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タイトル:公開特許公報(A)_サケ類の肉色改善方法
出願番号:2014019922
年次:2014
IPC分類:A23K 1/18,A23K 1/16,C09B 61/00,C12P 23/00


特許情報キャッシュ

平澤 和明 坪倉 章 米田 久 JP 2014097069 公開特許公報(A) 20140529 2014019922 20140205 サケ類の肉色改善方法 JX日鉱日石エネルギー株式会社 000004444 小林 浩 100092783 大森 規雄 100120134 鈴木 康仁 100104282 平澤 和明 坪倉 章 米田 久 A23K 1/18 20060101AFI20140502BHJP A23K 1/16 20060101ALI20140502BHJP C09B 61/00 20060101ALI20140502BHJP C12P 23/00 20060101ALN20140502BHJP JPA23K1/18 102AA23K1/16 304BA23K1/16 301AC09B61/00 AC12P23/00 3 2006282085 20061017 OL 17 2B005 2B150 4B064 2B005GA01 2B005GA02 2B005MB06 2B150AA08 2B150AB05 2B150AB08 2B150AB20 2B150AC01 2B150AC24 2B150AC30 2B150AC34 2B150AE01 2B150AE02 2B150AE05 2B150AE12 2B150CE02 2B150CE05 2B150CE09 2B150CJ08 2B150DA02 2B150DD01 2B150DD12 2B150DD31 2B150DE01 2B150DH35 4B064AH01 4B064CA02 4B064CC30 4B064CD09 4B064CD22 4B064DA11 本発明は、天然魚に近い穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産することができるサケ類の肉色改善方法、肉色改善用飼料、及び該肉色改善方法により生産されたサケ類及びその魚肉に関する。 天然のサケ類は自然界のエビやカニに含まれるカロテノイド色素を摂取、蓄積して赤橙色の肉色を呈している。養殖のサケ類は、その肉色を天然のサケ類に近い色にするために通常カロテノイド色素を添加した飼料で飼育される。 飼料に添加するカロテノイド色素として従来からアスタキサンチンの化学合成品が広く一般に使用されている(Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 46: 185-196 (2006))。天然由来のカロテノイド色素をサケ類の肉色改善に利用した例としては赤色酵母Phaffia rhodozymaの生産するアスタキサンチン(特表平8-508885)、藻類Haematococcus pluvialisの生産するアスタキサンチン(米国特許4,871,551)、トウガラシ成分であるカプサイシン類(特開2005-27662)が知られている。また、サケ類ではないがマダイの体表における色調改善を試験するためにバクテリアParacoccus carotinifaciens E-396株(FERM BP-4283)の生産するカロテノイド色素が使用された例が知られている(特開平9-308481)。さらに、カロテノイド化合物を含有する微生物培養沈殿物よりなる飼料添加用色素含有物も知られている(特開2001-95500)。特表平8−508885号公報特開2005−27662号公報特開平9−308481号公報特開2001−95500号公報Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 46: 185-196 (2006) 合成アスタキサンチンを添加した飼料で養殖したサケの肉は鮮やかな赤色を呈するが、ときに赤色度が強すぎることがあり、その色素が化学合成品であるという知識と結びついたときに消費者に好ましくない印象を与えることが懸念される。天然志向の消費者に受け入れられやすいという点において赤色酵母Phaffia rhodozyma及び藻類Haematococcus pluvialisの生産するカロテノイド色素は有望であるが、これらの酵母及び藻類由来のカロテノイド色素の成分はアスタキサンチンがほとんどであり、魚肉の色調としては合成アスタキサンチンを用いて飼育したときと同様な色調しか期待できない。また、トウガラシは赤色の色素源として有用ではあるが、自然作物であるため天候に左右され易く、安定供給することは困難である。 このため、安定供給可能な天然由来の色素を飼料に配合して自然な赤橙色の肉色を有するサケ類を養殖生産する方法が求められていた。 