生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_非アルコール性脂肪肝抑制剤
出願番号:2014008238
年次:2015
IPC分類:A61K 36/899,A61K 36/00,A61P 1/16,A61P 3/06,A61P 3/04


特許情報キャッシュ

柴山 良彦 長野 正信 橋口 和典 菱田 直人 JP 2015137237 公開特許公報(A) 20150730 2014008238 20140121 非アルコール性脂肪肝抑制剤 国立大学法人北海道大学 504173471 坂元醸造株式会社 592022372 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 柴山 良彦 長野 正信 橋口 和典 菱田 直人 A61K 36/899 20060101AFI20150703BHJP A61K 36/00 20060101ALI20150703BHJP A61P 1/16 20060101ALI20150703BHJP A61P 3/06 20060101ALI20150703BHJP A61P 3/04 20060101ALI20150703BHJP JPA61K35/78 UA61K35/78 YA61P1/16A61P3/06A61P3/04 6 1 OL 11 4C088 4C088AB74 4C088AC04 4C088CA25 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA70 4C088ZA75 4C088ZC33 本発明は、黒酢由来成分を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤に関する。さらに詳しくは、黒酢由来成分として、酢酸を除いた黒酢を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤に関する。 黒酢とは、JAS法により規定される米酢の一種であり、陶器の壷に蒸し米、麹、水を入れ、糖化、アルコール発酵、酢酸発酵までが1つの壷で進行し、さらに熟成させることで得られる独特の深い味わいを有する酢である。 黒酢は、鹿児島県霧島市で古くから製造され、昔はもっぱら調味料として用いられていたが、近年は黒酢の血圧を下げる効果や血液をサラサラにする効果が謳われ、人々の健康志向の高まりとともに黒酢は希釈して飲用されるようになってきた。また、さらに、一部の黒酢入り飲料は特定保健用食品としての認可も受けている。 最近では、黒酢について、脂質代謝改善作用、赤血球変形能改善作用、血圧調節作用、血糖調節作用、抗酸化作用、肥満抑制作用及び血中のアディポネクチン濃度増加促進作用など様々な作用が報告されてきた(特許文献1,2,3)。また長寿をもたらす遺伝子であるSirt1関連遺伝子の発現が増進することも報告されている(特許文献4)。 非アルコール性脂肪肝は糖尿病、脂質代謝異常症、高血圧など、いわゆる生活習慣病とともに欧米先進国やわが国で増加している。この脂肪肝のなかで、炎症や線維化を伴う非アルコール性脂肪肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis:NASH)は肝硬変や肝癌を生じることがあり、予後不良の脂肪肝である。よって脂肪肝の発症を防ぐことはNASHの発生防止のために重要な課題となっている。 非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の薬物療法として確立したものはなく、肥満や糖尿病を基礎にした脂肪肝では,運動やカロリー制限,あるいは血糖コントロールにより脂肪肝は著明に改善することが知られている。NASHの治療としては、ビタミンE、ウルソデオキシコール酸など抗酸化薬を含む種々の薬物療法が試みられているが、いまだ一定の見解は得られていない(非特許文献1)。NASHには脂質代謝異常改善薬が有効である可能性が考えられるが、脂質代謝異常は改善できても脂肪肝を改善するあるいは改善できないといういくつかの報告があり(非特許文献2)、脂肪肝に対する脂質代謝異常改善薬の有効性は定まっていない。非アルコール性脂肪肝炎に対する治療薬の開発が強く望まれているが、治療に対する薬剤の貢献度、治療の満足度とも30%以下(非特許文献3)であり、新薬の開発が極めて遅れている領域の1つである。 また、アンドロゲンのdehydroepiandrosterone (DHEA) は性ステロイドのエストロゲンやテストステロンの前駆体ステロイドであり、その硫酸化体で相互変換し得るDHEA-sulfate(DHEA-s) は抗肥満、抗糖尿病、発癌、動脈硬化、記憶維持、骨粗鬆症などに対して有益作用を持ち、老化と関与するバイオマーカーの1つとして知られている(非特許文献4)。