タイトル: | 公表特許公報(A)_最適の細胞培養培地組成の決定方法 |
出願番号: | 2013548927 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 1/00,C12N 1/16 |
フレイタス・オリヴェイラ,フイ・マヌエル ロペス・ディアス,ジョアン・ミゲル サントス・フェレイラ,アナ・ラケル JP 2014503220 公表特許公報(A) 20140213 2013548927 20120113 最適の細胞培養培地組成の決定方法 ファクルダージ デ シエンシアス イ テクノロジア ダ ユニベルシダデ ノバ デ リスボア 510251604 FACULDADE DE CIENCIAS E TECNOLOGIA DA UNIVERSIDADE NOVA DE LISBOA 特許業務法人創成国際特許事務所 110000800 フレイタス・オリヴェイラ,フイ・マヌエル ロペス・ディアス,ジョアン・ミゲル サントス・フェレイラ,アナ・ラケル PT 105484 20110114 C12N 1/00 20060101AFI20140117BHJP C12N 1/16 20060101ALI20140117BHJP JPC12N1/00 FC12N1/16 D AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN IB2012050178 20120113 WO2012095819 20120719 42 20130913 4B065 4B065AA77X 4B065BB02 4B065BB03 4B065BC03 4B065BC26 4B065CA44 本発明は、細胞培養培地の組成を最適化するための方法に関する。特に、培地因子の最適値を決定し、それによって、標的基本的細胞機能を、ユーザーのニーズにしたがって、高め、あるいは、抑制させる方法に関する。この方法は、細胞培養実験、好ましくは、エキソメタボローム(exometabolome)の高スループット解析方法を行うことによって、機能的なエンバイロミクス(enviromics)マップを構築するステップを含み、続いて、培地因子の前記機能に基づいて、培地因子の値が調整される。 細胞増殖処方は、水溶液中に、何百もの互いに異なった成分を含んでいる。それらは通常、ペプトン、アミノ酸、肉エキス、酵母エキス、ミネラルおよびビタミン、抑制剤および凝固剤などの栄養素を含んでいる。これらの成分のいくつかは、細胞増殖あるいは生産性に対して臨界的なものであり得、これらの成分の他のものは、あるレベルで有毒であり、多くのものは、細胞内の同一経路あるいは競合する経路内での複雑な相互作用に関与し得る。哺乳類細胞成長に不可欠な成長因子を含む血清(ウシ胎仔血清(FCS)、ウシ胎仔血清(FBS))は動物細胞培養に効果がある添加培地として、広く用いられている。しかしながら、動物起源の材料を用いて、医薬品有効成分(API)を生産するために、血清を用いることは、規制機関によって、きわめて厳しい制限が課せられるため、次第に、血清は用いられなくなりつつある。いくつかの文献(例えば、特許文献1〜3)は、動物細胞の体外培養をサポートすることができる血清を含まない細胞培養培地を開示している。 統計的実験計画法(DoE)によってサポートされた集中的な実験が、細胞培養培地の最適組成を決定するための現在の標準的な方法である。しかしながら、この方法は、時間がかかり、高価である。培地成分は、個々に、あるいは、並列的な実験における少ない組合せで、スクリーンされ、有意に限定され、数多くの培地成分の間の複雑な相互作用を見出すことができる。リアクタによる実験あるいは振とうフラスコによる実験によってサポートされた細菌性細胞、真菌細胞、哺乳類細胞および幹細胞の培養のために、DoEを用いて、数多くの培地最適化についての研究結果が報告されている([2]、[5]、[6]、[8])。最も一般的なDoE法は、限られた数の実験で、5ないし10の培地因子で、予備のスクリーニングを行うことを許容する2つの濃度レベルを用いた、いわゆる数の少ない要因計画である([7]、[2])。たとえば、特許文献4は、2−レベル要因計画を用いる方法と、血清を含まない真核性の細胞培養培地処方の最適濃度を決定するディーペスト・アセント法(deepest ascent method)とを開示している。DoE法を用いて、いくつかの培地因子を同時に比較し、それらの効果を測定して、応答変数の測定値に基づいて、ランク付けがされる。応答変数は、典型的には、代謝体、細胞および生成物濃度である。一旦、応答変数が決定されると、分散分析(ANOVA)などの統計的性能パラメータが、測定された効果の妥当性を評価するために用いられる。培地因子は、その影響に対してランク付けされ、次いで、最も効果の高い因子が選択され、さらなる実験においてテストされる[2]。最後に、回帰モデルが作り上げられ、培地因子の最適レベルが決定される[2]。 統計的DoE法の大きな欠点は、その実験的性質のため、潜在的な相互作用を持った数多くの培地因子に適用したときに、費用がかかるということである。数多くの培地因子のスクリーニングをスピードアップするために、並列的に行われる数千もの栄養素のレベルまたはその組み合わせのスクリーニングを可能にすることを目的にするマイクロバイオリアクタ技術に基づいて、最近、高価でスループットが高い培地最適化装置が開発されている。作業量を少なくし、培地開発をスピードアップする他の方法は、特許文献5に開示されているように、培地成分を濃縮した相溶性のある処方にサブグループ化することである。実験数が少なくて済み、したがって、高速でかつ安価な方法も提案されている。特許文献6は、培地中のアミノ酸の濃度が、培養細胞のタンパク質含有量、発現組換型タンパク質のアミノ酸組成、及び細胞の維持ニーズに基づいて算出されることを特徴とする、細胞培養培地設計のための合理的な方法を開示している。 現在、より進んだシステム生物学的ツールが、実験の数が少なくて済み、テンデンシャリー(tendencially)に機械的培養培地設計に適用されている。Kellと共同研究者は、エキソメタボローム(すべての細胞外代謝体の濃度)と細胞内状態との間に密接なつながりがあることを示している[9]。彼らは、エキソメタボローム動力学によって、細胞の代謝活動および間接的にはゲノム・プロテオミック状態の有益で正確な「フットプリント(foot print)」が提供されることを示している。実際、培地は、本質的な栄養素だけでなく、遺伝子発現調節に関与する小さな分子やタンパク質を運んでいる(たとえば、[3])。培養培地の組成を向上させるために、エキソメタボロミクスを使用することは、これまでに記載されてはいない。 特許文献7には、ゲノミクス及び/又はプロテミクスを用いて、細胞培養培地処方を開発する方法が記載されている。この文献は、細胞内の核酸配列(たとえば、ゲノムについての情報)あるいは発現アミノ酸配列(たとえば、プロテオームについての情報)を検出することと、検出された配列もしくはその発現を調節し、または、検出された配列もしくはその発現によって影響を受けた細胞過程を調節する分子を含む細胞培養培地を形成することとを備え、異なる細胞株または異なる培養条件に対する分子の効果を比較することなしに、細胞培養培地が形成されることを特徴とする。しかしながら、かかる方法は、以下の3つの大きな問題を有している。i)個々の分子間相互作用を探求することは、証明のに費用がかかり、困難である;ii)遺伝子発現、プロテオームおよび細胞表現型との間に既知のギャップがある;iii)遺伝子発現あるいはプロテオームデータの系統的な収集が困難であり、費用がかかる。したがって、系統的な培地設計のために、ゲノミクスおよび/またはプロテオミクスを用いることは、多くの場合に実用的でない。 特定の生化学的形質転換の調節に変わるものは、エンジニアリングに向けられた機能であり、本文献において探求されているアプローチである。細胞の代謝作用は、基本的フラックス・モード(flux mode)解析あるいは極値経路解析(extreme pathways analysis)を用いて、基本的な細胞機能に分解することができる[35]。基本的フラックス・モードは、定常状態において、コヒーレントリー(coherently)に働く代謝反応の唯一の分解不可能なサブネットワークを表わしている。基本的モードの完全なセットは、その機能を実現するために、細胞のすべての動作可能なモードを表わしている。特に、そのフラクソーム(fluxome)vによって定義される細胞の表現型は、基本的フラックス・モードの寄与の加重和として表わすことができる。 ここに、λiは、基本的なフラックス・モードeiの重み付け係数であり、Kは基本的フラックス・モードの数、dim(v)=dim(ei)=qは細胞の代謝反応の数である。基本的フラックス・モードの母集団(universe)は、主として細胞のゲノムによって決定される。遺伝子規模の再構築された代謝ネットワークからの基本的なモード決定方法の例は、[36]〜[38]から見出すことができる。細胞の代謝作用の基本的フラックス・モードへの分解は、遺伝子工学[39]及び機能的ゲノム学[40]をサポートするために、すでに用いられている。しかしながら、本文献に記載されている培地設計法に向けられた基本的な機能は、これまでに関心が向けられたことがない。したがって、以下に記載する方法は、環境変数(たとえば、培地因子)の効果の細胞機能に対する系統的特性評価に基づくものであるため、機能的エンバイロミクス(enviromics)と呼ばれている。機能的ゲノム学は、細胞生物学において、きわめて活発に研究がされている分野である一方で、その相補的な機能的エンバイロミクスは精神的健康障害[41]との関連で言及されているにとどまり、これまでに、細胞生物学との関係で言及されたことはなく、培養培地設計にも適用されたこともない。国際公開第2008/009462号国際公開第2009/149719号米国特許出願公開第2009/061516号明細書米国特許出願公開第2008/248515号明細書ニュージーランド国特許第243160号公報メキシコ国出願公開第2009004974号公報国際公開第2004/101808号 これまでに報告されている細胞培養培地最適化方法は、過度に実験に基づくものである。細胞培養培地は、数多くの成分と、最適化する必要がある数多くの培地因子とを含んでいるため、実験数が指数関数的に増大するという結果を招く。