タイトル: | 公開特許公報(A)_ハイドロコロイド型粘着剤組成物及びこれを使用した創傷材 |
出願番号: | 2014066000 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61L 15/16,A61K 9/70,A61K 47/32,A61K 47/34,A61K 47/14,A61F 13/02 |
中島 秀幸 魚住 梨江 原口 洋 JP 2015188500 公開特許公報(A) 20151102 2014066000 20140327 ハイドロコロイド型粘着剤組成物及びこれを使用した創傷材 ニチバン株式会社 000004020 萼 経夫 100068618 宮崎 嘉夫 100104145 加藤 勉 100104385 伴 知篤 100163360 中島 秀幸 魚住 梨江 原口 洋 A61L 15/16 20060101AFI20151006BHJP A61K 9/70 20060101ALI20151006BHJP A61K 47/32 20060101ALI20151006BHJP A61K 47/34 20060101ALI20151006BHJP A61K 47/14 20060101ALI20151006BHJP A61F 13/02 20060101ALN20151006BHJP JPA61L15/01A61K9/70 401A61K47/32A61K47/34A61K47/14A61F13/02 310J 8 OL 22 4C076 4C081 4C076AA74 4C076DD47G 4C076EE03A 4C076EE04A 4C076EE24G 4C076EE49A 4C076GG16 4C081AA03 4C081AA12 4C081BA12 4C081BB01 4C081CA021 4C081CA031 4C081CA161 4C081CB051 4C081DA02 4C081DA12 本発明は、ハイドロコロイド型粘着剤組成物に関し、特に創傷用処置剤として好適な粘着剤組成物及びこれを基材に塗布した創傷材に関する。また本発明は前記ハイドロコロイド型粘着剤組成物からなる層を備えてなる貼付材、特に救急絆創膏に適する貼付材に関する。 ハイドロコロイド型粘着剤は、それ自体が粘着性を有し、治癒過程で滲出する創傷分泌物を吸収し、且つ湿潤状態を保持することにより、良好な創傷治癒効果を示すとして近年その重要性が増している。 一般に、ハイドロコロイド型粘着剤は、可塑性ゴムからなる連続相(母材)に吸収性のコロイド粒子(吸水剤)が分散して存在している構造を有し、その多くは、一定時間で自重の3〜5倍程度の水又は創傷部位からの滲出液を吸収し得るように調製されている。水等を吸収してもその母材が一体性を失うことがないよう、且つ、所望の粘着性を発揮できるよう、ゴム成分を種々検討した提案がなされている(例えば特許文献1)。また、近年、環境ホルモン作用や発がん性の疑いが持たれるDOPやDOA等の可塑剤に替えた場合においても、十分な吸水量・吸水速度の調整ができる、新たな可塑剤の使用を検討した提案もなされている(例えば特許文献2)。さらに、ハイドロコロイド型粘着剤を貼付材、とりわけ救急絆創膏のパッドへの適用を検討した提案もなされている(例えば特許文献3)。特表2002−512295号公報特開2011−45494号公報国際公開第2013/77134号公報 これらハイドロコロイド型粘着剤や該粘着剤を用いた創傷材は一般に、滲出液の吸収に伴う粘着力低下を考慮し、滲出液吸収前には皮膚に対する非常に強い粘着性を有しているものが多い。そのため、滲出液の吸収量が少ない場合や、健常な皮膚部位へ貼付した場合、付着力が過度に強くなり、創傷材剥離時に強い痛みを伴うものが少なくなく、場合によっては再生中の皮膚を剥がしてしまう虞もある。 しかしこれまで、滲出液が多量となった場合においても吸収力を保持し、粘着力低下の抑制を図った提案はあったものの、適度な粘着を保持し且つ剥離時の痛みにまで注目した粘着剤の提案はなされていない。 本発明は、上記の課題、すなわち、実用上の粘着性を保有し、且つ、剥離時の皮膚の痛みを軽減できるハイドロコロイド型粘着剤組成物を提供することにある。 本発明者らは上記課題に対して鋭意研究を行なった結果、ハイドロコロイド型粘着剤において可塑剤としてコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を必須成分として採用することにより、所望の粘着性を有し、且つ、剥離時に創傷部位及びその近傍の正常な皮膚を過度に変形させず、そして創傷部位及び正常皮膚部位ともに痛みを軽減できることを見出し、本発明を完成させた。 すなわち本発明は、(A)スチレン系ブロック共重合体及び液状ゴムを含むエラストマー、(B)粘着付与樹脂、(C)可塑剤、及び(D)コロイド粒子を含有する組成物であって、前記(C)可塑剤が、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を含むことを特徴とする、皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物に関する。 本発明において、前記成分(C)中のコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)の含有量が10質量%以上であることが好ましい。 また前記成分(C)がコハク酸ジ(2−エチルへキシル)とアジピン酸ポリエステルとの組み合わせを含むことが好ましい。 さらに前記成分(C)の可塑剤は、前記粘着剤組成物の全質量に対して0.5質量%乃至10質量%の量で存在することが好ましい。 そして本発明において、前記成分(D)のコロイド粒子は、前記粘着剤組成物の全質量に対して10質量%乃至50質量%の量で存在することが好ましい。 さらに本発明は、前記皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物を基材に塗布してなる創傷材にも関する。 そして本発明は、支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)、及び、該粘着剤層(a2)に隣接する柔軟性のある保護層(b1)と、前記ハイドロコロイド型粘着剤組成物よりなるハイドロコロイド組成物層(b2)とからなるパッド層(b)を重ね合わせて備える貼付材も対象とする。 さらに本発明は、支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)、及び、該粘着剤層(a2)に隣接する前記ハイドロコロイド型粘着剤組成物よりなるハイドロコロイド組成物層(b2)のパッド層(b)を重ね合わせて備える貼付材も対象とする。 本発明は、実用可能な貼付性(粘着強度)と、剥離時における皮膚に対する痛みを抑制できる粘着剤組成物を提供できる。 従って、本発明の粘着剤組成物を塗布した創傷材は、適度の付着性を有する粘着強度を有することから、創傷部位に使用した場合に治癒過程で滲出する創傷分泌物を吸収し、且つ湿潤状態を保持して良好な創傷治癒効果を示し、また剥離時において正常皮膚並びに創傷部位の何れにおいても痛みを軽減させることが期待できる。 そしてこの粘着剤組成物を塗布した創傷材は救急絆創膏やドレッシング材等の医療・衛生分野への展開が期待できる。<皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物> 本発明の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物は、(A)スチレン系ブロック共重合体及び液状ゴムを含むエラストマー、(B)粘着付与樹脂、(C)少なくとも一種の可塑剤、及び(D)コロイド粒子を含有し、所望によりその他の成分を含み得る。 本発明の上記粘着剤組成物は、特に前記(C)可塑剤として、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を必須の成分として含む点を構成上の特徴とするものである。 以下、上記各成分について詳述する。[(A)スチレン系ブロック共重合体及び液状ゴムを含むエラストマー] 本発明において使用するエラストマーは、スチレン系ブロック共重合体及び液状ゴムを含む。 