| タイトル: | 公開特許公報(A)_タングステン化合物の回収方法 |
| 出願番号: | 2014029657 |
| 年次: | 2015 |
| IPC分類: | C22B 34/36,C22B 3/24,C22B 3/04,C22B 7/00,B09B 3/00,B01J 20/22,B01J 20/30,C22B 3/18,C12N 1/14 |
牧野 貴彦 JP 2015098641 公開特許公報(A) 20150528 2014029657 20140219 タングステン化合物の回収方法 京セラ株式会社 000006633 牧野 貴彦 JP 2013217562 20131018 C22B 34/36 20060101AFI20150501BHJP C22B 3/24 20060101ALI20150501BHJP C22B 3/04 20060101ALI20150501BHJP C22B 7/00 20060101ALI20150501BHJP B09B 3/00 20060101ALI20150501BHJP B01J 20/22 20060101ALI20150501BHJP B01J 20/30 20060101ALI20150501BHJP C22B 3/18 20060101ALI20150501BHJP C12N 1/14 20060101ALN20150501BHJP JPC22B34/36C22B3/00 KC22B3/00 AC22B7/00 DB09B3/00 304JB01J20/22 BB01J20/30C22B3/00 FC12N1/14 A 4 1 OL 11 4B065 4D004 4G066 4K001 4B065AA80X 4B065AC20 4B065BD08 4B065BD22 4B065CA01 4B065CA54 4D004AA16 4D004AA21 4D004BA05 4D004CA04 4D004CA30 4D004CA40 4D004CC11 4D004CC12 4G066AB29B 4G066BA09 4G066CA46 4G066DA07 4G066FA17 4G066FA20 4G066FA21 4G066FA34 4K001AA29 4K001BA22 4K001CA01 4K001CA15 4K001DB08 4K001DB35 本発明は、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物のタングステン成分を簡単な処理工程で効率良く回収するタングステン化合物の回収方法に関する。 超硬質合金は、超硬質な性質に基づいて切削工具などに多く使用されているが、タングステン、コバルト、タンタル、ニオブなどの高価な希少元素を含んでいるので、そのスクラップから上記希少元素をできるだけ多く回収することが望まれている。 スクラップ超硬工具のリサイクル方法は、大きく分けて固形のスクラップを構成成分のまま粉末に再生する直接法と、スクラップを化学的に溶解し、後に構成成分毎に分離回収する間接法の二つに分類される。 直接法の代表例は亜鉛処理法である(たとえば、特許文献1を参照)。この方法は化学薬品や水溶液を使用せず、亜鉛も回収再利用が可能で、エネルギー消費も少ない点で優れおり、処理設備への投資額もあまり大きくなく、小規模で工業生産が成り立つ利点がある。しかし、直接法ではスクラップがそのままの組成で回収されるため、予め選別をしっかりと行う必要があり、選別コストが負担となって、プロセスコストの利点を減じている。また、生産比率が高い切削工具の被覆層成分が同時に回収されるため再生材の品質が低下する問題がある。その為、新粉に混ぜて使用する必要がある等、適用制限があるのが大きな問題であり、適用範囲を拡大できる用途を同時に開発することが課題となっている。 間接法である湿式化学処理法では、スクラップのリサイクル工程に鉱石精錬のプロセスを適用させる方法が一般的である(たとえば、特許文献2を参照)。超硬合金のスクラップはWC、Coを主成分とするため、図3に示すように、アルカリ抽出法やアルカリ溶解法によりNa2WO4の水溶液を作製し、超硬合金の添加元素として含まれるCo、Ti、Ta、Nb、Cr、V等のタングステン以外の不純物を、pH調整や硫化などにより難溶性の化合物として沈殿させ、ろ過して除去する。ろ過したNa2WO4の水溶液から、タングステン分離抽出し、アンモニアを加えて加熱、濃縮することによりパラタングステン酸アンモニウム(APT)を晶析し、これを熱分解することにより酸化タングステンを精製する。 なお、アルカリ抽出法は、スクラップを予め酸化焙焼した後にNaOH水溶液でアルカリ抽出するものであり、研削スラッジなどの粉状のソフトスクラップの処理に適している。一方、アルカリ溶解法は、スクラップをNaNO3、Na2SO4、Na2CO3等のナトリウム塩の溶融塩を用いて酸化すると同時に溶解するものであり、固形のハードスクラップの処理に適している。 アルカリ溶解法を用いた従来工法では、たとえば酸化タングステンを得るために以下のようなプロセスが行われている。(1)溶融塩溶解により生成したNa2WO4を水に溶解してNa2WO4水溶液を得る。