たとえば、潜在的な相互作用を持った10の培地因子を2つのレベルで要因設計をすると、210=1024回のスクリーニング実験が必要になる。このように数多くの実験が必要になるのは、通常、培地因子の生化学的機能及びその相互作用が把握されていないという事実に起因している。 本発明は、主として、培地因子の機能の解明に焦点を合わせた細胞培養培地を開発する方法に関するものである。本発明の方法において採用された一般的な原理は、図1に図示されている。標的とする細胞のゲノムは基本的フラックス・モードの範囲を規定するが、それは、細胞の表現型をサポートする基本的フラックス・モードの相対的な強度を設定する細胞の周囲、すなわち、培地因子である。したがって、この方法の目的は、第一のステージでは、いかにして、培地因子によって、基本的なフラックス・モードの相対的な強度、すなわち、機能的エンバイロミクス解析を制御するかということである。このことは、実験プロトコールを実行することによって実現され、多くの細胞培養実験が実行され、基準培地因子に対する変動が取り込まれ、応答エキソメタボロミクスデータが取得され、解析される。こうして取得されたデータは、培地因子に対する基本的細胞機能の機能エンバイロミクスマップの形に処理される。第二のステージでは、機能エンバイロミクスマップから、望ましい表現型を実行するために、標的とする基本的細胞機能を増強させ、あるいは、抑制させて、最適化された培地の式が開発される。 かかる方法は、現在用いられている方法に対して、いくつかの利点を有している。−この方法によれば、いくつかの標的とする代謝の対象を同時に調整することによって、細胞の代謝作用を操作することが可能になる。−この方法は、実験が少なくて済むので、より容易に、与えられた遺伝子のグループを共有する異なった細胞種を、一般化し、または、外挿することができる。遺伝子の機能は、異なった種の間で、保存されやすいので、環境変数の機能もまた、異なった種の間で、保存されやすい。−従って、この培地設計は、過去に研究した条件を繰り返すことなく、時間とともに、増大する知識に基づくものである。−一旦、十分な知識のベースが構築されると、培地設計には、きわめて少ない実験が必要になるだけである。理論的には、知識の基礎が十分に正確なものであれば、標的とする細胞の代謝作用を最適化するのに、単一のステップの設計が必要なだけである。実施例4及び5に示されるように、単一の設計ステップで済むということは、タンパク質の生産性を60〜100%の範囲で向上させる結果となることがわかる。本発明の方法の概念的アプローチ、すなわち、培養培地エンジニアリングに指向された機能の概念的アプローチを表わす図。図1において、liは、培地因子によって制御される基本的機能重み付けファクターを表わし、eiは遺伝子によって与えられた基本的細胞機能を表わす。本発明の方法のメインステップの概略図。図2において、ステップ1Aは、細胞培養物のセットを示し、ステップ1Bは、エキソメタボローム・アッセイの初期ポイントと最終ポイントを示し、ステップ2は、機能エンバイロミクスマップを示し、xx軸は、遺伝子の母集団によって設定された基本的細胞機能を、yy軸は培地因子を表わす。ステップ3は、最適化された培養培地の式を示し、ステップ4は、細胞培養における最終的検証を示し、最適化された培地の式の3倍であることが示されている。本発明の細胞培養プロトコールを組換型ピチア・パストリスX33菌株への適用を例示する図表。図3は、26の培養実験における培養時間が110時間を経過した後のバイオマス濃度と、生成物濃度と、アンモニア濃度とを与えている。組換型ピチア・パストリスX33菌株のための低分解能の機能エンバイロミクスマップを示す図表。 以下に、本発明を実施するため形態を詳細に記載する。 本発明の方法の特有の特徴は、培地因子及び基本的細胞機能が共同してスクリーンされ、特定の実験的プロトコールを通じて、データを抽出し、得られたデータが機能エンバイロミクス(enviromics)マップの形に処理されることである。実験的プロトコールを実施する前に、培地が設計される生物学的構造を明らかにすることが必要であり、培地が設計されるべき生物学的構造を、ここでは、「標的生物学的構造」という。それは、全細胞であっても、細胞小器官であっても、また、与えられた細胞機能を表わす生化学的反応のコヒーレントな(coherent)セットであってもよい。かかる標的生物学的構造は、q個の生物学的反応によって表わされ、遺伝子とタンパク質が公知のときは、遺伝子とタンパク質とに関連している。一旦、この構造が明確に示されると、N個の培地因子と、K個の基本的細胞機能の基本的機能の組が確立される。 培養培地の式は、N個の培地因子の値によって次のように定義される。 培養培地製の式={FACj} j=1,・・・,N ここで、FACjは培地因子jの値である。前記培地因子は、物理化学的な特性(例えば、温度、オスモル濃度あるいはイオン強度)であっても、既知又は未知の分子種の濃度又は放出率、あるいは、既知又は未知の組成物との混合物の濃度又は放出率であってもよい。 標的生物学的構造は、K個の基本的細胞機能に変換されるq個の生物学的反応によって定義される。 標的生物学的構造={ei} i=1,・・・,K q個の生物学的反応のK個の基本的細胞機能への変換は、基本的フラックス・モード解析、極値経路分析などの公知の生物情報アルゴリズムを適用することによって得られる[17]。実施例1は、酵母「ピチア・パストリス(“Pichia Pastoris”)X33」に対して、いかにして基本的細胞機能が得られるかを示している。 一旦、この一般的構造が公知になると、4つのステップからなる方法が以下のように適用される(図2参照)。[ステップ1−細胞培養のアレイ](ステップ1.1) 振とうフラスコ、T−フラスコ、あるいは反応器内で、培養培地の組成を変化させながら、少なくともN+1の細胞培養実験を行う。細胞培養実験は、好ましくは、マイクロプレート、マイクロバイオリアクタ、又は表現型のマイクロ・アレイなどの高スループットの培養装置内で行う。各実験においてスクリーンされた培地組成を、培養培地因子の値に対して、基本的細胞機能重み付け係数の線形回帰を行うために、適切な実験データが生成されるように決定する。実施例2は、この手順を示し、D−最適設計法を用いて、11個の培地因子の線形関数同定を行う場合、培地因子の値の2つのレベルでの組み合わせから構成される24の独立した実験を行う。さらに、このような培地処方は、基本的細胞機能のスクリーニングを促進するために、解析目的の13C-基質等の標識基質及び/又はタンパク質の抑制剤もしくは活性剤、又は干渉(interference)リボ核酸または基本的細胞機能を高め(knock up)もしくは低める(knock down)他の機能分子を含んでいてもよい。(ステップ1.2) 好ましくは、1H−NMR、13C−NMRもしくはその他のNMR法などの高速かつ高スループットの解析方法を用い、または、GC−MSもしくはLC−MSなどの質量分析法と結合されたクロマトグラフィー法を用い、または、質量分析法のみを用いて、実行された各細胞培養に対し、エキソメタボロームデータの初期ポイントと最終ポイント、すなわち、数多くの代謝体の濃度及び細胞濃度データを取得する。この解析は、酵素キットや高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)などの古典的な特定の代謝体解析方法を用いて行うこともできる。(ステップ1.3) 培地因子に対する基本的細胞機能重み付け係数の線形回帰によって、活性化している基本的細胞機能をプレ・スクリーニングする。これらの重み付け係数は、エキソメタボロームデータの初期ポイントと最終ポイントから得られる。まず、式(2)にしたがって、または、特性の時系列測定値から特性の変化率を算出する他の適当な方法にしたがって、代謝体の変化率を決定する。 ここで、CMiは代謝体iの濃度であり、CXは細胞内濃度、tは培養時間である。 次いで、K個のすべての基本的細胞機能に対して、次式にしたがって、潜在的最大eiの重み付け係数を決定する。 その後、培地因子の値に対し、式(4)にしたがって、λiを線形回帰する。 ここで、Ij,iは、回帰パラメータであり、培養培地因子FACjによる細胞機能の活性化強度eiを表わしている。次いで、培地因子の値に対し、基本的細胞機能を相関係数λiの低い値から高い値にランク付けをする。これに代えて、基本的細胞機能を速度データvの説明分散の低い方から高い方にランク付けをする。次いで、ステップ1.4において、さらにスクリーニングするために、最大の相関係数及び速度データvの最大説明分散化を有するK’個(K’<<K)の細胞機能のサブセットを選択する。(ステップ1.4) ステップ1.1と同様に、培養培地の組成を変えながら、少なくともK’+1回の細胞培養実験を行う。しかし、ここでは、基本的細胞機能重み付け係数の低い値と高い値の組み合わせをスクリーンする。理想的には、2Kの実験が行われ、すべての組み合わせがスクリーンされる。K個の基本的細胞機能のすべてをスクリーンすると、簡単に数百万になってしまうので、実際には、K個の基本的細胞機能のすべてをスクリーンするということはできない。しかしながら、前記ステップ1.3において、細胞表現型に対して最大の寄与をし、培地組成との相関が最大であるK’個の基本的細胞機能をあらかじめ選択しているときは、K’が20になることはほとんどない。実験のこの2回目の実施のために、上述のステップで決定された強度値Ij,iを用いて、基本的処方になるように、細胞培養培地組成が変更される。これらの強度値は、式(5)にしたがって、基本的細胞機能を上方制御または下方制御するために、培地因子の値の変化方向を決定する。[ステップ2:機能エンバイロミクスマップ(Enviromics Map)] ステップ1で実施された実験全体に対して、データ行列X={Faci,j}中の培地組成データ、M個の培地の式のM×N行列(M≧N+K’+2)、各測定フラックス(flux)データR={vi}、測定フラックスのM×q行列を体系化する。次いで、培地因子に緊密にリンクされ、以下の基準を満足する培地組成データX={Faci,j}に対するR={vi}の回帰分析によって、観察された細胞表現型に対して重み付け係数R={vi}を決定する基本的細胞機能の全体のセットの中から、基本的細胞機能のサブセットを決定する。 a.エキソメタボロームデータの捕捉された変化及び/又はエキソメタボロームデータR={vi}の変化率、及び/又はエキソメタボロームデータから誘導された他の情報を最大化する; b.