タイトル: | 公開特許公報(A)_細胞内送達用高分子担体 |
出願番号: | 2014045240 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 47/32,B82Y 5/00,B82Y 40/00 |
大塚 英典 松隈 大輔 村松 佑紀 JP 2015168653 公開特許公報(A) 20150928 2014045240 20140307 細胞内送達用高分子担体 学校法人東京理科大学 000125370 正林 真之 100106002 大塚 英典 松隈 大輔 村松 佑紀 A61K 47/32 20060101AFI20150901BHJP B82Y 5/00 20110101ALI20150901BHJP B82Y 40/00 20110101ALI20150901BHJP JPA61K47/32B82Y5/00B82Y40/00 4 2 OL 24 4C076 4C076AA22 4C076AA29 4C076AA95 4C076EE12 4C076EE13 4C076EE48 4C076FF70 本発明は、細胞内送達用高分子担体に関する。 近年、高分子を担体として用いた、核酸、無機微粒子、薬剤等の細胞内への送達が注目されており、多数の高分子担体が開発されている。 例えば、核酸を細胞内に送達するための高分子担体として、特許文献1には、所定のカチオン性ポリマーと核酸とを含む、核酸とカチオン性ポリマーとの複合体からなる細胞内送達用高分子担体が開示されている。特許第5277440号公報 本発明は、細胞内への送達能に優れた高分子担体を提供することを目的とする。 本発明者らは、カチオン性モノマーと、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーとが、ランダム共重合したセグメントを有する共重合体が、細胞内に取り込まれやすいことを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。 (1)カチオン性モノマーと、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーとが、少なくともランダム共重合したセグメント(A)を有する共重合体からなる、細胞内送達用高分子担体。 (2)前記共重合体は、無機微粒子に吸着可能な基を有するセグメント(B)を更に有する(1)記載の細胞内送達用高分子担体。 (3)前記共重合体は、前記セグメント(A)の正電荷より大きい正電荷を有するセグメント(C)を更に有する(1)記載の細胞内送達用高分子担体。 (4)前記共重合体は、ミセル形成能を有する(1)記載の細胞内送達用高分子担体。 本発明によれば、細胞内への送達能に優れた高分子担体を提供することができる。本発明の一実施例に係る金ナノロッドのUV−visスペクトルを示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体による、金ナノロッドの細胞内への送達量を示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体とラクトースとを用いることによる、金ナノロッドの細胞への取込み量を示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体を用いて金ナノロッドを細胞内に送達した後に、送達した細胞にレーザー照射を行った前後の細胞量を示すグラフである。本発明の一実施例に係る金コロイドのUV−visスペクトルを示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体による、金コロイドの細胞内への送達量を示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体により修飾された金コロイドにおける、pHとゼータ電位との関係を示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体による、金コロイドの細胞内への送達量と、送達する細胞の培地のpHとの関係を示すグラフである。本発明の一実施例に係る細胞内送達用高分子担体を用いて金ナノロッドを送達する細胞の培地のpHが5.5である場合における、細胞内への金ナノロッドの送達後に、細胞にレーザー照射を行った前後の細胞量を示すグラフである。 以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。 本発明の細胞内送達用高分子担体は、カチオン性モノマーと、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーとが、少なくともランダム共重合したセグメント(A)を有する共重合体からなる。 本発明の細胞内送達用高分子担体が、細胞内への送達能に優れる理由は以下のように推定される。セグメント(A)がカチオン性モノマーのランダム共重合体であるため、セグメント(A)のカチオン性モノマーが重合した部分は正の電荷を有する。細胞表面は、負の電荷を帯びているので、本発明の細胞内送達用高分子担体は、この正電荷によって細胞表面に集積する。更に、セグメント(A)は、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーをランダム共重合したものであるため、セグメント(A)はカチオン性モノマーが重合した部分の近傍に上記リガンドを有するモノマーが重合した部分を有することになる。これにより、セグメント(A)は、その正電荷により細胞表面に集積し、リガンドを介して細胞表面に対して結合できるので、細胞内に取り込まれやすくなる。 本発明のカチオン性モノマーは、重合可能なモノマーであり、その構造中に重合性基を有する必要があるが、その種類は特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)クリロイル基等であってもよい。