タイトル: | 公開特許公報(A)_山芋抽出物の製造方法 |
出願番号: | 2014024062 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61K 36/00,A61P 3/02,A61P 3/06 |
野中 源一郎 天野 弘毅 栗山 雄司 松永 勝政 JP 2015151344 公開特許公報(A) 20150824 2014024062 20140212 山芋抽出物の製造方法 株式会社アンチエイジング・プロ 512233880 松井 茂 100086689 宮尾 武孝 100157772 野中 源一郎 天野 弘毅 栗山 雄司 松永 勝政 A61K 36/18 20060101AFI20150728BHJP A61K 36/00 20060101ALI20150728BHJP A61P 3/02 20060101ALN20150728BHJP A61P 3/06 20060101ALN20150728BHJP JPA61K35/78 CA61K35/78 YA61K35/78 XA61P3/02A61P3/06 6 OL 7 4C088 4C088AB84 4C088AC05 4C088AC11 4C088AC13 4C088BA09 4C088BA10 4C088CA05 4C088CA08 4C088NA05 4C088ZC21 4C088ZC33 本発明は、ジオスゲニンを高含量で含む山芋抽出物の製造方法に関する。 ジオスゲニンは、性ホルモンの中間体であるデヒドロエピアンドロステロン(Dehydroepiandrosterone;DHEA)と類似した構造をもち、近年、滋養強壮作用、脂肪燃焼作用など、様々な機能性が報告されている。山芋にはスピロスタン型サポニンであるジオスチン(配糖体)が含まれ、山芋を食せば、主に胃酸により、ジオスチンのアグリコン(非糖部分)であるジオスゲニンに変換されて、生体内でその機能性を発揮し得る。ところが、ジオスチンからジオスゲニンへの変換率が低いため、生体への利用効率は悪い。 このような問題に関して、下記特許文献1には、ヤムイモの一種であるトゲドコロにはジオスゲニン(その配糖体であるジオスチンの状態のものを含む)が高含量で含まれ、それを原料にして溶媒抽出し、濃硫酸を加えて100℃で2時間酸処理後、ブチルメチルエーテルを用いて液液分配抽出を行って、ジオスゲニン含有組成物を得ることが記載されている(特に、特許文献1の段落0033)。特開2007−274985号公報 しかしながら、上記特許文献1に記載のトゲドコロであっても、生イモ中のジオスゲニン(その配糖体であるジオスチンの状態のものを含む)の含有量は高くとも0.069質量%程度であり、ジオスゲニンを高含量で含む天然物由来の抽出物を製造するのは、依然として困難であった。一方でジオスゲニンの含有量を高めるだけならジオスゲニンだけを高度に精製すればよいが、その精製にはコストがかかり、また、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンやそのアグリコンが除かれてしまい、それらを副成分として有効活用できない。 本発明の目的は、ジオスゲニンを高含量で含み、なお且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンの含量も保たれた、山芋抽出物の製造方法を提供することにある。 上記目的を達成するため、本発明の山芋抽出物の製造方法は、ジオスチンを固形分中に2質量%以上含有する山芋に抽出溶媒を添加して溶媒抽出し、酸処理後、中和して、ジオスゲニンを固形分中に5〜20質量%含有し、且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンを固形分中に0.2〜5質量%含有する抽出物を得ることを特徴とする。 本発明の山芋抽出物の製造方法によれば、原料としてジオスチンを固形分中に2質量%以上含有する山芋を用いるので、特殊な抽出ステップや精製ステップを要せずに、簡便な操作で効率的に、ジオスゲニンを高含量で含み、なお且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンの含量も保たれた、山芋抽出物を得ることができる。 本発明の山芋抽出物の製造方法においては、前記ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンは、ヤモゲニンを含むことが好ましい。 また、前記溶媒抽出を、水又は含水エタノールを溶媒として60〜100℃で行うことが好ましい。 また、前記溶媒抽出を、水の含有量が5〜50w/w%の含水エタノールを溶媒として行うことが好ましい。 また、前記山芋の乾燥物20質量部から、前記抽出物として1質量部以上の固形分を有する該抽出物を得ることが好ましい。 また、前記抽出物が水分4質量%以下の粉体であることが好ましい。 本発明の山芋抽出物の製造方法によれば、原料としてジオスチンを固形分中に2質量%以上含有する山芋を用いるので、特殊な抽出ステップや精製ステップを要せずに、簡便な操作で効率的に、ジオスゲニンを高含量で含み、なお且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンの含量も保たれた、山芋抽出物を得ることができる。 本発明に用いられる山芋としては、その固形分中にジオスチンを2質量%以上含有するものであればよく、特にその種類に制限はない。