タイトル: | 特許公報(B2)_ペプチドおよびアンジオテンシン変換酵素阻害剤 |
出願番号: | 2013536124 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07K 7/06,A61K 38/00,A61P 9/12,A61P 43/00,A23L 1/305 |
山田 明男 越智 大介 桜井 琢磨 JP 5430803 特許公報(B2) 20131213 2013536124 20120905 ペプチドおよびアンジオテンシン変換酵素阻害剤 森永乳業株式会社 000006127 川口 嘉之 100100549 佐貫 伸一 100126505 丹羽 武司 100131392 山田 明男 越智 大介 桜井 琢磨 JP 2011213334 20110928 20140305 C07K 7/06 20060101AFI20140213BHJP A61K 38/00 20060101ALI20140213BHJP A61P 9/12 20060101ALI20140213BHJP A61P 43/00 20060101ALI20140213BHJP A23L 1/305 20060101ALI20140213BHJP JPC07K7/06A61K37/02A61P9/12A61P43/00A23L1/305 C07K 7/00−7/66 CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) Thomson Innovation 特開2007−326790(JP,A) 特開2001−106699(JP,A) 特開2008−156307(JP,A) 特表2010−520274(JP,A) 特開2007−261999(JP,A) 特表2009−500404(JP,A) 日本薬理学会第130年会要旨集3, 2010, Vol.130, p.216 9 JP2012072609 20120905 WO2013047128 20130404 11 20130910 鳥居 敬司 本発明は、新規なペプチド及び同ペプチドを含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤に関する。アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、食品、飼料、及び医薬として利用することができる。 アンジオテンシン変換酵素(ACE)は、レニンによる切断によりアンジオテンシノーゲンから生じるアンジオテンシンIに働き、C末端の2個のアミノ酸を遊離させて、アンジオテンシンIIに変換する酵素である。アンジオテンシン変換酵素は強い昇圧作用を有するアンジオテンシンIIを生成させるとともに、降圧作用を有するブラジキニンを不活性化する作用も有している。このような作用から、アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、高血圧の治療薬として使用されており、カプトプリル、レニベース、リシノプリルなどが市販薬として知られている。また、アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、心疾患、腎疾患、脳血管障害、動脈硬化性疾患、糖尿病、メタボリックシンドローム、高齢者高血圧など多くの病態に対して第一選択薬として積極的な使用が勧められている(高血圧治療ガイドライン2009)。 一方、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有するペプチドが天然物中から見出されている。これらは天然型のアミノ酸から構成されているため栄養源として経口摂取は勿論のこと、血圧低下作用を示す以外には、重い副作用を示すことはなく安全性が高いため、血圧降下作用を有する特定保健用食品として利用されている。例えば、カゼインを酵素により分解して得たペプチド類(特許文献1〜11、非特許文献1)がその例である。また、その他にもアンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する天然型のペプチドが数多く知られている(非特許文献2)。特開昭58−109425号特開昭59−44323号特開昭59−44324号特開昭61−36226号特開昭61−36227号特開平6−277090号特開平6−277091号特開平6−279491号特開平7−101982号特開平7−101985号特許第3816921号Maruyama, S. et al., Agric. Biol. Chem. 49(5), 1405-1409, 1985Fang, H. et al., PEPTIDES, 29, 1062-1071, 2008 上記のように、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する種々のペプチドが知られているが、これらのペプチド類では、未だ食品中の機能として、アンジオテンシン変換酵素阻害活性は不十分である。よって、天然物型で、一層高いアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有するペプチドの取得と、その食品又は医薬等への応用が望まれているところである。 本発明は、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する新規ペプチド、及びそれを含むアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供することを課題とする。 本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を行った。