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タイトル:公開特許公報(A)_金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法
出願番号:2014002245
年次:2014
IPC分類:G01N 33/20,G01N 31/00,G01N 27/62,G01N 30/06,G01N 30/72,G01N 30/88


特許情報キャッシュ

冨士田 公彦 寺本 拓男 JP 2014178305 公開特許公報(A) 20140925 2014002245 20140109 金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法 住友金属鉱山株式会社 000183303 特許業務法人山内特許事務所 110001704 冨士田 公彦 寺本 拓男 JP 2013028132 20130215 G01N 33/20 20060101AFI20140829BHJP G01N 31/00 20060101ALI20140829BHJP G01N 27/62 20060101ALI20140829BHJP G01N 30/06 20060101ALI20140829BHJP G01N 30/72 20060101ALI20140829BHJP G01N 30/88 20060101ALI20140829BHJP JPG01N33/20 LG01N31/00 VG01N31/00 YG01N27/62 CG01N30/06 GG01N30/06 EG01N30/72 AG01N30/88 C 7 1 OL 26 2G041 2G042 2G055 2G041CA01 2G041DA13 2G041EA06 2G042AA01 2G042BD12 2G042BD16 2G042CA03 2G042CB06 2G042EA01 2G055AA07 2G055BA02 2G055EA02 2G055EA04 2G055FA09 本発明は、金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法に関する。さらに詳しくは、プリント基板や電子部品などに使用される金属表面の表面処理に使用されたベンゾトリアゾールを定量するための金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法に関する。 プリント基板や電子部品に用いられる金属部材は、金属表面を被膜する表面処理剤を用いることによって、金属が空気中の水分等で酸化されるのを防止している。一方、金属表面を被膜した表面処理剤は、はんだ濡れ性を向上させる機能を有するので、プリント基板の下地層に用いられる板状の金属部材においては、はんだ付けをする金属表面に被膜して用いられている。 上記のごとき表面処理剤としては、様々な化合物を含有したものが多数存在するが、両者の機能を発揮させることができる化合物のうち、ベンゾトリアゾール(以下、単にBTAという)が存在する。 BTAは、金属表面に被膜を形成することによって、上述した酸化防止機能やはんだ濡れ性といった機能のほかにも導電性接着機能等も有する化合物であるため、現在では、各種金属板の表面処理剤としてBTA表面処理剤が汎用的に使用されている。 BTA表面処理剤によって表面にBTA被膜が形成された金属部材は、上記のごとき重要な部材を構成するものであり、一定の品質が維持されることが要求される。しかも、このような金属部材は、その用途特性(金属表面の耐酸化性やエッチング特性など)に変動がある。つまり、同一の金属部材でありながら、その用途に応じて必要な特性が求められるのである。そして、このような用途特性は、金属部材表面に存在するBTAの存在量に依存すると考えられている。つまり、金属部材の用途特性は、金属部材表面に存在するBTAの濃度によって決めることができると考えられている。したがって、金属部材表面に存在するBTAを定量することができれば、製品毎の金属部材の用途特性を正確に把握することができる。 ここで、BTAの濃度を測定する方法として様々な測定方法が存在するが、BTAは、気化しにくい化合物であるので、多成分を高感度に測定することが可能なガスクロマトグラフを用いた分析には不向きであると言われている。 そこで、従来、粉体状の金属部材の表面をBTA表面処理剤によってコーティングしたBTAの濃度を定量する技術として、分光光度計で測定する方法が開発されている(例えば、特許文献1)。 特許文献1の分光光度計で測定する方法では、銀粉末表面に処理されたBTAが一定の濃度水準であることを把握するために、銀粉末表面に処理されたBTAを塩酸水溶液で抽出し、抽出した液に様々な前処理を加えた後、分光光度計で測定するという技術である。特開2011−191263号公報 しかるに、特許文献1の測定方法では、上記のごとき非常に煩雑な前処理を必要とし、しかも、BTAを測定する装置として分光光度計を採用しているので、その検出下限も低いといった問題がある。 また、板状の金属部材は、その表面積が粉体状の金属部材に比べて非常に小さいので、特許文献1の測定方法を用いて板状の金属部材の表面にコーティングされたBTA表面処理剤の濃度を定量するためには、板状の金属部材の表面部をさらに10倍〜100倍程度採取する必要があり、現実的でないといった問題もある。 さらに、特許文献1の測定方法では、BTAの抽出操作に劇物として指定されている塩酸を用いるため抽出方法および後処理液の取り扱いに非常に注意を要し、手間がかかるといった問題もある。 上記のごとく、現実のところ、板状の金属部材の表面をBTA表面処理剤で処理した際のBTAを簡易に定量することができる測定方法は開発されていない。そして、板状の金属部材の用途特性(金属部材の表面の耐酸化性やエッチング特性など)に変動があり、それらの主原因が金属部材表面に処理されているBTAの濃度変動であることを確認する手段として、金属板表面に僅かに存在しているBTAを高感度かつ簡便に把握できる定量方法の開発が望まれていた。 本発明は上記事情に鑑み、金属板などの金属表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ高感度に測定し、定量することができる金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を提供することを目的とする。 第1発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールの定量方法であって、前記被対象金属部材の表面に有機アルカリ溶液を接触させる前処理工程と、該前処理工程の後、前記被対象金属部材を加熱する加熱工程と、該加熱工程の後、前記有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリと前記被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールが反応した生成物質をガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計に導入し分析する分析工程と、を順に行うことを特徴とする。 第2発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、第1発明において、前記前処理工程と前記加熱工程の間に、前記有機アルカリ溶液に含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程を行うことを特徴とする。 第3発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、第1または第2発明において、前記加熱工程において、不活性ガス雰囲気下で、前記被対象金属部材を加熱することを特徴とする。 第4発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、第1、第2または第3発明において、前記加熱工程において、前記被対象金属部材を加熱する温度が、100℃〜400℃であることを特徴とする。 