タイトル: | 公開特許公報(A)_粒径測定方法、粒径測定装置および粒径測定プログラム |
出願番号: | 2014083698 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 15/02,G06T 7/60 |
小野 正幸 高下 拓也 JP 2015203643 公開特許公報(A) 20151116 2014083698 20140415 粒径測定方法、粒径測定装置および粒径測定プログラム JFEスチール株式会社 000001258 杉村 憲司 100147485 山口 雄輔 100164448 小野 正幸 高下 拓也 G01N 15/02 20060101AFI20151020BHJP G06T 7/60 20060101ALI20151020BHJP JPG01N15/02 CG06T7/60 150J 8 1 OL 18 5L096 5L096AA06 5L096CA02 5L096EA43 5L096FA10 5L096FA32 5L096FA59 5L096FA70 5L096GA51 本発明は、粒径測定方法、粒径測定装置および粒径測定プログラムに関し、特に、材料組織の結晶粒径を測定するに当たって、測定者による測定結果のばらつきを低減できる粒径測定方法、粒径測定装置および粒径測定プログラムに関するものである。 例えば金属等の材料に含まれる結晶組織の結晶粒径は、強度や破壊、変形挙動等の力学特性や、透磁率や磁束密度等の磁気特性に大きな影響を及ぼすことが知られている。そのため、結晶粒径を正確に測定する技術の確立は、材料の力学特性および磁気特性を推測する上で肝要となる。このような背景から、これまで、材料中の結晶粒径を測定する方法が種々提案されてきた。 結晶粒径を測定する一般的な手法は、JISのG0551:2013に記載されている。ここに記載された種々の測定方法のうち、切断法が最も簡便かつ、測定結果の物理的特性との関連付けが可能な手法である。しかし、最も簡便な切断法を以てしても、結晶粒径の測定には多大な労力を要する上に、手作業で測定を行う場合、測定結果の個人差が大きいという問題があった。 そこで、こうした切断法に伴う問題を改善する為に、例えば特許文献1には、二値化した結晶組織画像の各走査線が結晶粒界と交差する交差数を求め、切断法により結晶粒径を測定する方法が開示されている。この方法は、画像を二値化することにより、結晶粒内を白色化、結晶粒界を黒色化し、走査線と黒色領域が交差した数を求めることにより、結晶粒径を測定する方法である。この方法では、黒色領域と走査線の交点の数をカウントするだけで結晶粒系を測定できるため、パーソナルコンピュータ(PC)等のコンピュータを用いて粒径測定を自動化して高速化することが可能である。特開平8−101114号公報 しかしながら、特許文献1には、二値化の閾値設定の個人差を低減する手段についての言及がなされていない。すなわち、特許文献1に記載された方法では、測定結果が設定された二値化の閾値に大きく依存し、測定者による測定結果のばらつきが大きい問題がある。実際の結晶組織画像では、結晶粒界のコントラストが一様ではなく濃淡を有しているため二値化の閾値を手動で調整して設定しなければならない。そのため、結晶粒界のコントラストが粒界により大きく異なる場合、二値化の閾値設定に大きな個人差が生じてしまい、PCによる自動測定は可能なものの、測定者による測定結果のばらつきが生じてしまう。特許文献1に記載された方法では、測定結果のばらつきを低減することは困難である。 そこで、本発明の目的は、例えば金属等の材料に含まれる結晶組織の結晶粒径を測定するに当たって、測定者による測定結果のばらつきを低減できる粒径測定方法、粒径測定装置および粒径測定プログラムを提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決する方途について鋭意検討した。上述のように、実際の結晶組織画像では、結晶粒界のコントラストが一様ではなく濃淡を有している。そのため、特許文献1に記載された方法により、画像の各画素の画素値に対して所定の閾値で二値化処理を施すと、断片化された線状や粒状の黒色領域が多数存在し、これらの領域が結晶粒界に対応する領域なのか、あるいはノイズや不純物等に対応するものなのか判断できない。そのため、測定者は、二値化処理の閾値を大きく変動させて最適な閾値を設定することになる。 本発明者らは、測定結果の個人差が大きくばらつきが大きい理由は、二値化された画像において、測定者が結晶粒界を特定するのが困難である点にあると考えた。