タイトル: | 公開特許公報(A)_チューハイ飲料 |
出願番号: | 2014086851 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12G 3/04 |
野中 真由美 JP 2015204775 公開特許公報(A) 20151119 2014086851 20140418 チューハイ飲料 サントリーホールディングス株式会社 309007911 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 竹内 茂雄 100101373 山本 修 100118902 鶴喰 寿孝 100157923 野中 真由美 C12G 3/04 20060101AFI20151023BHJP JPC12G3/04 9 OL 19 4B015 4B115 4B015LG02 4B015LH03 4B015LH04 4B015LP02 4B115LG02 4B115LH03 4B115LH04 4B115LP02 本願は、酸味に由来する刺激感が低減された、酸度の高いチューハイ、及びその製造方法に関する。 近年、酒飲料に対する消費者ニーズの多様化に伴い、多種多様な酒飲料の開発が盛んに行われている。例えば、従来品との差別化を図るため、風味に特徴を有する商品の開発が行われている。特許文献1には、レモンフレーバーを含有するアルコール飲料に、クエン酸カリウムを添加して、飲料のpHを3.0以上に調整することによって、シトラール由来の劣化臭を抑制することが開示されている。特許文献2には、総酸量、pH、及び糖分を特定の範囲に調整することによって、酸度が高くても酸味の刺激が低減された梅ワインを提供することが記載されている。特許文献3には、果実酒を特定の条件で減圧濃縮することにより、飲用又は調理用に適したアルコール分及びエキス分を有する濃縮果実酒を提供することが記載されている。特許文献4には、料理用酒類において、酒類の風味を保持し、調理効果を高めるために、特定量のクエン酸とコハク酸を添加することが記載されている。特開2007−39610特開2007−28904特開2006−174760特開2003−310204 しかし、酸度が高いチューハイは、酸味に由来する刺激感(イガイガ感)があるため、飲みにくく、多くの量を飲むことができない。酸度の高いチューハイにおいて、酸味に由来する刺激感を低減する手段は、これまで知られていない。本発明は、酸味に由来する刺激感が低減され、おいしく飲めるチューハイを提供することを目的とする。 以上の事情に鑑み、本願の発明者は、酸度の高いチューハイの製造に用いる原料に着目した。鋭意検討の結果、驚くべきことに、酸度が高いチューハイにおいて、果汁により酸度を調整することにより、酸味に由来する刺激感を低減できることを見出した。従来、果汁の酸度は製造ロットごとにバラツキがあること、果汁の配合量の増減が風味に影響する可能性があること、並びに果汁の配合量が増えると製造原価が上昇する等の理由から、チューハイ等のアルコール飲料を含む飲料一般においては、全体の酸度の調整には酸味料が用いられるのが常法であり、果汁により酸味に由来する刺激感を低減できるという発想は容易には思いつかなかった。このような知見に基づいて、本発明を完成させた。 本発明は、限定されるものではないが、以下を提供する。(1)酸味料と果汁により全体の酸度が0.5g/100ml以上に調整された、チューハイであって、果汁由来の酸度が全体の酸度の1%以上を占める、前記チューハイ。(2)全体の酸度が0.5〜1.5g/100mlに調整された、(1)のチューハイ。(3)果汁由来の酸度が、全体の酸度の1〜100%を占める、(1)又は(2)のチューハイ。(4)アルコール分が1〜12v/v%に調整された、(1)〜(3)のいずれかのチューハイ。(5)ウオツカに由来するアルコールを含有する、(1)〜(4)のいずれかのチューハイ。(6)酸味料が、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、硫酸、塩酸、フマル酸、フィチン酸、及びイタコン酸からなる群から選ばれる、(1)〜(5)のいずれかのチューハイ。(7)果汁が、レモン果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、柚子果汁、シークヮーサー果汁、ミカン果汁、グレープフルーツ果汁、イチゴ果汁、ブドウ果汁、ブルーベリー果汁、チェリー果汁、メロン果汁、キウイ果汁、スイカ果汁、ナシ果汁、モモ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、梅果汁、リンゴ果汁、マンゴー果汁、及びアセロラ果汁からなる群から選ばれる、(1)〜(6)のいずれかのチューハイ。