この重合性基を介して、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマー等と重合することができる。 カチオン性モノマー特に限定されないが、例えば、以下の一般式(I)で表される化合物が挙げられる。 上記一般式(1)中、R1は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、水素原子又はメチル基であることが好ましい。R2はO、NH、又はNR3であり、R3は1〜4の炭素数を有するアルキル基であり、Xは、下記一般式(II)で表される基を表す。 上記一般式(II)中、X0及びX1は炭素数2〜6のアルキレン基又はヒドロキシアルキレン基であり、R4、R5、R6、R7、R8は互いに独立に炭素数1〜6のアルキル基であり、Z−は対イオンである。対イオンは、特に限定されないが、例えば、ハロゲン化物イオン、酢酸イオン等が挙げられる。 カチオン性モノマーは、具体的には、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DMAEMA)、ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノネオペンチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。 本発明の細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーは、重合可能なモノマーであり、その構造中に重合性基を有する必要があるが、その種類は特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)クリロイル基等であってもよい。この重合性基を介して、カチオン性モノマー等と重合することができる。 本発明の共重合体では、モノマー(B)が下記一般式(III)で表されるものであることが好ましい。 上記一般式(III)中、R9は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、水素原子又はメチル基であることが好ましい。R10は、O又はNHである。また、Xは、スペーサーであり、Z2は、リガンドである。 上記リガンドを有するモノマーでは、スペーサーは、上述のリガンドを導入することができれば特に限定されないが、例えば、繰り返し単位数1〜200のアルキレンオキシ基、アルキレン基等が挙げられ、好ましくは繰り返し単位数1〜50のエチレンオキシ基又はアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状でも分枝状でもよい。アルキレン基の炭素数は特に限定されないが、好ましくは1〜8である。繰り返し単位数1〜50のエチレンオキシ基や炭素数1〜8のアルキレン基であれば、本発明の高分子担体の細胞への送達能が良好となるので好ましい。なお、本発明のセグメント(A)では、このスペーサーを介して上述のリガンドが結合している。 細胞表面に対する結合能を有するリガンドとしては、例えば、糖鎖、タンパク質、抗原等の細胞表面の特定の対象物質に対して特異的相互作用を示す分子認識素子が挙げられ、より具体的には、糖鎖(ラクトース、ガラクトース等)、抗体等が挙げられる。 本発明のセグメント(A)には、カチオン性モノマーと上記リガンドを有するモノマー以外のその他のモノマーが含まれてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーを、単独で有していても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。 セグメント(A)における、カチオン性モノマーのユニット数は、特に限定されないが、1〜100が好ましく、2〜80がより好ましく、5〜60が更に好ましく、15〜40が最も好ましい。 セグメント(A)における、カチオン性モノマーに由来する構成単位の占める割合は、特に限定されないが、好ましくは5mol%以上であり、より好ましくは10mol%以上であり、更に好ましくは20mol%以上であり、最も好ましくは50mol%以上である。カチオン性モノマーに由来する構成単位の占める割合が高いほど、セグメント(A)の正の電荷が高くなって細胞表面に集積しやすくなり、細胞内への送達能に優れる。 セグメント(A)における、上記リガンドを有するモノマーのユニット数は、特に限定されないが、1〜100が好ましく、5〜80がより好ましく、15〜50が更に好ましい。 セグメント(A)における、上記リガンドを有するモノマーに由来する構成単位の占める割合は、特に限定されないが、好ましくは10mol%以上であり、より好ましくは20mol%以上であり、更に好ましくは40mol%以上であり、最も好ましくは50mol%以上である。上記リガンドを有するモノマーに由来する構成単位の占める割合が高いほど、リガンドの分子認識作用が向上し、細胞内への送達能に優れる。 セグメント(A)のランダム共重合方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)等のリビングラジカル重合法が好ましい。リビングラジカル重合法によれば、合成する両親媒性高分子の分子量や分子量分布を制御することができる。 RAFTに用いられる連鎖移動剤は、特に限定されず、例えば、ブチルベンジルトリチオカルボナート、クミルジチオベンゾエート(CDB)、4−シアノペンタン酸ジチオベンゾエート、酢酸ジチオベンゾエート、ブタン酸ジチオベンゾエート、4−トルイル酸ジチオベンゾエート等が挙げられる。 重合開始剤は、特に限定されず、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等を用いることができる。重合開始剤の好適な使用量は、モノマーに対して、0.001〜1質量%、連鎖移動剤に対して、1〜33質量%である。 