そこで、二値化された画像において、測定者が結晶粒界を視認できる方途について鋭意検討した結果、処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施し、次いで処理対象画像において、下限が前記二値化処理の閾値よりも高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化し、この画像の下に、暗色系のべた塗り画像や処理対象画像の複製画像等の参照画像を重ね合わせることにより、結晶粒の輪郭領域を白く浮き立たせて顕在化させることができることを見出した。そして、白色化されて顕在化された結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行った後に、切断法により結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定することにより、測定者による測定結果のばらつきを大きく低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明の要旨構成は以下の通りである。(1)材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、および前記結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を用意する画像準備ステップと、前記処理対象画像の下に前記参照画像を重ね合わせる画像積層ステップと、前記処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す二値化処理ステップと、前記処理対象画像において、下限が前記二値化処理の閾値よりも高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する透明化処理ステップと、前記処理対象画像と前記参照画像との重ね合わせにより顕在化された、前記結晶組織に含まれる結晶粒の白色の輪郭領域を黒色化するように前記閾値を調整しながら二値化処理を行う閾値調整ステップと、切断法により前記結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定する粒径測定ステップとを備えることを特徴とする粒径測定方法。(2)前記参照画像は前記処理対象画像の複製画像である、前記(1)に記載された方法。(3)前記二値化処理に用いる閾値は、前記処理対象画像の階調値の半分の値である、前記(1)または(2)に記載された方法。(4)透明化処理が施された前記処理対象画像と前記参照画像との重複により前記結晶組織中の結晶の輪郭領域が顕在化しない場合には、前記閾値の低減、前記画素値範囲の拡大、あるいは前記画素値範囲の画素値の小さい方向へのシフトを行った後に、前記二値化処理ステップ、前記透明化処理ステップ、前記閾値調整ステップおよび前記粒径測定ステップを再度行う、前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。(5)材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、および前記結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を取り込み、前記処理対象画像の下に前記参照画像を重ね合わせる画像導入部と、前記処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す二値化処理部と、前記処理対象画像において、下限が前記二値化処理の閾値より高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する透明化処理部と、前記処理対象画像と前記参照画像との重ね合わせにより顕在化された、前記結晶組織に含まれる結晶粒の白色の輪郭領域を黒色化するように前記閾値を調整しながら二値化処理を行う閾値調整部と、切断法により前記結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定する粒径測定部とを備えることを特徴とする粒径測定装置。(6)前記参照画像は前記処理対象画像の複製画像である、前記(5)に記載された装置。(7)前記二値化処理に用いる閾値は、前記処理対象画像の階調値の半分の値である、前記(5)または(6)に記載された装置。(8)コンピュータを、前記(5)〜(7)のいずれか1項に記載された粒径測定装置として機能させるためのプログラム。 本発明によれば、二値化した画像の結晶粒内部を透明化することにより、結晶粒の輪郭領域が白色化されて顕在化されるため、測定者が結晶粒界を現出するのに最適な閾値に調整することが容易になり、測定者による測定結果のばらつきを低減することができる。また、白色化された結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整すればよく、閾値調整の指針が明確であるため、測定者が閾値の調整に要する時間を短縮することができる。