生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_樹脂成形品の結晶化度測定方法
出願番号:2014086461
年次:2015
IPC分類:G01N 21/3563


特許情報キャッシュ

高橋 亮太 尾関 康宏 JP 2015004665 公開特許公報(A) 20150108 2014086461 20140418 樹脂成形品の結晶化度測定方法 ポリプラスチックス株式会社 390006323 三好 秀和 100083806 岩▲崎▼ 幸邦 100100712 高橋 俊一 100101247 伊藤 正和 100095500 高松 俊雄 100098327 高橋 亮太 尾関 康宏 JP 2013106964 20130521 G01N 21/3563 20140101AFI20141205BHJP JPG01N21/35 103 7 1 OL 21 2G059 2G059AA05 2G059BB10 2G059EE01 2G059EE12 2G059HH01 2G059JJ01 2G059MM01 本発明は、樹脂成形品の結晶化度測定方法に関し、より詳細には、フーリエ変換型赤外分光光度計を用いた樹脂成形品の結晶化度測定方法に関する。 樹脂成形品の結晶化度は、その製造条件、物性の分析又は制御の上で重要なファクターである。例えば、延伸条件(フィルム)や熱処理条件といった樹脂成形品の製造条件の選定や、機械強度、密度、耐熱性、ガスの透過性及びバリア性など、種々の製品の性能制御のために結晶化度の測定や調整が必要となる。 樹脂成形品の結晶化度を測定する方法としては、X線結晶解析、DSC、密度法、赤外分光法(透過法)、赤外分光法(ATR法)、赤外分光法(拡散反射法)及びラマン分光法などを用いた方法が知られている。これらの中で、X線結晶解析、DSC、密度法、赤外分光法(ATR法)、及び赤外分光法(拡散反射法)は、測定に際し、測定対象の樹脂成形品を所定のサイズにカッティング又は粉砕したり、加熱したり、水中に投入したり、プリズムなどの別部材を接触させたりする。そのため、例えば、生産ラインにおける製品の結晶化度の測定など、非破壊・非接触での測定が要求される場合、上記方法は採用することができない。 一方、X線結晶解析、DSC、赤外分光法(ATR法)、赤外分光法(拡散反射法)及びラマン分光法は、原理上、測定対象の樹脂成形品の表面近傍における結晶化度を測定するものである。そのため、得られる結晶化度は表層部分における結晶化度であり、肉厚方向全体の結晶化度(平均値)の測定をしたい場合、特に肉厚が厚い樹脂成形品の内部の結晶化度を非破壊にて測定したい場合には上記測定方法は採用することができない。 赤外分光法(透過法)は、測定に際し樹脂成形品を破壊することも、別部材が接触することもなく、さらに樹脂成形品を透過した赤外光を測定することから、樹脂成形品の肉厚方向全体の結晶化度(平均値)を非破壊かつ非接触で測定し得ると考えられる。赤外分光法(透過法)により実際に樹脂の結晶化度を評価した例は多々あり、例えばポリフェニレンサルファイド樹脂の薄いフィルム(肉厚12μm)に対して、赤外分光法を活用して結晶化度を測定した報告例がある(非特許文献1参照)。また、特許文献1には、ポリフェニレンサルファイド樹脂成形体サンプルの表層から削り出した20μmの肉厚の薄膜に関して、赤外分光法を活用した結晶化度の測定方法が開示されている。さらに、特許文献2には、ポリフッ化ビニリデン樹脂の肉厚20μmの薄いフィルムに関して、赤外分光法を活用した結晶化度の測定方法が開示されている。これらの赤外分光法(透過法)を活用した例では、波数領域1800cm−1以下の赤外吸収スペクトルを解析して結晶化度の算出を行っているが、その波数領域においては物質の分子構造を反映した強い吸収ピークが検出される。そのため、その波数領域の赤外線は吸収強度が大きく、試料の肉厚が厚くなると分析することが困難となり、上記の例の肉厚を超える試料については、例えば、非特許文献2や特許文献3に開示されているように、通常は、赤外分光法の中でもATR法や拡散反射法によって測定されている。非特許文献2では、ポリフェニレンサルファイド樹脂の肉厚700μmの試料に関して、拡散反射法で測定した例が報告されている。また、特許文献3では、ポリエチレンテレフタレート樹脂の肉厚75μmの厚いフィルムに関して、ATR法を活用した結晶化度の測定方法が開示されている。これらは、いずれも表面近傍における結晶化度の測定であり、肉厚方向全体の結晶化度(平均値)は、測定できていない。特開2012−233751号公報国際公開第2012/172876号公報特開平8−244111号公報JIANYONG YU, SHIGEO ASAI, and MASAO SUMITA,「Time-Resolved FTIR Study of Crystallization Behavior of Melt-Crystallized Poly(Phenylene Sulfide)」, J.MACROMOL.SCI.-PHYS.,B39(2),279-296(2000)K. C. COLE, D. NOEL, and J.-J. HECHLER, 「Crystallinity in PPS-Carbon Composites: A Study Using Diffuse Reflection FT-IR Spectroscopy and Differential Scanning Calorimetry」, Journal of Applied Polymer Science, Vol. 39, 1887-1902(1990) 本発明の目的は、厚肉の樹脂成形品であっても肉厚方向全体の結晶化度を、非破壊かつ非接触で測定することができる樹脂成形品の結晶化度測定方法、及び該結晶化度測定方法を使用した樹脂成形品(群)の製造方法を提供することにある。 