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タイトル:公開特許公報(A)_金属腐食性評価方法
出願番号:2014088268
年次:2015
IPC分類:G01N 27/26,G01N 17/02


特許情報キャッシュ

水野 大輔 石川 信行 遠藤 茂 JP 2015206720 公開特許公報(A) 20151119 2014088268 20140422 金属腐食性評価方法 JFEスチール株式会社 000001258 酒井 宏明 100089118 水野 大輔 石川 信行 遠藤 茂 G01N 27/26 20060101AFI20151023BHJP G01N 17/02 20060101ALI20151023BHJP JPG01N27/26 351MG01N17/02G01N27/26 351DG01N27/26 351K 4 1 OL 18 2G050 2G050AA01 2G050BA02 2G050BA05 2G050CA07 2G050DA01 2G050EB03 2G050EC05 本発明は、腐食環境下において異種の各金属材料を導通可能に接触させた際に局部腐食を生じる金属材料の局部腐食性を評価する金属腐食性評価方法に関するものである。 近年、構造体用材料として、鉄鋼材料の他に、非鉄金属等の様々な金属材料が適用されつつある。一般に、電気伝導性を有し且つ互いに異なる種類の金属である複数の金属材料が、水溶液あるいは大気環境等の腐食環境下において直接接触あるいは間接接触して電気的に短絡した場合、異種金属接触腐食またはガルバニック腐食を生じる可能性がある。 異種金属接触腐食またはガルバニック腐食(以下、これらを総称して金属腐食と適宜いう)は、互いに直接的または間接的に接触した異種の各金属材料のうち、電気化学的に卑な金属材料に発生する。この際、電気化学的に卑な金属材料の腐食は、同金属材料が単独で腐食する場合に比べて促進される。一方、これらの各金属材料のうち、腐食する卑な金属材料と対をなす電気化学的に貴な金属材料は、この卑な金属材料とは逆に腐食速度が低下し、あるいは、完全に防食される。 このような金属腐食の評価方法としては、従来の電気化学測定の1つである分極曲線測定により、金属腐食を生じる異種の各金属材料の電気化学的性質を把握する方法、あるいは、実際に異種の各金属材料を水溶液中に浸漬して電気的に短絡させ、これによって金属腐食が生じた際、これらの各金属材料の間に流れる電流(以下、カップリング電流という)および各金属材料の電位(以下、カップリング電位という)を測定するガルバニック腐食試験等が用いられている。また、実構造物を模擬して、異種の各金属材料同士が接触した構造体や試験片を腐食環境にさらすことにより、異種金属接触腐食時の金属材料の腐食挙動を調査することも行われる。 なお、金属腐食の評価方法に関する従来技術として、例えば、電解液中に浸漬した各種金属材料単体の分極曲線を電位走査法あるいは定電位ステップ法または定電流ステップ法によって測定し、各種金属材料が組み合わされた際のカップリング電流を分極曲線の測定結果から求め、得られたカップリング電流に基づいて金属材料の腐食速度を予測するものがある(特許文献1参照)。また、金属表面に付着している水膜への酸素溶解速度を算出し、算出した酸素溶解速度と金属表面の水膜の厚さとに基づいて、金属表面に到達する単位時間且つ単位面積当たりの酸素量を算出し、得られた酸素量を用いて金属材料の腐食速度を予測する方法がある(特許文献2参照)。特許第5223783号公報特開2012−83140号公報 しかしながら、上述した従来技術には、以下に示す問題点がある。すなわち、異種の各金属材料が腐食環境下で導通可能な状態で接触した際に発生する異種金属接触腐食等の金属腐食の形態が孔食または粒界腐食等の局部腐食である場合、金属腐食の進行に伴い、金属材料の表面の分極特性は、同金属材料の初期表面(金属腐食が発生する以前の金属表面)のものと異なる分極特性に変化する。この現象は、金属材料に局部腐食が発生した際、この金属材料の腐食部分において溶出金属の濃度が高まり、その一方、電気的中性条件を保つために塩化物イオンが移動して塩化物濃度が高くなる等によって、この金属材料の腐食部分近傍の溶液の性質、腐食性と沖合いのバルクの溶液の性質、腐食性とが乖離するために起こる。 局部腐食が生じている金属材料の分極特性は、この局部腐食部分の特性によって支配されているため、腐食する以前の無垢な金属材料の表面を用いて測定した分極曲線と、局部腐食が発生している状態の金属材料表面の分極曲線とでは、腐食電位(カップリング電位)並びにカップリング電位とカップリング電流密度との関係が大きく異なる。したがって、腐食する以前の金属材料の分極曲線を用いてカップリング電位およびカップリング電流密度を推定しても、実際に異種金属接触腐食時のカップリング電位およびカップリング電流密度の予測精度は高くなかった。また、カップリング電位およびカップリング電流密度の推定結果に基づいて得られた分極曲線(金属材料の分極特性)を境界条件として用い、境界要素法等の数値シミュレーションを行っても、この数値シミュレーションによって推定した金属材料の局部腐食性(例えば腐食量、腐食速度等)の精度は高くなかった。 本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、腐食環境下において異種の各金属材料を導通可能な状態で接触させた際に局部腐食を生じる金属材料の局部腐食性を高精度に推定して評価することが可能な金属腐食性評価方法を提供することを目的とする。 ところで、異種金属接触腐食またはガルバニック腐食によって局部腐食が発生した状態の金属材料の分極特性は、金属腐食(詳細には局部腐食)の進行に伴って変化する。このような分極特性を精度高く推定するためには、局部腐食が発生した状態の金属材料のカップリング電流およびカップリング電位の測定結果を用いる必要がある。 腐食金属の分極特性の推定に用いるカップリング電流およびカップリング電位は、互いに異種の各金属材料を腐食環境下において電気的に短絡させ、これにより、金属腐食が発生した状態にして、測定される。これらの各金属材料のうち、一方は、局部腐食性の評価対象である金属材料(以下、被評価金属材料という)であり、他方は、この被評価金属材料に比して電気化学的に貴な金属材料(以下、対極金属材料という)である。 上述したように測定したカップリング電流の密度(以下、カップリング電流密度という)およびカップリング電位は、腐食環境をなす電解液等の水溶液の溶液抵抗が無視できる場合、局部腐食が生じた状態の被評価金属材料のアノード分極曲線と、還元反応を担う対極金属材料のカソード分極曲線との交点に対応する値である。