第5発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、第1、第2、第3または第4発明において、前記有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリが、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルスルホニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム、水酸化トリメチル(トリフルオロトリル)アンモニウムの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。 第6発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記分析工程において、算出されたベンゾトリアゾールの絶対量を被対象金属部材の重量で除すことにより、被対象金属部材の表面に存在していた単位重量あたりのベンゾトリアゾール量を算出することを特徴とする。 第7発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、前記分析工程において、算出されたベンゾトリアゾールの絶対量を被対象金属部材の面積で除すことにより、被対象金属部材の表面に存在していた単位面積あたりのベンゾトリアゾール量を算出することを特徴とする。 第1発明によれば、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールと有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリを加熱して反応させるだけで、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計によって測定できるベンゾトリアゾール誘導体を生成できる。すると、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計により、ベンゾトリアゾール誘導体を検出できるから、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ迅速に定量することができる。 第2発明によれば、有機アルカリ溶液に含まれる溶媒を除去することによって、加熱工程における有機アルカリ溶液に含まれる溶媒の突沸を防止できる。すると、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計によって検出されたベンゾトリアゾール誘導体の測定値がばらつくのを防止できるので、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを精度よく定量することができる。 第3発明によれば、不活性ガス雰囲気下で被対象金属部材を加熱するので、ベンゾトリアゾール誘導体が燃焼等によって分解するのを防止できる。したがって、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計によってベンゾトリアゾール誘導体を高感度に検出できる。 第4発明によれば、被対象金属部材を所定の温度範囲で加熱するので、確実にベンゾトリアゾール誘導体を生成することができる。 第5発明によれば、有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリが所定の化合物であるので、ベンゾトリアゾール誘導体として、ベンゾトリアゾールのメチル化物を生成することができる。したがって、さらに精度よく被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを定量することができる。 第6発明によれば、被対象金属部材の単位重量に存在するベンゾトリアゾール量を算出することができるので、用途特性に応じたベンゾトリアゾール濃度を把握できる。 第7発明によれば、被対象金属部材表面の単位面積に存在するベンゾトリアゾール量を算出することができるので、用途特性に応じたベンゾトリアゾール濃度を把握できる。本実施形態の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法のフローチャートである。前処理工程S1と溶媒除去工程S2の関係を示した概略説明図であり、(A)はベンゾトリアゾール(BTA)の被膜が形成された被対象金属部材Mの表面に水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を接触させた状態の概略断面説明図であり、(B)は溶媒SOを除去した後の被対象金属部材Mの表面の概略断面説明図である。加熱工程S3の概略説明図であり、(A)は溶媒除去工程S2後の収容容器Bを不活性ガスIG雰囲気下で加熱容器HD内に配置した状態の概略断面説明図であり、(B)は被対象金属部材Mを加熱した状態におけるBTAの被膜とTMAHの反応を示した概略説明図である。加熱工程S3と分析工程S4の関係を示した概略説明図であり、(A)は加熱工程S3後のBTA誘導体D―BTAをガスクロマトグラフ質量分析計GC/MSで測定した状態を示した概略説明図であり、(B)は加熱工程S3を熱分解装置で行った場合の他の実施形態の概略説明図である。実験例1の実験結果(検量線)を示した図である。実験例2の実験結果(検量線)を示した図である。 つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。 本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールの定量方法であって、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールからベンゾトリアゾール誘導体を生成することによって、ガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ迅速に定量することができるようにしたことに特徴を有する。 なお、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法に使用するガスクロマトグラフ(以下、単にGCという)またはガスクロマトグラフ質量分析計(以下、単にGC/MSという)は、一般的なGCまたはGC/MSを採用することができる。 また、GCまたはGC/MSには、検出部で検出された検出データを解析し、解析した結果に基づいて被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを定量する解析手段が設けられている。 さらになお、GCだけを使用する場合、その検出部は、ベンゾトリアゾール誘導体を検出できる機能を有するものであれば、とくに限定されず、例えば、水素炎イオン化検出器(FID)や、熱イオン化検出器(FTD)、熱伝導検出器(TCD)、バリア放電イオン化検出器(BID)などを挙げることができる。 以下では、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法にGC/MSを使用した場合を代表例として説明する。 まず、本実施形態の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法(以下、単にBTA定量方法という)の詳細を説明する前に、BTA定量方法の概略を説明する。 なお、ベンゾトリアゾールを、以下、単にBTAという。 本実施形態のBTA定量方法は、まず、表面にBTAの被膜が形成された被対象金属部材の表面に誘導試薬を接触させる(前処理工程S1)。そして、この被対象金属部材を加熱し(加熱工程S3)、加熱した際に生成する生成物質を含むガス(以下、単に生成ガスという)をGC/MSに導入し、得られた測定データに基いて、被対象金属部材の表面に形成されたBTAの被膜(以下、単にBTA被膜という)に含まれるBTAを定量する(分析工程S4)、という測定方法である(図1参照)。 以下、各工程の概略を説明する。(前処理工程S1の説明) 図1および図2に基いて、被対象金属部材の表面に誘導試薬を接触させる前処理工程S1について、以下説明する。 図2では、符号Mは、被対象金属部材を示す。そして、この被対象金属部材Mの表面には、BTA被膜が形成されている。(被対象金属部材Mについて) 図2に示すように、被対象金属部材Mは、略板状の部材であって、その表面にBTA被膜が形成されている。 なお、BTA被膜は、被対象金属部材Mの表面の金属元素と強固に結合することによって被膜内部(つまり被対象金属部材Mの表面)を外部から隔離するように形成されている。