よって、DHEA-Sの低下を抑制できれば、老化に伴う諸症状を改善できる可能性が期待できる。ここで、黒酢に認知機能低下抑制作用があることは知られている(特許文献5)。しかし、認知機能低下は様々な要因が複雑にからみあって起こると考えられているところ、当該文献には、DHEA-Sとの関連性については全く示唆されていない。 また、高齢期における体重と生存に関する多くの研究が報告されており、若年期での肥満は死亡リスクを上昇させるが、逆に高齢期での体重低下は死亡率を上昇させることが報告されている(非特許文献7,8)。高齢期での体重過多・肥満は有害ではない、もしくは死亡リスクを下げる効果があることが示唆されている(非特許文献8)。しかしながら、高齢期における体重低下を抑制する方法は不明である。特開2005−263760号公報特開2007−29020号公報特開2011−168540号公報特開2013−133279号公報特開2013−060380号公報新臨床内科学 第9版 8.脂肪肝,非アルコール性脂肪肝炎 医学書院(2009年)Lipid-lowering agents in nonalcoholic fatty liver disease and steatohepatitis: human studies. Nseir W. et al., Dig Dis Sci. 2012; 57: 1773-81.医薬産業政策研究所.「アンメット・メディカル・ニーズに対する医薬品の開発・承認状況」政策研ニュースNo.34 (2011年11月)Development of a Model of Functional Endocrine Age in Japanese People -Serum Dehydroepiandrosterone-sulfate (DHEA-s) Concentration as an Index of Aging-. Nomoto K. et al., Anti-Aging Medicine, 2011; 8 : 69-74.The use of body surface area as a criterion of drug dosage in cancer chemotherapy. PINKEL D. Cancer Res. 1958; 18: 853-6.Nutrient control of glucose homeostasis through a complex of PGC-1alpha and SIRT1. Rodgers JT et al., Nature. 2005; 434:113-8.Body mass index, change in body mass index, and survival in old and very old persons. Dahl AK et al., J Am Geriatr Soc. 2013; 61:512-8.Survival in older men may benefit from being slightly overweight and centrally obese--a 5-year follow-up study in 4,000 older adults using DXA. Auyeung TW et al., J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2010; 65:99-104. 本発明は、食品としての安全性が確認されている黒酢由来成分の摂取により、非アルコール性脂肪肝の発症を抑制し、老化のバイオマーカーの1つであるdehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)の低下および/または高齢期における体重低下を抑制することを課題とする。 本発明は、黒酢を有効成分とする、非アルコール性脂肪肝発症の抑制剤、老化に伴うDHEA-Sの低下抑制剤および/または高齢期における体重低下抑制剤を提供する。特に、黒酢から酢酸成分を除いたいわゆる黒酢特有の成分を有効成分とする、非アルコール性脂肪肝発症の抑制剤、老化に伴うDHEA-Sの低下抑制剤および/または高齢期における体重低下抑制剤を提供する。 黒酢は、食品としての安全性が確認されているため、黒酢を有効成分とする本発明の剤を摂取することにより、副作用もなく非アルコール性脂肪肝発症のリスクを抑制し、老化に伴うDHEA-Sの低下および/または高齢期における体重低下を抑制することが出来る。また、本発明の剤は黒酢を有効成分とすることから、経済的でもある。肝臓の肉眼像およびヘマトキシリン・エオジン染色した組織像 a: 高脂肪食投与群マウス肝臓に発生した脂肪肝のマクロ像 b: 脂肪肝の拡大組織像、aの矢印領域を拡大した。