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タイトル:特許公報(B2)_アレルギー性鼻炎の治療剤
出願番号:2013520445
年次:2015
IPC分類:A61K 31/197,A61P 11/02,A61P 37/08,A61K 41/00,A61K 9/08,A61K 9/06


特許情報キャッシュ

田中 徹 井上 克司 高橋 究 石井 琢也 沼田 勉 渋谷 真理子 鈴木 猛司 JP 5713473 特許公報(B2) 20150320 2013520445 20120615 アレルギー性鼻炎の治療剤 SBIファーマ株式会社 508123858 独立行政法人国立病院機構 504136993 廣田 雅紀 100107984 小澤 誠次 100102255 東海 裕作 100096482 堀内 真 100131093 田中 徹 井上 克司 高橋 究 石井 琢也 沼田 勉 渋谷 真理子 鈴木 猛司 JP 2011134489 20110616 20150507 A61K 31/197 20060101AFI20150416BHJP A61P 11/02 20060101ALI20150416BHJP A61P 37/08 20060101ALI20150416BHJP A61K 41/00 20060101ALI20150416BHJP A61K 9/08 20060101ALI20150416BHJP A61K 9/06 20060101ALI20150416BHJP JPA61K31/197A61P11/02A61P37/08A61K41/00A61K9/08A61K9/06 A61K 31/197 A61K 9/06 A61K 9/08 A61K 41/00 A61P 11/02 A61P 37/08 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2005−501050(JP,A) CSOMA,Z. et al,PUVA treatment of the nasal cavity improves theclinical symptoms of allergic rhinitis and inhibits theimmediate-type hypersensitivity reaction in the skin,J. Photochem. Photobiol. B,2006年,Vol.83, No.1,p.21-26 5 JP2012003945 20120615 WO2012172821 20121220 11 20131101 伊藤 清子 本発明は、5−アミノレブリン酸(以下「ALA又はδ−アミノレブリン酸」ともいう)若しくはその誘導体、又はそれらの塩(以下、これらを総称して「ALA類」ともいう)を有効成分として含有し、400nm〜700nm、好ましくは625nm〜640nmの波長の光を照射する5−アミノレブリン酸−光線力学的療法(以下「ALA−PDT」ともいう)において用いられるアレルギー性鼻炎の治療剤に関する。 アレルギー性鼻炎は、外部環境中の原因物質に対して体内の自己免疫システムが反応することによって引き起こされるものであり、原因物質としてほこり、カビ、花粉等が知られている。 花粉症に代表されるアレルギー性鼻炎の治療法としては、薬剤療法、減感作療法、レーザーを用いた下鼻甲介焼灼による手術療法などが知られている。薬剤療法では、ステロイド性抗炎症剤、免疫抑制剤、抗ヒスタミン剤等が使用されているが、副作用や効果の面で問題があることが知られている。例えば、ステロイド性抗炎症剤には、副腎萎縮、機能不全、胃潰瘍等の副作用があることや(例えば、非特許文献1参照)、免疫抑制剤には、感染症等の副作用があることや(例えば、非特許文献2参照)、抗ヒスタミン剤には、倦怠感、眠気、めまい等の副作用があることが問題とされている。また、抗ヒスタミン剤は、ステロイド性抗炎症剤や免疫抑制剤と比べ、効果面で十分ではないことが知られている。 また、減感作療法は、アレルギーに関与している抗原を特定し、その抗原を皮内に投与することで減感作を誘導することにより、必要な抗原に特異的な免疫反応だけを抑制する方法として知られているが、十分な効果が現れるまでには数カ月から数年を要するとされている。さらに、アレルギーの原因となる抗原を全身性に直接投与することによるアナフィラキシーショック等の危険性があり、投与量を少量から徐々に上げていく必要があることが知られている。