生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_家畜の分娩後のケトーシス予防剤
出願番号:2014073709
年次:2014
IPC分類:A61K 31/7016,A23K 1/16,A61P 7/00,A61P 3/00


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寺村 誠 花田 正明 大谷 昌之 佐藤 忠 JP 2014132028 公開特許公報(A) 20140717 2014073709 20140331 家畜の分娩後のケトーシス予防剤 国立大学法人帯広畜産大学 504300088 日本甜菜製糖株式会社 000231981 松本 久紀 100097825 松本 紀一郎 100137925 水野 基樹 100158698 寺村 誠 花田 正明 大谷 昌之 佐藤 忠 A61K 31/7016 20060101AFI20140620BHJP A23K 1/16 20060101ALI20140620BHJP A61P 7/00 20060101ALI20140620BHJP A61P 3/00 20060101ALI20140620BHJP JPA61K31/7016A23K1/16 303DA61P7/00A61P3/00 6 7 2010191066 20100827 OL 9 2B150 4C086 2B150AA01 2B150AA02 2B150AA03 2B150AA06 2B150AB10 2B150DC15 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA01 4C086MA01 4C086MA04 4C086MA52 4C086NA14 4C086ZA51 4C086ZC21 本発明は、家畜の分娩後のケトーシスを予防する技術に関するものである。詳細には、家畜(反芻家畜、豚、馬など)において、分娩後のケトーシスを予防するための動物医薬剤、方法等に関するものである。 乳牛などの家畜において、一時的に飼料採食量(飼料摂取量)が低下する現象が見られる場合がある。特に、急激な代謝的変化を迎え、多くのエネルギーを必要とする分娩前後(例えば分娩直前の数日間、分娩直後など)において、飼料採食量が著しく低下する場合があることが広く知られている。これは、胎児の成長による消化管圧迫・縮小、分娩によるホルモン状態の変化などが原因として考えられているが、この現象の明確な理由は未だ不明である。 乳牛などの家畜は、分娩前の胎児への栄養要求や分娩後の泌乳のために、分娩前後においてエネルギー要求性が高くなる。しかし、上述の飼料採食量の低下、ホルモンバランスのくずれなどの要因により、エネルギー要求量と摂取量の不均衡状態(いわゆる負のエネルギーバランス)となる場合が多くある。この場合、体内にある自らの体脂肪をエネルギーに変えようとする働きが起こる。 例えば、乳牛の体内では、栄養が必要な時に飼料摂取量が低いと、体脂肪から遊離脂肪酸(NEFA)が放出され、一時的に中性脂肪として肝臓に蓄えられる。蓄えられた中性脂肪はリポタンパク(VLDL)として肝臓から血中へ放出され、母牛のエネルギーとなる。しかし、肝臓へのNEFA流入が増加し肝臓に蓄積されることによって、脂肪肝、ケトーシス等の疾病(周産期疾病)を招いてしまう場合がある(非特許文献1)。これが、結果的に乳生産低下や繁殖成績悪化などにつながってしまう。 この家畜の飼料採食量低下の対策としては、家畜舎の換気を良好にする、飼料の給与回数を増やす、粗飼料の切断長を短めにする、採食刺激を与える、良質の粗飼料を与える、等が提案されている(非特許文献2)。しかし、これらの方法では、家畜の管理労力が非常に増大し、好ましい方法とはいえない。 この他にも、アミノ化合物中性塩酸塩等の給与による生体内のアニオン調節及び疾病防止(特許文献1、特許文献2)、プロピオン酸含有飼料(特許文献3)給与などが提案されているが、いずれの方法も十分な効果を挙げているとは言えず、より簡便で効果的に家畜の飼料採食量低下を抑制できる成分、方法の開発が望まれていた。特開平11−029469公報特開平11−032696公報特開2001−025367公報日本家畜臨床学会誌、28巻1号、2005年Dairy Japan 2005年10月臨時増刊号、「これだけは知っておきたい周産期の管理」、2005年10月5日 本発明は、簡便かつ効率的で安全性の高い、家畜の分娩後のケトーシスを予防するための動物医薬剤、方法等を提供することを目的とする。 