(8)酸味料と果汁により、酸度を0.5g/100ml以上に調整することを含む、チューハイの製造方法。(9)(1)〜(7)のいずれかのチューハイを製造するための、(8)の方法。 本発明によれば、酸度が高いにも関わらず、酸味に由来する刺激感が低減され、おいしく飲めるチューハイを得ることができる。チューハイにおいて、果汁を用いて酸度を調整することによる、このような効果は知られておらず、全くの予想外であった。発明の実施をするための形態 <チューハイ> 本明細書でいうチューハイとは、一般に、スピリッツをベースに、果汁などを加え、炭酸水で割ったアルコール飲料をいう。本発明におけるチューハイは、高い酸度を有する。ここで、酸度とは、チューハイに存在する全ての酸の合計量を意味する。本発明においては、酸度の調整は、酸味料と果汁により行う。酸味料と果汁をチューハイ全体の酸度の調整に用いることによって、酸度が高いチューハイにおいて、酸味に由来する刺激感を低減することができる。酸味料は、食品添加物として認可されているものを用いることができる。酸味料として、限定されないが、例えば、クエン酸、リン酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、硫酸、塩酸、フマル酸、フィチン酸、又はイタコン酸等の酸味料を用いることができる。果汁としては、例えば、レモン果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、柚子果汁、シークヮーサー果汁、ミカン果汁、グレープフルーツ果汁、イチゴ果汁、ブドウ果汁、ブルーベリー果汁、チェリー果汁、メロン果汁、キウイ果汁、スイカ果汁、ナシ果汁、モモ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、梅果汁、リンゴ果汁、マンゴー果汁、アセロラ果汁等を用いることができる。一態様として、クエン酸とレモン果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。別の態様として、リンゴ酸とレモン果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。別の態様として、クエン酸とライム果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。別の態様として、リンゴ酸とライム果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。また別の態様として、クエン酸とグレープフルーツ果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。別の態様として、リンゴ酸とグレープフルーツ果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。更なる別の態様として、リンゴ酸と梅果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。別の態様として、クエン酸と梅果汁により、チューハイの酸度を調整することができる。チューハイの酸度の調整に果汁を用いることにより、酸味に由来する刺激感が低減されるだけでなく、チューハイにまろやかな甘みが付与されるという、更なる効果を得ることができる。このような更なる効果は全くの予想外であった。 本発明において、酸味料と果汁のチューハイにおける濃度は、調整しようとするチューハイ全体の酸度に占める果汁由来の酸度の比率を基準として設定することができる。例えば、チューハイ全体の酸度に占める果汁由来の酸度の比率は、1w/w%以上、5w/w%以上、10w/w%以上、50w/w%以上にすることができる。或いは、酸度に占める果汁由来の酸度の比率は、1〜100w/w%、2〜80w/w%、3〜70w/w%、4〜60w/w%、5〜50w/w%にすることができる。ここで、酸度に占める果汁由来の酸度の比率が1w/w%未満になると、高い酸度を有するチューハイにおいて、酸味に由来する刺激感を低減することができなくなる。 本明細書において、高い酸度とは、限定されるものではないが、例えば、チューハイ全体の酸度が0.5g/100ml以上、0.5〜1.5g/100ml、0.8〜1.2g/100ml、又は0.9〜1.1g/100mlであることをいう。ここで、酸度が0.5g/100ml以上のチューハイについては、従来技術によっては解決されていない、酸味に由来する刺激感が強いという課題が存在する。