すなわち、減感作療法は、長期間の治療が必要となるだけでなく、注射による患者の苦痛を伴うものであることが問題とされている。 また、レーザーを用いた下鼻甲介焼灼による手術療法は、アレルギー性鼻炎患者に肉体的な苦痛を与えるだけでなく、アレルギー性鼻炎を根本的に治療する方法ではないことが問題とされている。 一方、近年、光に反応する化合物を投与し、光を照射することにより標的箇所を治療する方法であるPDTが開発されてきた。PDTは、治療が簡便で、生体侵襲性が小さく、臓器温存が可能であることなどから、近年、クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life;QOL)を考慮した新たながん治療法として注目されている。 PDTに用いられる薬剤の一つであるALAは、動物や植物や菌類に広く存在する色素生合成経路の中間体として知られており、通常5−アミノレブリン酸シンセターゼにより、スクシニルCoAとグリシンとから生合成される。ALA自体には光感受性はないが、細胞内でヘム生合成経路の一連の酵素群によりプロトポルフィリンIX(以下「PpIX」ともいう)に代謝活性化され、直接腫瘍組織や新生血管へ特異的に集積し、かかるPpIX集積部位にレーザー光を照射すると、光の励起により生ずる一重項酸素、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドなどに代表される活性酸素種によりがん細胞が変性・壊死することが知られている。 1986年にカナダクイーンズ大ケネディー教授が、ALAを塗布し、光を照射することで皮膚がんの治療ができることを報告(例えば、非特許文献3参照)して以来、ALAを用いた様々な部位の病変部等の診断及び治療方法が報告されており、例えば、ALA類を体内に投与すると、がんにALA類から誘導されるPpIXが蓄積し、光照射で蛍光を発するという知見に基づいて開発された腫瘍診断剤等が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。 また、PpIXは波長410nm付近の励起光を受けると、波長636nmにピークを持つ赤色蛍光を発することから、ALA類は5−アミノレブリン酸−光線力学的診断(ALA−PDD)による腫瘍の診断に用いられており、また、脳腫瘍や膀胱がんの診断、貧血予防などでの用途も期待されている。特許第2731032号公報特開2006−124372号公報小児科臨床 アレルギー疾患、池澤善郎、日本小児医事出版社、1998綜合臨床 抗アレルギー薬、福中秀典 他、永井書店、1997J.C Kennedy, R.H Pottier and DC Pross, Photodynamic therapy with endogeneous protoprophyrin IX: basic principles and present clinical experience, J. Photochem., Photobiol. B: Biol., 6 (1990) 143-148 本発明の課題は、非侵襲性で副作用や患者への肉体的苦痛はほとんど無く、安全且つ簡単にアレルギー性鼻炎を治療することができる治療剤を提供することにある。 ALA−PDTによるがん治療が広く検討されており、本発明者らも、長年の間、鋭意研究を進めている。ALA−PDTによるがん治療は、がん細胞においてPpIXが正常細胞よりも多く産生・集積することを利用した療法として知られているが、そもそもPpIXががん細胞で多く産生・集積する詳細なメカニズムは明らかになっていない。また、ALAががん細胞やがん組織以外にも集積するかどうかについても、ほとんど知られていなかった。本発明者らは、ALA−PDTのあらゆる疾患治療への可能性を網羅的に検討しており、その過程でたまたまアレルギー性鼻炎についても検討してみた。試しに花粉症によるアレルギー性鼻炎患者に対してALAを経口投与したところ、鼻粘膜炎症部位にPpIXが蓄積することが見いだされた。そこで、かかるPpIX蓄積部位にPDTを行ったところ、アレルギー性鼻炎の治療効果があることが確かめられた。さらに、かかるアレルギー性鼻炎の治療効果は、ALAの経口投与ではなく、経皮投与すなわち溶液タイプとして塗布した場合にも認められた。本発明はこれら知見に基づいて完成するに至ったものである。 