ATRPに用いられるハロゲン化アルキル開始剤は、特に限定されず、例えば、2−ブロモイソブチリルブロミド、2−クロロイソブチリルクロリド、ブロモアセチルブロミド、ブロモアセチクロリド、ベンジルブロミド等が挙げられる。 触媒としては、例えば、1価の銅、2価のルテニウム等の遷移金属錯体を用いることができる。 なお、重合反応に用いる溶媒は、特に限定されず、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、t−ブタノール、ベンゼン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、クロロホルム、1,4−ジオキサン、ジメチルスルホキシド、これらの混合液等が挙げられる。 本発明の細胞内送達用高分子担体を構成する共重合体は、細胞内に送達する対象となる物質に応じて、セグメント(A)以外のセグメントを有してもよい。 例えば、本発明の共重合体は、無機微粒子に吸着可能な基を有するセグメント(B)を更に有することができる。 無機微粒子に吸着可能な基を有するセグメント(B)は、例えば、無機微粒子に吸着可能な基を有するモノマーによって構成することができる。 本発明の無機微粒子に吸着可能なモノマーは、重合可能なモノマーであり、その構造中に重合性基を有する必要があるが、その種類は特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)クリロイル基等であってもよい。この重合性基を介して、例えば、セグメント(A)に付加することができる。 無機微粒子に吸着可能なモノマーは、特に限定されないが、例えば、金属を細胞内に送達させる場合は、無機微粒子に吸着して分散可能な基を有するモノマーが挙げられる。該基としては、チオール基や、ピリジル基が挙げられる。ピリジル基を有するモノマーとしては、特に限定されないが、以下の一般式(IV)で表される化合物であるものが好ましい。 R11は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基であり、水素原子又はメチル基であることが好ましい。R12は、炭素数1〜7のアルキレン基であり、炭素数2〜7のアルキレン基であることが好ましく、炭素数3〜5のアルキレン基であることが更に好ましい。 無機微粒子は、特に限定されないが、例えば、シリカ、金属酸化物(アルミナ等)、金属(金、銀、鉄、銅等)等の微粒子が挙げられる。細胞に金属ナノ粒子を送達する場合、金属ナノ粒子として、金属ナノロッド(棒状)を用いると、送達する細胞を光温熱により細胞死させることができる。また、無機微粒子としてメソポーラスシリカを用いることで、薬剤を細胞内に送達させることもできる。 セグメント(B)における、無機微粒子に吸着可能な基を有するモノマーのユニット数は、特に限定されないが、1〜100が好ましく、10〜80が好ましく、20〜50が更に好ましい。 セグメント(B)における、無機微粒子に吸着可能な基を有するモノマーに由来する構成単位の占める割合は、特に限定されないが、好ましくは50mol%以上であり、より好ましくは70mol%以上であり、更に好ましくは80mol%以上であり、最も好ましくは90mol%以上である。セグメント(B)における、無機微粒子に吸着可能な基を有するモノマーに由来する構成単位の占める割合が高いほど、細胞内に送達可能な無機微粒子が多くなり、より効率的に細胞内への送達が可能となる。 本発明のセグメント(B)には、無機微粒子に吸着可能な基を有するモノマー以外の上述のその他のモノマーが含まれてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーを、単独で有していても、2種以上を組み合わせて有していてもよい。 セグメント(A)とセグメント(B)とを有する共重合体の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、セグメント(A)を製造した後に、無機微粒子に吸着可能な基を有するモノマーを用いて、付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)等のリビングラジカル重合法により製造することができる。 本発明の細胞内送達用高分子担体を構成する共重合体は、セグメント(A)の正電荷より大きい正電荷を有するセグメント(C)を更に有することができる。これにより、細胞内に核酸を送達したい場合、本発明の共重合体のセグメント(C)が、核酸とポリプレックス(複合体)を形成するので、核酸を細胞内に送達することができる。 セグメント(A)の正電荷より大きい正電荷を有するセグメント(C)は、特に限定されず、セグメント(A)の正電荷を勘案して適宜設定することができ、例えば、カチオン性モノマーに由来する構成単位を有するものを用いることができる。 本発明のセグメント(C)を構成するカチオン性モノマーは、重合可能なモノマーであり、その構造中に重合性基を有する必要があるが、その種類は特に限定されず、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基、(メタ)クリロイル基等であってもよい。この重合性基を介して、例えば、セグメント(A)に付加することができる。 セグメント(C)を構成するカチオン性モノマーは、特に限定されないが、例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、ポリヒスチジン等のカチオン性のペプチドを有するモノマーや、エチレンイミン等が挙げられる。また、セグメント(C)を構成するカチオン性モノマーは、セグメント(A)を構成するカチオン性モノマーと同種類のものであってもよく、異なる種類のものであってもよく、セグメント(C)が、セグメント(A)の正電荷より大きい正電荷を有するように構成されればよい。 カチオン性のペプチドを有するモノマーの製造方法は、従来公知の方法を用いることができるが、例えば、ポリリジンを有するモノマーの製造方法は、α−アミノ酸N−カルボン酸無水物(NCA)のリジン誘導体(ε−カルボベンゾキシL−リジンNCA)について、α−アミノ基とカルボン酸以外の官能基を保護した後、ホスゲンを反応させることにより製造することができる。 