従って、本発明は、酸度が0.5g/100ml以上のチューハイに対して、効果的に適用することができる。酸度は、当業者に知られているいずれの方法によっても測定することができるが、例えば、試料20mlをホールピペットで100mlのビーカーにとり、蒸留水を加えて総量約50mlとしpHメーターの電極を液中に挿入する。液を撹拌しながら1/10N水酸化ナトリウム溶液をビュレットから滴下し、pHメーターの目盛りが7.0を示すところを終点とする。なお、滴定には自動滴定装置を用いても良い。 本明細書でいう、アルコール分とは、溶液に占めるアルコールの体積濃度の百分率(v/v%)をいう。ここで、アルコールとは、別段の記載がなければエタノール(エチルアルコール)を意味する。本発明において、チューハイのアルコール分は、いずれの範囲に設定してもよい。チューハイのアルコール分の調整には、発明の効果が奏される限り、いずれの酒類に由来するアルコールを用いてもよい。例えば、ニュートラルスピリッツ、ウオツカに由来するアルコール分、又はその組合わせを用いることができる。これに限定されないが、例えば、チューハイのアルコール分は、1〜12v/v%、1〜9v/v%、又は1〜3v/v%に調整することができる。特に、アルコール分1〜9v/v%においては、適度なアルコール感があり、嗜好性の高いチューハイとなる。アルコール分は、当業者に知られているいずれの方法を用いて測定してもよいが、本明細書において示されるアルコール分は、振動式密度計を用いて測定された値である。より詳細には、測定対象のアルコール飲料を濾過又は超音波処理することによって炭酸ガスを抜いた試料を調製し、そして、その試料を直火蒸留し、得られた留液の15℃における密度を測定し、国税庁所定分析法(平19国税庁訓令第6号、平成19年6月22日改訂)の付表である「第2表 アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」を用いて換算することによりアルコール分を求めることができる。また、1.0v/v%未満のアルコール分は、国税庁所定分析法3−4(アルコール分)に記載の「B)ガスクロマトグラフ分析法」を用いることによって測定することができる。 本発明においては、糖類をチューハイに配合してもよい。限定されないが、例えば、糖類として、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類、及びそれ以上の構成糖からなるオリゴ糖類、及び多糖類が挙げられる。単糖類として、グルコース、フルクトース、ガラクトース、キシロース、マンノース、アラビノース、及び、糖アルコール:ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、ラクチトール等が挙げられる。二糖類として、果糖、ショ糖、乳糖、マルトース、トレハロース等を使用することができる。本発明のチューハイにおいて、糖類の濃度は、例えば、0〜30w/v%、0〜25w/v%、0〜15w/v%に調整することができる。糖質の濃度は、当業者に知られているいずれの方法によって測定してもよい。限定されないが、例えば、飲料全体の重量からタンパク質、脂質、食物繊維、灰分、アルコール分、及び水分の量を差し引くことによって算出することができる。前記タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、及び水分の量は、栄養表示基準に掲げる方法により測定することができる。具体的には、タンパク質量は、窒素定量換算法により測定することができる。脂質量は、エーテル抽出法、クロロホルム・メタノール混液抽出法、ゲルベル法、酸分解法、又はレーゼゴットリーブ法により測定することができる。食物繊維の量は、高速液体クロマトグラフ法又は硫酸添加灰化法で測定することができる。水分量は、カールフィッシャー法、乾燥助剤法、減圧加熱乾燥法、常圧加熱乾燥法、又はプラスチックフィルム法で測定することができる。これらの測定方法は、当業者間で一般的に知られている。 本発明においては、本発明の効果が奏される限り、アルコール飲料の成分として一般的に使用されているその他の成分を用いることができる。例えば、これに限定されるものではないが、果汁、高甘味度甘味料、炭酸ガス、香料、ビタミンC、色素、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、及び品質安定化剤等を用いることができる。 本明細書でいう、酸味に由来する刺激感とは、舌がピリピリとするような痛みや苦味、渋みを伴う刺激をいう。