生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_次世代シークエンサーのためのDNAライブラリー調製方法
出願番号:2014052203
年次:2015
IPC分類:C12N 15/09,C12N 15/00


特許情報キャッシュ

細道 一善 井ノ上 逸朗 光永 滋樹 JP 2015173626 公開特許公報(A) 20151005 2014052203 20140314 次世代シークエンサーのためのDNAライブラリー調製方法 ジェノダイブファーマ株式会社 504383519 内田 直人 100149294 細道 一善 井ノ上 逸朗 光永 滋樹 C12N 15/09 20060101AFI20150908BHJP C12N 15/00 20060101ALI20150908BHJP JPC12N15/00 AC12N15/00 2 2 OL 11 4B024 4B024AA20 4B024CA01 4B024CA09 4B024CA11 4B024CA20 4B024HA20 本発明は、次世代DNAシークエンサーを用いたDNAタイピングに供するDNAライブラリーの調製方法に関する。 現在、様々なタイプの次世代シークエンサーが市場に出回っており、ヒトゲノムの解析、遺伝子発現解析などの研究に使用されるに至っている。 「次世代シークエンサー(シーケンサー):NGSと略記することもある」、「新型シークエンサー」あるいは「超高速シークエンサー」などの呼称は、従来のサンガー法(ジデオキシ法)に基づくマイクロキャピラリーシークエンサー(SBT)との対比において用いられている。次世代シークエンサーと呼ばれるDNAシークエンサーは、少量のDNAサンプルに基づいて、高速で大量のDNA断片を自動的に解析するという点では一致するが、採用されているシークエンス手法は機種によって異なっている。 現在汎用されている次世代シークエンサーで採用されているシークエンス手法の代表例は「逐次合成シークエンシング(sequencing by synthesis: SBS)」であり、DNA断片をテンプレートとして1塩基ずつ再合成するときの蛍光強度等を検出して塩基配列が決定される。 実際に行われる工程は、(1)サンプルからDNAを抽出し、(2)抽出したDNAを大量並列シークエンスに適するように断片化してDNAライブラリーを作成し、(3)ライブラリーのDNA断片の次世代シークエンサーに供して塩基配列を解読することを含む。ここで、各DNA断片の塩基配列の単位を「リード」と呼ぶことがある。次いで、(4)ゲノム配列が既知の生物種の場合は、データベース等を利用して前記リードをリファレンス配列にマッピングして比較するリシークエンス、ゲノム配列が不明な生物種の場合は、新たにアセンブルを行って配列決定するde novoシークエンスが行われる。 次世代シークエンサーにおける大量並列シークエンスを精度良くかつ均一に行うためには、(2)で作成するDNAライブラリーの調製におけるDNA断片のサイズ(長さ)及び濃度の調整が重要である。 例えば、イルミナ社の次世代シークエンサーであるMiseq(商品名)には、その装置に特化したNexteraサンプル調製キット(商品名)が市販されている。Nexteraサンプル調製キットを用いたライブラリー調製では、サンプルから抽出されたDNAの断片化と末端のタグ化が同時に行われ、タグを介してビーズに結合したDNA断片をエマルジョンPCRにより増幅した後、磁気ビーズ(AMPure XP:商品名)を用いて反応夾雑物及び長すぎるDNA断片を除去することができる。 本発明者等は、極めて多型性に富み、医学的にも重要なヒトHLA遺伝子領域のゲノム塩基配列を、次世代シークエンサー(Miseq)及びNexteraサンプル調製キットを用いて完全に決定することに成功した(非特許文献1)。しかしながら、同じキットを使用しても、PCR産物の量によって得られるライブラリーに含まれる断片のサイズが異なる、また、前記キットを使用し調製したDNA断片のサイズ分布範囲が広すぎる、という問題が生じていた。 