本発明による粒径測定方法のフローチャートを示す図である。純鉄圧粉磁芯の組織写真(ミクロ組織:フェライト単相)のグレースケール256階調画像である。図2の画像に対して二値化処理を施した後の画像である。図3の画像に対して透明化処理を施した後の画像である。図4の画像の下に図2の画像の複製画像を重ね合わせた画像である。図5の図において顕在化された、結晶粒の白色の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行った後の図である。本発明による粒径測定装置のブロック図である。実施例において処理対象画像として用いた、純鉄圧粉磁芯の組織写真の視野が異なる256階調グレースケール画像である。(粒径測定方法) 以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。図1は、本発明による粒径測定方法のフローチャートを示す図である。まず、ステップS1において、材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、および結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を用意する。 本発明において、「処理対象画像」とは、本発明による粒径測定方法に供する画像であって、ミクロスケールで撮影された材料の結晶組織の写真である。この処理対象画像は、結晶組織に含まれる結晶粒と結晶粒界のコントラストが明確に異なるものであれば特に限定されない。また、撮影される材料についても、撮影された画像に対して二値化処理を施すことによって結晶粒の境界を現出できるものであれば特に限定されない。処理対象画像としては、例えば、観察面をアルミナやダイヤモンドペーストを用いて鏡面仕上げした後に、腐食液を用いて結晶粒界を現出させた組織を、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡により撮影された写真を用いることができる。ここで、鉄系でフェライト単相組織を有する金属材料を撮影した画像を撮影する場合には、腐食液として3体積%ナイタール液を用いるのが好ましい。 また、処理対象画像のサイズや色、階調等も特に限定されない。図2は、純鉄圧粉磁芯の結晶組織(ミクロ組織:フェライト単相)を撮影した、256階調のグレースケール画像である。このようなグレースケール画像を用いることもできるし、このグレースケール画像にRGBのいずれの色を含んだカラー画像を用いることもできる。階調についても256階調に限定されず、例えば1677万階調とすることができるのは言うまでもない。 また、本発明において、「参照画像」とは、後述する透明化処理によって白色化されて顕在化された結晶粒の輪郭領域を視認するのを容易にするために使用する画像であって、この目的を実現できるものであれば、色彩やデザイン等は特に限定されない。例えば、濃紺や茶色等の暗色のべた塗り画像や、処理対象画像の複製画像を用いることができる。参照画像として処理対象画像の複製画像を用いる場合には、後述する透明化処理によって透明化された、処理対象画像において透明化された領域に、その領域の本来の画像が埋め込まれるため、測定者が粒界をより鮮明に認識することができる。 参照画像のサイズは、べた塗りの画像の場合には、処理対象画像以上の大きさであれば特に限定されない。また、処理対象画像の複製画像を用いる場合には、測定者が結晶粒界を認識するのを阻害しないように、処理対象画像と略同一のサイズであることが好ましい。 次に、ステップS2において、処理対象画像の下に参照画像を重ね合わせる。これにより、後述する透明化処理ステップにより透明化される結晶粒内部の領域を参照画像の色で色付けして、白色化された結晶粒の輪郭領域を顕在化して測定者が結晶粒界を容易に視認できるようになる。 続いて、ステップS3において、処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す。この二値化処理により、処理対象画像に含まれる結晶粒界の多くを黒色化し、一方結晶粒の多くを白色化することができる。また、二値化処理により、結晶粒界と結晶粒のコントラストを高めることができるため、後述する切断法により結晶粒の結晶粒径を測定する際の走査線と結晶粒界との交点のカウントが容易になる。 ここで、二値化処理における閾値は、少なくとも処理対象画像に含まれる結晶粒の画素値ではないことが必要である。すなわち、二値化処理の閾値は、処理対象画像に含まれる粒界に対応する画素値ではない場合には、後述する透明化処理を行っても、結晶粒の輪郭領域を白色化することができなくなるためである。 この二値化処理の閾値は、撮影された画像における結晶組織の画素値に依存するため、一意に決定することはできない。