例えば、ヤマノイモ科(Dioscoreaceae)に属するヤマノイモ(Dioscorea japonica)、ナガイモ(Dioscorea batatas)、オニドコロ(Dioscorea tokoro)、ヒメドコロ(Dioscorea tenuipes)、カエデドコロ(Dioscorea quinqueloba)、モミジドコロ(Dioscorea septemloba)、タチドコロ(Dioscorea gracillima)、ダイジョ(Dioscorea alata)等があげられる。このうち、特に、中国雲南省昆明市を中心とした地域で栽培された山芋は、その要因は定かではないが、日本など他の地域で栽培された山芋よりもジオスチン含量が高いので、その地域で栽培された山芋を用いることが好ましい。一般に、植物体に蓄積される成分は、土壌、気候、季節等の違いで大きく異なることがある。よって、同じ品種に属する山芋でも、中国雲南省昆明市を中心とした地域で栽培すると、日本など他の地域で栽培するよりもジオスチン含量が高い山芋が収穫できると考えられる。山芋は2種以上を併用してもよい。なお、山芋に含まれるジオスチン含量の上限については、特に制限はないが、通常、その固形分中に高くとも8質量%程度であると考えられる。 山芋は、原料として、保存性や取り扱いの容易性の観点から、乾燥物を用いることが好ましい。用いる山芋の部位は、葉、茎、根、担根体、あるいはこれらの混合物や全植物体などであってよい。一般に食用とされる部位である担根体の、その外皮にはジオスチンが豊富に含まれているので、これを、外皮を除外せずに用いることが好ましい。また、溶媒抽出の効率性や作業性の観点から、チップ状、短冊状、ダイス状、ブロック状等に細断し、あるいは粉砕して用いることが好ましい。 本発明においては、上記の山芋に抽出溶媒を添加して溶媒抽出する。抽出溶媒としては、例えば、水、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、1,3−ブチレングリコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチルなどの溶媒を挙げることができ、所望によりこれらの1種または2種以上を混合してなる混合溶媒を用いてもよい。より望ましくは、水又は含水エタノールを用いることが好ましく、その場合、水の含有量が5〜50w/w%の含水エタノールが好ましく、水の含有量が5〜30w/w%の含水エタノールがより好ましく、水の含有量が5〜20w/w%の含水エタノールが最も好ましい。 溶媒抽出は、上記の抽出溶媒を用いて、公知の方法で行うことができる。例えば、原料の山芋に対し、上記の抽出溶媒を好ましくは1〜50倍量、より好ましくは5〜20倍量添加して、好ましくは60〜100℃、より好ましくは80〜100℃で、好ましくは1〜24時間、より好ましくは2〜8時間、最も好ましくは3〜6時間撹拌、振とう、又は静置する。その後、室温に冷やし、ろ過、遠心分離等にて固液分離し、その液部を抽出液として回収する。所望により、その固部には上記の抽出溶媒を添加して、同様の抽出操作を再度もしくは複数回繰り返し、これにより回収された抽出液を合わせてもよい。また、上記の抽出溶媒の2種以上を用いて抽出操作を行い、各々で回収された抽出液を合わせてもよい。 本発明においては、山芋に含まれるジオスチン(配糖体)をそのアグリコン(非糖部分)であるジオスゲニンに変換させるため、酸処理を行なう。酸処理は原料自体や溶媒抽出の際に酸を添加して行うこともできるが、上記の溶媒抽出で得られた抽出液に対して行うことが好ましい。これにより、ジオスチンをジオスゲニンにより効率的に変換させることができる。また、上記の溶媒抽出で得られた抽出液は、溶媒を減圧留去することにより濃縮して用いることが好ましい。これにより、酸の使用量を減らし、その後の中和の処理コストの削減を図ることができる。具体的には、例えば、上記の溶媒抽出で得られた抽出液を好ましくは3〜50分の1量、より好ましくは10〜20分の1量まで減圧留去により濃縮した後、終濃度が好ましく0.1N〜4N、より好ましくは0.5N〜2Nになるように濃塩酸を添加し、好ましくは70〜100℃、より好ましくは90〜100℃で、好ましくは30分〜5時間、より好ましくは2〜4時間酸処理する。酸処理は還流煮沸法で行うことが好ましい。なお、酸は塩酸に限られるものではない。例えば硫酸、蟻酸、トリフルオロ酢酸などを用いてもよい。 上記の酸処理後には、アルカリで中和する。中和には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどを用いることができる。作業性やコストの観点からは、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。具体的には、例えば、上記の酸処理後の溶液を室温に冷やし、1N水酸化ナトリウム溶液をリトマス試験紙で溶液のpHを確認しながら添加することにより中和することができる。 上記の中和後の溶液には、その固形分中にジオスゲニンが少なくとも5質量%以上含まれ、且つ、その固形分中にジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンが少なくとも0.2質量%以上含まれているので、これをもって本願発明による山芋抽出物としてもよい。ただし、中和後の溶液中には、酸処理と中和のために添加した酸とアルカリが存在しているので、これらによる塩を除去しておくことが好ましい。その塩の除去は、ポリスチレン樹脂、ODS、ゲル濾過・サイズ排除カラム等を用いた、カラムクロマトグラフィーで行うことができる。