タイトル: | 公開特許公報(A)_ピリドキサールリン酸濃度の測定方法 |
出願番号: | 2014015203 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12Q 1/52,C12N 9/10 |
吉宗 一晃 太田 寛毅 吉村 徹 JP 2015139422 公開特許公報(A) 20150803 2014015203 20140130 ピリドキサールリン酸濃度の測定方法 学校法人日本大学 899000057 国立大学法人名古屋大学 504139662 特許業務法人アルガ特許事務所 110000084 高野 登志雄 100077562 中嶋 俊夫 100096736 村田 正樹 100117156 山本 博人 100111028 吉宗 一晃 太田 寛毅 吉村 徹 C12Q 1/52 20060101AFI20150707BHJP C12N 9/10 20060101ALI20150707BHJP JPC12Q1/52C12N9/10 7 OL 7 4B050 4B063 4B050CC03 4B050DD02 4B050FF01 4B050FF05E 4B050FF14E 4B050LL03 4B063QA01 4B063QQ93 4B063QR06 4B063QR57 4B063QS28 4B063QS36 4B063QX01 本発明は、ビタミンB6の活性型であるピリドキサールリン酸(PLP)の測定方法に関する。 ビタミンB6は、不足すると皮膚や神経障害を生じることが知られており、最近の研究ではビタミンB6の不足が心血管系疾患やがんの発症や進展に関与していることが報告されている。かかる観点から、ビタミンB6の活性型であるピリドキサールリン酸(PLP)濃度の測定が重要であり、PLPの測定技術が注目されている。 PLPの測定法としては、高速液体クロマトグラフ法、微生物を用いる方法、γ−アミノ酪酸合成酵素を用いる方法、ホモシステイナーゼを用いる方法(特許文献1)、チロシンデカルボキシラーゼを用いる方法、トリプトファナーゼを用いる方法などが知られている。特表2002−535009号公報 しかしながら、従来のPLPの測定法は、測定に数日間を要する方法であったり、血液中に存在するγ−アミノ酪酸、ホモシステイン、チロシン等の濃度に影響を受けるため、正確な測定ができないという問題があった。 従って、本発明の課題は、血液等の被検試料中に存在する成分の影響を受けることなく、正確かつ迅速にPLP濃度を測定する方法を提供することにある。 そこで本発明者は、新たなPLP測定技術を開発すべく種々検討してきたところ、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼに紫外線を照射すると不活性状態であるアポ酵素に変換されること、さらに当該アポ酵素はPLP活性型に変換されることを見出した。そして、被検試料に当該D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素を添加すれば当該アポ酵素がPLPにより直ちに活性型D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼに変換され、次いでPLPにより活性化されたD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質との反応により生成した物質の量を測定すれば、反応が血液等には存在しないD−アミノ酸とその基質の反応であるため、血液中に存在する成分の影響を受けることなく、正確かつ迅速にPLP濃度が測定できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔7〕を提供するものである。〔1〕次の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする被検試料中のPLP濃度の測定方法。(1)被検試料に、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質とを添加する工程(2)被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質との反応により生成した物質の量を測定する工程〔2〕D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質が、D−アミノ酸とαケトグルタル酸、又はD−グルタミン酸とピルビン酸である〔1〕記載のPLP濃度の測定方法。〔3〕被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質との反応により生じた物質が、ピルビン酸、αケトグルタル酸又はD−アミノ酸である〔2〕記載のPLP濃度の測定方法。〔4〕D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素が、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼに紫外線を照射することにより生成するものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のPLP濃度の測定方法。〔5〕被検試料中のD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼが、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と被検試料中のPLPにより生じるものである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のPLP濃度の測定方法。〔6〕D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質を含有するPLP測定試薬。〔7〕D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質が、D−アミノ酸とαケトグルタル酸、又はD−グルタミン酸とピルビン酸である〔6〕記載のPLP測定試薬。 本発明方法によれば、血液等の被検試料中のPLP濃度が、正確かつ迅速に測定できる。