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タイトル:公開特許公報(A)_カルボン酸無水物の製造方法
出願番号:2014070523
年次:2015
IPC分類:C07D 493/10,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

小松 伸一 藤原 実希 古俣 歩 松本 隆也 JP 2015189757 公開特許公報(A) 20151102 2014070523 20140328 カルボン酸無水物の製造方法 JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 特許業務法人セントクレスト国際特許事務所 110001047 小松 伸一 藤原 実希 古俣 歩 松本 隆也 C07D 493/10 20060101AFI20151006BHJP C07B 61/00 20060101ALN20151006BHJP JPC07D493/10 AC07B61/00 300 5 OL 35 4C071 4H039 4C071AA04 4C071AA08 4C071BB01 4C071BB08 4C071CC12 4C071EE05 4C071FF15 4C071HH08 4C071KK01 4C071LL03 4H039CA42 4H039CH10 本発明は、カルボン酸無水物の製造方法に関する。 カルボン酸無水物は、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の原料や熱硬化性樹脂の硬化剤等として利用されている。このようなカルボン酸無水物を製造する方法としては様々な方法が知られており、例えば、特開平5−140141号公報(特許文献1)においては、不均一系触媒(例えば、酸性イオン交換樹脂等)を利用して、低級カルボン酸中において、下記一般式(A):[一般式(A)中、Raは2〜4価の有機基であり、Z1は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は−COORd基であり、Z2は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基又は−COORe基であり、ここでRb〜Reは同一又は異なっていてもよく、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。]で表されるカルボン酸又はカルボン酸エステルを加熱することにより、カルボン酸無水物を製造する方法が開示されている。なお、このような特許文献1においては、前記カルボン酸無水物を製造する方法により、原料化合物として特にカルボン酸エステルを用いた場合には、そのカルボン酸エステル中のエステル基のカルボン酸分解反応及びそれに続く酸無水物化反応といった二つの反応を一工程で併せて実施することができる旨が開示されている。特開平5−140141号公報 しかしながら、特許文献1に記載のような方法を利用した場合には、一般にカルボン酸無水物が溶媒(低級カルボン酸)に対する溶解性に乏しいものであるため、前述の酸無水物化反応により酸無水物が製造されると、酸無水物の結晶が析出する現象が起こり、結晶状態で存在する生成物と不均一系触媒(例えばイオン交換樹脂等)とが共存する状態(混合物の状態)となるため、酸無水物の製造後に前記混合物(生成物)から反応に利用した不均一系触媒を除去する必要があった。一方、生成物と不均一系触媒との分離は極めて困難であり、実験室的に(ラボレベルで)熱時濾過により不均一系触媒を分離する方法を採用することが可能であるに過ぎなかった。なお、このような熱時濾過により不均一系触媒を分離する方法は、カルボン酸無水物が反応性の高い化合物であるため、使用できる溶媒が限られるばかりか、カルボン酸無水物が溶媒への溶解性に乏しいものであるため、大量の溶媒を使用する必要があり、工業的に実施することが困難な方法である。このように、特許文献1に記載のような方法において不均一系触媒を利用した場合には、工業的にカルボン酸無水物を効率よく製造することはできなかった。一方、特許文献1に記載のような方法においては、p−トルエンスルホン酸等の均一系触媒を利用することも提案されているが、このような均一系触媒を利用した場合には、生成物に着色が見られ、着色の無いカルボン酸無水物を効率よく製造することはできなかった。 本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、不均一系触媒を利用しながら、不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離を効率よく行うことができ、結晶本来の色に対して着色の無いカルボン酸無水物を効率よく製造することが可能なカルボン酸無水物の製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記一般式(1)で表わされる原料化合物を、不均一系触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱することにより、カルボン酸無水物を得るカルボン酸無水物の製造方法において、前記不均一系触媒を多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒からなるものとすることにより、不均一系触媒を利用しながら、不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶の分離を効率よく行うことが可能となり、これにより結晶本来の色に対して着色の無いカルボン酸無水物を効率よく製造することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明のカルボン酸無水物の製造方法は、下記一般式(1):[式(1)中、R1は、少なくとも隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基であり、該隣接する2つの炭素原子に式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基がそれぞれ結合されており、 R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示し、 Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR4(R4は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示し、 Yは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR5(R5は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示す。]で表わされる原料化合物を、不均一系触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱することにより、カルボン酸無水物を得るカルボン酸無水物の製造方法であって、 前記不均一系触媒が多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒からなることを特徴とする方法である。 上記本発明のカルボン酸無水物の製造方法においては、前記多孔質の膜状体の触媒及び前記多孔質の板状体の触媒がそれぞれ、イオン交換樹脂からなることが好ましい。また、上記本発明のカルボン酸無水物の製造方法においては、前記不均一系触媒がイオン交換膜であることが好ましい。 また、上記本発明のカルボン酸無水物の製造方法においては、前記不均一系触媒が、イオン交換容量が0.01ミリ当量/g〜50ミリ当量/gの触媒であることが好ましい。 さらに、上記本発明のカルボン酸無水物の製造方法においては、前記原料化合物が下記一般式(2):[式(2)中、R2、R3、R4、R5は上記一般式(1)において説明したR2、R3、R4、R5と同義であり、R6、R7、R8は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]で表わされるスピロ化合物であることが好ましい。 本発明によれば、不均一系触媒を利用しながら、不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離を効率よく行うことができ、結晶本来の色に対して着色の無いカルボン酸無水物を効率よく製造することが可能なカルボン酸無水物の製造方法を提供することが可能となる。 以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。 本発明のカルボン酸無水物の製造方法は、下記一般式(1):[式(1)中、R1は、少なくとも隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基であり、該隣接する2つの炭素原子に式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基がそれぞれ結合されており、 R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示し、 Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR4(R4は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示し、 Yは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR5(R5は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示す。]で表わされる原料化合物を、不均一系触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱することにより、カルボン酸無水物を得るカルボン酸無水物の製造方法であって、 前記不均一系触媒が多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒からなることを特徴とする方法である。 (不均一系触媒) 本発明に用いる不均一系触媒は、多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒からなるものである。 このような多孔質の膜状体及び/又は多孔質の板状体の形態を有する触媒を利用することで、触媒の表面に目的とするカルボン酸無水物の結晶が析出した場合においても、結晶を容易に表面から分離でき、また、その形状から、そもそも反応系から触媒を分離して取り出すことが容易であることから、不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離を効率よく行うことが可能となる。このような観点から、本発明においては、多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒を不均一系触媒として利用する。 