本発明者らは、ポリフェニレンサルファイド樹脂(以下、「PPS樹脂」とも呼ぶ。)に代表されるポリアリーレンサルファイド樹脂(以下「PAS樹脂」とも呼ぶ)などの結晶性熱可塑性樹脂には、結晶化度を現す吸収ピークが複数存在することを見出し、結晶化度の測定に関してそれらのうち4500〜2000cm−1の波数領域に着目すれば従来の諸問題を解決できることをさらに見出した。すなわち、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。(1)結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の結晶化度測定方法であって、 フーリエ変換型赤外線分光光度計を用い、透過法により前記樹脂成形品の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルのうち、波数領域4500〜2000cm−1の範囲における赤外吸収スペクトルの測定値に基づいて前記樹脂成形品の前記肉厚部位の結晶化度を算出することを特徴とする樹脂成形品の結晶化度測定方法。(2)前記樹脂成形品の赤外吸収スペクトルを解析し、結晶部分に対応する吸収ピークと、非晶部分に対応する吸収ピークとを帰属し、結晶部分に帰属される吸収ピークと、非晶部分に帰属される吸収ピークとからそれぞれピーク強度又はピーク面積を求め、該ピーク強度又はピーク面積から結晶化度を算出することを特徴とする前記(1)に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法。(3)前記樹脂成形品の肉厚が0.025〜3mmであることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法。(4)前記樹脂成形品の樹脂成分が、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、液晶樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される1種であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法。(5)結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の製造方法であって、 前記樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。(6)前記樹脂成形品が、押出し又は延伸処理により長尺状に成形された樹脂成形品であり、前記結晶化度測定を行う工程において、前記樹脂成形品の長手方向に位置する複数箇所の結晶化度の測定を連続的に行うことを特徴とする前記(5)に記載の樹脂成形品の製造方法。(7)結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の多数を製造する樹脂成形品群の製造方法であって、 前記樹脂成形品群のうちの各樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を連続的に行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品群の製造方法。 本発明によれば、厚肉の樹脂成形品であっても肉厚方向全体の結晶化度を、非破壊かつ非接触で測定することができる樹脂成形品の結晶化度測定方法、及び該結晶化度測定方法を使用した樹脂成形品(群)の製造方法を提供することができる。実施例1において測定した、4500〜1800cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。図1において、2250〜2000cm−1の領域を拡大した図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例2において測定した、2250〜2000cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例3において測定した、2250〜2000cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。肉厚1mmの試料に関する、アニ―ル条件(温度、時間)と、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値との関係を示すプロット図である。肉厚2mmと3mmの各試料に関する、アニ―ル温度と、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値との関係を示すプロット図である。実施例4において測定した、2800〜2500cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例4における、アニール条件(温度、時間)と、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値との関係を示すプロット図である。実施例5において測定した、4500〜4000cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例5における、アニール条件(温度、時間)と、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値との関係を示すプロット図である。実施例6において測定した、140℃で2時間アニール処理後の赤外吸収スペクトルを示す図である。図11における2900〜1800cm−1の領域を拡大した図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例6における、アニール時間と、2780cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2760cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。