脂肪肝の組織では大小の空胞が見られ、肝細胞の核は一端に圧排され、胞体が腫大化している。肝細胞索の構造が不明化し、類洞も狭くなっている。 c: 黒酢濃縮液投与群マウスにおける正常肝臓のマクロ像 d: 正常肝臓のミクロ像、cの矢印領域を拡大した。 e:高脂肪食投与群マウスに生じた脂肪肝と脂肪腫の肉眼像。上部2つの像は脂肪腫を、下部2つの像は脂肪肝病変を示す。ヘマトキシリン・エオジン染色した肝細胞癌の組織像 a:高脂肪食投与群マウス肝臓に発生した肝細胞癌のマクロ像 b: 肝細胞癌の拡大組織像、 aの矢印領域を拡大した。異型性の強い肝細胞類似の腫瘍細胞が正常組織内に島状に増殖している。 c: aの肝細胞癌の小腸への転移巣。bに認められる島状の同様な腫瘍細胞が認められる d:高脂肪食投与群マウスで認められた脂肪腫および肝細胞癌、右側には胞体が肥大した脂肪腫が、左側には異型性の強い肝細胞癌が認められる。体重の時間変化 各群の平均値を示す。毎週ごとの体重変化を示した。高脂肪食投与群:HC、本試験用飼料投与群:BV、レスベラトロール投与群:Res、標準食投与群:SDとして示す。飼育11週目から23週目まで、25週から37週日目では、有意な増加抑制が確認された。飼育76週から96週目まで、高脂肪食飼料摂取マウスと比較して、本試験用飼料摂取マウスの体重の有意な低下抑制効果が認められた。(Tukey法) 本発明において、有効成分である「黒酢」とは、JAS法により規定される米酢の一種であり、米に麹と水を加えて発酵・熟成させることにより製造される米黒酢を意味する。米黒酢は、酢1リットルにつき180グラム以上の米を使用して製造されること、および、少なくとも半年間という長い熟成期間を経ることにより褐色または黒褐色を帯びるようになっていること、により他の穀物酢から区別される。特に、玄米を3%削った3分搗き米に種麹をまいたものである「混ぜ麹」、3分搗き米を蒸した「蒸し米」、および水、をこの順序で陶器の壺に入れ、最後に麹で水面を均一に覆って、壺にふたをし、半年以上置いて発酵させ、さらに半年以上置いて熟成させることにより製造される米黒酢が好ましい。本発明において好ましく使用できる黒酢は、例えば坂元醸造株式会社から入手できる。黒酢は約4%の酢酸を含み、その他、タンパク質、オリゴペプチド、アミノ酸、有機酸等を含んでいると考えられるが、詳しい組成は理解されていない。 本発明において、有効成分である「酢酸成分を除去した黒酢」とは、少なくとも1回の凍結乾燥などの処理により黒酢から酢酸およびその他の揮発性成分を除去したものをいう。凍結乾燥処理の手段は、当業者に知られるいずれかのものを適宜選択すればよい。例えば、東京理科器械の凍結乾燥機FD−81により凍結乾燥処理を行うことができる。酢酸をより完全に除去するためには、黒酢の凍結乾燥処理により得られた粉末を水に溶解し、その溶液を再び凍結乾燥処理するという操作を繰り返すことが好ましい。当該操作は例えば1回、2回、3回、または4回繰り返すことができる。一般的な凍結乾燥処理ではなく他の種類の処理によって得られたものであっても、揮発性成分が除去されたものという点で実質的に同一であれば、本発明の凍結乾燥物に含まれるとする。このように「酢酸成分を除去した黒酢」は、黒酢から酢酸およびその他の揮発性成分を除いたものであるから、本明細書では、特にことわらない限り「黒酢濃縮物」と同義で用いられることがあり、また、「黒酢凍結乾燥物」が実際の使用例として挙げられる。 黒酢凍結乾燥物は、凍結乾燥処理の直後は粉末の状態であるが、その粉末を水に溶解することにより、酢酸およびその他の揮発性成分を含まないが黒酢のそれ以外の成分を含む水溶液が得られる。この黒酢凍結乾燥物の水溶液を、黒酢凍結乾燥物水溶液と呼ぶ。溶解に用いる水の体積が凍結乾燥前の黒酢の体積よりも小さい場合は、得られた水溶液を特に「黒酢濃縮液」と呼ぶ。例えば、1000 mlの黒酢を上記のとおり凍結乾燥処理し、最終的に100 mlの水に溶解して得られた溶液は、黒酢凍結乾燥物を含有する黒酢濃縮液であり、この場合は特に黒酢10倍濃縮液ということもできる。 「黒酢由来成分」とは、黒酢に含有されており黒酢から分離され得るあらゆる成分を意味する。本明細書では特に、黒酢凍結乾燥物に含有されている成分や、黒酢濃縮液の画分の凍結乾燥物を黒酢由来成分と呼ぶことがある。なお、「成分」という語は単一の化合物を必ずしも意味するものではなく、多数の化合物からなる混合物を成分と呼ぶこともある。 本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤には、黒酢、黒酢凍結乾燥物または黒酢由来成分を単独で含んでいてもよいが、黒酢、黒酢凍結乾燥物または黒酢由来成分の有効成分としての効果を完全に損なわない限り他の成分を追加で含んでいてもよいことは当業者には当然に理解される。