タイトル: | 公表特許公報(A)_筋萎縮性側索硬化症の治療方法 |
出願番号: | 2013540569 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | A61K 39/395,A61P 21/02,A61P 43/00,C07K 16/24,C12N 15/02,C12P 21/08 |
梶 龍兒 JP 2014508715 公表特許公報(A) 20140410 2013540569 20120306 筋萎縮性側索硬化症の治療方法 国立大学法人徳島大学 304020292 特許業務法人三枝国際特許事務所 110000796 梶 龍兒 US 61/449,753 20110307 A61K 39/395 20060101AFI20140314BHJP A61P 21/02 20060101ALI20140314BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140314BHJP C07K 16/24 20060101ALI20140314BHJP C12N 15/02 20060101ALI20140314BHJP C12P 21/08 20060101ALN20140314BHJP JPA61K39/395 NA61P21/02A61P43/00 111C07K16/24C12N15/00 CC12P21/08 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN JP2012056217 20120306 WO2012121403 20120913 14 20130904 4B024 4B064 4C085 4H045 4B024AA01 4B024BA44 4B064AG27 4B064DA01 4C085AA14 4C085BB17 4C085EE01 4H045AA11 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA10 4H045CA40 4H045DA76 4H045EA20 4H045FA72 本発明は、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:以下、ALSとする)の治療法、及びそれに用いる薬剤に関する。 ALSとは、筋肉の萎縮、筋力低下等の症状を呈する進行性の速い疾患である。ALSの発症後3年から5年程度で呼吸筋にも症状が表れ、人工呼吸器の装着が無ければ、呼吸不全によって死に至る。ALS患者に見られる筋肉の萎縮は、筋や運動ニューロンの異常な興奮(筋痙攣または筋線維束攣縮;fasciculation)を示すことが特徴的である。また、ALSの陰性徴候として、感覚神経、自律神経等によって支配される筋肉の萎縮は生じないこと、眼球運動は正常であること、直腸、膀胱機能等での障害が見られない事等の兆候が挙げられる。 疫学的な調査によると、ALS発症率の民族間での差は少ない。また、一年間のALS発症率は、人口10万人当たり2人程度であることも知られている。更に、10代でALSの発症が認められた患者も存在するが、ALSの好発年齢は40〜60代である。そして、ALS患者のうちの5〜10%程度は家族性であり、残る大部分の患者は弧発性である。 家族性ALS患者のうち、20〜30%の患者は、SOD1(Superoxide Dismutase 1)遺伝子が点変異していることが認められている。そして、SOD1のトランスジェニックマウスでは運動ニューロンが変性するフェノタイプを呈することが明らかとなっている(非特許文献1)が、SOD1のノックアウトマウスでは、運動ニューロン細胞の死は認められていない。 このような知見を基に、ALS患者における運動ニューロン細胞の病態が検討されている。初期ALS患者の運動ニューロンでは、筋痙攣を引き起こす原因とも考えられているグルタミン酸の著量放出が確認されている。このような知見に基き、運動ニューロン細胞の死を防ぐような抗ALS剤が開発されている。中でも運動ニューロン細胞に対するグルタミン酸の作用を抑制するような薬剤が開発されている。具体的には、グルタミン酸放出阻害薬であるリルテック(登録商標:アベンティスファーマ)等が挙げられる。そして、ALS治療法として、ビタミンB12誘導体であるメチルコバラミンをALS発症患者に対して大量に投与する方法も存在する。しかしながら、これらの薬剤の投与ではALSを十分に効果的に治療する薬剤又は治療法とはいえない。 本発明者らは、非特許文献2に示すように、ある家族性ALS患者において神経細胞死に重要な役割を持つNFκBの機能を阻害するOPTN(Optineurin)遺伝子の変異を見出した。また孤発性ALS患者の運動性ニューロン細胞内において、OPTNが著量蓄積していることも報告されている。そして、運動ニューロン細胞内における変異型のOPTNの蓄積は、活性化したNFκBによって過量に変異型のOPTNが発現されることによって生じるものであることも見出した。