生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_蒸留酒の精製方法および精製装置
出願番号:2014026136
年次:2015
IPC分類:C12G 3/02,C12G 3/08,C12G 3/12


特許情報キャッシュ

久野 智子 八尾 英也 JP 2015149935 公開特許公報(A) 20150824 2014026136 20140214 蒸留酒の精製方法および精製装置 オルガノ株式会社 000004400 宮崎 昭夫 100123788 緒方 雅昭 100127454 久野 智子 八尾 英也 C12G 3/02 20060101AFI20150728BHJP C12G 3/08 20060101ALI20150728BHJP C12G 3/12 20060101ALI20150728BHJP JPC12G3/02 119SC12G3/08C12G3/12 4 1 OL 11 4B015 4B115 4B015NB01 4B015NB02 4B015NP08 4B115CN88 4B115NB01 4B115NB02 4B115NP08 本発明は、蒸留酒の精製方法および精製装置に関する。 従来から、蒸留酒の精製にイオン交換樹脂が使用されている。特許文献1および2には、イオン交換樹脂を用いて、蒸留酒の独特の香りや癖のある味を残しつつ、二日酔いの原因となる有害成分であるアルデヒド類と無機塩の除去を行う技術が報告されている。 このようにイオン交換樹脂による精製の対象となる蒸留酒の穀物原料としては、麦、イモ、米、酒粕、そば、黒糖、ごま、栗、こうりゃん等を挙げることができる。蒸留酒には主成分であるアルコールの他に、香り成分、味成分、色素成分、ミネラル成分、アルデヒド類、無機塩類等が含まれている。この一方で、蒸留酒は、蒸留を行わない酒類に比べてアルコール度数が高く、例えば、焼酎では約30度、中国の代表的な蒸留酒である白酒では約40度のアルコール度数を示す。従って、蒸留酒は、アルコールに対する溶解度が高い物質を溶解させやすい特性を有し、上記のような蒸留酒に元々含まれている成分の他に、製造工程中に存在するアルコール溶解性の物質が混入するおそれがある。 例えば、蒸留酒の製造ラインに、プラスチック用の可塑剤を含む材料を用いた場合、低濃度のアルコールや水道水では溶出しないような可塑剤が蒸留酒中に溶出して、蒸留酒に混入する場合がある。過去にもロシア産ウォッカにフタル酸ジブチルが混入されていると報告されており、この混入原因は、容器や製造機材から蒸留酒中にフタル酸ジブチルが溶出したことによるものと推定されている(非特許文献1)。 蒸留酒の製造工程では、上記フタル酸ジブチル以外のフタル酸エステルが使用される場合がある。フタル酸エステルはベンゼン環を有する化学物質であるためエタノールなどの有機溶媒中に溶解しやすく、エタノール濃度の高い蒸留酒に溶出して混入する場合がある。フタル酸エステルとしては、フタル酸ジ−2エチルヘキシル、フタル酸ジブチルが代表的であり、これらの物質は、内分泌攪乱物質として各国で食品中の含量が規制されている。 溶液中のフタル酸エステルの低減方法としては、排水中のフタル酸エステルを含む難分解性物質をイオン交換樹脂に吸着させて分解する方法(特許文献3)、活性炭または合成吸着剤を用いて排水中のフタル酸エステルを低減する方法(非特許文献2)などが報告されている。特許第4440591号明細書特許第4584178号明細書特許第3929905号明細書東京衛研年報、Ann.Rep.Tokyo Metr.Res.Lab.P.H.,44,119−127,1993Ionic Liquid Modified Resin for the Adsorptive Removal of Dibutyl Phthalate:Equilibrium, Kinetic,and Thermodynamic Studies Clean−Soil,Air,Water 2012,40(6),630−639 しかしながら、上記特許文献3および非特許文献2では、アルコール度数の高い蒸留酒中のフタル酸エステルの低減については十分に検討されていなかった。特に、非特許文献2の方法を用いて蒸留酒の精製を行った場合、活性炭や合成吸着剤は、表面の疎水的な親和性によってフタル酸エステルを吸着し、これと同時にエタノールによって吸着したフタル酸エステルが溶離するものと考えられる。従って、フタル酸エステルの吸着と溶離が同時に起こることとなり、非特許文献2の方法は、蒸留酒中のフタル酸エステルの低減には適さないものであった。これに加えて、蒸留酒の味や香りの調整を目的とした精製を行う場合、フタル酸エステルの除去とは別の工程が必要であった。 本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、蒸留酒中のフタル酸エステルを低減すると共に、香りや風味を調整することを目的とする。 一実施形態は、 下記(1)〜(4)の何れか一つの工程により蒸留酒中のフタル酸エステルを低減することを特徴とする、蒸留酒の精製方法に関する。