あるいは、このカップリング電流密度の測定値は、対極金属材料で生じるカソード反応による電流と同じ大きさの電流を与えるアノード電流密度の値であり、このカップリング電位の測定値は、カソード反応による電流と同じ大きさのアノード電流を供給する時の電位の値である。このため、被評価金属材料が局部腐食を生じている時の分極曲線は、これらのカップリング電流密度およびカップリング電位の測定値を満足するはずである。したがって、これらのカップリング電流密度およびカップリング電位の測定値を満足するように分極曲線を描くことにより、局部腐食の進行程度が一定の状態(以下、平衡状態という)における被評価金属材料の分極特性を精度高く推定することができる。 なお、金属腐食が発生した状態での分極曲線は、電位走査法あるいは定電位ステップ法または定電流ステップ法によって金属材料に腐食を生じさせて求めることが可能である。しかし、ポテンショスタットまたはガルバノスタット等の電気化学測定装置によって制御された一定電流または一定電圧による測定に比べ、実際の被評価金属材料の局部腐食は、カップリング電流密度およびカップリング電位の双方の変動を伴いながら進行する。また、電気化学測定装置によって制御された腐食速度は、実際の腐食速度における金属の溶解速度やこれに伴う腐食生成物の形成状態が異なる。したがって、実際の被評価金属材料の金属腐食現象を再現するためには、異種金属接触腐食またはガルバニック腐食によるカップリング電流密度およびカップリング電位の各値を測定する必要がある。 本発明は、以上の知見に基づいて鋭意研究を重ねた結果、完成されたものである。すなわち、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる金属腐食性評価方法は、異種の各金属材料を腐食環境下で導通可能な状態で接触させて、前記各金属材料のうちの評価対象である被評価金属材料に局部腐食を発生させ、前記局部腐食が発生した状態の前記被評価金属材料の電流密度および電位を測定する測定ステップと、前記測定ステップによって測定した前記電流密度および前記電位を用いて、前記局部腐食の進行程度が一定の状態である平衡状態の際における前記被評価金属材料の分極特性を推定する推定ステップと、前記推定ステップによって推定した前記分極特性をもとに、前記被評価金属材料の局部腐食性を評価する評価ステップと、を含むことを特徴とする。 また、本発明にかかる金属腐食性評価方法は、上記の発明において、前記推定ステップは、前記測定ステップによって測定した前記電流密度および前記電位の測定値を示す点から、前記被評価金属材料の腐食していない状態における分極曲線と同じ勾配を外挿して、前記平衡状態の際における前記被評価金属材料の分極特性を示す分極曲線を推定することを特徴とする。 また、本発明にかかる金属腐食性評価方法は、上記の発明において、前記測定ステップは、前記各金属材料の面積比を変えて、前記局部腐食が発生した状態の前記被評価金属材料の電流密度および電位を前記面積比別に測定し、前記推定ステップは、前記測定ステップによって前記面積比別に測定した複数組の前記電流密度および前記電位の測定値を直線近似することにより、前記電流密度および前記電位の関係を示す勾配を導出して、前記平衡状態の際における前記被評価金属材料の分極特性を推定することを特徴とする。 また、本発明にかかる金属腐食性評価方法は、上記の発明において、前記評価ステップは、前記推定ステップによって推定した前記分極特性を、前記被評価金属材料と前記被評価金属材料を浸漬する水溶液との界面の境界条件として用い、前記被評価金属材料の腐食速度および腐食量を算出することを特徴とする。 本発明によれば、腐食環境下において異種の各金属材料を導通可能な状態で接触させた際に局部腐食を生じる金属材料の局部腐食性を高精度に推定して評価することができるという効果を奏する。図1は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法の一例を示すフローチャートである。図2は、被評価金属材料の局部腐食発生時におけるカップリング電流密度およびカップリング電位の測定を説明する図である。図3は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法による被評価金属材料の分極特性の推定を説明するための図である。図4は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法による被評価金属材料の局部腐食性の評価を説明するための図である。図5は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法による被評価金属材料の分極特性推定の別例を説明するための図である。図6は、本発明の実施例1における局部腐食が発生した状態の被評価金属材料に対するカップリング電流密度の測定結果を示す図である。図7は、本発明の実施例1における局部腐食が発生した状態の被評価金属材料に対するカップリング電位の測定結果を示す図である。図8は、本発明の実施例1における被評価金属材料の局部腐食平衡状態時の分極特性を推定した結果を示す図である。図9は、本発明の実施例1における被評価金属材料のガルバニック電位の推定結果を示す図である。図10は、アルミニウム合金の分極測定試験によって得られた電位と腐食進展速度との関係を示す図である。図11は、本発明の実施例2における被評価金属材料の局部腐食平衡状態時の分極特性を推定した結果を示す図である。 以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる金属腐食性評価方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本実施の形態により、本発明が限定されるものではない。(金属腐食性評価方法) まず、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法の一例を示すフローチャートである。図2は、被評価金属材料の局部腐食発生時におけるカップリング電流密度およびカップリング電位の測定を説明する図である。図3は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法による被評価金属材料の分極特性の推定を説明するための図である。図4は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法による被評価金属材料の局部腐食性の評価を説明するための図である。 