上記課題を解決するために本発明者らは、アスタキサンチン及びフェニコキサンチン(別名アドニルビン)及びカンタキサンチン及びアドニキサンチンを含むカロテノイド色素を配合した飼料を給餌することにより、合成アスタキサンチンを用いたときよりも穏やかで自然な赤橙色の肉色を有するサケ類を生産できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 即ち、本発明は以下の方法、飼料及びサケ類を提供する。 (1)アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合した飼料でサケ類を飼育することを特徴とする、穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産する方法。 (2)飼料中のアスタキサンチン含有量が20〜100mg/kgであり、かつ、フェニコキサンチン含有量が5〜80mg/kgである(1)に記載の方法。 (3)飼料中のカンタキサンチン含有量が0.5〜25mg/kgである(1)又は(2)に記載の方法。 (4)飼料中のアドニキサンチン含有量が0.2〜40mg/kgである(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。 (5)生産したサケ類が、その魚肉中にアスタキサンチン及びフェニコキサンチンを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の方法。 (6)生産したサケ類が、その魚肉中にカンタキサンチン及び/又はアドニキサンチンを含むことを特徴とする(5)に記載の方法。 (7)生産したサケ類の魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するフェニコキサンチン含有量の比が5〜80%であることを特徴とする(5)又は(6)に記載の方法。 (8)生産したサケ類の魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するカンタキサンチン含有量の比が0.5〜20%であることを特徴とする(5)〜(7)のいずれか1項に記載の方法。 (9)生産したサケ類の魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するアドニキサンチン含有量の比が0.2〜40%であることを特徴とする(5)〜(8)のいずれか1項に記載の方法。 (10)飼料中のカロテノイド色素が天然品を含むことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法。 (11)飼料中のカロテノイド色素が天然品及び化学合成品を含むことを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の方法。 (12)カロテノイド色素に含まれる天然品がバクテリアの発酵により生産されたものであることを特徴とする(10)又は(11)に記載の方法。 (13)バクテリアがParacoccus属に属するバクテリアである(12)に記載の方法。 (14)バクテリアは、配列番号1に記載の塩基配列と98%以上の相同性を有する塩基配列を含む、16SリボソームRNAに対応するDNAを有するバクテリアである(12)に記載の方法。 (15)バクテリアが、E−396株(FERM BP−4283)又はその変異株である(14)に記載の方法。 (16)サケ類がアトランティックサーモン、ニジマス、ギンザケ、キングサーモン、ベニザケ、カラフトマス、サクラマス、シロサケ、サツキマス及びブラウンマスからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(15)のいずれか1項に記載の方法。 (17)サケ類がアトランティックサーモン、ニジマス、ギンザケ及びキングサーモンからなる群から選ばれる少なくとも1種である(16)に記載の方法。 (18)(1)〜(17)のいずれか1項に記載のサケ類を生産するための飼料。 (19)アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合してなる、サケ類の養殖用飼料。 (20)飼料中のアスタキサンチン含有量が20〜100mg/kgであり、かつ、フェニコキサンチン含有量が5〜80mg/kgである(19)に記載の飼料。 (21)飼料中のカンタキサンチン含有量が0.5〜25mg/kgである(19)又は(20)に記載の飼料。 (22)飼料中のアドニキサンチン含有量が0.2〜40mg/kgである(19)〜(21)のいずれか1項に記載の飼料。 (23)(1)〜(17)のいずれか1項に記載の方法により生産されたサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 (24)魚肉又は卵におけるアスタキサンチン含有量に対するフェニコキサンチン含有量の比が5〜80%であることを特徴とする(23)に記載のサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 (25)魚肉又は卵におけるアスタキサンチン含有量に対するカンタキサンチン含有量の比が0.5〜20%であることを特徴とする(23)又は(24)に記載のサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 (26)魚肉又は卵におけるアスタキサンチン含有量に対するアドニキサンチン含有量の比が0.2〜40%であることを特徴とする(23)〜(25)のいずれか1項に記載のサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 本発明により、アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合してなる飼料が提供される。本発明の飼料でサケ類を飼育すると、穏やかで自然な赤橙色の肉色を有するサケ類を生産することができる。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明は、アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合してなるサケ類の生産用飼料であり、穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産するためのものである。また、本発明は、そのような飼料を用いてサケ類を飼育することにより、穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産する方法に関する。 本発明において、サケ類とは、サケ科太平洋サケ属(Oncorhynchus属)あるいはサケ科大西洋サケ属(Salmo属)に属する魚類のことである。太平洋サケ属に属するサケとしては、例えばニジマス(Oncorhynchus mykiss)、ギンザケ(Oncorhynchus kisutch)、キングサーモン(Oncorhynchus tshawytscha)、ベニザケ(Oncorhynchus nerka)、カラフトマス(Oncorhynchus gorbuscha)、シロサケ(Oncorhynchus keta)、サクラマス(Oncorhynchus masou masou)及びサツキマス(Oncorhynchus masou macrostomus)が例示され、大西洋サケ属に属するサケとしては、例えばアトランティックサーモン(Salmo salar)及びブラウンマス(Salmo trutta)が例示される。中でもアトランティックサーモン、ニジマス、ギンザケ及びキングサーモンが本発明におけるサケ類の好適な例として挙げられる。本発明においては、サケ類は海面養殖に用いられる降海型であっても淡水養殖で用いられる陸封型であってもよく、養殖の態様は特に限定されない。 本発明の方法において使用するカロテノイド色素としては好ましくは天然品が用いられるが、天然品に化学合成品を混合してもよい。本発明の飼料は、天然品としてアスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むものである限り特に限定されないが、バクテリア、酵母又は藻類が産生するカロテノイド色素、植物由来のカロテノイド色素、あるいはエビやカニなど甲殻類から得られるカロテノイド色素を、単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。天然品は、バクテリアの発酵により生産されたものが好ましい。 細胞壁が薄く色素の有効利用が可能である点でバクテリア由来のカロテノイド色素を用いることが好ましい。Paracoccus属に属するバクテリア由来の色素は、カロテノイド色素の生産性が高い点でより好ましい。またバクテリアの16SリボソームRNAに対応するDNAの塩基配列が、配列番号1に記載の塩基配列と実質的に相同である塩基配列を含むようなリボソームRNAを有するバクテリアの色素を用いることも好ましい。 ここで言う「実質的に相同である」とは、DNAの塩基配列決定のエラー頻度等を考慮し98%以上の相同性を有することを意味する。Paracoccus carotinifaciens E-396株(FERM BP-4283)又はその変異株由来のカロテノイド色素を用いることが特に好適な例として挙げられる。 本発明において飼料に配合するカロテノイド色素の天然品は、そのままの形態で使用することもできるが、色素を生体とともに乾燥した粉末を使用することもできる。「色素を生体とともに乾燥した粉末」としては、例えば、色素を生産する微生物を培養して得られた色素と微生物を含む培養液をそのまま乾燥したもの、色素をもともと含有する植物をそのまま乾燥して粉末化したものなどが挙げられる。カロテノイド色素を含む生物や培養液をそのまま乾燥して粉末としたものでもよく、そこから有機溶媒などで色素を抽出したもの、あるいは、抽出したものをさらに分離精製して純度を高くしたものでもよい。 