前記スチレン系ブロック共重合体としては、スチレン・ブタジエンブロック共重合体(SBS)及びその水添ゴム(SEBS)、スチレン・イソプレンブロック共重合体(SIS)及びその水添ゴム(SEPS)、スチレン・イソブチレンブロック共重合体(SIBS)などが挙げられ、これらの1種あるいは複数を組合せて使用することができる。これらの中でも、SIS及びSEBSが特に好ましく、特に好ましくはSISが用いられる。 また、前記液状ゴムとしては、液状ポリイソプレン(LIR)や液状ポリブタジエン(LPB)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブテン(PB)などの液状エラストマー成分を挙げることができる。 スチレン系ブロック共重合体と液状ゴムは、好ましくは質量比でスチレン系ブロック共重合体:液状ゴム=20〜80:80〜20、特に好ましくは50〜80:50〜20の割合で使用することが望ましい。これらの使用割合を変化させることにより、粘着剤全体の粘度を下げ、濡れ特性をコントロールすることができる。[(B)粘着付与樹脂] 本発明において使用する粘着付与樹脂としては、一般に疎水性ゴムベース成分と相溶して粘着性を発現させる疎水性の樹脂であり、具体的にはロジン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、C5系石油系樹脂、C5/C9系石油系樹脂、DCPD系石油系樹脂、クマロン・インデン樹脂、またこれらの水添物などが挙げられる。 成分(B)の粘着付与樹脂の具体例としては、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂のアルコン(登録商標)P−125(荒川化学工業)、水添テルペン樹脂のクリアロン(登録商標)P150(ヤスハラケミカル(株))などが挙げられる。 上記粘着付与樹脂は、剥離時の皮膚への刺激性を考慮して、例えば上記クリアロンP150であれば粘着剤組成物の全エラストマー成分の100質量部に対して20質量部乃至200質量部、好ましくは50質量部乃至180質量部の量で存在していることが好ましい。[(C)可塑剤] 本発明において使用する可塑剤(軟化剤)としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸や、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸と、例えば炭素原子数8乃至10程度のアルキル基を有するモノアルコールとの二塩基酸エステル系可塑剤;前記香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール等のグリコールとの重縮合により得られるポリエステル系可塑剤;ポリエチレングリコール、クエン酸エステル等のその他の可塑剤などが挙げられる。 中でも本発明では、可塑剤としてコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を必須として含む点を特徴とする。なお成分(C)において、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)の含有量は、本発明の効果を奏する範囲であれば任意の範囲としてもよいが、成分(C)の10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%乃至100質量%である。 さらに本発明では、可塑剤として、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)に加えて、アジピン酸ポリエステルを含むことが好ましい。この場合、好ましくは質量比で、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル):アジピン酸ポリエステル=50〜95:50〜5、特に好ましくは70〜95:30〜5の割合で使用することが望ましい。 本発明において、成分(C)の可塑剤は、粘着剤組成物全成分の総質量に対して、0.5質量%乃至10質量%の量で存在していることが好ましい。 該可塑剤の使用量が0.5質量%を下回ると可塑剤としての効果が得られず、また、10質量%を上回ると、使用時に吸水による膨潤に対して凝集力が不足することにより粘着剤の溶解や形状崩壊が起こり、一体性が保たれなくなる虞がある。[(D)コロイド粒子] 本発明において使用するコロイド粒子としては、例えば、コーンスターチ、グアーガム、ローカストビーンガム、デンプン、ペクチン、アルギン酸及びその塩、カラギーナン、コラーゲン、寒天、ゼラチン、キチン、キトサン、カラヤガム、アラビアゴム、キサンタンガム、デキストリン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、カルボキシメチルセルロース・カルシウム、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、デンプンアセテート、デンプンホスフェート、ヒドロキシエチル化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、酸化デンプン、デキストリン化デンプン、デンプン・アクリル酸グラフト重合体、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ−N−ビニルピロリドン等のハイドロコロイド粒子(親水性ポリマー)を挙げることができる。 これらのコロイド粒子のなかで、特に耐熱性のよいカルボキシメチルセルロース・ナトリウム等を使用することが好ましい。カルボキシメチルセルロースの粒径は、5乃至500μm、好ましくは50乃至250μmである。 上記カルボキシメチルセルロース・ナトリウムの市販品としては、セロゲン(登録商標)F−3H(第一工業製薬(株))、カルボキシメチルセルロースの市販品としては、MAC200HC、サンローズ(登録商標)F10LC(以上日本製紙ケミカル(株))等が挙げられる。 これらコロイド粒子の配合量は、適度な吸水速度と吸水量を得るために、例えばカルボキシメチルセルロース・ナトリウムやカルボキシメチルセルロースであれば、粘着剤組成物全成分の総質量に対して10質量%乃至50質量%、好ましくは20質量%乃至40質量%の割合で使用することが、吸液性、特に吸水性、創傷部位との接着性、及び適度な保形性(側面からの膏体のはみだし防止性)の観点から望ましい。[その他成分] また本発明の粘着剤組成物においては、パラフィン系、ナフテン系、等の石油系プロセスオイルやひまし油、大豆油などの植物油、及び植物油由来の脂肪酸エステルなどの軟化剤を使用してもよい。軟化剤の添加量は、粘着剤組成物の全エラストマー成分の100質量部に対して、通常100質量部以下、好ましくは90質量部以下、より好ましくは80質量部以下、例えば10質量部乃至60質量部の添加量とすることができる。 さらに本発明の粘着剤組成物には、一般的なゴム系粘着剤で使用する、酢酸トコフェロール及び/又はその誘導体、アスコルビン酸及び/又はその誘導体、亜硫酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、ビスフェノール系、ヒンダードアミン系、ベンゾイミダゾール系などの老化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤などを1種又は複数の組合せで適宜添加してもよい。 また本発明の粘着剤組成物には、その他皮膚貼付用の粘着テープやシートに一般に用いられるようなその他の各種添加剤、例えば充填剤、脱臭剤、芳香剤などを配合してもよく、或いは内部凝集力を高めるために架橋剤を適宜配合させてもよい。 これらの任意成分の配合量は、通常、粘着剤組成物全成分の総質量に対して5質量%以下である。 また、既に損傷を受けた皮膚又は、損傷が予想される皮膚に対しては、皮膚の治療又は損傷の予防、美容等を目的とする薬効成分を添加してもよい。例えば、薬理学上有効な薬効成分としては、抗生物質、殺菌剤や抗菌剤(アクリノール、塩化ベンザルコニウム、銀系化合物等)、消毒剤、抗炎症剤及び皮膚保護剤などが挙げられる。また、セラミド等の保湿効果のある物質を添加することで、角質剥離でダメージを受けた皮膚の健常な皮膚への再生を助長することができ、或いは血流促進効果の高いγ−オリザノール等を添加することにより、褥瘡発生が懸念される部位において体圧によって生じる血管の閉塞を緩和し、褥瘡予防が期待できる。 