生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_脳内アミノ酸量の調整剤
出願番号:2014008576
年次:2015
IPC分類:A61K 31/198,A61P 43/00,A61P 25/18,A61P 25/24,A61P 25/22


特許情報キャッシュ

太田 深秀 功刀 浩 小澤 隼人 大久保 勉 JP 2015137243 公開特許公報(A) 20150730 2014008576 20140121 脳内アミノ酸量の調整剤 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 510147776 太陽化学株式会社 000204181 細田 芳徳 100095832 太田 深秀 功刀 浩 小澤 隼人 大久保 勉 A61K 31/198 20060101AFI20150703BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 25/18 20060101ALI20150703BHJP A61P 25/24 20060101ALI20150703BHJP A61P 25/22 20060101ALI20150703BHJP JPA61K31/198A61P43/00 111A61P25/18A61P25/24A61P25/22 2 OL 8 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206GA18 4C206GA22 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA02 4C206ZA12 4C206ZA15 4C206ZA18 4C206ZC02 本発明は、脳内アミノ酸量の調整剤に関する。より詳しくは、脳内におけるアミノ酸量を安定して維持する調整剤に関する。 テアニンは緑茶に含まれる成分であり、リラックス効果を有することが知られている。また、テアニンは神経伝達物質であるグルタミン酸に構造が類似したアミノ酸であり、カイニン酸型やAMPA型、NMDA型のグルタミン酸受容体に結合するという特性を有する。このような特性を有するテアニンについて、各種検討が行われている。 動物実験を用いた報告としては、例えば、非特許文献1では、テアニンがラット脳内のセロトニン量、ドーパミン量、GABA量に影響して、抗不安様作用や抗うつ様作用を示すことが報告されている。また、ラットを用いた実験より、テアニンの抗不安様作用は十分ではないとの報告(非特許文献2参照)や、マウスを用いた強制水泳テストや尾懸垂テストにより、テアニンが抗うつ様作用を示すとの報告(非特許文献3参照)もある。 また、臨床試験においては、ヒトの脳波検査によりテアニンによりα波が増加することが確認されている(非特許文献4参照)。非特許文献5では、急性ストレス負荷時の心拍数や唾液中のイムノグロブリンA応答をテアニンが減少させて、生理学的なストレス反応を低減させることが報告されている。 ところで、プレパルスインヒビション(PPI)とは、先行する弱い感覚刺激(プレパルス)によって突然の強い感覚刺激(パルス)に対する驚愕反応が抑制されることをいう。このPPIを用いた生理学的検査は、統合失調症における感覚情報処理障害の神経生理学的な検査技法として提案されている(非特許文献6参照)。例えば、本発明者らは、アジア人種の統合失調症患者においてPPI抑制率が低下していることを初めて報告した(非特許文献7参照)。また、非特許文献8において、MK−801(NMDA型グルタミン酸受容体の拮抗薬)で誘導された感覚情報処理障害を呈するマウスにテアニンを投与することで、PPI抑制率の低下が改善されることを報告している。 一方、統合失調症においては、グルタミンとグルタミン酸の脳内総量が、慢性期には健常者より低下し、急性憎悪期には健常者より上昇することが知られている(非特許文献9、10参照)。また、統合失調症の治療薬として用いられる抗精神薬は、神経伝達物質であるドーパミンの受容体に対するアンタゴニストとして働くものがよく用いられ、その神経伝達を遮断することによる効果が期待されている。