すなわち本発明は、(1)5−アミノレブリン酸(ALA)若しくはそのエステル誘導体、又はそれらの塩を有効成分として含有し、400nm〜700nmの波長の光を照射する5−アミノレブリン酸−光線力学的療法(ALA−PDT)のためのアレルギー性鼻炎の治療剤や、(2)625nm〜640nmの波長の光を照射することを特徴とする上記(1)記載のアレルギー性鼻炎の治療剤や、(3)経口投与することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のアレルギー性鼻炎の治療剤や、(4)鼻腔内に経粘膜投与することを特徴とする上記(1)又は(2)記載のアレルギー性鼻炎の治療剤や、(5)鼻腔内に経粘膜投与する治療剤の剤型が、塗布される溶液タイプ、水溶性軟膏溶解タイプ、又はゼリー剤溶解タイプであることを特徴とする上記(4)記載のアレルギー性鼻炎の治療剤に関する。 また本発明の実施の形態として、[1]ALA類を投与して400nm〜700nmの波長の光を鼻腔内に照射するALA−PDTによりアレルギー性鼻炎を治療する方法や、[2]625nm〜640nmの波長の光を照射することを特徴とする上記[1]記載のアレルギー性鼻炎を治療する方法や、[3]400nm〜700nmの波長の光を鼻腔内に照射するALA−PDTによりアレルギー性鼻炎を治療するためALA類を使用する方法や、[4]625nm〜640nmの波長の光を照射することを特徴とする上記[3]記載のアレルギー性鼻炎を治療するためALA類を使用する方法や、[5]400nm〜700nmの波長の光を鼻腔内に照射するALA−PDTによりアレルギー性鼻炎を治療する薬剤を調製するためのALA類の使用や、[6]625nm〜640nmの波長の光を照射することを特徴とする上記[5]記載のアレルギー性鼻炎を治療する薬剤を調製するためのALA類の使用や、[7](a)ALA類を投与するALA投与ステップ;(b)380nm〜420nmの波長の励起光を照射して、赤色の蛍光を検出することで、PpIX蓄積部位を判定するALA−PDDステップ;(c)PpIX蓄積部位に400nm〜700nmの波長の光を照射するALA−PDTステップ;を順次備えたアレルギー性鼻炎の治療に用いられる、ALA−PDDデバイス及びALA−PDTデバイスとを具備した、又は、ALA−PDTデバイスを具備したアレルギー性鼻炎の治療システムや、[8]ALA−PDTステップが、625nm〜640nmの波長の光を照射することを特徴とする上記[7]記載のアレルギー性鼻炎の治療システムを挙げることができる。 本発明のアレルギー性鼻炎の治療剤を用いると、非侵襲性で副作用や患者への肉体的苦痛はほとんど無く、安全且つ簡単にアレルギー性鼻炎を治療することができる。また、アレルギー性鼻炎の治療効果を少なくとも1年間持続させることができることから、患者への負担が少ない。気管支鏡(PENTAX SAFE−3000)を用いたALA−PDDにより、鼻粘膜炎症部位におけるPpIXの蓄積を確認した結果を示す図である。左側に通常照明による画像を、右側に408nmの波長の紫色光によるPpIX蛍光画像を示す。PDT用LED照射プローブ(φ7mmアクリルロッド導光)を示す図である。PDT用LED照射プローブ(φ7mmアクリルロッド導光)を用いたPDT施術の様子を示す図である。 本発明のアレルギー性鼻炎の治療剤としては、ALAやその誘導体やそれらの塩から構成されるALA類を有効成分として含有し、400nm〜700nm、好ましくは625nm〜640nmの波長の光を照射するALA−PDTにおいて用いられるALA−PDTのための治療剤であれば特に制限されず、400nm〜700nm、好ましくは625nm〜640nmの波長の光を照射するALA−PDTの前に、380nm〜420nmの波長の励起光を照射して、610nm〜750nmの波長の光を放射しているPpIX蓄積部位を検出するALA−PDDを行う治療剤であってもよいが、かかるALA−PDDを行うことを必要としない治療剤を特に好適に例示することができる。また、本発明のアレルギー性鼻炎の治療剤が使用される治療システムとしては、ALA−PDTデバイスとを具備したシステムであれば特に制限されず、ALA類の投与デバイスやALA−PDDを備えたものであってよい。 ALAやその誘導体は、下記式(I)で示される(式中、R1は、水素原子又はアシル基を表し、R2は、水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す)。 ALA類の中でも式(I)のR1及びR2が共に水素原子の場合であるALA又はその塩を好適に例示することができる。ALAは、δ−アミノレブリン酸とも呼ばれるアミノ酸の1種である。