このような多孔質の膜状体の触媒(以下、場合により「多孔質膜状触媒」と称する。)は、多孔質であってかつ膜状の形状を有する不均一系触媒であればよい。このような膜状体としては、いわゆる膜状であればよく、その形状は特に制限されないが、均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離をより効率よく行うことができることから、その表面に面積が0.0001m2以上(より好ましくは0.001〜100m2)となるような略平面を有する膜であることが好ましい。また、このような膜状体としては、面内の最大の長さが0.01m(より好ましくは0.1m)以上となる略平面を有する膜であることが好ましい。このような面積や面内の最大の長さが前記下限未満では、カルボン酸無水物の結晶の分離が困難となる傾向にある。 また、このような膜状体としては、その表面に、縦の長さが0.01〜10m(より好ましくは0.1〜1m)で横の長さが0.01〜10m(より好ましくは0.1〜1m)の略四角形の略平面を有するものが好ましい。このような縦及び横の長さが前記下限未満ではカルボン酸無水物の結晶との分離が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応機への設置が困難となる傾向にある。 また、このような膜状体の厚みは特に制限されるものではないが、1000μm未満のものであればよく、1〜500μmであることが好ましく、10〜400μmであることがより好ましい。このような膜状体の厚みが前記下限未満では機械的強度が弱くなり破断しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、質量増加や柔軟性の点から反応機(反応に用いる製造装置)への設置が困難になる傾向にある。 また、前記多孔質の板状体の触媒(以下、場合により「多孔質板状触媒」と称する。)は、多孔質であってかつ板状の形状を有する不均一系触媒であればよい。このような板状体は、いわゆる板状の形状を有していればよく、例えば、モノリス型化したもの(例えばスポンジ状のもの)であってもよい。このような板状体の形状としては、不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離をより効率よく行うことができることから、そのいずれかの表面に面積が0.0001m2以上(より好ましくは0.001〜100m2)となるような略平面を有するものであることが好ましい。また、このような板状体としては、面内の最大の長さが0.01m(より好ましくは0.1m)以上となる略平面を有する板状の形態であることが好ましい。このような面積や面内の最大の長さが前記下限未満では、カルボン酸無水物の結晶の分離が困難となる傾向にある。 また、このような板状体としては、その表面に、縦の長さが0.01〜10m(より好ましくは0.1〜1m)で横の長さが0.01〜10m(より好ましくは0.1〜1m)の略四角形の略平面を有するものが好ましい。このような縦及び横の長さが前記下限未満ではカルボン酸無水物の結晶との分離が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応機への設置が困難となる傾向にある。 さらに、このような板状体の厚みは特に制限されるものではないが、1000μm以上であればよく、1〜100mmであることが好ましく、2〜50mmであることがより好ましい。このような膜状体の厚みが前記下限未満では機械的強度が弱くなり破砕しやすくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると質量増加の点から反応機への設置が困難にとなる傾向にある。 また、前記多孔質の触媒としては特に制限されず、触媒等に利用することが可能なものであればよく、例えば、公知の多孔体からなるものを適宜選択して利用してもよい。このように、多孔質の触媒としては、特に制限されず、いわゆる多孔質の材料として知られている公知の材料からなるもの(いわゆる多孔体として知られているもの、例えば、ゼオライトの膜や、イオン交換膜等の多孔質高分子の膜状体等)を適宜選択して利用することができる。また、このような多孔質の触媒(多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒)としては、その孔の構造や孔の大きさ等も特に制限されるものではなく、反応に用いる原料化合物の種類等に応じて、その構造等を適宜選択して利用することができる。このような多孔質の触媒としては、触媒活性の観点からは、孔がミクロポーラス、メソポーラス、マクロポーラスとなっているものを好適に利用することができる。このように、前記多孔質の触媒としては、反応に用いる原料化合物の種類等に応じて、ミクロポーラス、メソポーラス、マクロポーラスとなっている公知の材料からなるものを適宜選択して利用してもよい。なお、かかる孔の状態はN2ガス吸着法(1点BET法、多点BET法)による細孔分布・比表面積測定法や化学吸着法による比表面積測定法、水銀圧入法による細孔分布測定法を実施することにより確認することができる。 また、このような多孔質の膜状体及び/又は多孔質の板状体の触媒において、孔の大きさ等は特に制限されるものではないが、平均細孔径が0.1nm〜100μmのものを好適に利用できる。このような平均細孔径が前記下限未満では細孔内に基質が取り込まれず反応速度が遅延する傾向にあり、他方、前記上限を超えると強度が低下する傾向にある。なお、このような平均細孔径は、前述の細孔分布・比表面積測定法や、電子顕微鏡、光学顕微鏡などによって測定することができる。 このような多孔質の膜状体及び/又は多孔質の板状体としては、空隙率が1〜90%であることが好ましく、10〜70%であることがより好ましい。このような空隙率が前記下限未満では反応速度が遅延する傾向にあり、他方、前記上限を超えると強度が低下する傾向にある。なお、このような空隙率は、ガス置換法や水銀圧入法などにより測定することができる。 また、このような多孔質の膜状体及び/又は多孔質の板状体としては、比表面積が1〜1000m2/gであることが好ましく、10〜500m2/gであることがより好ましい。このような比表面積が前記下限未満では反応速度が遅延するとなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると強度が低下するとなる傾向にある。このような比表面積はガス吸着法、BET法などにより測定することができる。 このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒としては、イオン交換樹脂、金属酸化物、ゼオライト、金属錯体等、固体酸触媒として利用可能な材料からなるものが挙げられる。このように、多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒としては、前記材料をそれぞれ多孔質の膜状体及び/又は多孔質の板状体に成形して得られるものを適宜利用できる。このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒の中でも、酸強度の観点から、イオン交換樹脂からなる触媒(例えば、イオン交換膜、イオン交換不織布、イオン交換ろ紙、イオン交換ろ布等)を利用することが好ましく、入手の容易性、等の観点から、イオン交換膜(イオン交換樹脂膜)を利用することがより好ましい。このように、前記不均一系触媒としては、イオン交換樹脂からなるものが好ましく、イオン交換膜(イオン交換樹脂膜)がより好ましい。 このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒としては、式:−SO3Hで表される基、式:−CF2COOHで表される基、式:−CF2SO3Hで表される基、式:−COOHで表される基、フェノール性水酸基等の官能基を有する触媒や、ゼオライト,シリカアルミナ、メソポーラス物質、ヘテロポリ酸、硫酸化ジルコニア、硫酸化ナノグラフェン、複合酸化物塩化物、カーボン固体酸などを適宜利用することができ、特に制限されないが、十分な酸強度を得るといった観点から、官能基として、式:−SO3Hで表される基、式:−CF2COOHで表される基、式:−CF2SO3Hで表される基のうちの少なくとも1種を有する触媒を利用することが好ましい。また、このような官能基としては、酸強度の観点から、式:−SO3H基で表される基(スルホン酸基)、式:−CF2COOHで表される基、式:−CF2SO3Hで表される基がより好ましく、式:−CF2COOHで表される基、式:−CF2SO3Hで表される基が特に好ましい。なお、式:−SO3Naで表される基、式:−CF2COONaで表される基、及び、式:−CF2SO3Naで表される基のうちの少なくとも1種の基を有する触媒の前駆体を準備した後、その基の中に含まれているNaをHに交換して、前記官能基を有する多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒として利用してもよい。 また、前記多孔質膜状触媒及び前記多孔質板状触媒としては、特に制限されないが、イオン交換樹脂からなる膜状体又は板状体が好ましく、例えば、スチレンとジビニルベンゼンの共重合体を主成分とする膜状体又は板状体にスルホン酸基等の前記官能基を導入して得られたイオン交換膜(膜状体)又は板状体、スチレン−ブタジエン系の共重合体を主成分とする膜状体又は板状体にスルホン酸基等の前記官能基を導入したイオン交換膜(膜状体)又は板状体、フェノール及びホルマリンの縮合物からなるイオン交換膜(膜状体)又は板状体、ポリオレフィンフィルムにスチレンをグラフト重合して得られた膜状体又は板状体にスルホン酸基等の前記官能基を導入したイオン交換膜(膜状体)又は板状体、テトラフルオロエチレンとパーフルオロスルホニルエトキシビニルエーテルの共重合体からなるイオン交換膜(膜状体)又は板状体、テトラフルオロエチレンとカルボキシル基を側鎖にもつパーフルオロビニルエーテル類との共重合体からなる膜状体又は板状体等を好適に利用できる。このように、イオン交換樹脂からなる前記多孔質膜状触媒及び前記多孔質板状触媒としては、例えば、スルホン酸基等の各種官能基を有する樹脂を多孔質の膜状体及び板状体に成形して得られる触媒や、成形後の多孔質の樹脂(膜状体及び板状体)の表面にスルホン酸基等の前記官能基を導入して得られる触媒等を適宜利用することができる。なお、このような樹脂の成形体(膜状体及び板状体)の成形方法は特に制限されず、公知の方法(例えば、押出成型等)を適宜採用することができる。 また、前記多孔質膜状触媒及び前記多孔質板状触媒の材料として好適なイオン交換樹脂としては、フッ素系のイオン交換樹脂を好適に利用でき、中でも、パーフルオロスルホン酸基を含有するイオン交換樹脂や、テトラフルオロエチレンとカルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルの共重合体からなるイオン交換樹脂を好適に利用できる。