Yamada T,et al.,Life Sci 81(2007)1247−1255Heese T,et al.,AANAJ 77(2009)445−449Yin C,et al.,Phytother Res 25(2011)1636−1639Nobre AC,et al.,Asia Pac J Clin Nutr 17 Suppl 1(2008)167−168Kimura K,et al.,Biol Psycol 74(2007)39−45Cadenhead KS,et al.,Cambridge University Press(1999)231−244Kunugi H,et al.,Neurosci Res 59(2007)23−28Wakakabashi C,et al.,Psychopharmacology(Berl) 219(2011)1099−1109Ota M,et al.,Acta Psychiatr Scand 126(2012)72−78Theberge J,et al.,Am J Psychiatry 160(2003)2231−2233 従来技術より、テアニンが、抗不安様作用や抗うつ様作用等の各種効果を示し、また、統合失調症の感覚情報処理障害においても、PPIの抑制率低下に功を奏することが明らかになっている。しかしながら、統合失調症の脳内におけるアミノ酸量の変動とテアニンの関係は未だ不明である。 また、統合失調症の治療に用いられるドーパミンアンタゴニストは、ドーパミン受容体を完全にブロックするため投与量が多くなった場合に副作用が発生することから、新しいタイプの治療薬が求められている。 本発明の課題は、脳内におけるアミノ酸量を安定して維持する調整剤を提供することにある。 本発明は、テアニンを含有することを特徴とする、脳内アミノ酸量の調整剤に関する。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、脳内におけるアミノ酸量を安定して維持することができるという優れた効果を奏するものである。図1は、テアニン投与前後におけるグルタミン・グルタミン酸総量の変化量を示す図である。左図が左前頭葉皮質下白質における結果を、右図が左下頭頂葉皮質下白質における結果を示す図である。図2は、グルタミン・グルタミン酸総量とテアニン投与による総量の変化率の関係を示す図である。左図が左前頭葉皮質下白質における結果を、右図が左下頭頂葉皮質下白質における結果を示す図である。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、テアニンを有効成分として含有することを特徴とする。ここで、脳内アミノ酸としては、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン酸、GABA、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、及びメチオニンからなる群より選ばれる1種又は2種以上が挙げられるが、好ましくはグルタミンとグルタミン酸のことであり、脳内アミノ酸量としては、前記アミノ酸群の含有量の総量、好ましくはグルタミンとグルタミン酸の含有量の総量のことを意味する。また、脳内としては領域に特に限定はなく、例えば、大脳皮質や白質、基底核領域を含む領域であればよく、前頭葉、頭頂葉等が例示される。即ち、本発明における脳内アミノ酸量としては、例えば、前頭葉皮質下白質や頭頂葉皮質下白質内に存在するグルタミンとグルタミン酸の含有量の総量を意味する。 グルタミン酸は、中枢神経系において興奮性神経伝達物質として機能する一方で、過剰に存在した場合は神経細胞死を導く強い神経毒性を発揮する。また、脳内においてグルタミンと相互変換し、例えば、シナプス間隙にあるグルタミン酸がアストロサイトに取り込まれた後、グルタミン合成酵素によってグルタミンに変換され、次いで、合成されたグルタミンがプレシナプスの終末に戻されて、そこでグルタミナーゼによってグルタミン酸に変換されるというグルタミン・グルタミン酸回路を形成している。よって、グルタミンとグルタミン酸の総量が安定した状態にある場合には、グルタミン・グルタミン酸回路が円滑に進行し、かつ、神経伝達が良好に行われるが、グルタミンとグルタミン酸の総量が少なくなる又は多くなると、神経伝達に問題が生じることになり、その結果、各種の精神疾患症状を呈することとなる。 そこで、本願発明では、グルタミンとグルタミン酸の総量に着目して鋭意検討した結果、テアニンを投与することにより、グルタミンとグルタミン酸の脳内における総量を安定に保つことが出来ることを見出した。その詳細なメカニズムは不明であるが、テアニンが脳内において、グルタミン酸放出量をコントロールすることにより、グルタミンとグルタミン酸の総量を調整することが可能になると推定される。なお、グルタミンとグルタミン酸の脳内における総量としては、例えば、ヒト脳の場合、0.1mM〜500mMが好ましく、1mM〜50mMがより好ましい。 本発明におけるテアニンは、茶の葉に含まれているグルタミン酸誘導体であり、茶の旨味の主成分である。また、調味を用途とする食品添加物として使用されている。