例えば、被対象金属部材Mの材質が銅の場合、BTA被膜は、被対象金属部材Mの表面の銅(Cu)を2分子のBTAで挟みこむようにして結合し、被対象金属部材Mの表面に形成されている(図3(B)左図参照)。(誘導試薬について) 上記の被対象金属部材Mの表面に形成されたBTA被膜に含まれるBTAに接触させる誘導試薬は、後述する加熱工程S3において、BTAと反応することによってBTAにアルキル基を置換または付加してBTAのアルキル化を誘導する機能を有する化合物を含む溶液である。この化合物は、その分子内にヒドロキシ基を有し、かつメチル基などのアルキル基を有する炭素、酸素および窒素からなる有機アルカリ化合物(以下、単に有機アルカリという)であり、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、単にTMAHという)を挙げることができる。誘導試薬として使用する化合物は、上記化合物に限定されないが、詳細は後述する。 なお、BTAがアルキル化された化合物が、後述するBTA誘導体(図3では、D−BTA)である。 また、誘導試薬の接触方法は、被対象金属部材M表面に形成されたBTA被膜に含まれるBTAと誘導試薬に含まれる有機アルカリを接触させることができる方法であれば、とくに限定されない。具体的には、被対象金属部材表面に形成されたBTA被膜全体に誘導試薬が接触させることができる方法であればよい。 例えば、図2(A)に示すように、被対象金属部材MのBTA被膜が形成された面の上方から有機アルカリであるTMAHを含む誘導試薬(以下、TMAH溶液という)をBTA被膜に対して滴下して接触させることができる。滴下されたTMAH溶液は、BTAの被膜を覆うように広がるので、BTAの被膜上面にTMAHの被膜を積層するように形成することができる(図2(B)参照)。 なお、被対象金属部材MをTMAH溶液に浸漬するようにして、被対象金属部材M全体にTMAH溶液の被膜を形成してもよいのは、言うまでもない。 また、本明細書の誘導試薬が、特許請求の範囲の有機アルカリ溶液に相当する。(加熱工程S3の説明) ついで、上述した前処理工程S1で得られた被対象金属部材Mを加熱する加熱工程S3について説明する。 この加熱工程S3は、被対象金属部材Mを加熱することによって、BTA誘導体D−BTAを生成することができる方法であれば、とくに限定されず、被対象金属部材Mを直接または間接的に加熱してもよい。 具体的には、被対象金属部材Mを間接的に過熱する方法として、内部の収容空間内に被対象金属部材Mを収容した状態において、内部空間を加熱する機能を有する加熱容器HDを採用することができる。 例えば、図3に示す加熱容器HDを使用することができる。この加熱容器HDは、有底筒状の部材であって、その側壁内には、加熱容器HDに熱を供給するヒータが設けられている。このため、ヒータHを作動すれば、内部空間内を所望の温度に調整することができる。しかも、加熱容器HD内の収容空間の温度を感知できる温度センサを設けていれば、収容空間内の温度をより適切に制御することができる。 また、図3に示すように、加熱容器HDは、上部に形成された開口を閉じれば内部を密閉できる蓋体を備えたものが好ましい。なぜなら、内部に被対象金属部材Mを収容した状態において、被対象金属部材Mを加熱することによって生成するBTA誘導体D−BTAを含む生成ガスが加熱容器HDの外部へ揮散するのを防止することができるからである。 なお、本明細書のBTA誘導体D−BTAが、特許請求の範囲の生成物質に相当する。(分析工程4Sの説明) ついで、加熱工程3Sで生成したBTA誘導体D−BTAを含む生成ガスを、GC/MSに導入し、得られた測定データに基いて、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAを定量する工程(分析工程4S)について、以下説明する。 上述したように分析工程4Sにおいて使用するGC/MSは、一般的なGC/MSを採用することができる。 図4に示すように、GC/MSは、GCを有するGC部と、このGC部に接続されたMSを有するMS部とを備えている。GC部には、測定対象物質を気化し、この気化した測定対象物質をキャピラリーカラム等の分離カラムCに導入する注入口部IPと、この注入口部IPとMS部を連結する分離カラムCを収容するカラムオーブンとを備えている。MS部は、イオン化部、質量分析部そして検出部の順にGC側から配設されている。 また、GC/MSには、MS部の検出部で検出された検出データを解析し、解析した結果に基づいて被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの濃度を定量する解析手段が設けられている。 解析手段は、GC/MSにより測定された物質の測定データから被対象金属部材Mの表面に形成されたBTAの被膜に含まれるBTAの濃度を算出することができるものである。 具体的には、解析手段には、GC/MSの検出部により検出された電気信号の測定データがケーブル等を介して送信されており、この送信された測定データを解析することができる解析部が設けられている。 この解析部は、検出部から送信された測定データを解析手段で受信し、受信した測定データに基いて、溶出時間と信号強度の関係を表したクロマトグラムをモニター等に表示させることができる機能を有する。そして、解析部にインストールされた解析プログラム等を使用すれば、クロマトグラムからBTA誘導体D−BTAのピークを検索し、所定のピーク処理を行えばBTA誘導体D−BTAのピーク面積等を得ることができる。そして、得られたBTA誘導体D−BTAのピーク面積等に基いて被対象金属部材Mの表面に存在するBTAを定量する機能をも有する。 例えば、検量線と測定対象の被対象金属部材Mから得られたBTA誘導体D−BTAのピーク面積の関係から被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの絶対量を算出し、被対象金属部材Mの単位重量あたりのBTA量を算出する。 なお、MS部は、分離カラムCで分離されたBTA誘導体D−BTAを高感度で検出することができる機能を有するものであれば、とくに限定されず、例えば、四重極型や、イオントラップ型、磁場型などを採用することができる。 以上のごとく、被対象金属部材Mの表面に形成されたBTA被膜に含まれるBTAと誘導試薬を所定の温度で反応させるだけで、BTA誘導体D−BTAを生成することができる。しかも、このBTA誘導体D−BTAは、従来BTAの測定には不向きとされていたGC/MSの測定対象となる物質である。したがって、被対象金属部材Mを加熱するだけで被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの誘導体をGC/MSで検出し定量することができるので、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAを簡便かつ迅速に定量することができるのである。 以下、表面にBTA被膜が形成された被対象金属部材Mの材質が銅であって、誘導試薬に含まれる有機アルカリとしてTMAHを使用した場合(TMAH溶液)の被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの測定方法について具体的に説明する。 図2に示すように、被対象金属部材MのBTA被膜が形成された面が上方を向くように被対象金属部材Mを収容容器B内に配置する。そして、かかる面全体をコーティングするように、かかる面の上方からマイクロシリンジ等の注射筒SLに収容したTMAH溶液を滴下する。すると、図2(B)に示すように、BTA被膜上面にTMAH被膜が積層した積層被膜を対象金属部材Mの表面に形成することができる。 ついで、図3に示すように、この表面に積層被膜が形成された対象金属部材Mを内部に収容した状態のまま収容容器Bを加熱容器HD内に収容する。かかる状態において、加熱容器HDに設けられたヒータHを作動して加熱容器HD内の収容空間内の温度を所定の温度にする。 すると、図3(B)に示すように、積層被膜を形成するTMAHに含まれるヒドロキシ基によってBTA被膜を形成するBTAと銅の結合が加水分解等で解離される。そして、解離したBTAの一部にTMAHに含まれるメチル基が結合する。