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タイトル:公表特許公報(A)_組織特異性を改変し、AAV9媒介遺伝子導入を改善するための組成物および方法
出願番号:2013554622
年次:2014
IPC分類:C12N 15/09,A61K 48/00,A61P 43/00,C12N 9/24


特許情報キャッシュ

ウイルソン,ジエイムズ・エム ベル,クリステイー・エル バンデンバーグ,リユク・エイチ JP 2014507154 公表特許公報(A) 20140327 2013554622 20120217 組織特異性を改変し、AAV9媒介遺伝子導入を改善するための組成物および方法 ザ・トラステイーズ・オブ・ザ・ユニバーシテイ・オブ・ペンシルベニア 502409813 特許業務法人小田島特許事務所 110000741 ウイルソン,ジエイムズ・エム ベル,クリステイー・エル バンデンバーグ,リユク・エイチ US 61/443,879 20110217 C12N 15/09 20060101AFI20140228BHJP A61K 48/00 20060101ALI20140228BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140228BHJP C12N 9/24 20060101ALN20140228BHJP JPC12N15/00 AA61K48/00A61P43/00 121C12N9/24 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN US2012025550 20120217 WO2012112832 20120823 51 20130927 4B024 4B050 4C084 4B024AA01 4B024EA02 4B024GA11 4B050CC07 4B050DD02 4B050DD11 4B050LL01 4C084AA13 4C084MA02 4C084NA05 4C084NA13 4C084ZC751連邦支援の研究または開発に関する記載 本発明は、国立衛生研究所(National Institute of Health)からの助成金NHLBI P01番号P01−HL−059407の下で、政府の支援によりなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。 遺伝子治療のために評価された最初のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、血清型2(AAV2)に基づくものであり、インビボ送達に伴い、種々の体細胞に形質導入することが示された[Z.Wu,et al(2006)Mol Ther,14:316−327]。遺伝子治療の最初の臨床的成功の1つは、AAV2ベクターを使用して、遺伝的な失明に罹患した患者に対し、網膜下に注入して視覚状況の一部を回復させたことである[A.Kern,et al,(2003)J Virol,77:11072−11081;AM Maguire,et al,(2008)N Engl J Med,358:2240−2248]。しかしながら、他の疾患の治療に対するAAV2ベクターの適用は、不十分な形質導入効率ならびにカプシドに対する既存の中和抗体およびT細胞活性化などの種々の免疫学的問題により、それほど成功していない[上記に引用のWu,et al]。AAV2は、細胞認識のための一次受容体としてヘパラン硫酸(HS)プロテオグリカンを利用することが知られている[上記に引用のKern et al]。さらなるベクターが、AAV1およびその近縁のAAV6などの他の既存の血清型に由来するAAVカプシドに基づいて開発されており、これらは両方とも、シアル化された糖タンパク質を媒介とした、筋肉への形質導入および細胞結合の増強を示した[Z.Wu et al,(2006)J Virol,80:9093−9103;W.Xiao,et al,(1999)J Virol,73:3994−4003]。AAV5に基づくベクターもまた、N−結合シアル酸(SA)への結合を必要とするが、脳への直接注入に伴うCNSへの形質導入の増強を示す[RW Walters et al,(2001)J Biol Chem,276:20610−20616;BL Davidson,et al,(2000)Proc Natl Acad Sci USA,97:3428−3432]。ヒト遺伝子治療のためのAAVベクターの可能性は、ヒトおよび非ヒト霊長類組織中の潜在ゲノムに由来する新規カプシドの大規模かつ多様なファミリーの発見を通して拡大した。これによって、AAVファミリーの数は、6つの抗原クレードにまたがる120を超えるゲノムに拡大した[G.Gao et al,(2003)Proc Natl Acad Sci USA,100:6081−6086;G.Gao,et al,(2004)J Virol,78:6381−6388;G Gao et al,(2002)Proc Natl.Acad Sci USA,99:11854−11859]。高解像度のX線結晶構造およびより低解像度の低温電子顕微鏡再構成像が、AAVカプシドの多くに対して決定され、表面に露出した合計9つの超可変領域を含む高度に保存されたコア領域が示された[HJ Nam et al,(2007)J Virol,81:12260−12271]。これらの新規内在性カプシドに基づくベクターの評価は、免疫学的続発症の減少に加え、実質的に向上した形質導入効率の達成の点から、かなり有望なものになっている[上記に引用のG.Gao et al,(2002)Proc Natl Acad.Sci]。 アデノ随伴ウイルス(AAV)血清型9に基づくベクターが、多くの器官に対するインビボ遺伝子送達の最有力候補として出現した。AAV9は、心筋症治療のための心臓[LT Bish,et al,(2008)Hum Gene Ther 19:1359−1368]および脊髄性筋萎縮症などの疾患の治療ためのニューロン[S.Duque,et al,(2009)Mol Ther,17:1187−1196;KD Foust et al,(2009)Nat Biotechnol,27:59−65]のターゲティングにおいて極めて有望であることが示された。AAV9はまた、体液性応答を誘発することなく肺の肺胞上皮細胞に極めて効率的に形質導入し、ベクターの効率的な再投与を可能にする[MP Limberis and JM Wilson,(2006)Proc Natl.Acad Sci.USA,103:12993−12998]。しかしながら、これらの指向性を媒介する受容体はまだ明らかにされていない。 必要とされるのは、宿主内への導入遺伝子のAAV媒介ターゲティング送達のための安全で効率的な方法である。 本発明は、所望の標的細胞上のAAV9受容体のアベイラビリティを改変するための、かつベクター効力を改変するための薬理学的手法を提供する。この手法は、末端β−ガラクトースがAAV9の一次受容体であるという本発明者らの発見により可能になった。さらに、この手法は、AAV9のβ−ガラクトース結合ドメインを含有する他のAAVにも適用できることが予想される。 一態様では、本発明は、AAV9由来のカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターのターゲティングおよび/または細胞取り込み効率を改変する方法を提供する。本方法は、ベクターに結合するβ−ガラクトース細胞表面受容体のアベイラビリティを改変する組成物を被験体に送達する工程を含む。 一態様では、宿主の標的細胞の細胞表面は、末端のシアル酸残基および末端から2番目のβ−ガラクトース残基を有し、このβ−ガラクトース残基が露出するように本発明により改変されるグリカンを含有する。一実施形態では、本方法は、ノイラミニダーゼと組み合わせてAAVウイルスベクターを被験体に送達する工程を含み、それによって、ノイラミニダーゼは、グリカン上の末端シアル酸を切断して、β−ガラクトシダーゼのアベイラビリティを増大させることによって細胞によるAAV取り込みの効率を増大させる。被験体は、ノイラミニダーゼで前処置されてもよい。一実施形態では、ノイラミニダーゼは、エキソノイラミニダーゼである(すなわち、それは、内部シアル酸とは対照的に、末端シアル酸を切断の標的にする)。 別の実施形態では、AAV9ベクターは、AAV9に対する受容体(例えば、末端β−ガラクトース残基を有する細胞表面グリカン)を有する第1サブセットの細胞上に露出した細胞表面の末端β−ガラクトース残基を機能的に除去することにより、末端β−ガラクトースを有する第1サブセットの細胞から他に向けられ、そのため、AAVは、末端β−ガラクトースを有する、被験体の第2サブセットの細胞を新たな標的にし、かつ/または第2サブセットの細胞に接触するAAVの数が増加し、それによって、これらの細胞による取り込みが増加する。一実施形態では、第1サブセットの細胞を機能的に除去する成分が、第1サブセットの細胞に局所的に送達される。一実施形態では、β−ガラクトースは、AAV9細胞表面受容体を有する第1サブセットの細胞において酵素的に除去され、それによって、前記サブセットの細胞によるAAV取り込みが低下または消失し、AAV9受容体(末端β−ガラクトース)を有する、被験体の第2サブセットの細胞がAAVの新たな標的になる。一実施形態では、β−ガラクトースは、AAV9ベクターと組み合わせて、ガラクトシダーゼを第1サブセットの細胞に送達することにより酵素的に除去される。別の実施形態では、末端β−ガラクトース残基に結合するレクチンが被験体に送達されて、これらの残基に結合することによりβ−ガラクトースが遮断される。 さらに別の態様では、本発明は、ノイラミニダーゼおよびAAV9ベクターを含む組合せ剤を被験体に送達することにより、末端シアル酸および末端から2番目のβ−ガラクトース残基を有する表面グリカンを有する細胞へのAAV9ベクターの遺伝子送達を増大させる方法であって、前記ベクターが、AAV逆方向末端反復配列を有するミニ遺伝子および宿主細胞においてその発現を指示する調節配列に作動的に連結された異種遺伝子をさらに含む方法を提供する。 一態様では、組成物は、野生型(wt)AAV9が誘導気道に形質導入する天然の能力は実質的に低下または消失するが、wtAAV9と同様な肝臓および心臓の形質導入は保持される変異体AAV9ベクターをさらに提供する。一実施形態では、変異体AAVは、位置470の天然アミノ酸(Asn)が置換されているAAV9カプシドを有する。一例では、この置換はアラニンである。別の実施形態では、変異体AAVは、位置446の天然アミノ酸(Tyr)が置換されているAAV9カプシドを有する。一例では、この置換はアラニンである。さらに別の実施形態では、変異体AAVは、位置271の天然アミノ酸(Asp)が置換されているAAV9カプシドを有する。一例では、このアミノ酸はアラニンで置換されている。 別の態様では、本発明は、位置271、446、および470のアミノ酸の1つまたは複数をアラニンまたは別のアミノ酸、すなわち、好ましくは小さく非電荷の側鎖を有するアミノ酸に改変することにより、気道上皮へのAAV9ベクターのターゲティングは消失させるが、肝臓および心臓に形質導入するその能力は保持させる方法を提供する。別の実施形態では、アミノ酸は、結合部位のコンフォメーションに影響を及ぼさない、メチル基を伴う小さな側鎖を有する。 さらなる態様では、本発明は、AAV9ガラクトース結合ドメインを含有するように操作されたAAVカプシドを有するAAVベクターを提供する。一実施形態では、操作されたAAVカプシドは、親AAV9の対応するアミノ酸位置に挿入された、AAV9のY446、N470、A472、およびV472ならびにAAV9のD271、N272、およびW503を含有する。 さらに別の実施形態では、本方法は、AAV9由来のカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターを単離するための方法を提供する。この方法は、(a)固体担体に連結されたβ−ガラクトースを含む分子に接触させるように、AAV9由来のカプシドを有するAAVウイルスベクターを含む試料を曝露して、それによってβ−ガラクトースに対する結合部位を有する精製標的を、その分子に選択的に結合させる工程と、(b)固体担体を洗浄して、固体担体に非特異的に結合している物質を試料から除去する工程と、(c)固体担体からウイルスベクターを分離する工程とを含む。 さらなる実施形態では、本発明は、(a)ノイラミニダーゼ、(b)AAV9カプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および(c)薬学的に許容可能な担体の組合せを含む組成物を提供する。このベクターは、AAV逆方向末端反復配列を有するミニ遺伝子および宿主細胞においてその発現を指示する調節配列に作動的に連結された異種遺伝子さらに含む。 さらに別の実施形態では、本発明は、(a)レクチン、(b)AAV9カプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、および(c)薬学的に許容可能な担体の組合せを含む組成物を提供する。 本発明のこれらの態様および他の態様は、本発明の以下の詳細な説明から容易に明らかになる。シアル酸(SA)が欠失しているグリカンへのAAV結合に関する研究結果を示す。図1Aは、各細胞型または酵素処理についてのNおよびO−結合グリカンの概略図である。図1Bは、ノイラミニダーゼ(NA)による処理によりPro−5細胞の表面からSAを除去し、ベクターをNA処理および未処理の細胞に適用して結合を評価したときの結果を示すグラフである。空のAAV9カプシドについて、平均相対蛍光単位(RFUで示される)に基づいて、465の種々のグリカンに対する結合をスクリーニングし、AAV9に結合した上位5つのグリカンを同定した(図示せず)。図1Cは、上位5つのグリカンの構造およびそれらの概念図である。%CV:パーセントとして表現した変動係数(データの平均値に対する標準偏差の比)。CHO細胞の結合および形質導入についての、ガラクトースに対するAAV9の依存性に関する研究結果を示す。図2Aは、ffLucを発現するAAV2、6、または9を、Pro−5、Lec−2、またはLec−8のいずれかに加えて4℃で1時間インキュベートし、全DNAを単離して、結合したゲノムコピーをqPCRにより測定した結果を示すグラフである。図2Bは、細胞を37℃で48時間インキュベートし、ffLuc発現について分析した結果を示すグラフである。図2Cは、AAV結合に対して競合する種々のレクチンの存在下で、AAV2およびAAV9をNA処理Pro−5細胞に適用した結果のグラフを示す。図2Dは、AAV形質導入に対して競合する種々のレクチンの存在下でAAV2およびAAV9をNA処理Pro−5細胞に適用した結果を示すグラフである。RCAは細胞に対するその毒性のために形質導入研究には使用されなかった。図2Eは、NAまたはNAおよびβ−ガラクトシダーゼの両方(NAおよびβ−gal)のいずれかで処理されたPro−5細胞にAAV2およびAAV9を加えてAAV結合を評価した結果のグラフを示す。図2Fは、NAまたはNAおよびβ−ガラクトシダーゼの両方(NAおよびβ−gal)のいずれかで処理されたPro−5細胞にAAV2およびAAV9を加えてAAV形質導入を評価した結果を示すグラフである。ffLuc、ホタルルシフェラーゼ;RLU、相対光単位。ガラクトース結合に必要とされるAAV9カプシドアミノ酸に関する研究結果を示す。図3Aは、荷電または極性側鎖を含有する、AAV9にユニークな特定のアミノ酸をアラニン(A)に変異させて、ガラクトース結合を担うアミノ酸を同定した結果を示すグラフである。14の変異体ベクターを構築し、天然アミノ酸とその特定位置ならびにその後の新たなアミノ酸−アラニン、Aによって命名した。Pro−5、Lec−2、およびLec−8細胞への結合について、AAV9と比較して変異体を試験した。ベクターを各細胞株に加え(5×109GC)、4℃で1時間インキュベートした。洗浄後、全DNAを単離して、結合ベクターGCを定量PCRにより測定した。N470がAAV9ガラクトース結合に必要であることが判明した。図3Bは、次いで、N470に近接して位置する19のアミノ酸を変異させて、AAV9ガラクトース結合に対する効果を検討した結果を示すグラフである。さらに、セリンまたはアスパラギン酸のいずれかへの非極性アミノ酸A472またはV473の変異を含有する4つの他の変異体も生成させた。次いで、上記に記載のように、これらの変異体ベクターの結合を評価した。A472およびV473に加えて、D271、N272、Y446およびW503も、AAV9ガラクトース結合にとって重要であることが見出された。データは平均+SDとして示される。変異体ベクターのインビトロ形質導入効率を示す。図4Aは、すべてffLucを発現する、ガラクトースに結合する能力を失った5つの変異体(N470A、D271A、N272A、Y446A、およびW503A)ならびにガラクトース結合を保持した2つの変異体(S469AおよびE500A)およびAAV9対照ベクターを、109GC/ウェル(MOI=104)でLec−2細胞に加え、48時間後にffLuc発現を測定した結果を示すグラフである。図4Bは、すべてffLucを発現する、ガラクトースに結合する能力を失った5つの変異体(N470A、D271A、N272A、Y446A、およびW503A)ならびにガラクトース結合を保持した2つの変異体(S469AおよびE500A)およびAAV9対照ベクターを、109GC/ウェル(MOI=104)でPro−5細胞に加え、48時間後にffLuc発現を測定した結果を示すグラフである。データは平均+SDとして示される。RLU、相対光単位。rAAV2/9インストール後の鼻における導入遺伝子発現に対する、ノイラミニダーゼによる前処理の効果に関するインビボ研究の結果を示す線グラフである。1、3、7、14、21、および28日目(感染後の日数(期間))に、鼻腔内でルシフェリンによりイメージングされたルシフェラーゼの全放射フラックス(1秒当たりの光子(p/s))として結果を示す。 標的細胞上のAAV9受容体のアベイラビリティを改変するための、かつベクター効力を改変するための薬理学的手法を説明する。この手法は、末端β−ガラクトースがAAV9に対する一次受容体であるという本発明者らの発見により可能になった。本明細書を通した便宜のために、AAV9に言及する。しかしながら、細胞表面の末端β−ガラクトースに対するAAV9カプシド結合ドメインを含有する別のAAV、または細胞表面の末端β−ガラクトースに対する別のAAVカプシド結合ドメインを含有するAAV、例えば、クレードF由来の別のAAVに置き換えることができることは理解されよう。加えて、本明細書に記載の方法および組成物は、ウイルス粒子であるベクター(すなわち、ウイルスベクターの取り込みに続いて宿主細胞に送達されるゲノム配列を、その中にパッケージングしたAAVカプシド)ならびに空のAAV9カプシド(その中にパッケージングされた配列を含まないインタクトAAVカプシド)にとって有用である。さらに、本発明は、野生型カプシドおよび操作されたカプシドの両方に対して利用可能であると予想される。 一実施形態では、可変領域Iにより形成される、AAVカプシドの2回軸および5回軸に面する突起外表面のポケットを含むAAV9ガラクトース結合ドメインを含有するように操作されたAAVカプシドを有するAAVベクターが提供される。一実施形態では、操作されたAAVカプシドは、親AAV9の対応するアミノ酸位置に挿入されたAAV9のY446(可変領域(VR)IVの直前の保存ドメイン)、N470(VR IV)、A472(VR IV)、およびV473(VR IV)、ならびにAAV9のD271(VR I)、N272(VR I)、およびW503(VR V)を含有する。親AAVは、これらのアミノ酸の1つまたは複数を天然に有するが、ガラクトースを天然に結合することはなく、これらのアミノ酸のすべてを天然に含有することもない。例えば、Y446、D271、およびN272は多くの血清型の間で保存される;一方、N470は保存されない。したがって、改変AAVカプシドは、N470(AAV9の位置番号に基づいて)の操作を必要とするにすぎない可能性がある。しかしながら、そのようなAAVカプシドは、AAV9結合ドメインを提供するために上記のアミノ酸の1つまたは複数の操作を必要することがある。一実施形態では、操作されたAAV9は、その野生型においてシアル酸結合を有するAAVに由来するが、ガラクトースへの操作のために、立体障害によりシアル酸結合を欠失している。 別の態様では、本発明は、位置271、446、および470(可変領域IV)のアミノ酸の1つまたは複数をアラニンまたは別のアミノ酸に改変することにより、気道上皮へのAAV9ベクターのターゲティングは消失させるが、肝臓および心臓に形質導入するその能力は保持させる方法を提供する。一実施形態では、野生型のアミノ酸と置換するアミノ酸は、小さく非電荷の側鎖を有するアミノ酸である。別の実施形態では、このアミノ酸は、メチル基がある小さな側鎖を有し、例えば、Val、Ile、およびLeuである。さらに別の実施形態では、ガラクトース結合機能を消失させるように結合部位のコンフォメーションに影響を及ぼすことがない別の適切なアミノ酸が選択される。