その安全性についても、マウスを用いた急性毒性試験において2g/kg経口投与による死亡例はなく、一般状態及び体重等に異常は認められない。このように、テアニンは非常に安全な物質である。 テアニンは、公知の方法に従って入手することが可能である。例えば、有機合成法(Chem.Pharm.Bull.,19(7)1301−1307(1971))、発酵法(特開平5−68578号公報、特開平5−328986号公報)又はこれらの方法におけるエチルアミンをエチルアミン塩酸塩等のエチルアミン誘導体を用いた変法、ピログルタミン酸をエチルアミン塩酸塩と反応させる方法(特開平9−263573号公報)、植物細胞培養法(特開平5−123166号公報)、茶葉より抽出する方法等が挙げられ、特に限定するものではない。これらのなかでは、大量又は安価にテアニンを得ることができる発酵法が好ましい。ここでいう、茶葉とは、緑茶、ウーロン茶、紅茶等、茶(カメリア・シネンシス)を起源とする各種茶の葉を意味する。 テアニンは、L−テアニン、D−テアニン、DL−テアニンのいずれも使用可能であるが、L−体は食品添加物にも認められており、経済的にも利用しやすいため、本発明においては、L−体が好ましい。また、本発明におけるテアニンは、精製品、粗精製品、茶抽出エキス等いずれの形状でもよい。 また、テアニンは、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の成分と併せて使用できる。他の成分としては特に限定されるものではないが、例えば、ミネラル、植物性素材、動物性素材、機能性素材、ビタミン類、甘味料等が挙げられる。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、テアニンが血液脳関門を通過して脳内に送達できることから、循環血中に移行するのであれば、その投与形態は限定されない。なお、本明細書において、投与とは、投与、摂取の両態様を含むものとして用いられる。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤の投与を要する疾患としては、脳内アミノ酸量を調整することにより治療効果がみられる疾患であれば特に限定はないが、例えば、統合失調症、双極性障害、うつ病、自閉症等が挙げられる。また、統合失調症においては、陽性症状、例えば、幻覚、妄想、概念の統合障害、興奮、猜疑心、敵意、誇大性等を示す場合に、双極性障害においては躁状態を示す場合に、それぞれ脳内アミノ酸量が高くなることから、本発明の脳内アミノ酸量の調整剤を投与することで脳内アミノ酸量を調整することが可能となって、前記症状の改善が期待されると考えられる。また、うつ病においては抑うつ状態を示す場合に、脳内アミノ酸量が低くなることから、本発明の脳内アミノ酸量の調整剤を投与することで脳内アミノ酸量を調整することが可能となって、前記症状の改善が期待されると考えられる。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、テアニンが腸管から吸収され、また、消化管内で安定であることから、例えば、テアニンに、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、公知の方法に従って、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化したものとして経口投与することもできる。また、注射剤により投与する方法、経皮剤により吸収させる方法、飲食品等の形態で経口摂取してもよく、これらの場合でも、前記経口投与の場合と全く同様の効果が発揮され得る。即ち、本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品、又は飲食品(健康食品)として用いることが出来る。 また、前記形態におけるテアニンの含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、本発明の所望の効果の発現が得られ得るような量であればよく、特に限定されるものではない。本発明の脳内アミノ酸量の調整剤中のテアニン含有量としては通常1〜100重量%程度である。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、その形態に応じた適当な投与方法で投与される。投与方法もテアニンが血液脳関門を通過できることから、循環血中を介して送達できるのであれば特に限定はなく、例えば内用、外用及び注射により投与することができる。