上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究の結果、フラクトース2分子が結合したオリゴ糖であるダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を有効成分とし、家畜の分娩前2週間から分娩後1週間の間において、1日あたりDFA IIIを5〜50g/個体の量で経口投与されるように用いられることで、家畜の分娩後のケトーシスを予防できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明の実施形態は次のとおりである。(1)ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を有効成分とし、家畜の分娩前2週間から分娩後1週間の間において、1日あたりダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を5〜50g/個体の量で経口投与されるように用いられ、家畜の分娩後の血中ケトン体濃度を1400μmol/L未満とすることを特徴とする、家畜の分娩後のケトーシス予防剤。(2)家畜が、反芻家畜、馬、豚、犬、猫から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(1)に記載の剤。(3)反芻家畜が、牛、羊、山羊から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(2)に記載の剤。(4)家畜の分娩前2週間から分娩後1週間の間において、1日あたりダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を5〜50g/個体の量で経口投与又は給与することを特徴とする、家畜の分娩後の血中ケトン体濃度を1400μmol/L未満としてケトーシスを予防する方法。(5)家畜が、反芻家畜、馬、豚、犬、猫から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(4)に記載の方法。(6)反芻家畜が、牛、羊、山羊から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、(5)に記載の方法。 本発明によれば、家畜にダイフラクトースアンハイドライドIIIを分娩前2週間から分娩後1週間の間において1日あたり5〜50g/個体の量で経口投与するだけで、家畜の分娩後のケトーシスを予防することができる。そして、家畜の生産性(乳生産性、食用肉生産性など)を高めることができる。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩前後の飼料乾物摂取量を示す。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩前後の代謝体重あたり飼料乾物摂取量を示す。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩後6週間(分娩後42日間)の乳生産量を示す。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩前後の血中カルシウム濃度の変化を示す。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩前後の血中グルコース濃度の変化を示す。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩前後の血中遊離脂肪酸(NEFA)濃度の変化を示す。DFA III投与群(D)及び対照群(C)の牛の分娩前後の血中ケトン体(βヒドロキシ酪酸、BHBA)濃度の変化を示す。 本発明においては、ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として使用する。ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III、Difructose anhydride III)は、フラクトース2分子が結合したオリゴ糖であり、砂糖の半分程度の甘味があり、難消化性で、カルシウムをはじめとするミネラルの吸収促進効果がヒトやラットで確認されている等の特徴がある。例えば、軟白野菜としても利用されるチコリの貯蔵物質であるイヌリンを原料に製造される精製結晶などを用いることができるが、これに限定されるものではない。形態も粉末状、顆粒状、液状、ペースト状等どのようなものでも使用することができ、特に限定されるものではない。また、DFA IIIの精製品に限らず、粗精製品、製造工程において生成する中間生成物、同排液、及びこれらの処理物(濃縮物、ペースト化物、乾燥物、希釈物、懸濁物、乳化物など)から選ばれる少なくともひとつを使用することもできる。すなわち、DFA IIIが有効量含有されていれば、製造工程で得られる多少純度の低いシラップ(粗シラップ)などでも良い。 