タイトル: | 特許公報(B2)_DNA解析マイクロ流路チップ |
出願番号: | 2013557967 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12M 1/00,G01N 37/00 |
田中 浩之 ベンジャミン・ジョーンズ パオロ・フィオリーニ JP 5521126 特許公報(B2) 20140411 2013557967 20130419 DNA解析マイクロ流路チップ パナソニック株式会社 000005821 アイメック 591060898 IMEC 田中 光雄 100081422 鮫島 睦 100100158 岡部 博史 100132241 稲葉 和久 100113170 田中 浩之 ベンジャミン・ジョーンズ パオロ・フィオリーニ JP 2012096893 20120420 20140611 C12N 15/09 20060101AFI20140522BHJP C12M 1/00 20060101ALI20140522BHJP G01N 37/00 20060101ALN20140522BHJP JPC12N15/00 FC12N15/00 AC12M1/00 AG01N37/00 101 C12M 1/00 G01N 37/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN) 特表2011−522219(JP,A) 特開2007−175006(JP,A) Palmieri M. et al.,Advanced Microfluidic Packaging for Molecular Diagnostics.,43rd International Symposium on Microelectronics 2010 (IMAPS 2010),2010年,pp.36-41 Man P. F. et al.,Microfluidic plastic capillaries on silicon substrates: a new inexpensive technology for bioanalysis,Micro Electro Mechanical Systems, 1997. MEMS '97, Proceedings, IEEE., Tenth Annual International Wor,1997年,pp311-316 山下一郎他,一塩基多型センシングチップ −その場遺伝子情報解析の実現−,パナソニック技報,2011年,Vol.57, No.3,pp.21-26,79 Majeed B. et al.,Silicon micro-pillar filter fabrication for DNA separation in Lab-on-chip system.,Electronics Packaging Technology Conference (EPTC), 2012 IEEE 14th,2012年12月,pp.52-56 Majeed B. et al.,Silicon Based System for Single-Nucleotide-Polymorphism Detection: Chip Fabrication and Thermal Char,Jpn. J. Appl. Phys.,2012年 4月20日,Vol.51, No.4,pp.04DL01-1 〜 04DL01-9 3 JP2013062307 20130419 WO2013157666 20131024 12 20131220 長谷川 茜 本開示は、シリコンならびにプラスチックの積層基板上に形成されたマイクロ流路チップに関する。更に詳細には、本開示は、迅速・簡便に遺伝子を含む検体から所望のDNAを抽出、増幅、またはその配列を検出するための機能を集積したマイクロ流路チップに関する。 近年、DNA解析技術の向上により、遺伝子の多様性解析や発現解析の進展が目覚しい。特に医療分野では、遺伝子と疾患の関係が注目されている。例えば、疾患に関連した個々の遺伝子情報(特定のDNA配列)を解析することで、患者個人毎に適切な治療や投薬を行うこと(テーラーメイド医療)が可能になってきた。テーラーメイド医療では、その場診断が最も望ましく、POCT(Point of Care Testing)性が高く、迅速、簡便な手法が求められる。そのため、血液など、採取した検体から解析対象の遺伝子のDNAを抽出、増幅し、その配列の検出を迅速・簡便に行えるデバイスの実現が強く求められている。 これらの要求に応える手段の1つとして、近年、マイクロ・トータル・アナリシス・システムズ(μTAS)(またはラブ・オン・チップ(Lab−on−Chip)と呼ばれる)が注目されている。μTASやLab−on−chipは、基板内にマイクロメートルオーダーの微細構造で構成されたマイクロ流路やポートを設け、その構造内で物質の混合、抽出、精製、化学反応及び/または分析など各種の操作を行うことができ、一部は実用化されている。各種の操作が微細構造内で行われるため、常用サイズの同種の装置に比べて、(1)サンプルおよび試薬の使用量が著しく少ない、(2)分析時間が短い、(3)感度が高い、(4)現場に携帯し、その場で分析できる、及び(5)使い捨てできるなどの特徴を有する。