なお、鉱石精錬では鉱石中に含まれるSiO2、As、P、Mo等も溶解されるので、pH調整や硫化などの方法によりこれらの不純物を難溶性の化合物として沈殿させ、濾過して除去する。また、廃超硬工具のリサイクルでは、超硬合金の添加元素として含まれるCo、Ti、Ta、Nb、Cr、V等のタングステン以外の不純物を、pH調整や硫化などの方法により難溶性の化合物として沈殿させ、ろ過して除去する。(2)Na2WO4水溶液にCaCl2を加え、CaWO4の沈殿を形成し、このCaWO4のスラリーを水洗してNa成分を除去する。(3)CaWO4のスラリーにHClを加え、タングステン酸(H2WO4)の沈殿を生成し、このH2WO4スラリーを水洗してCaイオンを除去する。(4)H2WO4にNH4OHを加え、(NH4)2WO4の水溶液を生成する。(5)この水溶液を加熱・濃縮することにより、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を晶出させる。(6)APTを熱分解して酸化タングステン(WO3)を得る。 なお、Na2WO4水溶液を(NH4)2WO4水溶液に変換する工程として、溶媒抽出法やイオン交換法なども行われている。 湿式化学処理法を用いた場合、亜鉛処理法とは異なり鉱石精錬と同等の品質が得られ、リサイクルしたタングステンを利用制限なしに再使用できる利点がある。特公平03−020445号公報特開2004−002927号公報 しかしながら、このような従来工法では、Na2WO4の水溶液から酸化タングステンを化学的に精製する過程で、種々の化学薬品や水、イオン交換樹脂などを多量に必要とし、工数も多く煩雑なため、環境への負荷とエネルギー消費が多いという問題があった。また廃液量も多く、大規模な廃液処理設備や、イオン交換樹脂の再生工程なども必要となるという問題があった。 本発明は、従来の湿式化学処理法における上記のような問題を解決するものであり、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物から、微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ、効率良くタングステン化合物を回収できるタングステン化合物の回収方法を提供することを目的とする。 本発明のタングステン化合物の回収方法は、タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を高温・高水蒸気圧下に曝す前処理工程と、該前処理工程を経た前記微生物を投入した前記タングステン化合物溶液を酸性に調整して、前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するものである。 本発明のタングステン化合物の他の回収方法は、タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を60℃以上に加熱する前処理工程と、該前処理工程を経た前記微生物を投入した前記タングステン化合物溶液を酸性に調整して、前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するものである。 本発明のタングステン化合物のさらに他の回収方法は、タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を投入した前記タングステン化合物溶液を酸性に調整するとともに、前記タングステン化合物溶液を60℃以上に加熱して、前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するものである。 本発明のタングステン化合物の回収方法によれば、微生物を高温・高圧の水蒸気中に曝す前処理、または微生物を60℃以上に加熱する前処理によって調整した微生物をタングステン化合物溶液に添加して、溶液を酸性に調整する方法、または微生物を添加したタングステン化合物溶液を60℃以上に加熱した状態で酸性に調整する方法のいずれかの方法によって、微生物のタングステン吸着能が向上し、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物から微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステン化合物を回収できる。本発明の一実施形態であるタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。本発明の他の実施形態であるタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。従来のタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。タングステン化合物とバナジウム化合物との混合溶液に対して、添加する微生物の濃度と、タングステン化合物およびバナジウム化合物それぞれの微生物への回収率との関係を示すグラフである。 以下、本発明の一実施形態として、図1に基づいて、超硬質合金スクラップから酸化タングステンを回収する方法について具体的に説明する。