図1に示すように、本実施の形態にかかる金属腐食性評価方法では、まず、被評価金属材料の局部腐食発生時におけるカップリング電流密度およびカップリング電位を測定する(ステップS101)。 ステップS101では、被評価金属材料1として、腐食環境下において孔食や粒界腐食等の局部腐食を生じる金属材料の試験片が準備される。また、この被評価金属材料1とは異種の金属材料の試験片が、対極金属材料2として準備される。対極金属材料2は、本実施の形態において被評価金属材料1と対をなし、この被評価金属材料1に比べて電位が貴な金属材料である。すなわち、被評価金属材料1は、本実施の形態における対極金属材料2に比べて電位が卑な金属材料である。これらの被評価金属材料1および対極金属材料2、すなわち異種の各金属材料を、腐食環境下で導通可能な状態にして、この被評価金属材料1に局部腐食を発生させる。このように局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位を測定する。 具体的には、図2に示すように、ステップS101において、被評価金属材料1および対極金属材料2は、ガルバニック腐食測定装置10に設置して、ガルバニック腐食測定装置10における容器11内の腐食液12に浸漬した状態にする。腐食液12は、被評価金属材料1に金属腐食を発生させる腐食環境をなす液である。本実施の形態では、腐食液12として、例えば、電解液等の水溶液が用いられる。また、これらの被評価金属材料1および対極金属材料2は、電流計測器(例えば図2に示す無抵抗電流計13)によって接続される。上記のように腐食液12に浸漬した状態の被評価金属材料1および対極金属材料2は、この腐食液12を介して電気的に短絡する。この状態において、被評価金属材料1には、局部的な金属腐食すなわち局部腐食が発生する。 被評価金属材料1に局部腐食が発生した状態において、被評価金属材料1はアノード電極として作用し、対極金属材料2はカソード電極として作用する。この際、被評価金属材料1と対極金属材料2との電位差が生じ、これにより、被評価金属材料1と対極金属材料2との間に、カップリング電流が流れる。ステップS101では、このようなカップリング電流を、無抵抗電流計13等の電流計測器によって時間経過とともに連続的または断続的に計測し、その都度、計測したカップリング電流の被評価金属材料1の表面に対する密度を、被評価金属材料1のカップリング電流密度として測定する。本実施の形態において、カップリング電流密度の測定値は、例えば、上記のように計測したカップリング電流の値を、被評価金属材料1のうちの腐食液12に浸漬している部分の面積で除することによって得られる。 また、ステップS101では、上述したカップリング電流密度の測定に並行して、被評価金属材料1のカップリング電位を測定する。具体的には、アノード電極としての被評価金属材料1は、カップリング電位まで分極される。この被評価金属材料1のカップリング電位は、腐食液12の溶液抵抗に起因して、カソード電極としての対極金属材料2の電位と完全には等しくならない。このため、ステップS101において、被評価金属材料1のカップリング電位は、図2に示すように、参照電極3を用いて測定する。例えば、参照電極3として、銀/塩化銀の電極(Ag/AgCl電極)等を用い、この参照電極3に対する被評価金属材料1の電位をカップリング電位として測定する。この際、参照電極3は、上述したように被評価金属材料1および対極金属材料2を浸漬する腐食液12中に直接浸漬してもよい。あるいは、図2に示すように、参照電極3を浸漬する試験溶液と腐食液12との混合を防止するために、参照電極3は、ルギン毛細管付きの塩橋14を介して被評価金属材料1と電気的に接続されるように設けてもよい。 測定されるカップリング電位は、被評価金属材料1の局部腐食の進行に伴って経時変化する。これは、以下に示す理由による。すなわち、被評価金属材料1に局部腐食が発生した場合、この被評価金属材料1の局所的な金属腐食部分(以下、局部腐食部分という)において集中的に被評価金属材料1の金属腐食が進行する。この金属腐食の進行に伴い、被評価金属材料1の局部腐食部分における腐食孔中の溶液の液性が変化する。この結果、腐食孔中の溶液の液性は、この腐食孔の外部におけるバルク溶液の腐食性と異なるものとなる。このことが、上述したカップリング電位の経時変化を招来する。 なお、ステップS101では、被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位を、その測定開始から、評価を所望する被評価金属材料1の局部腐食の状態が得られるまでの経過時間、継続的に測定することが最適である。しかし、被評価金属材料1に局部腐食が発生した状態において、局部腐食が所定の程度まで進行した場合、被評価金属材料1の局部腐食部分に形成された食孔や隙間の内部における溶液の化学種の濃度は、飽和に達する。これに伴い、被評価金属材料1のカップリング電流およびカップリング電位は、次第に安定した状態になる。このため、被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位の各測定は、安定したカップリング電流やカップリング電位が得られるまで行うこととしてもよい。 上述したステップS101を行った後、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法では、被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位の測定結果をもとに、被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時における分極特性を推定する(ステップS102)。本実施の形態において、局部腐食の平衡状態は、局部腐食の進行程度が一定となった状態である。具体的には、局部腐食の進行程度が所定の範囲内に収まる状態である場合、局部腐食は平衡状態であるとする。例えば、局部腐食が平衡状態である場合、局部腐食の進行程度を示す腐食速度は、一定の状態(所定の範囲内に収まる状態)である。 ステップS102では、上述したステップS101(測定ステップ)によって測定した被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位を用いて、局部腐食が平衡状態の際における被評価金属材料1の分極特性を推定する。この際、カップリング電流密度およびカップリング電位の各測定値は被評価金属材料1の局部腐食の進行に伴って経時変化しているため、測定したカップリング電流密度およびカップリング電位の各代表値を用いて、局部腐食が平衡状態である際の被評価金属材料1の分極特性(本実施の形態において、局部腐食平衡状態時の分極特性と適宜いう)を推定する。 