例えば、Arg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asp、Gln、Cys、Ala、Val、Isle、Leu、Met、Phe、Tyr、Trpである。一実施形態では、このアミノ酸は、プロリン以外の群から選択される。 さらに、誘導気道細胞、心臓、および肝臓を標的とする、wtAAV9とは異なるターゲティング効率を有する変異体AAV9ベクターが提供される。一例では、そのような変異体AAV9ベクターは、位置271、446、および470のアミノ酸の1つまたは複数を改変することにより、気道上皮へのターゲティングは消失するが、肝臓および心臓に形質導入するその能力は保持する。一実施形態では、野生型のアミノ酸と置換するアミノ酸は、小さく非電荷の側鎖を有するアミノ酸である。別の実施形態では、このアミノ酸は、メチル基がある小さな側鎖を有し、例えば、Val、Ile、およびLeuである。さらに別の実施形態では、ガラクトース結合機能を消失させるように結合部位のコンフォメーションに影響を及ぼすことがない別の適切なアミノ酸が選択される。例えば、Arg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asp、Gln、Cys、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Tyr、Trpである。一実施形態では、このアミノ酸は、プロリン以外の群から選択される。 一実施形態では、本発明は、野生型(wt)AAV9が誘導気道に形質導入する天然の能力は実質的に低下または消失するが、wtAAV9と同様な肝臓および心臓の形質導入は保持される変異体AAV9ベクターを提供する。一実施形態では、変異体AAVは、位置470の天然アミノ酸(Asn)が置換されているAAV9カプシドを有する。一例では、この置換はアラニンである。別の実施形態では、変異体AAVは、位置446の天然アミノ酸(Tyr)が置換されているAAV9カプシドを有する。一例では、この置換はアラニンである。さらに別の実施形態では、変異体AAVは、位置271の天然アミノ酸(Asp)が置換されているAAV9カプシドを有する。一例では、このアミノ酸はアラニンで置換されている。I.定義 クレードFは、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づいて、(少なくとも1000レプリケートの)少なくとも75%のブートストラップ値および0.05以下のポアソン補正距離尺度による近隣結合アルゴリズムを使用して決定された場合に、AAV9、hu.14/AAV9[GenBank受託番号AY530579]、hu.31[AY530596]、およびhu.32[GenBank受託番号AY530597]と系統発生的に関連するAAV群である。近隣結合アルゴリズムは、文献に広範囲に記載されている。例えば、M.Nei and S.Kumar,Molecular Evolution and Phylogenetics(Oxford University Press,New York(2000)を参照のこと。このアルゴリズムを実行するために使用することができるコンピュータプログラムが入手可能である。例えば、MEGA v2.1プログラムは、改変Nei−Gojobori法を実行する。これらの手法およびコンピュータプログラム、ならびにAAV vp1カプシドタンパク質の配列を使用すると、当業者は、選択されたAAVが、本明細書で同定されたクレードの1つに含まれるか、他のクレードに含まれるか、またはこれらのクレードの外であるか容易に判定することができる。 クレードF AAVは天然のAAV vp1カプシドであってもよい。しかしながら、AAVは天然のAAVに限定されない。このクレードは、限定はされないが、組換え、改変または変更、操作、キメラ、ハイブリッド、合成、人工等のAAVを含む、非天然AAVを包含することができ、これらは、AAV vp1アミノ酸配列のアライメントに基づいて、(少なくとも1000レプリケートの)少なくとも75%および0.05以下のポアソン補正距離尺度による近隣結合アルゴリズムを使用して決定された場合に、系統発生的に関連する。 別の実施形態では、組換えAAVは、細胞表面の末端β−ガラクトースに結合するAAV9の結合ドメインを含有するように操作されたカプシドを有するクレードF AAV以外のクレードに由来してもよい。 別の実施形態では、本発明で使用されるAAVは、AAV9のvp3タンパク質(配列番号1のアミノ酸203〜736)と少なくとも95%同一であり、AAV9 vp2(配列番号1のほぼアミノ酸138〜736)と少なくとも95%同一であり、かつ/または完全長aav9 vp1カプシド(配列番号1のアミノ酸1〜736または2〜736)と少なくとも95%同一であるカプシドを含むAAVベクターである。別の実施形態では、AAVは、野生型AAV9(配列番号1)のvp1、vp2、および/またはvp3に対して、約96%、約97%、約98%、または約99%であり、β−ガラクトースに対するAAV9細胞表面結合ドメインを含有する。vp3ドメインが可変領域の大部分を含有するので、AAVが、AAV9のvp1上でAAV9と95%の同一性を有する一方、AAV9のvp3とより高い同一性を有する可能性があることは、当業者により理解されよう。一実施形態では、AAVベクターを調製するために使用されるAAVは、AAV9のvp1、vp2、および/またはvp3と100%同一であるカプシドを有する。さらに別の実施形態では、AAVベクターを調製するために使用されるAAVは、AAV9カプシドを有する。ただし、それは本明細書で定義されるような1つまたは複数の変異を含有する。 用語「実質的な相同性」または「実質的な類似性」は、アミノ酸またはそれらの断片を指す場合には、適切なアミノ酸の挿入または欠失を入れて、別のアミノ酸(またはその相補鎖)と最適にアライメントされた場合、アライメントされた配列の少なくとも約95〜99%においてアミノ酸配列同一性があることを指す。好ましくは、相同性は、完全長配列、またはその1つのタンパク質、例えばcapタンパク質、repタンパク質、もしくは少なくとも8個以上のアミノ酸長、望ましくは少なくとも15個のアミノ酸長であるそれらの断片にわたるものである。適切な断片の例が、本明細書に記載される。 用語「高度に保存された」により、少なくとも80%の同一性、好ましくは少なくとも90%の同一性、より好ましくは97%超の同一性を意味する。同一性は、当業者に公知のアルゴリズムおよびコンピュータプログラムを使用して、当業者により容易に決定される。 一般に、2つの異なるアデノ随伴ウイルス間の「同一性」、「相同性」、または「類似性」を指す場合、「同一性」、「相同性」、または「類似性」は、「アライメントされた」配列に関して決定される。「アライメントされた」配列または「アライメント」は、多くの場合、参照配列と比較して、欠失または追加の塩基またはアミノ酸に対する補正を含む、複数の核酸配列またはタンパク質(アミノ酸)配列を指す。核酸配列の文脈における用語「配列同一性」、「パーセント配列同一性」、または「パーセント同一性」は、最大一致になるようにアライメントされた場合に同一である、2つの配列中の残基を指す。配列同一性比較の長さは、ゲノムの完全長にわたるものでも、遺伝子コード配列の完全長にわたるものでもよく、または少なくとも約500〜5000ヌクレオチドの断片が望ましい。しかしながら、例えば少なくとも約9ヌクレオチド、通常は少なくとも約20〜24ヌクレオチド、少なくとも28〜32ヌクレオチド、少なくとも約36以上のヌクレオチドのより小さな断片間の同一性が望ましいこともある。同様に、「パーセント配列同一性」は、タンパク質の完全長またはその断片にわたるアミノ酸配列について容易に決定することができる。適切には、断片は少なくとも約8アミノ酸長であり、最大約700のアミノ酸であってもよい。適切な断片の例が、本明細書に記載される。 アライメントは、種々の公的または市販の多重配列アラインメントプログラムのいずれかを使用して実施される。このようなプログラムの例としては、「Clustal W」、「CAP Sequence Assembly」、「MAP」、および「MEME」が挙げられ、これらはインターネット上のウェブサーバーを介してアクセス可能である。このようなプログラムの他の供給源は、当業者には公知である。あるいは、Vector NTIユーティリティも使用される。上記のプログラムに含有されるものを含めて、ヌクレオチド配列同一性を評価するために使用できる、当技術分野で公知のいくつかのアリゴリズムもまた存在する。別の例として、ポリヌクレオチド配列は、GCGバージョン6.1の中のプログラムであるFasta(商標)を使用して比較することができる。Fasta(商標)は、クエリー配列と検索配列との間の最良のオーバーラップ領域のアライメントおよびパーセント配列同一性を提供する。例えば、核酸配列間のパーセント配列同一性は、参照により本明細書に組み込まれるGCGバージョン6.1に提供されるように、そのデフォルトパラメーター(語長6およびスコアリングマトリックスについてはNOPAMファクター)と共にFasta(商標)を使用して決定することができる。また、多重配列アラインメントプログラムは、アミノ酸配列についても利用可能であり、例えば、「Clustal X」、「MAP」、「PIMA」、「MSA」、「BLOCKMAKER」、「MEME」、および「Match−Box」プログラムがある。一般に、これらのプログラムはいずれもデフォルト設定で使用される。ただし、当業者は必要に応じてこれらの設定を変更することができる。あるいは、当業者は、参照のアルゴリズムおよびプログラムにより提供されるものと少なくとも同レベルの同一性またはアライメントを提供する別のアルゴリズムまたはコンピュータプログラムを利用することができる。例えば、JD Thomson et al,(1999)Nucl.Acids.Res.,”A comprehensive comparison of multiple sequence alignments”,27(13):2682−2690を参照のこと。 用語「血清型」は、他のAAV血清型とは血清学的に異なるカプシドを有するAAVに対して区別するものである。血清学的弁別は、他のAAVと比較した場合に、AAVに対する抗体間の交差反応性の欠如に基づいて決定される。交差反応性は、典型的には、中和抗体アッセイで測定される。このアッセイのために、アデノ随伴ウイルスを使用して、ウサギまたは他の適切な動物モデルにおいて、特定のAAVに対するポリクローナル血清が生成される。このアッセイでは、次いで、特定のAAVに対して生成された血清が同じ(同種)または異種のAAVのいずれかを中和するその能力が試験される。50%の中和を達成する稀釈度が中和抗体力価と見なされる。2つのAAVについて、異種の力価を同種の力価で除した商が、相反的に16未満である場合、それら2つのベクターは同じ血清型と見なされる。逆に、同種の力価に対する異種の力価の比が、相反的に16以上である場合、2つのAAVは別々の血清型と見なされる。 本明細書で使用される場合、「末端」β−ガラクトースは、AAV9ガラクトース結合ドメインへの結合に立体的にまたは他の方法で利用できるように露出される、野生型結合部位を有するAAV9に対する細胞表面受容体である。 他に指定がない限り、用語「約」は、数を修飾するために使用される場合、±10%の変動を意味する。 本明細書および特許請求の範囲の全体にわたって使用される場合、用語「含む(comprising)」および「含む(including)」は、他の成分、要素、整数、工程等について包括的である。逆に、用語「からなる(consisting)」およびその変形体は、他の成分、要素、整数、工程等について排他的である。II.治療レジメン 一態様では、本発明は、AAV9カプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターのターゲティングおよび/または細胞取り込み効率を改変する方法を提供する。本方法は、AAV9をベースとした送達ビヒクルに結合するようにβ−ガラクトースのアベイラビリティを改変する組成物を被験体に送達する工程を含む。一実施形態では、所望の標的細胞の表面は、末端のシアル酸残基および末端から2番目のβ−ガラクトース残基を有し、このβ−ガラクトース残基が露出するように本発明により改変されるグリカンを含有する。 一実施形態では、本方法は、ノイラミニダーゼ(NA)と組み合わせてAAVウイルスベクターを被験体に送達する工程を含み、それによって、ノイラミニダーゼは、細胞表面上の末端シアル酸を切断して、細胞によるAAV取り込みの効率を増大させる。被験体は、ノイラミニダーゼで前処置されてもよい。 前処置により、その処置(例えば、ノイラミニダーゼ)が、AAV9媒介治療の前に被験体に送達されることが意味される。典型的には、これは、AAV9媒介治療の投与前に前処置の投与を含む。しかしながら、特定の実施形態では、AAV9ベクターによりコードされた導入遺伝子が、前処置に伴い活性化される調節可能プロモーターの制御化にあることがある。そのような実施形態では、AAV9ベクターは、前処置投与の前、または実質的にそれと同時に投与することができるが、構成的プロモーターのための活性化剤の投与は前処置の後である。 シアリダーゼとしても知られるノイラミニダーゼは、具体的にはシアル酸を切断の標的にするもので、種々の供給源から商業的に購入または入手することができる。一実施形態では、ノイラミニダーゼは、エキソノイラミニダーゼである。すなわち、それは、具体的には、内部シアル酸とは対照的に、末端シアル酸を切断の標的にする。一実施形態では、エキソノイラミニダーゼは、末端シアル酸残基のα−(2→3)−、α−(2→6)−、α−(2→8)−グリコシド結合の加水分解に機能する。本発明に有用なノイラミニダーゼの例としては、例えば、細菌ノイラミニダーゼ、ウイルスおよび哺乳動物のノイラミニダーゼが挙げられる。ノイラミニダーゼ(アシル−ノイラミニルヒドロラーゼ:EC3.2.1.18)は、これらに限定されないが、アルスロバクター・ウレアファシエンス(Arthrobacter ureafaciens)、コレラ菌(Vibrio cholerae)、ウェルチ菌(Clostridium perfringens)、または哺乳動物供給源を含む、いずれの供給源に由来するものであってもよい。一実施形態では、ノイラミニダーゼは、コレラ菌(Vibrio cholerae)由来のノイラミニダーゼIII型(Sigma)などの細菌ノイラミニダーゼである。しかしながら、他のノイラミニダーゼ型が選択されてもよい。別の実施形態では、ウイルスノイラミニダーゼ、例えば、インフルエンザノイラミニダーゼを選択することができる。さらに別の実施形態では、哺乳動物ノイラミニダーゼを、例えば、ヒト、齧歯類、サル、または別の哺乳動物供給源の中から選択することができる。 ノイラミニダーゼは、液体としてまたは固体として製剤化することができ、例えば生分解性(biodegradable)または生分解性(bioerodable)のマトリックスに埋め込まれたかまたは混合されたものを含めて、例えば、ノイラミニダーゼは従来の医薬賦形剤と混合される。マトリックスは除放性マトリックスであってもよい。これらのマトリックスは、当業者には周知である。ノイラミニダーゼは注射によりまたは舌下経路により投与することができる。一実施形態では、ビヒクルは、不活性容器内に含有される水溶液(例えば、緩衝生理食塩水を含む生理食塩水、または他の適切な液体担体)である。別の変形形態では、組成物は坐薬形態である。液体形態の組成物は、静脈内、筋肉内、および皮下経路、舌下または鼻腔内経路を含む、標準的方法により投与することができる。一実施形態では、担体は、0.9%塩化ナトリウム中の0.1%〜0.4%のフェノールである(米国薬局方)。 ノイラミニダーゼは、例えば、約300U〜約5000Uのノイラミニダーゼ用量で、すなわち、1用量当たりノイラミニダーゼ約15mg〜250mgの相当量を投与することができる。あるいは、より低用量、例えば約0.0001mg〜0.01mgの範囲で使用してもよい。あるいは、これら2つの範囲の間の量、例えば約0.01mg〜約250mgを使用してもよい。 一実施形態では、本発明は、AAV9ウイルスベクター(またはAAV9細胞(ガラクトース)結合ドメインを有するクレードFもしくはベクター)およびノイラミニダーゼを被験体に実質的に同時に送達するAAV媒介遺伝子送達を提供する。ノイラミニダーゼは、AAVベクターとは別個に製剤化し、かつ/または異なる経路であるが実質的に同時に送達することができる。あるいは、AAVウイルスベクターは、ノイラミニダーゼをさらに含む担体で被験体に送達される。 体内では、ノイラミニダーゼなどの酵素は、その効果がほんの一時的であるように天然に除去されることが期待されるが、一実施形態では、長引くいかなるノイラミニダーゼ作用も中和するためにノイラミニダーゼ阻害剤を送達することができる。適切なノイラミニダーゼ阻害剤が当技術分野では公知であり、市販の抗ウイルス薬、例えば、Oseltaminivir(タミフル)、ザナミビル(リレンザ)、Lanimavir(イナビル)、およびペラミビルを挙げることができる。oseltaminivirなどの全身性ノイラミニダーゼ阻害剤に対する典型的な投薬レジメンは、処方どおり、経口的に約75mg、1日2回を5日間以上である。しかしながら、本発明での使用のためには、より短い投薬レジメン、例えば1〜2日、および/またはより低いかまたはより高い1日用量が所望されることがある。あるいは、ザナミビルなどの吸入ノイラミニダーゼ阻害剤が、肺に関連する適用のために所望されることがある。典型的には、処方どおり、この薬物の用量は、吸入による10mg、1日2回を5日間以上である。しかしながら、本発明での使用のためには、より短い投薬レジメン、例えば1〜2日、および/またはより低いかまたはより高い1日用量が所望されることがある。あるいは、別のタイプのノイラミニダーゼ阻害剤が選択されてもよい。 別の態様では、AAVベクターは、AAV9に対する受容体(例えば、β−ガラクトース残基を有する細胞表面グリカン)を有する第1サブセットの細胞上に露出した細胞表面β−ガラクトース残基を機能的に除去することにより、クレードF受容体を有する第1サブセットの細胞から他に向けられ、そのため、AAVは、クレードF受容体を有する、被験体の第2サブセットの細胞を新たな標的にし、かつ/または第2サブセットの細胞に接触するAAVの数が増加し、それによって、これらの細胞による取り込みが増加する。一実施形態では、β−ガラクトースは、AAV細胞表面受容体を有する第1サブセットの細胞において酵素的に除去され、それによって、前記サブセットの細胞によるAAV取り込みが低下または消失し、AAV9受容体を有する、被験体の第2サブセットの細胞がAAVの新たな標的になる。 一実施形態では、第1サブセットの細胞の表面上にある結合ドメインを機能的に遮断する成分が、第1サブセットの細胞に局所的に送達される。典型的には、この遮断効果は、送達部位近傍に位置する細胞に相対的に局在化したままである。例えば、局所送達は、例えば吸入、鼻腔内インストール、関節への直接注射、または眼への直接送達によって、また当技術分野で公知の種々の他の方法によって達成することができる。 ガラクトシダーゼ、レクチン、または他の遮断成分の効果を除去するために化合物を送達することができる。例えば、抗β−ガラクトシダーゼを被験体に送達することができる。例えば、GT−2558[米国特許第4,497,797号明細書]またはフェニルエチル−β−D−チオガラクトピラノシド[PETG]などの化合物を利用することができる。あるいは、β−ガラクトシダーゼまたはレクチンのクリアランスを促進するために別の成分を送達することができる。しかしながら、その成分(例えば、ガラクトシダーゼ酵素)は被験体の体内で容易に除去されると予想される。 一実施形態では、β−ガラクトースは、AAVベクターと組み合わせて、ガラクトシダーゼを第1サブセットの細胞に送達することにより酵素的に除去される。種々のβ−ガラクトシダーゼを使用することができる。一実施形態では、アイソフォーム1、[GLB1、RefSeq:NM_000404;UniProt P16278を使用することができる。適切なβ−ガラクトシダーゼはまた、市販品を、例えばNewEngland Biolabs、Roche Applied Science、およびSigma Aldrich(大腸菌(E.coli)供給源由来)から入手可能である。ノイラミニダーゼについて上記したように、この酵素を製剤化し送達することができる。1用量当たり約0.0001mg〜約250mgまたは1用量当たり約0.001mg〜約100mgの範囲のβ−ガラクトシダーゼ用量を利用することができる。これらの用量は必要または所望に応じて調整することができる。β−ガラクトシダーゼは、ガラクトースを切断するように機能し、ガラクトースが切断された細胞によるAAV9取り込みを顕著に低下または実質的に消失させる。このようにして、AAV9ベクターは、細胞表面ガラクトースを保持する他の細胞に新たに向けられる。 別の実施形態では、β−ガラクトース残基および特に末端β−ガラクトース残基に結合するレクチンが、本明細書に記載のように、AAVベクターと組み合わせて被験体に送達される。