注射の場合は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、皮内などに投与し得、外用の場合は、例えば、座剤等の外用剤として、その適する投与方法により投与すればよい。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤の投与量は、その形態、投与方法、使用目的及び当該調整剤の投与対象である患者又は患獣の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではない。例えば、本発明におけるテアニンの有効ヒト摂取量としては、1日当たり、好ましくは0.1〜500mg/kg体重、より好ましくは1〜300mg/kg体重、さらに好ましくは2〜100mg/kg体重である。また、投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、又は数回に分けて行ってもよい。投与期間も任意である。 本明細書中において本発明の調整剤の投与対象とは、好ましくは脳内アミノ酸量の調整を必要とするヒトであるが、ウシ、ウマ、ヤギ等の家畜動物、イヌ、ネコ、ウサギ等のペット動物、又は、マウス、ラット、モルモット、サル等の実験動物であってもよい。 以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。実施例1 酵素法によるテアニンの製造 グルタミン21.9g及び塩酸エチルアミン28.5gを0.05Mホウ酸緩衝液(pH9.5)0.5L中、0.3Uグルタミナーゼ(天野製薬社製)にて30℃、22時間反応させた。次いで、反応液をDowex 50×8、Dowex 1×2(共に室町化学工業社製)カラムクロマトグラフィーにかけ、これをエタノール処理することにより、反応液から目的物質を単離した。 当該物質のL−テアニンの確認は、この単離物質をアミノ酸アナライザー、ペーパークロマトグラフィーにかけ、標準物質と同じ挙動を示すことにより行った。塩酸またはグルタミナーゼで加水分解処理を行うと、1:1の割合で、グルタミン酸とエチルアミンを生じた。このように、単離物質がグルタミナーゼによって加水分解されたことから、エチルアミンがグルタミン酸のγ位に結合していたことが示される。また、加水分解で生じたグルタミン酸がL−体であることも、グルタミン酸デヒドロゲナーゼにより確認した。以上より8.5gのL−テアニンが得られた。試験例1 慢性の統合失調症と診断された患者17名(男性9名、女性8名)に、テアニンを250mg/dayで8週間服用させた。 服用前と8週間服用後に、Magnetic resonance spectroscopy(Siemens社製)で脳内のグルタミンとグルタミン酸の総量を測定した。結果を図1、2に示す。図2におけるP値は偏相関の有意水準であり、ボンフェローニの補正によりP<0.025を有意とみなす。なお、健常者22名(男性11名、女性11名)について、グルタミンとグルタミン酸の総量を同様にして測定したところ、左前頭葉皮質下白質では7.0±1.3(digit scale)、左下頭頂葉皮質下白質では6.5±0.9(digit scale)であった。 図1、2より、テアニン投与によって、投与前のグルタミン・グルタミン酸総量が多かった患者では多いほどその総量が低下し、一方、総量が少なかった患者では少ないほどその数量が増加することが分かった。 テアニンの投与によって、脳内のグルタミン・グルタミン酸総量が健常者の平均値に近づいたことから、グルタミン・グルタミン酸総量が適切な量となり、円滑な神経伝達が行われる状態に近づいたものと推察される。 以下に処方例を挙げる。なお、各成分の使用量(単位)は特に断りのない限り、「重量%」を示す。 本発明の脳内アミノ酸量の調整剤は、脳内におけるアミノ酸量を安定して維持することができることから、例えば、統合失調症の改善に好適に使用することができる。 テアニンを含有することを特徴とする、脳内アミノ酸量の調整剤。 脳内アミノ酸が、グルタミン及びグルタミン酸である、請求項1記載の調整剤。 【課題】脳内におけるアミノ酸の量を安定して維持するための調整剤を提供すること。【解決手段】テアニンを含有することを特徴とする、脳内アミノ酸量調整剤であって、好ましくはグルタミン、グルタミン酸、グリシン、アスパラギン酸、GABA、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、及びメチオニンからなる群より選ばれる1種又は2種以上のアミノ酸の含有量の総量の調整剤、より好ましくはグルタミンとグルタミン酸の含有量の総量の調整剤。【選択図】なし


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