(1)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂層に通液した後に、OH形の陰イオン交換樹脂層、遊離塩基形の陰イオン交換樹脂層、またはOH形と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程、(2)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂とOH形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程、(3)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程、(4)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂、ならびにOH形および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程。 他の実施形態は、 下記(A)〜(D)の何れか一つの精製装置から構成され、蒸留酒中のフタル酸エステルを低減することが可能な、蒸留酒の精製装置に関する。(A)H形の強酸性陽イオン交換樹脂層を有する第1塔と、第1塔の後段に配し、OH形の陰イオン交換樹脂層、遊離塩基形の陰イオン交換樹脂層、もしくはOH形と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する第2塔とを備えた精製装置、(B)H形の強酸性陽イオン交換樹脂とOH形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する塔を備えた精製装置、(C)H形の強酸性陽イオン交換樹脂と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する塔を備えた精製装置、(D)H形の強酸性陽イオン交換樹脂、ならびにOH形および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する塔を備えた精製装置。 蒸留酒中のフタル酸エステルを低減すると共に、香りや風味を調整することができる。一実施形態の蒸留酒の精製装置および精製方法を表す図である。他の実施形態の蒸留酒の精製装置および精製方法を表す図である。一実施形態の蒸留酒の精製装置の再生方法を表す図である。 以下では、実施形態に基づいて本発明を説明する。なお、以下の実施形態は本発明の一例であって、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。 (蒸留酒の精製装置および精製方法) 図1は、一実施形態の蒸留酒の精製装置および精製方法を示す模式図である。図1の精製装置では、第1塔2にH形の強酸性陽イオン交換樹脂層1を充填した単床塔、第2塔4にOH形の陰イオン交換樹脂層3、遊離塩基形の陰イオン交換樹脂層3、またはOH形と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層3が充填されている。この精製装置を用いて蒸留酒を精製する際には、図中の矢印に示すように第1塔2、第2塔4の順に蒸留酒を通液する。 図2は、他の実施形態の蒸留酒の精製装置を示す模式図である。図2の精製装置では、塔2に(a)H形の強酸性陽イオン交換樹脂とOH形の陰イオン交換樹脂の混床層5、(b)H形の強酸性陽イオン交換樹脂と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層5、または(c)H形の強酸性陽イオン交換樹脂、ならびにOH形および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層5、が充填されている。この精製装置を用いて蒸留酒を精製する際には、図中の矢印に示すように塔2内に蒸留酒を通液する。 図1および2の精製装置では、H形の強酸性陽イオン交換樹脂により蒸留酒中のCa、Mg等の硬度成分(雑味成分)を除去することができる。また、OH形の陰イオン交換樹脂および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂により、有機酸などの酸成分およびフタル酸エステルを除去することができる。この結果、蒸留酒中のフタル酸エステルを低減すると共に、香りや風味を調整することができる。 上記の陰イオン交換樹脂は、陰イオン交換基の正電荷に帯電した部分が、フタル酸エステルのエステル部分の負極性の部分を引き寄せて吸着することで、フタル酸エステルを除去するものと考えられる。また、これと同時に、陰イオン交換基によってフタル酸エステルのエステル部分が酸とアルコールに分解されて生成したフタル酸も陰イオン交換基で吸着・除去されるものと考えられる。 陰イオン交換樹脂は、弱塩基性の陰イオン交換樹脂であっても、強塩基性の陰イオン交換樹脂であっても良い。強塩基性の陰イオン交換樹脂は塩基度が高いため、フタル酸エステルのエステル部分を加水分解する能力が高く、主に、この加水分解により生成したフタル酸を吸着・除去するものと考えられる。このため、強塩基性の陰イオン交換樹脂はフタル酸エステルを低減する能力が高い。しかし、強塩基性の陰イオン交換樹脂は、これと同時に蒸留酒中に存在する香り成分(フタル酸エステル以外のエステル、酢酸エチルなど)も分解・除去してしまう。 一方、弱塩基性の陰イオン交換樹脂は、強塩基性の陰イオン交換樹脂と比べて、陰イオン交換基の塩基度が弱いため、フタル酸エステルを加水分解してフタル酸として、これを吸着・除去する能力は低くなるが、香り成分をあまり除去せずに蒸留酒中に残留させることができる。 従って、蒸留酒中のフタル酸エステルを除去しつつ、香り成分を残すために、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と強塩基性の陰イオン交換樹脂を混合して用いても良い。