有用なレクチンの中には、ヒトスカベンジャー受容体C型レクチン(SRCL)およびヒトマクロファージカルシウム依存性(C型)レクチンなどのカルシウム依存性(C型)レクチンがある。他の有用なレクチンとしては、エリスリナ・クリスタガリ(Erythrina Cristagalli)レクチン(ECL)およびマクロファージガラクトースレクチン(MGL)が挙げられる。さらに他のレクチンとしては、レクチンピーナッツアグルチニンまたは小麦胚芽アグルチニンが挙げられる。これらのレクチンのいくつかは、文献に記載されており、かつ/または商業的供給源(例えば、Vectorlabs)を通して入手することができる。本明細書に記載のように、レクチンは適切な液体担体で製剤化することができ、200〜10,000μg/ml、例えば200〜5000μg/ml、例えば200〜3000μg/ml、例えば200〜2000μg/ml、例えば200〜1500μg/mlレクチンの範囲で含むことができる。 さらに別の実施形態では、抗末端ガラクトース抗体を被験体に送達することができる。 本明細書に記載のような、AAV9ベースのベクターおよび他のAAVベクターを調製する方法は公知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2007/0036760号明細書(2007年2月15日)を参照されたい。本発明は、AAV9または他のクレードF AAVのアミノ酸配列の使用に限定されるものではないが、例えば化学合成、他の合成手法、または他の方法を含む、当技術分野で公知の他の方法により生成される末端β−ガラクトース結合を含有するペプチドおよび/またはタンパク質を包含する。本明細書に提供されるAAVカプシドのいずれの配列も、種々の手法を使用して容易に生成することができる。適切な生成手法が当業者には周知である。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。あるいは、ペプチドはまた、周知の固相ペプチド合成法により合成することができる(Merrifield,(1962)J.Am.Chem.Soc.,85:2149;Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis(Freeman,San Francisco,1969)pp.27−62)。これらおよび他の適切な生成方法は、当業者の知識の範囲内であり、本発明を限定するものではない。 本明細書に記載のような、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)(例えば、β−ガラクトースに対する細胞結合ドメインを有するAAV)を生成する方法は、公知である。そのような方法は、AAVカプシド;機能的なrep遺伝子;AAV逆方向末端反復配列(ITR)および導入遺伝子で最低限構成されるミニ遺伝子;およびAAVカプシドタンパク質へのミニ遺伝子のパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能をコードする核酸配列を含有する宿主細胞を培養する工程を含む。 AAVカプシドの中にAAVミニ遺伝子をパッケージングするために宿主細胞で培養される必要な成分は、トランスで宿主細胞に提供されてもよい。あるいは、必要な成分(例えば、ミニ遺伝子、rep配列、cap配列、および/またはヘルパー機能)の任意の1つまたは複数は、当業者に公知の方法を使用して、必要な成分の1つまたは複数を含有するように操作された安定な宿主細胞により提供されてもよい。最適には、そのような安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下にある、必要な成分を含有することになる。しかしながら、必要な成分は、構成的プロモーターの制御下にあってもよい。適切な誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの例が、導入遺伝子との使用に適した調節エレメントの論述の中で本明細書に提示される。さらに別の代替形態では、選択された安定な宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下にある選択された成分および1つまたは複数の誘導性プロモーターの制御下にある他の選択された成分を含有することができる。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にあるE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下にあるrepおよび/またはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞を生成することができる。さらに他の安定な宿主細胞は、当業者により生成可能である。 本発明のrAAVを生成するのに必要なミニ遺伝子、rep配列、cap配列、およびヘルパー機能は、その上に担持される配列を移入する任意の遺伝因子の形態でパッケージング宿主細胞に送達することができる。選択された遺伝因子は、本明細書に記載のものを含む任意の適切な方法によって送達することができる。本発明の任意の実施形態を構築するのに使用される方法は、核酸操作の技術者には公知であり、遺伝子工学、組換え工学、および合成手法を含む。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NYを参照されたい。同様に、rAAVビリオンを生成する方法は周知であり、適切な方法の選択により、本発明が限定されることはない。例えば、K.Fisher et al,(1993)J.Virol.,70:520−532および米国特許第5,478,745号明細書を参照されたい。 他に指定がない限り、AAV ITR、および本明細書に記載の他の選択されたAAV成分は、任意のAAVの中から容易に選択することができる。これらのITRまたは他のAAV成分は、当業者が利用可能な手法を使用して、AAV配列から容易に単離することができる。そのようなAAVは、学術的、商業的、または公的な供給源(例えば、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection、Manassas、VA)から単離または入手することができる。あるいは、AAV配列は、文献または例えばGenBank(登録商標)、PubMed(登録商標)等のデータベースから入手可能であるなどの公表された配列を参照して、合成または他の適切な手段によって得ることができる。A.ミニ遺伝子 ミニ遺伝子は、導入遺伝子およびその調節配列ならびに5’および3’AAV逆方向末端反復配列(ITR)で最低限構成される。一実施形態では、AAV血清型2のITRが使用される。しかしながら、他の適切な供給源に由来するITRが選択されてもよい。カプシドタンパク質の中にパッケージングされ、選択された宿主細胞に送達されるのがこのミニ遺伝子である。1.導入遺伝子 導入遺伝子は、目的のポリペプチド、タンパク質、または他の産物をコードする導入遺伝子に隣接するベクター配列に対して異種の核酸配列である。この核酸コード配列は、宿主細胞中での導入遺伝子の転写、翻訳、および/または発現が可能になるように調節成分に作動的に連結される。 導入遺伝子配列の組成は、得られるベクターが用いられる用途に依存することになる。例えば、あるタイプの導入遺伝子配列は、発現に際して検出可能なシグナルを生成するレポーター配列を含む。これらのコード配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと結合する場合、酵素、X線検査、比色、蛍光、または他の分光光学アッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイ、ならびに酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、および免疫組織化学を含む免疫アッセイを含む、従来の手段により検出可能なシグナルを提供する。しかしながら、望ましくは、導入遺伝子は、タンパク質、ペプチド、RNA、酵素、ドミナントネガティブ変異体、または触媒RNAなど、生物学および医学で有用な産物をコードする非マーカー配列である。望ましいRNA分子には、tRNA、dsRNA、リボソームRNA、触媒RNA、siRNA、低分子ヘアピン型RNA、トランススプライシングRNA、およびアンチセンスRNAが含まれる。有用なRNA配列の一例は、処置された被験体において標的核酸配列の発現を阻害または消去する配列である。典型的には、適切な標的配列には、腫瘍標的およびウイルス疾患が含まれる。そのような標的の例については、免疫原に関するセクションで以下に同定された腫瘍標的およびウイルスを参照されたい。 導入遺伝子は遺伝子欠陥を是正または改善するのに使用することができ、この欠陥には、正常遺伝子が正常レベルより少なく発現される欠陥または機能的遺伝子産物が発現されない欠陥が含まれうる。あるいは、導入遺伝子は、その細胞型または宿主において天然には発現されない産物を細胞に提供することができる。好ましいタイプの導入遺伝子配列は、宿主細胞中で発現される治療用タンパク質またはポリペプチドをコードする。本発明はさらに、複数の導入遺伝子を使用することを含む。特定の状況では、別の導入遺伝子を、タンパク質の各サブユニットをコードするかまたは異なるペプチドまたはタンパク質をコードするために使用することができる。これは、タンパク質サブユニットをコードするDNAのサイズが大きい場合、例えば免疫グロブリン、血小板由来増殖因子、またはジストロフィンタンパク質に対して望ましい。細胞にマルチサブユニットタンパク質を産生させるために、異なるサブユニットのそれぞれを含有する組換えウイルスに細胞を感染させる。あるいは、タンパク質の異なるサブユニットを同じ導入遺伝子にコードさせてもよい。この場合、単一導入遺伝子はサブユニットのそれぞれをコードするDNAを含み、各サブユニットに対するDNAは配列内リボザイム進入部位(IRES)により分離されている。これは、サブユニットのそれぞれをコードするDNAのサイズが小さい場合、例えばサブユニットおよびIRESをコードするDNAの合計サイズが5キロベース未満の場合に望ましい。IRESの代わりとして、DNAは、翻訳後事象で自己切断する2Aペプチドをコードする配列により分離されてもよい。例えば、ML Donnelly,et al,(Jan 1997)J.Gen.Virol.,78(Pt 1):13−21;S.Furler,S et al,(June 2001)Gene Ther.,8(11):864−873;H.Klump,et al.,(May 2001)Gene Ther.,8(10):811−817を参照されたい。この2AペプチドはIRESより著しく小さく、空間が制限因子となる場合に使用するのによく適合する。より多くの場合には、導入遺伝子が大きく、マルチサブユニットからなる場合、または2つの導入遺伝子が同時送達される場合、所望の導入遺伝子またはサブユニットを担持するrAAVは、それらが単一ベクターゲノムを形成するようにインビボでコンカテマー化することを可能にするために、同時投与される。そのような実施形態では、第1のAAVは、単一導入遺伝子を発現する発現カセットを担持することができ、第2のAAVは、宿主細胞中で共発現するための異なる導入遺伝子を発現する発現カセットを担持することができる。しかしながら、選択された導入遺伝子は、任意の生物学的に活性な産物または他の産物、例えば、研究にとって望ましい産物をコードしてもよい。 適切な導入遺伝子は、当業者により容易に選択可能である。導入遺伝子の選択により、本発明が限定されるとは見なされない。2.調節エレメント ミニ遺伝子について上記に同定された主要なエレメントに加え、ベクターはまた、プラスミドベクターで形質移入されたかまたは本発明により作製されたウイルスに感染した細胞中でのその転写、翻訳、および/または発現を可能にするように導入遺伝子に作動的に連結される従来の調節領域を含む。本明細書で使用される場合、「作動的に連結される」配列は、目的の遺伝子に近接する発現制御配列および目的の遺伝子を制御するためにトランスでまたは離れて作用する発現制御配列の両方を含む。 発現調節配列は、適切な転写開始、終結、プロモーター、およびエンハンサー配列;スプライシングおよびポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNAプロセシングシグナル;細胞質のmRNAを安定化する配列;翻訳効率を高める配列(すなわち、コザックコンセンサス配列);タンパク質の安定性を高める配列;および所望に応じてコードされた産物の分泌を高める配列を含む。天然、構成的、誘導性、および/または組織特異的プロモーターを含む、多数の発現制御配列が当技術分野で公知であり、かつ利用することができる。 構成的プロモーターの例としては、限定はされないが、レトロウイルスのラウス肉腫ウイルス(RSV)LTRプロモーター(場合によっては、RSVエンハンサーと共に)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(場合によっては、CMVエンハンサーと共に)[例えば、Boshart et al,(1985)Cell,41:521−530を参照のこと]、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸還元酵素プロモーター、β−アクチンプロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、およびEF1プロモーター[Invitrogen]が挙げられる。誘導性プロモーターは、遺伝子発現の調節を可能にし、外因性に供給される化合物、温度などの環境因子、もしくは特定の生理学的状態の存在、例えば急性期、細胞の特定の分化状態により、または複製細胞においてのみ調節されうる。誘導性プロモーターおよび誘導系は、限定はされないが、Invitrogen、Clontech、およびAriadを含む、種々の商業的供給源から入手可能である。他の多くの系が記載されており、当業者により容易に選択可能である。外因性に供給される化合物により調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメサゾン(Dex)誘導性マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系[国際公開第98/10088号パンフレット];エクジソン昆虫プロモーター[No et al,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:3346−3351]、テトラサイクリン抑制系[Gossen et al,(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:5547−5551]、テトラサイクリン誘導系[Gossen et al,(1995)Science,268:1766−1769、さらにHarvey et al,(1998)Curr.Opin.Chem.Biol.,2:512−518も参照のこと]、RU486誘導系[Wang et al,(1997)Nat.Biotech.,15:239−243、およびWang et al,(1997)Gene Ther.,4:432−441]およびラパマイシン誘導系[Magari et al,(1997)J.Clin.Invest.,100:2865−2872]が挙げられる。この文脈において有用となりうる他のタイプの誘導性プロモーターは、特定の生理学的状態、例えば温度、急性期、細胞の特定の分化状態により、または複製細胞においてのみ調節されるものである。 別の実施形態では、導入遺伝子の天然のプロモーターを使用することになる。導入遺伝子の発現が天然の発現を模倣することが望ましい場合、天然のプロモーターが好ましいことがある。導入遺伝子の発現を、一時的にもしくは発生的に、または組織特異的に、または特定の転写刺激に応答して調節しなければならない場合、天然のプロモーターを使用することがある。さらなる実施形態では、エンハンサーエレメント、ポリアデニル化部位、またはコザックコンセンサス配列などの他の天然の発現調節エレメントを、天然の発現を模倣するために使用することもできる。 導入遺伝子の別の実施形態では、組織特異的プロモーターに作動的に連結された遺伝子が含まれる。例えば、骨格筋での発現が所望される場合、筋で活性なプロモーターが使用されるべきである。これらには、骨格β−アクチン、ミオシンL鎖2A、ジストロフィン、筋クレアチンキナーゼをコードする遺伝子由来のプロモーターおよび天然のプロモーターよりも高活性を有する合成の筋プロモーターが含まれる(Li et al.,(1999)Nat.Biotech.,17:241−245を参照のこと)。組織特異的なプロモーターの例は、とりわけ、肝臓(アルブミン、Miyatake et al.,(1997)J.Virol.,71:5124−32;B型肝炎ウイルスコアプロモーター、Sandig et al.,(1996)Gene Ther.,3:1002−9;α−フェトプロテイン(AFP)、Arbuthnot et al.,(1996)Hum.Gene Ther.,7:1503−14),骨オステオカルシン(Stein et al.,(1997)Mol.Biol.Rep.,24:185−96);骨シアロタンパク質(Chen et al.,(1996)J.Bone Miner.Res.,11:654−64)、リンパ球(CD2、Hansal et al.,(1998)J.Immunol.,161:1063−8;免疫グロブリン重鎖;T細胞受容体鎖)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモーター(Andersen et al.,(1993)Cell.Mol.Neurobiol.,13:503−15)、神経フィラメント軽鎖遺伝子(Piccioli et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5611−5)、およびニューロン特異的vgf遺伝子(Piccioli et al.,(1995)Neuron,15:373−84)などのニューロン性について知られている。 導入遺伝子、プロモーター/エンハンサー、ならびに5’および3’AAV ITRの組合せは、本明細書での言及を容易にするために「ミニ遺伝子」と呼ぶ。本発明の教示が与えられれば、そのようなミニ遺伝子の設計は、従来の手法により行うことができる。3.パッケージング宿主細胞へのミニ遺伝子の送達 ミニ遺伝子は、宿主細胞に送達される任意の適切なベクター、例えばプラスミド上に担持することができる。本発明に有用なプラスミドは、複製、および場合によっては原核細胞、哺乳動物細胞、またはその両方での組み込みに適するように操作することができる。これらのプラスミド(または5’AAV ITR−異種分子−3’AAV ITRを担持する他のベクター)は、真核生物および/または原核生物におけるミニ遺伝子ならびにこれらの系の選択マーカーの複製を可能にする配列を含有する。選択可能マーカーまたはレポーター遺伝子としては、とりわけ、ジェネテシン、ハイグロマイシン、またはピューリマイシン(purimycin)抵抗性をコードする配列を挙げることができる。プラスミドはまた、アンピシリン抵抗性など、細菌細胞中でベクターの存在を伝達するために使用できる特定の選択可能レポーターまたはマーカー遺伝子を含有することができる。プラスミドの他の成分としては、複製起点およびエプスタインバーウイルス核抗原を使用するアンプリコンシステムなどのアンプリコンを挙げることができる。このアンプリコンシステムまたは他の同様のアンプリコン成分は、細胞中での高コピーのエピソーム複製を可能にする。好ましくは、ミニ遺伝子を担持する分子は、細胞に形質移入され、そこでは一過性に存在することができる。あるいは、ミニ遺伝子(5’AAV ITR−異種分子−3’ITRを担持する)は、染色体性にまたはエピソームとしてのいずれかで、宿主細胞のゲノムに安定に組み込まれてもよい。特定の実施形態では、ミニ遺伝子は、複数コピーで、場合によっては、ヘッドトゥーヘッド、ヘッドトゥーテール、またはテールトゥーテールのコンカテマーで存在することができる。適切な形質移入手法は公知であり、宿主細胞にミニ遺伝子を送達するために容易に利用することができる。 一般に、形質移入によりミニ遺伝子を含むベクターを送達する場合、ベクターは、約5μg〜約100μgDNA、約10μg〜約50μgDNAの量で、約1×104細胞〜約1×1013細胞、または約1×105細胞に送達される。しかしながら、宿主細胞に対するベクターDNAの相対量は、選択されたベクター、送達方法、および選択された宿主細胞などの因子を考慮に入れて調節することができる。B.パッケージング宿主細胞 ミニ遺伝子に加えて、宿主細胞は、宿主細胞において本発明の新規AAVカプシドタンパク質(またはその断片を含むカプシドタンパク質)の発現を駆動する配列、およびミニ遺伝子に見出されるAAV ITRの供給源と同じ供給源のrep配列または交差相補(cross−complementing)供給源のrep配列を含有する。パッケージング宿主細胞はまた、本発明のrAAVをパッケージングするためにヘルパー機能を必要とする。