つまり、表面に積層被膜が形成された被対象金属部材Mを加熱するだけで、BTAがメチル化されたBTA誘導体D−BTA(以下、単にMeBTA誘導体D−BTAという)を生成することができるのである(図3(B)参照)。 しかも、MeBTA誘導体D−BTAは、その沸点が上記のような生成温度程度であり、この温度は、GC/MSの測定可能な温度の範囲内にある。つまり、MeBTA誘導体D−BTAは、BTAの測定においては不向きと言われていたGC/MSの測定対象物質にすることができるのである。 例えば、図3(A)に示すように、加熱容器HD内の収容空間内の温度を約300℃に維持すれば、MeBTA誘導体D−BTAが生成される。生成したMeBTA誘導体D−BTAは、上記温度において気化する性質を有し、気化した状態で加熱容器HD内に保持される。すると、この加熱容器HD内に保持されたガス、つまりMeBTA誘導体D−BTAを含む生成ガスをガスタイトシリンジ等によって吸引し、かかる生成ガスをGC/MSの注入口部IPに注入する。 注入口部IPに注入された生成ガスは、GC/MSに連結されたボンベT(図4参照)から供給された気相(例えば、ヘリウム)とともに分離カラムC内に導入される。分離カラムCとしてキャピラリーカラムを採用する場合、MeBTA誘導体D−BTAは、キャピラリーカラム内に形成された固定相との相互作用(例えば、吸着、分配等)によって、生成ガス中に含まれる他の物質と分離されながら、基端から先端まで移動する。そして、先端まで移動したMeBTA誘導体D−BTAは、キャピラリーカラムの先端からMS部のイオン化部に供給され、所定の方法(例えば、EI法)でイオン化される。 イオン化部でイオン化されたMeBTA誘導体D−BTAは、質量分析部を介して検出部に到達する。検出部では、検出部に到達したMeBTA誘導体D−BTAを電気信号として検出し、検出したMeBTA誘導体D−BTAの電気信号をGC/MSに電気的に接続されたコンピュータなど解析手段に送信する。解析手段は、検出部から送信された電気信号を受信し、かかる受信データに基いてクロマトグラムを作成する機能を有するものである。 例えば、解析手段には、解析プログラム等がインストールされているので、MS部の検出部から送信された電気信号を受信して、ディスプレー等にクロマトグラムを表示させることができる。 すると、解析手段にインストールされた解析プログラム等を使用して、クロマトグラムに基いてMeBTA誘導体D−BTAのピークを検索し、所定のピーク処理を行えば、MeBTA誘導体D−BTAのピーク面積等を算出することができる。そして、かかるピーク面積等に基づけば被対象金属部材Mの表面に存在するBTAを定量することができるので、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの濃度も算出することができる。 なお、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAを定量する方法は、一般的な検量線法や内部標準法などを採用することができる。 例えば、検量線法を採用する場合、予め同一測定条件下で絶対量が異なるBTAと、そのBTA誘導体D−BTAのピーク面積との関係から検量線を作成する。そして、この検量線に基いて測定対象とした被対象金属部材Mから得られたBTA誘導体D−BTAのピーク面積からBTAの絶対量を算出する。この算出したBTAの絶対量を被対象金属部材Mの重量で除すことにより、被対象金属部材Mの表面に存在していた単位重量あたりのBTA量(BTA濃度)を算出する。 以下、各工程の構成部材等について、詳細に説明する。(被対象金属部材Mについて) 上述したように、被対象金属部材Mの大きさおよび形状は、とくに限定されないが、図2に示すような有底筒状の収容容器B内に収容することができる大きさであれば、各操作を行い易くできるので好ましい。例えば、収容容器Bが直径約4mm、高さ約10mmの場合、被対象金属部材Mの大きさを、幅約2mm、高さ約8mmの短冊状に形成すれば、収容容器B内に挿入し易い。 また、既知の直径、例えば直径6mmのパンチ穴で円形に打ち抜いてから半分に裁断して半円状に形成すれば、収容容器B内に挿入し易いだけでなく、測定に供した試料量を正確な面積で求めることができ、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの濃度を被対象金属部材Mの単位面積あたりのBTA濃度として算出することが可能となる。 なお、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの濃度を被対象金属部材Mの単位重量あたりのBTA濃度として算出する場合には、上記収容容器B内に挿入する被対象金属部材Mの重量が0.01g以上が好ましく、0.01g〜1.5gがより好ましい。被対象金属部材Mの重量が0.01gよりも軽い場合には、GC/MS測定におけるBTA誘導体D−BTAの検出感度が低下するので、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの定量精度が低下する可能性が生じる。 さらに、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの濃度を被対象金属部材Mの単位面積あたりのBTA濃度として算出する場合には、上記収容容器B内に挿入する被対象金属部材Mの面積が0.2cm2以上が好ましく、0.2cm2〜2.5cm2がより好ましい。被対象金属部材Mの面積が0.2cm2よりも小さい場合には、GC/MS測定におけるBTA誘導体化D−BTAの検出感度が低下するので、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAの定量精度が低下する可能性が生じる。 また、BTA被膜を形成するための被対象金属部材Mの材質は、とくに限定されず、例えば、銀、ニッケルまたはこれらの合金などを挙げることができる。いずれの材質を被対象金属部材Mの材質として採用した場合あっても、銅を被対象金属部材Mとした場合と同様に被対象金属部材Mの表面の金属元素と強固に結合したBTA被膜を被対象金属部材Mの表面に形成させることができる。(誘導試薬の有機アルカリについて) 上記例では、BTAをBTA誘導体D−BTAに誘導する有機アルカリとして、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を使用する場合について説明したが、BTAにアルキル基を置換または付加することによって、BTAのアルキル化を誘導する機能を有する化合物であれば、TMAHに限定されない。 具体的には、BTAとTMAHを加熱反応させると、BTAにメチル基が置換したBTAのメチル化物を生成できる。かかる反応と同様に、BTAと加熱反応することによってBTAにアルキル基を置換または付加する機能(つまり、アルキル化)を有する化合物であれば、TMAHに変えて採用することができ、例えば、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルスルホニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム、水酸化トリメチル(トリフルオロトリル)アンモニウムなどを挙げることができる。 なお、上記のごとき有機アルカリは、分子内にヒドロキシ基を有する。 一般的に、アルカリ成分をGCまたはGC/MSに取り付けられた分離カラムCに供給すれば、分離カラムC内に形成されている液相が剥離し易くなる。そして、かかる状態の分離カラムCを測定に使用すれば、液相の剥離部分に化合物が吸着等することによって、化合物のピーク形状に異常が生じたり、所定のピーク強度を得ることができない場合が生じる。すると、目的の化合物を正確に定量することができない可能性が生じる。したがって、このような場合には、GC等の注入口部IPのクリーニング等を行った後、分離カラムCの交換を行い、再度、測定を行わなければならないため、非常に手間とコストがかかる。 しかし、上述した有機アルカリは、高温にすれば、BTAと反応しない過剰の有機アルカリをトリメチルアミンとメタノールに分解することができるので、分離カラムC内にアルカリ成分が供給されるのを防止することができる。すると、BTA誘導体D−BTAを含むガスをGCまたはGC/MSに取り付けられた分離カラムCに供給しても、未反応の有機アルカリに含まれるアルカリ成分による測定不具合を防止できるので、BTA誘導体D−BTAの定量を正確に行うことができる。 