前記特許文献1では、PCR増幅されたDNAをアガロースゲル電気泳動等によって断片サイズ(長さ)に応じて展開させた後、そのアガロースゲルの所望のサイズ(500bp〜2000bp)に該当する部分を切り出すことによりサイズ(長さ)調節を施すことによりタイピングの精度/有効性を向上させることができた。しかしながら、かかる作業は非常に煩雑で時間を要するものであった。 さらに、一般にサンプル(DNAライブラリー)は多数の容器(例えば、96ウェル、384ウェル)を備えたプレート上で調製されるが、従来の調製方法では、同様の操作をしても各ウェル毎にサンプルに含まれるDNA濃度(量)が相違することは避けられない。一方、次世代シークエンサーにおけるタイピングの精度を向上させるには、DNAライブラリーに含まれるDNA断片は均一な濃度であることが望ましい。そこで従来は、調製したライブラリーをバイオアナライザー等で検査して、濃度のばらつきを調節するという煩雑な操作が必要であった。K.Hosomichi等、BMC Genomics、第14巻、355頁(2013年) よって本発明は、上記のような従来技術の欠点を克服し、簡便かつ短時間にDNAライブラリーに含まれるDNA断片のサイズのみならず濃度を均一に調節することができ、もって次世代シークエンサーに供するのに適したDNAライブラリーを調製することができる方法を提供することを課題とする。 前記の課題を解決するために本発明者等は鋭意研究を重ねた結果、PCR増幅したDNA断片の磁気ビーズを用いた精製において、PCR反応液と混合する磁気ビーズの比率を調節することにより長すぎる断片及び短すぎる断片を両方とも除去し、DNA断片の長さを選択すること、さらにはライブラリーに含まれるDNA濃度を均一化することができることを見出した。この一連の操作の組み合わせによりモル濃度が均一化されることをDNA断片の長さと濃度を測定するバイオアナライザーの結果およびMiSeqから得られるシーケンスデータ量により確認することで、本発明を完成した。 即ち本発明は、以下の工程を含むDNAライブラリーの調製方法を提供する。(1)試験すべきDNA断片を含むサンプルを、磁気ビーズ分散液と第1の所定比率で混合して、必要とする範囲の上限を超える長さのDNA断片を磁気ビーズに結合させ、静置した上清を回収する工程;(2)前記(1)で回収した上清を、磁気ビーズ分散液と前記第1の所定比率より低い第2の所定比率で混合して、必要とする範囲の下限を超える長さのDNA断片を磁気ビーズに結合させ、静置した上清を廃棄し、残った磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する工程;及び(3)前記(2)で回収したDNA断片を、前記(1)及び(2)で使用した磁気ビーズ分散液の希釈液と混合し、静置した上清を廃棄し、残った磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する工程。 本発明の方法では、疎水性相互作用を増大させた水性媒体に磁気ビーズを浮遊させた磁気ビーズ分散液を用いたサイズ選択及び濃度調整により簡便にDNA断片長分布の縮小及び濃度範囲の均一化が達成されるので、極めて短時間で多検体のDNAライブラリーを調製することができる。得られたDNAライブラリーは次世代シークエンサーでの多検体解析におけるデータ量の均一化を実現することから、高精度のタイピングに適したものとなる。実施例1で調製した磁気ビーズ分散液とDNAサンプルとの混合比率と、磁気ビーズに結合するDNAサイズ(長さ)との相関を示す図表である。一定量のDNAサンプルに加える磁気ビーズ分散液の比率を0.4倍(a)及び0.5倍(b)としたとき、並びに本発明の工程(1)及び(2)でサイズ選択を施した場合に得られたDNA断片のサイズ分布を示すグラフである。磁気ビーズ分散液の希釈率と、単位容量の磁気ビーズ分散液に結合するDNA量との相関を示すグラフである。