このような目的のために作製された、基板内にマイクロ流路およびポート等の微細構造を有する構造物は総称してマイクロ流路チップ又はマイクロ流体デバイスと呼ばれる。 マイクロ流路チップを用いて短時間で検体中の遺伝子内のDNAを解析するためには、チップ内に抽出・増幅の機能を組み込む必要があり、血球などの不純物を分離する微細なフィルタや高速で昇降温温度可能なPCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)の実現が要求される。加えて、使用の簡便性が要求されるため、検体や試薬などをチップ内に安定して保持できることが望ましい。さらに、テーラーメイド医療用途では、血液から処理が可能である構成であることや、検出部でDNA中の一塩基多系(SNP)をセンシングできることが望ましい。すなわち、使用状況に柔軟に対応できる汎用性の高いチップの実現が求められている。米国特許第7807360号明細書Proceeding of 43th International Symposium on Microelectronics(IMAPS2010)000036 しかしながら、マイクロ流路チップを構成する基板材料の性質の制約から、前述した要求に全て答えるマイクロ流路デバイスの実現は難しかった。その理由を以下に説明する。マイクロ流路チップの基板材料は、プラスチックやシリコンが用いられる。プラスチック基板は、材料代が比較的安価、切削加工しやすい、生体・バイオ材料と比較的親和性が高くて試薬の保持がしやすいなどの特徴を持つ反面、サブマイクロメートルオーダーの微細構造の加工が難しいことや材料の熱伝導性が優れないため、血球などの不純物を分離するための微細なフィルタ構造や、PCR(ポリメラーゼ・チェイン・リアクション)のように高速の昇降温が要求されるPCRリアクタの形成に向かないことが課題であった。また、シリコン基板は、半導体リソグラフィ技術により微細構造を容易に形成でき、熱伝導率はプラスチックの2〜3桁高いことから、微細なフィルタ構造やPCRリアクタの形成に向く反面、材料単価がプラスチックと比較すると高価なことや、シリコンの表面と生体・バイオ材料との親和性が必ずしも高くないため、タンパク質やDNAの非特異吸着が起り、試薬の保存に向かないことが課題であった。このように、プラスチックとシリコンはそれぞれ相反する利点と欠点が存在し、各々の基板のみを用いた構成ではDNA解析用途のマイクロ流路チップに要求される条件を十分に満たすことができなかった。 上記課題を解決する手段として、シリコン部にPCRリアクタを配置し、プラスチック部に試薬を格納し、それらのシリコン層(第1層)とプラスチック層(第2層)とを積層したマイクロ流路チップが提案されている(非特許文献1)。 非特許文献1では、第1層と第2層を積層したマイクロ流路チップであって、第1層にPCRリアクタとセンサを具備し、第2層に試薬を具備し、それを第1層に供給しながら動作させる構造が開示されている。熱伝導性に優れるシリコンからなる第1層にPCRリアクタを形成し、第2層に試薬を保持するため、高速な昇降温と同時に簡便な処理に対応できる。しかしながら、開示された方法によると、第1層に、PCRリアクタとセンサが一体形成されており、PCRリアクタとセンサ間の距離が狭い。そのため、センサ部へ熱が伝達しやすく、センサの機能を低下させること(−特にセンサ部に試薬を保持している場合に−)が問題であった。さらに、ヒートシンク等の排熱部の配置するときに制約が生じることが問題であった。すなわち、サイズの大きなヒートシンクが配置するスペースがないため、PCRリアクタを冷却動作させているときの放熱が不十分になり、PCRの昇降温速度の低下をもたらすことが問題であった。 その上、開示されている方法によると、搭載されているPCRリアクタは1基のみであり、検体は精製されたゲノムしか使えず、血液からの処理ができない構成になっている。血液から解析対象となるゲノム抽出することを目的としたPCRと、その解析対象中のSNPの有無によって選択的にDNAを増幅することを目的したPCRなど、PCRが2段階必要な用途には対応できない。PCRリアクタが2つ以上になるとヒートシンクの容量(すなわちサイズ)が理論上2倍必要なので、開示されている構造では、ヒートシンクを配置するスペースに限界があった。 すなわち、従来構造では、目的とする用途に対して、PCRリアクタとセンサと試薬を保持する場所との配置関係が最適でないため、サーマルリアクタにおいて十分速い昇降温ができないことが、大きな課題であった。 本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、DNA解析マイクロ流路チップにおいて、PCRリアクタとセンサと試薬を保持する場所の配置を最適化することで、十分な大きさのヒートシンクが配置できる場所を確保し、放熱性を高めることで、PCRの昇降温速度を十分に向上させ、DNAの抽出、増幅、またはその配列の検出を迅速・簡便に行うことを実現することを目的とする。 