すなわち、リジンをC端側に固定して5種類のアミノ酸(アルギニン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、セリン)をランダムにペプチド結合させたヘキサペプチドを合成することにより、その混合物中に高いアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する新規なペプチドが存在し、さらに同ペプチドが特定の配列を有することを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は、下記のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。Xaa−Arg−Xaa−Pro−Ser−Lys(配列番号1)(但し、各アミノ酸はL−体であり、Xaaは、独立してIle又はLeuである。) 本発明のペプチドは、以下のアミノ酸配列のいずれかを有することを好ましい形態としている。a)Ile−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys(配列番号2)b)Ile−Arg−Leu−Pro−Ser−Lys(配列番号3)c)Leu−Arg−Leu−Pro−Ser−Lys(配列番号4)d)Leu−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys(配列番号5) 本発明はまた、前記ペプチドを有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤を提供する。 また本発明は、前記ペプチドを有効成分として含有する血圧降下剤を提供する。 また本発明は、血圧降下を必要とする対象に、前記ペプチドを投与することを含む、前記対象の血圧を降下させる方法を提供する。 また本発明は、血圧降下を必要とする対象の血圧を降下させるための、前記ペプチドの使用を提供する。合成ペプチド混合物の逆相HPLCによる分離クロマトグラム。横軸は時間(分)を、縦軸は215nmでの吸光度を、それぞれ示す。 次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は特に断りのない限り質量による表示である。 本発明のペプチドは、Xaa−Arg−Xaa−Pro−Ser−Lys(配列番号1)で表される配列を有する。また、本発明のペプチドは、このペプチドの塩類であってもよい。本発明において、LeuはL−ロイシン残基、ArgはL−アルギニン残基、IleはL−イソロイシン残基、ProはL−プロリン残基、SerはL−セリン残基、LysはL−リジン残基を示す。また、Xaaは、独立してIle又はLeuである。 すなわち、本発明のペプチドは以下のアミノ酸配列のいずれかを有する。a)Ile−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys(配列番号2)b)Ile−Arg−Leu−Pro−Ser−Lys(配列番号3)c)Leu−Arg−Leu−Pro−Ser−Lys(配列番号4)d)Leu−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys(配列番号5) 本発明のペプチドは、化学合成によって製造することができる。本発明のペプチドの化学合成は、オリゴペプチドの合成に通常用いられている液相法または固相法によって行うことができる。合成されたペプチドは、必要に応じて脱保護され、未反応試薬、副生物等を除去する。このようなペプチドの合成は、市販のペプチド合成装置を用いて行うことができる。上記合成(混合)物から、好ましくは本発明のペプチドを単離、精製する。ペプチドの精製は、通常、オリゴペプチドの精製に用いられているのと同様の手法、例えばイオン交換クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、分配クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィー、溶媒沈殿、塩析、2種の液相間での分配等の方法を適宜組み合わせることによって、行うことができる。本発明のペプチドの精製に際しては、目的物質を含む画分は、後述するアンジオテンシン変換酵素阻害作用を指標として決定することができ、それらの画分の活性成分は質量分析法又は/およびプロテインシーケンサーにより同定することができる。 また、本発明のペプチドは、同ペプチドをコードする組換えDNAを適当な宿主細胞で発現させることによっても、製造することができる。組換えDNAの作成に必要なベクター、及び宿主は、通常タンパク質やペプチドの製造に用いられているものを使用することができる。 本発明のペプチドは、アンジオテンシン変換酵素阻害剤の有効成分として使用することができる。本発明のペプチドは、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有している。アンジオテンシン変換酵素が阻害されると、同酵素によるアンジオテンシンIIの生成、及び、ブラジキニンの不活性化が抑制されるため、結果として血圧降下作用を示す。したがって、本発明のペプチド又はアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、高血圧に由来する種々の疾患、例えば脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、腎不全等に対する予防剤又は治療剤、具体的には血圧降下剤等として使用することができる。すなわち、本発明の一形態は、本発明のペプチドを有効成分として含有する血圧降下剤である。また、アンジオテンシン変換酵素阻害剤は、原因不明の本態性高血圧にも効果があることが知られており、本発明のペプチドも本態性高血圧に対する治療又は予防効果を示すことが期待される。