本発明の飼料は、アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを含む飼料である限り、成形状態が限定されるものではない。飼料の成形状態としては、例えばペレット状、粉状、練り餌状などが挙げられ、その他押出成形ペレット、モイストペレット、マッシュなどが例示される。飼料の大きさはサケ類の成長に合わせて何段階かに変化させることが好ましいが特に限定はない。カロテノイド色素以外の飼料原料は添加物として使用することができ、例えば魚粉等の飼料の主原料に、小麦粉、大豆油糟、コーングルテンミール、ビタミン類、ミネラル類、魚油などの添加物を添加することができる。これらの添加物は、通常サケ類の飼育に使用されるものであれば、その種類及び配合量は特に限定されない。カロテノイド色素は、飼料製造工程における熱失活を考慮して添加することができ、押出成形ペレットの場合には押出成形処理の前に添加しても後に添加してもよい。 本発明において飼料中に配合するアスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンの量は特に限定されない。例えば、穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産するために飼料中のアスタキサンチン含有量は、好ましくは20mg/kg以上、より好ましくは30mg/kg以上、さらに好ましくは40mg/kg以上であり、好ましくは100mg/kg以下、より好ましくは90mg/kg以下、さらに好ましくは80mg/kg以下に調製する。 魚肉に赤橙系統の色を付与するために、飼料中のフェニコキサンチン含有量は、好ましくは5 mg/kg以上、より好ましくは10 mg/kg以上、さらに好ましくは15 mg/kg以上であり、好ましくは80mg/kg以下、より好ましくは70mg/kg以下、さらに好ましくは60mg/kg以下である。カンタキサンチン及びアドニキサンチンは魚肉に橙系の色を付与するために有効である。本発明においては、飼料中のアスタキサンチン含有量が20〜100mg/kgであり、かつ、フェニコキサンチン含有量が5〜80mg/kgとすることが好ましい。 飼料中のカンタキサンチン含有量は、好ましくは0.5mg/kg以上、より好ましくは1.0 mg/kg以上、さらに好ましくは1.5 mg/kg以上であり、25mg/kg以下、より好ましくは20mg/kg以下、さらに好ましくは15mg/kg以下である。飼料中のアドニキサンチン含有量は好ましくは0.2mg/kg以上、より好ましくは1.0 mg/kg以上、さらに好ましくは2.0 mg/kg以上であり、40mg/kg以下、より好ましくは30mg/kg以下、さらに好ましくは20mg/kg以下である。 本発明におけるサケ類の飼育方法は特に限定されないが、たとえば100〜300g程度の魚体重になるまで淡水で飼育した稚魚を海面生簀に放流し、1日1回の飽食給餌を魚が出荷サイズになるまで継続する方法を例示することができる。本発明の飼料は海面生簀における給餌の全期間で使用することが好ましいが、本飼料を部分的に使用して他の期間は別の飼料で飼育することも可能であり、また、淡水における稚魚の飼育に本飼料を用いてもよい。陸封型のサケ類の淡水養殖に本発明の方法を適用することもできる。 水揚げしたサケ類の肉色は、分光測色計を用いて測定することによりL*a*b*表色系で数値化することができる。ここでL*は明度、a*は赤色度、b*は黄色度を示し、a*/b*が大きければ赤味が強いことを、小さければ橙色味が強いことを示す。本発明の方法により生産したサケ類の肉色は合成アスタキサンチン添加飼料で飼育したサケ類に比較してa*/b*が小さい傾向を示し、より自然な赤橙色を呈する。 サケ類の肉色を数値化する別の間接的な方法としては魚肉中のカロテノイド色素を抽出し分析する方法を用いることができる。カロテノイド色素は化合物により異なる色調を有している。本発明に利用される4種のカロテノイド化合物を赤色度の高いものから橙色度の高いものへと順に並べると、アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン、アドニキサンチンになる。したがって、これらカロテノイド色素の魚肉中の含有量を分析することにより肉色を推測することができる。 本発明の方法により生産したサケ類の魚肉はアスタキサンチン及びフェニコキサンチンを含有することが好ましい。また、アスタキサンチン及びフェニコキサンチンに加えて、カンタキサンチン又はアドニキサンチンのうち1種又は両方が魚肉中に含有することがより好ましい。「魚肉」とは、ヒトが通常食する魚体の肉を意味し、生鮮肉及び加工肉の両者を含む。加工肉としては、たとえば切り身、干物、スモークサーモン、塩サケ、新巻サケ、缶詰肉などが挙げられる。また、本発明の方法により生産したサケ類の卵も穏やかな赤橙色を呈するので産業上有用である。 魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するフェニコキサンチン含有量の割合(比)は、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは70%以下、さらに好ましくは60%以下である。魚肉中のアスタキサンチン含有量に対するカンタキサンチン含有量の比は、好ましくは0.5%以上、より好ましくは1%以上、さらに好ましくは1.5%以上であり、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。アスタキサンチン含有量に対するアドニキサンチン含有量の比は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。 以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。 なお、実施例におけるカロテノイド色素の定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行った。カラムはWakosil-II 5 SIL-100 φ4.6×250mm(和光純薬社製)を2本連結して使用した。n−ヘキサン:テトラヒドロフラン:メタノール(40:20:1)混合液を移動相とし一定室温にて1.0ml/minの流速で、検出は波長470nmで行った。飼料又は魚肉を粉砕後、テトラヒドロフラン:メタノール(20:1)混合液で色素を抽出し、移動相で適当に希釈してHPLC分析を行った。 表1に示す組成の培地100mlを500mL容量の綿栓付きフラスコに入れ、121℃、15分間加熱滅菌した。これにParacoccus carotinifaciens E−396株(FERM BP−4283)を1白金耳植菌し、28℃で2日間振とう培養を行った。 この培養液全量を表1の培地が30L入った50L容量の発酵槽に植菌し、28℃で1日間200rpmの攪拌培養を行った。次にこの培養液10Lを表2に示す組成の培地が300L入った600L容量の発酵槽に植菌し、28℃、通気量1.0vvm、溶存酸素濃度が最低2.5ppmを維持するように攪拌回転数を自動制御し、pHを7.1以上に維持するよう苛性ソーダで自動制御しながら120時間の培養を行った。シュークロースは生育とともに消費されるため、培養1日目及び2日目に4.5kgずつ追加した。培養液を連続遠心分離機で処理して得られた濃縮液を、スプレードライヤーを用いて乾燥しカロテノイド色素を含む発酵品を得た。発酵品を魚粉などと混合した後ペレット状とし、魚油でコーティングすることによりサケ用の飼料を調製した。また、比較のために市販のアスタキサンチン合成品を混合した飼料を調製した。調製した飼料中のカロテノイド色素をHPLCを用いて分析したところ、表3に示す組成であった。 体重約200gのギンザケを各試験区300尾として上記飼料による飽食給餌を海面生簀で行った。6ヶ月間飼育後に各試験区10尾の供試魚の体重を測定し、その平均値を表4に示した。魚は延髄切断により即殺し冷凍保存した。解凍後、魚肉をコーヒーミルで粉砕し、一部をポリエチレン袋に入れてミノルタ分光測色計CM−508iで色調を測定し、10尾の分析値の平均値を表4に示した。また、粉砕した魚肉の一部から色素を抽出し、HPLCによりカロテノイド色素の含量分析を行い10尾の平均値を表5に示した。 合成品区の魚肉は不自然な赤色であるのに対し、発酵品区の魚肉は穏やかな赤橙色を呈していた。 Paracoccus carotinifaciens E−396株(FERM BP−4283)をN-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidineで変異処理し、濃い赤色のコロニーを選択した。これら菌株の培養液中のカロテノイド色素を分析し、アスタキサンチンの生産性が向上した変異株を選択した。表1に示す組成の培地100mlを500mL容量の綿栓付きフラスコに入れ、121℃、15分間加熱滅菌した。これに上記変異株を1白金耳植菌し、28℃で2日間振とう培養を行った。 この培養液全量を、表1に示す組成の培地が30L入った50L容量の発酵槽に植菌し、28℃で1日間200rpmの攪拌培養を行った。次に、この培養液10Lを表2に示す組成の培地が300L入った600L容量の発酵槽に植菌し、28.5℃、通気量1.0vvm、溶存酸素濃度が最低2.5ppmを維持するように攪拌回転数を自動制御し、pHを7.1以上に維持するようアンモニア水で自動制御しながら120時間の培養を行った。シュークロースは生育とともに消費されるため、培養1日目及び2日目に4.5kgずつ追加した。培養液を連続遠心分離機で処理して得られた濃縮液を、スプレードライヤーを用いて乾燥しカロテノイド色素を含む発酵品を得た。発酵品を魚粉などと混合後ペレット状とし、魚油でコーティングすることによりサケ用の飼料を調製した。また、比較のために市販のアスタキサンチン合成品を混合した飼料を調製した。