基本的細胞機能重み付け係数と、培地因子又はこれらの値の変換との間の相関を最大化する; c.エキソメタボロームデータの与えられた変化、及び/又はエキソメタボロームデータR={vi}の変化率、及び/又はエキソメタボロームデータから誘導された他の情報を収集するために要求される基本的細胞の数を最小化、すなわち、冗長性を最小化する。 これらの基準は、培地組成データX={Faci,j}と測定されたそれぞれのフラックスデータR={vi}との間の共分散を、次式にしたがって、最大化することによって満足させることができる。 ここで、EM(EM={ei})はK個の基本的細胞機能のq×K行列であり、eiはdim(ei)=qであり、Λ(Λ=λi)は基本的細胞機能(dim(λi)=M)のウエイトベクトルλiのM×K行列であり、I(I={Ij,i})は強度パラメータのK×N行列であり、これらは式(6)を解くための自由度である。式(6)を解くために、いくつかの方法を用いることができる。一つの効率的な方法は、式(7a)〜(7c)の一つずつの、基本的細胞機能の分割から構成される。 ここで、EFiは最小化された残差行列であり、Wは負荷係数の行列であり、Bは回帰係数の行列。最後に、強度行列Iは次式で与えられる。 このようなプロシージャーの結果、培地組成と緊密にリンクされた基本的細胞機能のサブセットが区別される。情報は最終的に、機能エンバイロミクスマップ(Enviromics map)(FEM)と呼ばれるN×Kのデータアレイ内に整理される。 機能エンバイロミクスマップ=IT={Ij,i} j=1,・・・,N i=1,・・・,K 行は培地因子を表わし、列は基本的細胞機能の母集団を表わす。また、Ij,iは、培地因子jによって、上方制御または下方制御された基本的細胞機能iの相対的「強度」である。 これらのステップを実行することは、多くの培地処方をスクリーニングすることが必要であり、コストがかかる。しかしながら、一旦実行されると、環境機能特性の観点から、細胞の特有のパターンが確定される。さらに、機能エンバイロミクスマップが、遺伝子の機能が保存されたのと同様に保存される。異なる遺伝子型内で与えられた機能に対して特定されたパターンは、遺伝子と環境との間の決定論的なリンクをもたらす臨界的な類似性を示すことが見込まれる。実施例3は、酵母P.パストリス(pastoris)X33に対する機能エンバイロミクスマップの構築方法を説明するものである。[ステップ3:最適化された培養培地の式] 培養培地の設計において、理想的には、ユーザーのニーズにしたがって、細胞の機能性を細かく調整することができる。所望の機能性についての情報及び機能エンバイロミクスマップの情報を組み合わせれば、所望の機能性が実現するように、ある基礎式に対して、培地組成の調整方法に関する先験的ルールを推定することができる。これによって、培養培地設計のための実験数を大幅に減少させることができる。機能エンバイロミクスマップにおける情報が十分に正確なものである場合には、単一の設計ステップで、類似した最適培養培地の式を得ることができる。さらに詳細には、その手順は以下のとおりである。 FEM行列の各列に、特定の基本的細胞機能を高め、あるいは、抑制するために、基礎的培地因子値をどのように調整するべきかという情報が保持されている。より詳細には、新たな培地因子の値は、次式にしたがって、変更される。 ここで、FACj(0)は培地因子jの基準値であり、FACjOPTは培地因子jの最適値、Ij,iは機能エンバイロミクスマップのj番目の行、i番目の列の強度値であり、ηiは基本的細胞機能i(設計パラメータ)の増大因子である。細胞機能特殊培地補充式は、機能エンバイロミクスマップの列から推定することができる。あるいは、増大因子を同時にいくつかの基本的細胞機能に適用することによって、グローバルに最適化された培地の式を得ることができる。[ステップ4:最終検証ステップ] ステップ1のように、追加的培養実験において、新たに最適化された培養培地の式がスクリーンされる。しかしながら、実験数はかなり少なく、典型的には、与えられた最適化された培地の式の数の3倍である。 ステップ4の最後に、生産性及び/又は生産物の品質、又は全体的な培養性能が基礎的培地処方をはるかに超えることが期待される。生産性の向上が場合によって異なることは明らかである。実施例4、5及び6は、組み換え型P. Pastoris X33に対し、60%〜100%の範囲で生産性がどの位高まるかを示している。 本発明は、最適細胞培養培地組成を決定する方法であって、a)培地が設計される生物学的構造を選択するステップと;b)N個の培地因子と、上述した生物学的構造のK個の基本的細胞機能のワーキング・セットを定めるステップと;c)標的生物学的構造のN個の培地因子に対するK個の基本的細胞機能の機能エンバイロミクスマップを、−培地因子数+1(N+1)以上の培養の数を含む培養実験の第一のラン(run)を実行し、各培養が異なる培養培地組成で実行され、低いレベルの培地因子と高いレベルの培地因子の組合わがスクリーンされ、−各培養実験が行われるごとに、初期及び最終のバイオマスと、生成物と、エキソメタボロームデータとを取得し、−培地組成データに対するエキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータの回帰解析によって、培地因子値と高い相関を示すK’個の活性化基本的細胞機能のサブセットを決定し、−活性化細胞機能の数+1(K’+1)以上の培養を含む培養実験の第二のラン(run)を実行し、各培養が異なる培養培地組成で実行され、低い強度レベルの基本的細胞機能と高い強度レベルの基本的細胞機能を組合わがスクリーンされ、−培地組成データ、X={FACi,j}と、次式に従って測定された各フラックスデータR={Vi}との間の共分散を最大化することによって、前記ステップで収集されたデータから機能エンバイロミクスマップを構築し、−機能エンバイロミクスマップの形のデータを体系化し、強度データがN×Kデータアレイ、すなわち、機能エンバイロミクスマップ=IT={Ij,i}の形に割り当て、前記機能エンバイロミクスマップを作るステップと;d)機能エンバイロミクスマップを用いて、−機能エンバイロミクスデータ行列を用い、基本細胞機能特殊培地組成を形成し、培地値の変化値Δ(FACj)により式(5)に従って基本的細胞機能の相対的重みの変化値Δλiを求め、−前記機能的エンバイロミックスマップのi番目の列に適用される式(5)を用いて、単一の基本的細胞機能iを高めるか、あるいは、抑制するように、培養培地組成を形成し、−培養培地組成を形成し、前記機能的エンバイロミックスデータアレイの複数の列に同時に適用される式(5)を用いて、基本的細胞機能の臨界的セットを高めるか、あるいは、抑制することにより、細胞代謝を操作することによって培養培地組成を最適化するステップと;を備える方法である。 好ましい実施態様において:−標的生物学的構造が、細胞組織、全細胞、細胞小器官、または与えられた細胞機能を表わす代謝反応のコヒーレントなセットであり;−培地因子が、物理化学的特性、必須の栄養素及び/又は微量栄養素及び/又は機能分子の濃度及び/又放出率であり、−前記物理化学的特性が、温度、圧力、pH、イオン強度、及び/又はオスモル濃度である。 他の好ましい実施態様において、培養培地の式が、培養培地の式={FACj}(j=1,・・・,N)を用い、N個の培地因子によって決定される。ここで、{FACj}は培地因子jの値であり、標的生物学的構造は、標的生物学的構造={ei}(i=1,・・・,K)を用い、K個の基本的細胞機能によって決定される。 さらに他の好ましい実施態様において、基本的細胞機能が、前記標的生物学的構造の生化学的ネットワークから得られ、前記生化学的ネットワークが、生化学的形質転換のサブセットを含むK個の機能的なサブネットワークに分割され、かかるサブネットワークが、前記標的生物学的構造の代謝ネットワークの基本的なフラックス・モード(flux mode)アルゴリズム、または、極値経路アルゴリズム、または、他のゼロ空間解析アルゴリズム、または、他のゼロ空間凸解析アルゴリズムを適用することによって、マニュアルで、あるいは、自動的に得られる。 さらに他の好ましい実施態様において、基本的細胞機能が、前記標的生物学的構造の生化学的ネットワークの遺伝子スケールの再構成から得られ、K個の基本的細胞機能のワーキング・セットは、トランスクリプトーム(transcriptome)・データ、及び/又はプロテオーム(proteome)・データ、及び/又はエキソメタボローム・データ、及び/又は熱力学的データが利用可能である場合には、これらを用いて、あらかじめ縮小されてもよい。 さらに他の好ましい実施態様においては、機能的エンバイロミックスマップが、振とうフラスコ、Tフラスコ、リアクタ、マイクロプレート、マイクロバイオリアクタ、又は表現型マイクロ・アレイを用いて行われた連続的培養実験及び/又は並列的培養実験によって決定される。好ましくは、前記機能的エンバイロミックスマップが、1H−NMR、13C−NMRなどのNMR法、液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)などのクロマトグラフィー法、質量分析法(MS)またはGC−MS、LC−MSなどの質量分析法にクロマトグラフィー法を組み合わせた方法によって、上清の解析を含むエキソメタボローム・アッセイ法によって決定される。 さらに他の好ましい実施態様において、活性化基本的細胞機能が減少されたセットが、線形回帰解析又は非線形回帰解析によって同定され、エキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータの分散もしくは共分散が最大化され、エキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータと培地因子の値との相関が最大最大化され、基本的細胞機能が、培地因子の値との相関又は培地因子の値に対する感度にしたがってランク付けされている。 さらに他の好ましい実施態様において、機能エンバイロミクスマップが、高スループットの自動化システムによって決定され、培養化デバイス、解析エキソメタボロームデバイス及びコンピュータ・アルゴリズムが、物理的デバイスに接続され、高スループットの機能的エンバイロミックスマップを得る。 