その他、アンジオテンシン変換酵素阻害剤が有効であることが知られている心肥大、狭心病等の疾患に対しても、治療、予防薬として使用することができる。 本発明の他の形態は、血圧降下を必要とする対象に本発明のペプチドを投与することを含む、前記対象の血圧を降下させる方法である。 また、本発明の他の形態は、血圧降下を必要とする対象の血圧を降下させるための本発明のペプチドの使用である。 血圧降下を必要とする対象としては、アンジオテンシン変換酵素を阻害することが有効である限り特に制限されないが、上記の高血圧に由来する種々の疾患を有する患者、本態性高血圧の患者、及び、心肥大、狭心病等の疾患を有する患者が挙げられる。また、これらの方法及び使用において、「血圧の降下」は「疾患の治療」であり得る。 本発明のペプチドは、医薬、飲食品、飼料、化粧品、医薬部外品等に配合することができる。配合されるペプチドは、1種類でもよく、任意の2種以上の混合物であってもよい。 例えば、医薬の製剤化にあたっては、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等の添加剤を使用できる。具体的製剤として、錠剤(糖衣錠、腸溶性コーティング錠、バッカル錠を含む。)、散剤、カプセル剤(腸溶性カプセル、ソフトカプセルを含む。)、顆粒剤(コーティングしたものを含む。)、丸剤、トローチ剤、封入リポソーム剤、液剤、又はこれらの製剤学的に許容され得る徐放製剤等を例示することができる。 これらの製剤に用いる担体及び賦形剤としては、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、馬鈴薯澱粉、トウモロコシ澱粉、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等を、結合剤としては澱粉、ゼラチン、シロップ、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等を例示することができる。 また、崩壊剤としては、澱粉、寒天、ゼラチン末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、及びアルギン酸ナトリウム等を例示することができる。 更に、滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、及びマクロゴール等を、着色剤としては医薬品に添加することが許容されている赤色2号、黄色4号、及び青色1号等を、それぞれ例示することができる。 その他、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤、注射剤用溶剤等についても、通常、医薬の製造に用いられる成分を用いることができる。 錠剤及び顆粒剤は、必要に応じ白糖、ヒドロキシプロピルセルロース、精製セラック、ゼラチン、ソルビトール、グリセリン、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルメタクリレート、及びメタアクリル酸重合体等により被膜することもできる。 本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤は、経口投与、非経口投与のいずれによって投与されてもよいが、経口投与が好ましい。非経口投与としては、静注、直腸投与、吸入等が挙げられる。経口投与の剤型としては、錠剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、顆粒剤、散剤、軟膏等が挙げられる。また、公知の、もしくは将来的に見出されるアンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する薬剤、医薬組成物を本発明のペプチドと併用することもできる。併用する薬剤又は医薬組成物は、本発明の薬剤中に有効成分の一つとして含有させてもよいし、本発明の薬剤中には含有させずに、別個の薬剤として本発明の薬剤と組み合わせて商品化してもよい。 また、本発明のペプチドを有効成分として食品中に含有させ、アンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤の一態様として、アンジオテンシン変換酵素阻害作用又は血圧降下作用を有する食品として加工することも可能である。 このような食品としては、液状、ペースト状、固体、粉末等の形態を問わず、錠菓、流動食、飼料(ペット用を含む)等のほか、例えば、パン、マカロニ、スパゲッティ、めん類、ケーキミックス、から揚げ粉、パン粉等の小麦粉製品;即席めん、カップめん、レトルト・調理食品、調理缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・シチュー、即席みそ汁・吸い物、スープ缶詰、フリーズ・ドライ食品、その他の即席食品等の即席食品類;農産缶詰、果実缶詰、ジャム・マーマレード類、漬物、煮豆類、農産乾物類、シリアル(穀物加工品)等の農産加工品; 水産缶詰、魚肉ハム・ソーセージ、水産練り製品、水産珍味類、つくだ煮類等の水産加工品;畜産缶詰・ペースト類、畜肉ハム・ソーセージ等の畜産加工品;加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、乳酸菌飲料類、チーズ、アイスクリーム類、調製粉乳類、クリーム、その他の乳製品等の乳・乳製品;バター、マーガリン類、植物油等の油脂類;しょうゆ、みそ、ソース類、トマト加工調味料、みりん類、食酢類等の基礎調味料;調理ミックス、カレーの素類、たれ類、ドレッシング類、めんつゆ類、スパイス類、その他の複合調味料等の複合調味料・食品類;素材冷凍食品、半調理冷凍食品、調理済冷凍食品等の冷凍食品;キャラメル、キャンディー、チューインガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、米菓子、豆菓子、デザート菓子、その他の菓子などの菓子類;炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、果汁入り清涼飲料、果肉飲料、果粒入り果実飲料、野菜系飲料、豆乳、豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料、その他の嗜好飲料等の嗜好飲料類、ベビーフード、ふりかけ、お茶潰けのり等のその他の市販食品等;育児用調製粉乳;経腸栄養食;機能性食品(特定保健用食品、栄養機能食品)等が挙げられる。 