また、ALA誘導体としては、式(I)のR1が水素原子又はアシル基であり、式(I)のR2が水素原子、直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である、5−ALA以外の化合物を挙げることができる。 式(I)におけるアシル基としては、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ベンジルカルボニル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1〜8のアルカノイル基や、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル基等の炭素数7〜14のアロイル基を挙げることができる。 式(I)におけるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル基等の直鎖又は分岐状の炭素数1〜8のアルキル基を挙げることができる。 式(I)におけるシクロアルキル基としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロドデシル、1−シクロヘキセニル基等の飽和、又は一部不飽和結合が存在してもよい、炭素数3〜8のシクロアルキル基を挙げることができる。 式(I)におけるアリール基としては、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基等の炭素数6〜14のアリール基を挙げることができる。 式(I)におけるアラルキル基としては、アリール部分は上記アリール基と同じ例示ができ、アルキル部分は上記アルキル基と同じ例示ができ、具体的には、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、ベンズヒドリル、トリチル、ナフチルメチル、ナフチルエチル基等の炭素数7〜15のアラルキル基を挙げることができる。 上記ALA誘導体としては、R1が、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル基等である化合物や、上記R2が、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル基等である化合物が好ましく、上記R1とR2の組合せが、ホルミルとメチル、アセチルとメチル、プロピオニルとメチル、ブチリルとメチル、ホルミルとエチル、アセチルとエチル、プロピオニルとエチル、ブチリルとエチルの組合せなどを好適に例示することができる。 ALA類は、生体内で式(I)のALA又はその誘導体の状態で有効成分として作用すればよく、投与する形態に応じて、溶解性を上げるための各種の塩、エステル、または生体内の酵素で分解されるプロドラッグ(前駆体)として投与することができる。例えば、ALA及びその誘導体の塩としては、薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩等を挙げることができる。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩等の各無機酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、トルエンスルホン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、メタンスルホン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩等の各有機酸付加塩を例示することができる。金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等の各アルカリ金属塩、マグネシウム、カルシウム塩等の各アルカリ土類金属塩、アルミニウム、亜鉛等の各金属塩を例示することができる。アンモニウム塩としては、アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩等を例示することができる。有機アミン塩としては、トリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩、トルイジン塩等の各塩を例示することができる。なお、これらの塩は使用時において溶液としても用いることができる。 