本発明の工程(3)に従う濃度調節(ノーマライゼーション)を実施する前(a)及び実施した後(b)のウェル間でのDNA濃度の均一性を示すグラフである。本発明の工程(3)に従ってノーマライゼーションを実施した96サンプルに含まれるDNA量の分布を示す図である。従来のアガロースゲルを用いたサイズ選択を実施した96サンプルに含まれるDNA量の分布を示す図である。 以下に、本発明のDNAライブラリー調製方法を工程毎に詳細に説明する。 まず、本発明の調製方法の工程(1)では、次世代シークエンサーでタイピングすべきDNAを含むサンプルから調製されるDNA断片(試験すべきDNA断片)を含むサンプルを用いる。 本発明において「試験すべきDNA断片」とは、被験体から取得したサンプルから抽出し、断片化し、PCR増幅したDNA断片である。このDNA断片を調製する方法は特に限定されず、エマルジョンPCR等の当該技術分野で既知の手法を用いて調製してよい。 工程(1)においては、試験すべきDNA断片を含むサンプルを、磁気ビーズ分散液と第1の所定比率で混合する。 本発明で用いられる「磁気ビーズ分散液」は、PCR増幅反応を行った際に得られるような、DNAと、残存するdNTPや塩、プライマーやプライマーダイマーなどの夾雑物を含む反応混合物からDNAを精製する際に使用されている磁気ビーズ分散液でよい。 磁気ビーズ分散液に含まれる磁気ビーズは、特に限定されないが、ビーズの粒子表面にDNAを可逆的に結合させることのできる常磁性微小粒子であり、約1.0μm程度の均一な粒子径を有する粒子が好ましい。例えば、可逆的固相法(Solid Phase Reversible Immobilization: SPRI)の原理を利用した磁気ビーズ(Agencourt(商標)SPRI(商標))等が好ましく用いられる。このSPRI磁気ビーズは、ポリスチレン製のコアに、約40%の鉄成分を含有するマグネタイト(磁鉄鉱)層を被覆し、更にカルボン酸修飾ポリマーで表面を被覆したコア−シェル構造を有する直径1.0μm±8%の磁気ビーズである。 本発明で最も好ましく使用されるのは、前記SPRI磁気ビーズを、好ましくは20重量%のポリエチレングリコール(例えば、PEG8000)及び2.5Mのアルカリ金属塩(例えば、塩化ナトリウム)を含み疎水性相互作用を増大させた水性媒体中に分散させた磁気ビーズ分散液である。この磁気ビーズ分散液としては、「AMpure XP」という商品名で市販されているものを使用することができる。なお、ポリエチレングリコール及びアルカリ金属塩の種類及び濃度は、本発明の効果を奏する範囲内で適宜調整可能である。 従来の「AMpure XP」は、精製されるサンプル量(μL)に対して1.8倍量の磁気ビーズ分散液を用いることにより、サイズの大きいDNAを除去する工程で用いられていた。本発明では、試験すべきDNA断片を含むサンプル量と混合する磁気ビーズ分散液との比率(容量比率)を変えることによりビーズに吸着されるDNAサイズが変化することに着目し、従来の比率より大幅に低い第1の所定比率で混合することにより、DNAサイズの上限値を、次世代シークエンサーでのタイピングに適した「必要な範囲」の上限、例えば約1000bpとすることができた。 本発明の方法の工程(1)で採用される第1の所定比率は、0.3〜0.5、好ましくは0.35〜0.45、最も好ましくは約0.4である。試験すべきDNA断片を含むサンプルに約0.4の比率で磁気ビーズ分散液を混合し、ピペッティングで十分に攪拌した後に静置すると、約1000bpを超えるサイズのDNA断片は磁気ビーズに結合し、上清中には約1000bp以下のDNA断片が含まれることになる。 そこで、マグネットスタンド等を用いて磁気ビーズを分離し、上清を回収することにより約1000bp以下のサイズのDNA断片を含むサンプルが得られる。 次に、本発明の方法の工程(2)においては、前記(1)で回収した上清、即ち、約1000bp以下のサイズのDNA断片を含むサンプルを、磁気ビーズ分散液と前記第1の所定比率より低い第2の所定比率で混合して、約500bp以下のサイズのDNA断片を除去する。 