なお、上記誘導試薬の被膜を被対象金属部材Mの表面に形成した場合、かかる被膜に含まれる有機アルカリの量は、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAよりも過剰に存在するように被対象金属部材Mの表面に誘導試薬を滴下等する。具体的には、上記誘導試薬における有機アルカリの濃度は、0.1質量%以上が好ましく、1.0〜10.0質量%濃度がより好ましい。有機アルカリの濃度が0.1質量%よりも低い場合にはBTAのアルキル化の誘導が不完全となりBTA誘導体D−BTAが生成されにくい。より具体的には、被対象金属部材Mが幅約2mm、高さ約8mmの短冊状の場合、有機アルカリの濃度が1.0質量%の誘導試薬を10μl被対象金属部材M表面に滴下する。特に板状の金属部材の場合は、1.0質量%濃度の誘導試薬を70μl被対象金属部材M表面に滴下して浸漬する。(誘導試薬の溶媒SOについて) 誘導試薬の溶媒SOは、有機アルカリを溶解することができる溶媒SOであって揮発性の高い溶媒であればとくに限定されない。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、γ−ブチロラクトン、エチレングリコール、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。 とくに、誘導試薬の溶媒SOとして、メタノールやエタノール、アセトンなどの室温で揮発し易い溶媒を使用すれば、誘導試薬を被対象金属部材M表面に滴下等した際に、誘導試薬が被対象金属部材M表面から流れ落ちる前に誘導試薬を被対象金属部材M表面上に維持させることができる。このため、BTA被膜上面に有機アルカリ被膜を確実に積層させることができる。しかも、室温で素早く揮発する溶媒SOを使用すれば、誘導試薬をBTAに接触させた後の誘導試薬を風乾する時間を短くできるので、積層被膜の形成をより迅速に行うことができる。(溶媒除去工程S2の説明) とくに、図1に示すように、加熱工程S3を行う前に被対象金属部材M表面に形成した誘導試薬の被膜(例えば、TMAH被膜)に含まれる溶媒SOを除去する溶媒除去工程S2を設けるのが好ましい。この溶媒除去工程S2は、誘導試薬の被膜(例えば、TMAH被膜)に含まれる溶媒SOを除去することができる方法であれば、とくに限定されず、例えば、風乾や予備加熱(例えば、室温〜60℃)などを採用することができる(図2(B)参照)。 例えば、図2(B)に示すように、被対象金属部材Mを風乾すれば、被対象金属部材M表面に形成されたBTAと有機アルカリの積層被膜内に溶媒SOが存在する場合に確実に積層被膜内から溶媒SOを除去することができる。 仮に、積層被膜内に溶媒SOが存在する状態で被対象金属部材Mを加熱工程S3に供した場合、積層被膜内の溶媒SOが突沸することによって、積層被膜が破損等する可能性が生じる。積層被膜が破損等によって飛散した場合、被対象金属部材M表面に存在するBTAの濃度を正確に定量できない可能性が生じる。 しかし、被対象金属部材Mを風乾することによって、積層被膜が飛散するのを確実に防止できるので、積層被膜の飛散に基づくBTAの定量値の変動を防止できるから、より正確に被対象金属部材M表面に存在するBTAの濃度を定量することができる。(加熱工程S3の処理条件について) 上述したように、加熱容器HD内の収容空間内の温度は、BTAと誘導試薬(例えば、TMAH溶液)を加熱反応させて所定のBTA誘導体D−BTAを生成できる温度であれば、とくに限定されない。具体的には、100℃〜500℃が好ましく、より好ましくは200℃〜400℃、さらにより好ましいのは300℃である。 収容空間内の温度が100℃よりも低くなるとBTAと有機アルカリの反応が不十分となる可能性がある。一方、収容空間内の温度が500℃よりも高くなるとBTA誘導体D−BTAが熱分解を生じる可能性がある。 とくに、被対象金属部材M表面におけるBTAと有機アルカリの加熱反応は、不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。具体的には、図3(A)に示すように、加熱容器HD内の収容空間内に被対象金属部材Mを収容した状態において、かかる収容空間内に外部から不活性ガスIGを導入する。すると、不活性ガスIG雰囲気下で被対象金属部材Mを保持することができるので、BTA誘導体D−BTAが生成する生成温度においても周囲の酸素による燃焼等によってBTA誘導体D−BTAが分解するのを防止できる。したがって、GC/MS測定においてBTA誘導体D−BTAを高感度に検出することができる。 例えば、不活性ガスとして、窒素やヘリウム、アルゴン等を挙げることができる。(オンラインの説明) 上記例では、加熱容器HDとGC/MSが分離した状態について説明したが、加熱容器HDとGC/MSを連結してもよい。この場合、ガスタイトシリンジ等に使用した場合に生じるBTA誘導体D−BTAの吸着等に基づく定量精度のバラツキを防止できるので、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAを精度よく定量できる。 例えば、図4(A)に示すように、ボンベTとGC/MSを連結する配管の途中に三方コック等によって加熱容器HDを連結する。そして、加熱容器HD内に生成ガスが保持された状態において、バルブを作動し加熱容器HD内と配管を連結する。すると、配管を流れる気相(例えば、ヘリウム)とともに生成ガスをGC/MSの注入口部IPに導入することができる。 また、例えば、図4(B)に示すように、加熱容器HDとしてGC/MSの注入口部IPの上部に配置することができる熱分解装置を採用してもよい。 この熱分解装置は、その内部に収容容器Bを収容可能な空間を有しており、収容容器Bを収容した状態において、周囲から収容容器Bを加熱することができる機能を備えている。しかも、熱分解装置の上部にボンベTの配管が連結されている。このため、熱分解装置をGC/MSの注入口部IPに配置した状態において、ボンベTからヘリウム等を配管を通して流せば、熱分解装置の内部に収容した収容容器Bの上方からGC/MSの注入口部IPに向かってヘリウム等を流すことができる。つまり、収容空間内を常に不活性ガスの雰囲気にすることができるのである。 すると、収容容器B内に被対象金属部材Mを収容した状態で本実施形態のBTA定量方法の前処理工程S1および溶媒除去工程S2を行った後、この収容容器Bをそのまま上記熱分解装置の収容空間内に挿入するだけで、加熱工程S3および分析工程S4を連続かつほぼ自動で行うことができる。 例えば、この熱分解装置を使用すれば、前処理工程S1から分析工程S4までの時間を約40分で行うことができるので、従来の分光光度計を用いた分析(約4時間)に比べて、約6分の1の時間で測定を行うことができる。しかも、確実に不活性ガス雰囲気下で加熱反応を行うことができ、かつ生成ガスを全量GC/MSに供することができるので、BTA誘導体D−BTAをより高感度に検出することができるので、被対象金属部材Mの表面に存在するBTAをより高精度に定量することができる。 なお、上記のごとき熱分解装置を使用する場合、熱分解装置の収容空間内における被対象金属部材Mの加熱反応の状態を保持しておく時間は、3秒以上、好ましくは30秒〜2分間、より好ましくは、1分間は維持しておく。 また、上記例では、加熱容器とGCが分離した状態の場合について説明したが、加熱容器としてGCの注入口部IPを利用することも可能であることは言うまでもない。《実験例1》 本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いて、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ迅速に定量することができることを確認した。 実験例1では、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いて、ベンゾトリアゾールを定量できることを確認し、単位重量あたりのBTA濃度を得ることができることを確認した。 また、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法において、加熱工程における加熱容器内の収容空間内の温度および雰囲気条件がベンゾトリアゾールの誘導体生成に与える影響を確認した。 