これらの薬効成分は、粘着剤組成物全成分の総質量に対して通常3質量%以下、好ましくは2質量%以下の含有量とすることができる。[ハイドロコロイド型粘着剤組成物の吸水率] 上記成分(A)乃至成分(D)並びに所望によりその他成分を含有するハイドロコロイド型粘着剤組成物を、後述する本発明の創傷材における粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層)に使用する、或いは後述する貼付材におけるハイドロコロイド組成物層(b2)に使用する際、当該粘着剤組成物として自重の50〜400質量%の吸水率(吸液率)を有する組成物を採用することが好ましい。吸水率は、より好ましくは自重の100〜250質量%である。ここで吸水率は、該創傷材における粘着剤層、又は該貼付材におけるパッド層(b)を形成するハイドロコロイド組成物層(b2)を、温度37℃の生理食塩水中に24時間浸漬し、その前後の質量から算出したものである。 吸水率が小さすぎると、創傷部位から滲出する体液を充分に吸収しきれず、創傷材或いは貼付材の周囲から体液が漏れて衣服等を汚す虞があるほか、健常皮膚部位における多量の水分(体液)の存在によって健常皮膚部位に悪影響を及ぼす虞がある。 一方、吸水率が大きすぎると、多くのハイドロコロイド組成物層が体液を吸収しすぎて軟化し、創傷部位及びその近傍を含む貼付皮膚面に残留するおそれが生じることもある。<創傷材> 本発明の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物は、基材に適量塗布し粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層)とすることで創傷材を得ることができる。なお前記粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層)が支持体又は疎水性粘着剤を塗布した支持体の中心部分に位置するように、前記皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物を直接支持体の上に又は支持体上の疎水性粘着剤層の上に塗布(或いは貼付)することにより、あるいはここで支持体又は支持体上の疎水性粘着剤層と粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層)との間にフィルムなどを介在させることにより、該粘着剤組成物を救急絆創膏のパッドとして使用することもできる。 本発明の創傷材は、有機溶剤が不要の塗工方法であるカレンダー法やホットメルト法などによって、好適に作製することができる。 ホットメルト法は、有機溶剤などの希釈媒体を全く使用せず、高温で急激に軟化溶融するブロック共重合体の特性を利用した方法であり、乾燥工程が不要、塗工速度が速い、爆発火災の危険がないなどの利点がある。 一例として、ホットメルト法による創傷材の製造例を以下に記載する。加熱制御可能な高速回転ミキサーで、エラストマー成分、粘着付与樹脂、可塑剤及びコロイド粒子、そして適宜その他成分を、窒素雰囲気下、通常150〜200℃の温度で30〜120分間加熱高速撹拌して溶解物として各成分が均一となった粘着剤組成物を得る。 前記方法にて得られた粘着剤組成物を、ホットメルト塗工機にて、150〜200℃に温度制御したダイヘッド部分から押し出して剥離シート上に100〜1,000μmの厚さに展延した後、これに、基材をラミネートすることで創傷材を作製する。 ここで用いられる基材としては、適度な伸縮性、柔軟性、強度を備えるものであれば特に限定されず、適度の通気性、透湿性及び菌バリヤー性の性質を備えるものが特に好ましい。例えばポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル及びポリアクリル酸等のフィルム、フォーム、不織布、織布及び編み布等が挙げられる。中でも上述の観点からポリウレタン性のフィルムが好ましい。 また、使用する剥離シートは貼付材の分野で慣用のものを用いることができる。例えばシリコーン離型処理した上質紙、グラシン紙等の紙基材やポリエステルフィルム等を用いることができる。また、剥離体の目付けは、限定はされないが、通常、50〜150g/m2程度が好ましく、60〜100g/m2程度がより好ましい。剥離シートは1枚としてもよいが、剥離シートの略中心部に、その外形を分断する線状の剥離シート分断部を1本もしくは2本以上設けることによって、一方の剥離シートを剥がしても、他方の剥離体が残り、粘着面に触れることなく貼付作業ができるようになり、作業性が向上する。貼付材をロール状とした場合においては、特に剥離シートを剥ぎ取りやすくし、取り扱い性を向上させるのに有効である。また、2枚以上の剥離シートを粘着剤から剥離しやすいように、剥離シートを一方に覆い被さるか又は折り返すように配置しても、取り扱い性を向上させるのに有効である。 本発明において、剥離シートの長さは、粘着剤の流出防止、生産性、取扱性、経済性及び製法の容易性等の観点より、粘着剤の塗工領域よりも、0.2mm以上、特に1〜5mm大きくすることが好ましい。 本発明の創傷材の粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層)の厚さは、特に制限されないが、皮膚への固定性を担保し、基材厚みとのバランスの点から、一定厚とする場合は、100乃至1,200μm以下が好ましい。また、例えば、創傷材の縁取り部の粘着剤の塗布量を、創傷剤の中央部分の粘着剤の塗布量より少なく、厚みを薄くすることにより、縁取り部と衣類等とのこすれを防止し、皮膚へ適用した時に剥がれにくくなる効果が得られる。この場合、粘着剤の塗布量は、中央部で、好ましくは300〜1,200μm、更に好ましくは600〜800μmであり、縁取り部の粘着剤の塗布量は、好ましくは50〜300μm、更に好ましくは100〜300μmである。〔ハイドロコロイド組成物層の粘着力〕 創傷材は、創傷部位を含む貼付皮膚面に貼付されるものであり、創傷部位及び健常皮膚に損傷を与えることなく剥離できるものでなければならないこと、及び背面に配置される支持体に対する投錨性を良好に保つ必要があることから、所定の粘着力を有することが望ましい。 したがって、上記創傷材の粘着剤層であるハイドロコロイド組成物層の粘着力は、皮膚面に対する粘着力と、対SUS粘着力の双方とを測定して評価する必要がある。なおここで説明するハイドロコロイド組成物層の粘着力に関する記載は、上記創傷材の粘着剤層のみならず、後述する本発明の貼付材におけるパッド層(b)を形成するハイドロコロイド組成物層(b2)の粘着力にも該当するものである。これら粘着力の記載において、後述する貼付材におけるハイドロコロイド組成物層(b2)についても単に“ハイドロコロイド組成物層”と称する。 ハイドロコロイド組成物層の皮膚面に対する粘着力は、好ましく0.1〜1N/15mm、より好ましくは0.2〜0.7N/15mm、更に好ましくは0.3〜0.5N/15mmの範囲である。 また、好ましくは、皮膚面に対するハイドロコロイド組成物層の粘着力を、皮膚面に対する粘着剤層の粘着力より小さくすること、すなわち前記創傷材であれば支持体上の疎水性粘着剤層の粘着力より小さくする、或いは、後述する貼付材であれば後述する粘着テープ(a)の粘着力より小さくすることにより、創傷部位及び健常皮膚に損傷を与えることなく、剥離時に貼付材を剥離することができる。 皮膚面に対するハイドロコロイド組成物層の粘着力の測定方法は、以下のとおりである。まず15mm×長さ15mm以上、好ましくは70mmの所定の長さに裁断したハイドロコロイド組成物層〔あらかじめ形成したハイドロコロイド組成物層(単体)でもよいし、前記創傷材における支持体と又は支持体とその上の疎水性粘着剤層と一体となった(さらにはフィルムなどを介在させた)ハイドロコロイド組成物層、或いは後述する貼付材における保護層(b1)さらには粘着テープ(a)と一体となったハイドロコロイド組成物層(b2)でもよい。〕を、所定人数の被験者の前腕内側部位(肘から手首方向に向かって30〜65%の範囲とする。)に貼付し、手のひらを10秒間押し当てて圧着する。貼付してから20分間経過した後、JIS Z0237に準拠し、剥離角度90°、剥離速度100mm/分の条件で、粘着力を測定する。 