例えば、処理対象画像が純鉄圧粉磁芯の結晶組織を撮影した画像である場合、二値化処理の閾値は、処理対象画像の階調値の半分の値とすることにより、後述する透明化処理により結晶粒の輪郭領域を白色化して顕在化することができる。具体的には、上記純鉄圧粉磁芯の組織写真の画像が256階調のグレースケール画像である場合には、閾値(画素値)を128とすることにより、ほとんどの結晶粒の輪郭領域を二値化処理により黒色化することができ、後述する閾値調整ステップに要する時間を短縮できることを本発明者らは確認している。 例として、図2に示した256階調のグレースケール画像に対して、128の画素値を閾値として二値化処理を施すと図3に示すようになる。この図に示されているように、断片化された黒色領域が多数存在し、結晶粒界に対応するものと推察されるものもあるが、結晶粒界に対応するものか、あるいはノイズや不純物等に対応するものであるのか不明なものも多い。 続いて、ステップS4において、処理対象画像において、下限が二値化処理の閾値よりも高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する。この透明化処理の目的は、結晶粒の内部に確実に存在する領域を透明化することにより、結晶粒の輪郭領域を白色化することにある。 ここで、透明化処理における画素値範囲の下限は、結晶粒の輪郭領域を白色化するために、ステップS2における二値化処理の閾値よりも大きな値とする。ここで、二値化処理の閾値と画素値範囲の下限との差は、白色化される領域の大きさ(結晶粒の輪郭領域の幅)を決定する。よって、二値化処理の閾値と画素値範囲の下限との差が小さい場合には、白色化される領域が狭くなるため、透明化処理を行う意義がなくなる。二値化処理の閾値と画素値範囲の下限との差も処理対象画像に依存するため一意に決定できないが、図2に示した画像の場合、30以上とすることにより、適切な大きさの領域を白色化して、後述する閾値調整処理により断片化した黒色領域を繋げて結晶粒界を繋げることができる。 また、透明化する画素値範囲についても、処理対象画像に依存するため一意に決定できない。透明化する画素値範囲が小さすぎる場合には、白色化される結晶粒の輪郭領域が大きくなり、透明化する意義がなくなる。また、大きすぎる場合には、白色化される領域が小さくなり、後述する閾値調整ステップを行っても断片化した結晶粒界を繋げることができなくなるおそれがある。このような事情を考慮して透明化する画素値範囲を処理対象画像に応じて適切に設定する。 例えば、図2に示した256階調のグレースケールの純鉄圧粉磁芯の組織写真の画像の場合には、ステップS3における二値化処理の閾値を128とした場合に、透明化の画素範囲を165〜197の範囲とすることにより、結晶粒の輪郭領域を白色化して白く浮き立たせることができるが、この範囲に限定されるものではない。 図4は、図3に示した画像において、165〜197の画素値範囲に対応する領域を透明化した画像を示している。この図において、青色に着色された領域が透明化された領域を示している。図5は、図4の画像の下に、参照画像として図2の画像の複製画像を重ね合わせた画像を示している。この図から明らかなように、上述の透明化処理により、図3においては結晶粒界に対応する領域か否かが不明であった領域が多数存在したのに対して、図5においては、結晶粒の輪郭領域が白色化されて顕在化されていることが分かる。このように、上述の透明化処理により、測定者が結晶粒の輪郭領域を極めて容易に視認できるようになることが分かる。 その後、ステップS5において、処理対象画像と参照画像との重ね合わせにより顕在化された、結晶組織に含まれる白色の結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行う。上述したステップS4において、結晶粒内部の領域が透明化されるため、結晶粒の輪郭領域(およびその周辺領域)が白色化されている。そして、処理対象画像と参照画像とが重ね合わされているため、結晶粒の輪郭領域が顕在化されている。 そこで、この白色化されて顕在化された結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整して二値化処理を行う。これにより、ステップS4までにおいては断片化されていた線状の結晶粒界を繋げて、結晶粒と結晶粒界とを明確に分けることができる。結晶粒の輪郭領域は白色化されており、測定者は、閾値の調整を白色化された結晶粒の輪郭領域を黒色化するように調整すればよいため、測定者による閾値調整ひいては測定結果のばらつき(個人差)を低減することができるのである。また、白色化された結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整すればよく、閾値調整の指針が明確であるため、測定者が閾値の調整に要する時間を短縮することができる。 