酸味に由来する刺激感の強さは、熟練した専門のテイスターによる官能評価によって確認することができる。 <容器詰めチューハイ> 本発明のチューハイは、例えば、容器に充填して容器詰めとすることが好ましい。容器詰めにすると、酸素との接触を極力防ぐことができるため保存の面で好ましく、また輸送の面でも好ましい。容器の形態は何ら制限されず、プラスチックを主成分とする成形容器、アルミ缶等の金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと積層されたラミネート紙容器、及びガラス瓶等の通常の形態で提供することができる。 本発明について具体例を用いて説明する。以下の具体例は、本発明の理解を容易にすることを目的とするものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。 [試験例1] チューハイの風味における、果汁の影響について検討した。表1の配合表に従って原料を配合し、最後に20℃にて1.8kgf/cm2になるように炭酸ガスを注入し、チューハイを製造した。チューハイの酸度を0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.5g/100mlに変化させた。酸度は、酸味料と果汁により、調整した。酸味料としてクエン酸、果汁として濃縮レモン果汁(酸度31.5g/100g)を用いた。酸度の調整において、濃縮レモン果汁の酸度が、チューハイ全体の酸度に占める比率を、0、1、5、10、50、100%に変化させた。ニュートラルスピリッツ(アルコール分95v/v%)を用い、チューハイのアルコール分を2v/v%に調整した。 上記のように製造したチューハイに関し、官能試験を実施した。酸味に由来する刺激感(イガイガ感)について、4人の熟練した専門のテイスターが5段階で評価した(3点以上を合格とした)。 5:酸味に由来する刺激感がなく、非常においしく飲める 4:酸味に由来する刺激感がなく、おいしく飲める 3:酸味に由来する刺激感をやや感じるが、飲める 2:酸味に由来する刺激感があり、飲みづらい 1:酸味に由来する刺激感を非常に強く感じ、飲み進めることが困難である 評価の平均値を算出し、小数点第1値を四捨五入した。結果を表2に示す。 チューハイの酸度が高くなるにつれて、酸味に由来する刺激感が強く感じられるようになる傾向があった。酸度の調整に濃縮レモン果汁を使用しなかった場合(0%)、酸度0.9g/100ml以上において、酸味に由来する刺激感が明らかに強くなった。 一方、酸度の調整に濃縮レモン果汁を用いることにより、酸味に由来する刺激感が低減することが示された。その効果は、チューハイ全体の酸度に占める濃縮レモン果汁の酸度の比率が1%以上から認められた。更に、酸度に占める濃縮レモン果汁の酸度の比率を5%以上にした場合、酸度1.0g/100ml以上のチューハイにおいても、酸味に由来する刺激感を低減させ、おいしく飲むことができた。特に、酸度に占める濃縮レモン果汁の酸度の比率を5〜50%にした場合に、酸味に由来する刺激感が効果的に低減され、おいしく飲むことができた。 次に、酸味に由来する刺激感だけでなく、チューハイを飲んだ時に感じられる風味全体について、評価を行った。熟練した4人の専門のテイスターがチューハイを飲用し、風味全体について協議し、コメントした。 チューハイ全体の酸度の調整に濃縮レモン果汁を用いなかった場合(0%)、最も酸度が低い0.5g/100mlから酸味に由来する刺激感が感じられた。酸度が高くなるにつれて、その傾向が強くなり、酸度0.9〜1.0g/100mlではアルコールの刺激と相まって酸味が増強され、かつ酸味による苦みまで感じられるようになった。更に、酸度が1.1g/100ml以上になると、口がしびれるほどに強い刺激になった。 チューハイ全体の酸度の調整に濃縮レモン果汁を用いた場合、酸度に占める濃縮レモン果汁に由来する酸度の比率を1%にした場合から酸味に由来する刺激感が低減される傾向があった。 濃縮レモン果汁に由来する酸度の比率が5%以上になると、酸味に由来する風味がより効果的に低減されることに加え、風味全体にまろやかな甘みが出ることが示された。濃縮レモン果汁に由来する酸度の比率を10%にした場合、酸度1.3g/100ml以上においても、酸味に由来する刺激感が低減され、かつ試験した全範囲において、全体の風味について良好な評価が得られた。濃縮レモン果汁に由来する酸度の比率が50%になると、酸度1.5g/100mlを除き、全体の風味について良好な評価が得られた。濃縮レモン果汁に由来する酸度の比率が100%になると、酸度1.3g/100ml以上を除き、全体の風味について良好な評価が得られた。 