前記工程(1)で述べたように、サンプルと磁気ビーズ分散液との配合比率を変えることにより、ビーズに吸着するDNAのサイズが変化する。 この工程(2)においては、サンプルに対する磁気ビーズ分散液の配合比率を、工程(1)における第1の所定比率よりも高い第2の所定比率とすることによって、目的とするサイズの下限値に満たないサイズの短いDNA断片が除去される。 具体的な手法は工程(1)と同様であるが、工程(2)で採用する第2の所定比率は、0.45〜0.6、好ましくは約0.5であり、上清を廃棄して磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する点で工程(1)とは異なる。 磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する方法は当該分野で通常用いられている方法でよく、例えば、溶出バッファを加えてDNA断片を磁気ビーズから溶出させ、溶出したDNA断片を回収することができる。このようにして、DNA断片のサイズの下限値を次世代シークエンサーに適した「必要な範囲」の下限、例えば約500bpとすることができる。このようにして調製されたサンプルは、好ましくは約500bp〜約1000bpのサイズのDNA断片を含んでいる。 なお、本発明におけるDNA断片サイズの「必要な範囲」とは、そのライブラリーを供する次世代シークエンサーによっても変化するが、一般的には、「必要な範囲」の下限値は約200bp、300bp、400bp、500bp、600bp、700bp、及び800bpから選択され、上限値は約1000bp、1200bp、1500bp、2000bpから選択されるが、これらの値の近傍及び中間値から選択することもできる。 次に、本発明の調製方法の工程(3)では、前記工程(1)及び(2)を通して約500bp〜約1000bpの範囲にサイズ選択されたDNA断片を、希釈した磁気ビーズ分散液を用いて濃度調節する。 本発明で用いているAMpure XP等の磁気ビーズは、DNAのサイズ選択に使用されていたが、その磁気ビーズ濃度を調節することによりサンプル中のDNA濃度を均一化できることは全く知られておらず予測もされていなかった。 本発明者等は、磁気ビーズ分散液に含まれる磁気ビーズ量(濃度)によって、磁気ビーズに結合するDNA量が変化することを見出し、この相関関係を利用することにより、断片サイズに依らずDNA濃度を均一化(ノーマライゼーション)することに成功した。 具体的には、前記工程(1)及び(2)で使用した磁気ビーズ分散液を、その媒体となる20%PEGを含む水溶液で希釈した分散液を用いる。希釈率は、10倍から40倍、好ましくは15〜30倍、より好ましくは約20倍である。40倍以上に希釈した場合は、磁気ビーズが極めて少量になるため回収が困難になり好ましくない。 約20倍に希釈した前記(1)及び(2)の所定濃度より低濃度で含む磁気ビーズ分散液と混合して静置し、マグネットスタンド等を用いて磁気ビーズを固定して上清を回収して廃棄する。残った磁気ビーズに結合したDNA断片を回収すれば、約500〜1000bpのサイズを有するDNA断片を等濃度で含むサンプルを得ることができる。 上記の本発明の方法に従って調製されたDNAライブラリーは、次世代シークエンサーを用いたタイピングに適した範囲のサイズのDNA断片を等濃度で含有しているため、次世代シークエンサーにおける塩基配列の読み取りの精度が向上し、より正確なタイピングが可能となる。 また、本発明のDNAライブラリー調製方法は、磁気ビーズを用いた簡便な手法であり、従来の調製方法に比較して時間的及び人的コストを削減することができる。 以下に具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。(実施例1)磁気ビーズ分散液の調製 Agencourt AMpure XP(商標)1000μLを12000rpmで1分間遠心し、静置後、上清1000μLを廃棄して残りの磁気ビーズを回収した。 