図6は、図5の図において顕在化された、白色の結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行った後の図を示している。この図に示すように、図5に示した白色化された結晶粒の輪郭領域を黒色化して、結晶粒界のほぼ全てが繋がるように二値化処理の閾値を調整できていることが分かる。 最後に、ステップS5の閾値調整処理が施された処理対象画像を用いて、既知の切断法により結晶粒の平均粒径を測定する。具体的には、JISのG0551:2013に記載されているように、既知の倍率gで、試験片を代表する部分の、既知の長さの試験線によって捕捉された結晶粒の数(N)、または試験線と結晶粒界との交点の数(P)をカウントすることにより平均粒径を求めることができる。 ここで、試験線は直線でも円でもよい。円形試験線は,結晶粒の異方性を平均化することができる。また、縦線、横線および2本の対角線の4本の直線を用いて行うこともできる。これらの直線により、結晶粒の異方性を平均化することができる。結晶粒の展伸を考慮する場合は、計測格子の横線を変形軸と平行に,縦線が変形軸と直交するように位置決めし、縦線または横線を別々に、結晶粒をカウントすればよい。 いずれの視野でも、1つの視野で、試験線が少なくとも50個の結晶粒を捕捉するように、倍率を決定する。少なくとも5つの無作為に選択された視野で、少なくとも合計250個の試験線が捕捉した結晶粒数を用いて評価する。この計測格子は、一試験視野ごとに一度だけ適用する。計測格子は、有効な結果を得るため無作為、かつ適切な視野数に適用する。必要な試験線が捕捉する結晶粒の数を得るために、倍率を変更する必要がある場合は、異方性の影響を考慮して測定線の方向を調整し、かつ、その測定線の長さを倍率に応じて変更してよい。 こうして、処理対象画像に含まれる結晶粒の平均粒径を測定者によるばらつきを低減して測定することができる。 なお、処理対象画像の下に参照画像を重ね合わせる画像積層ステップ(ステップS2)を画像準備ステップ(ステップS1)の後に行っているが、二値化処理ステップ(ステップS3)あるいは透明化処理ステップ(ステップS4)の後に行うこともできる。 また、ステップS3における二値化処理の閾値や、ステップS4の透明化処理における透明化する画素値範囲によっては、処理対象画像において結晶粒の輪郭領域が白色化されて顕在化されない場合もありうる。このような場合には、二値化処理における閾値の低減、および/または透明化処理における画素値範囲の拡大、および/または画素値範囲の画素値の小さい方向へのシフトを、結晶粒の輪郭領域が白色化されて顕在化されるまで繰り返し行うようにすればよい。(粒径測定装置) 次に、本発明による粒径測定装置について説明する。図7は、本発明による粒径測定装置のブロック図を示している。この図に示す粒径測定装置1は、画像導入部11と、二値化処理部12と、透明化処理部13と、閾値調整部14と、粒径測定部15とを備える。以下、各構成について説明する。 画像導入部11は、材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、および結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を取り込み、処理対象画像の下に参照画像を重ね合わせる。処理対象画像としては、ミクロスケールで撮影された組織写真であり、結晶組織に含まれる結晶粒と結晶粒界のコントラストが明確に異なるものであれば特に限定されず、また、撮影される材料についても、撮影された画像に対して二値化処理を施すことによって結晶粒の境界を現出できるものであれば特に限定されないことは既述のとおりである。また、処理対象のサイズや色、階調等も限定されない。また、参照画像としては、濃紺や茶色等の暗色のべた塗り画像や、処理対象画像の複製画像を用いることができる。 二値化処理部12は、処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す。二値化処理における閾値は、少なくとも処理対象画像に含まれる結晶粒の画素値ではないことが必要であるが、撮影された画像における結晶組織の画素値に依存するため、一意に決定することはできない。例えば、処理対象画像が純鉄圧粉磁心の結晶組織を撮影した画像である場合、二値化処理の閾値は、処理対象画像の階調値の半分の値とすることにより、後述する透明化処理により結晶粒の輪郭領域を白色化して顕在化することができるのは既述のとおりである。 透明化処理部13は、処理対象画像において、下限が二値化処理の閾値より高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する。