また上記創傷材における支持体又は支持体とその上の疎水性粘着剤層(さらには介在させたフィルムなど)に対する投錨性、或いは後述する貼付材における保護層(b1)さらには粘着テープ(a)に対する投錨性を良好に保つ観点から、ハイドロコロイド組成物層の対SUS粘着力は、好ましくは0.3〜8N/15mm、より好ましくは0.4〜7N/15mm、更に好ましくは0.5〜6N/15mmの範囲である。また、好ましくは、ハイドロコロイド組成物層の対SUS粘着力を、粘着剤層の対SUS粘着力より小さくすること、すなわち前記創傷材であれば支持体上の疎水性粘着剤層の対SUS粘着力より小さくする、或いは、後述する貼付材であれば後述する粘着テープ(a)の対SUS粘着力より小さくすることにより、貼付材を皮膚面から剥離するときに、創傷材からの粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層、謂わばパッド)の脱落、或いは粘着テープ(a)からのパッド層(b)の脱落を防止することができる。 ハイドロコロイド組成物層の対SUS粘着力の測定方法は、以下のとおりである。まず、ハイドロコロイド組成物層〔あらかじめ形成したハイドロコロイド組成物層(単体)でもよいし、前記創傷材における支持体と又は支持体とその上の疎水性粘着剤層と一体となった(さらにはフィルムなどを介在させた)ハイドロコロイド組成物層、或いは後述する貼付材における保護層(b1)さらには粘着テープ(a)と一体となったハイドロコロイド組成物層(b2)でもよい。〕を支持テープに固定し、幅15mm×長さ15mm以上、好ましくは、70mmに裁断して試験片とする。試験片を対SUS粘着力試験パネルに押しつけて貼着させた後、2kgのローラーで圧着速さ600mm/分、圧着回数2往復で貼着させて試験片を調製する。貼着してから1分以内にJIS Z0237に準拠し、剥離角度90°、剥離速度300mm/分の条件で、粘着力を測定する。<貼付材> 本発明のハイドロコロイド粘着剤組成物は、下記構成を備える貼付材:支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)、及び、該粘着剤層(a2)に隣接する任意の柔軟性のある保護層(b1)と、ハイドロコロイド組成物層(b2)とからなるパッド層(b)を重ね合わせて備える貼付材、或いは、支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)、及び、該粘着剤層(a2)に隣接するハイドロコロイド組成物層(b2)のパッド層(b)を重ね合わせて備える貼付材において、前記ハイドロコロイド組成物層(b2)において好適に使用できる。 上記貼付材を構成する各層:支持体層(a1)、粘着剤層(a2)、保護層(b1)の構成や製造方法、また本発明のハイドロコロイド粘着剤組成物よりなる、ハイドロコロイド組成物層(b2)を含めたこれらの物理的・化学的性質については、国際公開第2013/077134号パンフレットに定義されたものを好適に適用できる。[粘着テープ(a)] 本発明の貼付材において、粘着テープ(a)は、支持体層(a1)と粘着剤層(a2)とから形成される。粘着テープ(a)は、支持体層(a1)の一方の面の全面又はパターン塗工によって積層された粘着剤層(a2)を備える。〈支持体層(a1)〉 支持体層(a1)は、前述の<創傷材>の基材の説明において示した材料を用いることができ、適度な伸縮性、柔軟性、強度を備えるものであれば特に限定されないが、通気性、透湿性及び菌バリヤー性があるものが特に好ましい。例えばポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル及びポリアクリル酸等のフィルム、フォームや、弾性繊維から形成した布帛として、不織布、織布及び編み布等が挙げられ、好適には不織布またはポリウレタンフィルムを用いることができる。支持体層(a1)は、支持体の強度等を考慮した上で、穿孔によって多数の微細な漏斗状、円柱状等の孔を空けてもよいが、防水性の観点からは、孔がなくても透湿性があるフィルムを用いることが好ましい。 支持体層(a1)を、不織布とした場合の弾性繊維としては、平均繊維径が、通常3〜25μm、好ましくは4〜20μm、より好ましくは5〜15μmの範囲のものを使用することができる。したがって、支持体層(a1)における弾性繊維は、平均繊維径が3〜25μmのポリウレタン弾性繊維であることが、特に好ましい。また、弾性繊維から形成した布帛は、目付が、通常20〜300g/m2、好ましくは25〜250g/m2、より好ましくは30〜200g/m2の範囲であり、厚みが、通常50〜500μm、好ましくは80〜450μm、より好ましくは120〜400μmの範囲である。布帛からなる支持体層(a1)の厚みが500μmを超えると、貼付材が、皮膚の動きに追随しにくくなり、短期間で皮膚から剥離したり、貼付中の違和感が増えたりすることがある。支持体層(a1)の厚みが50μm未満であると、貼付材の強度が不足し、また、短期間で皮膚から剥離することがある。 支持体層(a1)として、特に好ましく使用されるポリウレタン弾性繊維から形成した不織布としては、例えば、ポリウレタン弾性繊維が積層され、その弾性繊維の接触点が該弾性繊維自体によって接合されているようなもので、タピルス(登録商標)(タピルス(株))、エスパンシオーネ(登録商標)(KBセーレン(株))、その他の市販品も好適に使用できる。 弾性繊維から形成する不織布は、公知の不織布の製造方法であるメルトブロー法、スパンボンド法、エアレイド法、ニードルパンチ法などを採用することができる。また、不織布は、そのままで、又はエンボス加工した後、巻き取られ、不織布となる。 弾性繊維から形成した不織布等の布帛には、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば紫外線吸収剤、老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを添加することができる。これらの添加剤は、繊維の原料に配合してもよいし、不織布等の布帛に表面処理を行って添加してもよく、透湿性を損なわない限り、その種類に応じて通常の量で用いられる。 また、弾性繊維から形成した不織布等の布帛に、該弾性繊維と親和性及び接着性がある合成樹脂を含浸させてもよい。該合成樹脂には、弾性繊維と接着できるように適宜の接着剤を混合して使用することができ、ポリウレタン弾性繊維やポリアクリル弾性繊維から形成した不織布の場合には、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂を使用すると該不織布等の布帛の繊維(フィラメント)との接着性がよい。 また支持体層(a1)を、ポリウレタンフィルムとする場合、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱硬化性ポリウレタンエラストマー(アミン硬化型ポリウレタンエラストマー、及びOH硬化型ポリウレタンエラストマー)などを選択できるが、特に限定されない。本発明の貼付材における支持体層(a1)に適したポリウレタンエラストマーとしては、市販品では、セイコー化成(株)のラックスキンUS2268(ポリエーテル型);ラックスキンU−1223、U−1285、及びU−2860(ポリエステル型);を挙げることができるが、これらに限定されない。これらのポリウレタンエラストマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。 上記ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない。例えば、高弾性のポリウレタンエラストマーのガラス転移温度は、50℃の高さになるものもある。とはいえ、ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度は、支持体層としてのエラストマーフィルムの伸縮性、柔軟性、10%引張荷重などの観点から、−70℃から20℃の範囲内にあることが好ましい。ガラス転移温度の上限値は、20℃であることが好ましく、10℃であることがより好ましく、0℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度の下限値は、多くの場合、−60℃または−55℃である。