タイトル: | 特許公報(B2)_生体分子情報解析装置 |
出願番号: | 2013517739 |
年次: | 2015 |
IPC分類: | C12M 1/00,C12M 1/34,G01N 27/00,C12Q 1/68 |
小埜 和夫 中川 樹生 柳川 善光 河原 尊之 小田部 晃 竹村 理一郎 JP 5770278 特許公報(B2) 20150703 2013517739 20110531 生体分子情報解析装置 株式会社日立製作所 000005108 平木 祐輔 100091096 関谷 三男 100105463 渡辺 敏章 100102576 小埜 和夫 中川 樹生 柳川 善光 河原 尊之 小田部 晃 竹村 理一郎 20150826 C12M 1/00 20060101AFI20150806BHJP C12M 1/34 20060101ALI20150806BHJP G01N 27/00 20060101ALI20150806BHJP C12Q 1/68 20060101ALN20150806BHJP JPC12M1/00 AC12M1/34 ZG01N27/00 ZC12Q1/68 Z C12M 1/00−1/42 G01N 27/00,27/46 CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) DWPI(Thomson Innovation) Nano letters, 2011 May 11(Epub 2011 Apr), Vol.11, No.5, pages 1941-1945 Nano letters, 2010, Vol.10, No.2, pages 420-425 Biophysical journal, 2009, Vol.97, No.7, pages 1990-1996 Sensors and actuators. B, Chemical, 2008, Vol.132, No.2, pages 593-600 Nano letters, 2008, Vol.8, No.1, pages 56-63 Biosensors & bioelectronics, 2007, Vol.22, No.9-10, pages 2337-2340 Biosensors & bioelectronics, 2005, Vol.20, No.7, pages 1320-1326 AD report, 2006, pages 1-14 14 JP2011062456 20110531 WO2012164679 20121206 37 20131021 田中 晴絵 本発明は、生体分子の情報を取得して解析する装置に関する。 半導体微細加工技術の進展にともない、ナノメール(nm)オーダの加工ができるようになってきている。これを利用して、例えば遺伝情報を担うDNA(DeoxyriboNucleic Acid:デオキシリボ核酸)分子などのナノスケール生体分子を解析する技術が開発されている。 図58は、DNA分子の構成例を示す図である。DNA分子は、ポリヌクレオチド鎖に4種類の塩基(アデニン(A)・チミン(T)・グアニン(G)・シトシン(C))が結び付いて形成されている。 図59は、DNA分子の螺旋構造を示す図である。図59(a)に示すように、DNA分子は2本の鎖からなる2重螺旋構造を持っていることが知られている。このとき各々の鎖の塩基は、AとT、GとCがそれぞれ対を作って水素結合で結びついている。これら塩基の対は、2重螺旋構造が形成されている状態においては、ポリヌクレオチド鎖に対しておよそ0.34nmの間隔を隔てて並んでおり、2つの鎖が解かれた一本鎖の状態では、およそ0.7nmで並んでいる。 すなわち、半導体微細加工技術は、生体分子の例であるDNA分子の内部構造と同等の微細構造を加工するレベルに達していることになる。したがって、半導体の電気的または機械的な性質によって、生体分子の性質を調べることができる。 図59(b)は、図59(a)より一本鎖を抜き出した状態を示す図である。図59(c)は、螺旋を解いた状態を示す模式図である。本明細書では、一本鎖DNAを、図59(d)(e)(f)のように表現する場合がある。 高齢化社会を迎えたことにともない、健康状態の管理または治療を、各人の遺伝情報に基づいたきめ細かなものにしたいという社会的なニーズがある。そこで、半導体微細加工技術および半導体技術によって各人の遺伝情報を安価かつ高速に解析するための開発が進められている。薬の利き方、健康状態の管理の仕方などが、各人の遺伝情報に左右されるため、これらを解析することによって個人の特性に応じた医療を促進する狙いがある。 図60と図61は、DNA解析装置の構成例を示す図である。本装置では、例えば一本鎖の状態のDNAまたはRNA(Ribo Nucleic Acid:リボ核酸)を、半導体微細加工技術によって作成した小さな空隙または貫通穴に導き、その空隙または貫通穴に取り付けられた電極に流れる電流を測定し、その情報を用いてDNAまたはRNAの構造や性質を解析する。DNAまたはRNAを通過させる、半導体微細加工技術によって作成した小さな空隙または貫通穴を、以下ではナノ分子路と呼ぶことにする。DNAやRNA以外にも、酵素やある種の細菌など、生体高分子一般も対象となる。 図60は、半導体微細加工技術によって作成した貫通穴(ナノポア)にDNAを通過させるDNA解析装置の構成例を示す図である。図60(a)は平面図、図60(b)は図60(a)のA−A’断面図、図60(c)は図60(a)のB−B’断面図である。 図60(a)において、ナノ分子路は、例えばSi平面の一部を背面へ貫通させた穴として形成されている。ナノ分子路を円形とした場合、この穴の直径は1.5nm〜3nm程度である。図60(b)に示すように、このナノ分子路を挟むようにして、電極T1とT2が、絶縁体であるS1とS2に挟まれた状態で配置されている。図60(c)に示すように、電極T1とT2以外の部分は絶縁体S0で埋まっている。絶縁体S0、S1、S2は、SiやSiNなどで構成されている。電極T1とT2は、TiNやAuなどで構成されている。 図61は、電極T1とT2の間に半導体微細加工技術によって作成した小さな空隙(ナノギャップ)にDNAを通過させるDNA解析装置の構成例を示す図である。図61(a)は平面図、図61(b)は図61(a)のA−A’断面図である。図61(a)に示すように、絶縁体S1とS2とに挟まれた電極T1とT2は、下面の絶縁体S0上に、小さな空隙としてのナノ分子路を形成している。 下記特許文献1は、原理的には図61と同様な構造を有する2つの電極間に微細な空隙を設け、その空隙にDNAを通過させたときのトンネル電流を読む装置を開示している。同文献では、DNAの塩基が所望の速度で空隙を通過するように、相対する2つの電極に対して垂直な2つの方向にそれぞれ2つの電極置き、これに電圧を印加して電界を発生させている。これらの電界により、DNAの塩基が空隙を通過する速度を制御することができる。 下記特許文献2は、原理的には図60と同様な構造を有する微細な穴にDNAを通過させる装置を開示している。同文献では微細穴自体には電極を設けず、微細穴の上下に電極を配置している。この電極に流れる電流が、DNAに含まれる4種類の塩基の種類によって異なるので、事前に準備したテーブルデータと比較することにより、微細穴を通過した塩基の種類を特定することができる。 図62は、微細な空隙を有する2つの電極、または微細穴の口径方向に対向して置かれた2つの電極に対して流れる電流の例を示す図である。同図は、下記非特許文献1の図3を模式的に表したものである。横軸は2つの電極間に流れた電流量であり、縦軸は測定毎のこれらの電流の発生頻度である。 図62に示すように、2つの電極に流れる電流は測定に対して分布を持っており、しかも4塩基の分布は重なっている部分が多い。4塩基のそれぞれの分布をすべて含めると5桁以上の広がりに及ぶ。この分布の理由は、塩基分子と電極との間の位置関係、塩基分子の向きと電極との間の関係、ヌクレオチド鎖に対する塩基分子の動き、塩基分子自体の熱振動、電極の電界が引き起こすDNA分子の配向や振動などである。非特許文献1には、このような分布が得られる旨の説明はあるものの、重なる部分を有する分布に基づき具体的にどのようにして各塩基を識別するかに関する記述が開示されていない。米国特許第6905586号米国特許公開第2010/0331194号Johan Lagerqvist, Michael Zwolak, and Massimiliano Di Ventra, ”Fast DNA Sequencing via Transverse Electronic Transport”、NANO LETTERS 2006 Vol.6, No.4, pp.779-782 上述のように、生体分子構造を解析する2つの電極に流れる電流は、分布のピークと形状が塩基毎に異なり、分布の範囲が数桁に及び、電流の絶対値自体がナノアンペアからピコアンペアのオーダである。上記特許文献1〜2および非特許文献1には、これらの条件を考慮した計測方法が開示されていない。 本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、上述のように値が小さく分布の幅が広い電流の測定結果に基づき、ナノ分子路を通過する生体分子の構成を識別する装置を提供することを目的とする。 本発明に係る生体分子情報解析装置は、第1電極と第2電極の間の空隙を通過する生体分子に電界を印加して電流値を取得し、その電流値を積分して参照値と比較することにより、生体分子の構造を識別する。 本発明に係る生体分子情報解析装置によれば、生体分子の構造を精度よく識別することができる。実施形態1に係る生体分子情報解析装置100の構成図である。生体分子情報解析装置100が備えるナノ分子路周辺の詳細構成を示す図である。積分回路IT1が蓄積する電荷と積分回数の関係を示す図である。電流分布を引き起こしている事象の時定数が図3よりも小さい場合における、積分回路IT1が蓄積する電荷と積分回数の関係を示す図である。実施形態2に係る生体分子情報解析装置100の構成を示す図である。