本発明の対象となる家畜は、乳や肉などをヒトが利用する反芻家畜(乳牛、肉牛、羊、山羊など)、馬、豚や、毛・皮や労働力利用などがされている犬、猫などが例示されるが、これらに限定されるものではない。 本発明に係るダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有する組成物は、家畜へ経口投与又は給与を行う。投与量は、例えば乳牛においては、1日あたりダイフラクトースアンハイドライドIIIとして5〜50g/個体(つまり家畜1頭あたりDFA IIIとして5〜50g/日)、好ましくは15〜40g/個体、更に好ましくは30〜40g/個体の量にて投与するのが有効である。牛以外の家畜についても、当該投与量と同じでも良いし、この数値から所定の換算等を行って投与量を設定してもよい。 また、本発明に係るダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有する組成物の投与方法については、これに限定されるものではないが、家畜の分娩前及び/又は分娩後に継続して(毎日)投与するのが好ましい。特に、家畜の分娩前3週間から分娩後3週間の間において、ダイフラクトースアンハイドライドIIIを分娩を挟んで3週間以上(好ましくは3〜6週間)経口投与又は給与するとより効果的である。 このように、本発明のダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有する組成物の経口投与又は給与により、特に分娩前後の飼料採食量低下を抑制して負のエネルギーバランス状態を改善し、体脂肪からの脂肪酸遊離を抑制して、脂肪肝やケトーシス等の周産期疾病などを予防、治療することができる。 したがって、ダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有する組成物として、家畜の脂肪肝予防治療剤、家畜のケトーシス予防治療剤等としても提供することができる。 動物医薬の場合、その形態としては例えば粉末剤、顆粒剤、シロップ剤等をあげることができる。これらの各種製剤は、有効成分となるダイフラクトースアンハイドライドIIIのみを投与できるよう単独成分として製剤化しても良いし、必要であれば医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を併用して、定法により製剤化することもできる。 療養用飼料組成物としての形態についても限定はなく、家畜が摂食しやすいように固体状(粉末、顆粒状その他)、ゲル状、ペースト状、液状ないしは懸濁状など、さらにはこれらを通常の飼料に添加、混合するなど、適宜選択することができる。 上記のような組成物を家畜に経口投与又は給与するだけで、家畜の各種周産期疾病発生等を予防して、家畜の生産性を高めることができる。また、本発明の方法は、単にダイフラクトースアンハイドライドIIIを有効成分として含有する組成物を家畜に投与等するのみであり、家畜の管理労力が非常に少なく簡便かつ効率的である。 以下、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。(ダイフラクトースアンハイドライドIIIの経産牛への投与試験) ダイフラクトースアンハイドライドIII投与の経産牛への影響(飼料採食性、血液中の成分の変化)を確認するため、以下の試験を実施した。 経産牛12頭を2群に分け、一方の群にはDFA III(日本甜菜製糖株式会社製、純度95%以上)を経口投与し(DFA III群)、もう一方は無投与の対照群とした。DFA III群には、牛1頭に対し分娩予定2週間前から分娩後1週間まで1日あたり40gとなるようDFA IIIを経口投与し、両群について分娩3週間前から分娩3週間後まで毎日飼料採食量を調査した。DFA IIIの投与は、ビートパルプにDFA IIIの粗シラップを添加した飼料(DFA III 20%含有)を所要量給与するようにして行った。 なお、牛の飼料採食量は、飼料給与量(乾物)から残飼量(乾物)を引いた量(乾物摂取量)とした。また、各個体の大きさによる採食量への影響を考慮するため、代謝体重あたりの乾物摂取量(乾物摂取量÷体重0.75)も確認した。 さらには、泌乳量及び血液成分からの栄養状態を確認するために、分娩後6週間の乳量を確認し、あわせて、分娩3週間前から分娩6週間後までの血液成分も確認した。なお、分娩6週まで毎週牛の体重を測定し、乾物摂取量、乳量、及び血液中の成分についてt検定を行った。 結果としては、まず飼料採食量(乾物摂取量)は、図1に示すように分娩前後3週間の全てにおいてDFA III群の方が高かった。特に、1週間目(分娩1〜7日後)と3週間目(分娩15〜21日後)は有意に高かった(+1wk:P<0.05、+3wk:P<0.10)。 