タイトル: | 公開特許公報(A)_アルミダイカスト部品の強度評価方法及びアルミダイカスト部品 |
出願番号: | 2014032023 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | G01N 29/04 |
三ツ邑 宗隆 沖田 滋 内田 啓之 JP 2015158379 公開特許公報(A) 20150903 2014032023 20140221 アルミダイカスト部品の強度評価方法及びアルミダイカスト部品 日本精工株式会社 000004204 内藤 嘉昭 100075579 三ツ邑 宗隆 沖田 滋 内田 啓之 G01N 29/04 20060101AFI20150807BHJP JPG01N29/10 501 3 5 OL 9 2G047 2G047AA06 2G047AC05 2G047BA03 2G047BC09 2G047CA01 2G047GG06 本発明は、アルミダイカスト部品の強度評価方法及びアルミダイカスト部品に関するものであり、例えば車両の電動パワーステアリング装置に用いられる部品などに好適なものである。 例えば車両の電動パワーステアリング装置に用いられるコラムハウジングなどはアルミダイカスト部品からなる。このようなアルミダイカスト部品の強度評価方法としては、例えば特許文献1〜3に記載されるものがある。 特許文献1では、例えばアルミダイカスト部品に超音波を照射してアルミダイカスト部品からの音波情報に基づいてアルミダイカスト部品の鋳巣と破断チル層を検出して第1の内部欠陥3次元分布データを取得し、同じアルミダイカスト部品をX線CT測定してアルミダイカスト部品の複数の断面画像からアルミダイカスト部品の鋳巣を検出して第2の内部欠陥3次元分布データを取得し、第1の内部欠陥3次元分布データと第2の内部欠陥3次元分布データを比較してアルミダイカスト部品の破断チル層の3次元分布データを取得する。 また、特許文献2では、アルミダイカスト部品のゲート近傍のランナー部内で凝固した溶湯から検査片を切り出し、その検査片の切出し面である検査面の面積に対する検査面に露出している破断チル層の面積の面積率を算出し、その面積率と所定の基準値とを比較してアルミダイカスト部品の不良を判断する。 また、特許文献3では、電動パワーステアリング装置に利用されるアルミダイカストコラムハウジングのキーロック部の強度を保証する方法であり、超音波探傷法によりキーロック周辺の粗大な欠陥を把握し、その計測した欠陥径以下のものを利用することで強度を保証する技術である。特開2005−91288号公報特開2007−111728号公報特開2013−83560号公報 しかしながら、特許文献2に記載されるアルミダイカスト部品の強度評価方法は、あくまでもアルミダイカスト部品のランナー部内の凝固した溶湯を検査したものであり、アルミダイカスト部品自体の評価ではない。これに対し、特許文献1に記載されるアルミダイカスト部品の強度評価方法は、アルミダイカスト部品自体の評価を可能とするが、例えば大きなアルミダイカスト部品や複雑なアルミダイカスト部品の全ての部分について検査を行うのは実質的に困難である。実際のアルミダイカスト部品は、鋳巣などの内部欠陥を回避することができず、この内部欠陥を起点として破壊することがある。また、アルミダイカスト部品は、多くの場合、複雑な形状をしており、例えば超音波探傷によって内部欠陥を探傷しても、どの部分で強度を評価すべきなのか、明らかとなっていない。 本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、実際のアルミダイカスト部品の強度を適正に評価することができ、所定の強度のアルミダイカスト部品を得ることが可能なアルミダイカスト部品強度評価方法及びアルミダイカスト部品を提供することを目的とするものである。 上記課題を解決するためのアルミダイカスト部品の強度評価方法のある態様は、アルミダイカスト部品の強度を評価する方法であって、粒径が10μm以上30μm以下の等軸なフェライト組織を有するダイカスト部品に対して予め行った曲げトルク試験で破壊し且つ当該アルミダイカスト部品を予め応力解析して求めた高応力部に対し、当該高応力部の所定範囲の内部欠陥を超音波探傷し、当該所定範囲の内部欠陥の欠陥率が所定値以下であるときに当該アルミダイカスト部品が所定の強度を有すると評価することである。 また、上記課題を解決するためのアルミダイカスト部品は、前記アルミダイカスト部品強度評価方法で強度が評価されたアルミダイカスト部品であって、前記高応力部の所定範囲の内部欠陥の欠陥率が0.6%以下であることが好ましい。 