実施形態2に係る生体分子情報解析装置100の動作を説明する図である。センスアンプSAの出力SAO<0>〜SAO<2>と論理回路LOGICの出力RO<0>〜RO<1>がどのように塩基の種類を表すかを示す対応表である。実施形態3に係る生体分子情報解析装置100の構成図である。図62のような電流分布を作成して本実施形態3に係る生体分子情報解析装置100の動作を回路シミュレーションによって模擬した結果を示す図である。出力SAO0〜SAO2の値と塩基の種類との対応表である。2本のDNA鎖を一本鎖に分ける様子を示す図である。4つの塩基の電流分布と上記ペアの関係を示す図である。実施形態4に係る生体分子情報解析装置100のナノ分子路周辺を示す構成図である。図12で説明した知見にしたがって塩基を特定する様子を示す図である。実施形態5に係る生体分子情報解析装置100の構成を示す図である。実施形態5に係る生体分子情報解析装置100の動作例を示す図である。実施形態5に係る生体分子情報取得装置100の動作例を示す図である。実施形態6に係る生体分子情報解析装置100のナノ分子路周辺の構成を示す図である。実施形態7に係る生体分子情報解析装置100の回路構成を簡略化した図である。図19の回路構成に積分回路を加えた回路図である。図20のナノ分子路からログアンプAMPまでの回路構成例を示す図である。図21のBias/sampling部と1st stage部の動作例を示す図である。フィードバック容量を備えない開ループ構成の雑音特性と、フィードバック容量を備える閉ループ構成の雑音特性とを比較する図である。フィードバック容量を備える閉ループ構成のアンプを例示する図である。2nd stage部の他の回路構成例を示す図である。2nd stage部においてリニアアンプを採用した場合と、ログアンプを採用したとのそれぞれにおいて、塩基の読み分けエラー率と積分回数との間の関係を示す図である。実施形態8における論理回路LOGICが実施する、塩基種別判定ロジックの構成を説明する図である。アンプのゲインエラー(ゲインばらつき)によって電流分布が変化する様子を示す図である。実施形態9に係る生体分子情報取得装置100の論理回路LOGICが実施する処理を説明する処理ブロック図である。較正処理を実施するその他の構成例を示す図である。参照入力とする塩基の別構成例を示す図である。実施形態10におけるナノ分子路の構成を示す図である。実施形態11におけるナノ分子路の構成例を示す図である。貫通穴として形成されたナノ分子路の穴の深さ方向に電極を複数配置した構成例を示す図である。DNA鎖を搬送するために用いる電極を深さ方向に複数設けた構成例を示す図である。図35に示すナノ分子路内に形成される電圧を示す図である。塩基に流れる電流を検出する電極の他構成例を示す図である。実施形態12におけるナノ分子路の構成例を示す図である。図38に示した物質D1〜D5の例を示す図である。修飾層D11とD12が異なる物質で構成されている例を示す図である。ナノ分子路に対して複数個の電極および修飾層を設けた例を示す図である。対になる電極の片側を共通電極とした構成例を示す図である。バイアス電圧が0.1Vである場合と1Vである場合における塩基電流の分布を示す図である。塩基電流の分布が温度によって変化する様子を示す図である。塩基電流出力が最大となる電圧周波数を示す図である。塩基電流出力が最大となる電圧周波数が塩基種類毎に異なる様子を示す図である。ナノ分子路と電極の配置関係例を示す図である。図47のナノ分子路部分を切り出した図である。図47に示すナノ分子路と電極部分の断面図である。ナノ分子路の周辺装置の構成を示す図である。装置NPHの周辺装置の構成を示す図である。ヘッド部分である装置NPHを装置NPBから取り外し可能にした構成例を示す図である。生体分子情報解析装置100が備える回路基板の構成例を示す図である。図53に示す各レイヤを着脱可能に構成した例を示す図である。着脱可能な部分の他構成例を示す図である。図53〜図56で説明した各レイヤ間を電気的に接続するため、シリコン貫通ビア(TSV)を用いた構成例を示す図である。シリコン貫通ビアの構成を示す図である。DNA分子の構成例を示す図である。DNA分子の螺旋構造を示す図である。半導体微細加工技術によって作成した貫通穴(ナノポア)にDNAを通過させるDNA解析装置の構成例を示す図である。電極T1とT2の間に半導体微細加工技術によって作成した小さな空隙(ナノギャップ)にDNAを通過させるDNA解析装置の構成例を示す図である。微細な空隙を有する2つの電極、または微細穴の口径方向に対向して置かれた2つの電極に対して流れる電流の例を示す図である。<実施の形態1> 図1は、本発明の実施形態1に係る生体分子情報解析装置100の構成図である。T1とT2は電極である。電極T1とT2の間の空隙は ナノ分子路の一部(ナノポア)を形成している。このナノ分子路を一本鎖DNAが通過する。一本鎖DNAは4種類の塩基を有しており、その並びが遺伝情報を伝える。電極T1は接地されており、電極T2は積分回路IT1に接続されている。電極T1とT2の間の電流は、電極T1とT2の間にあるDNAの塩基の種類によって異なる。 積分回路IT1は、原理的には抵抗R1と容量T1とオペアンプOP1とからなる。積分回路IT1は、電極T1とT2の間の電流を積分し、その結果をアンプAMPに出力する。アンプAMPの出力はOである。出力Oは比較器CMに入力される。 比較器CMは、センスアンプSA0、SA1、SA2を備える。これらセンスアンプの出力は、それぞれSAO0、SAO1、SAO2である。各センスアンプは、それぞれの基準電圧Vref0、Vref1、Vref2と、AMPの出力Oとを比較する。これにより、4つの塩基ごとに異なった電圧を取得することができる。1つの塩基の種類を判定するのに必要な積分時間は、約10μs程度である。 図2は、生体分子情報解析装置100が備えるナノ分子路周辺の詳細構成を示す図である。電極T1とT2は電源に接続され、さらに電流を測定するために電流計に接続されている。一本鎖DNAに流れる電流をIとする。この電流は、図62で説明したように分布を持っている。 ここで、図62で説明した分布について補足する。図62の横軸は、2つの電極間に流れた電流量Iであり、対数軸で表している。縦軸は、測定毎のこれらの電流の発生頻度であり、リニア軸である。A、T、G、Cはそれぞれ電極の間を通過した塩基の種類を示している。例えば1nsの間、電圧1Vを電極T1とT2の間に与えて電流を流す測定を1回とし、これを複数回繰り返して得られた電流値を横軸、電流値の発生頻度を縦軸にとっている。 図62から分かるように、4種類の塩基はそれぞれ異なる分布を持っており、その分布の広がりσ、最大の頻度を与える電流値μが異なる。また、分布の裾は分離しておらず、各塩基に対応する分布が互いに重なっている。したがって、例えば電極間にCとTのどちらがきても同じ電流値を示す場合があるので、塩基を正確に特定することができない可能性がある。 本実施形態1では、上記課題に対処するため、電極T2に流れる電流値を積分する積分回路IT1を設けた。積分回路IT1は、1回の測定で流れる電流とその測定時間の積に対応する電荷を蓄積していく回路である。積分回路IT1が蓄積した結果は、電圧変化として取り出すことができる。または、電流を連続して流し、電流値を測定時間で積分して蓄積した電荷を、電圧変化として取り出すことができる。 図3は、積分回路IT1が蓄積する電荷と積分回数の関係を示す図である。1回の測定において、電流値とその測定時間の積を求め、その測定回数すなわち積分回数を横軸に取り、各積分回数における蓄積電荷を縦軸に取る。連続して電流を流す場合は、横軸が積分時間を示す。 電極に流れる電流は分布を持つので、1回の測定における電流値は、その分布の中で確率的にばらつくことになる。よって、蓄積電荷は、塩基Aを例にすると、積分回数が小さいときは、分布の最大電流と分布の最小電流の間の値を取ることになる。積分回数が増えると、蓄積電荷はほぼひとつの線に収束する。これは、分布の中で確率的に現れる電流値は回数が増えると均一に現れることになるからである。他の塩基も同様である。 本願発明者らは、この収束した値は塩基ごとに異なり、もはや収束した値であるので明確に区別できることを見出した。よって、この収束値を判定すれば、例え各塩基の測定電流が分布を持ち、かつその裾が重なっていても、塩基を読み分けることができる。すなわち、積分回路IT1は蓄積電荷に応じてATGCの4塩基いずれかに対応する電圧値を示すので、比較器CMは、3つの基準電圧を用いてその電圧値がいずれの塩基に対応するかを識別することができる。 なお、積分回数に対して蓄積電荷が収束する早さは、電流分布を引き起こしている事象の時定数による。これは、温度、溶媒、印可電圧によって、測定電流に寄与している現象が異なることによる。 図4は、電流分布を引き起こしている事象の時定数が図3よりも小さい場合における、積分回路IT1が蓄積する電荷と積分回数の関係を示す図である。図4から明らかなように、蓄積電荷が収束するために必要な積分回数を比較すると、Aがもっと少なく、以下、G、T、Cの順番である。この場合、蓄積電荷を電圧に換算してその値を読むとすると、ある参照電圧(VREF)に達する順番はAGTCの順であることになる。この性質を利用すれば、参照電圧VREFに達するまでの積分回数または積分時間によって塩基を読み分けることができる。<実施の形態1:まとめ> 以上のように、本実施形態1に係る生体分子情報解析装置100は、電極T2を流れる電流を積分し、積分回路IT1が蓄積している電荷を示す電圧が参照電圧VREFに達するまでの積分回数または積分時間に基づき、生体分子の構成を識別する。これにより、測定する電流の値が小さく、分布の幅が広く、さらには分布が重なり合っていても、ナノ分子路中の生体分子の構成を識別することができる。 また、本実施形態1に係る生体分子情報解析装置100によれば、測定によって得られるデータが分布を持っている、DNAのような生体分子の情報の構成(DNAであれば塩基配列)を高速かつ精度よく実施することができる。