種々の生薬が神経突起伸長を抑制する活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、黄耆(オウギ)、黄ごん(オウゴン)、黄柏(オウバク)、桜皮(オウヒ)、黄連(オウレン)、遠志(オンジ)、甘草(カンゾウ)、金銀花(キンギンカ)、桂皮(ケイヒ)、荊芥(ケイガイ)、柴胡(サイコ)、山梔子(サンシシ)、地黄(ジオウ)、芍薬(シャクヤク)、升麻(ショウマ)、川きゅう(センキュウ)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(タクシャ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、陳皮(チンピ)、当帰(トウキ)、独活(ドッカツ)、人参(ニンジン)、半夏(ハンゲ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、樸そく(ボクソク)、牡丹皮(ボタンピ)およびよく苡仁(ヨクイニン)からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含む、神経突起伸長抑制剤を提供する。 また本発明は、上記神経突起伸長抑制剤を含む、痛み抑制剤を提供する。 また本発明は、上記神経突起伸長抑制剤を含む、痒み抑制剤を提供する。 本発明に係る神経突起伸長抑制剤は、DRG神経細胞の突起伸長を抑制することができるため、神経突起伸長に起因する種々の症状、たとえば一次感覚神経の伸長による痛覚過敏や痒み過敏を抑制することが可能となる。本発明に係る神経突起伸長抑制剤であれば、NGFを含む種々の因子に起因する一次感覚神経の突起伸長を抑制することができる。これにより、本発明に係る神経突起伸長抑制剤は、局所における様々な痛みや痒みの刺激に対する過敏応答を抑制することが可能である。本発明によれば、関節等における自由神経終末の内層への侵入や、それにより惹起される疼痛を抑えることができる。また、本発明によれば、様々なメカニズムによって起こり得る、皮膚組織等における自由神経終末の表皮への侵入を抑え、アトピー性皮膚炎によるかゆみや乾燥によるかゆみ、および化粧品による知覚過敏を抑制することができる。無処理培地で培養したDRGニューロンのペリフェリン染色画像(倍率:×100)を表す図。対照培地で培養したDRGニューロンのペリフェリン染色画像(倍率:×100)を表す図。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、神経の軸索および樹状突起等の突起の伸長を抑制する薬剤である。 本明細書において、神経突起とは、神経細胞から伸長される突起をいい、細胞体から伸長される軸索および樹状突起を含む。神経突起は、たとえば神経細胞から伸長された、C線維またはAδ線維を含有する突起を含む。 本明細書において、神経突起伸長とは、神経突起が細胞体から伸長することをいう。神経突起伸長は、後根神経節(DRG)における神経突起の伸長を含む。また、神経突起伸長は、神経成長因子(NGF)による刺激によって誘発される神経突起の伸長を含む。 本明細書において、神経突起伸長抑制とは、神経細胞からの任意の突起の伸長を抑制することをいう。神経突起伸長抑制は、神経突起の伸長を止めること、神経突起の長さを減少させること、神経突起の数を減少させること、および神経突起を萎縮させることを含む。また、神経突起伸長抑制は、DRGにおける神経突起の伸長を抑制することを含み、NGFによる刺激によって誘発される神経突起の伸長を抑制することを含む。たとえば、神経突起伸長抑制は、C線維またはAδ線維の伸長を抑制することを含む。 本発明の神経突起伸長抑制剤によって抑制される神経の突起伸長は、任意の部位および要因による突起伸長であってもよい。特に限定されないが、本発明の神経突起伸長抑制剤によって抑制される神経の突起伸長は、神経成長因子(NGF)による突起伸長であってもよい。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、神経突起伸長を抑制する活性を有する生薬を有効成分として含む。具体的には、本発明の神経突起伸長抑制剤は、黄耆(オウギ)、黄ごん(オウゴン)、黄柏(オウバク)、桜皮(オウヒ)、黄連(オウレン)、遠志(オンジ)、甘草(カンゾウ)、金銀花(キンギンカ)、桂皮(ケイヒ)、荊芥(ケイガイ)、柴胡(サイコ)、山梔子(サンシシ)、地黄(ジオウ)、芍薬(シャクヤク)、升麻(ショウマ)、川きゅう(センキュウ)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(タクシャ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、陳皮(チンピ)、当帰(トウキ)、独活(ドッカツ)、人参(ニンジン)、半夏(ハンゲ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、樸そく(ボクソク)、牡丹皮(ボタンピ)およびよく苡仁(ヨクイニン)からなる群より選択される少なくとも1種の生薬を有効成分として含む。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、上述した群より選択される1種のみの生薬を含んでもよいし、2種以上を組み合わせて含んでもよい。