また、上記アルミダイカスト部品は、車両の電動パワーステアリング装置に用いられるコラムハウジングであり、前記高応力部が前記コラムハウジングのキーロック部であることが好ましい。 本発明のアルミダイカスト部品の強度評価方法によれば、予め行った曲げトルク試験で破壊し且つ予め応力解析で求めたアルミダイカスト部品の高応力部に対し、当該高応力部の所定範囲の内部欠陥を超音波探傷し、当該所定範囲の内部欠陥の欠陥率が所定値以下であるときに当該アルミダイカスト部品が所定の強度を有すると評価することとしたため、実際のアルミダイカスト部品の強度を適正に評価することができる。 また、本発明のアルミダイカスト部品によれば、上記アルミダイカスト部品の強度評価方法で強度評価し、高応力部の所定範囲の内部欠陥の欠陥率を0.6%以下としたことにより、所定の強度のアルミダイカスト部品を得ることができる。アルミダイカスト部品の強度評価方法の一実施形態を示す説明図である。図1のアルミダイカスト部品の強度評価方法における内部欠陥探傷の説明図である。アルミダイカスト部品の曲げトルク試験による破壊部の説明図である。アルミダイカスト部品の高応力部の説明図である。アルミダイカスト部品の高応力部の説明図である。図2の内部欠陥探傷で得られる画像の説明図である。図2の内部欠陥探傷で得た探傷画像である。図7の探傷画像を二値化した画像である。図8の二値化探傷画像から画像解析により内部欠陥面積を抽出した画像である。欠陥率と曲げ試験荷重の関係を示す説明図である。 以下、アルミダイカスト部品及びその強度評価方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。 図1は、アルミダイカスト部品の強度評価方法で用いられる6軸可動超音波探傷装置の説明図であり、図1(a)は装置の全体図、図1(b)は被探傷物とターンテーブルの詳細図、図1(c)は内部欠陥探傷の説明図である。図中の符号1は、本実施形態で強度を評価する対象となるアルミダイカスト部品であり、例えば電動パワーステアリング装置のコラムハウジングである。ここで、上記評価とは、必ずしも全数を評価する必要はなく、ロットのうちの数本を評価することも含む。 本実施形態では、ターンテーブル2の上にアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1を搭載し、ターンテーブル2を回転させながら探触子(プローブ)3を上方から下方に移動し、アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の内側を螺旋状に探傷する。本実施形態のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1は、円筒部を有するので、この円筒部の後述する高応力部を超音波探傷装置で探傷し、内部欠陥を検出する。 ここで、上記アルミダイカスト部品は、粒径が10μm以上30μm以下の等軸なフェライト組織を有するアルミダイカスト部品である。このアルミダイカスト部品は、スリーブ内において等軸組織状で半凝固させる鋳造技術によって作製される。具体的には、普通ダイカスト法よりもショットタイムラグ(スリーブに注湯してから射出するまでの時間)を長くし、スリーブ内の溶湯充填率を低くしている鋳造技術である(国際公開第2013/039247号参照)。 本実施形態のアルミダイカスト部品は、上述のスリーブ内において等軸組織状で半凝固させる鋳造技術によって、生地組織が微細になり、かつ鋳造欠陥が減少することが既に分かっている。このことから、キーロックの強度試験を行なった際に、規定以上の強度でも破損しない可能性が考えられるため、本実施例では、マスター品の他、鋳造欠陥を増やすため故意にプランジャー潤滑剤量や離型剤の塗布量を増やしたものや、エアブロー量を減らしたものなどを作製した。 また、本実施形態のアルミダイカスト部品は、例えば、JIS H5302のAl−Si−Cu系アルミニウム合金ADC12を用いた自動車操舵装置のステアリングコラムハウジングであることが好ましい。その他、本実施形態のアルミダイカスト部品の材料としては、例えば、JIS H5202のAl−Si−Mg系アルミニウム合金AC4Cや、JIS H5302のAl−Si−Cu系アルミニウム合金ADC10を用いることができる。 探傷にあたっては、図2(a)に示すように、アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の表面エコーと底面エコーの間に評価ゲートを設定した。評価ゲートは探傷範囲を意味する。