このようなパーフルオロスルホン酸基を含有するイオン交換樹脂としては、例えば、下記構造式(a):[式(a)中、m、Z、nはそれぞれ繰り返し数を示す(ここにおいて、mは5〜13.5の数値であることが好ましく、Zは1〜5の整数であることが好ましく、nは10〜10000(更に好ましくは1000程度)であることが好ましい。)]で表される構造を有する化合物を前駆体として用いて該前駆体を加水分解(−SO2Fを−SO3Hに変換)することにより得られるイオン交換樹脂を好適に利用することができ、また、テトラフルオロエチレンとカルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルの共重合体からなるイオン交換樹脂としては、下記構造式(b):[式(b)中、X、Y、M、Nはそれぞれ繰り返し数を示す(ここにおいて、Xは10〜10000であることが好ましく、Yは1〜100であることが好ましく、Mは0又は1であることが好ましく、Nは1〜5であることが好ましい。)]で表される構造を有する化合物を好適に利用することができる。なお、このようなフッ素系のイオン交換樹脂としては市販品を利用でき、パーフルオロスルホン酸基を含有するイオン交換樹脂としてはデュポン社製の製品(商品名:ナフィオン)や旭硝子社製の製品(商品名:セレミオンCMF)を好適に用いることができ、テトラフルオロエチレンとカルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルの共重合体からなるイオン交換樹脂としては旭硝子社製の製品(商品名:フレミオン)を好適に用いることができる。 また、このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒としては、いわゆるイオン交換膜、イオン交換不織布、イオン交換ろ紙(又はろ布)、モノリス型多孔質イオン交換樹脂を好適に利用することができる。このようなイオン交換膜としては市販品を利用してもよく、例えば、アストム社製の製品(商品名:ネオセプタCMV、ネオセプタCMB、ネオセプタCMS、ネオセプタCMT、ネオセプタCL−25T、ネオセプタCMD、ネオセプタCM−2、ネオセプタCSO等)、旭硝子社製の製品(商品名:セレミオンCMD、セレミオンCMT、セレミオンCMV、セレミオンCAV、セレミオンHSF、セレミオンCSO、セレミオンCMF、セレミオンFX−151、フレミオン等)、フマテック社製の製品(商品名:FKF,FKC,FKL,FKE等)、デュポン社製の製品(商品名:ナフィオン324、ナフィオン117、ナフィオン115等)、旭化成社製の製品(商品名:アシプレックスK−501)、SYBRON社製の製品(商品名:Ionac MC−3470等)が挙げられる。また、このようなイオン交換膜としては、公知の文献(例えば、P.D.Edwards著、「Nafion製品の現況と将来」、ソーダと塩素、No.2、1979年、日本ソーダ工業会発行、4頁;森本剛ら著、「電気化学および工業物理化学(VOL.60、NO.2)」、1992年2月、社団法人電気化学会発行、145頁)に記載のものを適宜利用してもよい。 また、前記イオン交換不織布としては市販品を利用してもよく、ムロマチテクノス社製のイオン交換不織布を好適に利用できる。また、前記イオン交換ろ紙又はろ布としても市販品を利用してもよく、例えば、ムロマチテクノス社製のイオン交換ろ紙を利用してもよい。また、前記モノリス型の多孔質イオン交換樹脂としては、特に制限されるものではないが、例えば、オルガノ社製のものや、「高分子論文集(Vol.62)、p7、2005年発行」に記載のもの等を適宜利用することができる。 また、このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒からなる不均一系触媒は、イオン交換容量が0.01ミリ当量〜50ミリ当量/gの触媒であることが好ましく、0.1ミリ当量〜20ミリ当量/gの触媒であることがより好ましく、1〜10ミリ当量/gの触媒であることが更に好ましい。このようなイオン交換容量が前記下限未満では反応速度が遅延する傾向にあり、他方、前記上限を超えると副反応物が生成しやすくなる傾向にある。また、前記多孔質膜状触媒又は多孔質板状触媒としては、前記数値範囲のイオン交換容量を有するイオン交換樹脂からなる膜状体又は板状体が好ましく、前記数値範囲のイオン交換容量を有するイオン交換膜(イオン交換樹脂膜)がより好ましい。なお、このようなイオン交換容量は、多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒がイオン交換樹脂からなる場合には、塩酸を加えて70℃で1時間加熱し陽イオンを全てH+にした後、水で十分に洗浄し、十分に乾燥させた触媒(1g)を試料として準備し、これに酢酸アンモニウムなどのアンモニウム塩を作用させてアンモニウムイオンを吸着させた後、これを塩化ナトリウムで溶脱させ、浸出してきたアンモニウムイオンの濃度をインドフェノール青吸光光度法などで測定した値を採用してもよい。また、多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒がイオン交換樹脂以外の材料からなる場合には、昇温脱離スペクトル法(アンモニア−TPD)などの方法により固体酸点量や酸強度を測定した値を採用してもよい。 さらに、このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒においては、触媒1m2あたりの酸のモル量が0.001〜100mol/m2であることが好ましく、0.01〜10mol/m2であることがより好ましい。このような酸のモル量が前記下限未満では反応が遅延する傾向にあり、他方、前記上限を超えると副反応物が生成しやすくなる傾向にある。なお、ここにいう不均一系触媒の酸のモル量は、前記不均一系触媒がイオン交換樹脂である場合にはイオン交換樹脂中の官能基(例えばスルホン酸基(スルホ基)やカルボン酸基等)換算によるモル量であり、また、前記不均一系触媒が金属酸化物又は金属錯体からなる酸触媒である場合には該触媒中のプロトン換算によるモル量である。このような酸のモル量は、吸光光度法、昇温脱離スペクトル法、滴定法等の方法で測定することができる。 また、前記多孔質膜状触媒及び前記多孔質板状触媒がイオン交換樹脂からなる場合において、該樹脂のガラス転移温度又は融点が0℃以上であることが好ましく、120〜300℃であることがより好ましい。このようなガラス転移温度又は融点が前記下限未満では、十分な耐熱性が得られず、反応時の加熱温度にもよるが、使用中に触媒が変形したり、触媒を形成する成分が反応系に溶け出す場合が生じたりして、生成物を効率よく単離することが困難となる場合が生じ得る傾向にあり、他方、前記上限を超えると加工が困難となり成型するのが困難となる傾向にある。なお、前記イオン交換樹脂が非晶性樹脂からなる場合にはガラス転移温度が上記範囲であることが好ましく、非晶性樹脂以外のものからなる場合には融点が上記範囲であることが好ましい。このような融点又はガラス転移温度は例えばDSC測定(示差走査熱量測定)をすることによって確認できる。 また、このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒を製造するための方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、ゼオライトからなる触媒を製造する場合、ゼオライトの膜を形成することが可能な公知の方法を適宜採用してもよく、また、イオン交換樹脂からなる触媒を製造する場合、いわゆるイオン交換膜、イオン交換不織布、イオン交換ろ紙又はろ布、モノリス型多孔質イオン交換樹脂等を製造することが可能な公知の方法を適宜採用してもよい。このような多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒を製造する方法としては、特に制限されるものではないが、イオン交換樹脂からなる触媒を製造する場合、例えば、スチレンやジビニルベンゼンなどのモノマーを重合させた後、官能基を導入して得られるポリマーを用いて製造する方法;テトラフルオロエチレンとフルオロスルホニル基を含有するパーフルオロビニルエーテルとの共重合後、加水分解することにより得られるポリマーを用いて製造する方法;テトラフルオロエチレンとカルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルの共重合後、加水分解することにより得られるポリマーを用いて製造する方法;予め重合されたポリマー(高分子化合物)に、官能基を導入して製造する方法;高分子電解質(例えば、前述のデュポン社製の製品等)をそのまま利用する方法;ポリオレフィンフィルム等の公知の多孔性高分子のフィルムに、直接的に又はスチレン等をグラフト重合した後に、スルホン酸基等の前記官能基を導入して得られるポリマーを用いて製造する方法;等を適宜採用し得る。 なお、イオン交換樹脂からなる多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒を製造する場合においては、例えば、用いるモノマーの種類等に応じて共重合の条件等を適宜変更することで、容易にイオン交換基の濃度や重合体の分子量等を制御することができる。そのため、重合条件を適宜変更して多孔質高分子の膜や板状体を製造することで、所望のイオン交換樹脂からなる多孔質膜状触媒又は多孔質板状触媒を適宜製造することができる。また、その形状等に関しては、前述の共重合体等(例えば、イオン交換樹脂又はその前駆体)を押出成型等の公知の成形方法によりフィルムや板状体に成形すればよく、公知の成形方法により多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒を得ることができる。更に、公知の耐熱性を有する多孔質高分子のフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、環状オレフィンポリマーフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどの耐熱性フィルム等)や多孔質高分子の板状体の表面に、直接的に又はスチレン等をグラフト重合した後に、前述の官能基(例えばスルホン酸基(スルホ基)やカルボン酸基等)を導入して、多孔質膜状触媒又は多孔質板状触媒としてもよい。なお、前記共重合体(例えばスチレンとジビニルベンゼンの共重合体)や前記ポリマー、前記多孔質高分子等のイオン交換樹脂の材料となる高分子化合物に対して、官能基(例えばスルホン酸基(スルホ基)等)を導入するための具体的な方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができ、例えば、スルホン酸基(スルホ基)を導入する場合には、98容量%の硫酸を用いて、前記ポリマー等と前記硫酸とを20〜100℃(好ましくは60℃程度)で1〜50時間(好ましくは12時間程度)反応させることにより、官能基を導入する方法等を採用してもよい。