この場合、弱塩基性の陰イオン交換樹脂と強塩基性の陰イオン交換樹脂の混合割合は、フタル酸エステルの除去能力および香り成分を残留させる程度を考慮して適宜、設定することができる。 陰イオン交換樹脂の母体構造は、アクリル系の陰イオン交換樹脂であっても、スチレン系の陰イオン交換樹脂であっても良い。アクリル系の陰イオン交換樹脂は、スチレン系の陰イオン交換樹脂と比べて、母体の疎水性が弱いため疎水性の強い物質が多い香り成分を吸着しにくいと言う特性を有する。従って、上記のOH形の陰イオン交換樹脂および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂として、アクリル系の陰イオン交換樹脂を用いることが好ましい。 なお、H形の強酸性陽イオン交換樹脂としては例えば、アクリル系のH形の強酸性陽イオン交換樹脂やスチレン系のH形の強酸性陽イオン交換樹脂を使用することができる。スチレン系のH形の強酸性陽イオン交換樹脂としては例えば、アンバーライト(登録商標、以下、同様)IR120B、IR124、1006F、200CT、252を挙げることができる。これらのイオン交換樹脂は、必要に応じて再生液(酸溶液)で再生することによってH形としたものを使用する。 OH形の陰イオン交換樹脂としては例えば、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂やスチレン系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂を使用することができる。アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂としては例えば、アンバーライトIRA958、IRA458(ダウケミカル社製)、PUROLITE(登録商標、以下、同様) A860、A850(ピュロライト社製)などを挙げることができる。スチレン系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂としては例えば、アンバーライト IRA900、IRA402、IRA404、IRA400(ダウケミカル社製)、PUROLITE A500S(ピュロライト社製)、ダイヤイオン SA10A、PA308(三菱化学社製)などを挙げることができる。これらのイオン交換樹脂は、必要に応じて再生液(アルカリ溶液)で再生することによってOH形としたものを使用する。 遊離塩基形の陰イオン交換樹脂は、イオン交換基としてジメチルアミノ基(−N−(CH3)2)等を有するイオン交換樹脂であり、例えば、アクリル系の遊離塩基形の弱塩基性陰イオン交換樹脂やスチレン系の遊離塩基形の弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用することができる。アクリル系の遊離塩基形の弱塩基性陰イオン交換樹脂としては例えば、アンバーライトIRA67を挙げることができる。スチレン系の遊離塩基形の弱塩基性陰イオン交換樹脂としては例えば、アンバーライトIRA96SB、IRA98、XE583を挙げることができる。 本実施形態で精製する蒸留酒は例えば、アルコール度数(蒸留酒中のアルコールの体積濃度)が20度以上96度未満のものであり、その種類は特に限定されない。蒸留酒としては例えば、アクアビット(原料;ジャガイモ)、泡盛(原料;インディカ米)、ウイスキー(原料;麦、トウモロコシ)、ウォッカ(原料;ライ麦など)、焼酎(原料;米、麦、サツマイモ、黒糖、糖蜜など)、ジン(原料;大麦、ライ麦、ジャガイモなど)、スピリタス(穀物、ジャガイモなど)、テキーラ(原料;竜舌蘭)、白酒(パイチュウ)(原料;穀物)、ブランデー(原料;果実)、コニャック(原料;ブドウ)、ラム酒(原料;サトウキビ、糖蜜など)を挙げることができる。白酒の一種としては、マオタイを挙げることができる。白酒の原料は、大麦、小麦、エンドウ、こうりゃん等である。 本実施形態の精製装置で蒸留酒中から低減するフタル酸エステルは、下記一般式(1)〜(3)で表される。(ただし、一般式(1)〜(3)において、R1,R2はそれぞれ、炭化水素基を表し、炭化水素基は無置換であっても、置換されていても良い)。 フタル酸エステルとしては例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジアリル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ビスブチルベンジル等を挙げることができる。 (第1実施形態) 本実施形態は、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂と、H形の強酸性陽イオン交換樹脂の混床層を充填した塔2を備えた図2の精製装置を用いて、蒸留酒の精製を行うものである。蒸留酒の精製は以下のようにして行う。 (1)アクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂に再生液を通液して、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂とする。また、強酸性陽イオン交換樹脂に再生液を通液して、H形の強酸性陽イオン交換樹脂とする。次に、再生後のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂とH形の強酸性陽イオン交換樹脂を塔2内に混合充填して混床層とする。