タイトル: | 公開特許公報(A)_渋味抑制剤の評価又は選択方法 |
出願番号: | 2014084539 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12Q 1/02,G01N 33/15,G01N 33/50,G01N 33/566 |
高徳 博子 齋藤 菜穂子 JP 2015202097 公開特許公報(A) 20151116 2014084539 20140416 渋味抑制剤の評価又は選択方法 花王株式会社 000000918 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 高徳 博子 齋藤 菜穂子 C12Q 1/02 20060101AFI20151020BHJP G01N 33/15 20060101ALI20151020BHJP G01N 33/50 20060101ALI20151020BHJP G01N 33/566 20060101ALI20151020BHJP JPC12Q1/02G01N33/15 ZG01N33/50 ZG01N33/566 4 OL 12 2G045 4B063 2G045BB20 2G045CB01 2G045DB07 2G045FA19 2G045FB12 2G045GC15 4B063QA01 4B063QQ08 4B063QR66 4B063QS36 4B063QX02 本発明は、カテキン類等の渋味を呈する物質由来の、当該渋味を抑制する渋味抑制剤の評価又は選択方法に関する。 カテキン類は、ガンや高血圧、動脈硬化などの生活習慣病改善に効果があることや風邪の予防、虫歯に対する殺菌効果を有することから注目され(非特許文献1及び2)、多くの飲料に配合されている。また、その生理効果を有効に発現させるために、より簡便に大量のカテキン類を摂取すべく、飲料にカテキン類を高濃度配合する技術が望まれている。 一方で、カテキン類は渋味を呈するため、その使用量が制限されるなどの課題があった。そのため、カテキンの渋味をコントロールすることは、より幅広い分野において、カテキンの利用価値を上げるために重要である。 ヒトにおける渋味の認識については、TRPチャネル(transient receptor potential channel)への関与が報告されている(非特許文献3)。非特許文献3によれば、マウス由来の腸内分泌細胞であるSTC−1細胞およびTRPチャネルを一過性に発現させたHEK293T細胞を用い、茶カテキンの応答性を検討した結果、痛み受容に関与することが知られているTRPA1発現細胞において強い応答が示されること、また、それらのカテキン応答が非選択的TRP阻害薬であるruthenium red(RR)やTRPV1(43℃以上の熱や酸によって活性化、侵害刺激受容)阻害剤であるカプサゼピン(CPZ)、TRPA1阻害剤であるHC−030031(Theophylline-7-(N-4-Isopropylphenyl)Acetamide)により抑制されることから、TRPV1、TRPA1の茶カテキンの渋味受容への関与が推測されている。 一方、同じくTRPチャネルスーパーファミリーのメンバーであるTRPV4は、低浸透圧、温熱、機械的刺激等により活性化されることが知られ(非特許文献4、5)、腎、肺、膀胱、心臓、皮膚、脳、消化管など幅広い組織で発現して、異なった幅広い生理的役割を果たしていると考えられている。例えば、腎の遠位尿細管上皮細胞には特に強く発現しており、尿の浸透圧や流量を感知していることが示唆され(非特許文献6)、また消化管における低浸透圧を感知し、交感神経活動を亢進させる機能を持つことも示唆されている(非特許文献7)。 しかしながら、TRPV4が渋味に関与することは、これまでに全く報告されていない。Okabe S, et al, Jpn Cancer Res, 88, 639-643(1997)原征彦 他, 日本食品工業学会誌, 36, 951-955(1989)Chem. Senses 37; 167-177, 2012Guler AD. J. Neurosci. 22: 6408-6414 (2002)Vriens J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 106: 1626-1631 (2004)Tian W. Am. J. Physiol. Renal. Physiol.287: F17-F24 (2004)Gao F. Hypertension. 55: 1438-1443 (2010) 本発明は、渋味を呈する物質(渋味物質)の当該渋味を抑制する渋味抑制剤を、簡易に評価又は選択するための方法を提供することに関する。 