さらに、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法の有効性を確認した。(TMAH溶液) 誘導試薬として、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHという)(和光純薬社製、型番:152114)をメタノールに溶解し、濃度が1.0mg/lになるように調製したTMAH溶液を使用した。(被対象金属部材) 被対象金属部材は、圧延銅板にベンゾトリアゾール(以下、BTAという)のメタノール溶液を噴霧してBTA処理を行った後、表面を純水で洗浄し熱風で乾燥することによりBTAが付着した圧延銅板を作成し、この圧延銅板を金属ハサミを用いて、2mm×8mm角程度の短冊状になるように切断したものを使用した(以下、試料という)。 なお、試料は、圧延銅板の表面に所定の厚さのBTA処理がなされた試料(品質が良い製造ロット)と、圧延銅板の表面に所定の厚さよりも薄いBTA処理がなされた試料(品質が悪い製造ロット)、の2種類を使用した。 また、試料は、試料量が約1.0gとなるように直径4mm、高さ10mmの有底筒状のステンレス製の収容容器(以下、試料カップという)に入れた。 上記BTA処理に使用したBTAのメタノール溶液は、以下のように調製したものを使用した。 BTA(和光純薬株式会社製、鹿一級)を0.0101g秤量し、メタノール(関東化学株式会社製、特級)を用い全量100mlのメスフラスコに定容し、101mg/lのBTA溶液を調製した。そして、このメスフラスコからホールピペットを用いて別の全量100mlのメスフラスコに1ml分取した。そして、このメスフラスコにメタノールを入れて定容し1.01mg/lのBTA溶液を調製した。(工程) 実験では、試料カップに試料を所定量採取して1.0mg/lのTMAH溶液をマイクロシリンジで10μL試料表面に滴下した(前処理工程)のち、室温で風乾した(溶媒除去工程)。そして、試料カップを熱分解装置内の炉内に挿入し、ヘリウム雰囲気下で加熱した(加熱工程)。所定時間加熱した後、生成ガスをGC/MSへオンラインで注入し加熱反応で生成されたBTAメチル化物(BTA誘導体)を測定して得られたクロマトグラムからBTAメチル化物のピークを検索し、かかるピークのピーク面積を算出した。そして、算出したBTAメチル化物のピーク面積を、検量線(BTAメチル化物のピーク面積とBTA絶対量との関係に基づく検量線)から算出した関係式に代入して試料中のBTA絶対量を算出した。そして、算出した試料中のBTA絶対量を試料量で除して、試料(つまり被対象金属部材)表面に存在するBTA濃度(単位重量あたりのBTA量)を算出した(分析工程)。(装置) 実験に使用した機器および分析条件を以下に示す。(熱分解装置) 加熱容器:熱分解装置(フロンティアラボ株式会社製PY2020iD) 熱脱着温度(炉内温度):60℃(0min)−20℃/min−300℃(1min)(GC/MS)) GC/MS:QP−2010(島津製作所製) カラム:DB−5ms(アジレント(株)社製、型番:122−5532) GC注入口温度:300℃ スプリット比:100:1 GCカラムオーブン温度:50℃(0min)−10℃/min−350℃(0min) キャリアガス(移動相):ヘリウム(175ml/min) イオン化法:EI(試料中のBTAの定量) 試料(約1.0g)表面上に存在するBTAの定量は、上述したBTA誘導体を含む生成ガスをGC/MSを用いて分析した。 まず、標準となる試料(標準試料)を調製し、検量線を作成した。 ついで、検量線のピーク面積とBTAの絶対量(ng)の関係式に試料から検出されたBTAメチル化物のピーク面積を代入し、試料から検出されたBTAの絶対量(ng)を算出した。そして、算出したBTAの絶対量(ng)を試料の重量で除し、試料に存在していたBTA濃度(単位重量あたりのBTA量、wtppm)を算出した。(検量線の作成) 検量線を以下の方法により作成した。 BTAを0.0101g秤量し、メタノールを用い全量100mlのメスフラスコに定容し、101mg/lのBTA溶液を調製した。このメスフラスコから1mlを全量100mlのメスフラスコにホールピペットで分取し、メタノールを用いて定容して1.01mg/lのBTA溶液を調製した。 そして、各標準試料用の試料カップに所定量のBTAが存在するようにマイクロシリンジを用いて1.01mg/lのBTA溶液を滴下した後、風乾してメタノールを揮散させた。ついで、各標準試料用の試料カップにそれぞれTMAH溶液10μlをマイクロシリンジを用いて滴下し風乾した(標準試料2〜4)。なお、ブランク標準試料(標準試料1)として、試料カップにマイクロシリンジを用いてメタノールを10μl滴下し、風乾した後、マイクロシリンジを用いてTMAH溶液10μlを滴下し風乾したものを使用した。 上記標準試料を、ヘリウムガス雰囲気にした熱分解装置に挿入し、熱分解装置にオンラインで接続されたGC/MSで測定し、BTAがBTAメチル化物に誘導された成分のピークを検出し、かかるピークのピーク面積を算出した。そして、調製した標準試料のBTA濃度とピーク面積の関係から、最小二乗法により検量線を作成した。 なお、検量線の作成に使用した標準試料のBTA絶対量は、0.0、2.02、6.06、10.10ngであった。 測定結果を図5に示す。 作成した検量線の相関係数(r)は、r=0.9996であり、良好な直線性を示した。 (試料の測定) 上述した方法で作成した用途特性が良い製造ロットのものを試料1〜3、用途特性が悪い製造ロットのものを試料4〜5とした。 上記試料1〜5を、上述した工程に供し、BTAメチル誘導体のピーク面積を算出した。そして、算出した各試料のBTAのメチル化物のピーク面積値から検量線に基いてBTA絶対量(ng)を求め、その量を試料の重量で除すことで試料に付着するBTAの濃度を算出した。 実験結果を表1に示す。 表1に示すように、試料表面のBTA処理がほぼ均一の厚さとなるように作成した試料1〜3を、精度よく定量することができることが確認できた。また、試料表面のBTA処理が不均一となるように作成された試料4〜5をも正確に定量できた。つまり、試料表面に存在するBTAの僅かな量の違いをも検出し、しかも精度よく定量できることが確認できた。 したがって、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いることによって、試料の用途特性に反映したBTA濃度を得ることができることが分かった。 なお、前処理から定量結果までに用した時間(測定時間)は、約40分間であった。(加熱工程における熱分解装置の炉内温度) 加熱工程に使用した熱分解装置の炉内の温度が、BTA誘導体生成に与える影響を確認した。 実験では、炉内温度を100℃(試料6)、200℃(試料7)、300℃(試料8)、400℃(試料9)および500℃(試料10)にした場合における各試料のBTA濃度を定量した。 なお、各試料は、上述した品質が良い製造ロットのものをそれぞれ約1.0g使用した。 実験結果を表2に示す。 表2に示すように、BTA濃度は、熱分解装置の炉内の温度が100℃(試料6)で5.6wtppm、200℃(試料7)で5.5wtppm、300℃(試料8)で5.5wtppmおよび400℃(試料9)で5.5wtppmであった。一方、BTA濃度は、熱分解装置の炉内の温度が500℃(試料10)で2.9wtppmであった。 つまり、BTA濃度は、熱分解装置の炉内の温度が100℃〜400℃の範囲内で精度よく安定して定量することができ、500℃以上になると定量値が低くなることが確認できた。これは、熱分解装置の炉内の温度を500℃以上にした場合、炉内において一旦生成したBTAメチル化物(BTA誘導体)に熱分解が生じることによって、炉内温度が500℃よりも低い温度の場合と比較して、BTA濃度が低くなったものを考えられた。 また、ピーク面積は、300℃をピークに山形になることが確認された。 したがって、熱分解装置の炉内の温度は、100℃〜400℃が好ましく、より好ましくは300℃であることが確認できた。(加熱工程における雰囲気条件) 加熱工程に使用した熱分解装置の炉内の雰囲気が、BTA誘導体生成に与える影響を確認した。 