このように、イオン交換樹脂からなる多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒を製造する場合においては、多孔質高分子の膜(フィルム)や板状体を製造することが可能な公知の方法を適宜採用して、多孔質高分子の膜状体や板状体を得て、高分子化合物の種類に応じて(必要に応じて)、公知の方法を利用して官能基を導入することにより、イオン交換樹脂からなる多孔質膜状触媒及び多孔質板状触媒を製造してもよい(イオン交換樹脂からなる膜等を製造することが可能な公知の方法を適宜採用して製造してもよい。)。 また、前記不均一系触媒の使用量としては、特に制限されないが、前記一般式(1)で表される化合物の使用量(モル量)に対して、不均一系触媒(例えば、固体酸触媒)の酸のモル量が0.01〜2.00モル当量(より好ましくは0.10〜1.00モル当量)となるような量とすることが好ましい。このような不均一系触媒の使用量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えても、触媒を利用することにより得られる効果がそれ以上向上させることが困難となり、却って経済性が低下する傾向にある。なお、ここにいう不均一系触媒の酸のモル量は、前記不均一系触媒がイオン交換樹脂である場合にはイオン交換樹脂中の官能基(例えばスルホン酸基(スルホ基)やカルボン酸基等)換算によるモル量であり、また、前記不均一系触媒が金属酸化物又は金属錯体からなる酸触媒である場合には該触媒中のプロトン換算によるモル量である。 また、前記不均一系触媒の使用量は、前記一般式(1)で表される化合物100質量部に対して1〜200質量部であることが好ましく、10〜100質量部であることがより好ましい。このような不均一系触媒の使用量が前記下限未満では反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると副反応物が生成しやすくなる傾向にある。 (原料化合物) 本発明に用いる原料化合物は、下記一般式(1):[式(1)中、R1は、少なくとも隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基であり、該隣接する2つの炭素原子に式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基がそれぞれ結合されており、 R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示し、 Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR4(R4は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示し、 Yは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR5(R5は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示す。]で表わされる化合物(カルボン酸化合物又はカルボン酸エステル化合物)である。 このような一般式(1)中のR1は、少なくとも隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基である。すなわち、前記R1は少なくとも隣接する2つの炭素原子を有し且つ式:X、Y、COOR2、COOR3で表わされる基と結合するための4つの結合手を有する4価の有機基であればよく、特に制限されるものではなく、例えば、ヘテロ原子を有していてもよい4価の鎖状の飽和炭化水素基、ヘテロ原子を有していてもよい4価の環状の飽和炭化水素基、ヘテロ原子を有していてもよい4価の鎖状の不飽和炭化水素基、ヘテロ原子を有していてもよい4価の環状の不飽和炭化水素基等が挙げられる。また、このようなR1としては、例えば、下記一般式(101)〜(115):[式(101)〜(115)中、*1は式(1)中のCOOR2に結合する結合手を示し、*2は式(1)中のCOOR3に結合する結合手を示し、*3は式(1)中のXに結合する結合手を示し、*4は式(1)中のYに結合する結合手を示し、R6、R7、R8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示し、mは0〜5の整数を示す。]で表わされる有機基を好適に利用してもよい。 このような一般式(101)〜(115)中のR6として選択され得るアルキル基の炭素数は1〜10である。このようなアルキル基の炭素数が前記上限を超えると、製造及び精製が困難となる傾向にある。また、このようなR6として選択され得るアルキル基の炭素数としては、製造及び精製の容易さという観点から、1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。また、このようなR6として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、前記一般式(101)〜(115)中のR6としては、製造及び精製の容易さという観点から、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であることがより好ましく、中でも、原料の入手が容易であることや精製がより容易であるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基又はイソプロピル基であることがより好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。また、このような式中の複数のR6は製造及び精製の容易さ等の観点から、同一のものであることが特に好ましい。 また、このような一般式(101)〜(115)中のR7、R8として選択され得る炭素数1〜10のアルキル基は、R6として選択され得る炭素数1〜10のアルキル基と同様のものである。このようなR7、R8として選択され得る置換基としては、原料化合物の製造及び精製の容易さの観点から、上記置換基の中でも、水素原子、炭素数1〜10(より好ましくは1〜5、更に好ましくは1〜3)のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基であることが特に好ましい。 また、前記一般式(101)〜(115)中のnは0〜12の整数を示す。このようなnの値が前記上限を超えると、前記一般式(101)〜(115)で表される原料化合物の精製が困難になる。また、このような一般式(101)〜(115)中のnの数値範囲の上限値は、原料化合物の精製がより容易となるといった観点から、5であることがより好ましく、3であることが特に好ましい。また、このような一般式(101)〜(115)中のnの数値範囲の下限値は、原料の安定性の観点から、1であることがより好ましく、2であることが特に好ましい。このように、一般式(101)〜(115)中のnとしては、2〜3の整数であることが特に好ましい。 さらに、前記一般式(106)〜(111)中のmは0〜5の整数を示す。このようなmの値が前記上限を超えると、前記一般式(106)〜(111)で表される化合物の製造および精製が困難になる。また、このような一般式(106)〜(111)中のmの数値範囲の上限値は、製造および精製の容易さの観点から、3であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。また、このような一般式(106)〜(111)中のmの数値範囲の下限値は、製造および精製の容易さの観点から、0であることが特に好ましい。このように、一般式(106)〜(111)中のmとしては、0〜1の整数であることが特に好ましい。 また、前記一般式(1)で表される化合物において、R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示す。 このような一般式(1)中のR2、R3として選択され得るアルキル基は炭素数が1〜10のアルキル基である。このようなアルキル基の炭素数が10を超えると、精製が困難となる。また、このようなR2、R3として選択され得るアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、1〜5であることがより好ましく、1〜3であることが更に好ましい。また、このようなR2、R3として選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。 また、前記一般式(1)中のR2、R3として選択され得るシクロアルキル基は、炭素数が3〜10のシクロアルキル基である。このようなシクロアルキル基の炭素数が10を超えると精製が困難となる。また、このようなR2、R3として選択され得るシクロアルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、3〜8であることがより好ましく、5〜6であることが更に好ましい。 さらに、前記一般式(1)中のR2、R3として選択され得るアルケニル基は、炭素数が2〜10のアルケニル基である。このようなアルケニル基の炭素数が10を超えると、精製が困難となる。また、このようなR2、R3として選択され得るアルケニル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、2〜5であることがより好ましく、2〜3であることが更に好ましい。 また、前記一般式(1)中のR2、R3として選択され得るアリール基は、炭素数が6〜20のアリール基である。このようなアリール基の炭素数が20を超えると精製が困難となる。また、このようなR2、R3として選択され得るアリール基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、6〜10であることがより好ましく、6〜8であることが更に好ましい。 また、前記一般式(1)中のR2、R3として選択され得るアラルキル基は、炭素数が7〜20のアラルキル基である。このようなアラルキル基の炭素数が20を超えると精製が困難となる。また、このようなR2、R3として選択され得るアラルキル基の炭素数としては、精製がより容易となるという観点から、7〜10であることがより好ましく、7〜9であることが更に好ましい。 さらに、前記一般式(1)中のR2、R3としては、精製がより容易となるという観点から、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、アリル基、フェニル基又はベンジル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。なお、前記一般式(1)中のR2、R3は同一のものであっても異なっていてもよいが、合成上の観点からは、同一のものであることがより好ましい。 また、前記一般式(1)で表わされる化合物において、式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基は、前記4価の有機基中の隣接する2つの炭素原子にそれぞれ結合されている必要がある。すなわち、R1が前記一般式(101)〜(115)で表わされる有機基である場合を例にして説明すると、前記原料化合物は、各有機基中の隣接する炭素に結合する各結合手(例えば*1及び*2)に、それぞれ式:COOR2で表わされる基及び式:COOR3で表わされる基が結合したものとなる。