100gのポリエチレングリコール(PEG8000)及び73gの塩化ナトリウムを含む500mL水溶液を調製し、当該水溶液500μLに前記回収した磁気ビーズを分散させた。すなわち、20%重量のPEGおよび2.5Mの塩化ナトリウムの水溶液に磁気ビーズ濃度がAMpure XPの2倍の濃度にて再浮遊した磁気ビーズ分散液を調整した。 以下の例においては、ここで調製した磁気ビーズ分散液を使用した。(実施例2)磁気ビーズによるDNA断片のサイズ選択 被検体から取得したHLA遺伝子領域を含むDNAサンプルを用いて、以下の条件で断片化及びPCR増幅を行ってDNA断片を含むライブラリーを調製した。 なお、以下の実験は96ウェルプレート上で実施した。1.PCR増幅 組成: DNA(20ng) 0.5μL 5×Buffer 2 μL dNTP Mixture 0.8μL Primer F 5μM 0.4μL Primer R 5μM 0.4μL PrimerSTAR GXL 0.4μL H2O 5.5μL 合計 10.0μL プライマー配列: Primer F:AGGTGAATGGCTCTGAAAATTTGTCTC Primer R:AGAGTTTAATTGTAATGCTGTTTTGACACA PCR条件: (1)94℃ 2分間 (2)98℃ 10秒間 (3)68℃ 5分間 (2)及び(3)を30サイクル繰り返し、その後は4℃で保存した。2.タグ化 組成: PCR産物(10ng) 4μL TD Buffer 5μL TDE1 1μL 合計 10μL 条件: 55℃ 5分間 その後は10℃で保存した。3.タグ化DNAライブラリーのPCR増幅 組成: タグ化DNA 2μL Index1 Primer 1μL Index2 Primer 1μL 2×KapaHiFiHSRM 5μL PPC 1μL 合計 10μL PCR条件: (1)72℃ 3分間 (2)98℃ 30秒間 (3)98℃ 10秒間 (4)63℃ 20秒間 (5)72℃ 3分間 (3)〜(5)を8サイクル繰り返し、その後は10℃で保存した。 4.DNA断片のサイズ選択 上記3で得たタグ化DNAライブラリーの5μLを水45μLと混合して50μLのサンプルとした。当該サンプルに実施例1で調製した磁気ビーズ分散液を各種比率(容積比)で加え、10回のピペッティングの後に1分間静置し、マグネットスタンドを用いて磁気ビーズを固定し、上清を廃棄した後、磁気ビーズに結合したDNA断片を溶出させ、得られたDNA断片のサイズ(長さ)の分布をバイオアナライザーで測定した。その結果を図1に示す。 図1には、DNAサンプル(容量)に加える磁気ビーズ分散液の比率と、磁気ビーズに結合したDNA断片のサイズを示すバイオアナライザーのゲルイメージの結果(上段)及び磁気ビーズに結合したDNA断片のおよそのサイズをまとめた表(下段)を示す。 磁気ビーズの比率を上昇させることにより磁気ビーズに結合するDNA断片のサイズ(長さ)が低下する傾向が顕著に確認された。(実施例3)本発明によるDNAサイズ選択 本発明の方法の工程(1)及び(2)により、DNA断片のサイズ選択を行った。具体的には、実施例1と同様にして、DNAサンプルに対して0.4倍の比率の磁気ビーズ分散液を加え、約1000bpを超えるDNA断片が結合した磁気ビーズをマグネットスタンドで固定し、上清を回収した。次いで、前記上清に対して0.5倍の比率で磁気ビーズ分散液を加え、約500bp以上のDNA断片を磁気ビーズに結合させた。 図2は、実施例2において、DNAサンプルに対して(a)0.4倍及び(b)0.5倍の比率で磁気ビーズ分散液を加えて処理したときに磁気ビーズに結合したDNA断片、及び(c)実施例3で最終的に磁気ビーズに結合したDNA断片の具体的なサイズ分布を示す。 図2から明らかなように、本発明によるサイズ選択(工程(1)及び(2))を実施することにより、長すぎる断片及び短すぎる断片が有効に排除され、ほぼ目的とするサイズ範囲(図2の黒塗り部分)のDNA断片を含有するDNAライブラリーを調製することができた。