本発明の方法によれば、プロダクト・エレメンタリー・フラックス・モード(product elementary flux mode)が60%〜100%の範囲に高められる。 本発明の他の態様は、植物細胞株または動物細胞株または酵母や菌類などの他の真核性単細胞もしくは多細胞の細胞培養培地の組成を最適化するための前記方法の使用、好ましくは、原核生物の細胞培養培地の組成を最適化するための前記方法の使用、及び幹細胞の細胞培養培地の組成を最適化するための前記方法の使用である。 本発明のさらに他の態様は、基本的細胞機能のバイオマーカーの同定である。細胞によって排泄され、または分泌され、エキソメタボロームにおいて検出された培地コンポーネントであって、本発明の方法を用いて単一の基本的細胞機能と強く相関していることが判明している培地コンポーネントは、基本的細胞機能のバイオマーカーとして機能することができる。 本発明のさらに他の態様は、前記方法を備えた基本的細胞機能を標的にした薬剤設計システムである。病状に関連する基本的細胞機能と強く相関していることが判明している化合物は、その病気を治療する薬剤候補になり得る。[実施例] 以下、本発明をより詳細に説明し、特に実施例について説明を加えるが、以下の実施例は本発明を限定するものではない。[実施例1:酵母ピチア・パストリスX33のための基本的細胞機能] ここでは、組み換え型酵母ピチア・パストリスX33菌株のための基本的細胞機能のワーキング・セットを得るためのステップが記載されている。 第一に、代謝ネットワークを、情報源となる文献、すなわち、KEGGデータベース[30]、及びChung等の論文[31]、及びCelik等の論文[32]から構築する。各反応に関わる遺伝子は、多くの場合、既知であり、Chungなどの論文[31]において見出すことができる。さらに、代謝ネットワークは、単一の反応にひとまとめにすることによって、同化経路に簡略化される。得られる代謝ネットワークは、99の反応(したがって、99のフラックス)と、89の細胞内代謝体と、9の細胞外代謝体を有する。代謝反応の完全なセットを表1にリストする。 オープンソースのバイオインフォマティクス(生物情報学)ソフトウエアMETATOOL 5.0[33]を用いて、表Iにおいて特定された代謝ネットワークの基本的フラックス・モードを算出した。基本的フラックス・モードの総数は3368であった。以下のようにして、METATOOL 5.0[30]を用いて、5つのフラックス・モードを得た。各基本的フラックス・モード・ベクトルのディメンションは99であり、その中の値が特定の基本的フラックス・モードに与えられた代謝反応のウェイト(weight)を示していることに注意する必要である。 基本的モード9および10はバイオマス合成に対応し、基本的モード3および12は生成物合成に、基本的モード5は異化作用に対応する。これらの基礎的フラックス・モードは、本発明の方法の後半のステップにおいて、最も重要であるということが判明している。[実施例2:酵母ピチア・パストリスX33のためのN=11の培地因子をスクリーニングする24の培養実験のアレイ] ここでは、酵母ピチア・パストリスX33に対して、スクリーニングを行う方法が記載される。 (表IIに挙げられた)11個(N=11)の培地因子を、スクリーニングのために選択した。各培地因子は、Invitrogen guidelines[34]から採った基準値として、−1レベル(基準値の10倍未満)と、基準値と一致する+1レベルを用いた。 24(=2×(N+1))個の細胞培養に2つの制御実験をプラスしたアレイを、培地組成を変えながら、250mlのT−フラスコを用いて行った。各実験において、テストされる培地因子値の組み合わせは表IIIに挙げられている。これらは、24の独立した実験を用いて、線形関数同定のためのD−最適実験設計法によって得られた。 表II及び表IIIにおいて特定されている組成の各培地を、以下の実験的手順で形成した。40mlの希釈BSM溶液(表II参照)に、グリセロール(濃度20g/L)を加え、121℃で、30分間、加圧滅菌処理した。BSMのpHは約1.5であり、加圧滅菌処理後に、25%の水酸化アンモニウムを加えて、ワーキングpHである5.0に調整しなければならない。水酸化アンモニウムは窒素源としても機能する。PTM1微量塩貯蔵溶液は、まず、細孔径0.22nmのフィルタを用いた濾過によって滅菌され、次いで、加熱滅菌したBSM溶液に、PTM1とBSMとの容積比が1:200(v/v)になるように加えた。 細胞を含んだ低温バイアルを−80℃の温度下で保存した。貯蔵している1mlの細胞と基準組成を有する培地(表II)40mlによって、プレ接種材料(pre-inoculum)を調製し、Innova 4300インキュベータ・シェイカーを用いて、温度30℃、回転数150rpmで培養した。約26時間の培養時間が経過した後、プレ接種材料が指数増殖をしたとき、その2mlを26個のT−フラスコに同時に植菌した。 26個のT−フラスコのそれぞれは、Innova 4300インキュベータ・シェイカーを用いて、温度30℃、回転数150rpmで、110時間、培養した。サンプルは24時間間隔で採取された。各サンプルは、以下の化合物が分析された。−600nm(OD600)での光学濃度及びウェット・セル・ウェイト(wet cell weight)法(15000rpmの遠心分離後、乾燥することなく加重する)によって、バイオマスの濃度が決定された;−酸素免疫測定法(ELISA)によって、生成物の濃度が決定された;−グリセロール及びいくつかの有機酸(リンゴ酸、コハク酸、乳酸、ギ酸、フマル酸)の上清内の濃度が、高性能液体クロマトグラフィーによって決定された;−アンモニウムの濃度が電極(Thermo Electron CorporationのOrion 9512)によって測定された。 図3a〜図3cは、26回の実験の最後におけるバイオマスの濃度、生成物の濃度及びアンモニウムの濃度を示している。グリセロール及び有機酸の濃度は表IVに示されている。有機酸化合物は残留濃度を示している。グリセロールはすべての場合で、完全に使用しつくされていた。[実施例3:ピチア・パストリスX33の機能エンバイロミクスマップ] ここでは、実施例2で収集した実験データがどのようにして、酵母ピチア・パストリスX33の機能エンバイロミクスマップに処理することができるかが実証されている。 まず、各化合物の変化率が、次式によって算出される。ここで、CMi(0)は初期濃度であり、CMi(tbatch)は終点濃度、Xavは平均細胞濃度、tbatchはバッチ実験の経過時間である。上付き文字は実験を示し、下付き文字は化合物を示していることに注意すべきである。 次いで、以下の線形モデルを用いて、培地因子の値に対するvの統計的回帰分析を実行する。 最後に、機能エンバイロミクスマップ(機能エンバイロミクスマップ={Ij、i})の形のデータを、N×Kアレイのフォーム(form)に強度値を体系化する。 この手順の最終結果は表Vに示され、図4に表されている。[実施例4:60%の増大因子によって、生成物の基本的機能を増大させるために最適化された細胞培養培地処方] ここでは、機能エンバイロミクスマップに含まれた情報を用いて、基準培地処方の生産性よりもかなり高い特定の生産性を有する生成物を用いて、どのようにして、最適化された培地処方を得ることができるかについて示されている。 まず、式(6)を用いて、基準実験に対して60%向上することに対応する、標的となる特定の生産性Vproduct(=0.16μg/乾燥する細胞1g/日)になるように、培地因子値の反復調整が行われる。 その結果、次の最適化された培地組成を得ることができた。(最適化された処方) CuSO4・5H2O 7.25g/L;NaI 0.106g/L;MnSO4・H2O 1.152g/L;NA2MoO4・2H2O 0.036g/L;H3BO3 0.013g/L;CoCl2・6H2O 0.25g/L;ZnCl2 25.2g/L;FeSO4・7H2O 5.34g/L;ビオチン(Biotine) 0.038g/L;H2SO4 1.989ml/L;BSMの0.84:1(v/v)の希釈溶液 基準培地処方(表IIに示された対照実験)又は最適化された培地処方を用いて、T−フラスコによる実験を行った。適用した手順は、実施例2において記載されたものの1つとした。最終的に測定された特定の生産性は以下のとおりであった。 基礎フォーミュレーション:0.10μg/乾燥する細胞1g/日 最適化フォーミュレーション:0.17μg/乾燥する細胞1g/日 基礎フォーミュレーションに対して、62.3%の増大因子が得られた。[実施例5:100%の増大因子によって、生成物の基本的機能を増大させるために最適化された細胞培養培地処方] 実施例4と同様な手順を実行し、基準実験に対して100%向上することに対応する、標的となる特定の生産性Vproduct(=0.20μg/乾燥する細胞1g/日)になるように、培地因子値の反復調整が行った。その結果、得られた最適化された培地処方を得ることができた。(最適化された処方) CuSO4・5H2O 12.0g/L;NaI 0.16g/L;MnSO4・H2O 6.00g/L;NA2MoO4・2H2O 0.40g/L;H3BO3 0.001g/L;CoCl2・6H2O 0.25g/L;ZnCl2 40.0g/L;FeSO4・7H2O 3.25g/L;ビオチン(Biotine) 0.4g/L;H2SO4 10.0ml/L;BSMの0.25:1(v/v)の希釈溶液 基準培地処方あるいは最適化された培地処方を用いて、実施例4と同様にして、T−フラスコによる実験を行った。最終的に測定された特定の生産性は以下のとおりであった。 基礎フォーミュレーション:0.10μg/乾燥する細胞1g/日 最適化フォーミュレーション:0.22μg/乾燥する細胞1g/日 基礎フォーミュレーションに対して、104.7%の増大因子が得られた。[実施例6:酵母ピチア・パストリスX33を用いて、50L(リットル)のパイロットプラント・バイオリアクターにおける組み換え型タンパク質の生成量の増大] 前記実施例のピチア・パストリスX33菌株を本実施例でも用いた。菌株は50リットルのパイロットリアクタで培養した。2つの50リットルのパイロット実験で、基礎培地処方(表IIで特定されている。)あるいは実施例5の以下の組成を有する最適化された培地処方を用いて、実験を行った。 