ポリウレタンエラストマーのガラス転移温度は、常法に従って、示差走査熱量計を用いて測定した値である。 上記ポリウレタンフィルムとした場合の支持体層(a1)の厚みは、1〜100μm、好ましくは8〜50μm、より好ましくは10〜40μmの範囲内である。貼付中の貼付材の目立ちにくさや違和感の緩和の観点から、ポリウレタンフィルムの厚みを1〜5μmの範囲内にまで薄くすることもできる。 支持体層(a1)をポリウレタンフィルムとした場合、その厚みが1μm未満の場合には、製膜が困難にあることに加えて、基材層としての強度が不充分となり、貼付材を被着体に貼付したり、貼付材を被着体から剥がしたりする作業の際に、支持体層(a1)(基材層)が切れて(破れて)しまうことがある。またポリウレタンフィルムの厚みが大きすぎると、貼付材全体の厚みを薄くしても、貼付材が皮溝などの微細な凹凸のある皮膚表面に沿って密着しにくく、貼付状態が目立ち易くなり、違和感も大きくなる傾向にある。 支持体層(a1)は、透湿度が1,000g/m2・day以上であり、2,000g/m2・24hr以上であることが好ましい。また、支持体層(a1)の透湿度の上限は、特に制限されないが、通常、約10,000g/m2・24hr以下、好ましくは約8,000g/m2・24hr以下である。このような透湿度を有する支持体層(a1)は、前述の不織布、編布では容易に達成され得、また例えば、ドレッシング材として有用であり上記当湿度を備えたウレタンフィルムの支持体はそれ自体公知であり(特開平7−231910号公報など)、市販されている。〈粘着剤層(a2)〉 粘着剤層(a2)は合成樹脂を含有する粘着剤から形成され、該粘着剤に含有される合成樹脂は、皮膚刺激性が低いものであれば特に制限はなく、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ゴム系、ポリビニルアルコール系、ポリアミド系、ポリ酢酸ビニル系、その他の合成樹脂を含有する粘着剤を使用することができる。これらの粘着剤の中でも、アクリル系樹脂からなるアクリル系粘着剤;ポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステル系ポリウレタン等のウレタン系粘着剤;オルガノポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン等のシリコーン系粘着剤;ポリイソブチレン、ブチルゴム、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)やSBRの水素添加物等のゴム系粘着剤;が好ましく用いられる。アクリル系粘着剤が、粘着性及び皮膚刺激性の観点から、特に好ましい。 アクリル系粘着剤に含有されるアクリル系樹脂としては、炭素原子数が1乃至15、好ましくは炭素原子数1乃至12、より好ましくは炭素原子数1乃至10の範囲内であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単独重合体、又は、2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、あるいは、該(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上と、これと共重合可能な他のモノマーの1種以上とを共重合してなる共重合体が挙げられる。なお、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」を総称する表現である(以下、同様。)。 (メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸イソノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル;等が挙げられる。 (メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の水酸基含有単量体;アクリル酸メトキシジエチレングリコール、メタクリル酸メトキシジエチレングリコール、アクリル酸メトキシジプロピレングリコール、メタクリル酸メトキシジプロピレングリコール、アクリル酸エトキシジエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸アルコキシポリアルキレングリコールエステル;N,N−ジメチルアミノメチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル;スチレン等のビニル芳香族化合物;塩化ビニル;ビニルピロリドン等のビニル系単量体などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマーとして好ましいのは、酢酸ビニルである。 アクリル系樹脂において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70〜97質量%、更に好ましくは75〜95質量%の割合で用いられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマーは、通常50質量%以下、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30〜3質量%、更に好ましくは25〜5質量%の割合で用いられる。 アクリル系樹脂は、特に製造方法が限定されず、一般に採用される溶液重合法、懸濁重合法又は乳化重合法により製造することができる。 これら粘着剤は、粘着特性を調整するために、所望により、粘着付与剤を配合することができる。粘着付与剤としては、例えば、テルペン系、テルペンフェノール系、クマロンインデン系、スチレン系、ロジン系、キシレン系、フェノール系、石油系などの粘着付与樹脂を挙げることができる。また、アクリル系樹脂には、必要に応じて、さらに、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、過酸化物、金属キレート化合物等の架橋剤;軟化剤、充填剤、酸化防止剤などを添加することができる。これらの粘着付与剤は、多くの場合、アクリル系樹脂100質量部に対して、20質量部以下、好ましくは15質量部以下を用いることができる。また、添加剤は、同じく10質量部以下、より好ましくは0.01〜5質量部、添加剤の種類によっては、更に好ましくは0.02〜2質量部の割合で用いることができる。 上記粘着剤層(a2)において、“通気性を有する”場合に、好ましい態様となる場合が多い。“通気性を有する”場合とは、JIS P8117に準拠して、ガーレー式デンソメーター(テスター産業株式会社)を使用して測定した通気度が60秒/300cm3以下の粘着剤層をいう。粘着剤層の通気度は、より好ましくは0.05〜50秒/300cm3、更に好ましくは0.1〜40秒/300cm3、特に好ましくは0.2〜35秒/300cm3である。 但し、粘着剤層(a2)自体の通気性を測定することはできないため、不織布や織布など、粘着剤層(a2)以上の通気性がある材料と積層した状態で測定を行った値を、粘着剤層(a2)の通気性として評価する。 粘着剤層(a2)の通気度の測定は、具体的には、以下のとおりである。すなわち、5cm×5cmの大きさに裁断した粘着テープ(a)〔前記支持体層(a1)と前記粘着剤層(a2)を積層したもの〕を、締付板(土台)に貼付する。締付板を透過する面積は645.16mm2とする。ガーレー式デンソメーターの内側シリンダーを引き出し、ストッパーにセットした後、締付板の間に試験片を締め付ける。内側シリンダーを静かに下降させ、300cm3の空気量が通過する秒数を測定して得た粘着テープ(a)の通気度を、粘着剤層(a2)の通気度(秒/300cm3)として評価する。したがって、特に好ましい粘着テープ(a)の通気度は、0.2〜35秒/300cm3となる。 粘着剤層として、合成樹脂を含有する通気性を有する粘着剤で形成した粘着剤層(a2)を用いることにより、該粘着剤層及び貼付材の通気性やクッション性が良好となり、また、皮膚に対する追従性が向上して、皮膚への密着性が良好となる。 通気性を有する粘着剤層(a2)は、通常の方法で得ることができる。