このように、前記原料化合物としては、隣接する2つの炭素原子に式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基がそれぞれ導入されているものを用いる必要があり、これにより、酸無水物を形成することが可能となる。 また、前記一般式(1)において、前記Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR4(R4は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示す。 このような一般式(1)中のXとして選択され得るアルキル基の炭素数が前記上限を超えると、製造および精製が困難となる傾向にある。また、このようなXとして選択され得るアルキル基の炭素数としては、製造および精製の容易さという観点から、1〜6であることが好ましく、1〜4であることがより好ましい。また、このようなXとして選択され得るアルキル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。 また、前記一般式(1)中のXとして選択され得るアルケニル基の炭素数が前記上限を超えると、製造および精製が困難となる傾向にある。また、このようなXとして選択され得るアルケニル基の炭素数としては、製造および精製の容易さという観点から、2〜6であることが好ましく、2〜4であることがより好ましい。また、このようなXとして選択され得るアルケニル基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。 また、前記一般式(1)中のXとして選択され得る式:−COOR4で表わされる基において、前記R4は前記R2と同様のもの(水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種)であり、その好適なものも前記R2と同様のものである。 このようなXとしては、式:−COOMe、−COOEtで表わされる基であることがより好ましい。 また、前記一般式(1)において、前記Yは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR5(R5は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示す。このような式(1)中のYとして選択され得る炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基は、前記Xにおいて説明したものと同様のものである。また、前記一般式(1)中のYとして選択され得る式:−COOR5で表わされる基において、前記R5は前記R2と同様のもの(水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種)であり、その好適なものも前記R2と同様のものである。このようなYとしては、式:−COOMe、−COOEtで表わされる基であることがより好ましい。 また、上記一般式(1)で表わされる原料化合物において、式:−COOR4及び/又は−COOR5で表わされる基を含む場合において、R2、R3、R4、R5はそれぞれ同一のものであっても異なっていてもよいが、その原料化合物の合成上の観点からは、同一のものであることがより好ましい。 また、前記一般式(1)で表わされる原料化合物においては、製造及び精製の容易さの観点から、X及びYはそれぞれ式:−COOR4で表わされる基及び−COOR5で表わされる基であることが好ましい。このように、前記一般式(1)で表わされる原料化合物としてはテトラカルボン酸化合物又はテトラカルボン酸エステル化合物であることが好ましい。 また、このような一般式(1)で表わされる原料化合物としては、例えば、下記一般式(1−1)〜(1−16):[式中、R2、R3は上記一般式(1)において説明したR2、R3と同義である。]で表わされる化合物(式(1)中のX及びYが共に水素原子の場合の化合物の例)、下記一般式(1−17)〜(1−19):[式中、R2、R3は上記一般式(1)において説明したR2、R3と同義である。]で表わされる化合物(式(1)中のX及びYの一方が水素原子であり且つもう一方がアルキル基又はアルケニル基である場合の化合物の例)、下記一般式(1−20)〜(1−26):[式中、R2、R3、R4、R5は上記一般式(1)において説明したR2、R3、R4、R5と同義である。]で表わされる化合物(式(1)中のXが式:−COOR4で表わされる基であり且つYが式:−COOR5表わされる基である場合の化合物の例)等が挙げられる。 また、このような一般式(1)で表わされる原料化合物としては、耐熱性に優れ且つ線膨張係数が十分に低いポリイミドを形成するための材料(モノマー)として好適に利用可能なカルボン酸無水物を製造できるという観点からは、下記一般式(2):[式(2)中、R2、R3、R4、R5は上記一般式(1)において説明したR2、R3、R4、R5と同義であり(その好適なものも同様である。)、R6、R7、R8は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]で表わされるスピロ化合物が好ましい。なお、上記一般式式(2)中のR6、R7、R8は上記一般式(101)〜(115)中のR6、R7、R8と同様のものであり、その好適なものも同様である。 また、このような原料化合物を調製するための方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、前記原料化合物として前記一般式(2)で表される化合物(スピロ化合物)を利用する場合には、国際公開2011/099518号に開示されているスピロ化合物を調製するための方法を適宜利用してもよい。 (低級カルボン酸) 本発明においては、炭素数1〜5のカルボン酸(以下、場合により単に「低級カルボン酸」という。)を用いる。このような低級カルボン酸の炭素数が前記上限を超えると、製造及び精製が困難となる。また、このような低級カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等が挙げられ、中でも、製造及び精製の容易さの観点から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸が好ましく、ギ酸、酢酸がより好ましい。このような低級カルボン酸は1種を単独で或は2種以上を組み合わせて利用してもよい。 また、このような低級カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸)の使用量としては特に制限されないが、前記一般式(1)で表される原料化合物に対して4〜100倍モルとすることが好ましい。このような低級カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸等)の使用量が前記下限未満では反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると収量が低下する傾向にある。また、前記低級カルボン酸中における前記一般式(1)で表される原料化合物の含有量としては、1〜40質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。 (加熱工程) 本発明においては、前記不均一系触媒を用いて前記低級カルボン酸中で前記原料化合物を加熱する工程(加熱工程)を施す。 このような加熱工程においては、前記低級カルボン酸に更に他の溶剤を添加して利用してもよい。このような溶剤(他の溶媒)としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒;エーテル、THF、ジオキサン等のエーテル系溶媒;酢酸エチル等のエステル系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ペンタン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;アセトンやMEKなどのケトン系溶媒;DMF、NMP、DMI、DMAc等のアミド系溶媒が挙げられる。 また、このような加熱工程においては、前記低級カルボン酸とともに無水酢酸を利用してもよい。このように無水酢酸を利用することにより、反応時に生成された水と無水酢酸を反応させて酢酸を形成させることが可能となり、反応時に生成される水の除去を効率よく行うことが可能となる。また、このような無水酢酸を利用する場合において、該無水酢酸の使用量は特に制限されないが、前記一般式(1)で表される原料化合物に対して4〜100倍モルとすることが好ましい。このような無水酢酸の使用量が前記下限未満では、反応速度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、収量が低下する傾向にある。 また、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の温度条件としては特に制限されないが、加熱温度の上限を180℃(より好ましくは150℃、更に好ましくは140℃、特に好ましくは130℃)とすることが好ましく、他方、前記加熱温度の下限を80℃(より好ましくは100℃、更に好ましくは110℃)とすることが好ましい。このような加熱の際の温度範囲(温度条件)としては、80〜180℃とすることが好ましく、80〜150℃とすることがより好ましく、100〜140℃とすることが更に好ましく、110〜130℃とすることが特に好ましい。このような温度条件が前記下限未満では反応が十分に進行せず、目的とするカルボン酸無水物を十分に効率よく製造することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると触媒活性が低下する傾向にある。また、このような加熱温度は、上記温度条件の範囲内において、前記不均一系触媒がイオン交換樹脂からなる場合、その樹脂のガラス転移温度又は融点よりも低い温度に設定することが好ましい。このように加熱温度を設定することにより、触媒の変形等をより効率よく防止して効率よく生成物を得ることができる。 また、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の圧力条件(反応時の圧力条件)としては特に制限されず、常圧下であっても、加圧条件下であっても或は減圧条件下であってもよく、いずれの条件下であっても反応を進行させることが可能である。そのため、加熱工程の際には、例えば、特に圧力を制御せずに、還流を採用する場合には溶媒となる低級カルボン酸の蒸気等による加圧条件下で反応を行ってもよい。また、このような圧力条件としては、0.001〜10MPaとすることが好ましく、0.1〜1.0MPaとすることが更に好ましい。このような圧力条件が前記下限未満では低級カルボン酸が気化してしまう傾向にあり、他方、前記上限を超えると反応で生成する低級カルボン酸エステルが揮発せず、エステル化の平衡反応が進行しにくくなる傾向にある。