上記目的を達成する本開示に係るDNA解析マイクロ流路チップは、検体に含有されるDNAをPCR法により解析するために用いられるDNA解析マイクロ流路チップであって、以下を具備する: シリコンからなる第1層、および プラスチックからなる第2層、ここで、 前記第2層は、前記第1層の一部分の領域上に積層され、 前記第2層は、試薬、送液機構およびセンサを具備し、 前記第1層は、第2層が積層されていない部分の第1層の領域上にPCRリアクタを具備する。 こうすることによって、熱伝導性がシリコン(第1層)に比べて小さいプラスチック部(第2層)に試薬とセンサが格納されることから、PCRリアクタ動作時に、センサや試薬への熱伝導しやすい問題が解決される。すなわち、センサの機能を劣化させることなく動作させることができる。 本開示によれば、PCRの放熱性を高めることで、その昇降温速度を十分に向上させ、DNAの抽出、増幅、またはその配列の検出を迅速・簡便に行えるDNA解析マイクロ流路チップを提供することができる。[図1]本開示のDNA解析マイクロ流路チップの概念図。[図2]本開示のDNA解析マイクロ流路チップの構成要素を示す断面模式図。[図3]本開示のシリコンチップおよびプラスチック部に含まれる構成要素のレイアウト図。[図4]本開示の方法を用いて得られたマイクロ流路チップ。[図5]本開示のマイクロ流路チップと熱制御系との接続を示す模式図。 (a)展開図 (b)完成図[図6]本開示の実施例1で得られたPCRリアクタにおける熱流に対する加熱時間の関係を示すグラフ。[図7]本開示の実施例2で得られた遺伝子型解析の結果を示す。 本開示の第1態様に係るDNA解析マイクロ流路チップは、検体に含有されるDNAをPCR法により解析するために用いられるDNA解析マイクロ流路チップであって、以下を具備する: シリコンからなる第1層、および プラスチックからなる第2層、ここで、 前記第2層は、前記第1層の一部分の領域上に積層され、 前記第2層は、試薬、送液機構およびセンサを具備し、 前記第1層は、第2層が積層されていない部分の第1層の領域上にPCRリアクタを具備する。 本開示の第2態様に係るDNA解析マイクロ流路チップは、上記第1態様において、前記PCRリアクタは、前記第1層の中心部よりも端部の近くに配置されていてもよい。 こうすることによって、PCRリアクタは、チップ外周部に配置され、かつセンサ部と距離が離れることから、十分な冷却能をもつサイズの大きなヒートシンクを配置することができる。すなわち、PCRリアクタを冷却動作させているときの放熱を十分にでき、PCRの昇降温速度の向上させることができるようになる。 本開示の第3態様に係るDNA解析マイクロ流路チップは、上記第2態様において、2以上の前記PCRリアクタが第1層に設けられ、 前記2以上のPCRリアクタは、互いに連通していてもよい。 こうすることによって、PCRが2段階必要な用途、すなわち血液からのPCR、SNP解析等の用途に使用できるようになり、かつその場合も十分な冷却能を持つサイズの大きなヒートシンクを配置することができる。すなわち、2つ以上のPCRリアクタを有する系においても、PCRリアクタを冷却動作させているときの放熱を十分にでき、PCRの昇降温速度の向上させることができるようになる。 (実施の形態1) 以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。 図1は、本開示のDNA解析マイクロ流路チップの概念図である。チップA:101は、シリコンであり(以降、第1層と記載)、共通プラットフォームとして機能させる部分として、PCRリアクタ(1)103とPCRリアクタ(2)104の他にミキサー105およびマイクロシーブ106を図のように接続する。なお、PCRリアクタ(1)103、(2)104は、第1層の中心部よりも端部に近い側に配置される。 チップB:102は、プラスチックであり(以降、第2層と記載)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)やPDMS(ポリジメチルシロキ酸)を用いることが好ましい。また、第1層との接続部は、接着剤やエラストマーを用いるのが好ましく、第1層のPCRリアクタ(1)103、(2)104と重ならないように接続される。試薬は、それぞれのPCRリアクタ反応に用いるプライマーやポリメラーゼなどの試薬(1)、(2)の他に、センサに用いる試薬(3)を配置する。検体は、孔107、試薬(1)、試薬(2)は、それぞれ孔108、孔109から注入する。試薬は、フリーズドライ化させておき、使用するときにバッファ液を注ぎ込んで溶かして使ってもよい。第2層の送液機構には、ポンプ110およびバルブ111を配置し、試薬を第1層側へ注ぎ、PCRリアクタへの投入量、タイミングを制御する。 図2は、本開示のDNA解析マイクロ流路チップの構成要素を示す断面模式図である。(a)は、試薬、ポンプを含む断面図である。ポンプ210は、第2層に埋め込まれ、脱着が容易にできるようになっている。ポンプ210の駆動部のアクチュエータ212は、ピエゾ素子やポリマーアクチュエータを用いるとよく、メンブレン213を駆動できるように配置する。