生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤
出願番号:2014033916
年次:2015
IPC分類:A61K 45/00,A61P 19/04,A61K 31/426,A61K 31/341,A61K 31/4164,A61K 31/4453


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大庭 伸介 鄭 雄一 山本 健一 前田 祐二郎 JP 2015157784 公開特許公報(A) 20150903 2014033916 20140225 脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤 国立大学法人 東京大学 504137912 廣田 浩一 100107515 流 良広 100107733 松田 奈緒子 100115347 大庭 伸介 鄭 雄一 山本 健一 前田 祐二郎 A61K 45/00 20060101AFI20150807BHJP A61P 19/04 20060101ALI20150807BHJP A61K 31/426 20060101ALI20150807BHJP A61K 31/341 20060101ALI20150807BHJP A61K 31/4164 20060101ALI20150807BHJP A61K 31/4453 20060101ALI20150807BHJP JPA61K45/00A61P19/04A61K31/426A61K31/341A61K31/4164A61K31/4453 3 OL 9 4C084 4C086 4C084AA17 4C084MA16 4C084MA35 4C084MA37 4C084MA43 4C084NA14 4C084ZA961 4C084ZA962 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA03 4C086BC21 4C086BC82 4C086BC83 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA96 本発明は、脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤に関する。 異所性石灰化は、軟組織における石灰化物質の沈着として定義され、異所性骨化とも呼ばれる。原因としては、外傷性、神経性、遺伝性に分けられる。根本的な治療法はなく、非ステロイド抗炎症剤や局所的な放射線治療などの対症療法が一般的に行われている。 脊柱靭帯骨化症(Ossification of spine ligament(OSL))は、骨化した靭帯の部分により、後縦靭帯骨化症(Ossification of the posterior longitudinal ligament of the spine(OPLL))、黄色靭帯骨化症(Ossification of yellow ligament(OYL))、前縦靭帯骨化症(Ossification of anterior longitudinal ligament(OALL))に分類されている。 後縦靭帯骨化症は、厚生労働省から難病に指定されており、脊柱を縦に走る後縦靱帯の骨化が脊柱管の狭窄を引き起こした結果、脊髄または脊髄から分枝する神経が圧迫されて神経障害を引き起こす病気である。前記後縦靭帯骨化症に対しては、圧迫された神経の保護を目的とした保存的療法が第一選択であり、神経症状が強い場合は、手術的に骨化部位の除去や脊柱管拡大を図るが、手術侵襲が問題となる。 また、後縦靭帯骨化症は、黄色靭帯骨化症、及び前縦靭帯骨化症を合併しやすいことも問題となる。 これまでに、後縦靱帯骨化症については、疾患モデルマウスであるttwマウス(例えば、非特許文献1から2参照)を用いた様々な研究がなされている。 しかしながら、前記保存的療法や手術に代わる有用な手段は、未だ提供されていないのが現状である。Okawa A et al.、 Nat Genet 19:271−273、1998年Hirakawa H et al.、 J Orthop Sci 9:591−597、2004年 本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制することができる脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤を提供することを目的とする。 前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、驚くべきことに、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの治療に用いられているヒスタミンH2受容体拮抗剤が、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制することができることを見出し、本願発明を完成するに至った。 本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、 <1> ヒスタミンH2受容体拮抗剤を含むことを特徴とする脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤である。 <2> 脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制するための方法であって、個体に、前記<1>に記載の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤を投与することを特徴とする方法である。 本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制することができる脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤を提供することができる。図1は、試験例1で撮影したマイクロCT像である。図2は、試験例1において、異所性骨化巣の体積を評価したグラフである。図3は、試験例1の非投与群のマウス(15週齢)の骨密度数値像である。図4は、試験例2における7週齢のマウスのマイクロCT像である。(脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤) 本発明の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、ヒスタミンH2受容体拮抗剤を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制するために用いられる。 本発明において、脊柱靭帯骨化症の病状の進行の抑制には、異所性骨化巣の発達を抑制することや、骨化部位の外科的摘出後の再発を抑制することが含まれる。<ヒスタミンH2受容体拮抗剤> 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤は、ヒスタミンH2受容体を競合的に拮抗するものであり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの治療に用いられている。 