超硬質合金スクラップとは、金属タングステンや炭化タングステン(WC)等を主成分とする超硬合金を用いた超硬工具等の製造工程において生じるスクラップや使用済み工具などのハードスクラップのほか、研削スラッジなどの粉状のソフトスクラップが挙げられる。一般に超硬工具は、金属タングステンや炭化タングステン等の複合炭化物を主体とし、鉄、ニッケル、コバルト、銅などを結合相とし、必要に応じて添加物成分としてTiC、TaC、NbC、VC、Cr3C2等を含む超硬合金によって製造されており、具体的には、切削工具(チップ、ドリル、エンドミル等)、金型(成形ロール、成形型等)、土木鉱山用工具(石油掘削用工具、岩石粉砕用工具等)などがある。 まず、このような超硬質合金スクラップの金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る。このタングステン化合物溶液中には、タングステン化合物イオン以外の他の金属化合物イオンが存在する。この時、予め酸化焙焼したスクラップをたとえばNaOH水溶液でアルカリ抽出してもよいし、NaNO3、Na2SO4、Na2CO3等のナトリウム塩の溶融塩を用いて酸化すると同時に溶解するアルカリ溶解法を用いてもよい。たとえば、ソフトスクラップは反応性が高く制御が難しいためアルカリ抽出法を用いることが好ましく、ハードスクラップは酸化焙焼により表面部分しか酸化できないため、アルカリ溶解法を用いることが好ましい。 微生物としては、たとえば、E.coli(Escherichia coli)、Bacillus sp、Thiobacillus ferrooxidans、Streptomyces rimosus、Pseudomonas sp、Arthrobacter nicotianae、Shewanella algae、Shewanella oneidensisなどのバクテリアや、Saccharomyces cerevisiae,Schizosaccharomyces pombe, Candida albicans, Yarrowia lipolytica, Pichia pastoris, Hansenula polymorpha, Kluyveromyces lactis,麹菌が適用できる。中でも、酒かすや焼酎かすは、アルコール飲料などを製造する工程からの廃棄物として存在するために、資源の有効活用ができるとともに非常に安価に入手でき管理も容易であるため、さらに低コストでタングステンの回収を実現できる。また、麹菌は胞子と菌糸を有するが、胞子および菌糸のどちらもタングステン化合物イオンを吸着することができる。 ここで、本発明の第1の実施態様によれば、オートクレーブ装置等の加熱加圧装置内に微生物を入れて、微生物を高温・高圧の水蒸気中に曝す前処理を施す。具体的な前処理条件は、例えば、微生物を培養した培養液、または培養液から微生物を分離して純水で懸濁した細胞懸濁液等の微生物含有溶液をオートクレーブ装置に入れて、110〜120℃、水蒸気圧140〜200kPaに設定し10分〜60分間処理する条件が好適である。この前処理を施した微生物を後述するタングステン化合物溶液中に投入することによって、微生物の性状が変化して、微生物のタングステン化合物イオンの吸着能が高くなり、タングステンの回収率が向上する。 また、前処理条件は上記方法に限定されるものではなく、本発明の第2の実施態様によれば、微生物含有溶液を60℃以上に加熱する前処理方法であってもよい。加熱温度が、80℃以上、特に90℃以上である場合には、よりタングステンの回収率が向上する。好適な加熱時間は10分以上、特に30分〜120分である。 なお、上記前処理の際に、微生物含有溶液をバブリング等によって撹拌しながら前処理することにより、微生物のタングステン化合物の吸着能がさらに向上する場合がある。また、タングステン化合物溶液に微生物を添加すること、タングステン化合物溶液を酸性に調整することについては、その順番が入れ替わってもよい。 さらに本発明の第3の実施態様では、前処理した微生物、または前処理しない微生物をタングステン化合物溶液中に添加し、この溶液の温度を60℃以上に上げ、タングステン化合物溶液を酸性に調整して微生物にタングステン化合物イオンを吸着させる方法も適用可能である。ここで、微生物を添加すること、溶液の温度を60℃以上に加熱すること、溶液を酸性に調整することについては、その順番が入れ替わってもよい。 微生物の添加については、例えば、タングステン濃度を0.1〜10mmol/l(アルカリ溶液1リットルに対して、タングステン濃度が0.1〜10mmol)に、前処理したタングステン化合物溶液に、E.coli(大腸菌)などの微生物を微生物濃度1×1014〜1×1017cells/m3となるように投入する。タングステン化合物溶液は、塩酸などを用いて酸性に調整する。これによって、微生物の表面にアニオンであるタングステン化合物イオンが吸着する(吸着工程)。第3の実施態様において、微生物含有溶液を添加したタングステン化合物溶液の温度を60℃以上に高めることによって、微生物の性状が変化してタングステン化合物イオンの吸着能が向上するが、前処理をした微生物を用いる場合には、吸着処理時の温度が60℃未満、特に室温であってもタングステン化合物イオンの吸着能が高い。 