実施例6における、アニール時間と、2576cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2542cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。実施例7において測定した、4500〜1800cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。図15において、2700〜2250cm−1の領域を拡大した図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例7における、アニール時間と、2528cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2617cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。実施例8において測定した、4500〜1800cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。図18において、2900〜2600cm−1の領域を拡大した図である。実線はアニ―ル処理前、破線はアニール処理後の試料のスペクトルを示す。実施例8における、アニール時間と、2760cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2796cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。実施例9において測定した、4500〜1800cm−1の波数領域の赤外吸収スペクトルを示す図である。図21において、2240〜2100cm−1の領域を拡大した図である。実線は金型温度80℃、破線は金型温度200℃で成形した試料のスペクトルを示す。実施例9における、金型温度と、2162cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2169cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。<樹脂成形品の結晶化度測定方法> 本発明の樹脂成形品の結晶化度測定方法は、結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の結晶化度測定方法であって、フーリエ変換型赤外線分光光度計を用い、透過法により前記樹脂成形品の前記肉厚部位の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルのうち、波数領域4500〜2000cm−1の範囲の赤外吸収スペクトルに基づいて前記樹脂成形品の結晶化度を算出することを特徴としている。なお、本明細書において、フーリエ変換型赤外線分光法は、FT−IR分光法ともいう。 本発明においては、フーリエ変換型赤外線分光光度計を用い、透過法により、測定対象の樹脂成形品に対して赤外吸収スペクトルを測定し、波数領域4500〜2000cm−1の赤外吸収スペクトルに基づいて樹脂成形品の結晶化度を算出するものである。このような波数領域4500〜2000cm−1の赤外光は、1800cm−1以下の波数領域の赤外光と比較して吸収強度が小さい。そのため、測定対象の樹脂成形品の肉厚が、従来の波数領域(1800cm−1以下)では分析不可能な程度においても、分析が困難となるほど吸収ピークが大きくなることはない。従って、透過法の利点である、測定対象の樹脂成形品に対し非接触かつ非破壊で測定を行うことができるとともに、厚肉の成形品でも測定することができる。また、測定対象の樹脂成形品の面内において、測定点を自由に選択することも可能である。さらに、赤外分光法であるが故、結晶化度以外に、樹脂肉厚、分子配向、混合物の濃度などの情報も同時取得が可能である。 一方、本発明で採用した波数領域4500〜2000cm−1の赤外光は、ピーク強度が非常に小さく検出が難しい。そのため、ATR法などの表面近傍のみを分析する方法では検出されない。一方で、上記波数領域の赤外光を透過法で検出した場合は、微小なピークとして検出されるが、結晶化度などの変動によって複雑にピーク形状が変化する。そのため、通常領域(1800cm−1以下)を測定するための薄い試料では、波数領域4500〜2000cm−1においては、結晶化度や試料形状を高精度で制御することが難しく、意図的に毎回同じ形状のピークを得ること自体が非常に困難であった。このような点に起因し、従来は、本発明に係る波数領域では、結晶領域と非晶領域に支配されるピークの帰属が成されてこなかった。しかし、例えば、mmオーダーの肉厚を有する射出成形品は、肉厚や結晶化度などピーク形状に影響を与える因子が高度に制御されたものであり、基準試料となりうる。本発明では、所定の肉厚の試料を基準に用いることで、ピーク帰属に必要な情報を得るための上記の課題を克服した。 本発明において、測定対象の樹脂成形品の樹脂成分たる結晶性熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、液晶樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などが挙げられる。特に、ポリアリーレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」とも言う。)、ポリオキシメチレン樹脂(以下、「POM樹脂」とも言う。)、液晶樹脂(以下、「LCP樹脂」とも言う。)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下、「PEEK樹脂」とも言う。)