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ファモチジン、ラニチジン、ニザチジン、シメチジン、ロキサチジン、ラフチジンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤の中でも、ファモチジン、ラニチジン、ニザチジン、シメチジン、ロキサチジンが好ましく、ファモチジン、シメチジンがより好ましい。 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤は、塩の態様であってもよい。 前記塩としては、薬理学的に許容され得る塩であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤は、化学合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤は、有効成分のみからなる態様であってもよいし、その他の成分を含む態様であってもよい。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤における前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。また、前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤そのものであってもよい。<その他の成分> 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤におけるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬理学的に許容され得る担体などが挙げられる。 前記薬理学的に許容され得る担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、水、デンプンなどが挙げられる。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤における前記その他の成分の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。<脊柱靭帯骨化症> 脊柱靭帯骨化症は、脊柱に関する靭帯の骨化症をいう。前記脊柱靭帯骨化症は、骨化した靭帯の部分により、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、前縦靭帯骨化症に分類される。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、後縦靭帯骨化症の病状の進行の抑制に好適に用いることができる。<使用> 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に配合された状態で使用されてもよい。<剤形> 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤の剤形としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液状、粉末状、カプセル状、錠剤状などの剤形とすることができる。これらの剤形の前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、常法に従い製造することができる。<投与> 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤の投与方法、投与量、投与時期、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 前記投与方法としては、例えば、前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤の剤形などに応じて適宜選択することができ、経口又は非経口で投与することができる。 前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象個体の年齢、体重、体質、症状、他の成分を有効成分とする医薬や薬剤の投与の有無など、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤の1日当たりの投与量は、例えば、前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤の有効成分の量として、体重1g当たり、0.5μg〜16μgとすることができる。 前記投与時期としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。 前記投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、目的に応じて適宜選択することができるが、特にヒトが好適に挙げられる。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制することができるので、脊柱靭帯骨化症に伴う病態の予防にも好適に用いることができる。前記脊柱靭帯骨化症に伴う病態としては、例えば、知覚障害、運動障害などが挙げられる。 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、従来の外科的治療に代わる、非侵襲的な内科的手段となり得る。(脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制するための方法) 前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤は、個体に投与することにより、個体における脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制することができる。したがって、本発明は、個体に前記脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤を投与することを特徴とする、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制するための方法にも関する。 以下に試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。(試験例1)<モデル動物> 後縦靭帯骨化症の疾患モデルマウスであるttwマウスを用意した(日本クレア株式会社製)。前記ttwマウスは、ectonucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase 1(ENPP1)遺伝子に点変異を有し、骨膜や靭帯の異所性骨形成のため、脊柱管の狭窄性病変を100%自然発症する。特に大後頭孔を含む上位頸椎部に異所性骨形成が観られる(Okawa A et al.、 Nat Genet 19:271−273、1998年、Hirakawa H et al.、 J Orthop Sci 9:591−597、2004年参照)。<試験> 前記ttwマウスを以下の2群に分け、脊柱靭帯骨化症の病状の進行を調べた。(1) ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群(n=8) ヒスタミンH2受容体拮抗剤として、塩酸ファモチジン(Sigma−Aldrich社製)を用いた。