セグメント(A)とセグメント(C)とを有する共重合体の製造方法は従来公知の方法を用いることができるが、例えば、セグメント(A)を製造した後に、セグメント(C)を構成するカチオン性モノマーを用いて、付加開裂連鎖移動(RAFT)重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)等のリビングラジカル重合法により製造することができる。 本発明の細胞内送達用高分子担体を構成する共重合体を、ミセル形成能を有するように構成することができる。ミセル形成能を有するように構成する場合、細胞への送達能を向上させるために、上記セグメント(A)を親水性とすることが好ましい。セグメント(A)が、カチオン性モノマーと、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーのみによって構成される場合において、セグメント(A)が疎水性となるときは、これら以外の親水性モノマーを更に共重合させることによって、セグメント(A)を親水性にすることができる。該親水性モノマーとしては、具体的には、(メタ)アクリル酸、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(アルキル)アミノアルキル(メタ)アクリレート、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、N−ビニル−2−ピロリドン等のN−ビニルラクタム類、N−ビニルホルムアミド等のN−ビニルアミド類、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 上記セグメント(A)が親水性である場合、本発明の共重合体がミセル形成能を有するようにするためには、セグメント(B)やセグメント(C)が疎水性であってもよい。また、セグメント(B)やセグメント(C)が親水性であった場合、本発明の共重合体に更に疎水性モノマーを重合してもよい。これにより、高分子ミセル担体として、対象となる物質を細胞内に送達することができる。 本発明の共重合体の質量平均分子量(ポリスチレンを標準物質としたGPCによる測定)は、2000〜100000であることが好ましく、2000〜30000であることがより好ましい。上記範囲とすることで、対象物質の細胞への送達能に優れる。 本発明の細胞内送達用高分子担体の、細胞への送達する方法は、従来の公知の方法によりすることができ、例えば、人体の細胞内に送達する場合、静脈注射により送達することができ、単離された細胞に送達する場合、細胞培地に混合することで、送達することができる。 <細胞内送達用高分子担体の合成> [ピリジンモノマーの合成] 常温、Ar雰囲気下で、DCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)8.27g(40mmol)をCHCl2(ジクロロメタン)200mLで溶解した。その後、メタクリル酸を3.4mL(40mmol)加え、10分撹拌した。更に、4−ピリジンプロパノールを5g(36.4mmol)加えた。最後に、DMAP(4−ジメチルアミノピリジン)445.3mg(3.64mmol)を加え、1日撹拌した。撹拌後、TLC(薄層クロマトグラフィー)で反応が進んでいることを確認し、ろ過、濃縮した。酢酸エチルに溶解させ、NaHCO3、Brine(食塩水)で洗浄後、有機層を回収した。回収した有機層をMgSO4で脱水し、濃縮を行なった。濃縮によって得られたクルードをカラム(展開溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=4/1)によって精製分離し、濃縮、真空乾燥を行った(3.9g,収率52.1%)。得られた化合物が式(1)で表されるピリジンモノマーであることを1H−NMRによる構造解析により確認した。反応スキームを以下に示す。 [RAFT重合剤CDB(クミルジチオベンゾエート)の合成] マグネシウム1.13g(46.5mmol)をTHF(dehydrated)(テトラヒドロフラン(超脱水))60mLに溶解し、Ar雰囲気下、60℃で還流しながらブロモベンゼン5.0mL(46.5mmol)をゆっくり滴下し、マグネシウムが溶解するまで撹拌した。氷浴下で二硫化炭素4.0mL(51.1mmol)をゆっくり滴下し、2時間撹拌後、更に室温で30分撹拌した。反応終了後、氷水700mLを反応溶液に加え、pHが酸性になるまで1NHClを加えた。反応溶液をジエチルエーテルで3回抽出し、MgSO4で脱水し、溶液を濃縮した後に真空乾燥を行い、式(2)で表される化合物を得た。式(2)で表される化合物5.2g(33.7mmol)をCCl4100mLに溶解し、TsOH(トルエンスルホン酸)・H2O130mg(0.62mmol)を加え、Ar雰囲気下、90℃で還流しながらα−メチルスチレン6.4mL(50.6mmol)をゆっくり滴下し、一晩撹拌した。反応溶液を濃縮し、CHCl3で希釈し、NaHCO3水溶液とbrine(食塩水)とで洗浄した後に、dryMgSO4(無水硫酸マグネシウム)で脱水した。その後、濃縮・真空乾燥を行い、カラム精製(展開溶媒:ヘキサン)を行い、式(3)で表されるRAFT重合剤CDB(クミルジチオベンゾエート)を得た(4.0g,収率45.5%)。得られた化合物が式(3)で表されるCDBであることを1H−NMRによる構造解析により確認した。反応スキームを以下に示す。 [Py−co−PEGの合成] 式(1)で表される化合物(ピリジンモノマー)600mg(2.9mmol)、式(4)で表される化合物(MeO−PEG−MA)1.8g(0.87mmol)、AIBN(アゾイソブチロニトリル)0.72mg(4.0μmol)、式(3)で表される化合物(CDB)5.2mg(20μmol)をDMF(ジメチルホルムアミド)が20.6mlになるようにこれに溶かした。