ここで、微生物の表面にタングステン化合物イオンを吸着させる際、微生物濃度を調整することによって、吸着する金属化合物の選択性を高めることができる。例えば、タングステン化合物とバナジウム化合物との混合溶液から、タングステン化合物のみを分離するには、微生物含有溶液中のE.coli(大腸菌)などの微生物の濃度を2×1014cells/m3以下とすることによって、図4に示すように微生物が回収できる金属化合物の選択性が向上し、さらに、微生物の濃度を1×1014cells/m3以下にすれば、バナジウム化合物はほとんど回収されないので、回収されるタングステン化合物の純度を99%以上に高めることができる。 次に、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を、遠心分離等の手段により脱水し、純水洗浄するなどして不純物を除去(回収洗浄工程)する。これによって、容易にタングステン化合物を濃縮することができる。その後、たとえばタングステン化合物イオンを吸着した微生物を、たとえば大気中で300℃以上の温度で焼却するなどしてタングステン化合物を酸化して、酸化タングステンが得られる。また、たとえば還元雰囲気にて500℃以上の温度で熱処理して、タングステン化合物を還元・炭化して炭化タングステンを得ることができる。 このように、本実施形態では、多段階の工程や多量の薬品が必要であった溶媒抽出法や溶離工程や樹脂の再生工程が必要なイオン交換法などのタングステンの分離抽出工程、およびそれに続くAPT化工程に替えて、微生物を用いた吸着法(バイオソープション)を利用することにより、工数を低減することができると同時に、使用する薬品量や廃液量が少ないため低コストでタングステン化合物を回収することができる。特に、酵母はアルコール飲料などを製造する工程からの廃棄物として非常に安価に入手でき管理も容易なため、微生物として酵母を用いることで、さらに低コストのタングステン化合物回収工程を実現できる。 なお、吸着工程におけるタングステン化合物溶液のpHは酸性(7未満)、特に4以下、さらに好ましくは1〜3とすることで、タングステン化合物の回収率を高めることができる。 また、上記実施形態は、図1に示すように、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を焼却して、タングステン化合物を得るものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、図2に示すように、タングステン化合物イオンを吸着した微生物から、微生物を脱離して回収し、再利用することもできる。 具体的には、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を、遠心分離等の手段により脱水するとともに、回収洗浄して不純物を除去することで、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を濃縮する。その後、濃縮したタングステン化合物イオンを吸着した微生物を純水などの脱離用液に投入して懸濁液を作製し、この懸濁液にNH4Cl等の塩化アンモニウム溶液を加えることにより懸濁液を中性またはアルカリ性にする。懸濁液を中性またはアルカリ性、たとえばpH7以上にすることにより、タングステン化合物イオンが微生物から脱離用液中に脱離する。このとき、懸濁液をpH10以上とすることにより3分以内に80%以上のタングステン化合物イオンを微生物から脱離させることができる。ここで、タングステン化合物イオンが脱離した微生物は、回収して再利用することができる。 次に、微生物と、この微生物から離脱したタングステン化合物イオンとを含む懸濁液を遠心分離やフィルターろ過を行うことにより、微生物と、タングステン化合物イオンを含む脱離用液とに分離する。 その後、タングステン化合物イオンを含む脱離用液を加熱濃縮することにより、タングステン化合物をパラタングステン酸アンモニウム(APT)として晶析させる。その後、APTを熱分解することにより、APTを酸化して酸化タングステンを得ることができる。また、さらに得られた酸化タングステンを還元雰囲気中で熱処理して炭化することにより、炭化タングステンを得ることができる。 この方法では、微生物を再利用することができるので、微生物の廃棄に係るコストが不要になる他、微生物の調達費用(培養)、大量保管も低減することができる。 使用済の超硬合金製の切削インサートを粉砕して酸化焙焼し、酸化焙焼された既焙焼物をアルカリ溶液(NaOH水溶液)に溶出させ、0.8mmolのタングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得た。この溶液の温度は23℃とした。このタングステン化合物溶液に塩酸(HCl)を添加してpH=1.8に調整し、7×1014cells/m3のE.coli細胞懸濁液を投入して、試料No.1−3のタングステン化合物溶液を撹拌した。なお、試料No.1については、E.coliを温度120℃、圧力200kPaの条件のオートクレーブ中に10分間投入して取り出したものを用い、試料No.2については、オートクレーブ処理をしないE.coli細胞懸濁液を用いた。