これにより、健康状態の管理や治療を各人の生体情報や遺伝情報に基づいて実施する個人別医療を促進することができる。<実施の形態2> 実施形態1の図4では、積分回路IT1の蓄積電荷に対応する電圧が参照電圧VREFに達するまでの積分回数または積分時間によって塩基を読み分けることができることを説明した。本発明の実施形態2では、これを積分時間について実現した構成例を説明する。 図5は、本実施形態2に係る生体分子情報解析装置100の構成を示す図である。ドライバD1は、電極T1とT2を駆動する回路である。ドライバD1の入力はRENB、出力はRENである。出力RENは電極T1に接続される。 電源回路VGENは、プリチャージ電圧VPRE、バイアス基準電圧VREAD、参照電圧VREFを出力する。電極T2は、出力VOUTを出力する。電極T2の出力端には、容量C、プリチャージ回路CPRE、センスアンプSAが接続される。センスアンプSAは、塩基の種類を出力VOUTの電圧値に基づき判定する回路である。プリチャージ回路CPREには、プリチャージ電圧VPREとその制御信号PREBが入力される。出力VOUTはまた、バイアス電圧印加回路RVGENにも入力される。バイアス電圧印加回路RVGENは、出力VOUTとバイアス基準電圧VREADに基づき、塩基に電流を流すときのバイアス電圧RVをドライバ回路D1に出力する。 センスアンプSAは、参照電圧VREFと出力VOUTを比較する。センスアンプSAは3つのアンプを備え、各アンプにはそれぞれ参照電圧VREFと出力VOUTが入力される。各アンプの出力はそれぞれSAO<0>、SAO<1>、SAO<2>であり、各アンプに対する制御信号はSE<0:2>である。制御信号SEは、出力VOUTの値を参照電圧VREFと比較するタイミングを定める。詳細は後述の図6で説明する。 3つのアンプの出力は、デジタル出力として論理回路LOGICに出力される。論理回路LOGICは、後述の図7で説明する論理演算を実施し、出力RO<0>、RO<1>を出力する。4つの塩基を判定するため2ビットの情報が必要となるので、出力RO<0>とRO<1>を設けた。制御信号ROENは、論理回路LOGICに対する制御信号である。 図6は、本実施形態2に係る生体分子情報解析装置100の動作を説明する図である。出力VOUTのプリチャージが完了し、プリチャージ制御信号PREBが低レベルとなると、ドライバD1が動作し、出力RENを出力する。電極T2には、塩基の種類に対応する電流が流れ、出力VOUTが変化する。この電流は分布を持っており、時間積分によって収束した蓄積電荷に対応する電圧値の変化が、塩基の種類毎に異なる。実施形態1の図4で説明したように、塩基の種類は、電圧値が参照電圧VREFに到達する時間の差によって識別することができる。 出力VOUTの波形に示すように、参照電圧VREFに達するのはAが最も早く、Tが最も遅い。この時間差を利用して、参照電圧VREFと比較するタイミングを制御信号SE<0:2>によって制御し、それぞれ時刻t0、t1、t2で比較する。例えば時刻t0では、電圧値が参照電圧VREFに達しているのはAのみであり、時刻t2ではA、G、Cとなる。この時間差により、各塩基を識別することができる。識別結果は、センスアンプSAの出力SAO<0>、SAO<1>、SAO<2>に現れる。 センスアンプSAが出力SAO<0>〜SAO<2>を出力した後、制御信号REONによって論理回路LOGICを起動し、論理演算を実施すると、出力RO<0>とRO<1>に識別結果が現れる。 図7は、センスアンプSAの出力SAO<0>〜SAO<2>と論理回路LOGICの出力RO<0>〜RO<1>がどのように塩基の種類を表すかを示す対応表である。例えばAであれば、論理回路LOGICを起動した時点では、出力SAO<0>〜SAO<2>はすべて“1”であり、出力RO<0>は“1”、出力RO<1>は“0“である。出力RO<0>〜RO<1>が得られた時点で、塩基の種類はAと判断する。積分に必要にとなる時間は、実施形態1と同様に10μs程度である。<実施の形態2:まとめ> 以上のように、本実施形態2に係る生体分子情報解析装置100によれば、実施形態1と同様の効果を発揮することができる。また、実施形態1とは異なり参照電圧VREFは1種類のみでよい。<実施の形態3> 図8は、本発明の実施形態3に係る生体分子情報解析装置100の構成図である。本実施形態3に係る生体分子情報解析装置100は、実施形態2で説明した構成に加えて、積分回路がアンプを含んでいる。 ドライバRDRVは、電極T1とT2を駆動する。PREはプリチャージ回路である。アンプAMP0とAMP1は、アンプを含んだ積分回路として動作する。SA0とSA1とSA2は、積分回路の出力と参照電圧VREFに基づき塩基の種類を判定するセンスアンプである。実施形態2で示した論理回路LOGICは、記載を省略した。 電極T1とT2は、微細な空隙や穴によって形成されたナノ分子路を有する。ドライバRDRVは、バイアス基準電圧VREADにしたがって電極T1とT2に電圧を印加する。制御信号RENBは、ドライバRDRVを制御する。バイアス基準電圧VREADの値は、例えば1.4Vである。 プリチャージ回路PREは、プリチャージ電圧VPRE(例えば0.4V)を、電極T2に接続される端子SNに与える。制御信号RENBとRENTは、プリチャージ回路PREを制御する。 アンプAMP0は、端子SNの出力を受け取り、参照電圧VREF0を用いて増幅する。アンプAMP0には2つの特徴がある。1つ目の特徴は、電源電圧VDD(例えば1.5V)と、ナノ分子路を駆動またはプリチャージする電圧VPREを、独立させることができることである。これにより、生体分子情報解析装置100の回路動作に最適な電圧と、ナノ分子路に最適な電圧とを独立に選び設計することができる。2つ目の特徴は、端子SNの出力を受け取るMOSトランジスタとして閾値電圧の低いものを選び、高感度化を図ることができることである。 アンプAMP0が備えるMOSトランジスタの例として、ゲート酸化膜厚が厚いものを選ぶことも考えられる。これは、塩基に流れる微小電流を検出するため、リーク電流を小さくすることが望ましいことによる。最近の微細MOSトランジスタは、性能を向上させるために薄い酸化膜を使うが、そうするとゲートに大きなリーク電流が流れてしまう。高性能プロセッサ用のMOSトランジスタでは、検出しようとしている電流値と同じオーダの電流が流れる場合もある。本実施形態3では、リーク電流を小さくするためゲート酸化膜厚が厚いMOSトランジスタを採用することができるので、高性能なMOSトランジスタを用いる必要がなくなり、コストなどの観点で有利である。 アンプAMP0の出力VOUTは、次段のアンプAMP1のゲートに入力する。アンプAMP1のドレイン出力は、積分用の容量C、制御信号RENBで駆動され容量Cを電圧VDDにプリチャージするMOSトランジスタに接続されている。積分された出力VOUT2は、センスアンプSA0、SA1、SA2に入力する。 制御信号SA0EN、SA1EN、SA2ENは、それぞれセンスアンプSA0、SA1、SA2を起動する。各センスアンプはフリップフロップ型のセンスアンプであり、参照電圧発生回路VREF1を用いて、実施形態2と同様に、制御信号SA0EN〜SA2ENのタイミングを制御し、出力VOUT2と、参照電圧発生回路VREF1の出力を比較して、その結果を出力SAO0、SAO1、SAO2として出力する。 図9は、図62のような電流分布を作成して本実施形態3に係る生体分子情報解析装置100の動作を回路シミュレーションによって模擬した結果を示す図である。Tの電流波形は<I(T)>、Cの電流波形は<I(C)>、Gの電流波形は<I(G)>、Aの電流波形は<I(A)>で示す。ここではAの場合について、電極T2に接続される端子SNの電圧変化と、アンプAMP0の出力VOUTの電圧変化を図示した。図示は省略したが、T、G、Aの場合についても、それぞれに応じた波形で、端子SNの電圧変化と出力VOUTの電圧変化を得ることができる。 出力VOUT2については、4つの塩基の波形を重ねて表示した。時間軸で見ると、Aに対応する波形が最初に変化し、以下、G、C、Tと続く。時刻t0、t1、t2において、それぞれ出力SAO0、SAO1、SAO2が出力されている。 図10は、出力SAO0〜SAO2の値と塩基の種類との対応表である。図10に示すように、塩基の種類に対応して一意に出力が定まる。<実施の形態3:まとめ> 以上、本実施形態3では、実施形態2で説明した回路構成の具体例を説明した。本実施形態3によれば、実施形態1〜2と同様の効果を発揮することができる。また、アンプAMP0に関して上述の効果を発揮することもできる。<実施の形態4> 本発明の実施形態4では、DNA鎖を構成する塩基が2種類ずつペアになって結びつくことを利用し、より高速かつ精度良く塩基の種類を識別する構成例について説明する。 DNAが2本の鎖で2重螺旋を構成するとき、AとT、GとCがそれぞれ対を作って水素結合で結びつくことが知られている。これを利用することにより、実施形態1〜3で説明した方法よりも高速に塩基を特定することができる。すなわち、ペアの片方の塩基が特定できれば他方の塩基も特定できるので、2重螺旋を解いて2本を解析する場合、解析しやすい2種の塩基のみを解析すればよい。解析しやすいとは、例えば電流の大きな方を2種類選ぶといったことである。この手法は、他の生体分子で対となって存在するものを特定する際にも応用することができる。また、分光のために用いたり、塩基を増殖させたりする場合にも応用することができる。 図11は、2本のDNA鎖を一本鎖に分ける様子を示す図である。図11(a)は、DNAが2本の鎖で2重螺旋を構成している様子を示す図である。図11(b)は、DNAを一本鎖に分けた様子を示す図である。 2本のDNA鎖は、熱、酵素、機械的な力などによって一本鎖に分けることができる。この時にできる2本の鎖の配列には関連がある。すなわち、4種類の塩基は、GとCの対(ペア1)とAとTの対(ペア2)がそれぞれ対になって結びついているので、このルールの下で片方の一本鎖は他方の一本鎖と対応している。 図12は、4つの塩基の電流分布と上記ペアの関係を示す図である。