は、より好適に結晶化度を測定することができる。 本発明では、従来においては測定が困難であった、例えば0.02mm以上、0.025mm以上、0.03mm以上、0.05mm以上、0.1mm以上、0.5mm以上、1mm以上、2mm以上といった肉厚(上限は3mm)の部位を有する樹脂成形品の当該肉厚部位に対しても結晶化度の測定が可能である。すなわち、本発明においては、結晶化度を測定する樹脂成形品として肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有するものを対象としている。特に、本発明は、従来においては困難であった肉厚方向全体の結晶化度の測定が可能であるという観点から、肉厚が厚いほど本発明の真価が発揮される。 肉厚が0.02mm以上3mm以下の範囲であれば、赤外線透過率の低下により測定が困難となる問題が生じにくいが、例えば、PPS樹脂の場合は、0.02mm以上3mm以下、PBT樹脂の場合は、0.02mm以上1mm以下、POM樹脂の場合は、0.02mm以上2mm以下、LCP樹脂の場合は、0.02mm以上2mm以下、PEEK樹脂の場合は、0.02mm以上1mm以下の肉厚に調整することが好ましい。また、樹脂成形品の形状としては特に限定されず、フィルム状、平板状などが挙げられる。中でも、特にフィルムやシートといった、連続で製造される形状の場合、本発明は、連続測定により品質管理などに適用し得る点で有利である。 測定機器としては、上述の通りフーリエ変換型赤外分光光度計を用いる。フーリエ変換型赤外分光光度計としては、特に制限されず、赤外線の波数4500〜2000cm−1の領域を測定可能な、一般的なものであればよい。 本発明において、結晶化度を算出するための赤外線の波数領域は4500〜2000cm−1の領域としているが、この範囲内であれば4500〜4000cm−1の領域としてもよいし、2800〜2500cm−1や2250〜2000cm−1の領域としてもよい。すなわち、本発明者らは、PPS樹脂などの結晶性熱可塑性樹脂には結晶化度を現す吸収ピークが複数存在することを見出したのであるが、そのうち結合音や倍音の領域のバンドから結晶化度を算出する。 次いで、本発明の樹脂成形品の結晶化度測定方法における手順について説明する。 次に、得られた赤外吸収スペクトルの波数領域4500〜2000cm−1において、結晶部分の吸収ピークと、非晶部分の吸収ピークとを帰属する。それぞれの吸収ピークの帰属方法は特に限定されないが、例えば、結晶化度が高い試料と低い試料についてスペクトル測定を行い、両者の差スペクトルを計算にて求める。差スペクトル上には、結晶化度の違いによって強度や振動数が変化したピークのみが抽出されており、また、結晶由来と非晶由来のピークは、正負逆に現れることから、帰属を行うことができる。 吸収ピークを帰属した後は、結晶部分(I)及び非晶部分(I’)それぞれのピーク高さ又はピーク面積に基づき強度比(I/I’)を算出する。この強度比(I/I’)は、結晶化度の大小を示す指標となる。すなわち、この比が大きいものほど、結晶化度が大きいことを示し、試料間の比較が可能となる。 さらに必要に応じ、相対結晶化度、或いは、結晶化度を算出する。以下に、結晶化度を算出する方法の一例を示す。結晶化度を100×X(%)、結晶部由来及び非晶部由来の吸光係数をそれぞれa、b、結晶部に依存せず、かつ結晶由来のピークに重複しているピークをc、非晶部に依存せず、かつ非晶由来のピークに重複しているピークをdとすると、先ほどの強度比は、 I/I’=(a×X+d)/(b(1−X)+c) ・・・式(1)で表すことができる。ここで、d/a、b/a、c/aをD、B、Cと置くと、I/I’=(X+D)/(B(1−X)+C) ・・・式(2)となる。予め、結晶化度が既知の基準試料の実測値を当てはめることで、B、C、及びDの係数を求めることが可能である。また、基準試料の結晶化度が既知でない場合、この結晶化度を任意の値、例えば100%と仮定することで、同様に係数を決定できる。仮定に基づく係数決定においても、結晶化度が高いものほど、I/I’強度比が大きな値となるため、試料間の比較を行うことができる。 なお、上記係数は、樹脂中に含まれるその他成分によって変動しうる。 また、前記ピーク強度比の算出に用いるピーク高さ又はピーク面積は、測定機器(フーリエ変換型赤外分光光度計)の標準的計測機能として備わっているものを使用して求めることができる。<樹脂成形品(群)の製造方法> 本発明の樹脂成形品の製造方法は、結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の製造方法であって、前記樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、既述の本発明の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を行う工程を含むことを特徴としている。 本発明の樹脂成形品の製造方法においては、既述の本発明の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を行う工程を含むが、既述の通り、当該工程では、樹脂成形品に対し非接触かつ非破壊で結晶化度の測定を行うことができる。従って、樹脂成形品に傷すらも発生させることがないため、本発明の製造方法により得られた樹脂成形品は、結晶化度の測定を行いながらも、そのままの状態で市場に出荷することが可能である。つまり、結晶化度の測定を行った製品そのものを市場に出荷することが可能であり、結晶化度に基づく品質管理を容易に行うことができる。なお、樹脂成形品における結晶化度の測定箇所は一箇所としても複数箇所としてもよい。 