この際、OH形の強塩基性陰イオン交換樹脂とH形の強酸性陽イオン交換樹脂の混合比は、樹脂体積当たりのイオン交換容量(mol/L)が陰イオン交換樹脂:陽イオン交換樹脂=1:1から1:2が好ましく、1:1がより好ましい。これらの範囲内で陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂を混合することにより、蒸留酒から効果的にフタル酸エステルを低減しつつ、香り成分を残すことができる。また、精製後の蒸留酒のpHを、精製前と同様に、弱酸性から中性に維持することができる。 (2)上記(1)のようにしてイオン交換樹脂を充填した塔2内に、イオン交換水以上の水質の水を浸漬した後、塔2内にエタノール溶液を通液して、塔2内の水をエタノール溶液に置き換える。具体的には、蒸留酒のアルコール度数と同等のアルコール度数のエタノール溶液を、一時間あたりの通液量が樹脂体積の1倍から10倍、好ましくは3倍から5倍となる流速で通液し、エタノール溶液の合計の通液量を樹脂体積の2倍量から10倍量、好ましくは3倍量から5倍量とする。 (3)次に、塔2内に蒸留酒を通液する。蒸留酒は、一時間あたりの通液量が樹脂体積の1倍から10倍、好ましくは3倍から5倍となる流速で通液する。蒸留酒の流速を上記範囲内とすることで、フタル酸エステルの吸着効率を高くすると共に、蒸留酒の香りや風味を効果的に調整することができる。 (4)蒸留酒を通液後、図3Aに示すように、塔2内に、その底部から頂部に向かって水(H2O)を通液する。これにより、塔2内の強塩基性陰イオン交換樹脂と強酸性陽イオン交換樹脂が流動し、これらのイオン交換樹脂の比重の差によって分離される(逆洗分離法)。本実施形態では、分離によって、塔2内で上部に強塩基性陰イオン交換樹脂2a、下部に強酸性陽イオン交換樹脂2bが配される。 次に、図3Bに示すように、塔2の頂部から、OH形の強塩基性陰イオン交換樹脂用の第1の再生液として水酸化ナトリウム水溶液を、塔2内に通液する。そして、強酸性陽イオン交換樹脂2bへの第1の再生液の拡散を防ぐため塔2の底部から水を塔2内に通液し、互いに分離された強塩基性陰イオン交換樹脂2aと強酸性陽イオン交換樹脂2bの境界部に位置する中間コレクターで、第1の再生液を回収する。このように中間コレクターで第1の再生液を回収することによって、第1の再生液が塔2内の下部に分離された強酸性陽イオン交換樹脂2bにまで到達して、強酸性陽イオン交換樹脂のイオン形がNa形に変わることを防止することができる。塔2内への第1の再生液の通液によりアクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂2aを再生させて、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂とする。 図3Bの工程では、第1の再生液として水酸化ナトリウム水溶液を使用したが、再生液はアルカリ溶液であれば特に限定されず、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液であるのが良く、より好ましくは水酸化ナトリウム水溶液であるのが良い。水酸化ナトリウム水溶液中の水酸化ナトリウム濃度はイオン交換樹脂を劣化させないものであれば特に限定されないが、0.05〜4.0規定が好ましく、0.5〜2.0規定がより好ましい。 次に、図3Cに示すように、塔2の底部からH形の強酸性陽イオン交換樹脂用の第2の再生液として塩化水素水溶液を塔2内に通液し、塔2の頂部から水を塔2内に通液する。そして、廃液(第2の再生液および水)を中間コレクターから回収する。このように中間コレクターで、第2の再生液を回収することによって、第2の再生液が塔2内の上部に分離されたアクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂2aにまで到達して、陰イオン交換樹脂から水酸化物イオン(OH-)が脱離して、塩化物イオン(Cl-)が吸着し、Cl-−強塩基性陰イオン交換樹脂となるのを防止できる。第2の再生液によって、塔2内の強酸性陽イオン交換樹脂が再生されてH形の強酸性陽イオン交換樹脂となる。 本実施形態では、第2の再生液として塩化水素水溶液を使用したが、第2の再生液は酸溶液であれば特に限定されない。塩化水素水溶液を使用する場合、溶液中の塩化水素濃度はイオン交換樹脂を劣化させないものであれば特に限定されないが、0.05〜4.0規定が好ましく、0.5〜2.0規定がより好ましい。 次に、図3Dに示すように、塔2の底部から塔2内に圧縮空気を流し、塔2内で分離配置されたアクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂とH形の強酸性陽イオン交換樹脂を流動させて混合させる。これにより、圧縮空気の流入を終了後の塔2内ではOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂とH形の強酸性陽イオン交換樹脂が混合充填され、塔2は混床となる。 本実施形態の蒸留酒の精製方法および精製装置は、蒸留酒中のフタル酸エステルを低減すると共に、香りや風味を調整することができる。 なお、本実施形態の精製装置で精製後の蒸留酒のpHは特に限定されないが、良好な味質となるため、pHが5〜7の範囲であることが好ましい。 (実施例1) 本実施例は、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂、およびH形の強酸性陽イオン交換樹脂を混合充填した図2の精製装置に、蒸留酒として白酒を通液して精製を行うものである。 