そこで、野生型のOPTNであればNFκBの機能を阻害することができるのに対して、ALSに見られる変異型のOPTNはNFκBの機能阻害能を欠いていることが判明した。従って、NFκBの機能活性化を阻害すれば、ALSの治療に繋がることが示唆されていた。 そこで、従来はNFκBの機能阻害剤がALS患者に用いられてきた。しかし、NFκB阻害剤の中でも、ステロイドなどの免疫抑制剤は無効であることが報告されている(非特許文献3)。サリドマイドもこのようなステロイドの1つであるが、同剤はSOD1トランスジェニックマウスに対しては有効であったものの、ALS患者に対して有効性が示されなかった(非特許文献4)。また、単にSOD1トランスジェニックマウスのTNFのローカス(locus)をノックアウトしても、ALS治療効果が見られないことも報告されている(非特許文献5)。特許第3861118号公報特許第4404181号公報Gurney ME, Pu H, Chiu AY, Dal Canto MC, Polchow CY, Alexander DD, Caliendo J, Hentati A, Kwon YW, Deng HX, et al. Motor neuron degeneration in mice that express a human Cu,Zn superoxide dismutase mutation. Science. 1994 Jun 17;264(5166):1772-5.Maruyama H, Morino H, Ito H, Izumi Y, Kato H, Watanabe Y, Kinoshita Y, Kamada M, Nodera H, Suzuki H, Komure O, Matsuura S, Kobatake K, Morimoto N, Abe K, Suzuki N, Aoki M, Kawata A, Hirai T, Kato T, Ogasawara K, Hirano A, Takumi T, Kusaka H, Hagiwara K, Kaji R, Kawakami H. Mutations of optineurin in amyotrophic lateral sclerosis. Nature;465:223-226.Tan E, Lynn DJ, Amato AA, Kissel JT, Rammohan KW, Sahenk Z, Warmolts JR, Jackson CE, Barohn RJ, Mendell JR.Immunosuppressive treatment of motor neuron syndromes. Attempts to distinguish a treatable disorder.Arch Neurol. 1994 Feb;51(2):194-200Stommel EW, Cohen JA, Fadul CE, Cogbill CH, Graber DJ, Kingman L, Mackenzie T, Channon Smith JY, Harris BT. Efficacy of thalidomide for the treatment of amyotrophic lateral sclerosis: a phase II open label clinical trial. Amyotroph Lateral Scler. 2009 Oct-Dec;10(5-6):393-404.Gowing et al, Absence of tumor necrosis factor-alpha does not affect motor neuron disease caused by superoxide dismutase 1. mutations J Neuroscience, 2006 Vol. 26:11397-11402de Carvalho M, Dengler R, Eisen A, England JD, Kaji R, Kimura J, Mills K, Mitsumoto H, Nodera H, Shefner J, Swash M. Electrodiagnostic criteria for diagnosis of ALS. Clin Neurophysiol 2008;119:497-503.Adult-onset primary open-angle glaucoma caused by mutations in optineurin. Rezaie T, Child A, Hitchings R, Brice G, Miller L, Coca-Prados M, Heon E, Krupin T, Ritch R, Kreutzer D, Crick RP, Sarfarazi M. Science. 2002 Feb 8;295(5557):1077-9. 本発明者らは、上記の非特許文献2に記載のように、ALSの症状は細胞内のNFκBの機能を抑制することによって、ALSを首尾よく治療できる可能性があるとの知見を得ていた。