本発明者は、渋味受容体について探索した結果、意外にも低浸透圧、温熱、機械刺激等により活性化されることが知られているTRPV4が、カテキン類、タンニン酸等の渋味物質に応答すると共に当該応答性がヒトにおける渋味官能評価とよく相関し、当該TRPV4の応答性を指標として、渋味物質に基づく渋味を抑制する素材を簡易にスクリーニングできることを見出した。 すなわち、本発明は、下記の1)〜3)に係るものである。 1)TRPV4の応答性を評価する工程を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法。 2)以下の工程(a)、(b)及び(c)を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法: (a)渋味物質及び試験物質をTRPV4に接触させる工程、 (b)渋味物質に対するTRPV4の応答を測定する工程、 (c)上記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の応答を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する工程。 3)渋味物質がカテキン類、タンニン酸又はカフェ酸である上記1)又は2)の方法。 本発明によれば、主観的な官能評価に頼ることなく、簡易に且つ客観的に、渋味物質由来の渋味を抑制する渋味抑制剤の評価又は選択を行うことができ、ハイスループットスクリーニングを行うことも可能となる。渋味物質に対するTRPV4の応答性を示すグラフ。左上:EGCg、左下:茶カテキン、右上:タンニン酸、右下:カフェ酸カテキン類のTRPV4応答と渋味官能評価との相関性を示すグラフ。γ−シクロデキストリン(γ−CD)がカテキン類のTRPV4応答に及ぼす影響を示すグラフ。 以下、本発明の方法について説明する。 本発明の渋味抑制剤の評価又は選択方法は、TRPV4の応答性を評価する工程を含むものであり、具体的には、TRPV4に対して、渋味物質と渋味抑制剤の候補物質である試験物質を接触させ、渋味物質に対するTRPV4の応答を測定し、それに基づいて、TRPV4の応答を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する、工程を含むものである。 後述の実施例に示すように、TRPV4は、EGCg等のカテキン類、タンニン酸、カフェ酸のような渋味を呈する物質に対して応答し(図1)、それがヒト官能評価による渋味スコアと良好に相関する。この結果は、TRPV4の応答を抑制する物質は、渋味物質による渋味の認識に変化を生じさせ、結果として渋味を抑制できることを示す。すなわち、TRPV4の渋味物質に対する受容体応答性の変化(抑制率)を指標として、渋味抑制剤を評価又は選択できると云える。 TRPV4は、カチオンチャネルの一過性受容器電位(TRP)スーパーファミリーに属する受容体であり、GenBankに GI: 294459961として登録されている。TRPV4は、配列番号1で示される遺伝子配列を有する遺伝子にコードされる、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質である。 また、当該TRPV4のアミノ酸配列に対して、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、なお好ましくは98%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなり、渋味物質対する応答性を有するポリペプチドも本発明の方法に使用されるTRPV4に包含される。 ここで、塩基配列及びアミノ酸配列の配列同一性は、リップマン−パーソン法(Lipman-Pearson法;Science, 227, 1435, (1985))によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(Ver.5.1.1;ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行なうことにより算出される。 本発明において、「渋味物質」とは、ヒトがそれを口に含んだ際に渋味を呈する物質を意味し、「渋味」とは一般的には舌粘膜の収斂により引き起こされる味覚を云う。ここで、物質は渋味を呈するものであればよく、単一化合物、混合物の何れでも良い。 代表的な渋味物質として、例えばカテキン類、タンニン酸、カフェ酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 カテキン類としては、例えばカテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)等の非エピ体カテキン類、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)、エピガロカテキンガレート(EGCg)等のエピ体カテキン類が挙げられる。