医薬製剤または食品加工の分野で知られる賦形剤、希釈剤、溶剤、増粘剤、乳化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、調味料、香料等が、追加の成分の例として挙げられる。当業者は、製剤や投与の様式に応じて適切な追加成分を選択することができる。本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤の製造において、黒酢凍結乾燥物(または黒酢由来成分)は、粉末の状態で使用されてもよいし、溶液、例えば水溶液、特に黒酢濃縮液の状態で使用されてもよい。 本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤の効果は、本発明の剤の投与により非アルコール性の脂肪肝の発生を抑制する効果、発生のリスクを低減できる効果、脂肪肝炎の予防効果などをいう。本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤は、高脂肪食の摂取に伴い発生する脂肪肝に特に有効であることが確認されている。したがって、本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤を投与すれば、たとえ高脂肪食を長期にわたって摂取するような個体においても、脂肪肝発生のリスクを抑え、脂肪肝を予防することができる。 また、本発明のdehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤の効果は、本発明の剤の投与により、DHEA-Sの低下を抑制する効果をいう。低下の抑制とは、本来の低下よりもその低下の程度が少なくてすむことをいい、具体的には、低下せずにDHEA-Sのレベルが維持されることや、DHEA-Sが低下せずに増えることをも含む。DHEA-Sの低下は、加齢に伴い低下することが知られているため、本発明の剤は、加齢に伴うDHEA-S低下抑制剤として好適に用いることができる。 また、本発明の高齢期の体重低下抑制剤の効果は、本発明の剤の投与により、いわゆる高齢期における体重の減少を抑制する効果をいう。いわゆる高齢期は、ヒトの場合、65歳以上、あるいは70歳以上をいう。低齢期における肥満は健康によくないとされているが、高齢期は逆に痩せているほうが死亡のリスクが高まることが知られている(非特許文献7,8等)。本発明において、黒酢には、高脂肪食を長期に摂食した場合、低齢期や中年期では体重の増加を抑制し、高齢期では体重の低下を抑制するという理想的な体重コントロール作用があることを明らかにした。すなわち、本発明の剤は、低齢期および中年期における肥満抑制剤として、また、高齢期における体重低下抑制剤として、あるいは、ヒトの健康状態に応じた体重コントロール剤として好適に用いることができる。 本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤を投与する対象となる個体は、哺乳類ならばどのような種でもよく、特にマウスまたはヒトが好ましい。総摂取カロリーに占める脂質由来の割合が3割になるような、高脂質食を摂取する個体が対象として望ましい。 これらの個体の例としては、脂質代謝異常症の患者、糖尿病の患者、メタボリックシンドロームの患者、およびこれらの疾患もしくは障害にかかるリスクが高まっており予防措置を必要とする個体、ならびに肥満の個体、年齢的に中年以上の個体が挙げられる。 本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤を投与する方法については特段の制限はないが、経口摂取が特に好ましい。 本発明の非アルコール性脂肪肝抑制剤、dehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤および高齢期における体重低下抑制剤を投与する場合の有効成分の量については、特段の制限はない。好ましい投与量の一例は、1日につき体表面1平方mあたり18mlの黒酢に相当する量(例えばマウスの場合ならば1日につき7.5mlの黒酢に相当する量、ヒトの場合ならば1日につきおよそ30mlの黒酢に相当する量)であり、適宜これより多くしてもよいし、少なくしてもよい。例えば、1日につき体表面1平方mあたり10〜100mlの黒酢に相当する量を投与できる。本発明の有効成分としての黒酢は、毎日続けて投与することが好ましいが、生涯にわたって摂取できる。 本発明を実施するための具体的な態様の例を以下に記述する。