本発明の製造方法により製造する樹脂成形品の形状としては特に制限はないが、例えば、押出し又は延伸処理により長尺状に成形された樹脂成形品の場合、結晶化度測定を行う工程において、樹脂成形品の長手方向に位置する複数箇所の結晶化度の測定を連続的に行うことができる。例えば、結晶化度の測定機器(フーリエ変換型赤外分光光度計)に対して当該長尺状の樹脂成形品をその長手方向に相対移動させ、所定間隔ごとに連続的に結晶化度を測定することで、複数箇所の結晶化度の測定を効率良く短時間で行うことができる。また、長尺状の樹脂成形品の場合は切断して複数の樹脂成形品とすることができるが、その場合、当該複数の樹脂成形品のいずれも結晶化度が測定されるように、切断前の長尺状の段階で結晶化度を測定する位置を設定することが好ましい。 なお、長尺状の樹脂成形品は、例えば、数十センチ〜数十メートルの長尺状とすることができ、必要以上に長い場合には捲回してロール状とすることができる。また、「連続的に」とは、既述の通りである。 一方、多数の樹脂成形品を製造するための本発明の樹脂成形品群の製造方法は、結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の多数を製造する樹脂成形品群の製造方法であって、前記樹脂成形品群のうちの各樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、既述の本発明の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を連続的に行う工程を含むことを特徴としている。 本発明の樹脂成形品群の製造方法は、樹脂成形品を多数製造する場合において、成形後の各樹脂成形品の結晶化度の測定に対して本発明の結晶化度測定方法を使用するものである。既述の通り、本発明の方法においては、樹脂成形品に対し非接触かつ非破壊で結晶化度の測定を行うことができる。従って、樹脂成形品に傷すらも発生させることがないため、本発明の製造方法により得られた樹脂成形品は、結晶化度の測定を行いながらも、そのままの状態で市場に出荷することが可能である。従って、例えば生産ラインにおいて、最終製品として出荷する製品の製造工程において、市場に出荷する樹脂成形品自体の結晶化度をオンラインで連続的に行うことができる。また、例えば、結晶化度をオンラインでモニターすることで品質管理を容易に行うことができる。なお、各樹脂成形品における結晶化度の測定箇所は一箇所としても複数箇所としてもよい。また、「連続的に」とは、既述の通りである。 以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 まず、実施例では、結晶性熱可塑性樹脂として、以下の材料を使用した。 実施例1〜5:ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS樹脂)(ポリプラスチックス(株)製、無充填系PPS樹脂組成物、「ジュラファイド(登録商標)0220A9」) 実施例6:ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)(ウィンテックポリマー(株)製、0.5%充填系PBT樹脂組成物、「ジュラネックス(登録商標)CS7000NY」)を用いた。 実施例7:ポリオキシメチレン樹脂(POM樹脂)(ポリプラスチックス(株)製、無充填系POM樹脂組成物、「ジュラコン(登録商標)M90−44」) 実施例8:液晶樹脂(LCP樹脂)(芳香族ポリエステル液晶樹脂1) ※芳香族ポリエステル液晶樹脂1の合成方法は後記の通りである。 実施例9:ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK樹脂)(ダイセル・エボニック(株)製、無充填系PEEK樹脂組成物、「ベスタキープ(登録商標)2000G」) (芳香族ポリエステル液晶樹脂1の合成方法) 実施例8で用いた芳香族ポリエステル液晶樹脂1は、次のようにして製造されたものである。 攪拌機、留出管、ガス導入管、排出孔等を備えた反応器を用い、p-ヒドロキシ安息香酸345質量部(73mol%)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸175質量部(27mol%)、酢酸カリウム0.02質量部、及び無水酢酸350質量部を反応器内に仕込み、この反応器内を十分に窒素で置換した後、常圧下で150℃まで温度を上げ、攪拌を開始した。150℃で30分攪拌し、更に徐々に温度を上昇させ、副生する酢酸を留去した。温度が300℃に達したところで徐々に反応器内を減圧し、5Torr(即ち、665Pa)の圧力で1時間攪拌を続け、目標の攪拌トルクに達した時点で、反応器下部の排出孔を開け、窒素圧を使って生成した樹脂をストランド状に押し出して取り出した。取り出されたストランドをペレタイザーで粒子状に成形した。この全芳香族ポリエステル液晶樹脂の融点は280℃、300℃での溶融粘度は50.1Pa・sであった。[実施例1] シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形により、ポリフェニレンサルファイド樹脂の100mm×100mm×1mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚1mm)の平板状成形品を2枚準備し、そのうち1枚はアニール処理を行わずそのまま用い、もう1枚については、200℃で2時間のアニール処理を行った。すなわち、2枚の成形品は、それぞれ、(1)アニール前の成形品及び(2)200℃で2時間のアニール処理をした成形品である。 上記(1)及び(2)の成形品に対し、フーリエ変換型赤外分光光度計((株)パーキンエルマージャパン製、spectrum one)を用い、透過法により赤外吸収スペクトルを測定した。上記(1)アニール前の成形品について得られた赤外吸収スペクトルを図1に示す。