CuSO4・5H2O 12.0g/L;NaI 0.16g/L;MnSO4・H2O 6.00g/L;NA2MoO4・2H2O 0.40g/L;H3BO3 0.001g/L;CoCl2・6H2O 0.25g/L;ZnCl2 40.0g/L;FeSO4・7H2O 3.25g/L;ビオチン(Biotine) 0.4g/L;H2SO4 10.0ml/L;BSMの0.25:1(v/v)の希釈溶液 最適化された培地処方については、BSMの0.25:1(v/v)の希釈溶液を、121℃の温度下で、30分間滅菌し、次いで、実施例5と同じ組成を有する、最適化されたPTM1微量塩貯蔵物溶液を添加した。 基礎培地フォーミュレーションについては、希釈していないBSMの溶液を、121℃の温度下で、30分間滅菌し、次いで、表2において特定されている組成の最適化されたPTM1微量塩貯蔵物溶液を添加した。 その後のステップは、以下のように、基礎培地処方に対しても、最適化された培地処方に対しても、同じである。 上述のように、40mlの滅菌培地を含む振とうフラスコを、貯蔵されているピチア・パストリス細胞からの一つのクリオバイアル(Cryovial)によって植菌し、150rpmの回転数及び30℃の温度で、3日間培養した。10mlのプレ接種材料を用いて、振とうフラスコに収容された750mlの最適化培地を植菌した。この接種材料を30℃の温度および150rpmで、3日間成長させ(OD600nm=2−6)、バイオリアクタに植菌するのに用いた。リアクタを、滅菌培地15mlの初期容積で、植菌した。リアクタをバッチモードで、約30分間作動させ、さらに、グリセロール・供給バッチを100時間作動させた。培養温度は30℃に制御し、pHは5に水酸化アンモニウム25%溶液を添加することによって制御した。グリセロール・供給バッチにおいては、溶解酸素を、グリセロールの供給率を閉ループ操作することによって、低いレベル(飽和濃度の5%)に保持した。90時間培養をした最終製品の生産は、それぞれの実験に対し、以下のとおりである。−基礎培地処方を用いた50リットルのパイロット実験: 最終タンパク質タイター(titer) 219.32mg/L,最終的なタンパク質の収率 0.27mg/1gの湿潤した細胞−最適組成の培地処方を用いた50リットルのパイロット実験: 最終タンパク質タイター 258.04mg/L,最終的なタンパク質の収率 0.38mg/1gの湿潤した細胞 基礎培地処方に比し、最適組成の培地処方を用いた場合には、増大因子は、最終生産物のタイターにおいては18%、最終的なタンパク質の収率においては38%であった。[引用文献] 1. Dong, J., et al., Evaluation and optimization of hepatocyte culture media factors by design of experiments (DoE) methodology. Cytotechnology, 2008. 57(3): p. 251-261. 2. Mandenius, C.F. and A. Brundin, Bioprocess Optimization Using Design-of-Experiments Methodology. Biotechnology Progress, 2008. 24(6): p. 1191-1203. 3. Hunter, D.J., Gene-environment interactions in human diseases. Nature Reviews Genetics, 2005. 6(4): p. 287-298. 4. Cunha, A.E., et al., Methanol induction optimization for scFv antibody fragment production in Pichia pastoris. Biotechnology and Bioengineering, 2004. 86(4): p. 458-467. 5. Deshpande, R.R., C. Wittmann, and E. Heinzle, Microplates with integrated oxygen sensing for medium optimization in animal cell culture. Cytotechnology, 2004. 46(1): p. 1-8. 6. Chang, K.H. and P.W. Zandstra, Quantitative screening of embryonic stem cell differentiation: Endoderm formation as a model. Biotechnology and Bioengineering, 2004. 88(3): p. 287-298. 7. Montgomery D.C., 2005, Design and Analysis of Experiments, John Wiley & Sons Inc, 6th edition 8. Ghosalkar, A., V. Sahai, and A. Srivastava, Optimization of chemically defined medium for recombinant Pichia pastoris for biomass production. Bioresource Technology, 2008. 99(16): p. 7906-7910. 9. Kell, D.B., et al., Metabolic footprinting and systems biology: The medium is the message. Nature Reviews Microbiology, 2005. 3(7): p. 557-565. 10. Schuster, S. and H. Claus, On Elementary Flux Modes in Biochemical Reaction Systems at Steady State. Journal of Biological Systems, 1994. 2(2): p. 165-182. 11. Schuster, S., T. Dandekar, and D.A. Fell, Detection of elementary flux modes in biochemical networks: a promising tool for pathway analysis and metabolic engineering. Trends in Biotechnology, 1999. 17(2): p. 53-60. 12. Schuster, S., D.A. Fell, and T. Dandekar, A general definition of metabolic pathways useful for systematic organization and analysis of complex metabolic networks. Nature Biotechnology, 2000. 18(3): p. 326-332. 13. Klamt, S. and J. Stelling, Two approaches for metabolic pathway analysis? Trends in Biotechnology, 2003. 21(2): p. 64-69. 14. Palsson, B.O., N.D. Price, and J.A. Papin, Development of network-based pathway definitions: the need to analyze real metabolic networks. Trends in Biotechnology, 2003. 21(5): p. 195-198. 15. Papin, J.A., et al., Comparison of network-based pathway analysis methods. Trends in Biotechnology, 2004. 22(8): p. 400-405. 16. Wagner, C., Nullspace approach to determine the elementary modes of chemical reaction systems. Journal of Physical Chemistry B, 2004. 108(7): p. 2425-2431. 17. http://pinguin.biologie.uni-jena.de/bioinformatik/networks/metatool/metatool5.0/metatool5.0.html 18. http://www.brenda-enzymes.org/ 19. http://www.pichiagenome.org 20. Martinez, V., et al., Viral vectors for the treatment of alcoholism: Use of metabolic flux analysis for cell cultivation and vector production. Metabolic Engineering, 2010. 12(2): p. 129-137. 21. WO2009007641 - CULTURE MEDIUM FOR HAEMOPHILUS INFLUENZAE TYPE B 22. WO2008134220 - CULTURE MEDIA FOR DEVELOPMENTAL CELLS CONTAINING ELEVATED CONCENTRATIONS OF LIPOIC ACID 23. WO2009CA01342 20090922 - CULTURE MEDIUM FOR MYOBLASTS, PRECURSORS THEREOF AND DERIVATIVES THEREOF 24. WO2008035110 - Stem Cell Culture Medium and Method 25. WO2004101808 - GENOMIC AND PROTEOMIC APPROACHES FOR THE DEVELOPMENT OF CELL CULTURE MEDIUM 26. US2008248515 - Optimizing culture medium for CD34<+> hematopoietic cell expansion 27. US2009061516 - ANIMAL CELL CULTURE MEDIA COMPRISING NON ANIMAL OR PLANT DERIVED NUTRIENTS 28. MX2009004974 - RATIONALLY DESIGNED MEDIA FOR CELL CULTURE 29. WO2008009642 - CELL CULTURE MEDIA 30. WO2009149719 - THE USE OF EXTRACT OF SELENIUM ENRICHED YEAST (Se-YE) IN MAMMALIAN CELL CULTURE MEDIA FORMULATIONS 31. Chung, B.K.S., et al., Genome-scale metabolic reconstruction and in silico analysis of methylotrophic yeast Pichia pastoris for strain improvement. Microbial Cell Factories, 2010. 