GとCの対と、AとTの対は、それぞれ図12に示すような関係となる。図12に示す関係によれば、少なくとも以下の4つの知見が得られる。(図12:知見その1) 対を構成しているGとCに関しては、Gの電流はCの電流よりも大きい。同じく対を構成しているAとTに関しては、Aの電流はTの電流よりも大きい。よって、ペアになっている塩基の電流を測定した場合、大きいほうはAまたはGである。(図12:知見その2) 中心値が大きい電流の上位2つはAとGである。この2つは2重螺旋の対ではなく、AがGよりも大きい。中心値が小さい電流の2つはTとCである。この2つは2重螺旋の対ではなく、TがCよりも大きい。AはTとペアを組み、GとCはペアを組む。よって、それぞれのペアの電流は、AとTのペアの方が、GとCのペアよりも大きい。(図12:知見その3) 知見1と知見2を組み合わせると、以下の知見が得られる。まず、2つのナノ分子路を設けてそれぞれ一本鎖DNAを通過させ、AまたはGが通過したことを特定する。次に、通過した塩基がAまたはGのいずれであるかを、一本鎖単独の電流またはペアの電流値の和にしたがって判断することができる。通過した塩基がAまたはGのいずれであるかを特定し、それがいずれのナノ分子路を通過したかを特定すれば、塩基の種類を一意に決定することができる。(図12:知見その4) 電流の中心値が最も大きいAと最も小さいCは、2重螺旋の対ではないので、読み出す2種類の塩基としてこれらを選択することにより、積分によって得られた電圧差が大きくなる。これにより、蓄積電荷を厳密に収束させる必要がなくなり、その分だけ処理の高速化を図ることができる。電圧や温度の条件、許されるエラー率の設定などによっては、分布の裾が重なっておらず、またはその重なりを無視でき、積分を実施せずに直接大小関係を判断することができる場合もある。さらには、印加電圧などの条件によっては、Tの電流値の中心値とCの電流値の中心値の大小関係が入れ替わることもある。この場合においても、AとCの電流分布の差は大きいので、同様な効果を発揮することができる。 図13は、本実施形態4に係る生体分子情報解析装置100のナノ分子路周辺を示す構成図である。本実施形態4に係る生体分子情報解析装置100は、DNA2本鎖解除部、ナノ分子路1、ナノ分子路2、塩基判定回路1、塩基判定回路2を備える。その他の積分回路などについては実施形態1〜3と同様であるため、説明を省略する。 DNA2本鎖解除部は、2重螺旋を構成しているDNAの2本鎖を解く機能部である。例えば、酵素(DNAヘリカーゼ)、熱、力などをDNA鎖に加えることによって2本鎖を解くことができる。ナノ分子路1は、2本に分けられたDNA鎖の片方を通過させる。ナノ分子路2は他方のDNA鎖を通過させる。塩基判定回路1は、ナノ分子路1が備える電極(図示していない)に流れる電流を用いて塩基を判定する。塩基判定回路2は、ナノ分子路2が備える電極(図示していない)に流れる電流を用いて塩基を判定する。 図14は、図12で説明した知見にしたがって塩基を特定する様子を示す図である。図14(a)は、横軸に時間を取り、縦軸に2つのナノ分子路から得られた電流値またはこれを積分した値を取ったグラフを示す。図14(b)は、相補対を用いて塩基を特定する手順を示す図である。 図14(a)では、2つのナノ分子路から得られた塩基の電流値をプロットしている。ひとつの丸がひとつの塩基に対応するデータである。これらの電流値または積分値は、分布を持つ。よって、塩基AGTCの各々について、その判定に適した範囲が存在する。例えば、塩基Aは電流値または積分値が最も大きく、塩基Gと塩基Tは重なりが大きいため同じ範囲にあり、塩基Cはこれらよりも小さい。したがって、AとCを読み分けることは容易である。 本実施形態4に係る生体分子情報解析装置100は、ナノ分子路1とナノ分子路2それぞれにおいて、塩基AまたはCを特定することができる。この様子を図14(b)の左側に示した。AとT、CとGはそれぞれ対であることが分かっているので、これら塩基を特定できれば、その他の塩基も特定できる。この結果、図14(b)の右側のように各塩基の配列を一意に決定することができる。<実施の形態4:まとめ> 以上のように、本実施形態4に係る生体分子情報解析装置100によれば、4種の塩基のうちペアを構成する塩基を1つずつ選び、この2種の塩基を特定することにより、DNAの塩基配列を一意に特定することができる。これにより、生体分子情報解析装置100の処理を高速化することができる。 また、本実施形態4において、特定する塩基としてAとCを選ぶ場合は、積分回路の蓄積電荷に対応する電圧の差が大きいため、塩基の種類を特定しやすくなり、解析精度を高めることができるという利点がある。<実施の形態5> 本発明の実施形態5では、ペアを構成する塩基に対応する積分電圧を合算した電圧値に基づき塩基を特定する構成について、具体的な回路例と動作を説明する。 図15は、本実施形態5に係る生体分子情報解析装置100の構成を示す図である。ナノ分子路0とナノ分子路1は、それぞれ電極を備えている。ナノ分子路0とナノ分子路1には、実施形態4と同様に、DNA2本鎖を解くことによって得たDNA一本鎖が片方ずつ入力される。 ドライバD0とD1は、制御信号RENBによって制御されるナノ分子路0および1それぞれの電極を駆動する。バイアス電圧印加回路RVGEN0とRVGEN1は、バイアス基準電圧VREADを電源として、バイアス電圧を与える回路である。 ナノ分子路0とナノ分子路1の電極は、それぞれ出力VOUT<0>とVOUT<1>を出力する。出力VOUT<0>とVOUT<1>には、電流を電荷として蓄積する容量C0とC1がそれぞれ接続されている。出力VOUT<0>とVOUT<1>は、センスアンプSA0の入力となる。 出力VOUT<0>とVOUT<1>の間にはプリチャージ回路PRECが配置されている。プリチャージ回路PRECは、制御信号PREによって制御され、プリチャージ電圧電源VPRE0の値を必要に応じて出力VOUT<0>とVOUT<1>に与える。出力VOUT<0>とVOUT<1>の間にはさらに、ショート回路EQCが配置されている。ショート回路EQCは制御信号EQENによって制御され、出力VOUT<0>とVOUT<1>をショートした結果を出力SNとして、センスアンプSA1に入力する。ショート回路EQCには、プリチャージ電圧VPRE0を入力することもできる。この場合ショート回路EQCは、プリチャージ電圧VPRE0の値を出力SNに与えることができる。 センスアンプSA0は、制御信号SA0ENによって制御される。センスアンプSA1の回路構成はセンスアンプSA0と同じであり、一方の入力はSN、他方の入力は参照電圧VREFである。電源SAPとSANは、センスアンプSA0の電源である。制御信号SA1ENは、センスアンプSA1の制御信号である。センスアンプSA1の回路構成はセンスアンプSA0と同じであるが、プリチャージ信号のタイミングが異なるため、制御信号SA1PREが入力されている。センスアンプSA0の出力はSA0T、SA0Bであり、センスアンプSA1の出力はSA1T、SA1Bである。 センスアンプSA0は、VOUT<0>とVOUT<1>を入力としてその差分を増幅する。センスアンプSA1は、VOUT<0>とVOUT<1>をショートした信号と参照電圧VREFを入力としてその差分を増幅する。この構成によって、VOUT<0>へ出力されたナノ分子路0の塩基信号と、VOUT<1>へ出力されたナノ分子路1の塩基信号との間の大小関係を識別することができる。さらに、この2つの塩基信号の合計が、あらかじめ定めた参照電圧VREFに対して大きいか小さいかを判別することができる。 塩基信号の大きさがA>G>T>Cの順であるとすると、AとTは対をなした塩基であってA>Tの関係にあり、GとCは対をなした塩基であってG>Cの関係にある。センスアンプSA0は、ペアATとペアGCの各々について、ナノ分子路0とナノ分子路1のいずれを通過したかを判定する。センスアンプSA1は、この対が、A>G>T>Cの関係の下で、大きな信号同士の組み合わせであるA+Tであるのか、小さな信号同士の組み合わせであるC+Gであるのかを判定する。 図16は、本実施形態5に係る生体分子情報解析装置100の動作例を示す図である。プリチャージが終了するとプリチャージ制御信号PREが高レベルから低レベルとなり、プリチャージ回路PRECはプリチャージ電源から切り離される。次にナノ分子路の電極のドライバD0とD1を駆動する制御信号RENBが変化し、ナノ分子路の電極に電圧が印加される。ナノ分子路を通過する塩基に流れる電流に応じて出力VOUT<0>とVOUT<1>に接続されている容量Cが充電され、その電位が上昇する。図16では、VOUT<0>にVOUT<1>よりも大きな電流が流れ込み、電位上昇が大きい場合を示している。 VOUT<0>にVOUT<1>の変化は、センスアンプSA0の出力SA0TとSA0Bにも現れる。この段階でセンスアンプSA0に起動信号SA0ENが入力され、センスアンプSA0が動作し、SA0TとSA0Bの差分を増幅する。このときセンスアンプSA1では、プリチャージがプリチャージ制御信号SA1PREによって切られ、センスアンプSA0の出力が十分に得られたところで制御信号SA1ENが変化し、VOUT<0>にVOUT<1>をショートした信号が信号SNとなって、センスアンプSA1に入力される。センスアンプSA1は、信号SNと参照電圧VREFを比較し、その結果を増幅して出力SA1TとSA1Bとして出力する。 以上のような動作によって、センスアンプSA0はVOUT<0>とVOUT<1>の間の差分を増幅し、センスアンプSA1はVOUT<0>とVOUT<1>をショートした信号SNと参照電圧VREFとの間の差分を増幅する。これにより、塩基を精度よく識別することができる。 図17は、本実施形態5に係る生体分子情報取得装置100の動作例を示す図である。ここでは、実際の塩基に流れる電流の分布を模擬した電流分布を作成して本実施形態3に係る生体分子情報解析装置100の動作を回路シミュレーションによって模擬した結果を示す。