図1は、波数4500〜1800cm−1の領域のスペクトルを示しており、図1において、2250〜2000cm−1の領域を拡大し、上記(1)及び(2)の2枚の成形品について得られた赤外吸収スペクトルを示したのが図2である。図2において、「結晶1」(2123cm−1)、「非晶1」(2193cm−1)として示したのは、それぞれ成形品の結晶部分及び非晶部分に帰属した各吸収ピークである。なお、結晶部分及び非晶部分の帰属は、アニール前の成形品のスペクトル及びアニ―ル処理をした成形品のスペクトルの差スペクトルを計算し、結晶部、非晶部に支配されるピークを抽出することで行った。[実施例2] シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形により、ポリフェニレンサルファイド樹脂の100mm×100mm×2mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚2mm)の平板状成形品を用いたこと以外は実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルの2250〜2000cm−1の波数領域を図3に示す。[実施例3] シリンダー温度320℃、金型温度150℃の条件で射出成形により、ポリフェニレンサルファイド樹脂の100mm×100mm×3mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚3mm)の平板状成形品を用いたこと以外は実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。得られたスペクトルの2250〜2000cm−1の領域を図4に示す。<アニール条件に対する結晶化度の評価> 以上の実施例1〜3において、さらにアニール温度及びアニール時間をそれぞれ変えて得られた成形品に対して各実施例と同様にして赤外吸収スペクトルを測定した。具体的には、肉厚1mmの成形品については、アニール温度は150℃、170℃、及び200℃の3つの温度とし、各アニール温度におけるアニール時間は0.5時間、1時間、及び2時間とした。これら9種及び未アニールのものを含めて計10種の成形品に対し赤外吸収スペクトルを測定し、得られたスペクトルにおいて、結晶部分及び非晶部分の吸収ピークを帰属し、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比(2123cm−1/2193cm−1)の値を算出した。算出結果を表1及び図5に示す。図5は、アニール条件(温度、時間)と、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値との関係を示すプロット図である。 また、肉厚2mm及び3mmの成形品については、アニール温度は170℃及び200℃の2つの温度とし、各アニール温度におけるアニール時間は2時間とした。上記と同様に算出した、肉厚2mm及び3mmの成形品の非晶部分と結晶部分の吸収ピーク強度比(2123cm−1/2193cm−1)の値を、表2及び図6に示す。 表1、2(又は図5、図6)より、アニール温度を高くするか又はアニール時間を長くすると、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値が大きくなることが分かる。結晶性樹脂に対するアニール処理において、アニール温度を高くするか又はアニール時間を長くすると結晶化度が向上するのは周知事実であり、上記評価はその周知事実の通りとなっている。すなわち、上記のように帰属した吸収ピーク強度は、結晶化度と相関関係があるものと推察される。<結晶化度の算出> 肉厚1mmの成形品について、水中置換法(JIS Z8807固体比重測定方法に準拠)にて成形品の密度を測定し、以下の式(3)により、結晶化度を算出した。結晶化度(%)=(成形品密度−非晶部密度)÷(結晶部密度−非晶部密度)×100 ・・・式(3)なお、結晶部密度及び非晶部密度は、以下の文献値を用いた。結晶部密度: 1.43g/cm3非結晶部密度: 1.32g/cm3※ 文献1: B. J. Tabor, E. P. Margre and J. Boon, Europ. Polym. J., 7, 1127(1971) 文献2: P. P. Huo and P. Cebe, Polym. Mater. Sci. Eng., 67, 472(1992) 結晶化度の算出結果を、表1に示す。 上述した肉厚1mmの平板状成形品についての密度法による結晶化度データと、FT−IRの強度比(2123cm−1/2193cm−1)をプロットし、上述した、ピーク強度比と結晶化度の関係式(式(2))I/I’=(X+D)/(B(1−X)+C)を用いてフィッティング(回帰分析)することにより、各係数B、C、Dを算出した。B=0.939C=0.135D=0.678従って、結晶化度100×X(%)におけるXは、式(2)に各係数を代入して、X=(1.074×(I/I’)−0.678)/(1+0.939×(I/I’))により算出することが可能である。 さらに、肉厚2mm及び3mmの成形品について、FT−IR吸収ピーク強度比(2123cm−1/2193cm−1)と、上記の密度法による結晶化度への換算式を用いて 、結晶化度を求めた。この結果を表2に示す。本実施例においても上記の「アニール条件に対する結晶化度の評価」で示したように、アニール時間及びアニール温度を変更した成形品について評価を行った(図6参照)。[実施例4] 結晶部分及び非晶部分の吸収ピークを帰属する赤外吸収スペクトルの波数領域を2800〜2500cm−1の領域に変更したこと以外は実施例1と同様にして測定を行った。測定した赤外吸収スペクトルを図7に示す。