たとえば、本発明の神経突起伸長抑制剤は、複数の生薬を組み合わせて処方された漢方薬を含んでもよく、たとえば抑肝散を含んでもよい。抑肝散は、白朮(または蒼朮)、茯苓、川きゅう、釣藤鈎、当帰、柴胡および甘草を含む漢方薬である。また、本発明の神経突起伸長抑制剤は、上述した群に含まれない生薬をさらに含んでもよい。 本発明で使用する生薬は、原料となる植物体そのものであってもよいし、原料からの抽出物であってもよい。本発明における「抽出物」には、原料に溶媒を加えて抽出することにより得られる抽出物、原料に圧搾処理を施した後に得られる圧搾液、および原料を圧搾後の残渣に溶媒を加えて抽出することに得られる抽出物、並びにこれらの抽出物または圧搾液を乾固させた乾固物などが含まれる。 本発明に用いる生薬は、公知の方法で製造することができる。本発明に用いる生薬は、たとえば、水、メタノールおよびエタノール等のアルコール類またはこれらの混合溶媒などの抽出溶媒を用いて、常温抽出または加熱抽出することにより製造することができる。必要により、減圧または加圧下で抽出してもよい。得られた抽出エキスは、そのまま使用してもよいし、濃縮または凍結乾燥によって乾固させてから使用してもよい。 黄耆(オウギ)の原料は、一般的に、キバナオウギ(Astragalus membranaceus Bunge)、ナイモウオウギ(Astragalus mongholicus Bunge)またはその他の同属植物(Leguminosae)の根である。 黄ごん(オウゴン)の原料は、一般的に、コガネバナ(Scutellaria baicalensis Georgi)またはその他の同属植物(Labiate)の周皮を除いた根である。 黄柏(オウバク)の原料は、一般的に、キハダ(Phellodendron amurense RuprechtおよびPhellodendron chinense Schneiderなど)またはその他の同属植物(Rutaceae)の周皮を除いた樹皮である。 桜皮(オウヒ)の原料は、一般的に、ヤマザクラ(Prunus jamasakura Siebold ex Koidzumi)、カスミザクラ(Prunus verecunda Koehne)またはその他の同属植物(Rosaceae)の樹皮である。 黄連(オウレン)の原料は、一般的に、オウレン(Coptis japonica Makino,Coptis chinensis Franchet,Coptis deltoidea C.Y.Cheng et HsiaoおよびCoptis teeta Wallichなど)またはその他の同属植物(Ranunculaceae)の根をほとんど除いた根茎である。 遠志(オンジ)の原料は、一般的に、イトヒメハギ(Polygala tenuifolia Willdenow)またはその他の同属植物(Polygalaceae)の根である。 甘草(カンゾウ)の原料は、一般的に、ウラルカンゾウ(Glycyrrhiza uralensis Fischer)、スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra Linne)またはその他の同属植物(Leguminosae)の根およびストロンで、ときには周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)である。 金銀花(キンギンカ)の原料は、一般的に、スイカズラ(Lonicera japonica Thunberg)またはその他の同属植物(Caprifoliaceae)のつぼみである。 桂皮(ケイヒ)の原料は、一般的に、シナニッケイ(Cinnamomum cassia Blume)またはその他の同属植物(Lauraceae)の樹皮または周皮の一部を除いたものである。 荊芥(ケイガイ)の原料は、一般的に、ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet)またはその他の同属植物(Labiatae)の花穂である。 柴胡(サイコ)の原料は、一般的に、ミシマサイコ(Bupleurum falcatum Linne)またはその他の同属植物(Umbelliferae)の根である。 山梔子(サンシシ)の原料は、一般的に、クチナシ(Gardenia jasminoides Ellis)またはその他の同属植物(Rubiaceae)の果実である。 地黄(ジオウ)の原料は、一般的に、アカヤジオウ(Rehmannia glutinosa Liboschitz var. purpurea MakinoおよびRehmannia glutinosa Liboschitzなど)またはその他の同属植物(Scrophulariaceae)の根またはそれを蒸したものである。 芍薬(シャクヤク)の原料は、一般的に、シャクヤク(Paeonia lactiflora Pallas)またはその他の同属植物(Paeoniaceae)の根である。 升麻(ショウマ)の原料は、一般的に、サラシナショウマ(Cimicifuga simplex Turczaninow,Cimicifuga dahurica Maximowicz,Cimicifuga foetida LinneおよびCimicifuga heracleifolia Komarovなど)またはその他の同属植物(Ranunculaceae)の根茎である。 