Tの電流波形<I(T)>、Cの電流波形<I(C)>、Gの電流波形<I(G)>、Aの電流波形<I(A)>に対して、図16で説明したような所望の結果を得られたことが分かる。<実施の形態5:まとめ> 以上、本実施形態5では、実施形態4で説明した相補対を用いて塩基構成を特定する回路構成の具体例を説明した。本実施形態5によれば、実施形態4と同様の効果を発揮することができる。また、センスアンプSA0とSA1を用いて検出結果を増幅することにより、塩基を精度よく識別することができる。<実施の形態6> 図18は、本発明の実施形態6に係る生体分子情報解析装置100のナノ分子路周辺の構成を示す図である。本実施形態6では、実施形態4〜5で説明した構成に加え、DNAの2本鎖を解いて生成した一本鎖を再結合させる機能部を備えている。本実施形態6によれば、1組の塩基ずつ順番に2つのナノ分子路に入れることができる。一本鎖を再結合させる機能部として、酵素をDNA一本鎖に与える機能部が例として考えられる。<実施の形態7> 図19は、本発明の実施形態7に係る生体分子情報解析装置100の回路構成を簡略化した図である。図19において、電源Pは、ナノ分子路の電極T1とT2にバイアス電圧を与える。アンプAMPは、電極T2の出力を増幅するアンプであり、ベース接地トランジスタQを介した帰還回路を備え、非線形なログアンプとして構成されている。電極T2の出力は、広い分布を有し、対数帯域にいったん圧縮されてアンプAMPにより増幅される。対数帯域に圧縮してから増幅することにより、広い分布を有する信号であっても、高精度に増幅することができる。 図20は、図19の回路構成に積分回路を加えた回路図である。ここでは、AD変換器ADCと論理回路LOGICも併記した。図20に示す回路では、ナノ分子路の電極には容量Cとバイアス電流回路が接続されている。バイアス電流回路には信号B1が入力される。積分回路の出力は、ログアンプAMPに入力される。ログアンプAMPの出力は、AD変換器ADCによってアナログ信号からデジタル信号に変換される。論理回路LOGICは、塩基の種類を判定する。 図21は、図20のナノ分子路からログアンプAMPまでの回路構成例を示す図である。図21に示す構成では、IV変換(電流電圧変換)回路部分に、後述の一般的な閉ループを含むアンプは用いず、開ループの構成としている。 図21に示す回路構成は、ナノ分子路と増幅回路を、容量CS1とCS2によって分離し、差動アンプによって増幅するチョッパタイプのアンプを採用している。これにより、閉ループのための小さな値のフィードバック容量を備える必要がないため、回路を作成することが容易となる利点がある。 図21に示す回路は、ナノ分子路を含むBias/sampling部、微小信号を検出する1st stage、ログアンプを構成する2nd stageを有する。Bias/sampling部と1st stageの間は、容量CS1とCS2によって分離されている。 Bias/sampling部は、バイアス電圧を与える電源Vbias、電源Vbiasとナノ分子路の電極T1とT2との間の接続を制御するSW1を有する。端子N1とN2は、それぞれ容量CS1とCS2に接続されている。電流Iは、電極T1とT2の間を流れる電流である。 図21に示すBias/sampling部の構成の下では、ナノ分子路の電極T1とT2には1V程度のバイアス電圧をかける必要がある。この場合、後段の1st stageと2ns stageからなる差動アンプ回路の差動対には、1Vのバイアス電圧差が入力されることになる。入力差動対のバイアス電圧に1Vの差があると、入力差動対をともに特性のよい飽和領域で用いることが難しくなる。そこで、容量CS1とCS2によってBias/sampling部と後段を分離する回路構成とした。 容量C1とC2によって回路を分離することにより、ナノ分子路の電極T1とT2にバイアス電圧Vbiasをかけ、かつ後段の入力アンプのバイアス点を任意の電圧に設定することができるようになる。また、ナノ分子路の両電極を入力として差動アンプ構成としたことにより、微小電流信号の成分を倍にすることができる。さらには、後述のように、ナノ分子路はSiN等を用いて作成するため通常の回路プロセスと混載して作成することは難しく、ナノ分子路廻りと後段の回路は別チップとなる可能性があるが、この場合にも容量C1とC2によって回路を分離することにより、チップ間の影響を抑えることができるという利点がある。 1st stage部では、信号B11でバイアスされたMOSトランジスタM11が差動アンプの電流源となり、MOSトランジスタM12とM13が差動アンプの差動対となる。信号B12でバイアスされたMOSトランジスタM14とM15、ダイオード接続されたM16とM17は、差動対の負荷抵抗を構成する。1st stage部の出力端子はN3とN4である。 微小な電流を検出するIV変換回路においては、オフセットを抑制することが必要となる。特に、オフセット量がナノ分子路のトンネル電流の大きさに依存する場合、歪みが生じ読み出しエラー率の劣化につながる。本実施形態7では、スイッチSW1とSW2を用いて歪みを抑制する。まずスイッチSW1をオンにし、次にスイッチSW2をオンすることにより、バイアス電圧Vbiasに起因する歪みを抑制することができる。スイッチSW2は、入力差動対M12とM13の閾値ばらつきに起因するオフセットをキャンセルする役割を有する。 2nd stage部は、ログアンプAMPを構成する。信号B2でバイアスされたMOSトランジスタM21が差動アンプの電流源となり、MOSトランジスタM22とM23が差動アンプの差動対となる。MOSトランジスタM24とM25は、MOSのダイオード特性を利用するための差動対の負荷抵抗である。2nd stageの出力端子はOUT1とOUT2であり、後段のAD変換器ADCなどと接続される。 図22は、図21のBias/sampling部と1st stage部の動作例を示す図である。各部の動作は、リセット動作の期間と増幅動作の期間とからなる。 リセット動作期間では、まずスイッチSW1をオンし、次にSW2をオンする。Bias/sampling部の端子N1とN2にはバイアス電圧Vbiasが現れ、1st stage部のN3とN4における電位はほぼ等しくなる。 増幅動作期間では、端子N1とN2の電位は塩基を流れる電流によって変化する。この電位変化は、容量C1とC2による容量結合を介して、1st stage部の入力となる。リセット動作期間と同様に、まずスイッチSW1をオフした後にスイッチSW2をオフし、差動アンプAMPを動作させる。アンプAMPはN1とN2の差分を増幅し、出力N3とN4を出力する。以下、同様な動作を繰り返す。 以上、本実施形態7に係る生体分子情報解析装置100の構成と動作を説明した。以下では、本実施形態7の利点について、他の構成例と比較しながら説明する。 図23は、フィードバック容量を備えない開ループ構成の雑音特性と、フィードバック容量を備える閉ループ構成の雑音特性とを比較する図である。図23に示す特性例によれば、帯域100kHzにおける入力換算雑音は0.11pAとなる。別途計算した結果によれば、読み出しエラー率を0.1%以下とするためには入力換算雑音を0.12pA 以下とする必要があり、開ループ構成によればこれを達成できていることが分かる。 図24は、フィードバック容量を備える閉ループ構成のアンプを例示する図である。図24に示す閉ループ構成のアンプでは、IV変換回路を構成するためにオペアンプOPを用い、入力電流Iinを容量Cfに充電し、フィードバックを用いて出力電圧Voutに変換する。この構成では、帯域幅を100kHzとした場合、入力換算雑音を0.12pA以下に抑えるためにはフィードバック容量Cfを0.2fF以下にする必要がある。 しかし、例えば標準的な0.18umのCMOSプロセスで作成することができる最小のMIM容量は20fFであり、0.2fF以下の容量を作成することは現実的でない。微細プロセスを用いて小容量を作成することも考えられるが、CMOS部分においてゲートリーク電流が大きくなり、微小電流を検出することができなくなる。 図25は、2nd stage部の他の回路構成例を示す図である。図25に示す回路構成は、ダイオード接続した2段のpMOSを負荷とし、MOSのダイオード特性を利用して非線形に増幅を実施する。これにより、入力電圧対し非線形な特性を持つ出力電圧が得られる。 図26は、2nd stage部においてリニアアンプを採用した場合と、ログアンプを採用したとのそれぞれにおいて、塩基の読み分けエラー率と積分回数との間の関係を示す図である。ログアンプを用いることにより、読み分けエラー率を低く抑えるために必要な積分回数を大幅に減らすことができることが分かる。<実施の形態7:まとめ> 以上のように、本実施形態7に係る生体分子情報解析装置100は、2nd stage部においてログアンプを用いている。これにより、リニアアンプを用いる場合と比較して、積分回数を大幅に削減することができる。これに対して、リニアアンプを用いた場合、塩基毎のトンネル電流値が桁違いに異なるため、電流値が微小である塩基CやTの信号値が相対的に小さくなり、読み分けエラー率が劣化する傾向がある。そのため、リニアアンプを用いる場合は、微小電流を精度よく検出するために積分回数を増やす必要がある。本実施形態7では、非線形な特性を有するログアンプを用いて微小電流を検出することにより、積分回数を減らして装置の動作を高速化することができる。<実施の形態8> DNAを流れる微小なトンネル電流を計測するためには、直径2nm程度の微小なナノ分子路を用いる必要がある。このような微小な分子路を製造することは容易ではなく、その製造ばらつきは大きい。トンネル電流の絶対値はナノ分子路のポア径に大きく依存するため、得られる電流値はデバイス毎に異なる。また、プロセス、温度、電源電圧によってアンプのゲインはばらつく。したがって、ナノ分子路の製造ばらつき、アンプのゲインばらつきにより、得られるトンネル電流の値にはばらつきが生じる。 トンネル電流の値がばらつくと、期待される電流分布と実際に得られる電流分布との間にずれが生じ、読み分けエラー率が劣化する。