以上のALA類のうち、望ましいものは、ALA、及びALAメチルエステル、ALAエチルエステル、ALAプロピルエステル、ALAブチルエステル、ALAペンチルエステル等の各種エステル類、並びに、これらの塩酸塩、リン酸塩、硫酸塩であり、ALA塩酸塩やALAリン酸塩を特に好適に例示することができる。 上記ALA類は、化学合成、微生物による生産、酵素による生産のいずれの公知の方法によって製造することができる。また、上記ALA類は、水和物又は溶媒和物を形成していてもよく、またいずれかを単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。 上記ALA類を水溶液として調製する場合には、ALA類の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意する必要がある。アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって分解を防ぐことができる。 上記ALA−PDTは、光に反応する化合物を投与し、光を照射することにより標的箇所を治療するPDTを行う際に、それ自身は光増感作用を有さないALA類を投与し、色素生合成経路を経て誘導されたPpIXが鼻粘膜炎症部位における細胞内に特異的に集積し、鼻粘膜炎症細胞内に蓄積したPpIXを励起させることで、周囲の酸素分子を光励起し、その結果生成する一重項酸素が、その強い酸化力による殺細胞効果を有することを利用するアレルギー性鼻炎の治療剤に用いられる方法であり、上記PpIXを励起させる光の波長としては、赤色の光の波長であればよく、具体的には400nm〜700nm、好ましくは625nm〜640nmを挙げることができ、中でも635nmが好ましい。 上記必ずしも実施する必要はないが、任意に実施してもよいALA−PDDは、本発明のALA−PDTの前に、鼻粘膜炎症細胞内に蓄積したPpIXに紫色の光を照射すると赤色の蛍光を発することを利用して、鼻粘膜炎症部位を特定する判定方法であり、上記紫色の光の波長としては、少なくとも380nm〜420nmの範囲内であればよく、例えば、400〜420nm、403〜410nm等を挙げることができるが、中でも408nmが好ましい。 本発明の治療剤におけるALA類の投与法としては、舌下投与も含む経口投与及び点滴を含む静脈注射、発布剤、座薬、塗布される溶液タイプ等による経皮投与を挙げることができ、これらの中でも経口投与や鼻腔内への経皮投与が好ましく、効率性及び簡便性の点から考慮すると、鼻粘膜炎症部位に塗布する経皮投与を好適に例示することができる。経口投与の場合は炎症部位に多くPpIXが溜まるが、正常粘膜にも取り込まれるため、例えば臭いを感じる嗅細胞が光照射によってダメージを受ける可能性があるが、溶解液等による局所投与の場合、鼻腔内奥の上部にある嗅細胞にはPpIXが取り込まれないようにできるため、嗅覚障害等の副作用を回避することができる。経口投与剤型の治療剤の剤型としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等を挙げることができ、静脈注射剤型の治療剤としては、注射剤、点滴剤等を挙げることができる。また、鼻腔内への経皮投与型の治療剤の剤型としては、溶液タイプ、水溶性軟膏溶解タイプ、ゼリー剤溶解タイプ、スプレータイプ等を挙げることができる。例えば、塗布される溶液タイプによる経皮投与法としては、ALA類溶液を十分含ませたガーゼ、脱脂綿等の液体保持材を、鼻腔内の鼻粘膜炎症部位に接触させる方法を具体的に挙げることができる。ALA類の投与量としては、鼻粘膜炎症部位へのPpIXの集積量がALA−PDTにおける有効量であればよく、具体的なALA類の投与量としては、例えば経口投与の場合、ALA換算で体重1kgあたり、1mg〜1000mg、好ましくは5mg〜100mg、より好ましくは10mg〜30mg、さらに好ましくは15mg〜25mgであり、塗布される溶液タイプによる経皮投与の場合、ALA類溶液の濃度が、ALA換算で1重量%〜90重量%、好ましくは2重量%〜40重量%、より好ましくは3重量%〜10重量%、さらに好ましくは4重量%〜6重量%である。また、ALA類を溶液の形態で使用する場合は、ALA類の分解を防ぐため、水溶液がアルカリ性とならないように留意して調製することが好ましい。アルカリ性となってしまう場合は、酸素を除去することによって有効成分の分解を防ぐことができる。 本発明の治療剤は、必要に応じて他の薬効成分、栄養剤、担体等の他の任意成分を加えることができる。