具体的には、前述の合成樹脂を含む粘着剤と、空気、窒素ガス、炭酸ガス等の物理的発泡剤や分解型の化学発泡剤、水溶液や有機溶剤とを混合した後に、剥離紙に塗工し、あるいは、粘着剤を、あらかじめ水溶液や有機溶剤を塗布又は散布した剥離紙に塗工し、次いで、加熱を行って、発泡又は気化作用を利用する発泡方法のほか、塗工後の未乾燥の粘着剤表面に霧状の水分を塗布して、微細な孔を形成する方法、粘着剤を糸状・繊維状に剥離紙上に吐出する方法などが挙げられ、これらの方法により、合成樹脂中に多数の微細な孔を有する粘着剤層が形成される。微細かつ均一な孔を形成することができる観点から、より好ましくは発泡による方法である。 上記粘着剤層(a2)は、発泡倍率が、通常1.1〜10倍、好ましくは1.2〜8倍、更に好ましくは2〜5倍の範囲であり、密度が、通常0.1〜0.9g/cm3、好ましくは0.12〜0.8g/cm3、更に好ましくは0.2〜0.5g/cm3の範囲である。 上記粘着剤層(a2)は、通常、前述の支持体層(a1)の一方の面の全面に設けられるが、所望により、支持体層(a1)の全面に設けず、一部分に設けることもできる。 上記粘着剤層(a2)の厚みは、特に限定されないが、通常10〜200μm、好ましくは15〜150μm、より好ましくは20〜100μmの範囲である。〈粘着テープ(a)の製造方法〉 本発明の貼付材における粘着テープ(a)は、支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる。 粘着テープ(a)の製造方法は、特に限定されないが、前述の支持体層(a1)の上に、粘着剤層(a2)を構成する粘着剤となる合成樹脂の溶液又はエマルションを直接塗工し、該粘着剤を任意で発泡させることによって、粘着剤層(a2)を形成してもよい。 また、シリコーン系剥離剤等を塗布した工程紙上に、粘着剤層(a2)を構成する粘着剤となる合成樹脂の溶液又はエマルションを塗工し、該粘着剤を任意に発泡させることによって、粘着剤層(a2)を形成した後に、前述の支持体層(a1)と積層する方法を採用することもできる。 また粘着剤層(a2)が、支持体層(a1)の全面に設けられない場合、その他所望により、粘着剤となる合成樹脂の溶液又はエマルションの塗工を、点状、縞状その他のパターンによって行えばよい。〔粘着テープ(a)の透湿度〕 本発明の貼付材において、粘着テープ(a)の透湿度は、1,000g/m2・24hr以上であることが好ましいことが多い。粘着テープ(a)の透湿度を上記範囲に設定することにより、貼付材を皮膚面に貼付したとき、発汗により剥離したり、かぶれが生じたりすることが効果的に抑制される。粘着テープ(a)の透湿度は、より好ましくは2,500g/m2・24hr以上、更に好ましくは3,000g/m2・24hr以上、特に好ましくは3,500g/m2・24hr以上である。また粘着テープ(a)の透湿度の上限は、布帛では通常50,000g/m2・24hr程度、フィルムでは通常10,000g/m2・24hr程度である。 粘着テープ(a)の透湿度は、前記支持体層(a1)と前記粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)について、JIS Z0208の(塩化カルシウム法)に従って、温度40℃、相対湿度90%の測定条件で測定する。具体的には、粘着テープ(a)の粘着剤層側の雰囲気を温度40℃、相対湿度90%に調節し、他面側には約15gの吸湿剤(塩化カルシウム)を置いて、試料を通過した水分を吸収させ、吸湿剤の質量変化量を1m2、24時間当りに換算して透湿度の値とする。粘着テープ(a)の透湿度が大きいことによって、創傷部とは無関係の部位について、貼付時に蒸れたり、汗が溜まったりするのを防ぐことができる。〔粘着テープ(a)の粘着力〕 本発明の貼付材における粘着テープ(a)の粘着力、具体的には、前記粘着剤層(a2)の粘着剤の粘着力は、対ユポ粘着力(剥離力)として、好ましくは0.5〜4.2N/15mm、より好ましくは0.7〜3.5N/15mm、更に好ましくは0.8〜3.1N/15mmの範囲内であることが望ましい。 粘着テープ(a)の粘着力が、この範囲内であることにより、本発明の貼付材を皮膚面に貼付した場合、十分な貼付性能を備え、貼付中に位置ずれが生じたりしないとともに、該貼付材を剥離するときには、皮膚の創傷部位はもちろん、創傷部位及びその近傍の正常な皮膚表面を剥離したり、かぶれを発生したりするおそれがない。また、上記の粘着力とすることで、後述するパッド層(b)と粘着剤層(a2)との接着を良好なものにし、投錨性が十分担保されるため、貼付材の使用中にパッド層(b)がずれるなどの不都合がない。 なお、粘着テープ(a)の粘着力の測定方法は以下のとおりである。 まず、粘着テープ(a)を、幅15mm×長さ15mm以上、好ましくは100mmの所定の長さに裁断して試験片とする。一方、ベークライト製試験パネルに、ユポ(登録商標)FPG−130((株)ユポ・コーポレーション製の合成紙)を両面テープで貼り付けて対ユポ粘着力試験パネルを作製する。試験片を対ユポ粘着力試験パネルに押しつけて貼着させた後、2kgのローラーで圧着速さ300mm/分、圧着回数1往復で貼着させて試験片を調製する。貼着してから20分間経過した後、JIS Z0237に準拠し、剥離角度180°、剥離速度300mm/分の条件で、粘着力を測定する。[パッド層(b)] 本発明の貼付材において、パッド層(b)は、任意の柔軟性のある保護層(b1)(以下、単に保護層(b1)とも称する)と、ハイドロコロイド組成物層(b2)とからなる態様が好ましいが、前記ハイドロコロイド組成物層(b2)のみからなる態様であってもよい。なお本発明の貼付材において、保護層(b1)が存在しないパッド層(b)を採用した態様は、前述の創傷材(例えば救急絆創膏)に類似の態様となる。 保護層(b1)が存在する場合は、パッド層(b)は、あらかじめ形成した保護層(b1)とハイドロコロイド組成物層(b2)とを、接着その他の方法により一体化させてもよいし、後述するように、柔軟性のあるフィルム上に、上述の本発明のハイドロコロイド型粘着剤組成物を押し出すことによって、保護層(b1)と一体となったハイドロコロイド組成物層(b2)を形成して、パッド層(b)を得てもよい。 また保護層(b1)が存在しない場合は、前述の粘着テープ(a)の粘着剤層側の中央部に、好ましくは矩形状に、ハイドロコロイド型粘着剤組成物を直接配置して積層し貼付材を製造してもよい。〈柔軟性のある保護層(b1)〉 本発明の貼付材におけるパッド層(b)を形成する柔軟性のある保護層(b1)は、粘着テープ(a)が存在する場合は任意層となるが、前記の合成樹脂を含有する通気性を有する粘着剤層(a2)に隣接する保護層(b1)である。 すなわち、本発明の貼付材において、当該保護層(b1)は、前記支持体層(a1)と反対側の面に備えられるものである。 上記保護層(b1)は、前記粘着剤層(a2)と、後述するハイドロコロイド組成物層(b2)との間に存在するものであり、その特性として、ハイドロコロイド組成物層(b2)が吸収した水分を前記の粘着テープ(a)側に移行させる高透湿性を備えるとともに、該ハイドロコロイド組成物層(b2)を支持する強度と伸縮性とを併せ備え、かつ、貼付材外部からの水分の浸入を防止する機能を有する、すなわち裏打ち材としての役割を果たすものが好ましい。 したがって、上記保護層(b1)は、前記した粘着テープ(a)の透湿度の測定方法と同様の方法により測定した透湿度が500g/m2・24hr以上であることが好ましく、より好ましくは2,000g/m2・24hr以上、特に好ましくは3,500g/m2・24hr以上である。また、上記保護層(b1)の透湿度の上限は、通常10,000g/m2・24hr程度、多くの場合8,000g/m2・24hr程度である。 上記保護層(b1)は、皮膚に対する追従性があり、貼付材を皮膚に密着させることが可能な程度に柔軟な層である。 上記保護層(b1)を形成する素材としては、従来から公知の素材を用いることができるが、熱可塑性の樹脂であり、ヒト皮膚に対する安全性が確認されており、また柔軟性及び伸縮性が認められ、日常防水性があり、高透湿性の機能を備えるものを用いることが好ましい。 具体的には、上記保護層(b1)を形成する素材としては、LLDPE、LDPE等のポリエチレン製や、伸縮性を有するポリエステル製のフィルムに0.01〜10μm程度の微細孔を設けたものや、炭酸カルシウム等を含有させ、所望により延伸加工したもののほか、ポリウレタンを素材とするポリウレタンフィルム、およびそれらの不織布、編布等の布帛が好ましい。 