したがって、塩基種類を正確に判定するためには、ナノ分子路の製造ばらつき、アンプのゲインばらつきに起因するトンネル電流値のばらつきの影響を除外する必要がある。 本発明の実施形態8では、得られるトンネル電流の絶対値やアンプのゲインが未知であっても、塩基の種類を精度よく判定することができる構成例を説明する。 図27は、本実施形態8における論理回路LOGICが実施する、塩基種別判定ロジックの構成を説明する図である。生体分子情報解析装置100のその他の構成については記載を省略した。図27(a)はロジックを実施するための機能ブロック図、図27(b)はロジックのフローチャートである。 図27(a)に示すように、論理回路LOGICは、検出したトンネル電流に対応する電流データを一旦メモリに蓄える。論理回路LOGICは、このデータを図27(b)のフローチャートに示すように電流値にしたがってソートし、ヒストグラムを作成しフィルタリングする。論理回路LOGICは、フィルタリングしたヒストグラムの形状が収束した後、その形状の極小値に基づき、4種の塩基を判別する閾値を設定する。閾値については後述の図28で説明する。論理回路LOGICは、この閾値にしたがって、メモリに蓄えられた電流値を用いて塩基の種類を判定する。 図28は、アンプのゲインエラー(ゲインばらつき)によって電流分布が変化する様子を示す図である。図28(a)はゲインエラーがない場合の電流分布、図28(b)はゲインエラーがある場合の電流分布を示す。 ナノ分子路の電極が検出した電流の頻度分布を作成すると、図62で説明したように分布が重なる部分が生じる。そこで、塩基種類を区別するため、各分布ピークを中心として分布を4種類に切り分ける必要がある。その切り分けのための電流閾値は、ゲインエラーがない前提で初期設定されている。この電流閾値が、図28(a)に示す閾値R10、R20、R30であったと仮定する。 しかし、アンプにゲインエラーが生じている場合、計測結果として得られる電流分布にずれが生じ、図28(b)に示すように4種類の分布の境界部分が初期の想定とは異なる位置に生じる。この状態で初期閾値R10、R20、R30をそのまま用いると、塩基種類を適切に読み分けることができない。 そこで本実施形態8において、論理回路LOGICは、ゲインエラーが生じているか否かを見極めるため、ナノ分子路の電極から受け取った電流値をいったんメモリに蓄積し、電流分布ヒストグラムを作成する。ゲインエラーが生じている状態で電流分布を作成すると、初期閾値に対応する頻度値が想定とは異なるので、ゲインエラーが生じていることが分かる。論理回路LOGICは、例えば頻度値が十分に小さくなる位置に電流閾値を再設定することにより、ゲインエラーを加味した電流閾値を改めて設定することができる。 なお、図28に示す電流分布のずれは、これを積分した結果にも表れる。そこで、積分結果に基づき塩基種類を判定するための参照電圧VREFも、図28と同様に調整することができる。<実施の形態8:まとめ> 以上のように、本実施形態8に係る生体分子情報解析装置100は、ナノ分子路の電極が検出する電流値を記憶装置に蓄積し、電流分布を4種類に切り分けることができる電流閾値を、蓄積されている電流値にしたがって調整する。すなわち、アンプのゲインエラーやナノ分子路の製造ばらつきが生じている可能性に鑑み、電流値が得られた時点で即座に塩基種類を読み分けるのではなく、ある程度測定結果が蓄積された時点で読み分けを実施する。これにより、ゲインエラーなどが生じている場合でも、電流分布から塩基種類を読み分けるための電流閾値を、実際の検出結果に応じて自動調整することができる。<実施の形態9> 実施形態8で説明したように、ナノ分子路から得られるデータは、プロセス、温度、電圧などの影響により、アンプゲインなどの性能が変動する。これにより、実際の塩基電流の分布とあらかじめ準備した閾値との間の対応関係がずれ、塩基種類を誤判定する可能性がある。また、ナノ分子路は極小であるため、製造ばらつきが大きい場合がある。さらには、DNA鎖がナノ分子路を通過することにより、ナノ分子路が劣化し特性が変化することが知られている。 実施形態8では、測定結果自体はそのまま受け入れ、後段の塩基種類を読み分ける処理において電流閾値を調整することにより、塩基種類を適切に読み分けることを図った。本発明の実施形態9では、測定結果を較正することにより、塩基種類を適切に読み分ける構成例を説明する。 図29は、本実施形態9に係る生体分子情報取得装置100の論理回路LOGICが実施する処理を説明する処理ブロック図である。較正処理に係る部分以外の構成については記載を省略した。 論理回路LOGICは、図29(a)に示すように、まずナノ分子路に対する入力がない状態でナノ分子路の電極信号を読み出し、これをAD変換器でデジタル信号に変換し、その結果をレジスタに格納しておく。この時点でレジスタに格納されるデータには、測定に用いるナノ分子路の特性、媒質、温度などの情報が含まれることになる。 論理回路LOGICは、ナノ分子路に対して塩基が入力されると、図29(b)に示すように、実際の塩基からの信号を測定した後、レジスタに格納されている情報を用いて、ナノ分子路に対する入力がない状態におけるばらつき成分を補正する。これにより、ナノ分子路の特性、媒質、温度などによって生じるばらつき成分を実際の測定結果から除去することができる。以上の処理により、プロセス、温度、電圧などに起因するばらつきが生じても、塩基種類を精度よく判定することができる。 図29(a)(b)に示す処理は時系列で実施してもよいし、同時に実施してもよい。同時に実施する場合は、各処理においてレジスタを共用するか、またはレジスタ内の領域を各処理用に分割しておいて処理が済んだ順にデータを転送するとよい。 図30は、較正処理を実施するその他の構成例を示す図である。論理回路LOGICが実施する処理は図29と概ね同様であるが、実際の塩基を測定する前に参照入力をナノ分子路へ入力する点が異なる。 論理回路LOGICは、図30(a)に示すように、配列が分かっている塩基を参照入力としてナノ分子路に入力して電流を測定する。図30(a)に示す例では、塩基Aが4つ続き、その後塩基Gが4つ続いている。参照入力とする塩基は、4種の塩基がそれぞれある個数連続するもの、ATGCのような決まった順番が周期的に繰り返すものなどが適している。ここで得られた測定データには、測定に用いるナノ分子路の特性、媒質、温度などの情報も含まれることになる。 論理回路LOGICは、ナノ分子路に対して塩基が入力されると、図29(b)と同様の処理を実施する。これにより、図29と同様にばらつきを除去することができる。 図31は、参照入力とする塩基の別構成例を示す図である。図31(a)に示すように配列が分かっている塩基を参照部分として、検査対象である塩基の前に付加しておくこともできる。図31(b)は較正処理に係る処理部の構成である。<実施の形態9:まとめ> 以上のように、本実施形態9に係る生体分子情報解析装置100は、ナノ分子路の電極が出力する塩基電流を較正し、その結果を用いて塩基種類を判定する。これにより、ナノ分子路の特性などによって生じるばらつきの影響を除去し、塩基種類を精度よく判定することができる。<実施の形態10> 本発明の実施形態10では、ナノ分子路の構成を工夫することによって、塩基判定を高速化、高精度化する構成例について説明する。 図32は、本実施形態10におけるナノ分子路の構成を示す図である。本実施形態10では、ナノ分子路に複数組の電極を配置し、さらに2種類の電極を備えている。電極T11とT12、T21とT22、T31とT32は、塩基に流れる電流を検出する電極組である。電極S11とS12、S21とS22、S31とS32は、DNA鎖をナノ分子路内部で搬送するために用いる電極である。 検出電極を複数設けることにより、複数の異なるバイアス電圧を用いた電流を同時に得ることができる。塩基からの電流は、ATGCの塩基毎に異なった電圧依存性を持つ。複数の異なるバイアス電圧を用いた電流を同時に取得することにより、塩基を読み分ける精度を向上させることができる。 また、パルスを用いて測定を実施する場合、そのパルス幅も検出結果に影響を与え、ATGCの塩基毎に異なった依存性を持っている。すなわち、電流応答の周波数特性が塩基毎に異なっているのである。複数の電極を用いることにより、異なるパルス幅を用いて計測を同時に実施し、その検出結果を同時に取得することができる。これにより、塩基を読み分ける精度を向上させることができる。 例えば電極S21とS22には、電極S11とS12の組および電極S31とS32の組とは逆の電圧を与えることができる。これにより、電極S21とS22に電気的なポテンシャルの井戸を作ることができる。各塩基は電気的な性質を持っているので、この電気的なポテンシャルの井戸に特定の塩基を挟み込み、塩基の流れを制御することができる。 その他、図示していない他の電極を用いて大域的な電界をかけることによって、塩基の進行を制御することもできる。上述の電気的なポテンシャルを用いた挟み込みと併用することによって、DNA鎖の塩基を、例えば1つずつ搬送することもできる。 なお、ここでは説明のために、2種類の電極を分けて配置したが、いくつかの電極はこの2種類の機能を兼ねたものとすることもできる。<実施の形態10:まとめ> 以上のように、本実施形態10に係る生体分子情報取得装置100は、複数の電極を用いてDNAの流れを詳細に制御することにより、DNA鎖の塩基を読み分ける精度や速度を向上させ、また、DNA鎖の搬送を所望通りに制御することができる。<実施の形態11> 図33は、本発明の実施形態11におけるナノ分子路の構成例を示す図である。ここでは、貫通穴として形成されたナノ分子路の周辺に、複数方向を向いた電極を配置した例を示した。 図33(a)では、ナノ分子路に対して、電極T11とT12の組に対して垂直な方向に、電極T21とT22の組を設けている。これにより、2つの方向の電流信号を同時に得ることができる。図33(b)では、電流信号を得る電極T11とT12の組に対して垂直な方向に、DNA鎖の塩基を搬送するための電極S11とS12とを配置している。これにより、電極S11とS12を用いて、塩基より大きな信号が得られる電界を与え、そのときの電流信号を得ることができる。 