任意成分として、例えば結晶性セルロース、ゼラチン、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物性及び動物性脂肪、油脂、ガム、ポリアルキレングリコール等の、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、溶剤、分散媒、増量剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を添加することができる。 上記のALA−PDTステップにおいては、照射すべき鼻粘膜炎症部位の範囲に赤色の光、具体的には400nm〜700nmの波長、好ましくは625nm〜640nmの波長、より好ましくは635nmの波長を有する光を照射することができるALA−PDTデバイスが用いられる。上記光を照射する光源としては、公知のものを使用することができ、例えば赤色LED(発光ダイオード)、赤色半導体レーザー、強い赤色発光スペクトルをもつ放電ランプ等を挙げることができるが、装置がコンパクトになり、コスト面や可搬性において有利であることから、赤色LEDを好適に例示することができる。また、赤色半導体レーザーを光源とする場合、レーザーのパワー密度は、20mW/cm2〜400mW/cm2が好ましく、エネルギー密度は、25J/cm2〜100J/cm2が好ましい。レーザー光は、連続光であってもよく、パルス光であってもよいが、パルス光を利用することにより、正常な皮膚表面への損傷を小さくできる点で、パルス光がより好ましい。具体的な照射方法としては、鼻粘膜炎症部位を蛍光観察可能な気管支鏡にて、観察しながら、例えば100J/cm2のエネルギー密度で照射する方法を挙げることができ、鼻粘膜炎症部位に照射したときの照射径が、10mm以上であることが好ましく、15mm以上であることが、患部への照射時間が短くなることから好ましい。 前記のように、本発明の治療剤を用いる治療方法は、ALA−PDTの前にALA−PDDを必要としない簡便な点に特徴を有するが、ALA−PDDを行うこともできる。かかるALA−PDDステップにおいて用いられるALA−PDDデバイスとしては、PpIXの励起光照射デバイスと、励起状態のPpIX特有の赤色蛍光検出デバイス、あるいは、これらが一体化されたデバイスを例示することができる。PpIXの励起光照射デバイスから照射する光としては、PpIXを励起させることで、PpIX特有の赤色蛍光が観察できる波長の光が好ましく、いわゆるソーレー帯に属するPpIXの吸収ピークに属する紫外光に近い紫色の波長の光であって、少なくとも380nm〜420nmの範囲内の波長の光であればよく、例えば、400〜420nm、403〜410nm等を挙げることができるが、中でも408nmが好ましい。 上記ALA−PDDステップにおける励起光を照射する光源としては、公知のものを使用することができ、例えば紫色LED、好ましくはフラッシュライト型紫色LEDや、半導体レーザー等の光源を挙げることができるが、装置がコンパクトになり、コスト面や可搬性において有利である紫色LED、中でもフラッシュライト型紫色LEDや、紫色半導体ダイオードを好適に例示することができる。また、PpIX蓄積部位を検出し、照射すべき鼻粘膜炎症部位の範囲を判断するための、赤色の蛍光、具体的には610nm〜750nm、好ましくは625〜638nmの波長の蛍光を検出するための赤色蛍光検出デバイスとしては、肉眼による検出デバイスやCCDカメラによる検出デバイスを挙げることができる。 励起光照射デバイスと赤色蛍光検出デバイスとが一体化されたALA−PDDデバイスとしては、光源・計測用細径光ファイバーを挙げることができ、蓄積されたPpIXを励起させるALA−PDDステップにおいて照射する励起光の光源としては、微小な鼻粘膜炎症部位についてもPpIXの検出を行うことを可能とするために放射照度が強く、精確な自動識別を可能とするために照射面積が狭い半導体レーザー光源が好ましく、励起光を導光して一端から外部へ出射する励起光導光部を有することが好ましく、励起光導光部としては、具体的には細径光ファイバーを挙げることができる。光源に用いられる素子としては、InGaN等の半導体混晶を用いることができ、InGaNの配合比を変えることで、紫色光を発振することができる。具体的には直径5.6mm程度のコンパクトなレーザーダイオードを好適に例示することができる。レーザーダイオードから4レーザーアウトプットのポートと、スペクトル測定用のポートはビルトイン高感度スペクトロスコープで連結されたデスクトップPCほどのサイズである装置を例示することができる。