そこで、NFκBの阻害薬がALSの治療に効果的と考えられたが、上述の非特許文献3~5に示すように、従来のNFκB機能阻害剤では、ALSに対して何ら治療効果を示さないという知見が得られている。つまり、ALSの治療に有効な薬剤は未だ明らかにはなっていない。したがって、本発明の主な目的はALSを治療するための効果的な薬剤、又はその治療法を提供することである。 本発明者は、ALS患者に対して、ヒトTNFα(Tumor Necrosis Factor alfa)に対するモノクローナル抗体を含む薬を投与したところ、ALS患者に見受けられる筋力低下の進行が緩徐化し、さらに筋痙攣も減少することといった臨床的知見が得られた。本発明は、このような臨床的知見に基づいて完成されたものであり、下記の態様を広く包含するものである。 項1 抗TNFαモノクローナル抗体を含有するNFκB機能阻害剤。 項2 抗TNFαモノクローナル抗体を含有する抗ALS剤。 項3 前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する項2に記載の抗ALS剤。 項4 抗TNFαモノクローナル抗体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物のNFκBの機能を阻害する方法。 項5 抗TNFαモノクローナル抗体をALS患者に投与する工程を含む、ALSの治療方法。 項6 前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する項5に記載の方法。 項7 抗TNFαモノクローナル抗体のNFκBの機能阻害剤としての使用。 項8 ALSの治療の使用のための抗TNFαモノクローナル抗体。 項9 前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する項8に記載の抗体。 項10 NFκBの機能阻害剤を製造するための、抗TNFαモノクローナル抗体の使用。 項11 ALSを治療するための、医薬の製造のための、抗TNFαモノクローナル抗体の使用。 項12 前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する項11に記載の使用。 本発明は、ALS患者のALSに基づく症状を改善するか、ALSの進行を抑制する効果を有する。ALSとは運動神経によって支配される筋肉萎縮する進行性の疾患であり、進行が進むにつれて通常の生活に必要な運動能力が低下し、引き続いて自発的な意思疎通の手段も喪失するために、大幅なQOLの低下が見られる。そして最終的には自発的に肺呼吸することができなくなるので、人工呼吸器が無いと死に至ってしまう。 従って、本発明が提供するALSの治療薬、及び治療する方法は、人間のQOLを高め、人工呼吸器の必要がない生活を与えることも可能であるため、極めて有用である。 また本発明のNFκBの機能阻害剤は、上述のようにALS患者に対してALSの症状を改善する効果を発揮すると同時に、TNFαがTNFα受容体と結合することによって生じる生体内での異常現象を基にする疾病の治療効果も有する。このような疾病としては、特許文献1、2に記載されているような、敗血症、自己免疫疾患(例えば、リウマチ様関節炎、アレルギー、多発性硬化症、自己免疫性糖尿病、自己免疫性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群等)、感染性疾患、悪性疾患、移植の拒絶又は移植片宿主病、肺病、骨の病気、腸疾患、心臓病等が挙げられる。図1は、ALS患者の左上肢筋力の推移を表す。図中の矢印は、ヒュミラ(アダリムマブ)を投与した日を示す。グラフの横軸は、初診日から起算した経過日数を示し、縦軸は実施例にて定義する左上肢筋力を評価するためのSCOREを示すものである。図2は、ALS患者の筋痙攣の推移を表す。図中の矢印は、ヒュミラ(アダリムマブ)を投与した日を示す。グラフの横軸は、初診日から起算した経過日数を示し、縦軸は実施例にて定義する筋痙攣を評価するためのSCOREを示すものである。抗TNFαモノクローナル抗体 本発明の抗TNFαモノクローナル抗体は、TNFαを抗原として認識するモノクローナル抗体であればよく、TNFαの由来は特に限定されない。具体的には、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒト、チンパンジー、サル等に由来するTNFαを抗原として認識するモノクローナル抗体が挙げられる。好ましくはヒト由来である。 本発明の抗TNFαモノクローナル抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY等のあらゆるタイプのイムノグロブリン分子の構造を有する抗体が挙げられる。また、上述IgGには、あらゆるサブタイプのIgGが含まれる。さらに、イムノグロブリン分子は、それぞれ重鎖及び軽鎖の2量体を含むイムノグロブリン分子に限らず、TNFαを特異的に捕捉する可変領域を有していればよく、例えばFab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片等のイムノグロブリン断片、scFv、scDb等の単鎖抗体、ディアボディ、トライアボディ、テトラボディ等の多価化抗体等が挙げられる。 