さらに、アンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤の一態様として、本発明のペプチドを有効成分として飼料中に含有させ、アンジオテンシン変換酵素阻害作用又は血圧降下作用を有する飼料として加工することも可能である。 飼料の形態としては特に制限されず、例えば、本発明のペプチドの粉末やこれらの水溶液(シロップ等)等を、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦、マイロ等の穀類;大豆油粕、ナタネ油粕、ヤシ油粕、アマニ油粕等の植物性油粕類;フスマ、麦糠、米糠、脱脂米糠等の糠類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の製造粕類;魚粉、脱脂粉乳、ホエイ、イエローグリース、タロー等の動物性飼料類;トルラ酵母、ビール酵母等の酵母類;第三リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等の鉱物質飼料;油脂類;単体アミノ酸;糖類等に配合することにより製造できる。飼料の形態としては、例えば、ペットフード、家畜飼料、養魚飼料等が挙げられる。 本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤(医薬品、飲食品、飼料、化粧品、医薬部外品等の各態様)において、本発明のペプチドの配合量(ペプチドが複数種の場合は合計量)は、アンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤の最終組成物に対して、0.001質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることが特に好ましい。 本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤の投与量は、年齢、症状等により異なるが、通常、本発明のペプチドの量として0.001〜3000mg/日、好ましくは0.01〜30mg/日であり、1日1回、又は2回から3回に分けて投与してもよい。また、本発明のアンジオテンシン変換酵素阻害剤又は血圧降下剤を摂取又は服用する場合は、食前、食間、食後のいずれのタイミングであっても、本発明の効果は十分に発揮されるものである。 以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。<実施例1>(1)ペプチドの化学合成 ペプチドシンセサイザー(Model 433A型、アプライドバイオシステムズ社)を使用し、5種類のアミノ酸誘導体混合物〔Fmoc−L−Leu、Fmoc−L−Arg(Mtr)、Fmoc−L−Ile、Fmoc−L−Ser(tBu)、Fmoc−L−Pro〕、Fmoc−L−Lys(Boc)−Wang Resin(いずれも国産化学)を原料に用いて、固相合成法によりAA(6)−AA(5)−AA(4)−AA(3)−AA(2)−Lys〔AA(n)は、5種類のアミノ酸のいずれかであり、合成されるペプチドは55=3125種類〕(配列番号6)の混合物の合成を行った。操作はアプライドバイオシステムズ社のマニュアルに従って行った。合成反応後、脱保護した。得られたペプチドは、下記HPLC条件で精製した。(2)HPLCによるペプチドの分離 逆相HPLCで上記合成混合物の分離を行った。このHPLC条件は下記HPLC条件1に示した。〔HPLC条件1〕 カラム :CadenzaCD−18 10mmI.D.×250mm(インタクト社製) 検出:UV 215nm 流速:3ml/分 溶離液A:0.1% TFAを含む水溶液 溶離液B:0.1% TFAを含むアセトニトリル溶液 サンプルをカラムに導入後、溶離液(A/B)を98/2で5分間維持し、溶離液(75/25)まで30分間、溶離液(50/50)まで10分間、更に溶離液(20/80)まで3分間でグラジエント溶出を行い、その後5分間溶離液(20/80)を維持するグラジエント条件で、合成ペプチド混合物を分離した(クロマトグラム:図1)。 各ピーク毎に溶出液を分画し、後述する方法でアンジオテンシン変換酵素阻害能を測定したところ、強いアンジオテンシン変換酵素阻害能を持つ画分が、リテンションタイム34.0分、34.4分、34.7分、及び35.1分に溶出された。 これらの画分に含まれるペプチドについて、島津製作所製のプロテイン・シーケンサー(PPSQ−23A)で分析を行ったところ、それぞれIle−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys(以下、HP1と記載する)、Ile−Arg−Leu−Pro−Ser−Lys(以下、HP2と記載する)、Leu−Arg−Leu−Pro−Ser−Lys(以下、HP3と記載する)、及び、Leu−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys(以下、HP4と記載する)であった。