調製した飼料中のカロテノイド色素を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析したところ、表6に示す組成であった。 体重約100gのニジマスを各試験区50尾/水槽として、上記飼料を用い3ヶ月間の飽食給餌を淡水で行った。飼育3ヶ月後に各試験区12尾の体重を測定し、その平均値を表7に示した。魚は延髄切断により即殺し、分光測色計で肉色を測定した12尾の分析値の平均値を表7に示した。また、測定後の肉を冷凍保存し、解凍後各試験区12尾の魚肉についてカロテノイド色素の含量分析を行い、その平均値を表8に示した。 合成品区の魚肉は赤色に近い赤橙色であるのに対し、発酵品区の魚肉は穏やかで自然な赤橙色を呈していた。 実施例2と同様の方法により、カロテノイド色素を含む発酵品を調製した。この発酵品を魚粉などと混合後ペレット状とし、魚油でコーティングすることによりサケ用の飼料を調製した。また、比較のために市販のアスタキサンチン合成品を混合した飼料を調製した。調製した飼料中のカロテノイド色素を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析したところ、表9に示す組成であった。 体重約300gのアトランティックサーモンを各試験区400尾として、上記飼料を用い12ヶ月間の飽食給餌を海面生簀で行った。各試験区20尾について飼育12ヶ月後に水揚げして体重を測定し、その平均値を表10に示した。魚を延髄切断により即殺し、分光測色計で色調を測定し20尾の分析値の平均値を表10に示した。測定後1ヶ月間冷凍保存し、解凍後各試験区20尾の魚肉についてカロテノイド色素の含量分析を行い、その平均値を表11に示した。 合成品区の魚肉は赤色度の強い赤橙色であるのに対し、発酵品区の魚肉は穏やかで自然な赤橙色を呈していた。 実施例2と同様の方法により、カロテノイド色素を含む発酵品を調製した。この発酵品を魚粉などと混合後ペレット状とし、魚油でコーティングすることによりサケ用の飼料を調製した。また、比較のために市販のアスタキサンチン合成品を混合した飼料を調製した。調製した飼料中のカロテノイド色素を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて分析したところ、表12に示す組成であった。 体重約200gのキングサーモンを各試験区100尾として上記飼料を用い、3ヶ月間の飽食給餌を海面生簀で行った。飼育3ヶ月後に各試験区15尾をサンプリングして体重を測定し、その平均値を表13に示した。魚を延髄切断により即殺し、分光測色計で肉色を測定した15尾の分析値の平均値を表13に示した。測定後魚肉を1ヶ月間冷凍保存し、解凍後各試験区15尾の魚肉についてカロテノイド色素の含量分析を行い、その平均値を表14に示した。 合成品区の魚肉は赤色に偏った赤橙色であるのに対し、発酵品区の魚肉は穏やかで自然な赤橙色を呈していた。 配列番号1:nはa, c, g又はtを表す(存在位置:1350)。 アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合した飼料でサケ類を飼育することを特徴とする、穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産する方法。 飼料中のアスタキサンチン含有量が20〜100mg/kgであり、かつ、フェニコキサンチン含有量が5〜80mg/kgである請求項1に記載の方法。 飼料中のカンタキサンチン含有量が0.5〜25mg/kgである請求項1又は2に記載の方法。 飼料中のアドニキサンチン含有量が0.2〜40mg/kgである請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 生産したサケ類が、その魚肉中にアスタキサンチン及びフェニコキサンチンを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。 生産したサケ類が、その魚肉中にカンタキサンチン及び/又はアドニキサンチンを含むことを特徴とする請求項5に記載の方法。 生産したサケ類の魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するフェニコキサンチン含有量の比が5〜80%であることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。 生産したサケ類の魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するカンタキサンチン含有量の比が0.5〜20%であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の方法。 生産したサケ類の魚肉におけるアスタキサンチン含有量に対するアドニキサンチン含有量の比が0.2〜40%であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。 