これらの抗体の由来についても特に限定はされず、具体的には、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒト、チンパンジー、サル等に由来抗体が挙げられる。好ましくはヒト由来の抗体であるが、ヒト由来の抗体と例えばマウスといった他の動物種由来の抗体を組み合わせたキメラ型抗体であってもよい。 本発明の抗TNFαモノクローナル抗体は、TNFαと結合する可変領域を有していれよい。このような可変領域に含まれる相補性決定領域(complementarity determining region:CDR)のアミノ酸配列は、特に限定されないが、例えば特許文献1又は2に記載されたアミノ酸配列を参照すればよい。 具体的には、配列番号3〜8及び11〜35に、可変領域に含まれるCDRのアミノ酸配列を示す。なお、配列番号1及び9はそれぞれCDRを含む軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示しており、配列番号2及び10はそれぞれCDRを含む重鎖可変領域のアミノ酸配列を示している。 本発明のモノクローナル抗体が有する可変領域は、配列番号3〜8及び11〜35の何れかに示すアミノ酸配列を有するCDRを組み合わせてもよく、CDR単独であってもよい。ただしこのような可変領域には、少なくともCDR3を含むものとする。 これらの可変領域を構成するアミノ酸配列の中でも、重鎖可変領域のアミノ酸配列を配列番号3に示すアミノ酸配列の1、4、5、7、若しくは8番目のアミノ酸残基のいずれか1つは、アラニンで置換されていてもよい。そして、1、3、4、6、7、8、及び/又は9番目のアミノ酸残基のうち、1〜5つのアミノ酸残基に対しては、保存的な置換が施されていてもよい。 また、配列番号4の2、3、4、5、6、8、9、10、若しくは11番目のアミノ酸残基のいずれか1つは、アラニンで置換されていてもよい。そして、2、3、4、5、6、8、9、10、11及び/又は12番目のアミノ酸残基のうち、1〜5つのアミノ酸残基に対しては、保存的な置換が施されていてもよい。 なお、用語「保存的な置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基に置換されることを意味し、例えばリジン、アルギニン、ヒスチジンといった塩基性側鎖を有するアミノ酸残基同士で置換されることは、本発明でいう「保存的な置換」にあたる。 その他、アスパラギン酸、グルタミン酸といった酸性側鎖を有するアミノ酸残基;グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システインといった非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸残基;アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンといった非極性側鎖を有するアミノ酸残基;スレオニン、バリン、イソロイシンといったβ−分枝側鎖を有するアミノ酸残基、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジンといった芳香族側鎖を有するアミノ酸残基同士での置換も同様に、本発明でいう「保存的な置換」にあたる。 但し、これらのアミノ酸の置換は、抗TNFαとの特異性を大きく損なわない範囲に限られる。 さらに、本発明の抗TNFαモノクローナル抗体はTNFαとの抗原抗体反応における速度定数として、通常は1×10-8M以下のKd値を示し、1×10-3M-1以下のKOFF値を示す。 上述した抗TNFαモノクローナル抗体の中でも、特許文献1又は2に記載された抗TNFαモノクローナル抗体が好ましい。より好ましくはヒュミラ(登録商標:アボットラボラトリーズ)に有効成分として含有されるアダリムマブである。 また、他の好ましい抗TNFαモノクローナル抗体として、レミケード(登録商標:セントコア オーソ バイオテック インコーポレーテッド)に有効成分として含有されるインフリキシマブが挙げられる。本発明のALS患者 本発明のALS患者とは、運動ニューロンの変性を来し、進行性の筋萎縮を呈する患者をさす。特に本発明における好ましいALS患者は、発症早期で、筋萎縮は軽度であり、且つ筋痙攣・筋線維束攣縮の症状を示す患者である。ALS患者であるか否かは、発症早期に診断できるAWAJI基準(非特許文献6)を用いて判断することができ、当該基準を満たす患者は、本発明において好適なALS患者とすることができる。ALS発症機序 本発明が対象とするALSは、非特許文献2に記載のように、NFκBが活性化して引き起こされる細胞死に基づいて生じる疾患である。通常であれば、NFκBはOPTNによって阻害される。そして、NFκBは細胞死の誘導のみならず、OPTNの発現を誘導する。