これらは例示であって、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。黒酢 坂元醸造株式会社から市販されている「坂元のくろず」(商品名)を実施例における黒酢として使用した。〔試験例1〕(1)本試験用黒酢10倍濃縮液の調製黒酢には、約4%の酢酸が含まれており、この酢酸にはいくつかの生理作用が報告されている。本試験では、黒酢成分のうち酢酸以外の成分、すなわち黒酢特有の成分の作用を検討するため、以下の操作により黒酢から酢酸を除去して用いた。黒酢(坂元醸造(株))1000mlを、真空凍結乾燥器(東京理化器械(株) FD-81D)を用いて真空状態にして凍結乾燥した。すなわち、[1]なす型フラスコ内に試料200mlを凍結し、凍結乾燥器の所定の位置にこれを取り付けて、容器内を減圧にする。(×5本)[2]減圧状態を保ったまま一昼夜凍結乾燥する。[3]試料に水気がなくなった、若しくは、容器に水滴がつかなくなる、容器を触って冷たくなくなったら終わりとする。[4]容器内の乾燥物に超純水200mlを加え、これを溶解する。この操作を5回繰り返し、最終の乾燥物全量を超純水で100mlとし、酢酸をほぼ完全に除去したものをサンプルとして用いた。なお、酢酸の除去は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)において酢酸に相当するピークが0.01%未満であることを確認した。(2)飼料の調製飼料は日本クレア株式会社が製造しているQuick Fat を使用した。Quick Fat はマウス・ラット生育用の標準飼料であるCE-2の脂肪含有量、ショ糖添加量を増加させた高カロリー飼料である。各飼料の栄養成分およびエネルギー量を以下に示す。(2-1)通常食飼料(CE-2)の栄養成分およびエネルギー量水分 9.1%粗蛋白 25.0%粗脂質 4.8%粗繊維 4.2%粗灰分 6.7%可溶性無窒素物 50.1%エネルギー量 3.442 kcal/g(2-2)高脂肪食飼料(Quick Fat)の組成水分 7.1%粗蛋白 24.1%粗脂質 13.9%粗繊維 2.9%粗灰分 5.2%可溶性無窒素物 46.8%エネルギー量 4.087 kcal/g(2-3) 本試験用飼料の組成 前記(1)で作成した試験用黒酢を、Quick Fat 1kgに対して6ml添加したものを本試験用飼料とした。本試験用飼料は、0.6%(V/W)の本試験用黒酢を含む高脂肪食飼料ということになる。マウスの1日摂食量が2.5gの場合、10濃縮黒酢を0.015 ml摂取することになる。体表面積あたりの投与量で換算すると黒酢原液を20 ml/m2摂取することになり、身長170 cm、65 kgの大人の場合(体表面積:1.75 m2、DuBois式で計算)、摂取量は1日当たり35 mlになる。これはヒトにおける黒酢1日摂取量の目安である30mlに相当する。(非特許文献5)(2-4) 対照試験用飼料の組成 Quick Fat 1kgに対してレスベラトロール0.4g添加(0.04% w/w)したものを対照試験用飼料とした。(非特許文献6)(3)試験動物及び方法(3−1)試験動物 10週令のC57BL6J雄性マウス(株式会社ホクドー)を用いた。各群15〜16匹を飼育し、それぞれの飼料は自由摂食させ、110週間飼育した。飼育室は、12時間明暗サイクル・温度23℃±2℃に維持した。以下、Quick Fat投与群をHC(High Calorie)群、本試験用飼料投与群をBV(Black Vinegar)群、レスベラトロール投与群をRes(Resveratrol)群、CE-2投与群をSD(Standard Diet)群として示す。本実験は、「北海道大学における動物実験に関する規則」による審査を受け、動物実験にかかる倫理基準を順守して実施された。(3−2)試験方法(3−2−1)血液および臓器の採取 110週間飼育したマウスを、ぺントバルビタールの腹腔内投与による麻酔後、心臓からの採血と同時に失血死させた。肝臓を採取時に脂肪肝発生および腹部内臓器の腫瘤形成について観察し、転移巣は組織学的分析に用いた。組織採取時に得られた臓器は10%中性緩衝ホルマリン液に固定し、冷蔵保存した組織から切片を採取し、ヘマトキシリン・エオジン染色して組織学的分析に使用した。(3−2−2)老化関連ホルモンの測定 臓器採取時に得た血液から血清を分離し、凍結保存した。得られた血清はMouse Dehydroepiandrosterone sulfate,DHEA-S ELISA Kit(TSZ Scientific, MA, USA)、Mouse/Rat IGF-1 Quantikine ELISA(R & D System, Inc. MN, USA)、Rat/Mouse Growth Hormone ELISA KIT(Millipore, MA, USA)によりそれぞれ硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA-S)、インスリン様成長因子1(IGF-1)および成長ホルモン(GH)を測定した。