9. 32. Celik, E., P. Calik, and S.G. Oliver, Metabolic Flux Analysis for Recombinant Protein Production by Pichia pastoris Using Dual Carbon Sources: Effects of Methanol Feeding Rate. Biotechnology and Bioengineering, 2010. 105(2): p. 317-329. 33. von Kamp, A. and S. Schuster, Metatool 5.0: fast and flexible elementary modes analysis. Bioinformatics, 2006. 22(15): p. 1930-1931. 34. Pichia fermentation process guidelines, Invitrogen life sciences, www.invitogen.com/pichia 35. Schuster, S. and H. Claus, On Elementary Flux Modes in Biochemical Reaction Systems at Steady State. Journal of Biological Systems, 1994. 2(2): p. 165-182. 36. Schilling, C.H. and B.O. Palsson, Assessment of the metabolic capabilities of Haemophilus influenzae Rd through a genome-scale pathway analysis. Journal of Theoretical Biology, 2000. 203(3): p. 249-283. 37. Shlomi, T., et al., A genome-scale computational study of the interplay between transcriptional regulation and metabolism. Molecular Systems Biology, 2007. 3. 38. Stelling, J., et al., Metabolic network structure determines key aspects of functionality and regulation. Nature, 2002. 420(6912): p. 190-193. 39. Trinh, C.T., et al., Design, construction and performance of the most efficient biomass producing E-coli bacterium. Metabolic Engineering, 2006. 8(6): p. 628-638. 40. Forster, J., A.K. Gombert, and J. Nielsen, A functional genomics approach using metabolomics and in silico pathway analysis. Biotechnology and Bioengineering, 2002. 79(7): p. 703-712. 41. van Os, J., Rutten, B.P.F. & Poulton, R. Gene-Environment Interactions in Schizophrenia: Review of Epidemiological Findings and Future Directions. Schizophrenia Bulletin 34, 1066-1082 (2008) 最適な細胞培養培地の組成を決定する方法であって、 a)標的生物学的構造を選択するステップと; b)自律的機能及びモジュラー生物学的機能を設定し、2つの前記機能の組合せが前記標的生物学的構造の機能をもたらす、K個の基本的細胞機能を定めるステップと; c)前記標的生物学的構造の環境を決定するN個の培地因子のセットを定めるステップと; d)新規な培養培地サンプル及び/又は使用済みの培養培地サンプルの上清のエキソメタボロームの実験データを用いて、前記N個の培地因子の各々によって、前記K個の基本的細胞機能各々の活性化又は抑制化の強度を表わす機能的エンバイロミックスマップを構築するステップと; e)前記機能的エンバイロミックスマップを用いて、一又は二以上の基本的細胞機能を活性化又は抑制化するように指向する前記細胞培養培地の組成を最適化するステップと;を備えることを特徴とする方法。 請求項1記載の方法であって、 前記ステップd)における前記機能的エンバイロミックスマップの構築は、 前記培地因子の数に1を加算した(N+1)以上の数の培養を含む培養実験の第一のランを実行するステップであって、各培養が異なる培養培地組成で実行され、低いレベルの培地因子と高いレベルの培地因子の組合せがスクリーンされるステップと; 実行された培養実験各々に対して、初期及び最終のバイオマス、生成物、及びエキソメタボロームのデータ、又は、一部のエキソメタボロームのデータを取得するステップと; 相対的重み付け係数λjがゼロよりも高い活性基礎的細胞機能のサブセットを、下記の線形モデルを用いて、前記エキソメタボロームのデータ、又は培地組成データに対して誘導されたエキソメタボロームのデータの回帰分析によって決定するステップと(ただし、vは要素が測定されたエキソメタボロームのコンポーネントの変化率を表すベクトルであり、Ii,jは回帰解析によって決定された培地因子iによる基本的細胞機能jの活性化強度パラメータである); 活性化細胞機能の数に1を加算した数以上の数の培養を含む培養実験の第二のランを実行するステップであって、各培養が異なる培養培地組成で実行され、前記培地組成は、活性化基本的細胞機能の重み付き係数の低い値と高い値を、前記培地因子によって制御される活性化細胞機能のサブセットと特定するように予め決定された前記強度パラメータ値Ii,jを用いて、スクリーンするために設定されるステップと; すべての前記ステップにおいて、式(3a)及び(3b)を用いた線形回帰解析によって収集されたデータから機能的エンバイロミックスマップを構築し、かつ、前記データを前記機能的エンバイロミックスマップの形に体系化するステップであって、実験の前記第一のランによって決定された前記強度値Ii,jが、実験の前記第二のランのデータによって補正され、N×Kのデータアレイ(機能的エンバイロミックスマップ={Ii,j})の形にするステップと;を備えることを特徴とする方法。 請求項1記載の方法であって、 前記ステップe)における前記培養培地組成の最適化は、 前記機能エンバイロミクスデータの行列を用いて、基本細胞機能特殊培地組成を形成するステップであって、前記培地因子の値の変化値Δ(FACj)により、に従って基本的細胞機能の相対的重みの変化値Δλiを求めるステップと; 前記機能的エンバイロミックスデータアレイのj番目の列に適用される式(4)を用いて、単一の基本的細胞機能jを高める、あるいは、抑制するように培養培地組成を形成するステップと; 前記培養培地組成を形成し、前記機能的エンバイロミックスデータアレイの複数の列に同時に適用される式(4)を用いて、基本的細胞機能の臨界的セットを高める、あるいは、抑制することにより、細胞代謝を操作するステップと;を備えることを特徴とする方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、 前記標的生物学的構造が、細胞組織、全細胞、細胞小器官、又は所定の細胞機能を示す生化学的形質転換のコヒーレントなセットであることを特徴とする方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、 前記標的生物学的構造が、遺伝子学的に修飾され、前記基本的細胞機能の活性化又は抑制化に指向させる遺伝子修飾を含むことを特徴とする方法。 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法であって、 前記培地因子が、必須の栄養素及び/又は微量栄養素及び/又は生物学的機能分子の、固体及び/又は液体及び/又は気体の混合物の物理化学的特性、前記化合物の放出率、あるいは、前記化合物の摂食率であることを特徴とする方法。 請求項1〜3、6のいずれか一項に記載の方法であって、 前記物理化学的特性が、温度、及び/又は圧力、及び/又はpH、及び/又はイオン強度、及び/又は濃度、及び/又は活性、及び/又は容積モル浸透圧濃度、及び/又は重量モル浸透圧濃度、及び/又は関連する特性であることを特徴とする方法。 請求項1〜3、6のいずれか一項に記載の方法であって、 必須の栄養素及び/又は微量栄養素及び/又は生物学的機能分子は、 塩、及び/又はビタミン、及び/又は代謝の共同因子、及び/又は抗生物質、及び/又は炭水化物、及び/又は脂質物質、及び/又はタンパク性物質、及び/又はヌクレオチド物質、及び/又はシグナル伝達タンパク質、及び/又は酵素の活性を抑制する分子、及び/又はタンパク質の活性分子、及び/又は遺伝子形質転換モジュレータ、及び/又は干渉性リボ核酸、及び/又は、前記物質と、血清、純粋なヒドロシレイト、又は複合有機物質を含む既知又は未知の組成物との複合混合物を含む、無機物質及び/又は有機物質であることを特徴とする方法。 