川きゅう(センキュウ)の原料は、一般的に、センキュウ(Cnidium officinale Makino)またはその他の同属植物(Umbelliferae)の根茎を、通例、湯通ししたものである。 蒼朮(ソウジュツ)の原料は、一般的に、ホソバオケラ(Atractylodes lancea De Candolle,Atractylodes chinensis Koidzumi)もしくはそれらの雑種またはその他の同属植物(Compositae)の根茎である。 沢瀉(タクシャ)の原料は、一般的に、サジオモダカ(Alisma orientale Juzepczuk)またはその他の同属植物(Alismataceae)の塊茎で、通例、周皮を除いたものである。 釣藤鈎(チョウトウコウ)の原料は、一般的に、カギカズラ(Uncaria rhynchophylla Miquel,Uncaria sinensis HavilandおよびUncaria macrophylla Wallichなど)またはその他の同属植物(Rubiaceae)の通例とげである。 陳皮(チンピ)の原料は、一般的に、ウンシュウミカン(Citrus unshiu MarcowiczおよびCitrus reticulata Blancoなど)またはその他の同属植物(Rutaceae)の成熟した果皮である。 当帰(トウキ)の原料は、一般的に、トウキ(Angelica acutiloba Kitagawa)、ホッカイトウキ(Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)またはその他の同属植物(Umbelliferae)の根を、通例、湯通ししたものである。 独活(ドッカツ)の原料は、一般的に、ウド(Aralia cordata Thunberg)またはその他の同属植物(Araliaceae)の、通例、根茎である。 人参(ニンジン)の原料は、一般的に、オタネニンジン(Panax ginseng C.A.Meyer(Panax schinseng Nees))またはその他の同属植物(Araliaceae)の細根を除いた根またはこれを軽く湯通ししたものである。 半夏(ハンゲ)の原料は、一般的に、カラスビシャク(Pinellia ternata Breitenbach)またはその他の同属植物(Araceae)のコルク層を除いた塊茎である。 白朮(ビャクジュツ)の原料は、一般的に、オケラ(Atractylodes japonica Koidzumi ex Kitamura)の根茎(ワビャクジュツ)、オオバナオケラ(Atractylodes macrocephala Koidzumi)の根茎(カラビャクジュツ)またはその他の同属植物の根茎である。 茯苓(ブクリョウ)の原料は、一般的に、マツホド(Wolfiporia cocos Ryvarden et Gilbertson(Poria cocos Wolf))またはその他の同属植物(Polyporaceae)の菌核で、通例、外層をほとんど除いたものである。 樸そく(ボクソク)の原料は、一般的に、クヌギ(Quercus acutissima Carruthers),コナラ(Quercus serrata Murray),ミズナラ(Quercus mongolica Fischer ex Ledebour var.crispula Ohashi)もしくはアベマキ(Quercus variabilis Blume)またはその他の同属植物(Fagaceae)の樹皮である。 牡丹皮(ボタンピ)の原料は、一般的に、ボタン(Paeonia suffruticosa Andrews(Paeonia moutan Sims))またはその他の同属植物(Paeoniaceae)の根皮である。 よく苡仁(ヨクイニン)の原料は、一般的に、ハトムギ(Coix lacryma-jobi Linne var. mayuen Stapf)またはその他の同属植物(Gramineae)の種皮を除いた種子である。 本発明で使用する各生薬の原料となる各々の植物体は、上述した部位を使用することが好ましいが、これに限定されない。各生薬の原料には、上述した植物体の、花、花穂、果皮、果実、茎、葉、枝、枝葉、幹、樹皮、根茎、根皮、根、種子および全草等から選択される1種または2種以上の部位を用いることができる。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、神経の突起伸長に伴う任意の症状、たとえば上皮組織における過敏反応などを抑制する目的で使用可能である。上皮組織における過敏反応としては、皮膚における過剰な痛みもしくは痒み、または気管支における過剰な気管収縮などが挙げられる。したがって、本発明の神経突起伸長抑制剤は、痛み抑制剤、痒み抑制剤、または喘息の予防もしくは治療剤として使用することができる。また、本発明の神経突起伸長抑制剤は、痒みを伴う皮膚疾患における痒みの予防または治療剤として使用することが可能である。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、皮膚外用剤、経口剤および注射剤などの任意の投与形態のための薬剤であることができる。また、本発明の神経突起伸長抑制剤は、医薬、医薬部外品、化粧品および飲食品などの形態であることができる。