具体的には、ステップS102において、まず、上述したステップS101によって測定したカップリング電流密度およびカップリング電位の各代表値を決定する。カップリング電流密度の代表値は、ステップS101によるカップリング電流密度の各測定値を代表する値であり、目的に応じた方法によって決定される。例えば、カップリング電流密度の代表値は、ステップS101における全測定期間に取得したカップリング電流密度の平均測定値であってもよいし、この全測定期間における最終時点のカップリング電流密度の測定値(最終測定値)であってもよいし、カップリング電流密度が所定の範囲内に安定した期間におけるカップリング電流密度の平均測定値であってもよい。 これと同様に、カップリング電位の代表値は、ステップS101によるカップリング電位の各測定値を代表する値であり、目的に応じた方法によって決定される。例えば、カップリング電位の代表値は、ステップS101における全測定期間に取得したカップリング電位の平均測定値であってもよいし、この全測定期間におけるカップリング電位の最終測定値であってもよいし、カップリング電位が所定の範囲内に安定した期間におけるカップリング電位の平均測定値であってもよい。 つぎに、ステップS102では、上述したように決定したカップリング電流密度およびカップリング電位の各代表値と、被評価金属材料1の通常の分極曲線とを用いて、被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時の分極特性を推定する。本実施の形態において、被評価金属材料1の通常の分極曲線は、被評価金属材料1の腐食していない状態における分極曲線(アノード溶解曲線)である。このような通常の分極曲線は、例えば、研磨まま且つ金属腐食のない状態の被評価金属材料1の表面について予め測定される。局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位が、1つの条件、具体的には、上述したように決定した各代表値の形で得られている場合、被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時の分極特性を推定する際に、この被評価金属材料1の通常の分極曲線を用いることができる。 具体的には、図3に示すように、カップリング電位とカップリング電流密度との相関を示す直交2軸座標系に、被評価金属材料1の測定点P1をプロットする。測定点P1は、ステップS101によって測定した被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位の測定値を示す点である。本実施の形態において、この測定点P1は、被評価金属材料1のカップリング電流密度の測定値に基づく代表値とカップリング電位の測定値に基づく代表値とを示している。続いて、図3に示すように、プロットした測定点P1から、被評価金属材料1の通常の分極曲線L11と同じ勾配を外挿して、局部腐食が平衡状態の際における被評価金属材料1の分極特性を示す分極曲線L1を推定する。 被評価金属材料1の分極曲線L1の推定においては、図3に示すように、通常の分極曲線L11の勾配を、被評価金属材料1の測定点P1を通る座標位置に描き、これにより、局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1の分極曲線L1を作成する。この分極曲線L1は、腐食環境下における被評価金属材料1のカップリング電位とカップリング電流密度との関係を示すものであり、局部腐食が進行中の被評価金属材料1の分極特性そのものであるカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値を、これらの各測定結果として包含している。また、この分極曲線L1の勾配は、通常の分極曲線L11の勾配、すなわち、局部腐食が発生していない状態の被評価金属材料1のカップリング電位の変化に対するカップリング電流密度の変化量の比と同じである。実際には、局部腐食部分における溶液の液性は、初期の溶液の液性とは異なるため、カップリング電流密度の電位依存性は、局部腐食が発生していない状態のものとは異なる。しかし、アノード反応による金属の溶解は電位依存性が強く、その勾配が非常に急であるため、ここでは初期の腐食が起きていない被評価金属材料1の電流密度の電位依存性を外挿する。このような分極曲線L1と通常の分極曲線L11との相違は、腐食電位のシフトのみである。すなわち、図3に示すように、局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1の分極曲線L1は、腐食電位のシフト分だけ通常の分極曲線L11が測定点P1に向かって平行移動したものである。以上のようにして作成(推定)した分極曲線L1は、推定する被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時の分極特性を高精度に示している。 上述したステップS102を行った後、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法では、ステップS102(推定ステップ)による被評価金属材料1の分極特性の推定結果をもとに、この被評価金属材料1の局部腐食性を評価する(ステップS103)。 ステップS103では、まず、上述したステップS102によって推定した被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時の分極特性を用い、局部腐食が平衡状態である際の被評価金属材料1のカップリング電位およびカップリング電流密度を推定する。具体的には、図4に示すように、局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1の分極曲線L1と、対極金属材料2の分極曲線L2との交点P11を求める。対極金属材料2は、上述したように、アノード電極としての被評価金属材料1と対をなすカソード電極の金属材料(カソード金属)である。図4に示す分極曲線L2は、この対極金属材料2の分極特性を示すものである。ステップS103では、これらの分極曲線L1,L2の交点P11から、局部腐食が平衡状態である際の被評価金属材料1のカップリング電位およびカップリング電流密度を推定する。以下、ステップS103によって推定した被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時におけるカップリング電位およびカップリング電流密度は、各々、ガルバニック電位およびガルバニック電流密度と適宜いう。 