また、上記の中和で得られた溶液は、好ましくは3〜50分の1量、より好ましくは10〜20分の1量まで溶媒を減圧留去することにより濃縮したうえ、必要に応じて遠心等により不溶物を除去してから塩除去工程に供することが好ましい。これにより、塩除去工程のスケールを減らし、コストの削減を図ることができる。具体的には、例えば、ポリスチレン樹脂の場合には、中和して得られた溶液をカラムに通導して目的物をカラムに保持させ、水で十分に洗浄し、塩並びに原料に含まれる糖質、蛋白質、アミノ酸、ミネラルなどを除去、ついで水の含有量が10〜20w/w%の含水エタノールで溶出して抽出物を得る。 このようにして、ジオスゲニンを固形分中に5〜20質量%含有し、且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンを固形分中に0.2〜5質量%含有する抽出物を得ることができる。この抽出物は、原料の山芋の乾燥物20質量部からの収率で換算して1質量部以上の固形分、より典型的には1〜18質量部の固形分、更により典型的には1〜3質量部の固形分を有する。また、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンとしてヤモゲニンを含む。ヤモゲニン含量としては、抽出物の固形分中に0.1〜2質量%含有することが好ましく、0.2〜1質量%含有することがより好ましい。 上記抽出物は、所望により、公知の方法で溶媒を除去したり、濃縮したり、乾燥したりしてもよい。また、乾燥後に粉砕したり、微粒子化したり、造粒したり、粉末化したりしてもよい。より具体的には、スプレードライ後に、篩にかけ、水分4質量%以下の粉体を調製することができる。粉体は、例えば、全体の80質量%以上がJIS規格による標準篩を用いて60メッシュ(目開き250μm)をパスする形態とすることが好ましく、全体の90質量%以上がJIS規格による標準篩を用いて60メッシュ(目開き250μm)をパスする形態とすることがより好ましい。 なお、上記の抽出物中のジオスチン、ジオスゲニン、ヤモゲニン、又はジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンの含量は、それぞれ公知のHPLC分析により、別途標準品により求めた検量線にあてはめて定量する方法などにより求めることができる。 以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。 <製造例1> 乾燥ヤマノイモ(中国雲南省昆明市で収穫された山芋)を水洗、細切り後、水の含有量が10w/w%の含水エタノールを原料の10倍量添加し、100℃で5時間抽出した。室温に冷やした後、ろ過にて固液分離し、その液部を回収した。その固部には再度上記含水エタノールを添加して加熱抽出を行い、これらの抽出液を合し、減圧にて約5分の1量まで濃縮した。濃縮液に1Nになるように濃塩酸を加え2時間還流煮沸した。室温に冷やし、1N水酸化ナトリウム溶液を、リトマス試験紙で溶液のpHを確認しながら添加することにより中和した。この中和液を減圧にて約15分の1量まで濃縮し、析出する沈殿を遠心分離にて除去した。上清液は減圧濃縮後、多孔性ポリスチレンカラム(ダイアイオン HP20)に通導して、カラムを水で洗浄して非吸着成分を除去後、水の含有量が20w/w%の含水エタノールで溶出するフラクションを得た。これを減圧濃縮し、乾燥後、粉砕、篩にかけて、水分4質量%以下で、全体の90質量%以上がJIS規格による標準篩を用いて60メッシュ(目開き250μm)をパスする、粉体状の山芋抽出物を得た。この粉体状の山芋抽出物はジオスゲニンを固形分中に16質量%含み、ヤモゲニンを0.5質量%含む抽出物であった。また、原料の山芋の乾燥物20質量部からの収率で換算して、18質量部の固形分を有していた。 ジオスチンを固形分中に2質量%以上含有する山芋に抽出溶媒を添加して溶媒抽出し、酸処理後、中和して、ジオスゲニンを固形分中に5〜20質量%含有し、且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンを固形分中に0.2〜5質量%含有する抽出物を得ることを特徴とする山芋抽出物の製造方法。 前記ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンは、ヤモゲニンを含む請求項1記載の山芋抽出物の製造方法。 前記溶媒抽出を、水又は含水エタノールを溶媒として60〜100℃で行う請求項1又は2記載の山芋抽出物の製造方法。 前記溶媒抽出を、水の含有量が5〜50w/w%の含水エタノールを溶媒として行う請求項1〜3のいずれか1つに記載の山芋抽出物の製造方法。 前記山芋の乾燥物20質量部から、前記抽出物として1質量部以上の固形分を有する該抽出物を得る請求項1〜4のいずれか1つに記載の山芋抽出物の製造方法。 前記抽出物が水分4質量%以下の粉体である請求項1〜5のいずれか1つに記載の山芋抽出物の製造方法。 【課題】ジオスゲニンを高含量で含み、なお且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンの含量も保たれた、山芋抽出物の製造方法を提供する。【解決手段】ジオスチンを固形分中に2質量%以上含有する山芋に抽出溶媒を添加して溶媒抽出し、酸処理後、中和して、ジオスゲニンを固形分中に5〜20質量%含有し、且つ、ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンを固形分中に0.2〜5質量%含有する抽出物を得る。前記ジオスゲニン以外のスピロスタン型サポニンのアグリコンは、ヤモゲニンを含むことが好ましい。【選択図】なし