以上のことから、酸度の調整に濃縮レモン果汁を使用することにより、酸味に由来する刺激感が低減されるだけでなく、風味全体にまろやかな甘みを出せるという更なる効果が得られることが示された。また、チューハイ全体の風味を損なうことなく、酸味に由来する刺激感を低減するためには、濃縮レモン果汁の使用量を適切な範囲に設定することが好ましいことが明らかとなった。濃縮レモン果汁に由来する酸度の比率を10〜50%とした場合に、試験したほぼ全ての範囲において、チューハイ全体の風味を損なうことなく、酸味に由来する刺激感を低減させることができた。 [試験例2] チューハイの風味における、果汁の種類の影響について検討した。表4の配合表に従って原料を配合し、最後に20℃にて1.8kgf/cm2になるように炭酸ガスを注入し、チューハイを製造した。チューハイの酸度を0.8、1.0、1.2g/100mlに変化させた。酸度は、酸味料と果汁により、調整した。酸味料としてクエン酸、果汁として濃縮レモン果汁(酸度31.5g/100g)、濃縮ライム果汁(酸度38.0g/100g)、濃縮グレープフルーツ果汁(7.2g/100g)、濃縮梅果汁(17.5g/100g)を用いた。酸度の調整において、それぞれの濃縮果汁に由来する酸度の、チューハイ全体の酸度に占める比率を、50%にした。ニュートラルスピリッツ(アルコール分95v/v%)に由来するアルコールを用い、チューハイのアルコール分を2v/v%に調整した。 香料は、チューハイに配合する濃縮果汁に応じて変化させた。即ち、濃縮レモン果汁を配合する際にはレモン香料、濃縮ライム果汁を配合する際にはライム香料、濃縮グレープフルーツ果汁を配合する際にはグレープフルーツ香料、濃縮梅果汁を配合する際には梅香料を用いた。 上記のように製造したチューハイに関し、官能試験を実施した。酸味に由来する刺激感(イガイガ感)について、4人の熟練した専門のテイスターが6段階で評価した。 6:酸味に由来する刺激感がなく、また、まろやかな甘さを感じ非常においしく飲める 5:酸味に由来する刺激感がなく、非常においしく飲める 4:酸味に由来する刺激感がなく、おいしく飲める 3:酸味に由来する刺激感をやや感じるが、飲める 2:酸味に由来する刺激感を感じ、飲みづらい 1:酸味に由来する刺激感を非常に強く感じ、飲み進めることが困難である 評価の平均値を算出し、四捨五入した。結果を表5に示す。 試験したチューハイはいずれも、酸味に由来する刺激感がなく、非常においしく飲めると高く評価された。特に、果汁としてグレープフルーツ果汁と梅果汁を使用した場合には、チューハイにまろやなか甘さが付与されるという、更なる効果が得られ、最高の評価が与えられた。この更なる効果は、全くの予想外であった。また、試験した範囲の酸度の違いは、結果に影響しなかった。 次に、酸味に由来する刺激感だけでなく、チューハイを飲んだ時に感じられるの風味全体について、評価を行った。熟練した4人の専門のテイスターがチューハイを飲用し、風味全体について協議し、コメントした。 チューハイの風味全体について評価したところ、グレープフルーツ果汁や梅果汁を用いた場合だけでなく、レモン果汁やライム果汁を用いてチューハイの酸度を調整した場合においても、酸味に由来する刺激感の低減に加えて、チューハイにまろやかな甘みが付与されると評価された。しかし、グレープフルーツ果汁や梅果汁を用いてチューハイの酸度を調整したことによる効果は、レモン果汁やライム果汁を用いた場合の効果を上回ると評価された。 [試験例3] 配合する酒類による、チューハイの風味への影響について検討した。表7の配合表に従って原料を配合し、最後に20℃にて1.8kgf/cm2になるように炭酸ガスを注入し、チューハイを製造した。チューハイの酸度を0.5〜1.5g/100mlに変化させた。酸度は、酸味料と果汁により、調整した。酸味料としてクエン酸、果汁として濃縮レモン果汁(酸度31.5g/100g)を用いた。酸度の調整において、濃縮レモン果汁に由来する酸度の、チューハイ全体の酸度に占める比率を、50%にした。ウオツカ(アルコール分40v/v%)に由来するアルコールを用い、チューハイのアルコール分を2v/v%に調整した。 ウオツカに替えてニュートラルスピリッツを配合したチューハイを、試験例2の表4に従って作成した。 上記のように製造したチューハイに関し、試験例2に示された条件に従って、官能試験を実施した。評価の平均値を算出し、四捨五入した。結果を表8に示す。 アルコール分の調整にニュートラルスピリッツ由来のアルコールを用いた場合、試験した酸度の全範囲において、酸味に由来する刺激感を感じることなく、おいしく飲むことが確認できた。