図7において、「結晶2」(2767cm−1)、「非晶2」(2523cm−1)として示したのは、それぞれ成形品の結晶部分及び非晶部分に帰属した各吸収ピークである。なお、本実施例においても「アニール条件に対する結晶化度の評価」で示したように、アニール時間及びアニール温度を変更した10種の成形品について評価を行った。評価結果を図8に示す。[実施例5] 結晶部分及び非晶部分の吸収ピークを帰属する赤外吸収スペクトルの波数領域を4500〜4000cm−1の領域に変更したこと以外は実施例1と同様にして測定を行った。測定した赤外吸収スペクトルを図9に示す。図9において、「結晶3」(4436cm−1)、「非晶3」(4048cm−1)として示したのは、それぞれ成形品の結晶部分及び非晶部分に帰属した各吸収ピークである。なお、本実施例においても「アニール条件に対する結晶化度の評価」で示したように、アニール時間及びアニール温度を変更した10種の成形品について評価を行った。評価結果を図10に示す。 実施例4〜5より、実施例1〜3とは異なる波数領域においても、結晶化度に関与する吸収ピークが存在していることが分かる。[実施例6] シリンダー温度260℃、金型温度40℃の条件で射出成形により、ポリブチレンテレフタレート樹脂の100mm×100mm×1mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚1mm)の平板状成形品を準備し、(1)アニール前、(2)140℃で0.5時間アニール処理後、(3)140℃で2時間アニール処理後の3つの状態について実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルの測定を行った。図11は、上記(3)140℃で2時間アニール処理後の赤外吸収スペクトルを示している。図12は、図11における2900〜1800cm−1の波数領域を拡大し、上記(1)及び(3)の2枚の成形品について得られた赤外吸収スペクトルを示した図である。得られた赤外吸収スペクトルのうち、2760cm−1の吸収ピーク及び2542cm−1の吸収ピークを、成形体の結晶部分に対応する吸収ピークと帰属し、2780cm−1の吸収ピーク及び2576cm−1の吸収ピークを成形体の非晶部分に対応する吸収ピークと帰属した。そして、アニール前と、アニール処理後のそれぞれについて、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値を算出した。図13は、アニール時間と、2780cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2760cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。同様に、図14は、アニール時間と、2576cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2542cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。図13及び図14においても、アニール時間の経過に伴い、比の値が増加していることが分かる。[実施例7] シリンダー温度200 ℃、金型温度80 ℃の条件で射出成形により、ポリオキシメチレン樹脂の100mm×100mm×2mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚2mm)の平板状成形品を準備し、(1)アニール前、(2)110℃で1時間アニール処理後、(3)110℃で3時間アニール処理後、(4)110℃で6時間アニール処理後の4つの状態について実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルの測定を行った。図15は、上記(4)110℃で6時間アニール処理後の赤外吸収スペクトルを示している。図16は、図15における2700〜2450cm−1の波数領域を拡大し、上記(1)及び(4)の2枚の成形品について得られた赤外吸収スペクトルを示した図である。得られた赤外吸収スペクトルのうち、2617cm−1の吸収ピークを、成形体の結晶部分に対応する吸収ピークと帰属し、2528cm−1の吸収ピークを成形体の非晶部分に対応する吸収ピークと帰属した。そして、アニール前と、アニール処理後のそれぞれについて、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値を算出した。図17は、アニール時間と、2528cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2617cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。図17においても、アニール時間の経過に伴い、比の値が増加していることが分かる。[実施例8] シリンダー温度290 ℃、金型温度80℃の条件で射出成形により、液晶樹脂の100mm×100mm×1mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚1mm)の平板状成形品を準備し、(1)アニール前、(2)265℃で10分(0.167時間)アニール処理後、(3)265℃で20分(0.333時間)アニール処理後、(4)265℃で40分(0.666時間)アニール処理後の4つの状態について実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルの測定を行った。図18は、上記(4)265℃で40分(0.666時間)アニール処理後の赤外吸収スペクトルを示している。図19は、図18における2900〜2600cm−1の波数領域を拡大し、上記(1)及び(4)の2枚の成形品について得られた赤外吸収スペクトルを示した図である。