このうち、EGCg、Cg、GCg、ECgが好ましい。 本発明において、「渋味抑制物質」とは、上記渋味物質によって引き起こされる渋味を低減する物質を意味する。 本発明の方法における試験物質は、いかなる公知化合物及び新規化合物であってもよく、例えば、核酸、糖質、脂質、タンパク質、ペプチド、有機低分子化合物、コンビナトリアルケミストリー技術を用いて作製された化合物ライブラリー、固相合成やファージディスプレイ法により作製されたランダムペプチドライブラリー、あるいは微生物、動植物、海洋生物等由来の天然成分等、食品に通常用いられる原料および/又は素材の1または複数を配合するものが挙げられる。 本発明の渋味抑制剤の評価又は選択方法は、具体的には、(a)渋味物質及び試験物質をTRPV4に接触させる工程、(b)渋味物質に対するTRPV4の応答を測定する工程、(c)上記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の応答を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する工程、を含むものである。 工程(a)では、TRPV4が、渋味物質及び試験物質と接触条件下におかれる。 ここで、TRPV4は、受容体の機能を失わない限り、任意の形態で使用され得る。例えば、TRPV4は、生体から単離された、TRPV4を発現する組織や細胞、又はそれらの培養物;当該TRPV4を担持した細胞の膜;当該TRPV4を発現するように遺伝的に操作された組換え細胞又はその培養物;当該組換え細胞の膜;及び、当該TRPV4を有する人工脂質二重膜、等の形態で使用され得る。これらの形態は全て、本発明で使用されるTRPV4の範囲に含まれる。 好ましい態様においては、TRPV4を発現する天然の細胞、又はTRPV4を発現するように遺伝的に操作された組換え細胞、あるいはそれらの培養物が使用される。当該組換え細胞は、TRPV4をコードする遺伝子を組み込んだベクターを用いて細胞(例えば、HEK293細胞等)を形質転換することで作製することができる。 該細胞に対する渋味物質及び試験物質の接触は、培養培地を除いた後、緩衝液中で行われるが、公知のものを使用すればよい。試験物質と渋味物質は同時に添加されても、任意の順序で添加されてもよい。 工程(b)における、TRPV4の応答の測定は、TRPV4の応答を測定する方法として当該分野で知られている任意の方法を用いることができる。例えば、カルシウムイメージング法や細胞内cAMP量を測定する方法を挙げることができる。 カルシウムイメージング法を用いる場合は、カルシウム感受性色素を導入したTRPV4発現細胞を用意し、蛍光強度(細胞内カルシウム濃度)の変化により、TRPV4の応答性が測定される。ここで、カルシウム感受性色素としては、例えば、Fura-2、Fluo-3、Fluo-4等が挙げられる。 上記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の応答を抑制する試験物質が渋味抑制物質として同定される。 TRPV4の応答を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する手法としては、例えば、異なる濃度の試験物質を添加した場合に測定された渋味物質に対する受容体の応答を比較することによって行うことができる。より具体的には、より高濃度の試験物質添加群とより低濃度の試験物質添加群との間;試験物質添加群と非添加群(対照群)との間;又は試験物質添加前後で、渋味物質に対するTRPV4の応答を比較することが挙げられるが、試験物質添加群と非添加群(対照群)との間で比較するのが好ましい。すなわち、試験物質の存在下で渋味物質をTRPV4へ接触させた場合におけるTRPV4の応答を、試験物質の非存在下で渋味物質をTRPV4へ接触させた場合におけるTRPV4の応答と比較することが好ましい。 そして、例えば、試験物質添加群におけるTRPV4応答が対照群と比較して70%以下、好ましくは50%以下に抑制されていること、すなわち抑制率30%以上、好ましくは50%以上であれば、当該試験物質を当該渋味物質に対する渋味抑制物質と同定することができる。 細胞内カルシウム濃度を測定する場合の本発明の方法は、以下の工程(a’)、(b’)、及び(c’)を含むものであるのが好ましい。 (a’)TRPV4を形質導入したTRPV4発現細胞にカルシウム感受性色素を導入し、これと渋味物質及び試験物質を一定期間接触させる工程、 (b’)蛍光強度(細胞内カルシウム濃度)を測定する工程、 (c’)(b’)の測定結果に基づいて、蛍光強度を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する工程 工程(b’)における蛍光強度の測定は、公知の方法を使用して測定でき、蛍光強度測定プレートリーダー等を用いて行うことができる。