特に、柔軟性のある保護層(b1)をポリウレタンフィルム層とすると、引張り応力が他の素材よりも優れるため、関節などの稼動部付近の皮膚の創傷部にも柔軟に適合するので、より好ましい。また上記保護層(b1)として採用する場合、該ポリウレタンフィルムの一方の表面又は両面にコロナ処理や下塗り処理などを行ってもよい。 また、上記保護層(b1)には充填剤を配合してもよい。充填剤としては、シリカ、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、充填剤の配合により、該保護層(b1)の前記粘着テープ(a)の粘着剤層(a2)に対する粘着力が向上する。この結果、本発明の貼付材を皮膚から剥離するときに、パッド層(b)が皮膚に残存してしまうことを確実に防止することができる。 上記保護層(b1)中の充填剤の含有量は、当該保護層(b1)の総質量に対して通常10〜60質量%、好ましくは20〜55質量%、好ましくは30〜50質量%である。特に、該柔軟性のある保護層(b1)がポリウレタンフィルム層であり、充填剤として、シリカを含有する場合は、水仕事や入浴等により、貼付材が湯水に触れても、前記の粘着力の低下が少ないので好ましい。 上記保護層(b1)の厚みは、通常5〜45μm、好ましくは6〜40μm、より好ましくは7〜35μmである。厚みが小さすぎると、強度並びに水分の浸入防止機能が不足し、製造時の取り扱い性が悪化するおそれがある。厚みが大きすぎると、貼付材全体としての高透湿性が発揮されず、また伸縮性が不足するおそれがある。〈ハイドロコロイド組成物層(b2)〉 本発明の貼付材におけるパッド層(b)を形成するハイドロコロイド組成物層(b2)は、上記保護層(b1)に隣接する前記粘着剤層(a2)とは反対側の面に設けられる。或いは上記保護層(b1)が存在しない場合、前記粘着剤層(a2)に隣接して、すなわち該粘着剤層(a2)に接する支持体層(a1)とは反対側の面に設けられる。 上記ハイドロコロイド組成物層(b2)は、上述の本発明のハイドロコロイド型粘着剤組成物よりなる。 なお、ハイドロコロイド組成物層(b2)の吸水率や、厚み、その粘着力は、前述の<創傷材>における粘着剤層(ハイドロコロイド組成物層)において説明したとおりである。[剥離紙(c)] 本発明の貼付材は、さらに、剥離紙(c)を備えるものとすることができる。剥離紙(c)は、通常、前記ハイドロコロイド組成物層(b2)の前記保護層(b1)と反対側の面(或いは該保護層(b1)が存在しない場合には該ハイドロコロイド組成物層(b2)の前記粘着テープ(a)と反対側の面)に積層される。なお後述するように、本発明の貼付材において、前記パッド層(b)の面積は前記粘着テープ(a)の面積に対して好ましくは5〜70%の面積比となる、要するに粘着テープ層(a)においてパッド層(b)が積層されていない部分があることから、剥離紙(c)は前記粘着剤層(a2)の前記支持体層(a1)と反対側の面にも積層されることとなる。 本発明の貼付材は、前記粘着剤層(a2)及びハイドロコロイド組成物層(b2)に対向して、剥離紙(c)を配置することにより、該剥離紙(c)が粘着剤の表面を覆った状態のものとして供給されることが好ましい。 上記剥離紙(c)は、貼付材の分野で慣用されているものを用いることができ、例えば、剥離剤を塗布して剥離処理した上質紙、グラシン紙等の紙基材やポリエステルフィルム等を用いることができる。剥離紙(c)は、貼付材の全体を1枚で覆う寸法及び形状のものでもよく、貼付材の面積より大きいものでもよい。また、剥離紙(c)は、2枚以上に区分されたものでもよく、該2枚以上の区分された剥離紙(c)の少なくとも1つに折り返し部を設けてもよい。さらに、ハイドロコロイド組成物層(b2)の一部以上を覆う1枚の剥離紙(c)、及び該パッド層(b)周辺の粘着テープ(a)(すなわち、支持体層(a1)及び粘着剤層(a2)上に2枚以上の剥離紙(c)を配置して、合計3枚以上に区分された剥離紙(c)とすることもできる。 また、剥離紙(c)を形成するために塗布する剥離剤の選択、並びに、上記粘着剤層(a2)及びハイドロコロイド組成物層(b2)の選択などにより、粘着テープ(a)と剥離紙との剥離力を、パッド層(b)と剥離紙との剥離力より大きくすることによって、貼付材からの剥離紙の剥離を容易なものとして取り扱い性を向上させるとともに、貼付材からのパッド層の脱落を防止することが好ましい。[貼付材の製造方法] 本発明の貼付材の製造方法は、特に限定されず、従来の貼付材の製造方法で作製することができる。 例えば、シリコーン系剥離剤等を塗布した工程紙上に、粘着剤となる合成樹脂の溶液又はエマルションを塗工し、該粘着剤を発泡させることによって、合成樹脂を含有する通気性を持つ、好ましくは発泡した粘着剤層(a2)を形成した後に、弾性繊維から形成した布帛からなる支持体層(a1)と積層する方法によって、粘着テープ(a)を用意することができる。 一方、柔軟性のある保護層(b1)と、その上に形成したハイドロコロイド組成物層(b2)とを適切な大きさに裁断し、前記の粘着テープ(a)上の略中央に配置し、通常は、更に剥離紙(c)を配置して、絆創膏の形状(通常、小判形)等に裁断して、貼付材を得る。通常は、後の工程で室温において、紙、プラスチックフィルム、又はそれらの複合材で形成された包装紙中に貼付材を封入して製品となる。 なお前記パッド層(b)(特にハイドロコロイド組成物層(b2))の面積は、貼付する皮膚における損傷部位及び健常な皮膚を保護する観点から、粘着テープ(a)の面積に対して、好ましくは5〜70%の面積比、より好ましくは8〜50%、特に好ましくは10〜45%の面積比とすることが望ましい。また、粘着テープ(a)の短辺よりもパッド層(b)の幅が狭いことが望ましい。ここで通常、前記支持体層(a1)と前記粘着剤層(a2)の面積は同一であり、また前記保護層(b1)とハイドロコロイド組成物層(b2)の面積は同一か、保護層(b1)の面積をハイドロコロイド組成物層(b2)の面積より5から10%程度大きくすることもできる。 粘着テープ(a)とパッド層(b)との面積比を、上記の比率とすることによって、ハイドロコロイド組成物層(b2)が、皮膚の創傷部位を湿潤環境に保つことができ、かつ、該ハイドロコロイド組成物層(b2)自体が皮膚に強く接着する必要がないため、貼付材を剥離するときの痛みや皮膚の損傷を抑えることができる。 したがって、ハイドロコロイド組成物層(b2)の面積、すなわちパッド層(b)の面積が異なる貼付材を用意することによって、創傷の大きさに合わせて、最適な貼付材を選択することができる。基本的には、対象となる傷より若干大きめで、かつ正常な皮膚をなるべく覆わない程度の大きさの該パッド層を備える貼付材を選択すればよい。本発明の貼付材は、切りキズ、擦りキズ、刺しキズ、掻きキズ、靴ずれ等の創傷がある皮膚に、好ましく適用することができる。 また、前記支持体層(a1)、前記粘着剤層(a2)、前記保護層(b1)、及び前記ハイドロコロイド組成物層(b2)の各層の厚みは、先に述べたとおりであるが、貼付材を皮膚面に貼付するときのハイドロコロイド組成物層(b2)の端縁部のめくれを防ぎ、かつ、貼付するときや貼付継続中に皺などが生じずに皮膚面に充分に密着固定させるために、該ハイドロコロイド組成物層(b2)の厚みを端縁に向かって徐々に薄くなるように傾斜させて形成しておくことが好ましい。 上述の(a1)、(a2)、(b1)、(b2)の各層を順に積層してなる本発明の貼付材は、以下の(1)〜(4)の特長を有する。(1)弾性繊維から形成した布帛またはウレタンフィルムからなる支持体層(a1)を備えることにより、伸縮性、透湿性、皮膚への追随性及び引張強度に優れた貼付材を提供することができる。(2)合成樹脂を含有する通気性を有する粘着剤層(a2)を備えることにより、透湿性、通気性、クッション性及び皮膚への追随性に優れ、皮膚刺激性が少ない貼付材を提供することができる。(3)柔軟性のある保護層(b1)を合成樹脂を含有する通気性を有する粘着剤層(a2)に隣接させ、ハイドロコロイド組成物層(b2)を積層してパッド層(b)を形成することにより、ハイドロコロイド組成物層(b2)が、創傷部位からの浸出液や貼付材の外部環境からの水分によって崩壊することがない。