その後、凍結脱気を3回し、再びAr置換して、70℃オイルバスで3日間撹拌した。撹拌後、再沈殿(再沈殿溶媒:ジエチルエーテル/IPA=18/2)、ろ過、濃縮の操作を二回行った。その後、ベンゼンによる凍結乾燥を行い、式(5)で表される化合物(Py−co−PEG)を得た(1.037g,収率42.7%)。仕込み比(モル比)は、式(1)で表される化合物:式(4)で表される化合物:AIBN:式(3)で表される化合物=133:40:0.2:1とした。得られた化合物が式(5)で表される化合物であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。反応スキームを以下に示す。 [Glycomonomerの合成] ピリジン溶液141.70mL(1.613mol)にD−ラクトースを25.05g(0.073mol)、無水酢酸を164.62ml(1.613mol)、DMAP0.092g(0.7300mmol)を加え、96時間撹拌した。白濁していた溶液が透明に変化したところで、TLCにより反応の終了を確認し、濃縮、真空引きをした。その後、少量のCHCl3で溶解し、ジエチルエーテルを用いて再結晶二回行って精製し、式(6)で表される化合物を得た(30.81g,収率62.20%)。得られた化合物が式(6)で表される化合物(オクタアセチルラクトース)であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。 Ar雰囲気下において、式(6)で表される化合物(オクタアセチルラクトース)15g(22.1mmol)と、HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)3.2g(26.52mmol)をCH2Cl2溶液100mLに溶解させ、氷冷で30分、室温で18時間撹拌した。TLCで反応の終了を確認し、CH2Cl2で希釈した。H2OとNaHCO3、Brine(食塩水)で洗浄し、MgSO4で脱水、濃縮した。その後、少量のクロロホルムに溶解し、水に対して滴下して精製を行った。デカンテーションとMgSO4により水を除き、ベンゼンによる凍結乾燥を行い、式(7)で表される化合物を得た(13.8g,収率83.2%)。得られた化合物が式(7)で表される化合物(Glycomonomer)であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。1反応スキームを以下に示す。 [AcLac−glycopolymerの合成] 式(7)で表される化合物を2g(2.67mmol)、式(3)で表される化合物(CDB)21.7mg(0.08mmol)、AIBN4.38mg(0.027mol)をDMF12mLに溶解させ、凍結脱気を3回行い、Ar置換し、70℃オイルバスで48時間撹拌した。ジエチルエーテルを用いて再沈殿を二回行うことにより精製を行い、更にベンゼンによる凍結乾燥により式(8)で表さられる化合物(AcLac−glycopolymer)を得た(952mg,収率47.6%)。得られた化合物が式(8)で表される化合物(AcLac−glycopolymer)であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。反応スキームを以下に示す。 [AcLac−co−DMAEの合成] 式(7)で表される化合物を2g(2.67mmol)、DMAEMA(ジメチルアミノエチルメタクリレート)42mg(0.267mmol)、式(3)で表される化合物(CDB)21.6mg(0.0792mmol)、AIBN4.42mg(0.027mol)をDMF13.35mLに溶解させ、凍結脱気を3回行い、Ar置換し、70℃オイルバスで48時間撹拌した。ジエチルエーテルを用いて再沈殿を二回行うことにより精製を行い、更にベンゼンによる凍結乾燥により式(9)で表される化合物を得た(1.127g,収率55.2%)。得られた化合物が式(9)で表される化合物(AcLac−co−DMAE12%)であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。また、式(9)で表される化合物と、仕込み比(モル比)を変えて、式(10)で表される化合物(AcLac−co−DMAE23%)、(11)で表される化合物(AcLac−co−DMAE52%)を合成した。反応スキームを以下に示す。 式(8)−(11)で表される化合物のそれぞれの仕込み比(モル比)を表1に示す。上記「AcLac−co−DMAE12%」、「AcLac−co−DMAE23%」、AcLac−co−DMAE52%」中のそれぞれの数値は、合成後の、Lacのユニット数とDMAEのユニット数との合計ユニット数に対する、DMAEのユニット数の割合を示す。 なお、1H−NMR測定より、式(8)−(11)で表される化合物について算出した理論数平均分子量、各モノマーのユニット数の詳細な結果を以下の表2に示す。なお、表2中の「Lacのユニット数」とは、Glycomonomerのユニット数を指し、DMAEのユニット数とは、DMAEMAのユニット数を指す。 [Py−b−Lacの合成] 式(8)で表される化合物を1.3g(0.079mmol)、式(1)で表される化合物(ピリジンモノマー)を648.6mg(3.16mmol)、AIBN4.26mg(0.026mol)をDMF14.3mLに溶解させ、凍結脱気を3回行い、Ar置換し、70℃オイルバスで48時間撹拌した。仕込み比は[AcLac glycopolymer]:[ピリジンモノマー]:[AIBN]:=1:40:0.33である。ジエチルエーテルを用いて再沈殿を二回行うことにより精製し、更にベンゼンによる凍結乾燥により式(12)で表される化合物を得た(1.84g,収率94.2%)。得られた化合物が式(12)で表される化合物であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。 