超音波探傷では、探触子3から発振された超音波はアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の表面と底面で反射して戻ってくる。その反射波が夫々表面エコー、底面エコーとなる。図2(b)に示すように、アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の探傷範囲内部に内部欠陥4が存在する場合、表面エコーと底面エコーの間、即ち評価ゲートの範囲に欠陥エコーが表れる。表面エコーの時刻と底面エコーの時刻は予め分かっているので、二つの時刻の間に存在するエコーが欠陥エコーとなる。そして、その欠陥エコーの最も大きなものをアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の内部に図示化する手法を用いた。なお、本実施形態のアルミダイカスト部品1であるコラムハウジングの円筒部の内径はφ38mmであり、探傷範囲を当該円筒部の軸線方向90mmの範囲とした。また、アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の円筒部の内周面を旋削加工した方が内周面表面で超音波が乱反射しにくくなるため欠陥エコーを検出しやすい。 探傷に先立ち、本実施形態のアルミダイカスト部品1であるコラムハウジングのキーロック部の端部に負荷をかける曲げトルク試験を行った。曲げトルク試験の結果、図3に示すAの部分、具体的にはキーロック部に破壊(割れ)が生じた。一方、アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1について、曲げトルク試験と同様の負荷条件で応力解析を行った結果、図4に示すBの部分、同じくキーロック部が高応力部であることが分かった。両者を比較すると、応力解析によるアルミダイカスト部品1の高応力部、つまりコラムハウジングのキーロック部で破壊が発生することが分かる。即ち、この高応力部(キーロック部)では、例えば内部欠陥を起点とする破壊が生じやすいことから、高応力部の内部欠陥を探傷することとした。 図5には、本実施形態のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の高応力部(キーロック部)5を示す。図中の黒い枠内が高応力部(所定範囲)5に相当する。この高応力部(キーロック部)5を含めてアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の内部を超音波探傷し、図6に示すように、当該アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1をスリットの部分から切り割って内部を展開した図の上に内部欠陥を図示化する。 図7は、前述したアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の探傷範囲の超音波探傷による探傷画像である。探傷範囲は、前述したように、高さ方向に90mm、円筒部の内周全周であるから、画像の横軸は119mm(内径φ38mmの内周)、縦軸は90mmである。この探傷画像に対し、50%エコー強度を閾値とし、それ以上とそれ以下で二値化して色分けしたのが図8である。図中の黒色部分が、エコー強度50%以上の内部欠陥である。更に、図8に示すエコー強度50%以上の内部欠陥の夫々の面積を画像解析したのが図9である。なお、画素数にして20pixel以下(面積0.2mm2以下)は強度的に問題ないと判断し、内部欠陥の面積評価対象から排除した。上記画素数は、1pixel=0.01mm2として換算している。 次に、このようにして解析された全ての内部欠陥の面積の合計を算出し、前述した高応力部(キーロック部)5の面積で除して欠陥率(%)を求めた。 このようにして10個のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1について、同様に超音波探傷によって内部欠陥を検出し、そのうちの高応力部(キーロック部)5内の内部欠陥の面積を解析した。更に、それらのアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1に対して曲げトルク試験を行い、破壊トルクを検出した。下記表1に、高応力部(キーロック部)5内の内部欠陥の面積と曲げトルク試験の破壊トルク荷重の関係を示す。また、表1の結果をグラフに表したのが図10である。 図10から明らかなように、従来のダイカスト部品では欠陥率が0.4%を境目に極端に値が落ちたが、実施例1〜10のスリーブ法による半凝固ダイカスト部品では、欠陥率が0.6%以上になると、荷重の値が下がっていくのがわかった。