実験では、熱分解装置の炉内の雰囲気を、窒素(N2)(試料11)、アルゴン(Ar)(試料12)および空気(Air)(試料13)した場合における各試料のBTA濃度を定量した。 なお、各試料は、上述した品質が良い製造ロットのものをそれぞれ約1.0g使用した。 測定結果を表2に示す。 表2に示すように、BTA濃度は、熱分解装置の炉内の雰囲気が、窒素(N2)(試料11)で5.6wtppm、アルゴン(Ar)(試料12)で5.6wtppmであった。一方、熱分解装置の炉内の雰囲気が、空気(Air)(試料13)では、1.0wtppmであった。 つまり、熱分解装置の炉内の雰囲気を、ヘリウム(He)の他、窒素(N2)やアルゴン(Ar)などのハロゲンガス雰囲気(不活性ガス雰囲気)とした場合には、BTA濃度を安定して定量することができるが、空気(Air)雰囲気の場合には、不活性ガス雰囲気下の場合に比べてBTA濃度は低い値となった。 これは、空気(Air)雰囲気下で加熱反応を行った場合には、炉内において一旦生成したBTAメチル化物(BTA誘導体)が周囲の空気によって一部が燃焼することによって、不活性ガス雰囲気下で加熱を行った場合と比較して、BTA濃度が低くなったものを考えられた。 したがって、熱分解装置の炉内の雰囲気は、ハロゲン雰囲気とするのが好ましく、より好ましくは、ヘリウム(He)雰囲気下であることが確認できた。(試料の材質) 試料の材質を銀(試料14)、ニッケル(試料15)および合金(試料16)を使用した場合の試料表面に存在するBTA濃度を、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いて定量することができることを確認できた。 なお、各試料の調製および測定方法は、材質を銅とした場合と同様に行った。 測定結果を表2に示す。 表2に示すように、いずれの金属板においてもBTAメチル化物を検出することができることが確認できた。(従来法との比較) 本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法の有効性を確認した。 実験では、上述した本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法で使用した試料と同じ試料(上記品質が良い製造ロットのものを試料a〜c、上記品質の悪い製造ロットのものを試料d〜e)に存在するBTA濃度を従来法(分光光度計を使用した方法)を用いて測定した。 実験に使用した試薬や機器等を以下に示す。 塩酸:希塩酸(関東化学株式会社製、特級) 検出器:吸光光度計(日立製作所製U−2000) 検出波長:272.8nm(操作方法) 全容100mlのガラスビーカーに試料を投入し、希塩酸20mlを添加した。そして、このビーカーを15分間煮沸した。なお、煮沸開始後に溶液が蒸発乾固せず、加熱前の液量を超えないように希塩酸を適宜添加した。その後、かかるビーカーが室温(25℃)になるまで放冷した。放冷後、かかるビーカーから試料をろ別し、濾液を純水を用いて全容20mlのメスフラスコに定容した(測定溶液)。そして、このメスフラスコから所定量の測定溶液を吸光光度計用セルに移したのち、検出波長272.8nmで吸光度を測定した。 この吸光度の測定値から検量線に基いて測定溶液に含まれるBTA濃度を算出した後、その濃度を試料濃度に換算することで試料に存在するBTA濃度を算出した。 上述した操作方法と同様に、検量線を以下の方法で事前に作成した。 BTAを3.0245g秤量し、希塩酸で溶解してBTA溶液を調製した。このBTA溶液を煮沸、放冷、希釈することによって、複数の濃度水準の標準試料を得た。 なお、検量線の作成に使用した標準試料のBTA絶対量は、0.0、1.32、2.64、6.70、13.20ngあり、各濃度の吸光光度は、0、0.0840、0.1735、0.4231、0.8501であり、作成した検量線の相関係数(r)は、r=0.9998であり、良好な直線性を示していたことを確認した。 実験結果を表3に示す。 表3に示すように、試料に存在するBTA濃度はいずれも定量下限値以下(<1.0wtppm)となり、試料に存在するBTAを検出することは困難であった。 なお、前処理から定量結果までに用した時間(測定時間)は、約240分間であった。(まとめ) 以上の結果から、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を使用することによって、従来の測定方法(分光光度計を用いた測定方法)では検出することができなかった板状の金属部材の表面に存在するBTAを高感度かつ高精度に測定し定量することができることを確認した。 しかも、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を使用することによって、従来の測定方法(分光光度計を用いた測定方法)と比較して簡便かつ迅速(測定時間が、約6分の1)に処理することができることを確認した。《実験例2》 本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いて、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ迅速に定量することができることを確認した。 実験例2では、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いて、ベンゾトリアゾールを定量できることを確認し、単位面積あたりのBTA濃度を得ることができることを確認した。 さらに、実験では、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法の有効性を確認した。(TMAH溶液) 誘導試薬として、水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHという)(和光純薬社製、型番:152114)をメタノールに溶解し、濃度が1.0質量%濃度になるように調製したTMAH溶液を使用した。(被対象金属部材) 被対象金属部材は、圧延銅板にベンゾトリアゾール(以下、BTAという)のメタノール溶液を噴霧してBTA処理を行った後、表面を純水で洗浄し熱風で乾燥することによりBTAが付着した圧延銅板を作成し、この圧延銅板をパンチを用いて、直径6mmの円状になるように打ち抜いて半分に切断したものを使用した(以下、試料という)。 なお、試料は、圧延銅板の表面に所定の厚さのBTA処理がなされた試料(品質が良い製造ロット)と、圧延銅板の表面に所定の厚さよりも薄いBTA処理がなされた試料(品質が悪い製造ロット)、の2種類を使用した。 また、試料は、試料量が円状で2枚を直径4mm、高さ10mmの有底筒状のステンレス製の収容容器(以下、試料カップという)に入れた。 上記BTA処理に使用したBTAのメタノール溶液は、以下のように調製したものを使用した。 BTA(和光純薬株式会社製、鹿一級)を1.01g秤量し、メタノール(関東化学株式会社製、特級)を用い全量100mlのメスフラスコに定容し1.0質量%濃度のBTA溶液を調製した。(工程) 実験では、試料カップに試料を所定量採取して1.0質量%濃度のTMAH溶液をマイクロシリンジで70μL試料表面に滴下した(前処理工程)のち、50℃の恒温槽内で乾燥した(溶媒除去工程)。そして、試料カップを熱分解装置内の炉内に挿入し、ヘリウム雰囲気下で加熱した(加熱工程)。所定時間加熱した後、生成ガスをGC/MSへオンラインで注入し加熱反応で生成されたBTAメチル化物(BTA誘導体)を測定して得られたクロマトグラムからBTAメチル化物のピークを検索し、かかるピークのピーク面積を算出した。そして、算出したBTAメチル化物のピーク面積を、検量線(BTAメチル化物のピーク面積とBTA絶対量との関係に基づく検量線)から算出した関係式に代入して試料中のBTA絶対量を算出した。そして、算出した試料中のBTA絶対量を試料量で除して、試料(つまり被対象金属部材)表面に存在するBTA濃度(単位面積あたりのBTA量)を算出した(分析工程)。(装置) 実験に使用した機器および分析条件を以下に示す。