請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、 前記培養培地の式は、培養培地の式={FACj},j=1,・・・,N(但し、FACjが前記培地因子jの値である。)を用いて、N個の培地因子の値によって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、 前記標的生物学的構造は、 標的生物学的構造={ei},i=1,・・・,K(但し、eiは、q個の要素のベクトルであり、前記要素の値は基本的細胞機能iにおける各生化学反応の重み付き係数を表す。)を用いて、q個の生化学的反応と、K個の基本的細胞機能とによって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法であって、 前記基本的細胞機能は、前記標的生物学的構造の生物学的ネットワークから得られ、 前記生物学的ネットワークは、生物学的形質変換のサブセットを含むK個の機能的サブネットワークに分割され、 前記サブネットワークがマニュアルで及び/又は自動的に得られることを特徴とする方法。 請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、 前記基本的細胞機能は、前記標的生物学的構造の生物学的ネットワークのゲノム・スケール・リコンストラクションから得られ、 K個の基本的細胞機能のワーキング・セットは、トランスクリプトームデータ、及び/又はプロテオームデータ、及び/又はエンドメタボロームデータ、及び/又は熱力学的データが利用可能であるとき、前記データを用いて予め縮小されることを特徴とする方法。 請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法であって、 前記機能的エンバイロミックスマップは、振とうフラスコ、Tフラスコ、リアクタ、マイクロプレート、マイクロバイオリアクタ、又は表現型マイクロアレイの中で実行される、連続的培養実験及び/又は並列的培養実験によって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法であって、 前記機能的エンバイロミックスマップは、 液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)等のクロマトグラフィー法、1H−NMR、13C−NMR等のNMR法、質量分析法(MS)、又は、GC−MS、LC−MS等の質量分析法に組み合わせたクロマトグラフィー法によって、あるいは、前記測定方法を組み合わせた方法によって、新規な培養培地サンプル又は使用済みの培養培地サンプルの上清の解析を含むエキソメタボロームアッセイ法によって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法であって、 前記活性化基本的細胞機能の縮小したセットは線形回帰解析又は非線形回帰解析によって同定され、 エキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータの分散又は共分散が最大化され、 エキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータと培地因子の値との相関が最大化され、 前記基本的細胞機能が、前記培地因子の値との相関又は前記培地因子の値に対する感度に従ってランク付けされることを特徴とする方法。 請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法であって、 前記機能的エンバイロミックスマップが高スループットの自動化システムによって決定され、 培養化デバイス、解析エキソメタボロームデバイス、及びコンピュータ・アルゴリズムが物理的デバイスに接続され、高スループットの機能的エンバイロミックスマップが得られることを特徴とする方法。 請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法であって、 製品量及び/又は製品品質に関連付けられた前記標的基本的細胞機能iが、相対的重量Δ(λi)を60%〜100%増大させることを特徴とする方法。 異種のタンパク質発現機能を60%〜100%の範囲で高めることを特徴とし、酵母ピチア・パストリスの培養のための、請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法によって得られた、化学的に定義された培養培地処方であって、 a)12.0g/LのCuSO4・5H2O、0.16g/LのNaI、6.00g/LのMnSO4・H2O、0.40g/LのNa2MoO4・2H2O、0.001g/LのH3BO3、0.25g/LのCoCl2・6H2O、40.0g/LのZnCl2、3.25g/LのFeSO4・7H2O、0.4g/Lのビオチン、10.0g/LのH2SO4によって構成された微量成分の水溶液と; b)水溶液a)と、26.70ml/Lの85%H3PO4、0.93g/LのCaSO4・2H2O、18.20g/LのK2SO4、14.90g/LのMgSO4・7H2O、4.13g/LのKOHによって構成される相補的な基礎水溶液、又は他の相補的な基礎水溶液との混合物と;から構成されることを特徴とする培養培地処方。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 組織、及び/又は細胞、及び/又はウィルス、及び/又は細胞コンポーネント、及び/又はタンパク質に関係する物質、及び/又は炭水化物、及び/又はヌクレチド物質、及び/又は脂質物質、及び/又は一次代謝物質、及び/又は二次代謝物質、あるいは、バイオ燃料の製造、ワクチンの製造、薬の製造、バイオポリマーの製造、又はこれらの前躯体の製造等の生物学的製造プロセスにおける製造物の混合物の、数量及び/又は品質を増大させることを特徴とする使用。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 植物界又は動物界の細胞株の細胞培養培地の組成、あるいは酵母や菌類等の他の真核性単細胞又は多細胞有機体の組成を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 原核生物有機体の細胞培養培地の組成を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 幹細胞の細胞培養培地の組成を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 細胞機能のバイオマーカーを同定することを特徴とする使用。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 疾患状態に関連付けられた細胞機能を変更するように指向された薬を設計し、あるいは薬混合物を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法を備えたバイオマーカーのアイデンチファイア。 請求項1〜17のいずれか一項に記載された方法を備えた薬の設計システム。 本発明は、細胞培養基の組成を最適化するための新規な方法に関する。この新規な方法は、2つの主要なステージを備えている。第一のステージにおいて、特定の細胞培養プロトコール及びエキソメタボローム・アッセイ・プロトコールを実行することによって、細胞機能及び培地因子のスクリーンを介して、機能エンバイロミクスマップが構築される。機能エンバイロミクスマップは、培地因子に対する基本的細胞機能の強度値のデータアレイから構成される。第二のステージにおいて、機能エンバイロミクスマップの列から、標的となる基本的な細胞機能を高め、あるいは、抑制するように、最適化された細胞培養基処方が開発される。本発明の主要な効果は、細胞培養培地組成の調整を介して代謝操作を可能にし、著しく経験的で、細胞機能に指向されておらず、極めて多数の実験が必要な従来の方法とは異なり、培地因子を介して、任意の多数の細胞機能を最適化することができる。さらに、この新規な方法は、費用対効果の高いエキソメタボロム・アッセイに基づくもので、費用のかかる細胞内ゲノムやプロテオミック・アッセイが必要ない。【選択図】図1 20120703A16333全文3 最適な細胞培養培地の組成を決定する方法であって、 a)標的生物学的構造を選択するステップと; b)ステップa)の前記標的生物学的構造を規定する生化学的形質転換のセットを定めるステップと; c)ステップa)の選択された前記標的生物学的構造のK個の基本的細胞機能のセットを定めるステップであって、各基本的細胞機能は、ステップb)の細胞内生化学的形質転換のサブセットから構成され、及び/又は、自律的機能及び/又はモジュラー生物学的機能を設定し、K個の全ての基本的細胞機能の組合せがステップa)の前記標的生物学的構造の機能をもたらすステップと; d)ステップa)の前記標的生物学的構造のステップc)の前記K個の基本的細胞機能の環境を決定するN個の培地因子のセットを定めるステップと; e)前記培地因子の数に1を加算した(N+1)以上の数の培養を含む培養実験の第一のランを実行するステップであって、各培養が異なる培養培地組成で実行され、低いレベルの培地因子と高いレベルの培地因子の組合せがスクリーンされるステップと; f)実行された培養実験各々に対して、初期及び最終のバイオマス、生成物、及びエキソメタボロームのデータ、又は、一部のエキソメタボロームのデータを取得するステップと; g)相対的重み付け係数λjがゼロよりも高い活性基礎的細胞機能のサブセットを、下記の線形モデルを用いて、前記エキソメタボロームのデータ、又は培地組成データに対して誘導されたエキソメタボロームのデータの回帰分析によって決定するステップと(ただし、vは要素が測定されたエキソメタボロームのコンポーネントの変化率を表すベクトルであり、Ii,jは回帰解析によって決定された培地因子iによる基本的細胞機能jの活性化強度パラメータである); h)活性化細胞機能の数に1を加算した数以上の数の培養を含む培養実験の第二のランを実行するステップであって、各培養が異なる培養培地組成で実行され、前記培地組成は、活性化基本的細胞機能の重み付き係数の低い値と高い値を、前記培地因子によって制御される活性化細胞機能のサブセットと特定するように予め決定された前記強度パラメータIi,jの値を用いて、スクリーンするために設定されるステップと; i)すべての前記ステップにおいて、式(3a)及び(3b)を用いた線形回帰解析によって収集されたデータから機能的エンバイロミックスマップを構築し、かつ、前記データを前記機能的エンバイロミックスマップの形に体系化するステップであって、実験の前記第一のランによって決定された前記強度パラメータIi,jの値が、実験の前記第二のランのデータによって補正され、N×Kのデータアレイ(機能的エンバイロミックスマップ={Ii,j})の形にするステップと; j)前記機能的エンバイロミックスマップを用いて、一又は複数の基本的細胞機能を活性化又は抑制化するように指向された細胞培養培地の組成を最適化するステップと;を備えることを特徴とする方法。 