そのようなヘルパー機能は、当技術分野で周知であり、本明細書で繰り返されることはない。同様に、AAVカプシドを有する適切なベクターを生成する方法は公知である。[例えば、米国特許出願公開第2007/0036760号明細書を参照のこと]。 したがって、本発明は、本発明の新規AAVの核酸およびアミノ酸の配列を使用して生成されたベクターをさらに提供する。そのようなベクターは、治療用分子の送達のためおよびワクチンレジメンでの使用のためなど、種々の目的に有用である。治療用分子の送達に特に望ましいのは、本発明の新規AAVカプシドを含有する組換えAAVである。本発明の新規AAV配列を含有するこれらまたは他のベクターコンストラクトは、例えば、サイトカインの同時送達のためにまたは免疫原それ自体の送達のために、ワクチンレジメンで使用することができる。 したがって、公知の手法および当業者は、AAVクレードFカプシドを有するrAAV、AAV9カプシド、および/またはAAV9のβ−ガラクトース結合ドメインを含むAAVカプシドを有するベクターを生成することができる。一実施形態では、単一AAV由来の完全長カプシド、例えばhu.14/AAV9[配列番号1]を利用することができる。別の実施形態では、選択された別のAAVに由来する、または同じAAVの非対応(すなわち、近接していない)部分に由来する配列とインフレームで融合した、AAV9カプシドの1つまたは複数の断片(例えば、AAV9のβ−ガラクトース結合ドメインを含む断片)を含有する完全長カプシドを生成することができる。さらに別の実施形態では、変異体AAV9カプシドを有するベクターまたはAAV9ガラクトース結合ドメインを含有するように操作されたAAVが、同様の手法を使用して組み立てられる。 上記の組換えベクターは、公表された方法に従って宿主細胞に送達することができる。好ましくは生理学的に適合する担体中に懸濁されたrAAVは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物患者に投与することができる。適切な担体は、導入ウイルスが目標とする適用を考慮して当業者により容易に選択可能である。例えば、ある適切な担体は、生理食塩水を含み、種々の緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)で製剤化することができる。他の代表的な担体は、無菌の生理食塩水、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストラン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油、ゴマ油、および水を含む。担体の選択により本発明が限定されることはない。 場合によっては、本発明の組成物は、rAAVおよび担体に加えて、防腐剤または化学安定剤などの他の従来の医薬成分を含有することができる。適切な代表的な防腐剤としては、クロロブタノール、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、エチルバニリン、グリセリン、フェノール、およびパラクロロフェノールが挙げられる。適切な化学安定剤としては、ゼラチンおよびアルブミンが挙げられる。 ベクターは、細胞に形質移入するのに十分な量で、かつ過度の有害作用がないか、または医学的に許容される生理的効果を伴う治療効果を提供するのに十分なレベルの遺伝子導入および発現を与えるのに十分な量で投与され、この量は、医療分野の技術者により決定可能である。従来のかつ医薬として許容される投与経路としては、これらに限定されないが、所望の器官(例えば、肺、心臓、または脳)への直接送達、経口、吸入、鼻腔内、気管内、動脈内、眼内、静脈内、筋肉内、皮下、皮内、および他の非経口投与経路が挙げられる。投与経路は、所望により組み合わせてもよい。 ウイルスベクターの投薬量は、主として、治療される症状、患者の年齢、体重、および健康状態などの因子に依存することになり、したがって、患者間で変動しうるものである。例えば、ウイルスベクターの治療上効果的なヒト投薬量は、一般に、約1×109〜1×1016ゲノムウイルスベクターの濃度を含有する溶液の約0.1mL〜約100mLの範囲である。大きな器官(例えば、肺、骨格筋、心臓、もしくは肺)または中枢神経系(例えば、脳)への送達のための好ましいヒト投薬量は、約1〜100mLの容量で、1kg当たり約5×1010〜5×1013AAVゲノムとすることができる。眼(例えば、網膜)への送達のための好ましい投薬量は、約0.1mL〜1mLの容量で、約5×109〜5×1012ゲノムコピーである。投薬量は、いかなる副作用に対しても治療効果とのバランスを取るように調整されることになり、そのような投薬量は、組換えベクターが使用される治療用途に応じて変動しうるものである。導入遺伝子の発現レベルをモニターして、ウイルスベクター、好ましくはミニ遺伝子を含有するAAVベクターをもたらす投薬回数を決定することができる。 AAV9ベースのベクターの例で示されるように、末端SAが酵素的に除去されると、細胞の形質導入が増加し、これにより、最もよく観察される、末端SAから2番目の単糖であるガラクトースが、AAV9形質導入を媒介することが示唆された。これは、末端シアル酸(SA)を有するグリカンを介する取り込みが一般的な進入様式であるいくつかの他のAAV血清型とは対照的である。末端SAを介するAAV9ベースのベクターの取り込みは、糖タンパク質生合成に関与する酵素を欠損する細胞およびレクチン妨害試験で確認された。末端ガラクトースを有するグリカンへのAAV9の結合は、グリカン結合アッセイで実証された。肺指向遺伝子導入に対するこの経路の妥当性は、誘導気道上皮細胞の頂端膜側上での末端ガラクトースの露出と、嚢胞性繊維症に対する遺伝子治療に関連する標的であるこれらの細胞のベクター媒介形質導入の実質的な増加とをもたらすノイラミニダーゼとAAV9ベクターとのマウス肺への同時注入により実証された。 本発明のAAV含有ベクターによる送達のための治療用産物および免疫原性産物の例を下記に示す。これらのベクターは、本明細書に記載のように、種々のレジメンに対して使用することができる。加えて、これらのベクターは、所望のレジメンにおいて、1つまたは複数の他のベクターまたは活性成分と組み合わせて送達することができる。 例えば、適切な導入遺伝子には、誘導気道上皮細胞を含む、肺を優先的に標的とするものを含むことができる。そのような導入遺伝子には、例えば1つまたは複数のミニCFTR遺伝子など、例えば嚢胞性繊維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子を含む、嚢胞性繊維症を治療するために有用なものを含むことができる[L.Zhang et al,(Aug 18 1998)Proc.Natl.Acad Sci USA,95(17):10158−63]。同様に、例えば、COPDおよび他の肺障害の治療に有用な抗炎症性サイトカインまたは他の分子を含む、他の肺症状の治療のための遺伝子を使用することができる。 別の例では、例えば、網膜色素上皮特異的65kDaタンパク質(RPE65)(Leiber先天性黒内障(LCA)の治療用)、bPDEおよびAIPL1色素上皮由来因子(PEDF)(例えば、黄斑変性症および糖尿病性網膜症の治療用)、例えば抗血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を含む抗血管新生因子(例えば、湿潤加齢黄斑変性症(AMD)の治療用)、ならびに色素性網膜炎およびLCAと錐体桿体ジストロフィーに関連した他の遺伝子など、網膜および/または眼の障害を治療するために有用な導入遺伝子を含み、選択することができる。 さらに別の例では、関節障害、例えば関節リウマチの治療に有用な導入遺伝子を選択することができる。そのような導入遺伝子は、例えば抗TNFアルファモノクローナル抗体、可溶性TNFアルファ受容体、IL−1のII型可溶性受容体、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1Ra)、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL−4、IL−10、IL1)など、例えば腫瘍壊死因子(TNF)アルファまたはインターロイキン1(IL−1)の遮断薬であってもよい。そのようなアンタゴニストは、例えば、抗体もしくはFab、またはそれらの機能性断片、あるいは別の成分であってもよい。 さらに他の遺伝子には、とりわけ、例えばパーキンソン病、アルツハイマー病、および貯蔵障害を含む中枢神経系;先天性心疾患に関連した治療用遺伝子(例えば、SERCA2a、アンジオポエチン−1(Ang1)、およびAng2)、全身性リソソーム貯蔵障害に関連した遺伝子;ならびに筋消耗障害(例えば、ジストロフィン、ミニジストロフィン)に関連した種々の症状の治療に有用なものを含むことができる。 導入遺伝子によりコードされた、さらに他の有用な治療用産物は、所望の適用のために選択することができる。そのような導入遺伝子には、限定はされないが、インスリン、グルカゴン、成長ホルモン(GH)、副甲状腺ホルモン(PTH)、成長ホルモン放出因子(GRF)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛膜性生殖腺刺激ホルモン(hCG)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、アンジオポエチン、アンジオスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、エリトロポイエチン(EPO)、結合組織増殖因子(CTGF)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性繊維芽細胞増殖因子(aFGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インスリン増殖因子IおよびII(IGF−IおよびIGF−II)、TGFα、アクチビン、インヒビン、または骨形態形成タンパク質(BMP)BMP1〜15のいずれかを含む形質転換増殖因子αスーパーファミリーのいずれか1つ、増殖因子のヘレグリン/ニューレグリン/ARIA/neu分化因子(NDF)ファミリーのいずれか1つ、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィンNT−3およびNT−4/5、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF))、ニュールツリン、アグリン、セマフォリン/コラプシンのファミリーのいずれか1つ、ネトリン−1およびネトリン−2、肝細胞増殖因子(HGF)、エフリン、ノギン、ソニックヘッジホッグ、ならびにチロシンヒドロキシラーゼを含む、ホルモンならびに増殖因子および分化因子が含まれる。 他の有用な導入遺伝子産物には、限定はされないが、サイトカインおよびリンホカイン、例えば、トロンボポイエチン(TPO)、インターロイキン(IL)IL−1〜IL−25(例えば、IL−2、IL−4、IL−12、およびIL−18を含む)、単球化学走化性タンパク質、白血病抑制因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、Fasリガンド、腫瘍壊死因子αおよびβ、インターフェロンα、β、およびγ、幹細胞刺激因子、flk−2/flt3リガンドを含む、免疫系を調節するタンパク質が含まれる。免疫系により産生される遺伝子産物もまた、本発明に有用である。これらには、限定はされないが、免疫グロブリンIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE、キメラ免疫グロブリン、ヒト化抗体、一本鎖抗体、T細胞受容体、キメラT細胞受容体、一本鎖T細胞受容体、クラスIおよびクラスII MHC分子、ならびに操作された免疫グロブリンおよびMHC分子が含まれる。有用な遺伝子産物には、補体調節タンパク質、細胞膜補因子タンパク質(MCP)、解離促進因子(DAF)、CR1、CF2、およびCD59などの調節タンパク質がさらに含まれる。 さらに他の有用な遺伝子産物には、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、リンホカイン、調節タンパク質、および免疫系タンパク質に対する受容体のいずれか1つが含まれる。本発明は、低密度リポタンパク質(LDL)受容体、高密度リポタンパク質(HDL)受容体、超低密度リポタンパク質(VLDL)受容体、およびスカベンジャー受容体を含む、コレステロール調節および/または脂質調整のための受容体を包含する。本発明はまた、グルココルチコイド受容体およびエストロゲン受容体、ビタミンD受容体、ならびに他の核受容体を含むステロイドホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーなどの遺伝子産物を包含する。加えて、有用な遺伝子産物には、jun、fos、max、mad、血清応答因子(SRF)、AP−1、AP2、myb、MyoDおよびミオゲニン、ETS−ボックス含有タンパク質、TFE3、E2F、ATF1、ATF2、ATF3、ATF4、ZF5、NFAT、CREB、HNF−4、C/EBP、SP1、CCAAT−ボックス結合タンパク質、インターフェロン調節因子(IRF−1)、ウィルムス腫瘍タンパク質、ETS−結合タンパク質、STAT、GATA−ボックス結合タンパク質、例えばGATA−3、ならびに翼状らせんタンパク質のフォークヘッドファミリーなどの転写因子が含まれる。 他の有用な遺伝子産物には、カルバモイルシンテターゼI、オルニチントランスカルバミラーゼ、アルギノコハク酸シンテターゼ、アルギノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、フマリルアセト酢酸ヒドロラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、アルファ−1抗トリプシン、グルコース−6−ホスファターゼ、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ、シスタチオン(cystathione)ベータ−シンターゼ、側鎖ケト酸デカルボキシラーゼ、アルブミン、イソバレリル−coAデヒドロゲナーゼ、プロピオニルCoAカルボキシラーゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、グルタリルCoAデヒドロゲナーゼ、インスリン、ベータ−グルコシダーゼ、ピルベートカルボキシレート、肝ホスホリラーゼ、ホスホリラーゼキナーゼ、グリシンデカルボキシラーゼ、H−タンパク質、T−タンパク質、嚢胞性繊維症膜貫通調節因子(CFTR)配列、およびジストロフィン遺伝子産物[例えば、ミニジストロフィンまたはミクロジストロフィン]が含まれる。さらに他の有用な遺伝子産物には、酵素活性の欠損から生じる種々の症状に有用な酵素補充療法に有用となりうるような酵素が含まれる。例えば、マンノース−6−リン酸を含有する酵素は、リソソーム蓄積症の治療に利用することができる(例えば、適切な遺伝子としては、β−グルクロニダーゼをコードする遺伝子(GUSB)が挙げられる)。 さらに他の有用な遺伝子産物には、血友病B(第IX因子を含む)および血友病A(ヘテロダイマーの軽鎖および重鎖ならびにB−欠失ドメインなど、第VIII因子およびその変異体を含む;米国特許第6,200,560号明細書および米国特許第6,221,349号明細書)を含む、血友病の治療に使用されるものが含まれる。第VIII因子遺伝子は2351個のアミノ酸をコードし、このタンパク質には6つのドメインがあり、アミノ末端からカルボキシ末端にかけてA1−A2−B−A3−C1−C2と命名されている[Wood et al,(1984)Nature,312:330;Vehar et al.,(1984)Nature 312:337;およびToole et al,(1984)Nature,342:337]。ヒト第VIII因子は、細胞内でプロセシングされて、A1、A2および、Bドメインを含有する重鎖と、A3、C1、およびC2ドメインを含有する軽鎖とを主として含むヘテロダイマーを生じる。単一鎖ポリペプチドおよびヘテロダイマーの両方は、Bドメインを放出し、A1およびA2のドメインからなる重鎖を生じる、A2とBのドメイン間のトロンビン切断による活性化まで、不活性前駆体として血漿中を循環する。Bドメインは、このタンパク質の活性化プロコアグラント形態には欠落している。加えて、天然タンパク質では、Bドメインを挟む2つのポリペプチド鎖(「a」および「b」」)は、二価カルシウム陽イオンに結合している。 一部の実施形態では、ミニ遺伝子は、10アミノ酸シグナル配列をコードする第VIII因子重鎖の最初の57塩基対およびヒト成長ホルモン(hGH)ポリアデニル化配列を含む。代替実施形態では、ミニ遺伝子は、A1およびA2のドメインと、BドメインのN末端からの5アミノ酸および/またはBドメインのC末端の85アミノ酸と、A3、C1、およびC2のドメインとをさらに含む。さらに他の実施形態では、第VIII因子の重鎖および軽鎖をコードする核酸が、Bドメインの14アミノ酸をコードする42核酸により分離された単一ミニ遺伝子で提供される[米国特許第6,200,560号明細書]。 本明細書で使用される場合、治療有効量は、被験体の血液が凝固するのに要する時間を短縮するのに十分な量の第VIII因子を産生するAAVベクターの量である。一般に、第VIII因子が正常レベルの1%未満である重度の血友病患者は、非血友病患者の約10分と比較して、全血凝固時間が60分を超える。 本発明はいかなる特定の第VIII因子配列にも限定されるものではない。第VIII因子の多くの天然および組換え形態が単離および生成されている。第VII因子の天然および組換え形態の例は、以下のものを含む特許および科学文献に見出すことができる:米国特許第5,563,045号明細書、米国特許第5,451,521号明細書、米国特許第5,422,260号明細書、米国特許第5,004,803号明細書、米国特許第4,757,006号明細書、米国特許第5,661,008号明細書、米国特許第5,789,203号明細書、米国特許第5,681,746号明細書、米国特許第5,595,886号明細書、米国特許第5,045,455号明細書、米国特許第5,668,108号明細書、米国特許第5,633,150号明細書、米国特許第5,693,499号明細書、米国特許第5,587,310号明細書、米国特許第5,171,844号明細書、米国特許第5,149,637号明細書、米国特許第5,112,950号明細書、米国特許第4,886,876号明細書;国際公開第94/11503号パンフレット、国際公開第87/07144号パンフレット、国際公開第92/16557号パンフレット、国際公開第91/09122号パンフレット、国際公開第97/03195号パンフレット、国際公開第96/21035号パンフレットおよび国際公開第91/07490号パンフレット;欧州特許第0 672 138号明細書、欧州特許第0 270 618号明細書、欧州特許第0 182 448号明細書、欧州特許第0 162 067号明細書、欧州特許第0 786 474号明細書、欧州特許第0 533 862号明細書、欧州特許第0 506 757号明細書、欧州特許第0 874 057号明細書、欧州特許第0 795 021号明細書、欧州特許第0 670 332号明細書、欧州特許第0 500 734号明細書、欧州特許第0 232 112号明細書、および欧州特許第0 160 457号明細書;Sanberg et al.,(1992)XXth Int.Congress of the World Fed.Of Hemophilia and Lind et al.,(1995)Eur.J.Biochem.,232:19。 上記の第VIII因子をコードする核酸配列は、組換え法を使用して、またはそれを含むことが公知のベクターから配列を取り出すことにより得ることができる。さらに、所望の配列は、フェノール抽出およびcDNAまたはゲノムDNAのPCRなどの標準的手法を使用して、それを含有する細胞および組織から直接単離することができる[例えば、Sambrook et alを参照のこと]。ヌクレオチド配列はまた、クローニングではなく、合成的に生成することができる。完全な配列は、標準的方法により調製された重複するオリゴヌクレオチドから組み立てることができ、完全なコード配列に組み立てることができる[例えば、Edge,(1981)Nature 292:757;Nambari et al,(1984)Science,223:1299;およびJay et al,(1984)J.Biol.Chem.259:6311を参照のこと]。 さらに、本発明は、ヒト第VIII因子に限定されるものではない。実際、本発明は、これらに限定されないが、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ、およびウマ)、家畜(例えば、ウシ、ヤギ、およびヒツジ)、実験動物、海生哺乳動物、大型ネコ類等を含む、ヒト以外の動物に由来する第VIII因子を包含することが意図される。 