図34は、貫通穴として形成されたナノ分子路の穴の深さ方向に電極を複数配置した構成例を示す図である。図34のナノ分子路中の矢印の向きにDNAを進ませると、電極S11とS12、電極S21とS21はそれぞれ対となって、またはこの4つが1組となって電圧を印加し、ナノ分子路中のDNA鎖、およびDNA鎖に繋がる塩基に電界を与え、DNA鎖の方向、向き、ナノ分子路の中心に対する位置や傾き、または運動を制御することができる。DNAの進行方向の下流側に、塩基に流れる電流を検知する電極T11とT12が配置されている。 図35は、DNA鎖を搬送するために用いる電極を深さ方向に複数設けた構成例を示す図である。図35において、深さ方向に、DNA鎖を搬送するために用いる電極S11とS12、S21とS22、S31とS32を配置している。さらに、その上流側または下流側に、塩基に流れる電流を検出する電極T11とT12が配置されている。 図36は、図35に示すナノ分子路内に形成される電圧を示す図である。例えば、電極S21とS22には、電極S11とS12の組および電極S31とS32の組とは逆の電圧を与えることにより、電極S21とS22に電気的なポテンシャルの井戸を作ることができる。これにより、実施形態10で説明したDNA鎖を搬送する効果と同様の効果を発揮することができる。 図37は、塩基に流れる電流を検出する電極の他構成例を示す図である。このナノ分子路は、基板に開けられた穴として形成してもよいし、基板上の空隙や通路として形成してもよい。 図37に示す例では、塩基に流れる電流を検出する電極T11とT12、T21とT22、T31とT32の厚みがそれぞれ異なる。ここでは、各電極の厚さをそれぞれ、5nm、7nm、9nmとしている。 図37に示す構成例によれば、製造技術上または電気的な特性上もしくは信頼性の特性上、例えば厚み2nmの電極を単独で作成するのが難しい場合でも、各電極の厚み差によって、2nmの電極と等価なデータを得ることができる。すなわち、厚さ5nmの電極T11とT12のデータを得て、その所望の時間後、厚さ7nmの電極T21とT22のデータを得ると、その差分が、厚さ2nm分の電極を用いて得たデータと等価となる。電極の種類数は任意でよい。電極の前後または間に、DNA鎖の搬送を制御するための電極を設けることもできるし、電極T11〜T32が搬送制御を実施してもよい。<実施の形態11:まとめ> 以上のように、本実施形態11に係る生体分子情報解析装置100は、ナノ分子路の周囲に電極を複数配置し、各電極にそれぞれ異なる役割を持たせることができる。これにより、ナノ分子路内におけるDNA鎖の動きを詳細に制御したり、塩基電流を精度よく検出したりすることができる。<実施の形態12> 図38は、本発明の実施形態12におけるナノ分子路の構成例を示す図である。本実施形態12では、塩基に流れる電流を検出する電極T11〜T52に、各塩基と反応する特定の金属または高分子D1〜D5を付加している。D1〜D5は、特定の塩基または複数の塩基と特に反応し、または流れる電流を増加させる物質である。図38に示す構成例によれば、特定の塩基に対して良好に反応する電極を設けることができるので、塩基種別をより精度よく判定することができる。 図39は、図38に示した物質D1〜D5の例を示す図である。ここでは、ナノ分子路中の一対の電極の断面を示している。実際には、電極は紙面に対して垂直方向に延びている。ナノ分子路は、基板に開けた穴として形成されている場合もあるし、2つの電極を基板上に狭い隙間を空けて配置することによって形成した場合もある。 図39に示す例では、塩基と反応する特定の金属または高分子を、電極T11とT12に対する修飾層D11、D12と呼んでいる。電極T11とT12は、例としてAuで形成されているものとした。物質D11とD12は特定の塩基と水素結合しやすい高分子の例である。CNはこの高分子と金属電極とが結合しやすいように挿入された原子または分子である。 物質D11またはD12と結合しやすい塩基がナノ分子路を通ると、この塩基と物質D11またはD12が一時的に結びつくため大きな電流が流れる。これにより、電極の傍にある塩基の種類を特定することができる。修飾層D11とD12が同じ物質であれば、ナノ分子路中の塩基の向きや場所に強く依拠することなく、大きな塩基電流を得ることができる。 図40は、修飾層D11とD12が異なる物質で構成されている例を示す図である。この場合は、特定の順番で塩基が連続した場合に大きな電流を得ることができる。また、いずれか片方のみの塩基を特定すればよい場合にも、図40に示す構成は有効である。さらには、電極T11とT12の両方に複数の塩基種と反応し易い修飾層を設けることもできる。この場合は、例えば連続した塩基の配列パターンが修飾層の配列と一致したときに、大きな塩基電流を得ることができる。 図41は、ナノ分子路に対して複数個の電極および修飾層を設けた例を示す図である。電極の前後または間に、DNA鎖の搬送を制御するための電極を設けることもできる。図41では、電極T11とT12の組に設けられた物質D1と、電極T21とT22の組に設けられた物質D2が異なっている。物質D1とD2は、検出しやすい塩基がそれぞれ異なる。例えば4種の塩基ATGCのそれぞれに対応させた4組の電極を設けてもよい。 図41では、片側の電極T12とT22にのみ物質D1とD2をそれぞれ設けたが、電極T11とT21の側にも設けてよい。さらには、図40に示すように対をなす電極がそれぞれ異なる修飾層を備えるようにしてもよい。 図42は、対になる電極の片側を共通電極とした構成例を示す図である。ここでは、電極T1とT2それぞれの対になる電極は、共通電極T0である。ナノ分子路の構造によっては、共通電極を用いるほうがナノ分子路を構成しやすい場合もあるので、そのような場合には図42に示す構成が有効である。<実施の形態12:まとめ> 以上のように、本実施形態12に係る生体分子情報解析装置100は、特定の塩基と反応しやすい物質を電極に配置している。これにより、塩基種類を精度よく判定することができる。<実施の形態13> 図43(a)(b)は、バイアス電圧が0.1Vである場合と1Vである場合における塩基電流の分布を示す図である。塩基ATGCの種類によって、その中心電流値(μ)、分布の半値幅(σ)がそれぞれ異なる。 図44は、塩基電流の分布が温度によって変化する様子を示す図である。図44(a)は中心電流値(μ)の変化例、図44(b)は分布の半値幅(σ)の変化例を示す。さらには、測定に用いるパルス幅や交流周波数によっても塩基電流の分布は異なる。 図45は、塩基電流出力が最大となる電圧周波数を示す図である。図46は、塩基電流出力が最大となる電圧周波数が塩基種類毎に異なる様子を示す図である。図46に示すように、中心電流値(μ)、分布の半値幅(σ)のパルス幅、交流周波数への応答は、塩基毎に異なった値となる。 図43〜図46によれば、塩基種類の違いによって、検出結果に様々な形態の差異が生じることが分かる。生体分子情報解析装置100は、図43〜図46で説明した塩基毎の差異を積極的に利用し、電極の配置や印加電圧を決め、電流を積分し、高感度なアンプを設けるようにすることができる。<実施の形態14> 本発明の実施形態14では、生体分子情報解析装置100の具体的な構成例について説明する。これまでの実施形態で説明した構成については適宜説明を省略する。 図47は、ナノ分子路と電極の配置関係例を示す図である。ナノ分子路の両側には塩基に流れる電流を検出する電極T1とT2が配置されている。電極T1とT2には、測定のためにバイアス電圧を印加するバイアス電源が接続されている。電極M1とM2は、ナノ分子路にDNA鎖を通し運動させるための電界を印加する。図47では示していないが、DNA鎖の移動を詳細に制御するために、実施形態11で説明した電極S11、S12などを設けることもできる。 図48は、図47のナノ分子路部分を切り出した図である。図48(a)に示すナノ分子路は、図48(b)に示すように複数個配置することができる。ナノ分子路を複数設けることにより、並列で複数のDNA鎖の塩基列を判別することができるので、処理が高速となるという利点がある。図48(b)に示す構成において、図47における電極M1とM2は各ナノ分子路に対して共通としてもよいし、ナノ分子路毎に設けてもよいし、複数のナノ分子路毎に設けてもよい。 図49は、図47に示すナノ分子路と電極部分の断面図である。101と108は測定するDNA鎖と溶媒を収めた容器であり、M1とM2とに電界をかけて、101から108へ、または108から101へ、ナノ分子路を通してDNA鎖を移動させる。電極T1とT2を形成するために、例えばSiで形成されたベース部分104の上下にSiN膜103と105を形成し、SiN膜105の上部にT1とT2の一部となる金属層を取り付ける。金属層をコート層106でコートし、さらにその上部を装置に合わせた材料層107で覆っている。コート層106と材料層107の一部を掘り出して、電極T1とT2の金属層部分を取り出す。SiN膜103の下部は、コート層102で覆われている。 図50は、ナノ分子路の周辺装置の構成を示す図である。図49に示す電極T1およびT2と電極M1およびM2は、必要最小限の回路C1とインタフェース回路IO1を備えた装置NPHに接続されている。回路C1は、電極T1とT2に与えるバイアス電圧の最終段とその印加回路、電極M1とM2に電圧を印加および制御する回路、電極T1とT2の間に流れる電流を検知するための初段回路などを含む。 図51は、装置NPHの周辺装置の構成を示す図である。装置NPHは、生体分子情報解析装置100の主要部を構成する装置NPBにインタフェースを介して接続される。装置NPHを生体分子情報解析装置100のヘッド部分と呼ぶ。 装置NPBは、塩基の種類を判定する回路LC1がインタフェースIO2を介して配置されている。メモリMEM1は、必要なデータを蓄積する。装置NPBは、インタフェースIO3を介して、操作端末PCに接続される。操作端末PCは、インタフェースIO3を介して、装置NPBや装置NPHの動作を制御する。 