また、前記励起光によって励起されたPpIXが発する蛍光を受光する受光工程においては計測用細径光ファイバーが用いられ、該計測用細径光ファイバーは前記光源用細径光ファイバーと一体化され、受光した蛍光を検出器に導光してPpIX蓄積部位の判定を行う。 以下に、実施例等を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これら実施例等により限定されるものではない。[ALA経口投与によるアレルギー性鼻炎の治療] アレルギー性鼻炎の被験者ボランティア3名に、20mg/kgのALA塩酸塩を経口投与し、約6時間後に蛍光観察可能な気管支鏡(PENTAX社製 SAFE−3000)を用いて鼻腔に408nmの紫色光を照射し、ALA−PDDを行った。その結果、PpIXが取り込まれた鼻粘膜炎症部位が赤色蛍光として検出された(図1)。かかる鼻粘膜炎症部位に、635nmの波長を有する赤色LED(Light Emitting Diode)(図2)の光を赤色蛍光が肉眼的に観察できなくなるまで照射した(図3)。より具体的には、635nmの波長を有する赤色LED光を一定時間照射後にかかるPDT照射を中断し、照射装置と入れ替えで気管支鏡(PENTAX社製 SAFE−3000)を鼻腔内に挿入し、赤色光を観察した後、再度PDT照射を行った。その結果、照射後数日までは、激しい鼻水やくしゃみの症状が被験者3名に認められたが、かかる症状はその後数週間にわたり軽減した。これらの結果は、炎症を起こした鼻粘膜に蓄積したPpIXが励起され、活性酸素が生成された結果、かかる活性酸素が鼻粘膜上皮を変性することによりアレルギー反応性の低下をもたらしたことを示している。 鼻粘膜炎症部位にPpIXが局所的に蓄積することがわかったが、簡便なALA−PDTが実施できることを再度確認するために、鼻腔内全域に赤色半導体レーザー光による赤色光を照射することによりアレルギー性鼻炎が治療できるかどうかを検証した。成人男性7名及び成人女性5名の計12名の花粉症の被験者に対し、20mg/kgのALA塩酸塩を経口投与し、6時間後に635nmの波長を有する赤色半導体レーザー光100Jを鼻腔内に6分間照射した。その結果、12名の花粉症による激しい鼻水やくしゃみの症状は、消失(3名)又は軽減(5名)し、その効果は少なくとも照射後1年まで継続した。この結果は、鼻粘膜炎症部位を特定しなくても、アレルギー性鼻炎が治療できることを示している。[ALA経皮投与によるアレルギー性鼻炎の治療] 次に投与するALA塩酸塩が、塗布による液体タイプでもアレルギー性鼻炎が治療できるかどうかを検討した。成人男性4名の花粉症被験者に対し、5重量%ALA塩酸塩生食溶解液を十分浸した綿で鼻腔内に塗布し、1時間留置させた後にかかる浸漬綿を除去した。3名の被験者には浸漬綿を除去した直後に、残りの1名の被験者には浸漬綿を除去した1時間後に、それぞれ635nmの波長を有する赤色半導体レーザー光100Jを鼻腔内に6分間照射した。その結果、4名の花粉症による激しい鼻水やくしゃみの症状は、1時間後に照射した1名では消失し、直後に照射した3名では軽減した。この結果は、投与するALA塩酸塩が、塗布による液体タイプでもアレルギー性鼻炎が治療できることを示している。さらに、かかる液体タイプの塗布による治療は、鼻粘膜炎症部位周辺に直接ALA塩酸塩溶液を塗布することにより、経口投与よりも投与するALA塩酸塩の量を少なく抑えることができ、また、短時間でPpIXが鼻粘膜炎症部位に蓄積されることから、費用対効果や時間対効果の点から考慮すると、経口投与よりも優れた治療であることを示している。5−アミノレブリン酸(ALA)若しくはそのエステル誘導体、又はそれらの塩を有効成分として含有し、400nm〜700nmの波長の光を照射する5−アミノレブリン酸−光線力学的療法(ALA−PDT)のためのアレルギー性鼻炎の治療剤。625nm〜640nmの波長の光を照射することを特徴とする請求項1記載のアレルギー性鼻炎の治療剤。経口投与することを特徴とする請求項1又は2記載のアレルギー性鼻炎の治療剤。鼻腔内に経粘膜投与することを特徴とする請求項1又は2記載のアレルギー性鼻炎の治療剤。鼻腔内に経粘膜投与する治療剤の剤型が、塗布される溶液タイプ、水溶性軟膏溶解タイプ、又はゼリー剤溶解タイプであることを特徴とする請求項4記載のアレルギー性鼻炎の治療剤。


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