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、皮膚外用剤である場合、皮膚に適用可能な任意の形態であることができ、たとえばクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、並びに化粧水、乳液および美容液などの各種化粧品などであってもよい。これらの形態は、公知の方法によって製造されることができる。たとえば、有効成分を基剤に混合させて製造することができる。基剤の例には、高級炭化水素、油脂類、ロウ類、脂肪酸、低級アルコール、高級アルコールおよびエステル類などを含む。さらに、保湿剤、保存剤、安定化剤、抗酸化剤、各種化粧料および着香剤などを含んでもよい。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、経口剤である場合、経口投与のために通常用いられる任意の形態であることができ、たとえば錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤、ゲル剤およびシロップ剤などであってもよい。これらの形態は、公知の方法によって製造されることができる。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、その形態に応じて、さらに任意の成分を含むことができる。たとえば、本発明の神経突起伸長抑制剤は、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および着色剤などをさらに含むことができる。 神経突起伸長抑制剤に使用する賦形剤の例には、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどを含む。 また、結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどを含む。 また、崩壊剤の例には、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムなどを含む。 また、滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルクおよびマクロゴールなどを含む。また、着色剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品および飲食品などに添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。 また、神経突起伸長抑制剤は、必要に応じて、白糖、ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレートおよびメタアクリル酸重合体などで一層以上の層で被膜してもよい。 また、必要に応じて、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤および可溶化剤などを添加してもよい。 本発明の神経突起伸長抑制剤における各生薬の含有量は、各生薬について漢方薬として一般的に使用される投与量となるように設定することができる。たとえば、経口剤の場合、生薬総量が1日あたり1mg〜500mg用量となるように設定することができる。また、本発明の神経突起伸長抑制剤における各生薬の配合割合は、投与形態および投与量に応じて適した割合に設定することができる。 以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 [実施例1] 〔生薬抽出方法(1)〕 表1に示す各生薬の原料50gに300mLの水を加え、100℃にて30分間加温還流で抽出し、濾過した抽出液を定法により凍結乾燥し、1〜15g程度の乾燥物を得た。各生薬の原料には、上で説明した一般的な原料を用いた。 なお、生姜(ショウキョウ)には、ショウガ(Zingiber officinale Roscoe)(Zingiberaceae)の根茎を用いた。また、辛夷(シンイ)には、タムシバ(Magnolia salicifolia Maximowicz)、コブシ(Magnolia kobus De Candolle,Magnolia biondii Pampanini,もしくはMagnolia sprengeri Pampanini)またはハクモクレン(Magnolia heptapeta Dandy)(Magnolia denudata Desrousseaux)(Magnoliaceae)のつぼみを用いた。 〔脊髄後根神経節(DRG)の採取〕 6〜9週齢の雄性Sprague-Dawley系ラットから脊椎を切り出し、脊柱管を切り開いた後、脊髄を除去した。神経線維束を伴った後根神経節(DRG)を精密ピンセットで採取し、実体顕微鏡下で神経線維束を切断し、DRGを分離した。 〔脊髄後根神経節(DRG)細胞浮遊液の作成〕 分離したDRGをコラゲナーゼタイプIII(Worthington社製)およびトリプシンタイプI(Life Technologies社製)にて処理後、先端を細くしたパスツールピペットにて細胞を分離した。10%ウシ胎仔血清(Biowest社製)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン液(SIGMA社製)を添加したF-12合成培地(Life Technologies社製)に細胞を懸濁し、ポリ-D-リジンコートされた8wellカルチャースライド(免疫染色用、BD社製)に播種し、37℃、5%CO2下で培養した。 