即ち、通常であれば、NFκBが活性化しても、OPTNが発現することによってNFκBを阻害するといった、ネガティブフィードバック作用によってNFκBの機能が厳密に制御されている。このような作用によってNFκBが引き起こす細胞死が制御されている。 しかしながら、本発明のALSにおいては、OPTNに変異が生じることで、正常な野生型OPTNが有するNFκBの阻害活性が損なわれており、結果として細胞死を引き起こされる。さらに、NFκBによって変異型のOPTNの発現誘導も引き起こされる。従って、NFκBを阻害することのできない変異型OPTNが著量発現することとなり、結果として細胞死を引き起こすこととなる。 OPTNとは、非特許文献7に示されるような遺伝子がコードするアミノ酸配列を有し、ヒトであれば10番染色体上に存在する遺伝子によってコードされるタンパク質である。また、OPTNをコードする遺伝子は、開放隅角緑内障の原因遺伝子と考えられている。NFκBの機能阻害剤 上述のように、本発明の抗TNFαモノクローナル抗体は、NFκBの機能を阻害する活性を有するため、NFκBの機能阻害剤として使用できる。すなわち、本発明の抗TNFαモノクローナル抗体は、NFκBの機能阻害剤を製造するために使用される。 本発明のNFκBの機能阻害剤は、上述の抗TNFαモノクローナル抗体を有効成分とするものであって、その限りにおいて当該抗体そのものであってもよく、又は他の成分が含まれていても良い。他の成分が含まれている場合、NFκBの機能阻害剤100重量%とした時の抗TNFαモノクローナル抗体の含有量は、通常0.1〜99重量%程度である。 本発明のNFκBの機能阻害剤は、上述のようにNFκBの機能を阻害することによりALSの臨床的症状を改善するか、又はその症状の進行を抑制に効果的であるため、抗ALS剤として有用に用いられる。そのため、本発明のNFκBの機能阻害剤に、上述の抗TNFαモノクローナル抗体と共に含まれる成分は、薬学的に許容される担体、添加剤等が好ましい。 なお、ALSの臨床的症状とは、ALS患者特有に見られる筋痙攣、筋線維束攣縮、筋萎縮等を例示することができる。当該NFκBの機能能阻害剤は、哺乳動物に経口的又は非経口的に(静脈投与(IV)、動脈投与、筋肉内投与(IM)、心臓内投与、皮下投与(SC)、骨内投与、皮内投与(ID)、くも膜腔投与、腹腔内投与、膀胱内投与等)投与することができる。 哺乳動物とは、ヒト、マウス、ラット、ウシ、ウマ、ブタ、ヒト、チンパンジー、サル等が挙げられ、好ましくはヒト、又はマウス、ラット、ウサギ等の実験動物として用いられるげっ歯類動物又は小動物である。抗ALS剤 本発明の抗ALS剤は、抗TNFαモノクローナル抗体を含有する。すなわち、ALSを治療するための、医薬の製造の為に、抗TNFαモノクローナル抗体を使用することができる。本発明のNFκBの機能阻害剤は、抗ALS剤として有用に用いることができるので、抗ALS剤に含まれる抗TNFαモノクローナル抗体、その含有量等は上述の通りにすればよい。 また、本発明の抗ALS剤は、抗モノクローナル抗体を含有するものであって、その限りにおいて当該抗体そのものからなるものであっても、また他の成分を含有するものであってもよい。 抗ALS剤は、上述のALSの臨床的な症状の改善又はALSの進行の抑制する効果を有する。ここで、ALSの臨床的症状としてはALS患者に見られる筋痙攣、筋線維束攣縮、筋萎縮等を挙げることができる。 上述した抗ALS剤の中でも、アダリムマブを有効成分として含む抗ALS剤が好ましく、より好ましくはヒュミラである。他の好ましい態様として、インフリキシマブを有効成分として含む抗ALS剤であり、更に好ましくはレミケードである。 本発明の抗ALS剤は、上述したALS患者に好適に用いることができる。患者への投与量は、抗TNFαモノクローナル抗体の量として、通常0.1〜1mg/kg/日程度とすればよく、好ましくは0.5〜4mg/kg/日程度である。投与間隔は特に限定はされないが、2週間〜1月程度とすればよい。 本発明の抗ALS剤の投与方法は特に限定されず、例えば静脈投与(IV)、動脈投与、筋肉内投与(IM)、心臓内投与、皮下投与(SC)、骨内投与、皮内投与(ID)、くも膜腔投与、腹腔内投与、膀胱内投与などが挙げられる。中でも、皮下投与が好ましい。ALSの治療方法 本発明のALSの治療方法とは、抗TNFαモノクローナル抗体をALS患者に投与する工程を含むものであり、上述したALSの臨床的症状を改善するか、又はALSの進行を抑制することを意味する。他には、ALSの発症(症状の発現)を予防する効果、ALSの診断基準には満たないが、ALSの症状が見受けられるヒトに対しても、ALSの発症と診断されるレベルに到達させないように現状維持をするための処置も含まれる。 抗TNFαモノクローナル抗体の投与量、投与方法については、上述の抗ALS剤にて詳述した通りとすればよい。 また、このような抗TNFαモノクローナル抗体は、ALSの治療のために使用するとも言い換えることができる。NFκBの機能を阻害する方法 上述したように、抗TNFαモノクローナル抗体は、NFκBの機能を阻害する活性を有するので、特に哺乳動物に投与することによって、哺乳動物のNFκBの機能を阻害する為に使用することができる。 