その結果、ビタミンB6欠乏状態を正確かつ迅速に判定することができ、心血管系疾患、がん、皮膚疾患、神経障害等の早期診断が可能となる。紫外線照射によるD−AATの失活を示す図である。活性測定は生成するピルビン酸をサリシルアルデヒド法で測定することにより行った。アポ化D−AATを用いたPLPの測定結果を示す。活性測定は生成するD−アラニンをD−AAO法で測定することにより行った。 本発明のPLP濃度測定方法は、次の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする。(1)被検試料に、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質とを添加する工程(2)被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質との反応により生成した物質の量を測定する工程 工程(1)に用いられる被検試料としては、哺乳類の血液、血漿、血清、臓器、母乳、糞尿及び、食品、輸液製剤等が挙げられ、特にヒトの血液、血漿、血清、臓器、母乳、糞尿が好ましい。 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素は、例えばD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼに紫外線を照射することにより容易に製造することができる。紫外線照射条件は、0℃で、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ1mg/mLあたり、1〜100W、1〜30時間であることが好ましい。 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ化は、タンパク変性剤である塩酸グアニジンや尿素処理では生じない。一方、フェニルヒドラジン添加によりPLPをヒドラゾンとして除くことでアポ酵素を生じる。しかし生成するアポ酵素から過剰のフェニルヒドラジンや生成するヒドラゾンを除く必要の無い点で紫外線照射は有利であることが考えられる。 用いられるD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとしては、微生物由来、植物由来でもよいが、微生物由来のものが入手の容易性、安定性の点で好ましい。さらに、好熱菌Bacillus属由来のD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼがより好ましい。 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質としては、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼが、D−アミノ酸とαケトグルタル酸からピルビン酸とD−グルタミン酸を生成する反応と、その逆反応であるD−グルタミン酸とピルビン酸からαケトグルタル酸とD−アミノ酸を生成する反応を触媒する酵素であるから、これらの成分が基質になる。ここで、D−アミノ酸としては、D−アラニン及びD−アスパラギン酸等が挙げられる。 より具体的な組み合わせとしては、D−アラニンとαケトグルタル酸、ピルビン酸とD−グルタミン酸、D−アスパラギン酸とαケトグルタル酸が挙げられる。 工程(1)における前記アポ酵素の添加量は、特に限定されないが、被検試料中に1〜1000μgとなる量が好ましく、10〜100μgとなる量がより好ましい。また、工程(1)における前記基質の添加量は、特に限定されないが、被検試料中に1〜100mM D−グルタミン酸及び0.1〜100mMピルビン酸となる量が好ましく、1〜10mM D−グルタミン酸及び0.1〜10mMピルビン酸となる量がより好ましい。また、工程(1)は、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼが作用する条件が好ましく、例えばpH8.0、37℃の条件で行うのが好ましい。 工程(1)において、被検試料中にPLPが存在すれば、前記アポ酵素は、PLPの濃度依存的に直ちにD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(活性型)に変換される。このためアポトリプトファナーゼを用いたPLP測定法の様に予め20分間放置してPLPをアポ酵素に結合させる操作は不要である。一方、被検試料中にPLPが存在しなければ、前記アポ酵素は活性型には変換されない。 従って、工程(1)によれば、被検試料中のPLPの濃度依存的にD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼが生成していることになる。 工程(1)において、前記アポ酵素と、前記基質になる物質とは、同時に添加してもよいが、まず前記アポ酵素を添加した後、1分以内に、より好ましくは直後に前記基質になる物質を添加するのが好ましい。 そこで、工程(2)において、被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼと前記基質になる物質との反応により生成した物質の量(生成物質量)を測定すれば、被検試料中のPLP濃度が測定できる。 ここで、生成物質は、前記基質とD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとの反応により生じるD−アミノ酸、ピルビン酸又はαケトグルタル酸であり、これらの生成物質量を測定すればよい。 ピルビン酸の測定には、サリシルアルデヒド法、すなわち強アルカリ下でサリシルアルデヒドを反応させて得られる生成物をOD480で測定すればよい。また、D−アラニンの測定には、D−アミノ酸オキシダーゼ法、すなわちD−アラニンをD−アミノ酸オキシダーゼで酸化し、生成する過酸化水素を4−アミノアンチピリン法で測定すればよい。これらの測定法は、全て公知である。 生成物質量とPLP量とは、相関しているので、予め検量線を作成しておき、被検試料中のPLP濃度を計算することができる。 本発明のPLP濃度測定方法を実施するにあたっては、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質とを含有するPLP測定試薬を使用するのが好ましい。