また、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の雰囲気ガスとしては特に制限されず、例えば、空気であっても不活性ガス(窒素、アルゴン等)であってもよい。なお、反応で生成する低級カルボン酸エステルや水を効率良く揮発させ、反応をより効率よく進行させるために(エステル化の平衡反応を生成系に傾向させるために)、上記のガス(望ましくは窒素、アルゴン等の不活性ガス)をバブリングしてもよく、反応機(反応容器)の気相部に通気させながら撹拌しても良い。 また、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際の加熱時間としては、特に制限されないが、0.5〜100時間とすることが好ましく、1〜50時間とすることがより好ましい。このような加熱時間が前記下限未満では反応が十分に進行せず、十分な量のカルボン酸無水物を製造することができなくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、反応がそれ以上進行せず、生産効率が低下して経済性等が低下する傾向にある。 また、このような前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する際には、均一に反応を進行せしめるという観点から、前記原料化合物が導入された前記低級カルボン酸を撹拌しながら反応を進行せしめてもよい。なお、このような撹拌工程を施す場合や後述のように加熱還流を施す場合には、撹拌や還流等により、前記不均一系触媒が前記低級カルボン酸中において流動して、反応容器(前記原料化合物、前記低級カルボン酸及び前記不均一系触媒を導入するための容器)中の撹拌羽等に接触(衝突)して、破損し、生じた前記不均一系触媒の微細な破片と生成物とを分離することが困難となる場合なども生じ得る。そのため、前記不均一系触媒は加熱工程を実施する際(特に好適な工程として撹拌工程を実施する際等)には、前記反応容器内に何らかの方法で固定する等して撹拌羽や壁に接触しないようにして利用こと(例えば、反応容器の壁や撹拌羽に衝突しないように吊るして固定して利用することや、触媒の収容容器を準備して撹拌羽自体にその収容容器を結び付ける等して壁や撹拌羽に前記不均一系触媒が衝突しないように固定して利用すること、反応容器の壁等の反応容器中の固定物に前記不均一系触媒を固定して利用すること、反応容器として撹拌容器を利用する場合において、バッフルを触媒の収容容器とし、その容器内に導入することで壁や撹拌羽に前記不均一系触媒が衝突しないようにして利用すること等)が好ましい。 また、前記不均一系触媒を用いて前記低級カルボン酸中において前記原料化合物を加熱する工程(加熱工程)においては、少なくとも、前記原料化合物中の式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基から(X及びYが−COOR4及び−COOR5で表わされる基の場合には、場合によりそれらの基からも)、下記一般式(3): *5−CO−O−OC−*6 (3)[式(3)中、*5及び*6はそれぞれ原料化合物中の式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基(X及びYが−COOR4及び−COOR5で表わされる基の場合には、場合により−COOR2及び−COOR3で表わされる基並びに−COOR4及び−COOR5で表わされる基)がそれぞれ結合していた炭素原子に結合する結合手を示す。]で表わされる酸無水物基が形成されて、カルボン酸無水物が生成される。このようなカルボン酸無水物が生成される反応を、上記一般式(2)で表わされるスピロ化合物を利用した場合を例にして簡単に説明すると、その反応は、下記反応式(I):[反応式(I)中、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8は上記一般式(2)において説明したR2、R3、R4、R5、R6、R7、R8と同義である(その好適なものも同様である。)。]で表わされるような反応となる。このように、原料化合物として、上記一般式(2)で表わされるスピロ化合物を用いた場合には、上記一般式(4)で表わされるようなテトラカルボン酸無水物が得られることとなる。また、同様に、原料化合物として、それぞれ、上記一般式(1−5)で表わされる化合物、上記一般式(1−21)で表わされる化合物、上記一般式(1−22)で表わされる化合物を用いた場合についての反応を例示すると、各反応は、それぞれ、下記反応式(II)、(III)、(IV):[反応式(II)〜(IV)中、R2、R3、R4、R5は上記一般式(1)において説明したR2、R3、R4、R5と同義である。(その好適なものも同様である。)。]で表わされるような反応となる。このような反応式(I)〜(IV)に示すように、上記加熱工程においては、原料化合物中の隣接する二つの炭素原子に結合するエステル基及び/又はカルボン酸基(式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基(場合により−COOR4及び−COOR5で表わされる基))から、上記一般式(3)で表わされる酸無水物基が形成されて、カルボン酸無水物が生成される。なお、このような加熱工程により、最終的な生成物であるカルボン酸無水物は析出物(沈澱物等)として得ることが可能である。 また、このような加熱工程により生じる反応は必ずしも明らかではないが、前記原料化合物として上記一般式(1)中のXが式:−COOR4で表わされる基であり、Yが式:−COOR5で表わされる基であり、XとYとが化合物中の隣接する炭素原子にそれぞれ接続されており且つR2、R3、R4、R5がいずれも水素原子以外の基である化合物を利用し、更に、前記低級カルボン酸として酢酸を利用した場合(好適な実施形態)を例に挙げて説明すると、下記反応式(V)及び(VI):[反応式(V)中、R1は上記一般式(1)中のR1と同義であり、R2、R3、R4、R5は水素原子以外のものである以外は上記一般式(1)において説明したR2、R3、R4、R5と同様のものであり、Rは、前記原料化合物中のR2、R3、R4及びR5のいずれかの基であることを示す。][反応式(VI)中、R1は上記一般式(1)において説明したR1と同様のものである。]で表わされるような反応となるものと推察される。なお、このような反応式(V)は原料化合物中のエステル基をカルボン酸分解する反応を示し、反応式(VI)は、それに続く酸無水物化反応を示すものである。また、このような反応式(V)で表されるエステル基をカルボン酸分解する反応と、それに引き続く反応式(VI)で表される酸無水物化反応とは連続的に起こるものと推察される。なお、原料化合物中のR2、R3、R4、R5がいずれも水素原子である場合には、加熱工程により、上記反応式(VI)で表わされる反応が進行することとなる。 また、このような反応式(V)及び(VI)に例示されるようなカルボン酸無水物を生成するための反応はどちらも平衡反応である。なお、反応によって生成されるカルボン酸無水物は、前記低級カルボン酸に対して溶解度が極めて低く反応途上で容易に析出する傾向にある。このように、上記反応により、カルボン酸無水物が低級カルボン酸中に析出物(沈殿物等)として容易に析出される傾向にあるため、溶液中における上記反応は酸無水物の生成に有利であり、反応がより効率よく進行する傾向にある。 また、反応式(V)及び(VI)に例示されるようなカルボン酸無水物を生成するための反応はどちらも平衡反応であることから、前記原料化合物がエステル化合物(例えば、少なくとも一般式(1)中のR2及び/又はR3が水素原子以外のものである原料化合物等)である場合において、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱する場合には、目的とするカルボン酸無水物を効率よく製造するという観点から、例えば、前記原料化合物中のエステル基をカルボン酸分解する反応(上記反応式(V)で表されるような反応)においては、形成される低級カルボン酸のエステル(上記反応式(V)で表されるような反応においては式:CH3COORで表される酢酸エステル)を反応系外へ留去しながら反応を進行させることが好ましく、これに続く酸無水物化反応(反応(VI)で表わされるような反応)においては、反応中に生成される水を反応系外へ留去するかあるいは別の物質(例えば無水酢酸などの低級カルボン酸の酸無水物)と反応させて除去することが好ましい。 このように、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱してカルボン酸無水物を得る反応において、原料化合物中のエステル基のカルボン酸分解反応及びそれに続く無水物化反応をより効率よく行うという観点からは、前記加熱工程に際して、例えば、前記一般式(1)で表される化合物と前記低級カルボン酸と前記不均一系触媒との混合液を調製し、前記混合液を加熱還流する工程(I)と、前記還流後の溶液から蒸気を留去しながら、減少した分の低級カルボン酸を連続的に追加して加熱を行うことによりカルボン酸無水物を得る工程(II)とを含む方法を採用してもよい。このような方法によれば、工程(II)において生成される低級カルボン酸エステルや水を蒸気として系外に除去することが可能である。なお、反応の進行の程度は留去した蒸気中に含まれる低級カルボン酸のエステル化合物(上記反応式(V)で表されるような反応においては式:CH3COORで表される酢酸エステル)の量を確認することにより判断することができる。 このような工程(I)において前記混合液を製造する際に、前記低級カルボン酸の使用量は、前記一般式(1)で表される化合物に対して2〜500倍モル(より好ましくは50倍モル程度)とすることが好ましい。 また、このような工程(II)において、還流後の溶液に対して蒸気を留去しながら前記低級カルボン酸の添加を連続的に行うことにより、一般式(1)中のR2及び/又はR3が水素原子以外の基である原料化合物を用いた場合(X及びYがそれぞれ式:−COOR4、−COOR5で表わされる基である場合には、R2及び/又はR3及び/又はR4及び/又はR5が水素原子以外の基である原料化合物を用いた場合)に、その水素原子以外の基が結合されていたエステル基を完全にカルボン酸基(−COOH)にすること(水素原子以外の基であるR2及び/又はR3及び/又はR4及び/又はR5を、水素原子とすること:反応としてはORをOHに変換(置換)すること:カルボン酸化)が可能となり、そのようにして得られたカルボン酸化合物をそのまま加熱することより脱水縮合でき、一連の工程によりカルボン酸無水物基が形成でき、カルボン酸無水物基の形成時に製造される水も蒸気として系外に容易に除去できるため、カルボン酸無水物を、より効率よく製造することも可能となる。また、工程(II)において蒸気を留去する方法としては特に制限されず、公知の方法を適宜利用することができ、例えば、リービッヒコンデンサーを用いる方法などを採用してもよい。なお、このようにして蒸気を留去する際には、その蒸気の中から、炭素数1〜5のカルボン酸を分離した後に留出成分を除去することが好ましい。