ナスフラスコに式(12)で表される化合物を1.8g(0.072mol)、DMSO(ジメチルスルホキシド)50mL、N2H4・H2O5mL(0.1mol)を加えて一晩撹拌した。その後、濃縮し、透析(分画分子量3500)による精製を行なった。精製後、凍結乾燥により回収し、式(13)で表される化合物を得た(1.1g,収率85.6%)。得られた化合物が式(13)で表される化合物(Py−b−Lac)であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。反応スキームを以下に示す。 [Py−b−(Lac−co−DMAE)の合成] 式(9)で表される化合物を1g(0.056mmol)、式(1)で表される化合物(ピリジンモノマー)を463mg(2.26mmol)、AIBN3.00mg(0.0184mmol)をDMF10.5mLに溶解させ、凍結脱気を3回行い、Ar置換し、70℃オイルバスで48時間撹拌した。仕込み比は[AcLac−co−DMAE]:[ピリジンモノマー]:[AIBN]:=1:40:0.33とした。ジエチルエーテルを用いて再沈殿を二回行うことにより精製し、更にベンゼンによる凍結乾燥により式(14)で表される化合物を得た(1.368g,収率93.5%)。得られた化合物が式(14)で表される化合物であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。 ナスフラスコに式(14)で表される化合物を1.368g(0.077mol)、DMSO20mL、N2H4・H2O3.8mL(77mmol)を加えて一晩撹拌した。その後、濃縮し、透析(分画分子量3500)による精製を行なった。精製後、凍結乾燥により回収し、式(17)で表される化合物を得た(871g,収率89.7%)。得られた化合物が式(17)で表される化合物(Py−b−(Lac−co−DMAE12%))であることを1H−NMRによる構造解析により確認した。また、式(17)で表される化合物の合成とは、各モノマーのユニット数を変更して、Py−b−(Lac−co−DMAE23%)(式(18)で表される化合物)とPy−b−(Lac−co−DMAE52%)(式(19)で表される化合物)を合成した。反応スキームを以下に示す。 化合物(13)及び式(17)−(19)で表される化合物についての各モノマーのユニット数と、理論数的平均分子量を表3に示す。表3中の「Pyのユニット数」とは、ピリジンモノマーのユニット数を示す。 <ポリマー保護金ナノロッドの調製> [CTAB−金ナノロッドの調製] 0.1MのCTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)溶液に1mMの塩化金酸水溶液を2.5mlずつ加えて、更に20mMのNaBH4水溶液を600μl加えて5分撹拌し、金シードを調製した。 [金ナノロッドの調製] 0.1MのCTAB溶液50mlに、1mM硝酸銀を5ml加えて3時間撹拌した。3時間後、0.5mMの塩化金酸水溶液を50ml加え、30分撹拌した。その後、0.1Mのアスコルビン酸を250μl加え、更に上記金シードを250μl加え、1日撹拌してナノロッドを成長させた。 [ポリマー保護金ナノロッドの調製] 調製したCTAB−金ナノロッドを遠心分離(21000rpm、30min)した。その後、上澄みを取り除き、milli−Q水を加えて、もう一度遠心分離(18000rpm、30min)した。その後、上澄みを取り除いた。これにより、余分なCTABを取り除いた。その後、0.5mg/mlのポリマー水溶液(キトサン、Py−co−PEG、Py−b−Lac及びPy−b−(Lac−co−DMAE12−52%)のそれぞれの水溶液)を加えて2日間振とうした。振とう後、3日間の透析(MWCO:3500)によりCTABを除き、遠心分離(20000rpm、20min)で更に過剰のポリマーを除去した。調製後の金ナノロッドのUV−visスペクトルを図1に示す。 <ポリマー修飾金ナノロッドの細胞取り込みの評価> [細胞準備] HepG2細胞を6cmディッシュに1.8×106(50%コンフルエント)cells/wellで播種し、24時間培養した。その後、キトサン、Py−co−PEG、Py−b−Lac、Py−b−(Lac−co−DMAE12−52%)のそれぞれに保護された金ナノロッドを、それぞれ金の最終濃度が、10μg/mLとなるように加え48時間インキュベートした。 [細胞回収] 4時間後、培地を回収し、PBSで2回洗浄した。その後、セルスクレーパーで細胞を剥離し、PBSで回収、遠心分離により上澄みを除去した後、Lysis Buffer(20mMTris−HCl,0.05%Triton−X 100,2mMEDTA)を加え、細胞懸濁液1mLを得た。 [サンプル調製] 細胞懸濁液に王水を9mL加え、一晩90℃で加熱。その後、溶液が約1mLに蒸発するまで加熱し、milli−Q水8mLと500ng/mLのイットリウム溶液を1mL加えた。不溶物を除くためフィルターに通し、サンプルとした。 [細胞内への送達量の定量(ICP−AES測定)] 金標準液とイットリウム標準液、王水を用いて検量線サンプルを調製した。王水は、濃硫酸(13M)、濃塩酸(12M)を1:3で混合して調製した。作成した検量線を用いて、測定サンプルのAu濃度を測定した。測定結果から、各サンプル10mLにおける、全細胞に取り込まれた金の重量を算出した。その結果を表4、図2に示す。なお、図2中、PLとは、「Py−b−Lac」を意味し、PLD−12とは、「Py−b−(Lac−co−DMAE12%)」を示し、PLD−23とは、「Py−b−(Lac−co−DMAE23%)」を示し、PLD−52とは、「Py−b−(Lac−co−DMAE52%)」を示す。 表4及び図2に示すとおり、金ナノロッドの細胞取り込みは、Py−b−(Lac−co−DMAE)修飾金ナノロッドが、大きな細胞取り込み量を示した。