試料No.3については、E.coli細胞懸濁液を温度133℃、圧力300kPaの条件のオートクレーブ中に10分間投入して取り出したものを用いた。 微生物(E.coli)を投入してから3分後、30分後、60分後の溶液中のタングステン濃度をICP発光分光分析にて測定し、微生物を投入する前の溶液中のタングステン濃度に対して減じた割合(微生物投入前の溶液中のタングステン濃度−微生物を投入した後の溶液中のタングステン濃度)/微生物投入前の溶液中のタングステン濃度×100)(%)を微生物がタングステン化合物イオンを吸着したタングステン化合物の回収率(表中、W回収率と記載)として見積もった。結果、試料No.1については、3分後の回収率が95%、30分後の回収率が97%、60分後の回収率が98%であり、試料No.2については、3分後の回収率が20%、30分後の回収率が37%、60分後の回収率が39%であった。試料No.3については、3分後の回収率が97%、30分後の回収率が98%、60分後の回収率が99%であった。なお、微生物を投入した後の溶液中のタングステン濃度は、溶液から微生物を濾別した濾液中のタングステン濃度である。 すなわち、微生物を高温・高水蒸気圧下に曝すオートクレーブ処理をしたE.coli細胞懸濁液を添加した試料No.1、3のほうが、微生物を高温・高水蒸気圧下に曝すオートクレーブ処理をしないE.coli細胞懸濁液を添加した試料No.2よりも、高タングステン濃度のタングステン化合物溶液から短時間で高いタングステン化合物イオンの吸着ができ、その後のタングステン化合物の回収率も高くなることがわかった。 実施例1の試料No.2として使用した前処理しない未処理のE.coli細胞懸濁液を、撹拌しながら表1に示す温度で60分間加熱する前処理をした。実施例1で用いたタングステン化合物溶液に塩酸(HCl)を添加してpH=1.8に調整し、7.3×1014cells/m3の前処理したE.coli細胞懸濁液を投入して、試料No.4−9の溶液を撹拌した。実施例1と同様の方法で測定した3分後と30分後と60分後のタングステン化合物の回収率(W回収率)を表1に記載した。 表1の結果から明らかなとおり、前処理時の加熱温度が60℃以上の試料No5〜9では、タングステン化合物の回収率が大幅に向上することがわかった。 タングステン化合物溶液を表2に示す温度に加熱し、実施例1で用いたタングステン化合物溶液に塩酸(HCl)を添加してpH=1.8に調整し、実施例1に使用した未処理のE.coli細胞懸濁液を7.3×1014cells/m3の濃度で投入して、撹拌しながら表2に示す温度に加熱した。実施例1、2と同様の方法で測定した3分後と30分後と60分後のタングステン化合物の回収率(W回収率)を表2に記載した。 表2の結果から明らかなとおり、吸着処理時の加熱温度が60℃以上の試料No.13〜15では、タングステン化合物の回収率が大幅に向上することがわかった。 タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を高温・高水蒸気圧下に曝す前処理工程と、該前処理工程を経た前記微生物を投入した前記タングステン化合物溶液を酸性に調整して、前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するタングステン化合物の回収方法。 タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を60℃以上に加熱する前処理工程と、該前処理工程を経た前記微生物を投入した前記タングステン化合物溶液を酸性に調整して、前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するタングステン化合物の回収方法。 前記前処理工程において、前記微生物を撹拌する請求項1または2に記載のタングステン化合物の回収方法。 タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を投入した前記タングステン化合物溶液を酸性に調整するとともに60℃以上に加熱して、前記微生物に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するタングステン化合物の回収方法。 【課題】タングステンを含有する被処理物から、微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステン化合物の回収方法を提供する。【解決手段】タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、微生物を高温・高水蒸気圧下に曝す前処理工程と、前処理工程を経た微生物を投入したタングステン化合物溶液を酸性に調整して微生物にタングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、タングステン化合物イオンを吸着した微生物を回収し、洗浄する回収洗浄工程とを有する。微生物としては、E.coli等のバクテリアや麹菌等を使用する。【選択図】図1