得られた赤外吸収スペクトルのうち、2796cm−1の吸収ピークを、成形体の結晶部分に対応する吸収ピークと帰属し、2760cm−1の吸収ピークを成形体の非晶部分に対応する吸収ピークと帰属した。そして、アニール前と、アニール処理後のそれぞれについて、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値を算出した。図20は、アニール時間と、2760cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2796cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。図20においても、アニール時間の経過に伴い、比の値が増加していることが分かる。[実施例9] シリンダー温度380℃の条件で射出成形により、ポリエーテルエーテルケトン樹脂の100mm×100mm×2mmt(すなわち、寸法が幅100mm×長さ100mm×肉厚2mm)の平板状成形品を準備した。この射出成形において、金型温度を(1)80℃、(2)180℃、(3)200℃の3つの条件で成形し、実施例1と同様にして赤外吸収スペクトルの測定を行った。図21は、上記(1)金型温度が200℃の成形品の赤外吸収スペクトルを示している。図22は、図21における2240〜2100cm−1の波数領域を拡大し、上記(1)及び(3)の2枚の成形品について得られた赤外吸収スペクトルを示した図である。得られた赤外吸収スペクトルのうち、2169cm−1の吸収ピークを、成形体の結晶部分に対応する吸収ピークと帰属し、2162cm−1の吸収ピークを成形体の非晶部分に対応する吸収ピークと帰属した。尚、これらの2つのバンドは重複していたため、スペクトルの二次微分の計算により、ピーク位置を求めた。そして、アニール前と、アニール処理後のそれぞれについて、非晶部分の吸収ピーク強度に対する結晶部分の吸収ピーク強度の比の値を算出した。図23は、金型温度と、2162cm−1の吸収ピーク(非晶部分)に対する2169cm−1の吸収ピーク(結晶部分)との関係を示すプロット図である。図23においては、金型温度が高くなるに伴い、比の値が増加していることが分かる。結晶性樹脂に対する成形において、金型温度を高くすると結晶化度が向上するのは周知事実であり、上記評価はその周知事実の通りとなっている。 結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の結晶化度測定方法であって、 フーリエ変換型赤外線分光光度計を用い、透過法により前記樹脂成形品の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルのうち、波数領域4500〜2000cm−1の範囲における赤外吸収スペクトルの測定値に基づいて前記樹脂成形品の前記肉厚部位の結晶化度を算出することを特徴とする樹脂成形品の結晶化度測定方法。 前記樹脂成形品の赤外吸収スペクトルを解析し、結晶部分に対応する吸収ピークと、非晶部分に対応する吸収ピークとを帰属し、結晶部分に帰属される吸収ピークと、非晶部分に帰属される吸収ピークとからそれぞれピーク強度又はピーク面積を求め、該ピーク強度又はピーク面積から結晶化度を算出することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法。 前記樹脂成形品の肉厚が0.025〜3mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法。 前記樹脂成形品の樹脂成分が、ポリアリーレンサルファイド樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、液晶樹脂、及びポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる群から選択される1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法。 結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の製造方法であって、 前記樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。 前記樹脂成形品が、押出し又は延伸処理により長尺状に成形された樹脂成形品であり、前記結晶化度測定を行う工程において、前記樹脂成形品の長手方向に位置する複数箇所の結晶化度の測定を連続的に行うことを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形品の製造方法。 結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の多数を製造する樹脂成形品群の製造方法であって、 前記樹脂成形品群のうちの各樹脂成形品の前記肉厚部位に対して、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形品の結晶化度測定方法による結晶化度測定を連続的に行う工程を含むことを特徴とする樹脂成形品群の製造方法。 【課題】厚肉の樹脂成形品であっても肉厚方向全体の結晶化度を、非破壊かつ非接触で測定することができる樹脂成形品の結晶化度測定方法を提供する。【解決手段】結晶性熱可塑性樹脂を樹脂成分として含む、肉厚0.02mm以上3mm以下の部位を有する樹脂成形品の結晶化度測定方法であって、フーリエ変換型赤外線分光光度計を用い、透過法により前記樹脂成形品の赤外吸収スペクトルを測定し、該赤外吸収スペクトルに基づいて前記樹脂成形品の結晶化度を算出することを特徴とする樹脂成形品の結晶化度測定方法である。【選択図】図1


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る