例えば、励起波長480、検出波長520nmにて、蛍光強度を測定し、Ratioとして、TRPV4応答性を算出することができる。 工程(c’)の同定は、例えば、試験物質の存在下で測定された蛍光強度(細胞内カルシウム濃度)を、試験物質の非存在下(対照群)での蛍光強度と比較することによって行われる。 上記工程(c’)において、試験物質添加群における蛍光強度が対照群と比較して70%以下、好ましくは50%以下に抑制されていること、すなわち抑制率30%以上、好ましくは50%以上であれば、当該試験物質を当該渋味物質に対する渋味抑制物質と同定することができる。 斯くして、本発明の方法によって同定された渋味抑制物質は、渋味物質に対する当該渋味を抑制する渋味抑制剤であると評価でき、又は選択することができる。 当該渋味抑制剤は、渋味抑制物質単独或いはその他食品等に配合可能な任意の成分が配合された形で、渋味物質の渋味を抑制するために、食品等に添加して使用することができる。 上述した実施形態に関し、本発明においては更に以下の態様が開示される。<1>TRPV4の応答性を評価する工程を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法。<2>以下の工程(a)、(b)及び(c)を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法: (a)渋味物質及び試験物質をTRPV4に接触させる工程、 (b)渋味物質に対するTRPV4の応答を測定する工程、 (c)上記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の応答を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する工程。<3>上記(c)工程における同定が、試験物質の存在下で前記渋味物質をTRPV4へ接触させた場合におけるTRPV4の応答と、試験物質の非存在下で前記渋味物質をTRPV4へ接触させた場合におけるTRPV4の応答とを比較することにより行われる、<2>の方法。<4>渋味物質がカテキン類、タンニン酸又はカフェ酸である<1>〜<3>の方法。実施例1 TRPV4の渋味物質に対する応答評価(1)ヒトTRPV4安定発現株の作製 ヒトTRPV4遺伝子(NM_021625.4 GI:294459961)は、その全長をインビトロジェンよりpENTR221に挿入された状態で購入した。購入したエントリーベクターよりTRPV4遺伝子を発現用ベクターpcDNA3.2−V5/DEST(インビトロジェン社)へサブクローニングし、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)によりHEK293細胞へ形質導入した。形質導入された細胞をG−418(450μg/ml;プロメガ社)を含有するDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium;Gibco社)中で増殖させることにより選抜した。HEK293細胞は、インビトロジェン社より入手することが可能である。なお、TRPV4を形質導入していないHEK293細胞は内在性TRPV4を発現しないため、TRPV4形質導入株に対する対照(コントロール)として使用できる。(2)細胞内カルシウム濃度変化の測定 蛍光カルシウムイメージング法を用いてTRPV4を形質導入したHEK293細胞の渋味物質に対する応答測定を行った。まず培養したTRPV4発現細胞をポリ−D−リジンコートされた96ウェルプレート(BDファルコン社)に播種(1×105細胞/cm2ウェル)し、37℃で一晩、インキュベートした後、培養液を除去し、表1のように調製した細胞内カルシウム感受性蛍光指示薬を含むQuencher溶液(Calcium Kit; 同仁化学)を添加し、37℃で60分間インキュベートした。その後、蛍光プレートリーダー(FDSS3000;浜松ホトニクス社)にセットし、励起波長480nmで励起したときの蛍光イメージを検出波長520nmにてCCDカメラで検出した。測定は2秒毎に5分間行い、測定開始75秒後にFDSS3000内蔵の分注器により渋味物質であるEGCg(終濃度0.5〜3mM;ニュートリションジャパン社)、茶カテキン(終濃度0.5〜3mM)、タンニン酸(終濃度0.31〜5mM;関東化学)、カフェ酸(終濃度0.78〜25mM;CAYMAN CHEMICAL COMPANY)をそれぞれ添加し、その後の蛍光強度の変化によりTRPV4発現細胞の応答性(味物質応答)を評価した。