このような炭素数1〜5のカルボン酸を分離する工程は、例えば、精留塔を利用するなどして容易に達成することが可能である。このように、蒸気の中から炭素数1〜5のカルボン酸を分離することで、炭素数1〜5のカルボン酸を再利用すること(例えば分離後の炭素数1〜5のカルボン酸を反応系に戻して再利用すること等)も可能としつつ、不要な水等を蒸気として系外に容易に除去できるため、工業的に、更に効率よく反応を行なうことも可能となる。 また、工程(II)において生成される低級カルボン酸のエステル化合物や水を蒸気として系外に留去する際に、より効率よく低級カルボン酸エステルや水を留去(除去)するという観点から、前記低級カルボン酸中に、低級カルボン酸のエステル化合物や水と共沸現象を生ずる化合物を添加することが好ましい。このような共沸剤としては、前記原料化合物、前記低級カルボン酸及び不均一系触媒と反応しないものであればよく、特に限定されず、公知の共沸剤を適宜利用することができる。このような共沸剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類;ジエチルエーテル、プロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチレンクロライド、クロロホルム、トリクロルエタン等のハロゲン化炭化水素類;を好適に利用することができる。 また、前記工程(I)〜(II)における加熱の温度条件としては、60℃〜180℃とすることが好ましく、100℃〜140℃とすることがより好ましい。このような加熱還流の温度が前記下限未満では収量が低下する傾向があり、他方、前記上限を超えると、副生物が増加するとともに着色して透明性が低下する傾向にある。また、このような加熱時間としては30分から24時間程度とすることが好ましい。 また、前記原料化合物を前記低級カルボン酸中において加熱してカルボン酸無水物を得る反応において、原料化合物中のエステル基のカルボン酸分解反応及びそれに続く無水物化反応を効率よく行うという観点からは、前記加熱工程に際して、以下に示す工程(A)〜(C)を実施する方法を採用してもよい。すなわち、前記加熱工程においては、前記一般式(1)で表される化合物と前記低級カルボン酸と前記不均一系触媒との混合液を調製し、前記混合液を加熱還流する工程(A)と、前記混合液中の液体の一部を減圧留去して前記混合液を濃縮し、得られた濃縮液に再度、前記低級カルボン酸を添加して加熱還流した後、得られた混合液中の液体の一部を減圧留去して再度濃縮することにより濃縮液を得る工程(B)と、前記濃縮液に前記低級カルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸等)とともに前記無水酢酸を加えて加熱還流することによりカルボン酸無水物を得る工程(C)とを含む加熱工程を施してもよい。 このような工程(A)〜(C)を含む加熱工程を採用することにより、より効率よく、前記一般式(1)で表される原料化合物から、カルボン酸無水物を得ることが可能である。なお、反応式(V)及び(VI)を例にして説明すると、このような工程(A)及び(B)においては反応式(V)で示すような反応(原料化合物中のエステル基のカルボン酸分解反応)が進行し、工程(C)においては反応式(VI)で示すような反応(無水物化反応)が進行することとなる。 また、このような工程(A)〜(C)を含む方法を採用する場合には、工程(B)において、前記濃縮液に対する前記低級カルボン酸の添加・濃縮を行う工程を繰り返し実施(好ましくは1〜5回繰り返し実施)することが好ましく、あるいは、工程(B)を、生成される低級カルボン酸のエステル化合物や水を、低級カルボン酸とともに留去した後、減少した分の低級カルボン酸を連続的に追加する工程とすることが好ましい。このような工程(B)により、一般式(1)中のR2及び/又はR3が水素原子以外の基である原料化合物を用いた場合(X及びYがそれぞれ式:−COOR4、−COOR5で表わされる基である場合には、R2及び/又はR3及び/又はR4及び/又はR5が水素原子以外の基である原料化合物を用いた場合)に、その水素原子以外の基が結合されていたエステル基を、完全にカルボン酸基(−COOH)にすること(水素原子以外の基であるR2及び/又はR3及び/又はR4及び/又はR5を、水素原子とすること:反応としてはORをOHに変換(置換)すること)をより効率よく実施することが可能となり、その後に実施する工程(C)により、より効率よくカルボン酸無水物を得ることが可能となる。なお、工程(B)における反応の進行の程度は留去した蒸気中に含まれる低級カルボン酸のエステル化合物(上記反応式(V)で表されるような反応においては式:CH3COORで表される酢酸エステル)の量を確認することにより判断することができる。 さらに、工程(A)において前記混合液を製造する際に、前記低級カルボン酸の使用量は、前記一般式(1)で表される化合物に対して2〜500倍モル(より好ましくは50倍モル程度)とすることが好ましい。また、工程(B)及び(C)において濃縮液に添加する低級カルボン酸(ギ酸等)の量は濃縮の際に留去した液体の量と同程度とすることが好ましい。 また、前記工程(B)における混合液の濃縮(減圧留去)の方法は特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。また、前記工程(A)〜(C)における加熱還流の温度条件としては、60℃〜180℃とすることが好ましく、100℃〜140℃とすることがより好ましい。このような加熱還流の温度が前記下限未満では収量が低下する傾向があり、他方、前記上限を超えると、副生物が増加するとともに着色して透明性が低下する傾向にある。また、このような加熱還流の時間としては30分から24時間程度とすることが好ましい。 さらに、このような加熱工程後においては、前記不均一系触媒を反応系から取り出すとともに、その不均一系触媒に付着した結晶を分離することで、カルボン酸無水物を効率よく得ることが可能である。なお、本発明においては、前記不均一系触媒の形態が膜状体及び/又は板状体であることから、粒子状の触媒と比較して、触媒自体が結晶に覆われること等が十分に防止されており、いわゆる球状の触媒などと比較して不均一系触媒と結晶との分離をより効率よく行うことができるばかりか、不均一系触媒の表面に付着した結晶を物理的に削ぎ落とすことができ、より効率よく結晶を回収することが可能となる。また、本発明においては、前記不均一系触媒の形態が膜状体及び/又は板状体であることから、そのサイズをより大きなものとした場合には、触媒を系から取り出すことがより容易となり、更に効率よく不均一系触媒と結晶との分離を行うことが可能となる。このように、本発明においては、前記多孔質の膜状体の触媒及び/又は前記多孔質の板状体の触媒からなる不均一系触媒を用いているため、従来困難であった、析出した結晶と触媒との分離を、十分に効率よく行うことができ、しかも分離工程中に結晶の量が減少(目減り)してしまうことも十分に防止できることから、十分な収率で目的化合物を製造することができる。また、本発明においては、生成物と触媒との分離を上述のように容易に行うことができることから、前記不均一系触媒を繰り返し使用することもでき、繰り返しカルボン酸無水物の製造を行う際に十分に効率よく製造を行うことができる。 また、このようにして、前記一般式(1)で表される原料化合物からカルボン酸無水物の粗生成物を得た後には、その粗生成物に対して再結晶、昇華等の精製工程を適宜実施してもよい。このような精製工程により、より高純度のカルボン酸無水物を得ることが可能となる。このような精製の方法としては、特に制限されず、公知の方法を適宜採用することができる。 以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 (実施例1) 先ず、多孔質の膜状体の触媒(多孔質膜状触媒)として、陽イオン交換膜(酸型の多孔質のイオン交換膜:旭硝子社製の商品名「セレミオンCMF」、パーフルオロスルホン酸基を含有するイオン交換樹脂(上記構造式(a)で表される構造中の式:−CF2SO2Fで表される基が式:−CF2SO3Hで表される基に変換されてなる構造を有する樹脂からなる膜)、厚さ440μm)を準備した。なお、かかる膜状体の大きさは、縦2cm、横2cm、厚さ440μmとした(かかる膜状体の質量は0.5gであった。)。また、このような多孔質の膜状体からなる触媒は、イオン交換容量が1.3ミリ当量/gであり、触媒1m2あたりの酸のモル量(官能基(式:−CF2SO3Hで表される基)換算)が0.57mol/m2であった。 次いで、容量が100mLの還流管付きのフラスコ中に、下記一般式(5):で表わされるノルボルナンテトラカルボン酸テトラメチルエステル(原料化合物)1gを酢酸63.3g中に溶解させた溶液を添加し、その後、前記溶液中に多孔質膜状触媒(0.5g)を添加して導入した。なお、前記原料化合物は、国際公開2011/099518号に開示されている方法に準じて作成した。また、触媒の使用量は、原料化合物に対する触媒の官能基換算のモル比([原料化合物(モル)]:[触媒(官能基換算によるモル量)])が1:0.45となる量(原料化合物に対して触媒の酸のモル量が0.45モル当量)であり、また、質量比では原料化合物100質量部に対して50質量部となる量であった。 次に、前記フラスコ内の前記溶液をマグネチックスターラで撹拌しながら、前記フラスコ内の温度が115℃になるように加熱して還流を0.5時間行った(還流工程)。このような還流工程後、115℃の加熱条件でリービッヒコンデンサーを用いて発生する蒸気を留去すると同時に、滴下漏斗を用いて酢酸をフラスコ内に加えて、フラスコ内の液量が一定になるようにする工程(以下、「工程(i)」と称する。)を施した。なお、このような工程(i)においては、蒸気の留去を開始した後、6時間程度経過した後から、フラスコ内の液中(反応溶液中)に白色の沈殿物が生成されていることが確認された。また、このような工程(i)においては、一定時間ごとに、系外に留去した留出液を質量測定とガスクロマトグラフとにより分析して反応の進行の程度を確認した。なお、このような分析により、留出液中には酢酸、酢酸メチル、水が存在することが確認された。そして、このような工程(i)において蒸気の留去を開始した後、14時間経過した後に、酢酸メチルの留出が止まったことから、加熱を止めて、前記工程(i)を終了した。 このようにして、工程(i)を施した後に、フラスコ内から、前記多孔質膜状触媒を取り出した。このようにして多孔質膜状触媒を取り出した後に、多孔質膜状触媒の膜表面に付着していた結晶(固形分)をピンセットや薬さじで掻き取り、前記多孔質膜状触媒から結晶(固形分)を分離した。そして、このようにして分離して得られた結晶(固形分)は再度、フラスコ内の溶液中に戻した。次いで、フラスコ内の溶液から、更に酢酸を留去して、フラスコ内において白色の結晶を更に析出させて濃縮液を得た。次に、前記濃縮液に対して、桐山ロートを用いて減圧濾過を行い、白色の固形分を得た。そして、得られた白色の固形分をトルエンで洗浄し、乾燥することにより、0.68gの白色粉末を得た。 