これは、Py−b−(Lac−co−DMAE)修飾金ナノロッドが、まずDMAEの正電荷により、細胞表面に濃縮され、更にラクトースにより細胞表面のアシアロ糖タンパク質レセプターに認識された結果、高い細胞集積効果を示したためであると推定される。 [ポリマー修飾金ナノロッドの細胞取り込み阻害評価] HepG2細胞を6cmディッシュに1.8×106(50%コンフルエント)cells/wellで播種し、24時間培養した。その後、Py−b−Lac、Py−b−(Lac−co−DMAE12%)のそれぞれに保護された金ナノロッドを、それぞれ、金の最終濃度が10μg/mLとなるように、また、ラクトースを最終濃度が50mMになるように加えて48時間インキュベートした。 [細胞回収] 4時間後、培地を回収し、PBSで2回洗浄した。その後、セルスクレーパーで細胞を剥離し、PBSで回収、遠心分離により上澄みを除去した後、Lysis Buffer(20mMTris−HCl,0.05%Triton−X100,2mMEDTA)を加え、細胞懸濁液1mLを得た。 [サンプル調製] 細胞懸濁液に王水を9mL加え、一晩90℃で加熱。その後、溶液が約1mLに蒸発するまで加熱し、milli−Q水8mLと500ng/mLのイットリウム溶液を1mL加えた。不溶物を除くためフィルターに通し、各サンプルとした。 [細胞内への送達量の定量(ICP−AES測定)] 金標準液とイットリウム標準液、王水を用いて検量線サンプルを調製した。王水は、濃硫酸(13M)、濃塩酸(12M)を1:3で混合して調製した。作成した検量線を用いて、測定サンプルのAu濃度を測定し、その結果に基づいて、各サンプル10mLにおける、全細胞に取り込まれた金の重量を算出した。その結果を表5、図3に示す。 図2と図3との比較により、ラクトースを添加することで、細胞取り込みが減少したことが確認された。これは、細胞表面のレセプターがフリーのラクトースにキャップされたことに起因すると考えられる。このことから、この粒子の細胞取り込みがLac−細胞間の特異的なものであるということが確認され、更に、この取り込みは、DMAEの正電荷による細胞表面への濃縮効果と、ラクトースによる糖鎖認識効果が共同的に作用することによって、達成されることが示唆された。 <細胞への光温熱治療効果> [細胞準備] HepG2細胞を96wellプレートに3.2×104(50%コンフルエント)cells/wellで播種し、24時間培養した。この時の培地量は100μLとした。24時間後、キトサン、Py−co−PEG、Py−b−Lac、Py−b−(Lac−co−DMAE12−52%)のそれぞれに保護された金ナノロッド粒子をそれぞれ含有する培地を100μL(濃度は10μg/mL)添加し、48時間インキュベートした。 [レーザー照射] 粒子添加から48時間後、培地を除去しPBSで洗浄した。PBSを除去し、培地を100μL添加して、レーザーを照射した。レーザー条件は、波長800nm、照射時間10分/well、強度2.7W/cm2、ビーム直径0.6cmとした。 [MTTアッセイ] レーザー照射後、24時間後にMTTアッセイを行った。まず、培地を除去し、MTT試薬濃度が0.5mg/mLの培地を100μL添加し、4時間37℃でインキュベートした。その後培地を除去し、IPA/HClを100μL加え一晩静置し、プレートリーダーにより吸光度を測定した。MTTアッセイの結果を図4に示す。 図4に示すとおり、PLD−52においては、レーザー照射により、細胞活性が低下しており、細胞死が確認できた。これは、PLD−52修飾ナノロッドは他の粒子に比べ、より多くの粒子が細胞内に取り込まれたため、より発熱し、大きな細胞死が誘導できたためであると考えられる。この結果は、ICP−AESの結果とも相関しており、粒子の細胞取り込みは、光温熱治療における重要なファクターであると示唆された。 <ポリマー保護金コロイドの調製> [クエン酸還元金コロイドの合成] テトラクロロ金(III)酸四水和物をMilli−Q水に溶かし、24.28mM塩化金酸水溶液を調製した。また、クエン酸をMilli−Q水に溶かし、100mMクエン酸水溶液を調製した。24.28mM塩化金酸水溶液0.248mLをMilli−Q水29.152mLに添加し、10分間激しく撹拌しながら110℃で還流した。10分後、100mMクエン酸水溶液0.6mLをゆっくり滴下し、30分撹拌した。撹拌後、氷冷することで、0.2mM金コロイド溶液を得た。 調製したクエン酸還元金コロイドに0.5mg/mlとなるようポリマー水溶液(キトサン、Py−co−PEG、Py−b−Lac及びPy−b−(Lac−co−DMAE23%)のそれぞれの水溶液)を加えて1日間振とうした。振とう後、2日間透析(MWCO:3500)によりクエン酸を除き、遠心分離(20000rpm、20min)で更に過剰のポリマーを除去した。調製後の金コロイドのUV−visスペクトルを図5に示す。 <ポリマー修飾金コロイドの細胞取り込み評価> [細胞準備] HepG2細胞を6cmディッシュに1.8×106(50%コンフルエント)cells/wellで播種し、24時間培養した。その後、キトサン、Py−co−PEG、Py−b−Lac及びPy−b−(Lac−co−DMAE23%)に保護されたそれぞれの金コロイドを、それぞれ金の最終濃度が、10μg/mLとなるように加え48時間インキュベートした。 [細胞回収] 4時間後、培地を回収し、PBSで2回洗浄した。その後、セルスクレーパーで細胞を剥離し、PBSで回収し、遠心分離により上澄みを除去した後、Lysis Buffer(20mMTris−HCl,0.05%Triton−X 100,2mMEDTA)を加え、細胞懸濁液1mLを得た。 [サンプル調製] 細胞懸濁液に王水を9mL加え、一晩90℃で加熱。その後、溶液が約1mLに蒸発するまで加熱し、milli−Q水8mLと500ng/mLのイットリウム溶液を1mL加えた。不溶物を除くためフィルターに通し、サンプルとした。 [細胞内への送達量の定量(ICP−AES測定)] 金標準液とイットリウム標準液、王水を用いて検量線サンプルと測定サンプルを調製した。