つぎに、ステップS103では、上述したように推定した被評価金属材料1のガルバニック電位およびガルバニック電流密度をもとに、被評価金属材料1の局部腐食性を評価する。局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1の分極特性は局部腐食の進行に伴って変化するため、この被評価金属材料の局所的な環境における局所腐食の平衡状態から、この被評価金属材料1の腐食量および腐食速度等の局部腐食性を推定して評価することが必要となる。具体的には、推定したガルバニック電流密度を、ファラデーの法則によって被評価金属材料1の腐食量に換算する。また、被評価金属材料1のカップリング電位と局部腐食の程度(例えば腐食深さ、腐食頻度、腐食速度等)とを定量的に予め調べておく。ステップS103では、推定したガルバニック電位を、予め調査した被評価金属材料1のカップリング電位と局部腐食の程度との関係に基づいて、被評価金属材料1の局部腐食の程度に換算する。このようにして得られた被評価金属材料1の局部腐食による腐食量と腐食速度等の局部腐食の程度とを、対極金属材料2に対する被評価金属材料1の局部腐食性として評価する。 ここで、被評価金属材料1の通常の分極曲線L11(図3参照)は、バルク溶液に接した無垢な金属表面の電気化学特性のみを表している。このような通常の分極曲線L11によって表される電気化学特性は、腐食孔内の溶液に接した腐食状態の金属の電気化学特性と異なる。したがって、この通常の分極曲線L11と、被評価金属材料1と対をなすカソード金属の分極曲線(図4に示す対極金属材料2の分極曲線L2)との交点からカップリング電位および腐食速度に対応するカップリング電流密度を推定しても、得られる推定結果の精度は、被評価金属材料1の実際の腐食量に対して低い。 これに対し、上述したステップS102によって推定した被評価金属材料1の分極特性を用いることにより、被評価金属材料1の局部腐食による分極特性の電位シフトおよびカップリング電流密度を正確に推定することが可能となる。この結果、ステップS103では、被評価金属材料1の分極曲線L1と対極金属材料2の分極曲線L2との交点P11(図4参照)から、ガルバニック電位およびガルバニック電流密度を高精度に推定することができる。これらのガルバニック電位およびガルバニック電流密度の推定結果を用いることにより、上述した対極金属材料2に対する被評価金属材料1の局部腐食性を高精度に評価することができる。 また、ステップS103では、上述したステップS102によって推定した被評価金属材料1の分極特性を、この被評価金属材料1と同被評価金属材料1を浸漬する腐食液12との界面の境界条件として用い、この被評価金属材料1の腐食速度および腐食量を算出する。具体的には、境界要素法等の数値シミュレーションによって被評価金属材料1の異種金属接触腐食をシミュレーションする際、ステップS102によって推定した被評価金属材料1の分極特性を、この被評価金属材料1と腐食液12との界面の境界条件として用いる。 このようなシミュレーションでは、被評価金属材料1を浸漬した腐食液12中の物質移動の支配方程式を、この被評価金属材料1と腐食液12との界面あるいは腐食液12と気相との界面の境界条件として被評価金属材料1の分極特性の推定結果を与えて計算する。これにより、局部腐食が平衡状態である際の被評価金属材料1の表面におけるガルバニック電位およびガルバニック電流密度を得ることができる。この結果、被評価金属材料1の局部腐食性の高精度なシミュレーション結果を得ることができる。例えば、シミュレーション結果から得られたガルバニック電流密度を、ファラデーの法則によって被評価金属材料1の腐食量に換算することができる。また、シミュレーション結果から得られたガルバニック電位を、予め調査した被評価金属材料1のカップリング電位と局部腐食の程度との関係に基づいて、被評価金属材料1の局部腐食の程度に換算することができる。ステップS103では、このようにして得られた被評価金属材料1の局部腐食による腐食量と腐食速度等の局部腐食の程度とを、対極金属材料2に対する被評価金属材料1の局部腐食性として評価する。この結果、被評価金属材料1の局部腐食性の高精度な評価結果を得ることができる。 上述したステップS103による被評価金属材料1の局部腐食性の評価結果を用いることにより、対極金属材料2と直接的または間接的に接触する被評価金属材料1の腐食寿命を高精度に推定することができる。また、この局部腐食性の評価結果を用いることにより、被評価金属材料1の防錆設計を高精度に行うことができる。 一方、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法では、局部腐食が発生した状態である被評価金属材料1の分極特性の勾配をより詳細に決定する場合、互い異種の各金属材料の面積比を変えてカップリング電位およびカップリング電流密度の測定を行う。この場合、図1に示したステップS101では、互いに異種の各金属材料の面積比、すなわち、被評価金属材料1と対極金属材料2との面積比を変えて、局部腐食が発生した状態の被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位を面積比別に測定する。 被評価金属材料1と対極金属材料2との面積比が異なる場合、被評価金属材料1が対極金属材料2によって分極される程度が異なるので、カップリング電位の測定値が変化し、これに伴い、カップリング電流密度の測定値が変化する。このステップS101では、被評価金属材料1と対極金属材料2との異なる複数の面積比についてガルバニック試験を各々行う。これにより、被評価金属材料1と対極金属材料2との面積比別に異なる複数組のカップリング電流密度およびカップリング電位の各測定値が得られる。 その後、このステップS101に続くステップS102では、上述したステップS101によって面積比別に測定した複数組のカップリング電流密度およびカップリング電位の測定値を直線近似する。これにより、これら複数組のカップリング電流密度およびカップリング電位の関係を示す勾配を導出して、局部腐食が平衡状態の際における被評価金属材料1の分極特性を推定する。以下、このステップS102について詳細に説明する。 図5は、本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法による被評価金属材料の分極特性推定の別例を説明するための図である。アノード電極としての被評価金属材料1に金属腐食(具体的には局部腐食)が発生した際、この被評価金属材料1は、腐食液中においてアノード溶解する。