このようにして得られた粉末を一部採取して、液体クロマトグラフ分析(LC分析:LC測定)を行った結果、得られた白色粉末は単一のピークを与えるものであること(単一の生成物が得られていること)が分かった。なお、前記液体クロマトグラフ分析の結果から、原料化合物の残存は全く確認されなかった。また、このようにして得られた結晶の化合物の構造を同定すべく、NMR測定、LC測定を行ったところ、得られた化合物は下記一般式(6):で表わされる化合物(酸無水物)であることが確認された。なお、このようにして得られた化合物(酸無水物)に関して、使用した原料化合物の仕込み量から算出される生成物の理論量に対する収率を求めたところ、収率は84%であることが確認された。得られた結果を表1に示す。 (比較例1) 容量が100mLの還流管付きフラスコ中に、上記一般式(5)で表わされるノルボルナンテトラカルボン酸テトラメチルエステル(原料化合物)1gを酢酸63.3g中に溶解させた溶液を添加した後、前記溶液中に触媒として粒子状のイオン交換樹脂(酸型のイオン交換樹脂、オルガノ社製の商品名「アンバーライト200CT」、平均粒子径:0.60〜0.85mm、イオン交換容量は1.75ミリ当量/g)0.5gを添加した。なお、触媒の使用量は、原料化合物に対する触媒の官能基換算のモル比([原料化合物(モル)]:[触媒(官能基換算によるモル量)])が1:0.6となる量であり、また、質量比では原料化合物100質量部に対して50質量部となる量であった。次に、前記フラスコ内の前記溶液をマグネチックスターラで攪拌しながら、前記フラスコ内の温度が115℃になるように加熱して還流を0.5時間行った。 このような還流工程後、115℃の加熱条件でリービッヒコンデンサーを用いて発生する蒸気を留去すると同時に、滴下漏斗を用いて酢酸をフラスコ内に加えて、フラスコ内の液量が一定になるようにする工程(i)を施した。なお、このような工程(i)においては、蒸気の留去を開始した後、6時間程度経過した後から、フラスコ内の液中(反応溶液中)に白色の沈殿物が生成されていることが確認された。また、このような工程(i)においては、一定時間ごとに、系外に留去した留出液を質量測定とガスクロマトグラフとにより分析して、反応の進行の程度を確認した。なお、このような分析により、留出液中には酢酸、酢酸メチル、水が存在することが確認された。そして、このような工程(i)において蒸気の留去を開始した後、20時間経過した後に、酢酸メチルの留出が止まったことから、加熱を止めて、前記工程(i)を終了した。 このようにして、工程(i)を施した後に、フラスコ内の溶液を60メッシュのステンレス金網で濾過し、前記加熱後の溶液からイオン交換樹脂を取り除く工程を行った。しかしながら、濾過の最中に、前記ステンレス金網にイオン交換樹脂と生成物の目詰まりが生じてしまい、生成物を一部回収することができなくなった。 次いで、得られた金網通過後の液体から、酢酸を留去することにより白色の結晶を更に析出させて濃縮液を得た後、その濃縮液からろ別することにより固形分を得た。このような固形分は基本的に白色固体であるが、一部に黒色固体が存在することが確認された。なお、かかる黒色固体は触媒として利用したイオン交換樹脂であることが確認された。従って、上記工程では、触媒と生成物を収率良く分離することができず、更には、生成物から触媒を完全に除去することができないことが分かった。 そこで、前記固形分を大量の溶媒を用いて反応温度下(115℃)で加熱溶解させ、熱時濾過を行ってイオン交換樹脂を除去した後、ろ液を濃縮したところ、0.42gの白色粉末を得た。このようにして得られた化合物(白色粉末)に関して、使用した原料化合物の仕込み量から算出される生成物の理論量に対する収率を求めたところ、収率は53%であることが確認された。なお、得られた化合物に対してNMR測定、LC測定を行ったところ、かかる化合物は上記一般式(6)で表わされる化合物(酸無水物)であることが確認された。得られた結果を表1に示す。 (比較例2) 多孔質膜状触媒(酸型のイオン交換膜)を用いる代わりに均一系触媒であるp−トルエンスルホン酸(p−TsOH)0.24g([原料化合物(モル)]:[触媒(モル量)]=1:0.6)を用い、工程(i)において加熱を止めるまでの時間を14時間から8時間に変更した以外は、実施例1と同様にして生成物を0.62g得た(なお、本比較例においては、多孔質膜状触媒を利用しなかったことから、多孔質膜状触媒を取り出す工程を実施せずに、工程(i)において加熱を止めた後、すぐに酢酸を留去して濃縮液を得る工程を実施した)。しかしながら、このようにして得られた生成物は灰色に着色されたものとなっており、着色の無い結晶を得ることができなかった。なお、得られた生成物に対してNMR測定、LC測定を行ったところ、かかる生成物は上記一般式(6)で表わされる化合物(酸無水物)であることが確認された。得られた結果を表1に示す。 (比較例3) 多孔質膜状触媒(酸型のイオン交換膜)を用いる代わりに均一系触媒である硫酸(H2SO4)0.12g([原料化合物(モル)]:[触媒(モル)]=1:0.6)を用い、工程(i)において加熱を止めるまでの時間を14時間から4時間に変更した以外は実施例1と同様にして生成物を0.60g得た(なお、本比較例においては、多孔質膜状触媒を利用しなかったことから、多孔質膜状触媒を取り出す工程を実施せずに、工程(i)において加熱を止めた後、すぐに酢酸を留去して濃縮液を得る工程を実施した)。しかしながら、得られた生成物は灰色に着色されたものとなっており、着色の無い結晶を得ることができなかった。なお、得られた生成物に対してNMR測定、LC測定を行ったところ、かかる生成物は上記一般式(6)で表わされる化合物(酸無水物)であることが確認された。得られた結果を表1に示す。 表1に示す結果等からも明らかなように、多孔質の膜状体からなる不均一系触媒(イオン交換樹脂膜)を用いた場合(実施例1)においては、触媒と生成物との分離が容易であり、着色の無い目的化合物(テトラカルボン酸無水物)の結晶を、効率よく高収率で製造できることが確認された。一方、粒子状の不均一系触媒(イオン交換樹脂)を利用した場合(比較例1)においては、不均一系触媒と目的化合物(テトラカルボン酸無水物)とが同程度の粒径を有するものとなり、分離工程を濾過等の簡便な方法で行うことができず、しかも分離工程において一部の生成物が脱落するなどして、最終的な収率が十分なものとはならなかった。このような結果から、比較例1のように、粒子状の不均一系触媒を単純に利用した場合には、触媒と生成物との分離が困難で、十分な収率で目的化合物(テトラカルボン酸無水物)を効率よく製造することが困難であることが確認された。また、均一系触媒を利用した比較例2〜3においては、得られた生成物がいずれも着色されたものとなっており、着色のない結晶を製造することができなかった。 以上のような結果から、本発明のカルボン酸無水物の製造方法(実施例1)によれば、不均一系触媒を利用しながらも、触媒と生成物との分離が容易で、結晶本来の色に対して着色の無いカルボン酸無水物を効率よく製造できることが確認された。 以上説明したように、本発明によれば、不均一系触媒を利用しながら、不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離を効率よく行うことができ、結晶本来の色に対して着色の無いカルボン酸無水物を効率よく製造することが可能なカルボン酸無水物の製造方法を提供することが可能となる。 したがって、本発明のカルボン酸無水物の製造方法は、ポリイミド、ポリエステル、ポリアミド等の原料や熱硬化性樹脂の硬化剤等として利用するためのカルボン酸無水物を製造するための方法等として特に有用である。 下記一般式(1):[式(1)中、R1は、少なくとも隣接する2つの炭素原子を有する4価の有機基であり、該隣接する2つの炭素原子に式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基がそれぞれ結合されており、 R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基よりなる群から選択される1種を示し、 Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR4(R4は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示し、 Yは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基及び式:−COOR5(R5は前記R2と同義であり、R2と同一であっても異なっていてもよい。)で表わされる基よりなる群から選択される1種を示す。]で表わされる原料化合物を、不均一系触媒を用いて、炭素数1〜5のカルボン酸中において加熱することにより、カルボン酸無水物を得るカルボン酸無水物の製造方法であって、 前記不均一系触媒が多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒からなることを特徴とするカルボン酸無水物の製造方法。 前記多孔質の膜状体の触媒及び前記多孔質の板状体の触媒がそれぞれイオン交換樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のカルボン酸無水物の製造方法。 前記不均一系触媒がイオン交換膜であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカルボン酸無水物の製造方法。 前記不均一系触媒が、イオン交換容量が0.01ミリ当量/g〜50ミリ当量/gの触媒であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載のカルボン酸無水物の製造方法。 前記原料化合物が下記一般式(2):[式(2)中、R2、R3、R4、R5は上記一般式(1)において説明したR2、R3、R4、R5と同義であり、R6、R7、R8は同一であっても異なっていてもよく、それぞれ水素原子、炭素数1〜10のアルキル基及びフッ素原子よりなる群から選択される1種を示し、nは0〜12の整数を示す。]で表わされるスピロ化合物であることを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載のカルボン酸無水物の製造方法。 【課題】不均一系触媒とカルボン酸無水物の結晶との分離を効率よく行うことができ、結晶本来の色に対して着色の無いカルボン酸無水物を製造する方法の提供。【解決手段】式(1)で表わされる原料化合物を、多孔質の膜状体の触媒及び/又は多孔質の板状体の触媒からなる不均一系触媒を用いて、C1〜5のカルボン酸中において加熱する、カルボン酸無水物の製造方法。[R1は隣接する2つのCを有する4価の有機基;該隣接する2つのCに式:−COOR2及び−COOR3で表わされる基が各々結合され、R2及びR3は各々H又はアルキル基等;X及びYは独立にアルケニル、−COOR4]【選択図】なし


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