請求項1記載の方法であって、 前記ステップe)における前記培養培地組成の最適化は、 前記機能エンバイロミクスデータの行列を用いて、基本細胞機能特殊培地組成を形成するステップであって、前記培地因子の値の変化値Δ(FACj)により、に従って基本的細胞機能の相対的重みの変化値Δλiを求めるステップと; 前記機能的エンバイロミックスデータアレイのj番目の列に適用される式(4)を用いて、単一の基本的細胞機能jを高める、あるいは、抑制するように培養培地組成を形成するステップと; 前記培養培地組成を形成し、前記機能的エンバイロミックスデータアレイの複数の列に同時に適用される式(4)を用いて、基本的細胞機能の臨界的セットを高める、あるいは、抑制することにより、細胞代謝を操作するステップと;を備えることを特徴とする方法。 請求項1又は2記載の方法であって、 前記標的生物学的構造が、細胞組織、全細胞、細胞小器官、又は所定の細胞機能を示す生化学的形質転換のコヒーレントなセットであることを特徴とする方法。 請求項1又は2記載の方法であって、 前記標的生物学的構造が、遺伝子学的に修飾され、前記基本的細胞機能の活性化又は抑制化に指向させる遺伝子修飾を含むことを特徴とする方法。 請求項1又は2記載の方法であって、 前記培地因子が、必須の栄養素及び/又は微量栄養素及び/又は生物学的機能分子の、固体及び/又は液体及び/又は気体の混合物の物理化学的特性、前記化合物の放出率、あるいは、前記化合物の摂食率であることを特徴とする方法。 請求項1〜2、5のいずれか一項に記載の方法であって、 前記物理化学的特性が、温度、及び/又は圧力、及び/又はpH、及び/又はイオン強度、及び/又は濃度、及び/又は活性、及び/又は容積モル浸透圧濃度、及び/又は重量モル浸透圧濃度、及び/又は関連する特性であることを特徴とする方法。 請求項1〜2、5のいずれか一項に記載の方法であって、 必須の栄養素及び/又は微量栄養素及び/又は生物学的機能分子は、 塩、及び/又はビタミン、及び/又は代謝の共同因子、及び/又は抗生物質、及び/又は炭水化物、及び/又は脂質物質、及び/又はタンパク性物質、及び/又はヌクレオチド物質、及び/又はシグナル伝達タンパク質、及び/又は酵素の活性を抑制する分子、及び/又はタンパク質の活性分子、及び/又は遺伝子形質転換モジュレータ、及び/又は干渉性リボ核酸、及び/又は、前記物質と、血清、純粋なヒドロシレイト、又は複合有機物質を含む既知又は未知の組成物との複合混合物を含む、無機物質及び/又は有機物質であることを特徴とする方法。 請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法であって、 前記培養培地の式は、培養培地の式={FACj},j=1,・・・,N(但し、FACjが前記培地因子jの値である。)を用いて、N個の培地因子の値によって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法であって、 前記標的生物学的構造は、 標的生物学的構造={ei},i=1,・・・,K(但し、eiは、q個の要素のベクトルであり、前記要素の値は基本的細胞機能iにおける各生化学反応の重み付き係数を表す。)を用いて、q個の生化学的反応と、K個の基本的細胞機能とによって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法であって、 前記基本的細胞機能は、前記標的生物学的構造の生物学的ネットワークから得られ、 前記生物学的ネットワークは、生物学的形質変換のサブセットを含むK個の機能的サブネットワークに分割され、 前記サブネットワークがマニュアルで及び/又は自動的に得られることを特徴とする方法。 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法であって、 前記基本的細胞機能は、前記標的生物学的構造の生物学的ネットワークのゲノム・スケール・リコンストラクションから得られ、 K個の基本的細胞機能のワーキング・セットは、トランスクリプトームデータ、及び/又はプロテオームデータ、及び/又はエンドメタボロームデータ、及び/又は熱力学的データが利用可能であるとき、前記データを用いて予め縮小されることを特徴とする方法。 請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法であって、 前記機能的エンバイロミックスマップは、振とうフラスコ、Tフラスコ、リアクタ、マイクロプレート、マイクロバイオリアクタ、又は表現型マイクロアレイの中で実行される、連続的培養実験及び/又は並列的培養実験によって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法であって、 前記機能的エンバイロミックスマップは、 液体クロマトグラフィー(LC)、ガスクロマトグラフィー(GC)等のクロマトグラフィー法、1H−NMR、13C−NMR等のNMR法、質量分析法(MS)、又は、GC−MS、LC−MS等の質量分析法に組み合わせたクロマトグラフィー法によって、あるいは、これらを組み合わせた方法によって、新規な培養培地サンプル又は使用済みの培養培地サンプルの上清の解析を含むエキソメタボロームアッセイ法によって決定されることを特徴とする方法。 請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法であって、 前記活性化基本的細胞機能の縮小したセットは線形回帰解析又は非線形回帰解析によって同定され、 エキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータの分散又は共分散が最大化され、 エキソメタボロームデータ又は誘導されたエキソメタボロームデータと培地因子の値との相関が最大化され、 前記基本的細胞機能が、前記培地因子の値との相関又は前記培地因子の値に対する感度に従ってランク付けされることを特徴とする方法。 請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法であって、 前記機能的エンバイロミックスマップが高スループットの自動化システムによって決定され、 培養化デバイス、解析エキソメタボロームデバイス、及びコンピュータ・アルゴリズムが物理的デバイスに接続され、高スループットの機能的エンバイロミックスマップが得られることを特徴とする方法。 請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法であって、 製品量及び/又は製品品質に関連付けられた前記標的基本的細胞機能iが、相対的重量Δ(λi)を60%〜100%増大させることを特徴とする方法。 異種のタンパク質発現機能を60%〜100%の範囲で高めることを特徴とし、酵母ピチア・パストリスの培養のための、請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法によって得られた、化学的に定義された培養培地処方であって、 a)12.0g/LのCuSO4・5H2O、0.16g/LのNaI、6.00g/LのMnSO4・H2O、0.40g/LのNa2MoO4・2H2O、0.001g/LのH3BO3、0.25g/LのCoCl2・6H2O、40.0g/LのZnCl2、3.25g/LのFeSO4・7H2O、0.4g/Lのビオチン、10.0g/LのH2SO4によって構成された微量成分の水溶液と; b)水溶液a)と、26.70ml/Lの85%H3PO4、0.93g/LのCaSO4・2H2O、18.20g/LのK2SO4、14.90g/LのMgSO4・7H2O、4.13g/LのKOHによって構成される相補的な基礎水溶液、又は他の相補的な基礎水溶液との混合物と;から構成されることを特徴とする培養培地処方。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 組織、及び/又は細胞、及び/又はウィルス、及び/又は細胞コンポーネント、及び/又はタンパク質に関係する物質、及び/又は炭水化物、及び/又はヌクレチド物質、及び/又は脂質物質、及び/又は一次代謝物質、及び/又は二次代謝物質、あるいは、バイオ燃料の製造、ワクチンの製造、薬の製造、バイオポリマーの製造、又はこれらの前躯体の製造等の生物学的製造プロセスにおける製造物の混合物の、数量及び/又は品質を増大させることを特徴とする使用。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 植物界又は動物界の細胞株の細胞培養培地の組成、あるいは酵母や菌類等の他の真核性単細胞又は多細胞有機体の組成を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 原核生物有機体の細胞培養培地の組成を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 幹細胞の細胞培養培地の組成を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 細胞機能のバイオマーカーを同定することを特徴とする使用。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法の使用であって、 疾患状態に関連付けられた細胞機能を変更するように指向された薬を設計し、あるいは薬混合物を最適化することを特徴とする使用。 請求項1〜16のいずれか一項に記載された方法を備えた薬の設計システム。