AAVベクターは、それ自体は生物学的に活性ではないが、被験体に投与されると、血液凝固時間を改善または回復する第VIII因子の断片をコードする核酸を含有することができる。例えば、上記に論述されたように、第VIII因子タンパク質は2つのポリペプチド鎖、すなわちプロセシング中に切断されるB−ドメインにより分離された重鎖および軽鎖を含む。本発明により実証されたように、第VIII因子の重鎖および軽鎖を受容細胞に同時形質導入すると、生物学的に活性な第VIII因子の発現がもたらされる。ほとんどの血友病患者は、鎖(例えば、重鎖または軽鎖)の一方にのみ変異または欠失を含有するので、患者に欠けている鎖のみを投与して、他方の鎖を供給することが可能となりうる。 他の有用な遺伝子産物には、挿入、欠失、またはアミノ酸置換を含有する非天然アミノ酸配列を有するキメラポリペプチドまたはハイブリッドポリペプチドなどの非天然ポリペプチドが含まれる。例えば、操作された単一鎖免疫グロブリンは、特定の免疫無防備状態の患者に有用となりうる。他のタイプの非天然遺伝子配列には、アンチセンス分子およびリボザイムなどの触媒性核酸が含まれ、これらは標的の過剰発現を低下させるために使用することができよう。 遺伝子発現の低下および/または調節は、癌および乾癬のように、過剰増殖する細胞を特徴とする過剰増殖症状の治療に特に望ましい。標的ポリペプチドには、正常細胞と比較して、過剰増殖細胞において独占的にまたはより高レベルで産生されるポリペプチドが含まれる。標的抗原には、myb、myc、fyn、および転座遺伝子のbcr/abl、ras、src、P53、neu、trk、ならびにEGRFなどの癌遺伝子によりコードされたポリペプチドが含まれる。標的抗原としての癌遺伝子産物に加えて、抗癌治療および予防レジメンのための標的ポリペプチドには、B細胞リンパ腫により作られる抗体の可変領域およびT細胞リンパ腫のT細胞受容体の可変領域が含まれ、これらは、一部の実施形態では、自己免疫疾患に対する標的抗原としても使用される。モノクローナル抗体17−1Aにより認識されるポリペプチドおよび葉酸結合ポリペプチドを含む、腫瘍細胞でより高レベルで見出されるポリペプチドなどの他の腫瘍関連ポリペプチドを、標的ポリペプチドとして使用することができる。 他の適切な治療用ポリペプチドおよびタンパク質には、細胞受容体および「自己」に向けた抗体を産生する細胞を含む、自己免疫と関連した標的に対する広範囲にわたる防御免疫応答を付与することにより、自己免疫疾患および障害に罹患した個体を治療するのに有用となりうるものが含まれる。T細胞媒介性自己免疫疾患としては、関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、自己免疫性甲状腺炎、反応性関節炎、強直性脊椎炎、強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、乾癬、血管炎、ヴェグナー肉芽腫症、クローン病、および潰瘍性大腸炎が挙げられる。これらの疾患のそれぞれは、内因性抗原に結合し、自己免疫疾患に関連した炎症性カスケードを惹起するT細胞受容体(TCR)を特徴とする。 標的細胞に送達するためのさらに他の産物は、当業者には公知である。III.単離および精製の方法 本発明は、固体担体に結合したβ−ガラクトースを使用する、AAV9の単離および検出のための方法を提供する。本発明はまた、β−ガラクトースに対する結合部位を有する別のクレードF AAVの精製、またはβ−ガラクトースに対する結合部位を含有する、いわゆる「空のAAV9カプシド」(その中にパッケージングされたゲノム配列を含まないインタクトカプシドタンパク質)に容易に適用することができる。例えば、キメラAAVカプシドを含有するAAVベクター、例えば、AAV9の一部、またはβ−ガラクトース結合部位を有する他のクレードFカプシドタンパク質を含有するベクターは、本発明に従って検出、分離、および単離することができることは理解されよう。本明細書の全体にわたる便宜のために、本明細書に記載のβ−ガラクトースに特異的な結合部位を有するこれらのウイルスベクターおよび他のタンパク質は、「精製標的」と称される。前に指摘したように、このセクションでのAAV9との記載は簡潔表現のために使用するものであって、β−ガラクトースに対する結合部位を有する他のAAVカプシドを排除するものではないことは理解されよう。 本明細書に記載の方法を使用して、高塩濃度溶液による溶出またはインキュベーションにより、特異的に結合したウイルス(または「空のカプシドタンパク質」)を取り出すと、CsCl2沈降法で得られるよりも望ましい純度のAAV9が効率的に回収される。加えて、この手法は、迅速で、特殊な装置を必要とせず、容易にスケールアップすることができる。本発明はさらに、ウイルスベクターの精製および検出のために単一工程のアフィニティーカラムおよび場合によっては視覚的に検出可能なマーカー系を利用する本明細書に記載の方法を使用する、AAV9カプシド(パッケージングされたウイルス粒子であっても「空の」であってもよい)の単離および検出に有用なキットを提供する。 一実施形態では、本方法は、精製標的を単離するための方法を提供する。この方法は、固体担体に連結されたβ−ガラクトースを含む分子に接触させるように精製標的を含む試料を曝露して、それによってβ−ガラクトースに対する結合部位を有する精製標的を、その分子に選択的に結合させる工程を含む。その後、固体担体を洗浄して、固体担体に非特異的に結合している物質を試料から除去する。次いで、精製標的を固体担体から分離することができる。場合によっては、固体担体から分離した精製標的を、さらなる使用のために濃縮する。一実施形態では、固体担体はアフィニティークロマトグラフィーカラムに充填される。 本発明は、クレードF AAVまたはAAV9細胞結合ドメインを有するAAVに由来するカプシドを有するウイルスベクターを分離および単離するのに十分適している。これらのAAVは、これらのウイルスがβ−ガラクトースに特異的に結合するそれらのカプシドの能力によって産生される、培養物中に見出される物質から分離することができる。そのような培養物中に見出されるアデノウイルス、AAV1、および他のウイルスまたは細胞物質は、β−ガラクトースに特異的に結合しないので、本発明の方法は、ヘルパー依存産生培養物からの、クレードF AAVまたはAAV9細胞結合ドメインを有するAAVの分離および単離に有用である。 本明細書に明示されているように、本発明での使用のために、1つまたは複数のβ−ガラクトース分子を、固体担体に直接的または間接的に(例えば、適切なリンカーを介して)結合させることができる。あるいは、β−ガラクトースは、固体担体に(直接的または間接的に)結合しうる、タンパク質性成分、糖成分、および化学成分を含む、種々の分子中に見出すことができる。AAV9、他のクレードF、またはAAV9細胞結合ドメインを含有するキメラAAVを効率的に結合するために、そのような分子は、末端(エキソ)ガラクトースを含有する。β−ガラクトースを含有する分子の一例は、末端β−ガラクトースを有するグリカンである。そのような分子は、商業的供給源から入手することも、または種々の天然、合成、組換え、もしくは他の適切な方法に従って調製することもできる。 β−ガラクトースの化学合成は、アルファアミノ基のTBOCまたはFMOC保護など、当技術分野で公知である。(Coligan,et al.,Current Protocols in Immunology,Wiley Interscience,1991,Unit 9を参照のこと)。あるいは、ペプチドもまた、周知の固相ペプチド合成法により合成することができる(Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1962);Stewart and Young,Solid Phase Peptide Synthesis(Freeman,San Francisco,1969)pp.27−62)。あるいは、固体担体に結合するような、1つまたは複数のβ−ガラクトース成分を含有する化学分子を利用することができる。さらに別の代替形態では、精製に使用する固体担体を、1つおよび好ましくは2つ以上のβ−ガラクトース成分を含有するように、化学的にまたは別の方法で改変することができる。そのようなβ−ガラクトース成分は、例えば、共有結合により、または精製標的へのβ−ガラクトースの結合および非特異的に結合した物質の除去に耐える他の適切な結合により、固体担体に直接連結させることができる。あるいは、β−ガラクトース成分は、例えば、担体へのβ−ガラクトースの結合を容易にする成分により、固体担体に間接的に連結させることができる。そのような成分は、タンパク質、化学成分、または別の適切なリンカーであってもよい。β−ガラクトースまたは末端β−ガラクトース含有成分を連結するのに適した方法は、当技術分野で公知であり、固体担体の製造業者から入手可能でもある。 本明細書で使用される場合、用語「固体担体」は、固体担体に結合したβ−ガラクトース分子が、精製標的へのβ−ガラクトースの結合および非特異的に結合した物質の除去に耐えるように、β−ガラクトースまたは末端β−ガラクトースを含有する分子が結合することができる、ゲル、樹脂、ビーズ、粉末、および他の固体を含む、任意の物質を指す。適切な固体担体の例としては、セファロース、アガロース、架橋アガロース、混合アガロース−ポリアクリルアミド、またはポリアクリレイン(polyacrylein)で構成される樹脂;ビーズ(マイクロビーズを含む);シリコン;ガラス;マイクロセル;マイクロカプセル;マイクロタイタープレート;およびバイオチップが挙げられる。有用な担体には、とりわけ、1999年6月3日に公表された国際公開第99/27351号パンフレット;1999年6月3日に公表された国際公開第99/27140号パンフレット;米国特許第6,096,273号明細書;2000年3月16日に公表された国際公開第00/14197号パンフレットに記載されたものが含まれる。 種々のマイクロビーズが、米国特許第6,074,884号明細書、同第5,945,293号明細書;および同第5,658,741号明細書に記載のアミノデキストランビーズを含めて、公知である。磁性フェライト[米国特許第5,240,640第];金属[米国特許第5,248,772号明細書];ポリスチレン[米国特許第5,466,609号明細書;米国特許第5,707,877号明細書;米国特許第5,639,620号明細書;米国特許第5,776,706号明細書]、およびポリスチレン−金属[米国特許第5,552,086号明細書;米国特許第5,527,713号明細書]粒子のアミノデキストランコーティング単分散コロイド分散も本発明の固体担体として使用することができる。別のタイプの固体担体は、コロイドサイズの金属性固体を覆うアミノデキストランコーティングの層を有する上記コーティング基材を含有することができる。金/銀コロイドコーティングのポリスチレン−アミノデキストランビーズ、それらの調製、特性評価、および全血中の白血球のサブポピュレーション分析での使用が記載されている。例えば、米国特許第5,248,772号明細書;米国特許第5,552,086号明細書;米国特許第5,945,293号明細書;O.Siiman and A.Burshteyn,J.Phys.Chem.,104:9795−9810(2000);およびO.Siiman et al,Cytometry,41:298−307(2000)を参照されたい。このコーティングされた基材の代替として、米国特許第5,639,620号明細書に記載のように、EDACカップリングによりアミノデキストランでコーティングされる、カルボキシ官能基を付与された、コア基材としてのポリスチレン粒子を使用する。これらおよび他の固体担体は当業者には公知であり、限定はされないが、とりわけ、Amersham Pharmacia(Uppsula,Sweden);Pierce;Biorad(Richmond,VA)、およびBeckman Coulterを含む、種々の商業的供給源から入手可能である。 一実施形態では、固体担体は、活性化セファロースで構成される。CnBr−活性化セファロースは、Amersham Pharmaciaから購入することができる。しかしながら、活性化の方法および活性化化合物が公知であるように、セファロースおよび活性化セファロースの他の供給源が公知である。適切な活性化セファロースの例としては、CnBr−、カルボニルジイミダゾール−、グルタルアルデヒド−、ヒドロキシスクシンイミド、および塩化トシル−活性化セファロースが挙げられる。 β−ガラクトースまたはβ−ガラクトースを含む分子を固体担体に結合させる方法は、公知の方法の中から選択することができる。そのような方法はまた、固体担体の製造業者から提供される。一実施形態では、β−ガラクトース連結固体担体は、標的の分離、単離、および/または精製のためのアフィニティーカラムに充填される。この実施形態では、精製標的を含有する試料(例えば、AAV産生培養物由来の溶解物)をカラムに流して、精製標的をβ−ガラクトース連結固体担体に特異的に結合させる。その後、カラムを洗浄して、非特異的に結合した物質を除去する一方、特異的に結合した精製標的を保持する。望ましくは、洗浄試薬は、生理食塩水または生理的なpHに緩衝化された別の適切な試薬(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)である。次いで、精製標的を取り出す条件下で、さらなる洗浄工程にカラムを供する。適切には、溶出試薬は高濃度の塩を含有する溶液である。一適切例では、少なくとも約0.1M濃度のNaClを含有するリン酸緩衝生理食塩水である。別の適切な溶液は、リン酸緩衝生理食塩水および少なくとも約0.4MのNaClを含有する。この情報があれば、当業者は、同様の作用が得られる代わりの塩溶液を容易に選択することができる。あるいは、溶出試薬は、任意の適切な酸性試薬またはその塩(例えば、約1〜約5の範囲の低pHの試薬)であってもよい。そのような試薬の例としては、当業者に容易に明らかになるものの中では、酢酸(例えば、1mM)および酢酸ナトリウムなどのその塩、ならびに0.1Mグリシン(pH3)が挙げられる。精製標的(例えば、AAV9細胞結合ドメインを有する)の溶出に続いて、AAVを従来の手法による濃縮に供することができる。 別の実施形態では、β−ガラクトース連結固体担体を、精製標的を含有する試料と共にインキュベートすることができる。そのような実施形態では、試料は、単離するタンパク質が産生された細胞培養物に由来する溶解物を含有する溶液であってもよい。あるいは、試料は、被験体由来の生体試料であっても、適切な希釈剤との混合物中の被験体由来の生体試料であってもよい。本発明の「被験体由来の生体試料」は、液体の中ではとりわけ、全血、血漿、または血清を含む任意の試料を含むことができ、ここで、形成体(formed bodies)は、細胞、特に血液細胞である。そのような試料は、そのタイプの他の試料を取り扱うための従来の方法、例えば、遠心分離等によって精製することができる。これらの「被験体由来の生体試料」は、試料濃度の調整、またはそうでなければ分析用試料の調製のために、標識化合物との混合および/または場合によっては緩衝液または希釈剤との混合を行うことができる。さらに別の代替形態では、生体試料は組織試料であってもよく、β−ガラクトース連結固体担体は、組織試料とのインキュベーションのために、適切な緩衝液または他の希釈剤と混合することができる。 別の実施形態では、本発明は精製標的を分離するために有用なキットを提供する。このキットは、ウイルスベクター(例えば、クレードF、またはそのカプシド中にAAV9細胞結合ドメインを含有するAAVベクター)の生産における使用に特によく適合する。 典型的には、そのようなキットは、β−ガラクトースまたは固体担体に連結されるβ−ガラクトース含有分子を有する固体担体を含有する。そのような固体担体は、上記の担体の中から選択することができる。望ましい一実施形態では、固体担体は、試料とのインキュベーションのためのビーズまたはゲルである。別の望ましい実施形態では、固体担体を、アフィニティーカラム(例えば、液体クロマトグラフィーカラム)に充填し、試料をそのカラムに通す。 加えて、本発明のキットはまた、洗浄試薬、溶出試薬、および濃縮試薬を含む、所望の試薬を含有することができる。そのような試薬は、本明細書に記載の試薬の中から、また従来の濃縮試薬の中から容易に選択することができる。望ましい一実施形態では、洗浄試薬は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)など、生理的pHに緩衝化された等張生理食塩水であり;溶出試薬は0.4M NaClを含有するPBSであり、濃縮試薬およびデバイスである。例えば、当業者は、ポリエチレングリコール(PEG)もしくはNH4SO4などの試薬またはろ過装置などの装置が有用となりうることを認識していよう。例えば、100K膜のろ過装置により、rAAVが濃縮されるであろう。 これらのキットは、加えて、試料を維持または保存するために必要な試薬を含有することができる。より重要なことは、キットには、競合アッセイの実施および対照の調製のための説明書が含有される。さらにキットの中に、試料に適した希釈剤および緩衝剤、シグナル比較のための表示図、使い捨て手袋、汚染除去説明書、アプリケータースティックまたは容器、および試料調製カップを提供することができる。キットはまた、好ましくは、必要な緩衝物質または培地を必要に応じて含有する。当業者は、患者に関して、いずれの特定の受容体および標的細胞についても、必要な情報および成分を含有する任意の数のキットを集め、その方法を実施して、その結果をその結合部位についての基準と比較することができよう。 さらに別の実施形態では、本発明は、試料中の精製標的(例えば、AAV9)の存在を検出するために有用なキットを提供する。上記の成分を含有することに加えて、そのようなキットは、分子への精製標的の結合を視覚的に検出することを可能にするマーカー試薬も含有することができる。このキットは、被験体からの生体試料、例えば血液の中の精製標的の検出に特によく適合する。このタイプのキットは、上記のβ−ガラクトース連結担体および試薬を含有することに加えて、視覚的に検出可能なマーカーをさらに含むことができる。 用語「マーカー」は、一般には、分子、好ましくはタンパク質性の分子であるが、低化学分子、好ましくは視覚的に検出可能な分子も指す。一例では、これらのマーカーは、レーザーによる励起で特定の波長の検出可能なシグナルを発光することにより検出を可能にする。フィコビリンタンパク質、タンデム色素、特定の蛍光タンパク質、低化学分子、および他の手段により検出可能な特定の分子はすべて、これらの分析のためのマーカーと見なすことができる。例えば、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,6th Ed.,R.P.Haugland,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR(1996)に収戴のマーカーを参照されたい。 本発明に有用なフィコビリンタンパク質の例は、フィコシアニン、アロフィコシアニン(APC)、アロフィコシアニンB、フィコエリトリン(PE)、および好ましくはR−フィコエリトリンである。PEは、現在利用可能な最も明るい蛍光色素の1つである。PEは、抗体に結合させて、蛍光プレートアッセイおよび(MC Custer and MT Lotze,(1990)J.Immunol.Meth.,128,109−117)においてインターロイキン−4の検出に使用され、十分なシグナルを生成した唯一の試験フルオロフォアであることが見出されている。タンデム色素は、フィコビリンタンパク質および別の色素から形成されうる非天然分子である。例えば、米国特許第4,542,104号明細書および米国特許第5,272,257号明細書を参照されたい。本発明に有用なタンデム色素の例は、フィコエリトロシアニンまたはPC5(PE−Cy5、フィコエリトリン−シアニン5.1;励起、486〜580nm、発光、660〜680nm)[A.S.Waggoner et al,(1993)Ann.N.Y.Acad.Sci.,677:185−193および米国特許第5,171,846号明細書]およびECD(フィコエリトリン−テキサスレッド;励起、486〜575nm、発光、610〜635nm)[米国特許第4,542,104号明細書および米国特許第5,272,257号明細書]である。他の公知のタンデム色素は、PE−Cy7、APC−Cy5、およびAPC−Cy7[M.Roederer et al,(1996)Cytometry,24:191−197]である。タンデム色素のPC5およびECDついては、色素のイミノチオラン活性化を含む、いくつかの方法によりモノクローナル抗体に直接結合させるのに成功している。この方法にさらなる数のマーカー(標識リガンド)を加えるために、リガンドに直接結合し、本発明のフィコビリンタンパク質またはタンデム色素と共に使用できるさらに他のマーカーには、励起されると550nm未満の波長を発光する低分子が含まれる。そのような分子はフィコビリンタンパク質の発光と重複しない。そのようなマーカーの一例は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)である。