(実施例4)磁気ビーズによる濃度調節(ノーマライゼーション) 実施例1〜3で使用した磁気ビーズ分散液を、20重量%のPEGを含む水溶液で希釈し、その希釈率と(希釈した)磁気ビーズ分散液100μL当たりに結合するDNA量との関係を測定し、その結果を図3に示す。 磁気ビーズ分散液を希釈すれば単位容量当たり分散液に含まれる磁気ビーズの量が減少するため、結合するDNA量の減少することが確認された。 一方、磁気ビーズ分散液を希釈すると磁気ビーズに固定されるDNA量は減少するが、同様の操作を行った各ウェル間のDNA量を比較すると、希釈率を上げるに従って、ウェル間での固定化されるDNA量が均一化されることが判明した。 例えば、実施例3でサイズ選択したサンプルでは、DNAサイズに関しては所定範囲に調節されているものの、各ウェルのサンプルに含まれるDNA量は、図4(a)に示すように不均一であった。これに対して、本発明の工程(3)に従って、20倍に希釈した磁気ビーズ分散液を加えて処理した場合、磁気ビーズに結合(固定化)されたDNA量は、高度に均一化された(図4(b))。 前記のように希釈した磁気ビーズ分散液を用いてノーマライゼーションを施した96サンプルから得られたそれぞれのシーケンスデータ量を、サンプル毎にプロットしたのが図5である。 一方、前記特許文献1に記載されているように、アガロースゲルを切り出して調製した96サンプルから得られたそれぞれのシーケンスデータ量を図6にプロットした。 図5及び図6から明らかなように、本発明の方法(工程(3))に従ってDNAモル濃度調節(ノーマライゼーション)を実施することにより、96サンプルそれぞれのデータ量を均一にすることができ、従来の煩雑な処理に比較しても極めて高い均一化が達成できた。(1)試験すべきDNA断片を含むサンプルを、磁気ビーズ分散液と第1の所定比率で混合して、必要とする範囲の上限を超える長さのDNA断片を磁気ビーズに結合させ、静置した上清を回収する工程;(2)前記(1)で回収した上清を、磁気ビーズ分散液と前記第1の所定比率より低い第2の所定比率で混合して、必要とする範囲の下限を超える長さのDNA断片を磁気ビーズに結合させ、静置した上清を廃棄し、残った磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する工程;及び(3)前記(2)で回収したDNA断片を、前記(1)及び(2)で使用した磁気ビーズ分散液の希釈液と混合し、静置した上清を廃棄し、残った磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する工程を含む、DNAライブラリーの調製方法。前記磁気ビーズ分散液が20重量%のポリエチレングリコールおよび2.5Mの塩化ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。 【課題】 簡便かつ短時間にライブラリーに含まれるDNA断片のサイズ及び濃度を調節でき、もって次世代シークエンサーに供するのに適したDNAライブラリーを調製できる方法を提供する。【解決手段】 (1)試験すべきDNA断片を含むサンプルを磁気ビーズ分散液と第1の所定比率で混合して、必要とする範囲の上限を超える長さのDNA断片を磁気ビーズに結合させ、静置した上清を回収する工程;(2)前記(1)で回収した上清を磁気ビーズ分散液と前記第1の所定比率より低い第2の所定比率で混合して、必要とする範囲の下限を超える長さのDNA断片を磁気ビーズに結合させ、静置した上清を廃棄し、磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する工程;及び(3)回収したDNA断片を前記(1)(2)で使用した磁気ビーズ分散液の希釈液と混合し、静置した上清を廃棄し、磁気ビーズに結合したDNA断片を回収する工程を含む、DNAライブラリーの調製方法。【選択図】 図2配列表


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