TRPV4発現細胞における味物質応答は渋味物質添加後の蛍光強度のピーク(Fpeak)を渋味物質添加前の蛍光強度(F0)で除算した蛍光強度比(RatioTRPV4;Fpeak/F0)で表した。対照としてTRPV4を形質導入していないHEK293細胞に同様の物質を添加し、その際の蛍光強度比(Ratio293)を差し引くことにより、渋味物質による活性がTRPV4活性化に由来することを確認した。 各ウェルにおける渋味物質に対する応答は、以下の式にて算出した。〔数1〕 TRPV4の味物質応答=RatioTRPV4(TRPV4発現細胞における最大蛍光強度比)−Ratio293(HEK293細胞における最大蛍光強度比) データは4ウェルの平均値で示した。 図1に示した結果から分かる通り、TRPV4発現細胞は、EGCg、茶カテキン、タンニン酸、カフェ酸に応答を示した。実施例2 TRPV4発現細胞におけるカテキン類の応答と渋味官能評価との相関性 8種のカテキン類(カテキン(C)、エピカテキン(EC)、ガロカテキン(GC)、エピガロカテキン(EGC)、カテキンガレート(Cg)、エピカテキンガレート(ECg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピガロカテキンガレート(EGCg))について評価を行った。TRPV4発現細胞における各種カテキン類に対する応答は実施例1と同様な方法にて測定した。 ヒト官能評価は、各種カテキン類の渋味スコアをパネラー5名により評価した。タンニン酸を表2のような渋味強度の異なる5段階に調製し、各種カテキン類(評価濃度:3mM)の渋味強度と同等の渋味強度を示すタンニン酸の渋味スコアを、そのカテキン類の渋味スコアと判定し、専門パネル5名の平均値を求めた。評価は試験サンプル10mLを口に含む方法で行った。 図2に示すように、TRPV4発現細胞の各種カテキン類に対する応答と渋味スコアとの間に相関関係が認められたことから、TRPV4発現細胞のカテキン類に対する応答はヒトの渋味を反映することが示唆された。実施例3 既存渋味抑制物質γ−シクロデキストリン(γ−CD)がカテキン類のTRPV4応答に及ぼす影響の検討 渋味抑制物質がTRPV4の渋味物質応答に及ぼす効果を検証するため、茶カテキン(3mM)またはEGCg(2mM)と、γ−CD(最終濃度0.5質量%)を混合し添加した際の、カテキン類のTRPV4応答に対するγ−CDの抑制効果(活性抑制率;%)を評価した。γ−CD のTRPV4応答抑制作用は下記の式により算出した。<カテキン類に対する渋味抑制率の算出方法> 各ウェルにおけるカテキン類のTRPV4応答に対するγ−CDの抑制作用は下記の式により算出した。〔数2〕 カテキン類のTRPV4応答=(カテキン類添加後のTRPV4発現細胞における最大蛍光強度比)−(HEK293細胞における最大蛍光強度比) 最大蛍光強度比はカテキン類添加後(測定開始75〜300秒の間)の蛍光強度比の最大値とした。 カテキン類のTRPV4応答に対するγ−CDの抑制効果(渋味抑制率)は、〔数3〕 渋味抑制率(%)=[1−{(γ−CD存在下におけるTRPV4のカテキン類に対する応答)/(γ−CD非存在下におけるTRPV4のカテキン類に対する応答)}]×100とし、データは4ウェルの平均値で示した。 結果を図3に示す。カテキンの渋味を抑制することが知られているγ−CDの添加により、カテキン類のTRPV4応答は抑制された。 実施例1、2、3、の結果から、TRPV4を用いることで、渋味の評価、渋味抑制作用を有する素材の探索が可能であることが示された。 TRPV4の応答性を評価する工程を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法。 以下の工程(a)、(b)及び(c)を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法: (a)渋味物質及び試験物質をTRPV4に接触させる工程、 (b)渋味物質に対するTRPV4の応答を測定する工程、 (c)上記(b)の測定結果に基づいて、TRPV4の応答を抑制する試験物質を渋味抑制物質として同定する工程。 上記(c)工程における同定が、試験物質の存在下で前記渋味物質をTRPV4へ接触させた場合におけるTRPV4の応答と、試験物質の非存在下で前記渋味物質をTRPV4へ接触させた場合におけるTRPV4の応答とを比較することにより行われる、請求項2記載の方法。 渋味物質がカテキン類、タンニン酸又はカフェ酸である請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 【課題】渋味を呈する物質(渋味物質)の当該渋味を抑制する渋味抑制剤を、簡易に評価又は選択するための方法の提供。 【解決手段】TRPV4の応答性を評価する工程を含む、渋味物質に対する渋味抑制剤の評価又は選択方法。【選択図】なし配列表