他のものは、上記に引用のハンドブックに収載されている。さらなる色を提供するために、本方法で使用できるさらに他のマーカーは、緑色蛍光タンパク質および青色蛍光タンパク質として知られているタンパク質であり;紫外線による励起で発光する有用なマーカーにもなりうる。ビリタンパク質およびタンデム色素は、Coulter International Corporation,Miami,FL,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR and Prozyme,Inc.,San Leandro,CAを含む種々の供給源から市販されている。上記に論述された他のマーカーまたは標識は、公知の供給源から商業的に入手可能である。 これらのマーカーの利用法は、当業者には容易に明らかであり、β−ガラクトース連結固体担体に接触させる前に、マーカーの存在下で試料をインキュベートする工程を含むことがある。あるいは、マーカーは固体担体に結合していることもある。さらに別の代替形態では、マーカーは、固体担体から特異的に結合した精製標的を取り出す洗浄工程後の精製標的含有溶出液中でインキュベートしてもよい。マーカーの選択および検出系により、本発明が限定されることはない。本発明により提供されるキットは、本明細書に記載の方法を実施するために有用である。 以下の実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実施例1−細胞結合および形質導入アッセイA.結合アッセイ 結合アッセイについては、細胞を150cm2フラスコから掻き集め、100μlの冷無血清(SF)培地中にて、5×105細胞/ウェルで96ウェルプレート上に播種した。Penn Vector(http://www.med.upenn.edu/gtp/−vector_core.shtml)により以前に記載されたように、AAVベクターを生産し、100μlの冷SF培地中に5×109ゲノムコピー(GC)/wellで加え、4℃で1時間インキュベートした。細胞をSF培地で3回洗浄し、200μlのPBS中に再懸濁した。全DNAを、QIAamp DNA Miniキット(QIAGEN)を使用して抽出した。細胞に結合したGCをリアルタイムPCRにより定量した。使用したプライマーおよびプローブは、ベクターゲノムのSV40ポリA配列に相補的にした。Fプライマー:AGCAATAGCATCACAAATTTCACAA[配列番号2];Rプライマー:CCAGACATGATAAGATACATTGATGAGTT[配列番号3];TaqManプローブ:6FAM−AGCATTTTTTTCACTGCATTCTAGTTGTGGTTTGTC[配列番号4]−TAMRA。細胞形質導入アッセイについては、細胞を、黒壁透明底96ウェルプレートに105細胞/ウェルで一晩播種した。次いで、プレートを4℃で15分間静置し、ffLucを発現するAAVベクターの109GCを100μlの冷SF培地に加え、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をSF培地で3回洗浄した。血清含有温培地を補充し、細胞を37℃で48時間インキュベートした。1ウェル当たり150μg/mlのD−ルシフェリン基質を加え、ルミノメーターを使用して相対光単位/秒(RLU/s)を測定することにより、ffLuc発現をモニターした。B.細胞形質導入アッセイ 細胞形質導入アッセイについては、細胞を150cm2フラスコから掻き集め、黒壁透明底96ウェルプレートに5×s105細胞/ウェルで一晩播種した。次いで、プレートを4℃で15分間静置し、ffLucを発現するAAVベクターの109GCを100μlの冷SF培地に加え、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞をSF培地で3回洗浄した。血清含有温培地を補充し、細胞を37℃で48時間インキュベートした。1ウェル当たり150μg/mlのD−ルシフェリン基質を加え、ルミノメーターを使用して相対光単位/秒(RLU/s)を測定することにより、ffLuc発現をモニターした。C.インビボ実験 50μlのPBS中で100mUのNA含有または非含有のAAV。ベクター注入の1時間前またはそれと同時のいずれかでNAを投与した。肺におけるnLacZ遺伝子発現を、以前に記載の方法[Bell,et al,Histochem Cell Biol,124(6):2427−35(2005)]により、投与21日後に検討した。肺切片を、倍率100倍および200倍の両方で検査した。誘導気道のLacZ陽性細胞を、倍率200倍の視野当たりの陽性細胞をカウントすることにより定量した。マウスをケタミン/キシラジンで麻酔し、30μlのPBS中の100mU NAまたは対照としてPBS単独を鼻腔内注入した。以前に記載の方法(上記に引用のBell,2005)により、1時間後に肺を採取し、切片を冷(−20℃)アセトン中で5分間固定した。次いで、肺切片を、Carbo−free(商標)Blocking Solution(Vector laboratories)でブロッキングし、15μg/mlのローダミン標識トウゴマ(Ricinus Communis)アグルチニンI(RCA I)および7.5μg/mlのフルオレセイン標識セイヨウニワトコレクチン(Sambucus Nigra)(SNA)と共に室温で30分間インキュベートした。次いで、スライドをPBS中で2回洗浄し、DAPIと共にVectashield(Vector laboratories)中に封入した。画像を、広視野(200倍)および共焦点顕微鏡(Zeiss LSM 510共焦点顕微鏡)の両方により取得した。筋肉、心臓、肝臓、および脳のRCA染色については、未処置マウスから器官を取り出し、上記のように切片を染色した。脳のCD31染色については、スライド48をラット抗CD31一次抗体(BD Pharmingen)とインキュベートし、次いでフルオレセイン標識抗ラット二次抗体(Vector Laboratories)およびローダミン標識RCAとインキュベートした。肺のα−チューブリン染色については、スライドを上記のように処理した。ただし、切片は、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、マウス抗α−チューブリン一次抗体(Sigma)で染色し、次いでフルオレセイン標識ウマ抗マウス二次抗体(Vector Laboratories)およびローダミン標識RCAで染色した。画像を倍率400倍で取得した。統計的有意性をスチューデントの2テイルt検定を使用して判定した。0.001未満のP値を、有意であると見なした。データは、平均値±SDとして示した。実施例2−グリコシダーゼ処理およびレクチン競合。 Pro−5細胞を、100μlのSF培地中で、50mU/mlのコレラ菌(Vibrio cholerae)由来NAIII型(Sigma)を用いて、または対照細胞を培地のみで37℃で2時間処理した。次いで、一部の細胞を、50μlの反応緩衝液(Sigma)中で、60mU/mlのβ−(1,4)−ガラクトシダーゼを用いて、または対照細胞を反応緩衝液のみで37℃で3時間さらに処理した。次いで、細胞を3回洗浄した後、上記のように、結合および形質導入試験を行った。レクチン競合試験については、Pro−5細胞を、最初にNAで処理してシアル酸を除去した。細胞を冷SF培地で洗浄し、100μlのSF培地中で50μg/mlのレクチンを、または対照として培地のみを加え、4℃で15分間インキュベートした。次いで、レクチン溶液を除去し、AAVベクター(結合に対して5×109GC、そして形質導入アッセイに対して109GC)と50μg/mlのレクチンの混合物または対照としてベクターのみを加え、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を洗浄し、上記のように、AAVの結合または形質導入について分析した。この試験に使用したレクチンには、ガラクトシル(β−1,4)N‐アセチルグルコサミンに結合するエリスリナ・クリスタガリ(Erythrina Cristagalli)レクチン(ECL)、末端ガラクトース残基に結合するトウゴマ(Ricinus Communis)アグルチニンI(RCA I)、N‐アセチルグルコサミンに結合し、シアル酸を介して相互作用もする小麦胚芽アグルチニン(WGA)、(α−1,3))および(α−1,6)マンノースに結合するアマリリス(Hippeastrum)ハイブリッドレクチン(HHL)、α−ガラクトースに結合するグリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia Simplicifolia)レクチンI イソレクチンB4(GSL B4)、およびα結合フコースに結合するロータス・テトラゴノロブス(Lotus Tetragonolobus)レクチン(LTL)(Vector Laboratories)が含まれる。実施例3−AAV9のグリカン結合特異性のスクリーニング グリカンマイクロアレイ(GMA)結合試験については、AAV9のウイルス様粒子(VLP)を、以前に記載のように[Mitchell,et al,2004,PLoS Biol 2(8):E234]、Bac−to−Bacバキュロウイルス発現系/Sf9発現系を使用して調製し、Consortium for Functional Glycomics(CFG;NIH National Institute of General Medicine Science Initiative)のCores DおよびHにより開発されたハイスループットグリカンマイクロアレイでスクリーニングした。プリントアレイ(printed array)(Mammalian Printed Array[PA]V4.1、http://www.functional−glycomics.org/static/consortium/resources/resourcecoreh14.shtml)は、465種の異なる天然および合成の哺乳動物グリカンで構成され、これらには、共有結合アミン官能性を付与されたグリカンへのアミンカップリングまたはアミン反応性のN−ヒドロキシスクシンイミド活性化スライドガラスへのグリカン結合を使用して生成された異なる結合および修飾を有するシアル酸付加糖が含まれる。グリカンまたは複合糖質当たり6つのレプリケートを含有するプリントスライド(printed slide)を、200μg/mlのAAV9 VLPとインキュベートし、次いで、カプシドモノクローナル抗体であるADK9(Jurgen Kleinschmidt,German Cancer Research Centre,Heidelberg,Germanyにより提供)を、結合したカプシドの上に載せ、続いて検出のためにFITC標識二次抗体(5μg/mlで)を載せた。ScanArray 5000共焦点スキャナ(Perkin Elmer Inc.)を使用して、蛍光強度を検出した。IMAGENE画像解析ソフトウェア(BioDiscovery,El Segundo,CA)を利用して画像を分析した。各グリカンについての相対的結合は、最高値および最低値を使用せずに計算した、6つのレプリケートのうちの4つについての平均相対蛍光単位(RFU)として表した。結合データは以下の2つの選択基準を使用して解析した:(I)最高RFU値を有するグリカンの平均値の3標準偏差以内にあったグリカン、および(II)平均RFU値を計算するために使用した4つのレプリケートのRFU間の変動係数(%CV)が20%未満のグリカン(%CV=データの標準偏差と平均値との比をパーセントとして表現して定義した変動係数)。グリカンアレイデータの生成に関連する情報は、以下のURL/アクセッションサイトのオープンアクセスウェブサイトから入手可能である:http://www.functionalglycomics.org/glycomics/HServlet?operation=view&sideMenu=no&psId=primscreen_3528。このデータセットに含まれるものは、生データ、標準化データ、試料アノテーション、実験デザイン、グリカンアレイのアノテーション、および実験プロトコール(アクセッションid primscreen_3528)である。結果 本明細書に記載のように、以前に記載された、いくつかのAAV(血清型1、2、5、および6)および新規AAV血清型7、8、9、およびrh32.33を、糖鎖付加の遺伝学および生化学を研究するために使用されるCHO細胞株Pro−5に対する結合について、エキソ−β−シアリダーゼ(ノイラミニダーゼ、NA)により処理して、また処理せずにスクリーニングした。第一世代AAVに関する結果は、NA前処理(図1A)がAAV2の結合に影響を及ぼさず、AAV1、AAV5、およびAAV6の結合を少なくとも2ログ低下させるという点で予想通りであった(図1B)。新規AAVに関する試験では、AAV7、8、およびrh32.33の結合にはNA処理の影響は示されなかったが、AAV9では、予想外にも結合が2.5ログ上昇することが示された(図1B)。 本発明者らは、オリゴ糖上に末端SAが存在すると、AAV9への結合が阻害されること、またはSAを除去すると結合が増強した分子が露出されることのいずれかを推測した。最も可能性の高い候補は、SAに富んだほとんどのグリカン上の末端から2番目にあるβ−1,3またはβ−1,4ガラクトースであろうと考えられた(図1A)。これらの仮説は、最初に、糖鎖付加に関与した種々の酵素が欠損した、親CHO細胞株であるPro−5の体細胞変異体を使用して、レクチン抵抗性に基づき探究した[SK Patnaik and P.Stanley(2006)Methods Enzymol 416:159−182]。Lec−2は、CMP−SAゴルジトランスポーターが欠損しており、末端SAを欠くNおよびO−グリカンの完全補完体を有しているはずである(図1A)。Lec−8は、UDP−Galゴルジトランスポーターが欠損しており、SAとガラクトース糖の両方を欠くN−およびO−グリカンを産生するはずである(図1A)。ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現する、AAV2、6、および9に基づくベクターを、Pro−5、Lec−2、およびLec−8細胞とインキュベートし、結合および形質導入について分析した(図2A、B)。AAV2の結合および形質導入は、3つの細胞株すべてにおいて同じであり、AAV6に関しては、Pro−5細胞に対してLec−2およびLec−8細胞で低下した。これは、AAV6進入の促進においてSAが重要であることを実証する以前の研究に基づいて予測されるものである。AAV9については、結合および形質導入は、Lec−2において実質的に増加したが、Lec−8細胞ではベースラインレベルに低下した。これは、末端β−ガラクトースに対する結合が、SAの取り込み阻害よりも取り込みを促進するという仮説とより一致している。結合と形質導入との一致は、末端ガラクトースに対する結合がAAV9形質導入の律速段階であることを示唆する。シアル酸除去の影響は、形質導入に対してよりも結合に対しての方が大きく、進入後の段階も形質導入を制限する可能性が示唆される。 AAV9結合における末端ガラクトースの役割を、NAで前処理し、次いで種々の特異性のレクチンと共培養したPro−5細胞でさらに研究した(図2C、結合;図2D、形質導入)。AAV9の結合を遮断したレクチンは、β−1,4ガラクトースを認識するエリスリナ・クリスタガリ(Erythrina Cristagalli)レクチン(ECL)、およびいくつかのタイプのβ−ガラクトース結合を認識し、β−1,4ガラクトースに最も高い親和性を示すトウゴマ(Ricinus Communis)アグルチニンI(RCA I)のみである。両方ともAAV2の結合には影響を及ぼさなかった。α−ガラクトース[グリフォニア・シンプリシフォリア(Griffonia Simplicifolia)レクチンI イソレクチンB4(GSL B4)]、α−1,3およびα−1,6マンノース[アマリリス(Hippeastrum)ハイブリッドレクチン(HHL)]、およびα−フコース[ロータス・テトラゴノロブス(Lotus Tetragonolobus)レクチン(LTL)]を認識するレクチンは、AAV2またはAAV9の結合を妨害しなかった。小麦胚芽アグルチニン(WGA)は、恐らく、ガラクトースによく結合しているN‐アセチルグルコサミンとのその相互作用により、AAV9結合に対してわずかな影響を及ぼした。AAV2およびAAV9の形質導入に対するレクチンの阻害は、それが細胞に有毒であったため情報価値がないRCAを除いて、結合の結果を確認するものであった。 AAV9取り込みのグリカン特異性の最終確認は、末端SAを切断するNAで、またはNAおよびβ−ガラクトース糖の両方を除去するNAおよびβ−ガラクトシダーゼ(β−gal)で前処理されたPro−5細胞で実施した(図1A)。AAV2による結合および形質導入は、酵素前処理によって影響を受けなかったが、NAは、以前に記載されたように、AAV9の形質導入を増強した。この効果はβ−galによるその後の処理により元に戻った(図2E、F)。 AAV9のグリカン−カプシド相互作用は、465種の異なる天然および合成の哺乳動物グリカンで構成され、各グリカン当たり6つのレプリケートを含有するグリカンマイクロアレイを使用して、さらに検討した。生化学的および分子的手法により決定された、シアル酸付加されたグリカンに対するAAV1の結合(Wu et al.,2006,J Virol,80:9093−9103)を、同様の戦略を使用して確認した。我々の分析では、各グリカンについて、アレイ±1SD内の4つのレプリケートの平均値による相対蛍光単位(RFU)を尺度として結合を評価した(6つのレプリケート内の最高および最低の結合を除去した)。4つのレプリケート内の変動は、%CVとして評価し、それが20未満の場合、低いと見なした。AAV9カプシドに対して特異的結合親和性を有するグリカンの選択は、以下の2つの独立した基準に基づくものであった;RFUを尺度とした高い全体的な結合量および%CVによる評価に基づく4つのレプリケート間の低い変動。最も高い結合量のグリカンとは、最も高い結合量のグリカン415の3S.D.以内に入る平均RFU値を有するものとして、任意に定義された。高い結合親和性の基準を満たした4つのグリカンのうち3つが、20未満の%CVによる評価によれば、高い特異性を示した。これら3つのグリカンである415、297、および399は、AAV9結合に対する潜在的な受容体と見なすのに十分な親和性および特異性を示した。全結合量および結合特異性に基づいて、AAV9への結合特異性があるとして選択された3つのグリカンはすべて、β−1,4結合(415および399)またはβ−1,3結合(297)のいずれかを有する末端ガラクトース(Gal)を有することが示された。各グリカンは、それらの構造中に、GalNAcにβ1−3またはβ1−6結合したGalβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcを含有し、AAV9への結合には、シアル酸を欠損するグリカンが構造的に関連することが示唆される。細胞ベースの結合/形質導入実験と結合データをまとめると、AAV9の親和性における末端β−ガラクトース結合の役割が確認される。 本明細書に記載のように、AAV9による誘導気道の形質導入がNAを含有する製剤でマウス気道を前処置することによって増強されうるか否かを判定するために、マウスで試験を実施した。以前の研究で誘導気道の効率的なインビボ形質導入を示したAAV6が投与されたマウスとの比較がなされた[MP Limberis,et al,(2009)Mol Ther 17:294−301]。この形質導入は、細胞株によるインビトロ研究に基づくと、SAへの結合に依存する可能性がある[Z.Wu,et al.,(2006)J Virol 80:9093−9103]。NA非存在下でのAAV9の肺送達は、予測されるように、肺胞の限定的な形質導入パターンを示した;AAV9投与の1時間前またはその時間にNAを投与すると、肺胞と誘導気道上皮細胞の両方に高レベルの形質導入を示す極めて異なるパターンが生じた。AAV6で得られた誘導気道の高レベルの形質導入は、動物がNAで処置されると、完全に消失し、インビボ形質導入がSAへの結合に依存することが確認された。グリカン構造の存在量および分布に対するNAの気管送達の影響を、末端ガラクトース残基(RCA)または末端SA残基(SNA)に結合する蛍光標識レクチンで肺切片を染色ことにより、直接研究した。NA処置の前では、RCA染色は、肺胞細胞および誘導気道の基底側腹部に限定された。SNAについては、誘導気道の頂端膜側も染色されたが、同様のパターンが観察される。NAによる処置は、誘導気道上皮細胞の染色に最も劇的な結果をもたらし、その染色はRCAに対して実質的に増加し、SNAに対して中程度に減少した。RCA結合が細胞膜またはそれを覆う粘液層に局在化しているか否かを判定するために、高解像度顕微鏡研究を実施した。NAで前処置された動物からの肺切片について、気道上皮細胞の頂端膜側由来の繊毛を描写するα−チューブリンの免疫局在性とRCA染色との同時局在性を評価した。これらの研究により、NA前処置肺の誘導気道の上皮細胞表面にRCAが結合していることが実証された。 