(5)結果(5−1)脂肪肝の発生率抑制効果 110週飼育後の脂肪肝および肝臓癌発生率を表1に示す。臓器採取時に目視にて確認し、脂肪肝発生数を調べた。脂肪肝および肝細胞癌については認められた組織の切片を作成し、組織学的に脂肪肝、肝細胞癌の発生について評価した。採取した肝臓の代表的な組織像を図1および図2に示す。脂肪肝発生率の検定: C-BV: p= 0.0170; HC-SD: p= 0.0029, SD-BV: p=1.0; BV-Res: p=0.54; HC-Res: p=0.11; がん発生率の検定: HC-BV: p= 0.600; HC-SD: p= 0.3137(5−2) 老化関連ホルモン 110週飼育後の血清中老化関連ホルモンの値を表2に示す。本試験用飼料摂取マウスおよびレスベラトロール投与群においてDHEA-Sの有意な上昇が認められた。(5−3) 体重変化 飼育期間中における毎週ごとの体重の推移を図3に示す。飼育11週から47週目まで、高脂肪食飼料摂取マウス(HC)と比較して、本試験用飼料摂取マウス(BV)の体重の増加抑制傾向が見られ、飼育11週目から23週目まで、25週から37週目では、有意な増加抑制が確認された(図3)。生存期間を延長する陽性コントロールとして知られている(非特許文献6)レスベラトロール投与群においても同様な体重増加抑制効果が認められた(Tukey法)。 飼育76週から96週目までの高齢期に相当する期間では、高脂肪食飼料摂取マウス(Hc)と比較して、本試験用飼料摂取マウス(BV)の体重の有意な低下抑制効果が認められた。このような体重低下抑制効果はレスベラトロール投与群(Res)では認められなかった。 飼育91週から96週までの摂食量を調べたが有意な差は認められなかった(HD群:2.47 ± 0.24, BV群:2.50 ± 0.07, Res群:2.55 ± 0.19, SD群:3.26 ± 0.11, 1匹あたりの1日摂取量(g)、平均値±標準偏差を示す)。生存率は各群とも有意差は認められなかった。(Log-Rank test)(6)考察 以上の結果より、黒酢のうち酢酸以外の成分、すなわち、黒酢特有成分は高脂肪食に伴う脂肪肝の発生を抑制し、老化の指標の1つであるDHEA-Sの低下を抑制することがわかった。さらに、体重に関し高齢期は体重減少による脂肪リスクの上昇が知られているところ(非特許文献7,8)、黒酢特有成分には、体重低下を抑制する作用があることが明らかとなった。 これまで黒酢が脂質代謝の改善作用、サーチュイン遺伝子発現亢進作用があることなどを発明者らは報告してきたが、これらの効果とともに、長期投与における効果として、高脂肪食に伴う脂肪肝発生率を低下させ、かつ加齢に伴い理想的な体重のコントロール効果があると考えられた。 黒酢はもっぱら食品として使用されており、安全性の高い食品である。従って本発明は、安全かつ経済的に、高脂肪食に伴う脂肪肝の発生とDHEA-Sの低下を抑制、および/または高齢期における体重低下を抑制する方法を提供する。脂肪肝の発症を防止する確立された方法は知られておらず、本発明は脂肪肝発症の予防に有効である可能性があり、従って本発明は医学または獣医学の関連産業分野において活用され得る。黒酢を有効成分とする非アルコール性脂肪肝抑制剤。酢酸成分を除いた黒酢を有効成分とする非アルコール性脂肪肝抑制剤。黒酢を有効成分とするdehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤。酢酸成分を除いた黒酢を有効成分とするdehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制剤。黒酢を有効成分とする高齢期での体重低下抑制剤。酢酸成分を除いた黒酢を有効成分とする高齢期での体重低下抑制剤。 【課題】壺作り黒酢の成分について非アルコール性脂肪肝抑制作用、老化に伴うdehydroepiandrosterone-sulfate(DHEA-S)低下抑制作用等があるかどうかをつきとめ、黒酢特有の成分を有効成分とする非アルコール性脂肪肝抑制剤、加齢に伴うDHEA-S低下抑制剤、および/または高齢期での体重低下抑制剤を提供することを課題とする。【解決手段】黒酢を有効成分とする、非アルコール性脂肪肝抑制作用、加齢に伴うDHEA-S低下抑制作用剤および/または高齢期での体重低下抑制剤を提供する。【選択図】図1


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