透明化処理における画素値範囲の下限は、結晶粒の輪郭領域を白色化するために、二値化処理の閾値よりも大きな値とし、二値化処理の閾値と画素値範囲の下限との差、および透明化する画素値範囲については、白色化される領域の大きさを考慮して処理対象画像に応じて適切に設定する。 閾値調整部14は、処理対象画像と参照画像との重ね合わせにより顕在化された、結晶組織に含まれる白色の結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行う。これにより、ステップS4までにおいては断片化されていた線状の黒色領域を繋げて、結晶粒と結晶粒界とを明確に分けることができる。 粒径測定部15は、既知の切断法により、結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定する。 こうして、本発明の粒径測定装置により、測定者による測定結果のばらつきを抑制して例えば金属等の材料に含まれる結晶組織の結晶粒径を測定することができる。(粒径測定プログラム) さらに、本発明の一態様として、上述した粒径測定装置1を、各装置として機能するコンピュータとして構成させることができる。コンピュータに、前述した各構成要素を実現させるためのプログラムは、各コンピュータの内部または外部に備えられる記憶部に記憶される。そのような記憶部は、外付けハードディスクなどの外部記憶装置、あるいはROMまたはRAMなどの内部記憶装置で実現することができる。各コンピュータに備えられる制御部は、中央演算処理装置(CPU)などの制御で実現することができる。即ち、CPUが、各構成要素の機能を実現するための処理内容が記述されたプログラムを、適宜、記憶部から読み込んで、各構成要素の機能をコンピュータ上で実現させることができる。ここで、各構成要素の機能をハードウェアの全部又は一部で実現してもよい。 以下、本発明の実施例について説明する。 本発明による粒径測定方法(発明例)、手作業(従来例1)および単純な二値化処理および切断方法を用いた方法(従来例2)の3種類の方法により、純鉄圧粉磁芯の結晶粒の平均粒径の測定を行った。測定に供した処理対象画像は、図8に示す、視野が異なる画像1〜3の3枚の画像であり、純鉄圧粉磁芯サンプルの観察面を耐水ペーパーで研磨した後、ダイヤモンドバフで鏡面仕上げした後に、3体積%ナイタール液を用いて結晶粒界を現出させた組織を、光学顕微鏡により撮影した画像である。画像1〜3は、いずれも256階調のグレースケール画像である。以下、発明例、従来例1および従来例2の各々について、測定方法を具体的に説明する。(発明例) 図1に示したフローチャートに従って、図8に示した画像1〜3に含まれる結晶粒の平均粒径を測定した。すなわち、まず、処理対象画像としての画像1〜3のそれぞれについて複製画像を作成して参照画像とし、画像1〜3のそれぞれの下に重ね合わせた。次いで、処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、128を閾値として二値化処理をした後、画像1〜3のそれぞれにおいて、165〜197の画素値範囲に対応する領域を透明化し、続いて処理対象画像と参照画像との重ね合わせにより顕在化された、結晶組織に含まれる白色の結晶粒の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行った、最後に、切断法により結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定した。その際、具体的な測定条件は、以下のとおりである。すなわち、画像に対して垂直な測定線を5本、水平な測定線を5本等間隔に配置し、測定線が横切った黒色化領域の数で測定線の全長を割った値を各線で求め、平均値を算出し、この値を平均粒径とした。(従来例1) 手作業により、図8に示した画像1〜3に含まれる結晶粒の平均粒径を測定した。すなわち、画像に対して垂直な測定線を5本、水平な測定線を5本等間隔に配置し、測定線が横切った粒界の数で測定線の全長を割った値を各線で求め、平均値を算出し、この値を平均粒径とした。(従来例2) 単純な二値化処理および切断方法を用いた方法により、図8に示した画像1〜3に含まれる結晶粒の平均粒径を測定した。すなわち、画像に対して垂直な測定線を5本、水平な測定線を5本等間隔に配置し、測定線が横切った黒色化領域の数で測定線の全長を割った値を各線で求め、平均値を算出し、この値を平均粒径とした。<粒径測定結果の評価> 測定結果を表1に示す。表から明らかなように、発明例は、従来例1および従来例2に比べて測定者による測定結果のばらつきが低減しており、全ての視野で個人差1μm未満となっている。また、従来例1と発明例の測定結果を各視野で比較すると、その差は全ての視野で1μm未満となっていることから、従来例1と同等の測定結果が得られることが分かる。