特に、全体の酸度が0.5〜1.3g/100mlにおいては、非常においしく飲めることが示された。 一方、アルコール分の調整にウオツカ由来のアルコールを用いた場合、試験した酸度の全範囲において、酸味に由来する刺激感を感じることなく、非常においしく飲めることが確認できた。が低減され、飲用性がよくなることが示された。酸度0.5〜1.3g/100mlの範囲において、酸味に由来する刺激感がなく、おいしく飲めることが分かった。特に、全体の酸度が0.5〜1.3g/100mlの範囲において、酸味に由来する刺激感を感じないことに加えまろやかな甘みが感じられ、非常においしく飲めることが分かった。 次に、酸味に由来する刺激感だけでなく、チューハイを飲んだ時に感じられるの風味全体について、評価を行った。試験例2に示された条件に従って、風味全体についてコメントした。 アルコール分の調整にニュートラルスピリッツ由来のアルコールを用いた場合、酸度を1.5g/100mlに調整した場合を除き、酸味に由来する風味が感じられるものの、チューハイにまろやかな甘みが付与されていると評価された。 一方、アルコール分の調整にウオツカ由来のアルコールを用いた場合、酸度1.5g/100ml以外では、酸味に由来する風味に関するコメントは出てこなかった。そして、試験した全範囲において、ニュートラルスピリッツ由来のアルコールを用いる場合に比べて、より味わいのやわらかさ、及びまろやかな甘みが付与されていると評価された。 このことから、酸味に由来する刺激感の低減において、ニュートラルスピリッツに由来するアルコール比して、ウオツカに由来するアルコールが顕著に優れた効果を発揮することが確認できる。そして、ウオツカに由来するアルコールを用いることによって、チューハイの全体の味わいがやわらかくなる、まろやな甘みが出るといった、予期しない更なる効果が得られることが分かった。 以上の結果より、チューハイ全体の酸度の調整に果汁を用いることは、チューハイの酸味に由来する刺激感を低減することにおいて非常に効果的であることが示された。そして、チューハイにまろやかな甘みを付与するという、全体の酸度の調整に果汁を用いることによる、予想外の別の効果が見いだされた。これらの効果は、チューハイのアルコールとして、ニュートラルスピリッツ由来のアルコール又はウオッカ由来のアルコールのいずれを用いた場合にも発揮されることが示された。しかし、果汁とウオッカ由来のアルコールの組み合わせによって、味わいのやわらかさがチューハイに付与されるという、更なる予想外の効果が得られることが分かった。 酸味料と果汁により全体の酸度が0.5g/100ml以上に調整された、チューハイであって、果汁由来の酸度が全体の酸度の1%以上を占める、前記チューハイ。 全体の酸度が0.5〜1.5g/100mlに調整された、請求項1に記載のチューハイ。 果汁由来の酸度が、全体の酸度の1〜100%を占める、請求項1又は2に記載のチューハイ。 アルコール分が1〜12v/v%に調整された、請求項1〜3のいずれか1項に記載のチューハイ。 ウオツカに由来するアルコールを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のチューハイ。 酸味料が、クエン酸、リンゴ酸、リン酸、酒石酸、シュウ酸、グルコン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、硫酸、塩酸、フマル酸、フィチン酸、及びイタコン酸からなる群から選ばれる、請求項1〜5のいずれか1項に記載のチューハイ。 果汁が、レモン果汁、オレンジ果汁、ライム果汁、柚子果汁、シークヮーサー果汁、ミカン果汁、グレープフルーツ果汁、イチゴ果汁、ブドウ果汁、ブルーベリー果汁、チェリー果汁、メロン果汁、キウイ果汁、スイカ果汁、ナシ果汁、モモ果汁、バナナ果汁、パイナップル果汁、梅果汁、リンゴ果汁、マンゴー果汁、及びアセロラ果汁からなる群から選ばれる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のチューハイ。 酸味料と果汁により、酸度を0.5g/100ml以上に調整することを含む、チューハイの製造方法。 請求項1〜7のいずれか1項に記載のチューハイを製造するための、請求項8に記載の方法。 【課題】酸味に由来する刺激感が低減された、酸度の高い、チューハイ及びその製造方法を提供する。【解決手段】酸味料と果汁により全体の酸度が0.5g/100ml以上に調整された、チューハイであって、果汁由来の酸度が全体の酸度の1%以上を占める、前記チューハイを提供する。【選択図】なし