具体的なNFκBの機能を阻害することによって、細胞死、特にニューロンの細胞死を防ぐことができる。 抗TNFαモノクローナル抗体の投与量、投与方法については、ALSの治療方法にて詳述した内容と同様にすればよい。 以下、本発明を実施例の記載に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明が実施例に限定されないことは、言うまでもない。<実施例1> ALS患者に対して、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体を有効成分とするヒュミラ(登録商標:アボットラボラトリー社)を投与し、左上肢筋力、及び筋痙攣といった臨床的な所見を確認した。 左上肢筋力は、MRC(Medical Research Council)スケールを用いて計測し、その測定値を図1の縦軸に示すようにSCOREにて評価した。 筋痙攣は、非特許文献6で提案された方法(3著明、2多数、1少量、0なし)を用いて計測し、その測定値を図2の縦軸に示すSCOREにて評価した。 本実施例における被験者は、群発性のALS患者であり、日本人、60代、男性、軽度の症状を呈するALS患者である。 当該被験者の臨床的な所見は、それぞれ2010年1月9日(初診日)、2010年2月20日、2010年3月27日、2010年9月7日、2010年10月16日、2010年1月8日、2011年1月15日、2011年2月5日、2011年3月12日、2011年4月2日、2011年4月16日、2011年5月7日、2011年5月28日、2011年6月18日、2011年7月2日、2011年7月23日、及び2011年9月24日に診察・診療して得られたものである。 また、ヒュミラの投与は2010年12月27日、2011年1月15日、2011年2月5日、2011年3月12日、2011年4月2日、2011年4月16日、2011年5月7日、2011年5月28日、2011年6月18日、2011年7月2日、及び2011年9月24日に行った。ヒュミラの投与は皮下注射にて行い、被験者の体重(72kg)に対し、総量で80mg/日のヒュミラを投与した。 上記被験者の臨床的な所見を、図1及び図2にそれぞれ示す。図1は、左上肢筋力を上記のScoreにて表したものである。ヒュミラを投与するまでは、Scoreが低下しそれに伴って左上肢筋力が低下していく傾向が見られたが、ヒュミラの投与後は、Scoreの低下が緩和される傾向となった。従って、ヒュミラはALS患者の左上肢筋力低下という症状を抑制する効果を有することが明らかとなった。 なお、当該被験者は、2011年9月30日に、主治神経内科医によって死亡が確認された。当該被験者に対して、ヒュミラの投与を行わなかった場合、主治神経内科医の観点から死亡時期が260日程度前であったことが想定される。 図2は、筋痙攣を上記のScoreにて表したものである。ヒュミラを投与するまではScoreが維持されており、筋痙攣が生じ続けているといった傾向が見られたが、ヒュミラの投与後、Scoreはゼロとなり、筋痙攣は全く生じないことが明らかとなった。従って、ヒュミラはALS患者の筋痙攣という症状を改善することが明らかとなった。 抗TNFαモノクローナル抗体を含有するNFκB機能阻害剤。抗TNFαモノクローナル抗体を含有する抗ALS剤。前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する請求項2に記載の抗ALS剤。抗TNFαモノクローナル抗体を哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物のNFκBの機能を阻害する方法。抗TNFαモノクローナル抗体をALS患者に投与する工程を含む、ALSの治療方法。前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する請求項5に記載の方法。抗TNFαモノクローナル抗体のNFκBの機能阻害剤としての使用。ALSの治療の使用のための抗TNFαモノクローナル抗体。前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する請求項8に記載の抗体。NFκBの機能阻害剤を製造するための、抗TNFαモノクローナル抗体の使用。ALSを治療するための、医薬の製造のための、抗TNFαモノクローナル抗体の使用。前記抗体が、NFκBの機能を阻害する活性を有する請求項11に記載の使用。 【課題】本発明の課題はALSを治療するための効果的な薬剤、又はその治療方法を提供することである。【解決手段】抗TNFαモノクローナル抗体をALS患者に投与することにより、ALSの臨床的症状を改善又はALSの進行を抑制するALSの治療方法、抗TNFαモノクローナル抗体を含有する抗ALS剤、抗ALS剤としての使用のための抗TNFαモノクローナル抗体、及びALSを治療するための、医薬の製造のための、抗TNFαモノクローナル抗体の使用。【選択図】なし 配列表