王水は、濃硫酸(13M)、濃塩酸(12M)を1:3で混合して調製した。作成した検量線を用いて、測定サンプルのAu濃度を測定し、その結果に基づいて、各サンプル10mLにおける、全細胞に取り込まれた金の重量を算出した。各サンプルの金濃度を表6、図6に示す。 表6、図6より、Py−b−(Lac−co−DMAE)修飾金コロイドは、金ナノロッドと同様に、高い細胞取り込み量を示すことが確認された。これは、上述のPy−b−(Lac−co−DMAE)修飾金ナノロッドと同様に、Py−b−(Lac−co−DMAE)修飾金コロイドは、まずDMAEの正電荷により細胞表面に濃縮され、更にLacにより細胞表面のアシアロ糖タンパク質レセプターに認識された結果、高い細胞集積効果を示したためであると推定される。 金コロイドのゼータ電位を測定した結果を図7に示す。図7中(a)は、Py−b−Lac修飾金コロイドを示し、(b)は、Py−b−(Lac−co−DMAE23%)修飾金コロイドを示す。図7に示すとおり、Py−b−(Lac−co−DMAE23%)修飾金コロイドにおいては、細胞培養培地のpH(pH7.4)で正の値を示していることが確認された。このことからも、Py−b−(Lac−co−DMAE)修飾金コロイドは、まずDMAEの正電荷により細胞表面に濃縮され、更にラクトースにより細胞表面のアシアロ糖タンパク質レセプターに認識された結果、高い細胞集積効果を示すことが示された。 <酸性条件での金コロイドの細胞取り込み> [細胞準備] HepG2細胞を6cmディッシュに1.8×106(50%コンフルエント)cells/wellで播種し、24時間培養した。その後、Py−b−Lac、Py−b−(Lac−co−DMAE23%)にそれぞれ保護された金コロイドを、それぞれ金の最終濃度が、10μg/mLとなるように加え48時間インキュベートした。また、このとき、pHが5.5、6.5又は7.4の3種類の培地について準備した。 [細胞回収] 48時間後、それぞれの培地を除去し、PBSで2回洗浄した。その後、セルスクレーパーで細胞を剥離し、PBSで回収し、遠心分離により上澄みを除去した後、Lysis Buffer(20mMTris−HCl,0.05%Triton−X 100,2mMEDTA)を加え、細胞懸濁液1mLを得た。 [サンプル調製] 細胞懸濁液に王水を9mL加え、一晩90℃で加熱。その後、溶液が約1mLに蒸発するまで加熱し、milli−Q水8mLと500ng/mLのイットリウム溶液を1mL加えた。不溶物を除くためフィルターに通し、サンプルとした。 [ICP−AES測定] 金標準液とイットリウム標準液、王水を用いて検量線サンプルを調製した。王水は、濃硫酸(13M)、濃塩酸(12M)を1:3で混合して調製した。作成した検量線を用いて、測定サンプルのAu濃度を測定した。測定結果に基づいて、各サンプル10mLにおける、全細胞に取り込まれた金の重量を算出した。全細胞に取り込まれた金の重量を、表7、図8に示す。 Py−b−(Lac−co−DMAE23%)においては、pHが低くなるほど、金の取り込み量が大きくなった。これは、pHが低くなることにより、よりアミンがカチオニックになったためであると推定される。 <細胞への光温熱治療効果(pH5.5)> [細胞準備] HepG2細胞を96wellプレートに3.2×104(50%コンフルエント)cells/wellで播種し、24時間培養した。この時の培地量は100μLとした。24時間後、キトサン、Py−b−(Lac−co−DMAE52%)にそれぞれ保護された金ナノロッド粒子含有培地を100μL(濃度は10μg/mL)添加し、48時間インキュベートした。このとき培地のpHをpH5.5とした。 [レーザー照射] 粒子添加から48時間後、培地を除去しPBSで洗浄した。PBSを除去し培地を100μL添加して、レーザーを照射した。レーザー条件は、波長:800nm、照射時間:10分/well、強度:2.7W/cm2、ビーム直径:0.6cmとした。 [MTTアッセイ] レーザー照射後、6時間後にMTTアッセイを行った。まず、培地を除去し、MTT試薬濃度が0.5mg/mLの培地を100μL添加し、4時間37℃でインキュベートした。その後培地を除去し、IPA/HClを100μL加え一晩静置し、プレートリーダーにより吸光度を測定した。MTTアッセイの結果を図9に示す。 キトサン、PLD−52共に、レーザー照射により細胞死が誘導されたことが確認された。また、キトサンにおいては、レーザー未照射にもかかわらず、PLD−52より細胞活性が低下していることが確認できた。上記の図2から、キトサンは、PLD一52より、細胞への金ナノロッドの取り込み量が少ないことが確認される。それにもかかわらず、キトサンの方が、細胞死が多かったことから、キトサンの方が、PLD−52より、細胞毒性が強いことが示唆された。 カチオン性モノマーと、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーとが、少なくともランダム共重合したセグメント(A)を有する共重合体からなる、細胞内送達用高分子担体。 前記共重合体は、無機微粒子に吸着可能な基を有するセグメント(B)を更に有する請求項1記載の細胞内送達用高分子担体。 前記共重合体は、前記セグメント(A)の正電荷より大きい正電荷を有するセグメント(C)を更に有する請求項1記載の細胞内送達用高分子担体。 前記共重合体は、ミセル形成能を有する請求項1記載の細胞内送達用高分子担体。 【課題】細胞内への送達能に優れた高分子担体を提供する。【解決手段】細胞内送達用高分子担体は、カチオン性モノマーと、細胞表面に対する結合能を有するリガンドを有するモノマーとが、少なくともランダム共重合したセグメント(A)を有する共重合体からなる。共重合体は、無機微粒子に吸着可能な基を有するセグメント(B)を更に有するか、セグメント(A)の正電荷より大きい正電荷を有するセグメント(C)を更に有するか、又はミセル形成能を有するのが好ましい。【選択図】図2