ここで、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素及びD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質としては、いずれも前記のものが使用できる。当該試薬には、前記生成物質の測定試薬、緩衝剤、標準試薬、プロトコール(操作手順書等)等が含まれる。 次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。実施例1(1)D−AATの調製方法 好熱菌Bacillus sp. YM−1株由来D−アミノ酸トランスアミナーゼ(D−AAT)遺伝子発現プラスミド(Fuchikami Y. et al., J. Biochem., 124, 905-910 (1998))でBL21を形質転換させ、得られた菌体をLB培地で培養し、0.1mMイソプロピル−β−チオガラクトピラノシドを加えD−AATを発現誘導させた。この菌体を超音波破砕後、遠心上清をTALON(Cobalt)レジンを用いたアフィニティクロマトグラフィーにより精製し、透析を行った後、限外濾過膜を用いてD−AATを濃縮した。(2)D−AATのアポ化方法 精製した12mg/mLのD−AAT溶液0.1mLを1.5mLの遠心チューブに入れ、氷上で15W紫外線ランプにより紫外線照射しアポ化させた。変性剤の影響は精製酵素に尿素、グアニジン塩酸塩及び、エタノールをそれぞれ7.2M、5.4M、90%になるように添加し、4℃で1時間放置した。(3)活性測定方法 D−AATはD−アラニンとオキソグルタル酸を基質としてピルビン酸とD−グルタミン酸を生成する反応を可逆的に触媒する酵素である。このため二通りのD−AATの活性測定方法が知られている。サリシルアルデヒド法では0.1M D−アラニンと10mM α−ケトグルタル酸を基質として生成するピルビン酸を強アルカリ下でサリシルアルデヒドと反応させて得られる生成物をOD480で測定した(Fuchikami Y. et al., J. Biochem., 124, 905-910 (1998))。D−アミノ酸オキシダーゼ法(DAAO法)では10mMピルビン酸と40mM D−グルタミン酸を基質として生成するD−アラニンをD−アミノ酸オキシダーゼで酸化し、生成する過酸化水素を4−アミノアンチピリン法(Miyamoto K. et al., 衛生化学, 24, 175-181 (1978))で測定することで行った。 精製酵素はSDS−PAGEで95%以上の純度であった。D−AATは塩酸グアニジンや尿素などの変性剤でほとんど失活しないものの、8時間の紫外線照射によりほぼ失活した(図1)。この失活した酵素に1mM PLPを添加したところ、失われた活性は一部回復した。このことから紫外線照射による失活は紫外線照射によりPLPが破壊されD−AATの一部がアポ化したためであると考えられた。このアポ化D−AATに既知濃度のPLPを添加して活性測定したところ、その比活性と10nMから40nMまでのPLP濃度が直線関係にある検量線を作成することができた(図2)。この方法においてPLPの検出限界値が健常人の血漿中PLP濃度よりも低いため、PLP血漿中濃度の迅速診断に応用できる。 次の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする被検試料中のPLP濃度の測定方法。(1)被検試料に、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質とを添加する工程(2)被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質との反応により生成した物質の量を測定する工程 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質が、D−アミノ酸とαケトグルタル酸、又はD−グルタミン酸とピルビン酸である請求項1記載のPLP濃度の測定方法。 被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質との反応により生じた物質が、ピルビン酸、αケトグルタル酸又はD−アミノ酸である請求項2記載のPLP濃度の測定方法。 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素が、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼに紫外線を照射することにより生成するものである請求項1〜3のいずれかに記載のPLP濃度の測定方法。 被検試料中のD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼが、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と被検試料中のPLPにより生じるものである請求項1〜4のいずれかに記載のPLP濃度の測定方法。 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質を含有するPLP測定試薬。 D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質が、D−アミノ酸とαケトグルタル酸、又はD−グルタミン酸とピルビン酸である請求項6記載のPLP測定試薬。 【課題】血液等の被検試料中に速剤する成分の影響を受けることなく、正確かつ迅速にPLP濃度を測定する方法の提供。【解決手段】次の工程(1)及び(2)を含むことを特徴とする被検試料中のPLP濃度の測定方法。(1)被検試料に、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼのアポ酵素と、D−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質とを添加する工程(2)被検試料中で生成したD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼとD−アミノ酸アミノトランスフェラーゼの基質になる物質との反応により生成した物質の量を測定する工程【選択図】なし