<実施例2>[ペプチドのアンジオテンシン変換酵素阻害作用](1)試験方法 アンジオテンシン変換酵素阻害の測定は、カッシュマンらの方法〔バイオケミカル・ファーマコロジー20巻、1637〜1648頁(1971)〕に準じて行った。 試料として、実施例1で得られた本発明ペプチド(HP1、HP2、HP3、HP4)、Agricultural and Biological Chemistry 49(5), 1405-1409, 1985に記載のペプチド(Phe−Phe−Val−Ala−Pro−Phe−Pro−Glu−Val−Phe−Gly−Lys:配列番号7)、及び特許第3816921号(WO2003/044044))に記載のペプチド(Met−Lys−Pro)を用いた。これらのペプチドは、いずれも実施例1と同様にして化学合成したものである。 試料を0.1Mホウ酸緩衝液(0.3M NaClを含む、pH8.3)に溶解し、試験管に0.08ml入れた後、0.1Mホウ酸緩衝液(0.3M NaClを含む、pH8.3)で5mMに調製した酵素基質(ヒプリルヒスチジルロイシン、シグマ社製)0.2mlを添加し、37℃で3分間保温した。次いで、蒸留水を添加して0.1U/mlになるように調製したウサギ肺のアンジオテンシン変換酵素(シグマ社製)0.02mlを添加し、37℃で30分間反応させた。 その後、1N塩酸0.25mlを添加して反応を終了した後、1.7mlの酢酸エチルを加え、20秒間激しく攪件し、3000rpmで10分間遠心分離して、酢酸エチル層を1.4ml採取した。得られた酢酸エチル層を加熱して溶媒を除去した後、蒸留水を1.0ml添加し、抽出したヒプリル酸の吸収(228nmの吸光度)を測定して、これを酵素活性とした。 次の式から、阻害活性を求め、IC50[アンジオテンシン変換酵素の活性を50%阻害するために必要な試料濃度(μM)]を決定した。阻害率=(A−B)/(A−C)×100% A:試料(ペプチド)を含まない場合の酵素活性(228nmの吸光度) B:試料添加の場合の酵素活性(228nmの吸光度) C:酵素および試料を添加しない場合の酵素活性(228nmの吸光度)(2)試験結果 本試験結果を表1に示す。表1から明らかなとおり、本発明のペプチド(HP1、HP2、HP3、HP4)は、いずれも強力なアンジオテンシン変換酵素阻害活性を有することが判明した。<実施例3>[ペプチドの動物における血圧降下作用](1)試験方法 12週齢のSHR/Hos雄性ラット14匹(日本エスエルシー株式会社より購入)を、1週間予備飼育し、ラットの血圧を小動物非観血式自動血圧計(MK−2000,室町機械(株)社製)を用いて測定した。 収縮期血圧を指標とし、群毎の投与前の平均収縮期血圧がほぼ同じ値になるように、1群あたり7匹となるように2群に分けた後、約14時間絶食し、試験群には実施例1で得られたペプチド(Leu−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys:HP4)を注射用水に溶解し、ラットに5mL/体重kg(HP4として3mg/体重kg)の割合で経口投与し、試料投与直前、試料投与の1、3、6及び8時間後に、ラットの血圧を測定した。 対照群には、前記HP4水溶液の代わりに注射用水を同容量経口投与し、試料投与直前、試料投与の1、3、6及び8時間後に、ラットの血圧を測定した。(2)試験結果 本試験結果を表2に示す。表2から明らかなとおり、試験群(HP4投与群)において持続的に血圧降下が認められたのに対し、対照群では認められなかった。従って、本発明のペプチド(Leu−Arg−Ile−Pro−Ser−Lys:HP4)に、動物に対する血圧降下作用があることが判明した。 なお、実施例1で得られた他のペプチド(HP1、HP2、HP3)についても同様の試験を行った結果、HP4と同じように血圧降下作用を有することが判明した。 本発明によれば、アンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する新規ペプチドが提供される。同ペプチドを含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤は、医薬として利用することができる。本発明のペプチドは、すべて天然型(L体)のアミノ酸から構成されるため、安全性が高く食品にも用いることができる。 下記のアミノ酸配列からなるペプチド。Xaa−Arg−Xaa−Pro−Ser−Lys(但し、各アミノ酸はL−体であり、Xaaは、独立してIle又はLeuである。) Ile−Arg−Ile−Pro−Ser−Lysからなるペプチドである、請求項1に記載のペプチド。 Ile−Arg−Leu−Pro−Ser−Lysからなるペプチドである、請求項1に記載のペプチド。 Leu−Arg−Leu−Pro−Ser−Lysからなるペプチドである、請求項1に記載のペプチド。 Leu−Arg−Ile−Pro−Ser−Lysからなるペプチドである、請求項1に記載のペプチド。 請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチドを有効成分として含有するアンジオテンシン変換酵素阻害剤。 請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチドを有効成分として含有する血圧降下剤。 血圧降下を必要とする対象(ヒトを除く)に、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチドを投与することを含む、前記対象の血圧を降下させる方法。 血圧降下を必要とする対象(ヒトを除く)の血圧を降下させるための、請求項1〜5のいずれか一項に記載のペプチドの使用。配列表