(4)特に、粘着テープ(a)を、弾性繊維から形成した布帛からなる支持体層(a1)と、合成樹脂を含有する通気性を有する粘着剤層(a2)とした場合は、通常、パッド層(b)より伸張性に富んでおり、その結果、皮膚面への貼付と皮膚面からの剥離操作が容易となり、また、貼付中の皮膚の屈曲に追随しやすい。 更に本発明の貼付材は、粘着テープ(a)を、弾性繊維から形成した布帛からなる支持体層(a1)と、合成樹脂を含有する通気性を有する粘着剤層(a2)とからなるものとし、保護層(b1)がフィルムの場合は、ハイドロコロイド組成物層(b2)で吸収された創傷部位からの過剰な浸出液は、パッド層(b)上面に配置した保護層(b1)により保護層(b1)の横方向に拡散されるとともに該保護層(b1)周辺に移動し、前記粘着剤層(a2)及び前記支持体層(a1)を通じて速やかに外界に揮散される。 よって、創傷皮膚部位の近辺に存在する正常な皮膚は、前述の過剰な浸出液を保持したままという状態を殆ど経ないため、貼付材の剥離時に健常な皮膚が白化していることを防ぐことができる。 また、本発明の貼付材がすり傷、かき傷、靴ずれなど、浸出液が比較的少ない創傷部位を有する皮膚面に貼付した場合、ハイドロコロイド組成物層(b2)は、適度な粘着性を有しているため、傷とその周辺の皮膚を覆うように接着する。その結果、該ハイドロコロイド組成物層(b2)が、浸出液を吸収することによって、適度に粘着力が低下するので、創傷部位の湿潤環境が整えられる。またパッド層(b)より外側に位置する健常な皮膚は、前記支持体層(a1)と前記粘着剤層(a2)からなる粘着テープ(a)が高透湿性を有しているため、24時間程度皮膚に貼付した場合でも皮膚からの水分の蒸散を妨げることに起因する皮膚の白化を防ぐことができる。 さらにハイドロコロイド組成物層(b2)の背面に前記保護層(b1)を積層して配置している場合、手洗い、食器洗い、入浴など、日常の生活活動で水を使用する場面においても、パッド層(b)への水の侵襲を防ぐことができる。このため、該ハイドロコロイド組成物層(b2)が必要以上に吸水して膨張することがなく、通常の日常生活における水を使用する場面においても本発明の貼付材を好適に使用できる。 このように本発明は、透湿性、日常防水性、皮膚への追随性及び引張強度に優れ、健常な皮膚の白化を防ぎ、皮膚刺激性が少ないという優れた特性を備える貼付材をも提供できるものである。 以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。<皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物の調製> 前記ホットメルト法で、表1に示す組成にて約180℃で30〜50分間の加熱高速撹拌を行い、均一な粘着剤組成物を調製した。 調製した粘着剤組成物をシリコーン処理したグラシン紙(厚さ120μm)上に、600μmの厚さに展延して粘着剤層を形成した。この粘着剤層の上に基材として30μmのポリエーテル系ポリウレタンフィルムをラミネートし実施例及び比較例の創傷材を作製した。 なお、実施例及び比較例で使用した各材料の一覧を表2に示す。<ヒト皮膚粘着力> こうして調製した実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の創傷材について、ヒト皮膚粘着力を評価した。なお試料として、各創傷材を15mm幅×70mm長さに裁断したものを用いた。 まず被験者(成人2名)に、貼付20分前に25℃、50%RH条件下の測定室に入室してもらい、試験片から剥離紙(上記グラシン紙)を剥がして一人2枚ずつ前腕内側部に横方向に貼付し、手のひらを10秒間押し当てて圧着した。貼付してから1時間経過後に、インストロン型引張試験機で90°の剥離角度で100mm/分の引張速度で引き剥がして皮膚粘着力を測定し、平均値を算出した。なお、創傷材におけるヒト皮膚粘着力の好適な数値範囲は0.10〜1[N/15mm]であり、より好ましくは0.2〜0.7[N/15mm]である。得られた結果を表1に示す。 また、皮膚粘着力測定時に剥離時の痛みを、0:痛みなし、1:わずかに痛みあり、2:痛みがあるが気にならない、3:痛みあり、4:耐えられない痛みあり、として5段階にて評価し、平均値を算出した。なお、実使用に際し問題のない評価は2以下である。 得られた結果を表1にあわせて示す。 表1に示すように、本発明の粘着剤組成物を用いて製造した実施例1乃至実施例3の創傷材は、創傷材としての適度なヒト皮膚粘着力を有し、且つ、剥離時の痛みは実使用に際し問題のない評価となった。 一方、可塑剤としてコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を不使用とした比較例1乃至比較例3にあっては、剥離時の痛みが強いという結果となった。特に比較例3に示すように、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)の代わりに、同じく液状成分である流動パラフィンの使用量を増加させた場合においても剥離時の痛みが強いという結果となり、痛みの軽減に当たってコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)の存在が重要であるとの結果となった。(A)スチレン系ブロック共重合体及び液状ゴムを含むエラストマー、(B)粘着付与樹脂、(C)可塑剤、及び(D)コロイド粒子を含有する組成物であって、前記(C)可塑剤が、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を含むことを特徴とする、皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物。前記成分(C)中のコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)の含有量が10質量%以上である、請求項1に記載の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物。前記成分(C)がコハク酸ジ(2−エチルへキシル)とアジピン酸ポリエステルとの組み合わせを含む、請求項1に記載の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物。前記成分(C)の可塑剤は、前記粘着剤組成物の全質量に対して0.5質量%乃至10質量%の量で存在する、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物。前記成分(D)のコロイド粒子は、前記粘着剤組成物の全質量に対して10質量%乃至50質量%の量で存在する、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物。請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物を基材に塗布してなる創傷材。支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)、及び、該粘着剤層(a2)に隣接する柔軟性のある保護層(b1)と、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載のハイドロコロイド型粘着剤組成物よりなるハイドロコロイド組成物層(b2)とからなるパッド層(b)を重ね合わせて備える貼付材。支持体層(a1)と、粘着剤層(a2)とからなる粘着テープ(a)、及び、該粘着剤層(a2)に隣接する請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載のハイドロコロイド型粘着剤組成物よりなるハイドロコロイド組成物層(b2)のパッド層(b)を重ね合わせて備える貼付材。 【課題】所望の粘着性を有し、且つ、剥離時に痛みの少ない粘着剤製品を可能とする粘着剤組成物を提供すること。【解決手段】(A)スチレン系ブロック共重合体及び液状ゴムを含むエラストマー、(B)粘着付与樹脂、(C)可塑剤、及び(D)コロイド粒子を含有する組成物であって、前記(C)可塑剤が、コハク酸ジ(2−エチルヘキシル)を含むことを特徴とする、皮膚貼付用ハイドロコロイド型粘着剤組成物及び該粘着剤組成物を基材に塗布してなる創傷材。【選択図】なし