前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤の1日当たりの投与量は、前記ttwマウスの体重1g当たり0.667μgとした。前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤は、マウスの平均飲水量を基に、前記投与量となるように給水ボトルに添加し、4週齢から15週齢までの11週間、経口投与した。(2) ヒスタミンH2受容体拮抗剤非投与群(n=8) 前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群において、ヒスタミンH2受容体拮抗剤を非投与とした以外は、同様にして飼育した。 各個体につき、投与1週間後(5週齢)、4週間後(8週齢)、7週間後(11週齢)、9週間後(13週齢)、11週間後(15週齢)に、実験動物用3DマイクロX線CT R_mCT2(株式会社リガク製)を用いて、上位頸椎レベルの異所性骨化巣のマイクロCT撮影を行った。結果を図1に示す。 図1の結果から、ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群(以下、「投与群」と称することがある)では、上位頸椎レベルの異所性骨化巣(矢印部参照)の発達が、ヒスタミンH2受容体拮抗剤非投与群(以下、「非投与群」と称することがある)よりも抑制されていることが確認された。 また、撮影したマイクロCTデータを基に、ボリュームレンダリング機能で3D表示画像を作成し、3次元画像解析ソフトTRI/3D−BON(ラトックシステムエンジニアリング株式会社製)を用いて、第1頸椎及び第2頚椎の後縦靭帯部の異所性骨化の観察及び定量的評価を行った。 異所性骨化巣の体積を評価した結果を図2に示し、ヒスタミンH2受容体拮抗剤非投与群のttwマウス(15週齢)の骨密度数値像を図3に示す。 図2の結果から、投与群(B)では、非投与群(A)に対して有意に(p<0.05)、異所性骨化巣の体積が小さいことが確認された。 図3の結果から、矢印部の骨密度数値が高く、非投与群では、異所性骨化が生じていることが確認された。 以上の結果から、ヒスタミンH2受容体拮抗剤であるファモチジンを投与することにより、上位頸椎レベルにおける経時的な異所性骨化巣の発達を抑制することができることが確認された。(試験例2) 試験例1において、ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群のヒスタミンH2受容体拮抗剤及び投与量を以下のように変更した以外は、試験例1と同様にして試験した。 ・ ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群−1 ヒスタミンH2受容体拮抗剤として、ラニチジン(和光純薬工業株式会社製)を用い、1日当たりの投与量を、前記ttwマウスの体重1g当たり5.003μgとした。 ・ ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群−2 ヒスタミンH2受容体拮抗剤として、シメチジン(和光純薬工業株式会社製)を用い、1日当たりの投与量を、前記ttwマウスの体重1g当たり13.340μgとした。 ・ ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群−3 ヒスタミンH2受容体拮抗剤として、ニザチジン(LKT Laboratories社製)を用い、1日当たりの投与量を、前記ttwマウスの体重1g当たり5.003μgとした。 ・ ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群−4 ヒスタミンH2受容体拮抗剤として、ロキサチジン(和光純薬工業株式会社製)を用い、1日当たりの投与量を、前記ttwマウスの体重1g当たり2.501μgとした。 投与3週間後(7週齢)の各群のマウスについて、実験動物用3DマイクロX線CT R_mCT2(株式会社リガク製)を用いて、上位頸椎レベルの異所性骨化巣のマイクロCT撮影を行った。結果を図4に示す。 図4の結果から、ヒスタミンH2受容体拮抗剤投与群では、いずれの群においても、上位頸椎レベルの異所性骨化巣の発達が、ヒスタミンH2受容体拮抗剤非投与群よりも抑制されていることが確認された。 以上の結果から、ファモチジン以外のヒスタミンH2受容体拮抗剤を用いた場合にも、上位頸椎レベルにおける経時的な異所性骨化巣の発達を抑制することができることが確認された。 したがって、ヒスタミンH2受容体拮抗剤を投与することにより、後縦靱帯骨化症の病状の進行を抑制することができ、また、骨化部位を外科的に摘出した後の再発を抑制し得る可能性も示唆された。 本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。 <1> ヒスタミンH2受容体拮抗剤を含むことを特徴とする脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤である。 <2> 脊柱靭帯骨化症が、後縦靭帯骨化症である前記<1>に記載の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤である。 <3> ヒスタミンH2受容体拮抗剤が、ファモチジン、ラニチジン、ニザチジン、シメチジン、及びロキサチジンからなる群から選択される少なくとも1種である前記<1>から<2>のいずれかに記載の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤である。 <4> 脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制するための方法であって、個体に、前記<1>から<3>のいずれかに記載の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤を投与することを特徴とする方法である。 ヒスタミンH2受容体拮抗剤を含むことを特徴とする脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤。 脊柱靭帯骨化症が、後縦靭帯骨化症である請求項1に記載の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤。 ヒスタミンH2受容体拮抗剤が、ファモチジン、ラニチジン、ニザチジン、シメチジン、及びロキサチジンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1から2のいずれかに記載の脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤。 【課題】脊柱靭帯骨化症の病状の進行を抑制することができる脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤を提供すること。【解決手段】ヒスタミンH2受容体拮抗剤を含むことを特徴とする脊柱靭帯骨化症の病状進行抑制剤である。前記脊柱靭帯骨化症が、後縦靭帯骨化症である態様、前記ヒスタミンH2受容体拮抗剤が、ファモチジン、ラニチジン、ニザチジン、シメチジン、及びロキサチジンからなる群から選択される少なくとも1種である態様などが好ましい。【選択図】なし


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