図52は、ヘッド部分である装置NPHを装置NPBから取り外し可能にした構成例を示す図である。図52に示す例において、装置NPBは複数のヘッド部分NPH1、NPH2、NPH3などと接続することができる。各ヘッド部分NPH1、NPH2、NPH3は同じ機能を有するが、各々を識別することができるIDを格納するメモリを備えている。装置NPBまたは操作端末PCは、ヘッド部分のIDを読み取り、管理することができる。ヘッド部分はIDを有するため、DNA鎖の塩基の特定を実施した後、装置NPBから分離して清掃、回収し、装置NPBとは異なる場所で清掃・再生、または破棄することもできる。DNA鎖の塩基情報は遺伝情報であり、その人に固有の情報であるため、ヘッド部分を取り外す機能は、情報保護の観点から極めて重要である。 図53は、生体分子情報解析装置100が備える回路基板の構成例を示す図である。図53に示す構成例では、生体分子情報解析装置100はレイヤ1〜レイヤ3の3層からなる。レイヤ1は、DNA鎖の電流を読みDNA鎖の搬送を制御するセンサ、駆動電極、これらの制御回路などを含む。レイヤ2は、塩基電流を積分して増幅する回路などのアナログ回路を含むフロントエンド部分である。レイヤ3は、フロントエンド部分からの信号を蓄え、判定のための閾値を制御し、実際の塩基列のデータへと変換する信号処理プロセッサ部分である。これら各層はある程度独立した機能を持っているため、例えば異なるチップまたは異なる回路基板上に構成することができる。各層の間は電気的に接続される。 図54は、図53に示す各レイヤを着脱可能に構成した例を示す図である。図54に示す例では、レイヤ1を着脱可能とした例を示した。これにより、DNA鎖解析を所定回数実施する毎に、または特定の対象者の解析が終るたびに、レイヤ1を交換することができる。レイヤ毎に交換することにより、回路基板全体を交換するよりも安価となる。さらには、DNA鎖の塩基配列の情報はそのDNAを所有する個人の情報であるので、その情報が他の人の情報と混載することを阻止できる。また、特定の設備を有する機関でレイヤ1を回収し、再使用できるように再生することもできる。 図55は、着脱可能な部分の他構成例を示す図である。着脱可能な部分には多くのバリエーションが考えられる。例えば図55に示すように、3つのレイヤの寸法がそれぞれ異なり、各レイヤを着脱するための箇所を設けるように構成することができる。 図56は、ナノ分子路として貫通穴を用いる場合の構成例を示す図である。この場合、図56に示すように、レイヤ2とレイヤ3を貫通させた着脱箇所を設けることができる。 図56は、図53〜図56で説明した各レイヤ間を電気的に接続するため、シリコン貫通ビア(TSV)を用いた構成例を示す図である。シリコン貫通ビアを用いると、寄生素子の影響を小さくすることができる。 図57は、シリコン貫通ビアの構成を示す図である。図57(a−1)は、シリコン貫通ビアの断面図、図57(a−2)は鳥瞰図である。図57(a−2)のA1−A2断面図が図57(a−1)である。これらの図に示すように、シリコン貫通ビアは、シリコン基板Siを貫通させた金属の接続部分によって構成されている。 図56(b)に示すように、端子T11、T21、T12、T22との信号電流のやり取りを、信号用のTSVを用いて実施する。 図56(c)は、信号用TSVを囲むようにしてシールド用TSVを配置した構成例を示す図である。これにより、他からの雑音の影響を小さくし、微小電流に対するノイズの影響を抑えることができる。シールド用TSVは、接地電源などに接続される。この構成であれば、シールド用TSVによって、外部の雑音電磁界が信号用TSVへ与える影響を小さくすることができる。<実施の形態14:まとめ> 以上のように、本実施形態14に係る生体分子情報解析装置100は、ナノ分子路、ナノ分子路を駆動する回路、および容器部分をヘッド部分として構成し、ヘッド部分と信号解析部分を分離できるようにしている。ヘッド部分にIDを記憶させることにより、ヘッド部分を使用した後にヘッド部分を分離して清掃、回収し、装置部分とは異なる場所で清掃・再生、または破棄することもできる。 T1、T2、T11〜T32:電流測定用電極、IT1:積分回路、CM:判定回路、SA、SA0〜SA2:センスアンプ、VREF:参照電圧、OP1:オペアンプ、VPRE:プリチャージ電圧、CPRE:プリチャージ回路、VOUT:出力、PREB:プリチャージ制御信号、RVGEN:バイアス電圧印加回路、VREAD:バイアス用電圧、RV:バイアス電圧、D1:ドライバ回路、SAO<0>〜SAO<2>:センスアンプ出力、SE<0:2>:センスアンプ制御信号、LOGIC:論理回路、RO<0>〜 RO<1>:論理回路出力、S11〜S32:塩基制御用電極、A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン。 生体分子を通過させる分子路を形成する第1および第2電極と、 前記分子路を前記生体分子が通過するとき前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加する電圧印加回路と、 前記電圧印加回路が前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加することによって流れる電流を積分する積分回路と、 前記積分回路の積分結果を所定の参照値と比較することにより前記生体分子の構成を識別する比較回路と、 を備え、 前記生体分子はDNA分子であり、 前記分子路は、 前記DNA分子を形成する2本鎖のうち1本を通過させる第1分子路と、 前記DNA分子の2本鎖のうち他方を通過させる第2分子路と、 を有し、 前記積分回路は、 前記第1分子路を通過する前記DNA分子と前記第2分子路を通過する前記DNA分子それぞれについて前記積分を実施し、 前記比較回路は、 前記第1分子路を通過する前記DNA分子と前記第2分子路を通過する前記DNA分子それぞれについて、前記積分回路の積分結果を前記参照値と比較することにより、前記第1分子路を通過する前記DNA分子と前記第2分子路を通過する前記DNA分子それぞれの塩基を個別に特定する ことを特徴とする生体分子情報解析装置。 前記積分回路は、 積分を開始してから所定時間が経過した以降の時点において、前記生体分子を構成する分子の種類毎に異なる前記積分結果を出力し、 前記比較回路は、 前記積分回路が積分を開始してから前記所定時間が経過した以降の時点で前記積分回路の積分結果を取得し、 前記積分結果が前記参照値に達するまでの積分回数または積分時間に基づき、前記生体分子を構成する分子の種類を識別する ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記比較回路は、 前記第1分子路または前記第2分子路を通過した前記DNA分子の塩基を特定した後、その相補対となる塩基を特定することにより、他方の塩基を特定する ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記積分回路の積分結果の対数に比例する電圧値を出力する対数変換回路を備え、 前記比較回路は、前記対数変換回路の出力と前記参照値を比較する ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極と、前記積分回路とを容量結合によって接続するキャパシタを備えた ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記積分回路の積分結果を蓄積するメモリと、 前記メモリに蓄積された前記積分結果を用いて前記参照値を調整する回路と、 を備えたことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極が出力する電流を較正する較正回路を備え、 前記積分回路は、 前記生体分子が前記分子路を通過していない状態で前記積分を実施してその積分結果をメモリに格納し、 前記較正回路は、 前記生体分子が前記分子路を通過している状態で前記積分回路が前記積分を実施した結果を、前記メモリに格納されている前記積分結果を用いて較正する ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極とともに前記分子路を形成する第3および第4電極と、 前記第3および第4電極を制御する制御回路と、 を備え、 前記制御回路は、 前記第3および第4電極に印加する電圧を調整することによって、前記分子路を通過する前記生体分子に印加する電界を調整し、その電界を用いて、前記分子路内における前記生体分子の運動を制御する ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極は、前記分子路に沿って複数配置されており、 前記第1および第2電極からなる電極組のうち少なくとも1つは、他の前記電極組の厚さとは異なるように形成されている ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極には、前記分子路を通過する前記生体分子に対して選択的に反応する物質が付加されている ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極は、前記分子路に沿って複数配置されており、 前記第1および第2電極からなる電極組のうち少なくとも1つに付加されている前記物質は、他の前記電極組に付加されている前記物質とは異なる ことを特徴とする請求項10記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極を実装した分子路基板は、前記生体分子情報解析装置から着脱自在に構成されている ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。 前記第1および第2電極を実装した分子路基板を識別する識別子を記録する記録部を備えた ことを特徴とする請求項12記載の生体分子情報解析装置。 前記生体分子は、鎖状に接続されたDNA塩基のいずれかである ことを特徴とする請求項1記載の生体分子情報解析装置。