このアノード溶解における被評価金属材料1のカップリング電流密度およびカップリング電位の関係は、多くの場合、Buttler-Volmerの関係によって表される。このような関係にあるカップリング電位およびカップリング電流密度、すなわち、上述した面積比別の複数組のカップリング電位およびカップリング電流密度の各測定値に対し、カップリング電位とカップリング電流密度の対数とを直線近似する演算処理を行う。これにより、上述した複数組のカップリング電流密度およびカップリング電位の関係を示す勾配を導出する。この勾配は、図5に示す相関線L3のカップリング電位とカップリング電流密度の対数との勾配によって表される。 図5に示す相関線L3は、上述した複数組のカップリング電流密度の対数およびカップリング電位の各測定値を直線近似して得られる相関線である。このような相関線L3によって示されるカップリング電位とカップリング電流密度との関係を用いることにより、通常の分極曲線L11のカップリング電位とカップリング電流密度の対数との勾配を外挿して用いることなく、局部腐食が平衡状態の際における被評価金属材料1の分極特性を推定することができる。すなわち、相関線L3は、推定する被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時の分極特性を高精度に示している。この相関線L3によって示される被評価金属材料1の分極特性の推定結果は、上述したステップS103において被評価金属材料1の局部腐食性の評価に用いられる。(実施例1) つぎに、本発明の実施例1について説明する。実施例1では、図2に示す被評価金属材料1としてアルミニウム合金を用い、対極金属材料2として軟鋼を用いた。これらのアルミニウム合金および軟鋼は、面積が1[cm2]の電極の態様にし、互いに対向するようにガルバニック腐食測定装置10に設置して、腐食環境をなす腐食液12としての5[%]濃度の塩化ナトリウム水溶液(NaCl水溶液)中に浸漬した。この際、アルミニウム合金と軟鋼との電極間距離は、70[mm]とした。実施例1において、被評価金属材料1としてのアルミニウム合金は、単独で溶液に浸漬させた時に対極金属材料2よりも電位が卑な金属材料であり、アノード電極となる。すなわち、対極金属材料2としての軟鋼は、単独で溶液に浸漬させた時に被評価金属材料1よりも電位が貴な金属材料であり、カソード電極となる。 実施例1では、上述した条件の下、アルミニウム合金と軟鋼とをNaCl水溶液中において電気的に短絡させ、これにより、被評価金属材料1としてのアルミニウム合金に粒界腐食を発生させるガルバニック腐食試験を行った。このガルバニック腐食試験においては、上述したアルミニウム合金と軟鋼とを無抵抗電流計13に接続し、この無抵抗電流計13により、粒界腐食が発生した状態におけるアルミニウム合金のカップリング電流密度を、また、アルミニウム合金の表面近傍にルギン毛細管を設置し、塩橋14(図2参照)を介して参照電極3と接続することでカップリング電位を各々測定した。この際、アルミニウム合金のカップリング電位およびカップリング電流密度の各測定時間は、各々、120[hr]とした。また、カップリング電位は、参照電極3としての飽和カロメル電極を用いて測定した。 図6は、本発明の実施例1における局部腐食が発生した状態の被評価金属材料に対するカップリング電流密度の測定結果を示す図である。図7は、本発明の実施例1における局部腐食が発生した状態の被評価金属材料に対するカップリング電位の測定結果を示す図である。図7に示すように、カップリング電位の測定結果から、測定時間が80[hr]以上である測定期間において、カップリング電位が安定する傾向がみられた。このため、実施例1では、図6に示すように経時変化したカップリング電流密度の測定結果のうち、測定時間が80〜120[hr]である測定期間に連続的に測定したカップリング電流密度の平均値を、アルミニウム合金のカップリング電流密度の代表値として求めた。また、図7に示すように経時変化したカップリング電位の測定結果のうち、上記カップリング電流密度の場合と同じ測定期間(80〜120[hr])に連続的に測定したカップリング電位の平均値を、アルミニウム合金のカップリング電位の代表値として求めた。 つぎに、実施例1では、上述したように測定したカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値を用い、局部腐食(具体的には粒界腐食)が平衡状態の際におけるアルミニウム合金の分極特性を推定した。 図8は、本発明の実施例1における被評価金属材料の局部腐食平衡状態時の分極特性を推定した結果を示す図である。実施例1では、図8に示すように、アルミニウム合金のカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値を示す測定点P1から、同アルミニウム合金の通常の分極曲線(例えば図3に示した通常の分極曲線L11)と同じ勾配を外挿する。これにより、図8に示す分極曲線L1、すなわち、局部腐食が平衡状態の際におけるアルミニウム合金の分極曲線を推定する。この分極曲線L1は、上述した図3に示したように、このアルミニウム合金の通常の分極曲線L11を卑な電位側へシフトさせた曲線となっている。実施例1では、このような分極曲線L1によって示されるカップリング電位およびカップリング電流密度の関係を、被評価金属材料1であるアルミニウム合金の局部腐食平衡状態時の分極特性として推定した。 続いて、実施例1では、上述したように推定した分極特性を用い、アルミニウム合金に発生した粒界腐食が平衡状態である際の同アルミニウム合金のガルバニック電位を推定した。図9は、本発明の実施例1における被評価金属材料のガルバニック電位の推定結果を示す図である。図9には、上述したように推定したアルミニウム合金の分極曲線L1(アノード分極曲線)と、このアルミニウムと対をなす対極金属材料2である軟鋼の分極曲線L2(カソード分極曲線)とが図示されている。また、図9には、このアルミニウム合金の通常の分極曲線L11が図示されている。 図9に示すように、実施例1では、アルミニウム合金の分極曲線L1と軟鋼の分極曲線L2との交点P11から、異種金属接触腐食による粒界腐食が平衡状態である際のアルミニウム合金のガルバニック電位は、−0.758[V]と推定された。一方、本実施例1に対する比較例では、アルミニウム合金の通常の分極曲線L11と軟鋼の分極曲線L2との交点P12から、このアルミニウム合金のガルバニック電位は、−0.648[V]と推定された。なお、上記ガルバニック電位の推定において、アルミニウム合金と軟鋼との電極間距離およびNaCl水溶液の濃度を考慮すると、溶液抵抗は無視できる。 