また、図2に示すように代謝体重当たり乾物摂取量も、分娩前後3週間の全てにおいてDFA III群の方が高かった。特に、1週間目と3週間目は有意に高かった(P<0.10)。 さらに乳生産量は、図3に示したようにDFA IIIの経口投与により、若干高くなる傾向を示した。 また、図4に示すように、血中カルシウム濃度は分娩時に大きく低下したが、DFA III群は分娩の半日後には9mg/dl程度まで回復したのに対し、対照群は分娩の2日後まで回復が遅れた。 図5に示したように、血中グルコース濃度についてもDFA III群は対照群と比較して高く推移した。 そして、その他の血液中の成分については、図6に示すとおり血中遊離脂肪酸(NEFA)濃度は、分娩後3週間においてDFA III群で低く推移した。特に、分娩後12、18、48時間後は、有意に低かった(P<0.10)。 NEFAは脂肪動員を直接反映することからエネルギー代謝の指標となる。すなわち、乳牛がエネルギー不足に陥ると、脂肪組織ではそのエネルギー不足を補うため、体脂肪が分解されNEFAが血中に放出される。一般的に泌乳初期にNEFAは増加するが、これは泌乳開始に伴うエネルギー要求量の増加に採食量が追いつかずエネルギー不足となり、これを補うために体脂肪が動員された結果とされている。 そこで、エネルギー不足の基準値であるNEFA800μEq/Lを上回った個体数を比較すると、表1に示すようにDFA III群で少なかった。 また、血中ケトン体(βヒドロキシ酪酸:BHBA)濃度は、図7に示すように対照群に比べDFA III群で低く推移し、表2に示すようにケトーシスの基準値である1400μmol/Lを上回った個体数を比較すると、DFA III群で有意に少なかった(P<0.10)。 なお、エネルギー不足及びケトーシスの基準値は家畜共済の診療指針(全国農業共済会;平成14年)によるものである。また、表1及び表2の、基準値を超える個体数の比較においては、Fisherの正確確率検定を採用して検定を行った。 これらの結果から、DFA III経口投与による分娩前後の飼料採食量の顕著な増加・回復を確認できた。また、分娩前後における血中遊離脂肪酸濃度やβヒドロキシ酪酸濃度からも飼料採食量増加による負のエネルギーバランス状態の改善が示唆された。さらに、DFA IIIの低カルシウム血症予防改善効果は既に知られているが、本試験においても同様の効果を確認した。 低カルシウム血症は消化管運動を抑制し、飼料摂取量低下の原因となると推察され、本試験においては、DFA III投与により分娩後早期の低カルシウム血症由来の消化管運動性低下が抑制され、飼料採食量の増加につながったと推察される。 ダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を有効成分とし、家畜の分娩前2週間から分娩後1週間の間において、1日あたりダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を5〜50g/個体の量で経口投与されるように用いられ、家畜の分娩後の血中ケトン体濃度を1400μmol/L未満とすることを特徴とする、家畜の分娩後のケトーシス予防剤。 家畜が、反芻家畜、馬、豚、犬、猫から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項1に記載の剤。 反芻家畜が、牛、羊、山羊から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項2に記載の剤。 家畜の分娩前2週間から分娩後1週間の間において、1日あたりダイフラクトースアンハイドライドIII(DFA III)を5〜50g/個体の量で経口投与又は給与することを特徴とする、家畜の分娩後の血中ケトン体濃度を1400μmol/L未満としてケトーシスを予防する方法。 家畜が、反芻家畜、馬、豚、犬、猫から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。反芻家畜が、牛、羊、山羊から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。 【課題】簡便かつ効率的で安全性の高い、家畜の分娩後のケトーシスを予防するための動物医薬剤、方法等を提供する。【解決手段】フラクトース2分子が結合したオリゴ糖であるダイフラクトースアンハイドライド III(DFA III)を有効成分とし、家畜の分娩前2週間から分娩後1週間の間において、DFA IIIを5〜50g/個体の量で経口投与されるように用いられ、家畜の分娩後の血中ケトン体濃度を1400μmol/L未満として、ケトーシスを予防する。【選択図】図7


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