以上より、本発明による粒径測定方法は、手作業による従来例1と同等の測定結果を測定者による測定結果のばらつきを低減しつつ測定できることが分かる。 本発明によれば、二値化した画像の結晶粒内部を透明化することにより、結晶粒の輪郭領域が白色化されて顕在化され、測定者が結晶粒界を現出するのに最適な閾値に調整することが容易になり、測定者による測定結果のばらつきを低減することができるため、製鉄業において有用である。1 粒径測定装置11 画像導入部12 二値化処理部13 透明化処理部14 閾値調整部15 粒径測定部S1 画像導入ステップS2 画像積層ステップS3 二値化処理ステップS4 透明化処理ステップS5 閾値調整ステップS6 粒径測定ステップ 材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、および前記結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を用意する画像準備ステップと、 前記処理対象画像の下に前記参照画像を重ね合わせる画像積層ステップと、 前記処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す二値化処理ステップと、 前記処理対象画像において、下限が前記二値化処理の閾値よりも高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する透明化処理ステップと、 前記処理対象画像と前記参照画像との重ね合わせにより顕在化された、前記結晶組織に含まれる結晶粒の白色の輪郭領域を黒色化するように前記閾値を調整しながら二値化処理を行う閾値調整ステップと、 切断法により前記結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定する粒径測定ステップと、を備えることを特徴とする粒径測定方法。 前記参照画像は前記処理対象画像の複製画像である、請求項1に記載された方法。 前記二値化処理に用いる閾値は、前記処理対象画像の階調値の半分の値である、請求項1または2に記載された方法。 透明化処理が施された前記処理対象画像と前記参照画像との重複により前記結晶組織中の結晶の輪郭領域が顕在化しない場合には、前記閾値の低減、前記画素値範囲の拡大、あるいは前記画素値範囲の画素値の小さい方向へのシフトを行った後に、前記二値化処理ステップ、前記透明化処理ステップ、前記閾値調整ステップおよび前記粒径測定ステップを再度行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、および前記結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を取り込み、前記処理対象画像の下に前記参照画像を重ね合わせる画像導入部と、 前記処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す二値化処理部と、 前記処理対象画像において、下限が前記二値化処理の閾値より高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する透明化処理部と、 前記処理対象画像と前記参照画像との重ね合わせにより顕在化された、前記結晶組織に含まれる結晶粒の白色の輪郭領域を黒色化するように前記閾値を調整しながら二値化処理を行う閾値調整部と、 切断法により前記結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定する粒径測定部と、を備えることを特徴とする粒径測定装置。 前記参照画像は前記処理対象画像の複製画像である、請求項5に記載された装置。 前記二値化処理に用いる閾値は、前記処理対象画像の階調値の半分の値である、請求項5または6に記載された装置。 コンピュータを、請求項5〜7のいずれか1項に記載された粒径測定装置として機能させるためのプログラム。 【課題】測定者による測定結果のばらつきを低減できる結晶粒径測定方法、測定装置および測定プログラムを提供する。【解決手段】材料における所定領域の結晶組織が撮影された処理対象画像、結晶組織中の結晶粒の輪郭領域を顕在化させるための参照画像を用意する画像準備ステップと、処理対象画像の下に参照画像を重ね合わせる画像積層ステップと、処理対象画像を構成する各画素の画素値に対して、所定の画素値を閾値として二値化処理を施す二値化処理ステップと、処理対象画像において、下限が二値化処理の閾値よりも高い所定の画素値範囲に対応する領域を透明化する透明化処理ステップと、処理対象画像と参照画像との重ね合わせにより顕在化された、結晶組織に含まれる結晶粒の白色の輪郭領域を黒色化するように閾値を調整しながら二値化処理を行う閾値調整ステップと、切断法により結晶組織に含まれる結晶粒の平均粒径を測定する粒径測定ステップとを備える。【選択図】図1