一方、本実施例1とは別に、同じ腐食液12(NaCl水溶液)を用いて、被評価金属材料1としてのアルミニウム合金の定電位分極試験を行った。この定電位分極試験は、−0.825[V]から−0.625[V]までの電位範囲について−0.25[V]の電位間隔で実施した。また、この定電位分極試験の試験期間は96時間とした。この定電位分極試験後のアルミニウム合金試料の表面を、断面から20[mm]の長さの範囲に亘って5箇所観察し、これら5箇所の観察部分のうちの最も金属腐食が進行した部分の最大腐食深さを試験期間(96時間)によって除した。これによって算出した値を、アルミニウム合金に発生した粒界腐食の深さ方向の進展速度(以下、腐食進展速度という)[μm/hr]とした。 図10は、アルミニウム合金の分極測定試験によって得られた電位と腐食進展速度との関係を示す図である。この分極測定試験によるアルミニウム合金の電位と腐食進展速度との関係は、図10の相関線L12によって示される。すなわち、このアルミニウム合金の腐食進展速度は、電位の増加に伴って増加し、所定の電位以上の範囲においてほぼ一定となる。この腐食進展速度が一定となった状態では、アルミニウム合金の腐食は粒界腐食ではなく全面溶解となっている。 実施例1では、上述したようにアルミニウム合金のガルバニック電位を推定した後、被評価金属材料1であるアルミニウム合金の局部腐食性として、このアルミニウム合金の局部腐食平衡時における腐食進展速度を推定した。実施例1におけるアルミニウム合金の腐食進展速度の推定結果と、本実施例1の比較例におけるアルミニウム合金の腐食進展速度の推定結果とを表1に示す。また、表1には、実際に5[%]濃度のNaCl水溶液中でアルミニウム合金と軟鋼との組み合わせにおける96時間のガルバニック腐食を同アルミニウム合金に発生させ、これによって求めたアルミニウム合金の実際の平均腐食速度が、あわせて示されている。 表1に示すように、比較例では、ガルバニック電位の推定値(=−0.648[V])を用い、図10に示す相関線L12からアルミニウム合金の腐食進展速度を推定した結果、46[μm/hr]という腐食進展速度の推定値が得られた。この比較例による腐食進展速度の推定値は、アルミニウム合金の粒界腐食における実際の平均腐食速度(=16.1[μm/hr])との誤差が大きいものであった。このことから、従来の研磨ままの腐食していない金属表面を用いて測定した分極曲線(具体的には被評価金属材料1の通常の分極曲線L11)を用いても、実際のガルバニック腐食による被評価金属材料1の局部腐食の進行程度(進展程度)を精度よく推定することは困難であることが分かった。 この比較例に対し、実施例1では、ガルバニック電位の推定値(=−0.758[V])を用い、図10に示す相関線L12からアルミニウム合金の腐食進展速度を推定した結果、表1に示すように、15.3[μm/hr]という腐食進展速度の推定値が得られた。この実施例1による腐食進展速度の推定値は、表1に示す実際の平均腐食速度(=16.1[μm/hr])に極めて近いものであった。すなわち、実施例1による腐食進展速度の推定値と実際の平均腐食速度との誤差は、上述した比較例に比べ、極めて小さいものであった。このことから、本発明によって推定した分極曲線(具体的には被評価金属材料1の局部腐食平衡状態時の分極曲線L1)を用いることにより、実際のガルバニック腐食による被評価金属材料1の局部腐食の進行程度を高精度に推定できることが分かった。(実施例2) つぎに、本発明の実施例2について説明する。実施例2では、図2に示す被評価金属材料1としてのアルミニウム合金と対極金属材料2としての軟鋼との面積比(以下、Fe/Al面積比という)を「1」と「10」との2種類に変える。これら2つの異なるFe/Al面積比別に、ガルバニック腐食試験を実施して、アルミニウム合金のカップリング電流密度およびカップリング電位を各々測定した。なお、ガルバニック腐食試験において、電気化学測定を行うためのガルバニック腐食測定装置10(図2参照)の大きさには限りがある。このため、実施例2において、Fe/Al面積比が10[−]である場合のアルミニウム合金のカップリング電流密度およびカップリング電位は、直径が9.5[mm]のアルミニウム合金と直径が30[mm]の軟鋼とを用いて測定した。 また、実施例2におけるFe/Al面積比別のカップリング電流密度およびカップリング電位の各測定時間は、各々、120[hr]とした。実施例2において測定したカップリング電流密度およびカップリング電位の各代表値は、Fe/Al面積比が「1」または「10」の何れの場合においても、上述した実施例1の方法と同様に、測定時間が80〜120[hr]である測定期間について算出したカップリング電流密度の平均値またはカップリング電位の平均値とした。なお、実施例2の上記以外のガルバニック腐食試験条件および電気化学測定条件は、上述した実施例1と同じとした。 図11は、本発明の実施例2における被評価金属材料の局部腐食平衡状態時の分極特性を推定した結果を示す図である。図11において、測定点P2は、Fe/Al面積比が10[−]である場合に測定したアルミニウム合金のカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値を示す。測定点P3は、Fe/Al面積比が1[−]である場合に測定したアルミニウム合金のカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値を示す。 実施例2では、測定点P2に対応するカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値と、測定点P3に対応するカップリング電位およびカップリング電流密度の各代表値とを直線近似した。これにより、Fe/Al面積比が10[−]である場合のカップリング電位およびカップリング電流密度の関係と、Fe/Al面積比が1[−]である場合のカップリング電位およびカップリング電流密度の関係とを示す勾配を導出した。この導出した勾配は、図11に示す相関線L3のカップリング電位とカップリング電流密度との勾配によって表される。図11に示す相関線L3は、被評価金属材料1としてのアルミニウム合金の通常の分極曲線と厳密には異なるが、局部腐食発生時のアノード分極曲線は電位依存性が大きいため、ほぼ同じ傾きを有している。実施例2では、このような相関線L3に基づいて、粒界腐食が平衡状態の際におけるアルミニウム合金の分極特性を推定した。 上述したように、実施例2では、Fe/Al面積比別に異なる複数組のカップリング電位およびカップリング電流密度がアルミニウム合金について与えられれば、得られたカップリング電位とカップリング電流密度との関係を直線近似することにより、粒界腐食等の局部腐食が発生しているアルミニウム合金の局部腐食平衡状態時の分極特性を示す相関線(例えばアノード分極曲線)を推定することができる。