AAVベクターの血管内(IV)投与に伴う形質導入にとって主要な障害は、微小循環の連続した内皮および基底層の物理的障壁である。1つの例外は、血中のベクターが肝細胞に直接到達することを可能にする有窓内皮を含有する肝臓である。AAV9は、この障壁を部分的に克服して、骨格筋および心筋ならびにより少ない程度に中枢神経系の細胞のターゲティングを可能にするという点でユニークである(Inagaki,K.,S.et al.(2006),Mol Ther 14(1):45−53.;Duque,et al.,(2009)Mol Ther 17:1187−1196;K.D.Foust,et al,(2009),Nat Biotechnol 27:59−65)。1011および1012ゲノムコピー(GC)/マウスの用量でAAV9ベクターをIV投与した後のlacZの形質導入が分析された。これは、RCA染色による末端β−ガラクトースの存在と相関した。記載されているように、肝臓は、低用量のベクターでも効率的に形質導入され[Vandendriessche,et al,2007,J Thromb Haemost 5(1):16−24)];より高用量のベクターでは、心臓および骨格筋に効率的に形質導入することが可能である。[上記に引用のInagaki,2006]。骨格および心臓の組織に由来する筋繊維の表面には、RCAへの結合により証明されるように、高レベルの末端β−ガラクトースが示された。肝血管の内皮表面は明るく染色されたが、肝細胞にはより低レベルのRCA結合が示された。 脳組織のレクチン結合研究では、内皮細胞に対するSNAではなくRCAの実質的な結合が注目すべきことであった。このことは、AAV9とAAV5の両方では脳に直接注入された場合に効率的な形質導入が達成されるが、AAV9には、静脈内注射の後に、CNS細胞をターゲティングするユニークな性質があるため、興味をそそる[B.L.Davidson,et al.,(2000)Proc Natl Acad Sci USA 97:3428−3432;S.]。全身投与による治療のCNS送達にとって主要な障害は、内皮細胞のユニークな密着ネットワークから形成される血液脳関門である。内皮を横切る、受容体および吸収媒介性経細胞輸送経路がこの障害を克服するために利用された。脳の微小循環上に見出された高レベルのAAV9受容体は、経細胞輸送経路を介してCNSをターゲティングするその能力においてある役割を果たしている可能性がある。 AAV9形質導入の媒介におけるグリカンの潜在的な役割は、それらが、従来、構成成分の単糖に対する精密な特異性を伴うウイルス感染の受容体として機能することが多いため、この研究の焦点であった。末端シアル酸を含有するグリカンとの特異的な相互作用は、他のいくつかのAAV血清型を含む多くのウイルスに対して記載されている。AAV9による結合および形質導入が末端β−ガラクトース結合を介して起こるという我々の発見は、公知のAAVを含む他のいずれのウイルスに対しても記載されていない。ただし、ノロウイルスはα−ガラクトース結合を有するグリカンに結合する(Zakhour,M.,(2009).The alphaGal epitope of the histo−blood group antigen family is a ligand for bovine norovirus Newbury2 expected to prevent cross−species transmission.PLoS Pathog 5(7):e1000504.)。 グリカンアレイ研究により、3つのグリカンに対するAAV9の特異的結合が実証され、それらはすべて、末端β−ガラクトース結合を含有しており、3つの独立した手法(すなわち、グリコシダーゼ前処置、レクチン競合、および体細胞変異体)を使用して、複数の細胞株で描写されたように、形質導入におけるこの糖の重要性が確認された。これらのグリカンはすべて、それらの構造中に、GalNAcにβ1−3またはβ1−6結合したGalβ1−4(Fucα1−3)GlcNAcを含有し、GalNAcによってスレオニンを介して結合されており、O−結合ガラクトース含有グリカンがAAV9に結合できることが示された。ただし、他のタイプの結合を伴うグリカンとの機能的な相互作用を除外することはできない(Marth,J.D.1999.O−Glycans.Essentials of Glycobiology.A.Varki,R.Cummings,J.Eskoet al.Cold Spring Harbor,NY,Cold Spring Harbor Laboratory Press:p.101−113)。結合データに関する重要な注意は、結合親和性が、形質導入を媒介するグリコシル化受容体における機能的な重要性と必ずしも相関しないことである。重要な遺伝子治療ベクターに対する受容体は、インビトロで十分特徴づけられているが、インビボ形質導入に対するこれらの受容体の重要性はほとんど確認されていない。インビトロとインビボの形質導入間の不一致の一例は、ヒトアデノウイルス5(Ad5)である。コクサッキーウイルスおよびアデノウイルスの受容体(CAR)が、インビトロ研究に基づいて、Ad5に対する受容体として単離され、インビボ遺伝子導入に伴うCARの重要性を確認する試みでは、CAR結合性を除去されたAd5が利用された。静脈内投与後における、CAR結合性を除去されたAd5ベクターの形質導入レベルおよび肝選択的プロフィールは、Ad5と同様であり、インビボでは潜在的な重複した取り込み経路が示唆された。インビボでのAd5形質導入の機序研究により、血液凝固因子の存在によって、非CAR依存性経路を通して形質導入が媒介されうることが判明した。これと比較して、NAと組み合わせた、AAV9ベクターによる肺指向遺伝子導入に関する我々の研究は、AAV9による誘導気道上皮細胞の形質導入におけるβ−ガラクトース結合の重要性を直接確認した。 インビボでの遺伝子導入に伴う肺以外の組織の細胞の形質導入におけるβ−ガラクトース結合の役割を評価することは、上皮細胞に直接到達することが可能である気道にベクターを送達する場合には存在しない送達の障壁のために、より複雑である。遺伝子治療の多くの臨床応用で検討される投与経路である、AAV9のIV投与に伴う形質導入が、この点を説明する。ほとんどのAAV血清型に基づくベクターのIV点滴は、肝シヌソイドの窓が血管の障壁を除去するので、主として肝細胞に限定された形質導入をもたらす。我々の研究では、β−ガラクトースのレベルが限定されているにもかかわらす、AAV9は肝細胞に効率的に形質導入する。より高用量のAAV9は、血管障壁を乗り越えて、高レベルの細胞表面β−ガラクトースグリカンを含有する心臓および骨格の筋線維に効率的に形質導入することができる。いくつかのグループが指摘するように、AAV9は、より一層強化された血液脳関門でもユニークに通過し、ニューロンの限定された形質導入を可能にする。一部の血管構造物の内皮細胞表面上における、β−ガラクトース結合を有するグリカンの存在は、我々が脳で示したように、おそらく経細胞輸送の過程を通してこの放出を容易にすることに関与する可能性があると推測される。多様な構造のO−結合グリカンへのAAV9結合が実証されたことにより、血液または粘膜表面などにおける非細胞媒介性糖タンパク質との相互作用が、ベクターの生体分布および形質導入プロフィールを変える可能性があることが示唆される。 AAV9に対する一次受容体の同定はまた、肺の誘導気道におけるその形質導入を増強するための薬理学的手法を開発するのに有用であった。特に、NA製剤化ベクターを、網膜などの組織または関節などの閉鎖空間の中に直接投与することができる場合に、AAV9の他の標的に対して効果が達成されると期待される。実施例5−AAV9カプシドのガラクトース結合ドメインの同定 この研究では、我々は、ガラクトースに結合するために必要なAAV9カプシドの特定のアミノ酸を同定することを目的とした。部位特異的突然変異誘発および細胞結合アッセイに加え、コンピュータリガンドドッキング研究によって、我々は、20面体の3回対称軸周りの突起の基底部にポケットを形成する、ガラクトース結合に必要な5つのアミノ酸を発見した。これらのアミノ酸の重要性はまた、マウス肺におけるインビボ研究により確認された。ガラクトースへのAAV9結合に必要な相互作用の同定は、ベクター工学の進歩をもたらしうる。 この研究では、我々は、AAV9カプシド上のガラクトース結合モチーフの同定に努めた。我々は、インビトロおよびインビボの両方において、ガラクトース結合に対する特定のアミノ酸の必要性を判定するために、一連のアラニン変異体を生成した。これにより、AAV9カプシドの3回対称軸周りの突起の基底部にガラクトース結合ポケットが発見された。このことは、分子ドッキング研究によっても確認された。A.材料および方法1.細胞株 細胞株はすべて、米国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)から入手した。親細胞株Pro−5、シアル酸欠損細胞株Lec−2、およびガラクトース欠損細胞株Lec−8を含む、3つの異なるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株を、結合および形質導入の実験に使用した。これらの細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンに加え、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを添加したα−最小必須培地(α−MEM)(Invitrogen)中で培養した。2.動物 雄性C57BL/6マウス(6〜8週齢)をCharles River Laboratoriesから購入し、University of PennsylvaniaにあるTranslational Research Laboratoriesの動物施設に収容した。動物処置はすべて、Institutional Animal Care and Use Committee of the University of Pennsylvaniaから承認を受けた。3.AAV9突然変異誘発および小規模ベクター調製 AAV9カプシド配列の特定の荷電アミノ酸または極性アミノ酸を、図3A〜3Bに示すように、非極性アラニンへの変異のために選択した。突然変異誘発は、Agilent TechnologiesのQuikChange Lightning Site−Directed Mutagenesis Kitを使用して実施した。その後、インビトロでの結合および形質導入のアッセイに使用するための変異体ベクターを小規模生産するために、6ウェルプレート(9.6cm2)におけるHEK293細胞の3重の形質移入を、AAV2 rep遺伝子および変異体AAV9 cap遺伝子を発現するプラスミド、ならびにAAV2逆方向末端反復配列に隣接し、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターから発現されるffLuc導入遺伝子を発現するプラスミドおよびアデノウイルスヘルパープラスミド(pAdΔF6)を使用して実施した。合計2mlの培地中で72時間後、細胞および上清を回収し、3回の凍結/解凍サイクルに付した後、3500×gで30分間遠心分離して細胞片を除去した。ベクター(GC/ml)の力価は、定量PCRにより決定した。4.インビボ研究のためのベクター生産および精製 インビボで使用するためのAAVベクターは、以下に記載のPenn Vectorによって生産および精製された:http://www.med.upenn.edu/gtp/vector_core/production.shtml。ニワトリβ−アクチンプロモーター由来で、AAV2逆方向末端反復配列に隣接したnLacZを発現するプラスミドを、AAV2 rep遺伝子およびAAV9または変異体のcap遺伝子をコードするプラスミドおよびアデノウイルスヘルパープラスミド(pAdΔF6)を有するHEK293細胞の3重の形質移入によりパッケージングした。イオジキサノール勾配遠心分離によりベクターを精製し、定量PCRにより力価を決定した。5.細胞結合および形質導入アッセイ 結合アッセイについては、Pro−5、Lec−2、およびLec−8細胞を150cm2フラスコから掻き取り、100μlの冷無血清α−MEM中にて、5x105細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。ベクターを100μlの冷α−MEM中に5x109GC/ウェルで加え、4℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞を、200μlのα−MEMで3回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁した。全DNAをQIAamp DNA Mini Kit(QIAGEN)を使用して抽出し、細胞に結合したベクターGCを定量PCRにより測定した。形質導入アッセイについては、105細胞/ウェルを、黒壁透明底96ウェルプレートに一晩播種した。培地を除去後、ffLuc(109GC)を発現するAAVベクターを、100μlの完全培地中で細胞に加え、37℃で48時間インキュベートした。次いで、100μlのα−MEM中で、ウェル当たり150μg/mlのD−ルシフェリン基質を加え、ルミノメーターを使用して、相対光単位/秒(RLU/s)を測定することにより、ffLuc発現を決定した。変異体ベクターのインビトロ形質導入効率を図4Aおよび4Bに示す。6.マウス肺の形質導入 実施例3に記載のように、マウスをケタミン/キシラジンで麻酔し、30μlのPBS中の100mUのNAを鼻腔内注入した。1時間後に、nLacZを発現するAAV9または変異体ベクターの1011GCを、50μlのPBSで鼻腔内に送達した。投与21日後、肺でのβ−gal発現を以前に記載の方法(上記に引用のBell,2005)により検討した。肺切片を倍率100倍で検査した。7.分子ドッキング研究による、AAV9カプシド上のガラクトース結合部位の予測 AAV9カプシド上のガラクトース結合部位を予測するために、分子ドッキングウェブサーバーPatchDock(http://bioinfo3d.cs.tau.ac.il/PatchDock/index.html)(Schneidman−Duhovny,et al.,Nucleic Acids Res 33(Web Server issue):W363−7 2005)を使用して、分子ドッキングを実施した。ヒトガレクチン−3に結合したガラクトースのX線結晶構造、PDB登録番号1A3Kを利用して、ガラクトースの座標を準備した(Seetharaman,et al.,J Biol Chem,273(21):13047−52(1998)。AAV9のX線結晶構造の座標(未公表データ)を用い、VIPERdb Oligomerジェネレータ(http://viperdb.scripps.edu/oligomer_multi.php)(Carrillo−Tripp,Nucleic Acids Res,37 (Database issue):D436−42(2009)を使用して、三量体を構築した。AAV9三量体に対する出力PDBファイルを、表面到達可能で、ウイルスカプシドの表面ループの構造的完全性を維持するアミノ酸を含むように短縮した。分子ドッキングの入力ファイルとしての短縮したAAV9三量体PDBファイルに含まれるアミノ酸は、N262−Y277、L435−G475、およびF501−M559であった。分子ドッキングを、方向を指定しない形式で実施して、ガラクトースと相互作用する可能性のある、AAV9カプシド上の部位を評価した。ドッキングはまた、短縮したAAV9三量体およびシアル酸を使用して実施した。ウマ鼻炎ウイルスとそのシアル酸受容体との複合体のX線結晶構造、PDB登録番号2XBOを利用して、シアル酸の座標を準備した(Fry,et al.J Gen Virol,91(Pt8):1971−7(2010)。B.結果1.N470は、AAV9ガラクトース結合に必要である ガラクトース結合に関与しうる、AAV9カプシドの潜在的なアミノ酸を同定するために、AAV9のカプシドアミノ酸配列を、AAV1、2、6、7、および8など、ガラクトースに結合しない他の血清型の配列にアライメントし、いずれのアミノ酸がAAV9にユニークであるか判定した。このアライメントに基づいて、極性または荷電側鎖のいずれかを有する14個のアミノ酸を選択し、非極性のアラニンに変異させて、AAV9結合に対する影響を検討した(図3A)。これらの変異体カプシドコンストラクトを使用して、小規模調製法によりベクターを作製し、野生型AAV9と比較して同様の力価を得た。 次いで、変異体ベクターを3つの異なるCHO細胞株に加え、それらの結合能を評価した。親CHO細胞株Pro−5、ならびにこの細胞株の体細胞糖鎖付加変異体であるLec−2およびLec−8をこれらの実験に使用した。Lec−2細胞は、シチジン一リン酸−シアル酸ゴルジトランスポーターが欠損しており、したがって、それらの表面グリカン上のシアル酸残基が欠損し、末端から2番目に最も一般に見られる糖であるガラクトースの露出が可能になる。Lec−8細胞は、ウリジン二リン酸−ガラクトースゴルジトランスポーターが欠損しており、その結果、それらの表面グリカン構造上にガラクトース糖が欠けている。これらのCHO細胞株に対するベクター結合を検討すると、AAV9について予想された結果が観察された。Pro−5細胞上では低レベルの結合が観察されたが、AAV9結合に自由な末端ガラクトース残基を有するLec−2細胞上では100倍の増加が示された。Lec−8細胞への結合は、細胞表面ガラクトースの欠如により、ベースラインレベルに戻るように低下した。変異体ベクターの14個のうち13個は、Lec−2細胞上の結合が増加するこの傾向を示し、それらがガラクトースに結合する能力を保持することが示唆された。しかしながら、位置470のアスパラギン残基をアラニンに変異させると(N470A)、Lec−2への結合がPro−5およびLec−8細胞上で観察されたレベルに低下した。これにより、ガラクトースに対するAAV9結合にN470が必要であることが示された。2.N470に近接して位置するさらなるアミノ酸がAAV9ガラクトース結合に必要である さらなるAAV9変異体を生成させて、構造的にN470周辺にあるアミノ酸のいずれがまたガラクトース結合に寄与するかを決定した。この第2セットの変異体は、VR I、IV、V、およびVIIを含む、カプシドの多重確定可変領域(VR)の全体にわたるアミノ酸を標的とし、これらは、ビリオンの構築された20面体構造では、互いに近接している。N470近辺の19個のアミノ酸をアラニンへの変異のために選択し(図3B)、ベクターを小規模法により生産した。以前のように、変異体はすべて、AAV9対照と同様の高力価ベクターであり、変異はいずれも、カプシド集合体に対して負の効果を及ぼさなかった。次いで、変異体ベクターについて、Pro−5、Lec−2、およびLec−8細胞に対する結合能を試験した(図3B)。再び、AAV9は、Pro−5およびLec−8細胞と比較して、Lec−2細胞への結合が100倍増加する予想された結果を示した。試験された変異体のほとんどもまたこの表現型を示したが、4つの変異体はLec−2細胞への結合が消失することが示された。D271、N272、Y446、またはW503の変異はすべて、AAV9のガラクトース結合能を消失させた。 これら19のアラニン変異体に加えて、4つの他のAAV9部位特異的突然変異を実施した。非極性アミノ酸のA472およびV473は、N470の直ぐ隣に位置し、ガラクトース結合にある役割を果たす可能性があろう。この考えを試験するために、A472およびV473の両方を極性アミノ酸のセリンまたは荷電アミノ酸のアスパラギン酸のいずれかに変異させた。小規模法によるこれらのベクターの構築は成功し、野生型AAV9と同様の力価が得られた。CHO細胞へのこれらのベクターの結合を検討すると、これらの変異体(A472S、A472D、V473S、およびV473D)の4つすべてが、Lec−2細胞への結合能を消失することが観察された。これにより、この領域に極性または電荷のいずれかを加えると、ガラクトースとの相互作用が破壊されるので、これらの非極性残基がガラクトース結合領域の形成に必要であることが示唆される。3.AAV9変異体のガラクトース結合はインビトロ形質導入効率を指し示す インビトロでのAAV9変異体の形質導入を評価するために、ホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現するベクターを、Pro−5およびLec−2細胞に加えた。ガラクトース結合を失った5つの変異体(N470A、D271A、N272A、Y446A、W503A)、ならびにガラクトース結合を保持する2つの変異体(S469AおよびE500A)およびAAV9対照ベクターを細胞に加え(MOI=104)、48時間後にffLuc発現を評価した。予想通り、ガラクトース結合能を欠く変異体では、AAV9、S469A、およびE500Aと比較して、Lec−2細胞の形質導入が3倍以上低下することが示された。W503AおよびN272Aは、バックグラウンドのほんの少し上の最低の形質導入レベルを示した。Pro−5細胞に関しては、この細胞が結合のための豊富な末端ガラクトース残基を欠いているので、全体的な形質導入は2〜5倍低下した。