飼料中のカロテノイド色素が天然品を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 飼料中のカロテノイド色素が天然品及び化学合成品を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。 カロテノイド色素に含まれる天然品がバクテリアの発酵により生産されたものであることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。 バクテリアがParacoccus属に属するバクテリアである請求項12に記載の方法。 バクテリアは、配列番号1に記載の塩基配列と98%以上の相同性を有する塩基配列を含む、16SリボソームRNAに対応するDNAを有するバクテリアである請求項12に記載の方法。 バクテリアが、E−396株(FERM BP−4283)又はその変異株である請求項14に記載の方法。 サケ類がアトランティックサーモン、ニジマス、ギンザケ、キングサーモン、ベニザケ、カラフトマス、サクラマス、シロサケ、サツキマス及びブラウンマスからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。 サケ類がアトランティックサーモン、ニジマス、ギンザケ及びキングサーモンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項16に記載の方法。 請求項1〜17のいずれか1項に記載のサケ類を生産するための飼料。 アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合してなる、サケ類の養殖用飼料。 飼料中のアスタキサンチン含有量が20〜100mg/kgであり、かつ、フェニコキサンチン含有量が5〜80mg/kgである請求項19に記載の飼料。 飼料中のカンタキサンチン含有量が0.5〜25mg/kgである請求項19又は20に記載の飼料。 飼料中のアドニキサンチン含有量が0.2〜40mg/kgである請求項19〜21のいずれか1項に記載の飼料。 請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法により生産されたサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 魚肉又は卵におけるアスタキサンチン含有量に対するフェニコキサンチン含有量の比が5〜80%であることを特徴とする請求項23に記載のサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 魚肉又は卵におけるアスタキサンチン含有量に対するカンタキサンチン含有量の比が0.5〜20%であることを特徴とする請求項23又は24に記載のサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 魚肉又は卵におけるアスタキサンチン含有量に対するアドニキサンチン含有量の比が0.2〜40%であることを特徴とする請求項23〜25のいずれか1項に記載のサケ類又はその魚肉若しくはその卵。 【課題】天然魚に近い穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産することができるサケ類の肉色改善方法、肉色改善用飼料、及び該肉色改善方法により生産されたサケ類及びその魚肉の提供。【解決手段】アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合した飼料でサケ類を飼育することを特徴とする、穏やかな赤橙色の肉色を有するサケ類を生産する方法。【選択図】なし配列表20140306A16333全文3 アスタキサンチン、フェニコキサンチン、カンタキサンチン及びアドニキサンチンを少なくとも含むカロテノイド色素を混合してなる、サケ類の魚肉に赤橙系統の色を付与する肉色改善用飼料であって、当該飼料のカロテノイド色素は、Paracoccus属に属するバクテリアの発酵により産生された天然品を含むものであり、飼料中のアスタキサンチン含有量が20〜100mg/kg、フェニコキサンチン含有量が5〜80mg/kg、カンタキサンチン含有量が0.5〜25mg/kg、かつ、アドニキサンチン含有量が0.2〜20mg/kgである、前記飼料。 魚肉に付与する赤橙系統の色が、合成アスタキサンチンを添加した飼料で飼育されたサケ類の魚肉と比較して、a*/b*値(ここで、a*及びb*は、L* a* b*表色系で数値化された赤色度及び黄色度をそれぞれ表す)が小さいことを特徴とする、請求項1に記載の飼料。 バクテリアが、E−396株(FERM BP−4283)又はその変異株である、請求項1又は2に記載の飼料。


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