強酸性陽イオン交換樹脂としてアンバーライト120B Naを10ml(基準形=Na形)はかり取り、1mol/Lの塩化水素水溶液を通液することにより、H形に調整した。また、アクリル系の強塩基性陰イオン交換樹脂としてアンバーライトIRA958を20ml(基準形=Cl形)はかり取り、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を通液することによりOH形に調整した。 次に、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂、およびH形の強酸性陽イオン交換樹脂を混合し、直径15mmのガラスカラムに充填した。基準形の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の合計体積の5倍量の、50体積%のエタノールを1時間、通液し、カラム内の純水と置換し、同時に洗浄を行った。 次に、アルコール度数の高い中国の蒸留酒である白酒(ERGUOTOU)に、フタル酸エステルとしてフタル酸ジブチルを2.0mg/Lの濃度となるように添加したものを原液(蒸留酒)として準備した。原液の通液は、1時間当たり、基準形の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の合計体積の5倍量となる流速で行った。通液後の蒸留酒は、基準形の陰イオン交換樹脂と陽イオン交換樹脂の合計体積の3倍量の通液量となった時点から13倍量の通液量となった時点までのものを採取した。原液と採取した蒸留酒中のフタル酸ジブチル濃度を測定すると共に、香り成分の変化を確認するため、これらの試料中の導電率、pH、および酢酸エチル濃度を測定した。また、原液と通液後の蒸留酒の官能評価を行った。官能評価では、6名のパネルによって香りおよび口当たりを評価した。 この結果、通液後の蒸留酒中のフタル酸ジブチル濃度は、原液と比べて0.9mg/L低減し、本実施例の精製装置によりフタル酸エステルを低減できることを確認できた。蒸留酒の精製により、酢酸エチル濃度は、2000mg/L以上、低減された。本実施例では、アクリル系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂を使用しているため、後述する実施例2のスチレン系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂を使用した場合と比べて、酢酸エチルの低減量は若干、少なくなった。また、蒸留酒から有機酸などの酸成分が除去されたため、蒸留酒のpHが中性付近に変化し、無機塩が除去されたことで蒸留酒の導電率も1μS/cm以下に低減された。更に、官能評価では、通液後の蒸留酒において、原液より弱いが原液のくせを残した香りが確認された。 (実施例2) OH形の強塩基性陰イオン交換樹脂として、スチレン系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして、白酒(蒸留酒)の精製を行った。スチレン系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂は、アンバーライトIRA402BLを20ml(基準形=Cl形)、はかり取り、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を通液することで調整した。また、原液と通液後の蒸留酒について実施例1と同様にして評価を行った。 この結果、通液後の蒸留酒中のフタル酸ジブチル濃度は、原液と比べて0.9mg/L低減し、本実施例の精製装置によりフタル酸エステルを低減できることを確認できた。蒸留酒の精製により、酢酸エチル濃度は、2000mg/L以上、低減された。本実施例では、スチレン系のOH形の強塩基性陰イオン交換樹脂を用いたため、実施例1と比べてより多くの酢酸エチルを低減した。また、蒸留酒から有機酸などの酸成分が除去されたため、蒸留酒のpHが中性付近に変化し、無機塩が除去されたことで蒸留酒の導電率も1μS/cm以下に低減された。更に、官能評価では、通液後の蒸留酒において、原液より弱いが原液のくせを残した香りが確認された。 (実施例3) 陰イオン交換樹脂として、アクリル系の弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRA67−HGを20ml(基準形=遊離塩基形))を用いた以外は、実施例1と同様にして、白酒(蒸留酒)の精製を行った。また、原液と通液後の蒸留酒について実施例1と同様にして評価を行った。 この結果、通液後の蒸留酒中のフタル酸ジブチル濃度は、原液と比べて0.2mg/L低減し、本実施例の精製装置によりフタル酸エステルを低減できることを確認できた。また、通液後の蒸留酒中の酢酸エチル濃度は、原液と比べてわずかしか低下せず、香り成分のエステルがほとんど除去されないことが分かった。また、蒸留酒から有機酸などの酸成分が除去されたため、蒸留酒のpHが中性付近に変化し、無機塩が除去されたことで蒸留酒の導電率も1μS/cm以下に低減された。更に、官能評価では、原液より弱いが原液のくせを残しつつ強い果実臭が確認された。 (比較例1) 本例は、合成吸着剤を充填した塔内に白酒(蒸留酒)を通液することでその精製を行ったものである。白酒の精製は、以下のようにして行った。合成吸着剤XAD−4を30ml、純水中ではかりとり、直径15mmのガラスカラムに充填した。