しかしながら、それでも、Lec−2細胞について測定されたものと同様の形質導入の傾向が観察された。ガラクトース結合が欠損した変異体は、最低の形質導入を示し、ガラクトース結合を保持する2つの変異体(S469AおよびE500A)およびAAV9対照ベクターは、より高レベルの形質導入を示した。しかしながら、E500Aは、Pro−5細胞上で、AAV9よりもほぼ2倍高い発現を示し、このベクターが好ましい細胞内相互作用を有しうることが示唆された。4.ガラクトース結合が欠損した変異体ベクターは、誘導気道上皮に形質導入しない AAV9ベクターの鼻腔内投与の前に、マウスにノイラミニダーゼ(NA)を鼻腔内送達すると、肺の誘導気道上皮の効率的なAAV9形質導入が可能になる。このようになる理由は、NAが気道細胞の表面グリカンから末端シアル酸残基を切断し、これにより、内在するガラクトース残基が露出し、AAV9結合および形質導入が可能になるためである。ガラクトース結合が欠損した変異体ベクターが、インビボで誘導気道上皮に形質導入することができるか否かを試験した。核標的化LacZ(nLacZ)を発現するベクター(1011GC)を、100mU NAの注入の1時間後、マウスに鼻腔内送達し、次いで、21日後に肺を取り出し、β−gal発現に対して染色した。AAV9対照ベクターは、我々の以前の結果に基づいて予想されるように、効率的な誘導気道形質導入を示した。ガラクトースへの結合能を失った5つの変異体(N470A、D271A、N272A、Y446A、およびW503A)は、誘導気道上皮に形質導入することができず、インビボでもガラクトース結合能がないことが実証された。ガラクトース結合を保持する、S469AおよびE500Aの変異体は、AAV9と同様に、効率的な誘導気道形質導入を示した。5.結合に必要なアミノ酸は、ガラクトースとの相互作用を支援するポケットをAAV9カプシド上に形成する AAV9の構造についての知識を使用して、カプシド表面上のガラクトース結合にとって重要なアミノ酸の位置を決定した。分子ドッキング手法を使用して、AAV9 VP三量体上のガラクトース結合部位を同定した。上位100のドッキング結果を評価し、カプシドの内部表面上にガラクトースを置いたドッキング解は廃棄した。残りの13個の解はすべて、N470と近接してガラクトースをドッキングし、13個の解のうちの12個は、N470とW503の間にガラクトースをドッキングする。N470、D271、N272、Y446、およびW503は、3回対称軸周りの突起の基底部にポケットを形成する。このポケットは、2回軸および5回軸に面する突起の外側表面およびVR Iにより形成される、2回軸と5回軸の間の小さな表面突起によって形成される。AAV9は、ガラクトース残基がこの領域の中でどのように適合しているかをさらに説明する結合ポケットを含有する。ガラクトース結合にとって重要であることが見出された非極性のA472およびV473のアミノ酸は、結合ポケットの底部に位置しており、したがって、ガラクトース糖がうまく挿入されることを可能にするように見える。ガラクトース結合部位の興味深い特徴は、結合にとって重要であることが示されたアミノ酸が2つの異なるモノマーに由来することであり、そこでは、Y446、N470、A472、およびV473が結合ポケットの底を形成し、結合ポケットの蓋を形成するアミノ酸であるD271、N272、およびW503が別の担当モノマーに由来する。これにより、適切に集合したカプシドのみが受容体に結合できることを保証する機序が提供されうる。意味あることには、ガラクトース結合ポケットの同定に続いて、同じカプシド領域へのシアル酸分子のドッキングを試みたところ、このグリカンは立体障害によりポケットに収容することができないことがわかった。この観察はAAV9によるシアル酸結合の欠如と一致している。C.考察 AAV9の細胞表面グリカンとの相互作用を研究するこれまでの実験により、このベクターが細胞受容体としてガラクトースを使用することが実証された。Pro−5、HEK293、およびHuh−7を含む、複数の細胞株のAAV9結合および形質導入の分析により、NAを使用して、細胞表面グリカンから末端シアル酸残基を酵素的に除去すると、AAV9結合の顕著な増加がもたらされることが明らかとなった。この増加は、AAV9結合および形質導入を容易にする、内在するガラクトース糖の露出によるものである。CHO糖鎖付加変異細胞株であるLec−2およびLec−8ならびにレクチン競合アッセイを使用するさらなる研究により、ガラクトースのこの役割が確認された。加えて、マウスに鼻腔内送達されたNAは、気道細胞の表面上にある末端ガラクトース残基の増加、したがってAAV9形質導入の増加をもたらした。 この研究の目標は、ガラクトース結合に必要なAAV9カプシドのアミノ酸を同定することであり、それらには、N470、D271、N272、Y446、およびW503が含まれることを我々は確定した。AAV9のガラクトース結合部位を他のガラクトース結合タンパク質と比較すると、アミノ酸組成に関して類似性が発見された。芳香族残基と糖の相互作用は、炭水化物−結合タンパク質の結合部位では一般的であり、ガラクトース−特異タンパク質について観察されている(Elgavish,et al.,1997,Trends Biochem Sci 22(12):462−7.;Sujatha,et al.,2005,Biochemistry 44(23):8554−62)。これらの残基は、糖と疎水的相互作用を形成し、グルコースなどの他の糖からガラクトースを識別するのにも関与している(Elgavish,1997;Sujatha,2005)。これは、2つの芳香族残基、Y446およびW503を含有する、AAV9について我々がマッピングした結合部位と一致する。加えて、多くのガラクトース結合タンパク質は、アスパラギン、アスパラギン酸、およびグルタミンを含む、極性および荷電のアミノ酸を含有し、これらは、糖のヒドロキシル基と水素結合を形成することによりガラクトース結合に寄与することが示されている。(Montfort,et al.,1987,J Biol Chem 262(11):5398−403;Elgavish,1997)。AAV9カプシドのN470、D271、およびN272は、同様の相互作用をガラクトースと形成するように見える。他のAAV血清型の受容体結合ドメインの場所も決定されている。AAV2のHS結合部位には、以下の5つのアミノ酸がマッピングされた:R484、R487、R585、R588、およびK532(Kern,2003 J Virol 77(20):11072−81.;Opie,2003,J Virol 77(12):6995−7006)。これらのアミノ酸は、カプシドの3回対称に関連した突起それぞれの内面上に塩基性パッチを形成する。HSに結合することが示されたAAV6も、AAV2について観察されたものと類似の位置に、R485、R488、K528、およびK533を含むアミノ酸の同様の塩基性ストレッチを含有する(Ng,et al.,2010,J Virol 84(24):12945−57)。加えて、突然変異誘発研究により、K493、K459、R576、およびK531はすべて、AAV6のHS結合に必要であることが示され、近隣に位置している。3回軸周りの突起の基底部に位置するAAV9のガラクトース結合ドメインは、3回軸に面する内面上に位置するAAV2のHS結合領域と比較すると、この構造の反対側にある。AAV6のHS結合残基はまた、AAV9ガラクトース結合残基と比較すると、突起の外壁上に位置するが、VR IIIおよび20面体の2回軸により近い対壁に位置する。これらの観察は、3回軸周りの突起を構築するアミノ酸および構造の重要性ならびに異なるAAV血清型に対する受容体認識におけるこの領域に隣接する残基の重要性をさらに説明する。それはまた、AAVカプシド、特に表面に露出した突起によく見られる構造可変性は、感染を成功させるために、異なる表面分子の利用を可能にするように進化してきたものであり、それぞれの形質導入表現型の重要な決定要素となるという提案を支持する。 AAV9は、受容体相互作用により説明することができる可能性のあるユニークな特性を示す。例えば、静脈内注射の後、AAV9は血液脳関門を越えて、成熟および新生のマウスおよびネコの脊髄の運動性ニューロンならびに新生マウスの脳のニューロンおよび成熟マウスの脳の星状細胞に形質導入することができる。さらに、非ヒト霊長類で試験した場合、AAV9は、脊髄の運動性ニューロンおよび脳の主としてグリア細胞に形質導入した。蛍光レクチン染色により、我々は、マウス脳の血管表面に豊富なガラクトース発現を以前観察した。AAV9は、おそらく、ガラクトースを使用して、血管を横切る経細胞輸送を容易にし、中枢神経系への進入を可能にしているのであろう。他のAAV血清型のカプシド上にガラクトース結合ドメインを工作すると、AAV9の魅力的な表現型の移植および遺伝子治療用の新規ベクターの開発を可能にし得る。実施例6−NA前処置は、マウス鼻気道における、AAV媒介のffLuc発現を改善する。 C57BL6マウス(6〜8週齢、体重20〜25g、雄性)を、ケタミン/キシラジンの混合物で麻酔した。次いで、マウスに対し、ノイラミニダーゼ(NA)(Sigma、N7885)を5μl、それぞれの鼻孔に投与した(NAを合計80〜100mU)。NA前処置の10分以内に、ニワトリβ−アクチンプロモーターの転写制御下にあるホタルルシフェラーゼ(ffLuc)を発現するAAV9ベクター(合計用量1011GC)を、PBSで希釈した15μlアリコートとして注入した(鼻孔当たり15μl)。マウスを回復させて、導入遺伝子発現(ffLuc)を、ベクター接種の24時間後という早期にモニターした。 ルミネセンスイメージングの時点で、マウスを麻酔し、ルシフェリン[両方の鼻孔に鼻孔当たり15mg/mlのD−ルシフェリン溶液(Caliper Life Sciences,Hopkinton,MA)15μl]を投与し、ルシフェリン適用の5分以内に発現に対してイメージングした。3、7、14、21、および28日目でのその後のイメージング検査のために、マウスを回復させた。 図5の棒グラフに、これらの結果を図示する。これらのデータから、ノイラミニダーゼによる前処置に伴って、鼻気道でのホタルルシフェラーゼ遺伝子発現が約2倍改善することがわかる。この差は、2回にわたって観察された。さらに、ノイラミニダーゼの添加は、遺伝子発現の迅速な開始をもたらし、AAV9ベクターインストールの24時間以内に最も高い遺伝子発現が観察された。この発現は一週間以内に定常状態レベルに減弱した。 本明細書で引用したすべての刊行物、特許文献、およびGenBank配列は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。本発明は、特に好ましい実施形態に関連して記載されているが、本発明の精神から逸脱することなく、修正がなされうることは認識されるであろう。 クレードF AAV由来のカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターのターゲティングおよび/または細胞取り込み効率を改変する方法であって、前記方法が、クレードF AAVに結合するβ−ガラクトース残基を含む細胞の能力を改変する組成物を被験体に送達する工程を含む方法。 前記方法が、末端のシアル酸および末端から2番目のβ−ガラクトースを有する細胞表面グリカンを含む細胞を有する被験体に、ノイラミニダーゼと組み合わせて、前記AAVウイルスベクターを送達する工程を含み、それによって、前記ノイラミニダーゼが、末端シアル酸を切断し、最後から二番目のβ−ガラクトースを末端β−ガラクトースに変換する、請求項1に記載の方法。 前記方法が、前記ノイラミニダーゼで前記被験体を前処置する工程を含む、請求項2に記載の方法。 前記方法が、前記AAVウイルスベクターおよびノイラミニダーゼを、実質的に同時に前記被験体に送達する工程を含む、請求項2に記載の方法。 前記AAVウイルスベクターが、前記ノイラミニダーゼをさらに含む担体で前記被験体に送達される、請求項4に記載の方法。 前記ノイラミニダーゼが、細菌ノイラミニダーゼまたはヒトノイラミニダーゼからなる群から選択される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。 前記末端近傍のβ−ガラクトース残基が、前記被験体において、AAV細胞表面受容体を有する第1サブセットの細胞で機能的に除去され、それによって、前記サブセットの細胞によるAAV取り込みが低下または消失し、AAVクレードF受容体を有する、前記被験体の第2サブセットの細胞がAAVの新たな標的になる、請求項1に記載の方法。 前記β−ガラクトースが酵素的に除去される、請求項1に記載の方法。 前記β−ガラクトースが、前記AAVベクターと組み合わせて、ガラクトシダーゼを前記第1サブセットの細胞に送達することにより酵素的に除去される、請求項8に記載の方法。 末端β−ガラクトース残基に結合するレクチンが、前記AAVベクターと組み合わせて、AAVクレードF受容体を天然に有する、被験体の第1サブセットの細胞に送達され、その結果、前記AAVベクターに結合する前記受容体の能力が、前記第1サブセットの細胞において機能的に除去され、前記AAVベクターが、AAVクレードF受容体を天然に有する、前記被験体の第2サブセットの細胞にターゲティングされる、請求項7に記載の方法。 前記レクチンが、カルシウム依存性レクチン、エリスリナ・クリスタガリ(Erythrina Cristagalli)レクチン(ECL)、マクロファージガラクトースレクチン(MGL)、ヒトスカベンジャー受容体C型レクチン(SRCL)、およびヒトマクロファージカルシウム依存性(C型)レクチンからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。 前記MGLがヒトまたはラットのMGLから選択される、請求項1に記載の方法。 前記AAVベクターならびに末端シアル酸残基および末端近傍のβ−ガラクトース残基を有するグリカンを改変するための組成物が肺の中に注入される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。 前記カプシドがAAVクレードFカプシドから選択され、前記AAVクレードが、1000単離物当たり少なくとも75%のブートストラップ値および0.05以下のポアソン補正距離尺度による近隣結合ヒューリスティックを使用して決定された場合に、AAV9に系統発生的に関連する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。 前記クレードが、少なくともAAV hu.14/AAV9、hu.31、およびhu.32を含む、請求項14に記載の方法。 前記クレードが、AAV9またはその受容体結合ドメインを含有するAAVを含む、請求項14に記載の方法。 末端シアル酸残基および末端近傍のβ−ガラクトース残基を有するグリカンを含む細胞表面受容体を有する細胞において、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの遺伝子送達を増加させる方法であって、前記方法が、ノイラミニダーゼおよびAAV9細胞結合ドメインを含むカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む組合せ剤を被験体に送達する工程を含み、前記ベクターが、AAV逆方向末端反復配列を有するミニ遺伝子および宿主細胞においてその発現を指示する調節配列に作動的に連結された異種遺伝子をさらに含む方法。 前記AAVベクターがAAV9カプシドを含み、前記AAV9カプシドがアミノ酸203〜736を有するAAV9 vp3と少なくとも95%同一である、請求項17に記載の方法。 前記ノイラミニダーゼが前記AAVの送達前に前記被験体に送達される、請求項17に記載の方法。 クレードF AAV由来のカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターを単離するための方法であって、前記方法が、 固体担体に連結されたβ−ガラクトースを含む分子に接触させるように、クレードF AAV由来のカプシドを有する前記アデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターを含む試料を曝露して、それによってβ−ガラクトースに対する結合部位を有する精製標的を、その分子に選択的に結合させる工程と、 前記固体担体を洗浄して、前記固体担体に非特異的に結合している物質を前記試料から除去する工程と、 前記固体担体から前記ウイルスベクターを分離する工程とを含む方法。 前記分離されたウイルスベクターを濃縮する工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。 前記固体担体がアフィニティークロマトグラフィーカラムに充填される、請求項20または21に記載の方法。 (a)ノイラミニダーゼ、(b)AAVクレードFカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記ベクターが、AAV逆方向末端反復配列を有するミニ遺伝子および宿主細胞においてその発現を指示する調節配列に作動的に連結された異種遺伝子をさらに含むベクター、および(c)薬学的に許容可能な担体の組合せを含む組成物。 (a)レクチン、(b)AAVクレードFカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターであって、前記ベクターが、AAV逆方向末端反復配列を有するミニ遺伝子および宿主細胞においてその発現を指示する調節配列に作動的に連結された異種遺伝子をさらに含むベクター、および(c)薬学的に許容可能な担体の組合せを含む組成物。 前記クレードFカプシドがAAV9細胞結合ドメインを含む、請求項23または24に記載の組成物。 前記AAVベクターがAAV9カプシドを含み、前記AAV9カプシドがアミノ酸203〜736にわたる配列番号123のアミノ酸と少なくとも95%同一である、請求項23〜25のいずれか一項に記載の組成物。 前記AAVが、1000単離物当たり少なくとも75%のブートストラップ値および0.05以下のポアソン補正距離尺度による近隣結合ヒューリスティックを使用して決定された場合に、AAV9に系統発生的に関連する、請求項26に記載の組成物。 前記AAVが、hu.31およびhu.32のカプシドから選択される、請求項27に記載の組成物。 前記ノイラミニダーゼが、細菌ノイラミニダーゼまたはヒトノイラミニダーゼからなる群から選択される、請求項23〜28のいずれか一項に記載の組成物。 操作されたAAV9細胞結合ドメインを含むAAVカプシドを有する組換えAAVベクターであって、前記AAV9細胞結合ドメインが、AAV9、配列番号1の番号付けに基づいた位置で、ガラクトース結合ドメインを形成するアミノ酸Y446、N470、A472、V473、D271、N272、およびW503を含み、これらのアミノ酸の1つまたは複数が、AAV9細胞結合ドメインが操作されたAAVカプシドにとって天然である別のアミノ酸に置換されている、組換えAAVベクター。 誘導気道に形質導入する野生型(wt)AAV9の天然の能力を実質的に低下または除去するように改変された組換えAAV9ベクターであって、前記ベクターが、配列番号1の位置に基づく位置271、446、および470からなる群から選択される天然AAV9アミノ酸が置換されているAAV9カプシドを有する、組換えAAV9ベクター。 前記天然AAV9アミノ酸がアラニンに置換される、請求項31に記載の組換えAAV9ベクター。 肝臓および心臓に形質導入する能力を保持させながら、気道上皮へのAAV9ベクターのターゲティングを消失させる方法であって、前記方法が、配列番号1の位置に基づく位置271、446、および470からなる群から選択される天然AAV9アミノ酸を別のアミノ酸に置換する工程を含む方法。 AAV9細胞表面結合ドメインを含有するカプシドを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)ウイルスベクターのターゲティングおよび/または細胞取り込み効率を改変する方法が記載される。この方法は、末端のシアル酸残基および末端から2番目のβ−ガラクトース残基を有するグリカンを含むクレードF細胞表面受容体を改変する工程を含む。この改変は、あるサブセットの細胞において、AAV9結合を一時機能的に除去し、それによって別のサブセットの細胞にベクターを新たに向けることにより、ベクターを再ターゲティングさせることを含むことができる。あるいは、この改変は、ノイラミニダーゼで細胞を処理して、細胞表面β−ガラクトースを露出させることにより、細胞取り込み効率を向上させることを含むことができる。さらに、AAV9ベクターおよびノイラミニダーゼを含有する組成物が提供される。さらに、固体担体に連結されたβ−ガラクトースを使用して、AAV9を精製する方法が提供される。さらに、ガラクトース結合ドメインが変異した変異体AAV9、およびAAV9ガラクトース結合ドメインが操作されたAAVを含む、それらのターゲティング特異性が変化するように改変された変異体ベクターが提供される。 配列表


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