(熱分解装置) 加熱容器:熱分解装置(フロンティアラボ株式会社製PY2020iD) 熱脱着温度(炉内温度):60℃(0min)−20℃/min−300℃(1min)(GC/MS)) GC/MS:QP−2010(島津製作所製) カラム:DB−5ms(アジレント(株)社製、型番:122−5532) GC注入口温度:300℃ スプリット比:100:1 GCカラムオーブン温度:50℃(0min)−10℃/min−350℃(0min) キャリアガス(移動相):ヘリウム(175ml/min) イオン化法:EI(試料中のBTAの定量) 試料(約1.0g)表面上に存在するBTAの定量は、上述したBTA誘導体を含む生成ガスをGC/MSを用いて分析した。 まず、標準となる試料(標準試料)を調製し、検量線を作成した。 ついで、検量線のピーク面積とBTAの絶対量(ng)の関係式に試料から検出されたBTAメチル化物のピーク面積を代入し、試料から検出されたBTAの絶対量(ng)を算出した。そして、算出したBTAの絶対量(ng)を試料の表面積で除し、試料に存在していたBTA濃度(単位面積あたりのBTA量、μg/cm2)を算出した。(検量線の作成) 検量線を以下の方法により作成した。 BTAを0.0208g秤量し、メタノールを用い全量20mlのメスフラスコに定容し、1009mg/lのBTA溶液を調製した。このメスフラスコから1mlを全量10mlのメスフラスコにホールピペットで分取し、メタノールを用いて定容して100.9mg/lのBTA溶液を調製した。 そして、各標準試料用の試料カップに所定量のBTAが存在するようにマイクロシリンジを用いて1.0質量%濃度のBTA溶液を滴下した後、風乾してメタノールを揮散させた。ついで、各標準試料用の試料カップにそれぞれTMAH溶液70μlをマイクロシリンジを用いて滴下し風乾した(標準試料2〜4)。なお、ブランク標準試料(標準試料1)として、試料カップにマイクロシリンジを用いてメタノールを10μl滴下し、風乾した後、マイクロシリンジを用いてTMAH溶液70μlを滴下し風乾したものを使用した。 上記標準試料を、ヘリウムガス雰囲気にした熱分解装置に挿入し、熱分解装置にオンラインで接続されたGC/MSで測定し、BTAがBTAメチル化物に誘導された成分のピークを検出し、かかるピークのピーク面積を算出した。そして、調製した標準試料のBTA濃度とピーク面積の関係から、最小二乗法により検量線を作成した。 なお、検量線の作成に使用した標準試料のBTA絶対量は、0.0、50.44、100.9ng、201.76ng、504.4ngであった。 測定結果を図6に示す。 作成した検量線の相関係数(r)は、r=0.999であり、良好な直線性を示した。 (試料の測定) 上述した方法で作成した用途特性が良い製造ロットのものを試料1〜3、用途特性が悪い製造ロットのものを試料4〜5とした。 上記試料1〜5を、上述した工程に供し、BTAメチル誘導体のピーク面積を算出した。そして、算出した各試料のBTAのメチル化物のピーク面積値から検量線に基いてBTA絶対量(ng)を求め、その量を試料の面積で除すことで試料に付着するBTAの濃度を算出した。 実験結果を表4に示す。 表4に示すように、試料表面のBTA処理がほぼ均一の厚さとなるように作成した試料6〜8を、精度よく定量することができることが確認できた。また、試料表面のBTA処理が不均一となるように作成された試料9〜10をも正確に定量できた。つまり、試料表面に存在するBTAの僅かな量の違いをも検出し、しかも精度よく定量できることが確認できた。 したがって、本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を用いることによって、試料の用途特性に反映したBTA濃度を得ることができることが分かった。 なお、前処理から定量結果までに用した時間(測定時間)は、約40分間であった。 本発明の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法は、板状の金属部材の表面に存在するBTAの測定に適している。また、単位重量あたりのBTA濃度も単位面積あたりのBTA濃度も求めることができるので、いずれかを選択することにより用途特性に合わせた濃度を得ることができる。 BTA ベンゾトリアゾール D−BTA ベンゾトリアゾール誘導体 GC ガスクロマトグラフ GC/MS ガスクロマトグラフ質量分析計 HD 加熱容器 M 被対象金属部材 S1 前処理工程 S2 溶媒除去工程 S3 加熱工程 S4 分析工程 TMAH 水酸化テトラメチルアンモニウム 被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールの定量方法であって、前記被対象金属部材の表面に有機アルカリ溶液を接触させる前処理工程と、該前処理工程の後、前記被対象金属部材を加熱する加熱工程と、該加熱工程の後、前記有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリと前記被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールが反応した生成物質をガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計に導入し分析する分析工程と、を順に行うことを特徴とする金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 前記前処理工程と前記加熱工程の間に、前記有機アルカリ溶液に含まれる溶媒を除去する溶媒除去工程を行うことを特徴とする請求項1記載の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 前記加熱工程において、不活性ガス雰囲気下で、前記被対象金属部材を加熱することを特徴とする請求項1または2記載の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 前記加熱工程において、前記被対象金属部材を加熱する温度が、100℃〜400℃であることを特徴とする請求項1、2または3記載の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 前記有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリが、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルスルホニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、水酸化トリメチルフェニルアンモニウム、水酸化トリメチル(トリフルオロトリル)アンモニウムの中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 前記分析工程において、算出されたベンゾトリアゾールの絶対量を被対象金属部材の重量で除すことにより、被対象金属部材の表面に存在していた単位重量あたりのベンゾトリアゾール量を算出することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 前記分析工程において、算出されたベンゾトリアゾールの絶対量を被対象金属部材の面積で除すことにより、被対象金属部材の表面に存在していた単位面積あたりのベンゾトリアゾール量を算出することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法。 【課題】金属板などの金属表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ高感度に測定し、定量することができる金属表面のベンゾトリアゾールの定量方法を提供する。【解決手段】被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールの定量方法であって、被対象金属部材の表面に有機アルカリ溶液を接触させる前処理工程と、前処理工程の後、被対象金属部材を加熱する加熱工程と、加熱工程の後、有機アルカリ溶液に含まれる有機アルカリと被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールが反応した生成物質をガスクロマトグラフまたはガスクロマトグラフ質量分析計に導入し分析する分析工程と、を順に行うことを特徴とする。加熱反応だけでベンゾトリアゾール誘導体を生成できるので、被対象金属部材の表面に存在するベンゾトリアゾールを簡便かつ迅速に定量できる。【選択図】図1


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