また、チップが使い捨てで使われることを想定すると、安価なポリマーアクチュエータを用いることが特に好ましい。また、第1層中にはマイクロ流路が具備され、それは、下面からフォトリソグラフィとRIE(リアクティブイオンガスエッチング)によってパターニングされる。また、パターニングされた流路を密閉させるために、パイレックスガラス214を蓋として用いる。パイレックスガラス214は、陽極酸化法で第1層の下面に対して接合されている。また、第2層に具備された部品と第1層のマイクロ流路を接続するために、第2層を接合する前に上面から貫通穴を形成している。さらに、前述したとおり、第2層は、PCRリアクタ203が配置されている領域と重ならないように接続される。 図3は、本開示の実施の形態に用いた第1層および第2層に含まれる構成要素のレイアウト図を示す。第1層の厚さは、500〜800μm程度が好ましい。2枚のマスクを用いて上面および下面からそれぞれのパーツがエッチングされる。PCRリアクタ1の303、PCRリアクタ2の304の周りは、概ねRIEにより上面および下面の両面からエッチングされ、完全に掘り抜かれ、熱的に孤立している。一方で、流路およびミキサー305、マイクロシーブ306は、RIEによって下面より約300μmの深さをエッチングして形成され、パイレックスガラスを陽極酸化接合し表面がふさがれている。孔307,308,309と第2層との接続部の貫通穴は、RIEによって上面より約300μmの深さをエッチングして形成されている。 一方で、第2層に含まれる構成要素については、符号310の箇所にポリマーアクチュエータのポンプ、符号311の箇所にはポリマーアクチュエータのバルブが取りつけられる。また、符号315にはセンサが取りつけられる。 図4は、実施の形態によって実際に作製されたDNA解析マイクロ流路チップの第2層とそれに接合された第1層の写真である。 図5は、本開示で得られたDNA解析マイクロ流路チップとヒートシンク521との接続について示した模式図である。前記第1層の中心部より端部に近い側に集まるように前記PCRリアクタを配置し、かつ前記PCRリアクタを含む第1層のシリコン面(上面)が第2層に覆われず露出させることで、2つのPCRに対して、効率がよくサイズが大きいヒートシンク521を取り付けることができた。 その結果、投入した熱量に対して、加熱(または冷却)にかかる時間について、図6のような関係を得ることができた。図6は、実線が今回得られた曲線で、点線はヒートシンクがない場合の曲線である。図6に示されるように、加熱時間が1ケタ以上向上することを確認した。 本開示の一実施の形態に係るDNA解析マイクロ流路チップを用いて、ヒトゲノム検体からDNA増幅を行った。DNA増幅のモデルとして、テンプレートとしてヒトゲノムを用いた。ヒトゲノムの第六エクソンから、DNA断片を増幅するプライマーとして、Control Primer1(5’−TAGGAAGGATGTCCTCG−3’ :配列番号1)およびPrimer3(5’−TTCTTGATGGCAAACACAGTTAAC−3’ :配列番号2)を用いた。 試薬1には、(A)を用い、ミキサーで検体と撹拌した後に、PCR1リアクタでの反応を98℃30秒、60℃30秒、68℃30秒の条件で35サイクル(45分)PCRを行った。その後、マイクロシーブで不純物を除去した。この試料液のうち3μL採取し、電気泳動により、DNA増幅の有無を確かめた。図7の第2レーンがサンプルから採取したDNAフラグメントの増幅有無の結果である。図7のレーン6に示すように、わずか45分で所望のDNA断片が増幅したことが確認された。 本開示によれば、PCRの放熱性を高めることで、その昇降温速度を十分に向上させ、DNAの抽出、増幅、またはその配列の検出を迅速・簡便に行えるDNA解析マイクロ流路チップを提供することができる。 101 シリコン基板 102 プラスチック基板 103 PCRリアクタ1 104 PCRリアクタ2 105 ミキサー 106 マイクロシーブ 107 孔(検体) 108 孔(試薬1) 109 孔(試薬2) 110、210 ポンプ 111 バルブ 212 アクチュエータ 213 メンブレン 214 パイレックスガラス 521 ヒートシンク[配列表] 検体に含有されるDNAをPCR法により解析するために用いられるDNA解析マイクロ流路チップであって、以下を具備する: シリコンからなる第1層、および プラスチックからなる第2層、ここで、 前記第2層は、前記第1層の一部分の領域上に積層され、 前記第2層は、試薬、送液機構およびセンサを具備し、 前記第1層は、第2層が積層されていない部分の第1層の領域上にPCRリアクタを具備する、DNA解析マイクロ流路チップ。 請求項1に記載のDNA解析マイクロ流路チップにおいて、 前記PCRリアクタは、前記第1層の中心部よりも端部の近くに配置されている、DNA解析マイクロ流路チップ。 請求項2記載のDNA解析マイクロ流路チップにおいて、 2以上の前記PCRリアクタが第1層に設けられ、 前記2以上のPCRリアクタは、互いに連通している、DNA解析マイクロ流路チップ。