合成吸着剤の体積の10倍量の、50体積%エタノールを1時間、カラム内に通液し、カラム内の純水と置換すると共に洗浄を行った。 実施例1と同じ条件で、白酒の原液をカラム内に通液し、原液と通液後の蒸留酒について実施例1と同様にして評価を行った。 この結果、通液後の蒸留酒中のフタル酸ジブチル濃度は、原液と比べて0.1mg/Lしか低減せず、フタル酸エステルのわずかな低減効果しか確認できなかった。また、通液後の蒸留酒の酢酸エチル濃度は原液と変わらず、香り成分であるエステルが合成吸着剤では除去されていないことが分かった。本例で用いた合成吸着剤はイオン交換基を有していないため、蒸留酒を通液後もpH、導電率に大きな変化は無かった。また、官能評価では、くせのある強い香りが残っており、香りと味の調整には効果が認められなかった。 実施例1〜3および比較例1の白酒のpH,導電率、酢酸エチル濃度、フタル酸ジブチル濃度、および官能評価の結果を下記表1に示す。1 H形の強酸性陽イオン交換樹脂2 第1塔2a 強塩基性陰イオン交換樹脂2b 強酸性陽イオン交換樹脂3 陰イオン交換樹脂4 第2塔5 H形の強酸性陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の混床層 下記(1)〜(4)の何れか一つの工程により蒸留酒中のフタル酸エステルを低減することを特徴とする、蒸留酒の精製方法。(1)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂層に通液した後に、OH形の陰イオン交換樹脂層、遊離塩基形の陰イオン交換樹脂層、またはOH形と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程、(2)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂とOH形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程、(3)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程、(4)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂、ならびにOH形および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程。 OH形の陰イオン交換樹脂および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂は、アクリル系の陰イオン交換樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の蒸留酒の精製方法。 前記蒸留酒のアルコール度数は、20度以上96度未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載の蒸留酒の精製方法。 下記(A)〜(D)の何れか一つの精製装置から構成され、蒸留酒中のフタル酸エステルを低減することが可能な、蒸留酒の精製装置。(A)H形の強酸性陽イオン交換樹脂層を有する第1塔と、第1塔の後段に配し、OH形の陰イオン交換樹脂層、遊離塩基形の陰イオン交換樹脂層、もしくはOH形と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する第2塔とを備えた精製装置、(B)H形の強酸性陽イオン交換樹脂とOH形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する塔を備えた精製装置、(C)H形の強酸性陽イオン交換樹脂と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する塔を備えた精製装置、(D)H形の強酸性陽イオン交換樹脂、ならびにOH形および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層を有する塔を備えた精製装置。 【課題】蒸留酒中のフタル酸エステルを低減すると共に、香りや風味を調整すること。【解決手段】下記(1)〜(4)の何れか一つの工程により蒸留酒中のフタル酸エステルを低減することを特徴とする、蒸留酒の精製方法。(1)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂層に通液した後に、OH形の陰イオン交換樹脂層、遊離塩基形の陰イオン交換樹脂層、またはOH形と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程。(2)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂とOH形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程。(3)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂と遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程。(4)蒸留酒を、H形の強酸性陽イオン交換樹脂、ならびにOH形および遊離塩基形の陰イオン交換樹脂の混床層に通液する工程。【選択図】図1


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