実施例2によって推定されたアルミニウム合金のアノード分極曲線は、上述した実施例1と殆ど同じ結果になった。すなわち、実施例2によるアノード分極曲線等の相関線(例えば図11に示す相関線L3)と軟鋼のカソード分極曲線との交点からガルバニック電位を推定し、このガルバニック電位の推定値と図10に示した相関線L12とを用いて推定したアルミニウム合金の腐食進展速度は、実際に観察したアルミニウム合金の金属腐食をもとに計算した腐食速度(例えば表1に示す実際の平均腐食速度)と良く一致した。 以上、説明したように、本発明の実施の形態では、互いに異種の金属材料である被評価金属材料と対極金属材料とを腐食環境下で導通可能に接触した状態にして被評価金属材料に局部腐食を発生させ、局部腐食が発生した状態の被評価金属材料のカップリング電流密度およびカップリング電位を測定し、測定したカップリング電流密度およびカップリング電位を用いて、局部腐食が平衡状態である際の被評価金属材料の分極特性を推定し、この推定した分極特性をもとに、被評価金属材料の局部腐食性を評価している。 このため、局部腐食の進行に伴って変化する被評価金属材料の局部腐食平衡時の分極特性(例えばカップリング電位とカップリング電流密度との関係を示す分極曲線)を精度高く推定することができる。この推定した分極特性を用いることにより、被評価金属材料の局部腐食平衡状態時のガルバニック電流密度およびガルバニック電位を精度高く推定することができる。これらの推定したガルバニック電流密度およびガルバニック電位を、局部腐食を発生させた状態の被評価金属材料に関する数値シミュレーションの境界条件等、局部腐食性の演算処理に適宜用いることにより、被評価金属材料に発生する局部腐食の程度(例えば腐食深さ、腐食速度、腐食頻度等)および腐食量を精度高く推定することができる。この推定結果に基づき、腐食環境下において異種の各金属材料を導通可能に接触させた際に局部腐食を生じる被評価金属材料の局部腐食性を精度高く評価することができる。 本発明の実施の形態にかかる金属腐食性評価方法を用いることにより、対極金属材料に対する被評価金属材料の局部腐食性を精度高く評価することができる。この結果、腐食環境下における対極金属材料との直接的または間接的な接触時に局部腐食が発生する被評価金属材料について、腐食寿命の推定および防錆設計を精度高く評価することができる。さらには、対極金属材料に対する被評価金属材料の材料選定、および、対極金属材料と被評価金属材料との組み合わせ構造を含む製品設計を最適化することができる。 なお、上述した実施の形態では、互いに異種の各金属材料(被評価金属材料および対極金属材料)を接触させる腐食環境として、電解液(例えばNaCl水溶液)等の水溶液を例示していたが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明において、腐食環境は、水溶液中の環境であってもよいし、大気環境であってもよい。 また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。例えば、被評価金属材料は、上述した実施例1,2に例示したアルミニウム合金に限定されず、対極金属材料に比べて電位が卑な金属材料であればよい。また、被評価金属材料のカップリング電位の測定に用いる参照電極は、Ag/AgCl電極または飽和カロメル電極に限定されず、被評価金属材料のカップリング電位測定条件等に応じて適切に選定されたものであればよい。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。 1 被評価金属材料 2 対極金属材料 3 参照電極 10 ガルバニック腐食測定装置 11 容器 12 腐食液 13 無抵抗電流計 14 塩橋 L1,L2 分極曲線 L3,L12 相関線 L11 通常の分極曲線 P1,P2,P3 測定点 P11,P12 交点 異種の各金属材料を腐食環境下で導通可能な状態で接触させて、前記各金属材料のうちの評価対象である被評価金属材料に局部腐食を発生させ、前記局部腐食が発生した状態の前記被評価金属材料の電流密度および電位を測定する測定ステップと、 前記測定ステップによって測定した前記電流密度および前記電位を用いて、前記局部腐食の進行程度が一定の状態である平衡状態の際における前記被評価金属材料の分極特性を推定する推定ステップと、 前記推定ステップによって推定した前記分極特性をもとに、前記被評価金属材料の局部腐食性を評価する評価ステップと、 を含むことを特徴とする金属腐食性評価方法。 前記推定ステップは、前記測定ステップによって測定した前記電流密度および前記電位の測定値を示す点から、前記被評価金属材料の腐食していない状態における分極曲線と同じ勾配を外挿して、前記平衡状態の際における前記被評価金属材料の分極特性を示す分極曲線を推定することを特徴とする請求項1に記載の金属腐食性評価方法。 前記測定ステップは、前記各金属材料の面積比を変えて、前記局部腐食が発生した状態の前記被評価金属材料の電流密度および電位を前記面積比別に測定し、 前記推定ステップは、前記測定ステップによって前記面積比別に測定した複数組の前記電流密度および前記電位の測定値を直線近似することにより、前記電流密度および前記電位の関係を示す勾配を導出して、前記平衡状態の際における前記被評価金属材料の分極特性を推定することを特徴とする請求項1に記載の金属腐食性評価方法。 前記評価ステップは、前記推定ステップによって推定した前記分極特性を、前記被評価金属材料と前記被評価金属材料を浸漬する水溶液との界面の境界条件として用い、前記被評価金属材料の腐食速度および腐食量を算出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の金属腐食性評価方法。 【課題】腐食環境下において異種の各金属材料を導通可能に接触させた際に局部腐食を生じる金属材料の局部腐食性を高精度に推定して評価できること。【解決手段】異種の各金属材料を腐食環境下で導通可能に接触した状態にして、これらの各金属材料のうちの被評価金属材料に局部腐食を発生させ、局部腐食が発生した状態の被評価金属材料の電流密度および電位を測定する。測定した電流密度および電位を用いて、局部腐食が平衡状態の際における被評価金属材料の分極特性を推定し、推定した分極特性をもとに、被評価金属材料の局部腐食性を評価する。【選択図】図1


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