〔培地の調製〕 無処理培地として、2%B-27(Life Technologies社製)および1%ペニシリン-ストレプトマイシン液を含有したF-12合成培地を調製した。これにマウスNGF2.5S(Life Technologies社製)を10ng/mLとなるよう添加した培地を対照培地とした。また、対照培地に被験物質として各生薬を最終濃度100μg/mLとなるよう添加したものを、サンプル培地とした。 〔免疫染色法〕 8wellカルチャースライドで培養した細胞から培地を除去し、4%パラホルムアルデヒド/PBS溶液(和光純薬工業株式会社製)で20分間固定した。PBSで5分間の洗浄を3回行い、2%Triton−Xを含有したPBSで10分間膜透過処理を行った。PBSで5分間の洗浄を3回行い、1%ウシ血清アルブミンおよび5%ヤギ血清を含有したPBS(ブロッキング液)で5分間ブロッキングした。その後、ブロッキング液に希釈した抗ペリフェリン(peripherin)抗体(Millipore社製)で一次抗体処理を2時間行った。PBSで5分間の洗浄を3回行い、ブロッキング液に希釈したAlexa Fluor 488(invitrogen社製)で二次抗体処理を45分行った。PBSで5分間の洗浄を3回行い、封入した後、倒立蛍光顕微鏡(DMI4000B、Leica社製)にて100倍の倍率で観察し、画像を取得した。 〔実験方法〕 細胞播種から24時間後に、無処理培地、対照培地およびサンプル培地に置換し48時間培養した。その後、細胞をC線維のマーカータンパク質であるペリフェリンで上述した方法で免疫染色した。倒立蛍光顕微鏡(DMI4000B、Leica社製)にて100倍の倍率で観察し、写真撮影を行った。得られた画像から、DRGニューロンの神経突起長を解析ソフトImageJにて以下に示す方法で測定した。 〔神経突起長の測定および抑制率の算出方法〕 免疫染色で得た画像をImage Jを用いて解析した。各wellから突起が伸長しているDRGニューロンをランダムに15-20個選定し、1細胞あたりの平均神経突起長を測定した。対照培地により誘導された神経突起長を0%、無処理培地での神経突起長を100%として、被験物質における突起伸長抑制率を以下の式を用いて算出した。 [試験結果1] 〔神経細胞の同定〕 図1は、無処理培地で培養したDRGニューロンのペリフェリン染色画像(倍率:×100)を示す。また、図2は、対照培地で培養したDRGニューロンのペリフェリン染色画像(倍率:×100)を示す。図1に示すように、C線維のマーカータンパク質であるペリフェリンによる免疫染色から、初代培養したDRGは、痛みおよび痒みを伝えるC線維を含むことが確認された。また、図2に示すように、その細胞はNGFの添加によって神経突起伸長が誘発された。 〔NGFによる神経突起の伸長に対する各被験物質の抑制活性〕 表1に示すように、31種類の生薬エキスについて神経突起伸長抑制率を測定した。その結果、黄ごん、黄耆、甘草、沢瀉、川きゅう、蒼朮、山梔子、陳皮、白朮、当帰、桂皮、人参、遠志、茯苓、芍薬、牡丹皮、よく苡仁、独活、半夏、桜皮、地黄、黄柏、黄連、樸そく、釣藤鈎、荊芥、柴胡、金銀花および升麻の生薬エキスの存在下において、神経突起伸長の抑制が観察された。なかでも、山梔子、陳皮、白朮、当帰、桂皮、人参、遠志および茯苓において、抑制率が50%以上100%未満であった。また、芍薬、牡丹皮、よく苡仁、独活、半夏、桜皮、地黄、黄柏、黄連、樸そく、釣藤鈎、荊芥、柴胡、金銀花および升麻においては抑制率が100%以上であり、無処理培地よりも神経突起伸長を抑制することが明らかとなった。 本発明の神経突起伸長抑制剤は、神経突起伸長による様々な疾患のための予防または治療剤として利用可能である。 黄耆(オウギ)、黄ごん(オウゴン)、黄柏(オウバク)、桜皮(オウヒ)、黄連(オウレン)、遠志(オンジ)、甘草(カンゾウ)、金銀花(キンギンカ)、桂皮(ケイヒ)、荊芥(ケイガイ)、柴胡(サイコ)、山梔子(サンシシ)、地黄(ジオウ)、芍薬(シャクヤク)、升麻(ショウマ)、川きゅう(センキュウ)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(タクシャ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、陳皮(チンピ)、当帰(トウキ)、独活(ドッカツ)、人参(ニンジン)、半夏(ハンゲ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、樸そく(ボクソク)、牡丹皮(ボタンピ)およびよく苡仁(ヨクイニン)からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含む、神経突起伸長抑制剤。 請求項1に記載の神経突起伸長抑制剤を含む、痛み抑制剤。 請求項1に記載の神経突起伸長抑制剤を含む、痒み抑制剤。 【課題】 神経の突起伸長を抑制することができ、一次感覚神経の伸長による痛覚過敏や痒み過敏を抑制することが可能な神経突起伸長抑制剤を提供する。【解決手段】 本発明の神経突起伸長抑制剤は、神経成長因子(NGF)による後根神経節(DRG)神経細胞の突起伸長を抑制する活性を有する少なくとも1種の生薬を含み、神経突起伸長に起因する種々の症状、たとえば一次感覚神経の伸長による痛覚過敏や痒み過敏などを抑制することが可能である。【選択図】 図1