すなわち、高応力部(キーロック部)5内の内部欠陥の欠陥率が、実質的に0.6%以下であれば、内部欠陥の面積の大きさに関係なく、ほぼ一定の破壊強度が保持される。また、本実施形態のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の場合、高応力部(キーロック部)5内の内部欠陥の欠陥率が0.6%以下であれば、所定の強度を有すると評価することができる。 また、実際のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の破壊断面を観察すると、内部欠陥を起点として亀裂が広がっていることから、内部欠陥起点型の破壊であると考えられ、従って高応力部(キーロック部)5内の内部欠陥の大きさ、つまり面積を検出し、その内部欠陥の面積が所定値以下であれば内部欠陥起点型の破壊を抑制防止できることから、高応力部(キーロック部)5内の内部欠陥の面積が所定値以下であるときにアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1が所定の強度を有すると評価することは適正であると考えられる。 このように、本実施形態のアルミダイカスト部品強度評価方法では、予め行った曲げトルク試験で破壊し且つ予め応力解析で求めたアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の高応力部(キーロック部)5の所定範囲の内部欠陥を超音波探傷し、当該所定範囲の内部欠陥の欠陥率が所定値以下であるときに当該アルミダイカスト部品(コラムハウジング)1が所定の強度を有すると評価することにより、実際のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1の強度を適正に評価することができる。 また、本実施形態のアルミダイカスト部品によれば、本実施形態のアルミダイカスト部品強度評価方法で強度評価し、高応力部(キーロック部)5の所定範囲の内部欠陥の欠陥率を0.6%以下としたことにより、所定の強度のアルミダイカスト部品(コラムハウジング)1を得ることができる。 特に、本実施形態のアルミダイカスト部品は、超音波探傷という非破壊検査試験を行なうことによって欠陥を見つけ出し、製品の保証をすることができる上述の特許文献3に開示された技術によってもたらされる効果に加えて,スリーブ法による半凝固アルミダイカスト部品を用いたことで、従来のアルミダイカスト部品より鋳造欠陥が生じにくく,万一何らかのトラブルによってより粗大な鋳造欠陥が生じたとしても,同等以上のねじりトルクに耐えうる。そのため、歩留まりを低減させることができ、盗難防止用キーロック機構を有するダイカスト製コラムハウジングとして特に有用である。 1 アルミダイカスト部品(コラムハウジング) 2 ターンテーブル 3 探触子 4 内部欠陥 5 高応力部(キーロック部) アルミダイカスト部品の強度を評価する方法であって、粒径が10μm以上30μm以下の等軸なフェライト組織を有するダイカスト部品に対して予め行った曲げトルク試験で破壊し且つ当該アルミダイカスト部品を予め応力解析して求めた高応力部に対し、当該高応力部の所定範囲の内部欠陥を超音波探傷し、当該所定範囲の内部欠陥の欠陥率が所定値以下であるときに当該アルミダイカスト部品が所定の強度を有すると評価することを特徴とするアルミダイカスト部品強度評価方法。 請求項1のアルミダイカスト部品の強度評価方法で強度が評価されたアルミダイカスト部品であって、前記高応力部の所定範囲の内部欠陥の欠陥率が0.6%以下であるアルミダイカスト部品。 前記アルミダイカスト部品が、車両の電動パワーステアリング装置に用いられるコラムハウジングであり、前記高応力部が前記コラムハウジングのキーロック部である請求項2に記載のアルミダイカスト部品。 【課題】実際のアルミダイカスト部品の強度を適正に評価することができるアルミダイカスト部品強度評価方法を提供する。【解決手段】予め行った曲げトルク試験で破壊し且つ予め応力解析で求めた電動パワーステアリング装置のコラムハウジング(アルミダイカスト部品)1の呼応力部であるキーロック部5の所定範囲の内部欠陥を超音波探傷し、当該所定範囲の内部欠陥の欠陥率が所定値以下であるときにコラムハウジング1が所定の強度を有すると評価することにより、実際のアルミダイカスト部品であるコラムハウジング1の強度を適正に評価することができる。また、前記アルミダイカスト部品強度評価方法で強度評価し、キーロック部5の所定範囲の内部欠陥の欠陥率を0.6%以下とすることにより、所定の強度のコラムハウジング1を得ることができる。【選択図】図5