生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_シアノ酢酸エステルの製造方法
出願番号:2013505972
年次:2015
IPC分類:C07C 253/30,C07C 255/19,C07B 61/00


特許情報キャッシュ

相宮 良一 平岩 明彦 JP 5794296 特許公報(B2) 20150821 2013505972 20120321 シアノ酢酸エステルの製造方法 東亞合成株式会社 000003034 相宮 良一 平岩 明彦 JP 2011063778 20110323 20151014 C07C 253/30 20060101AFI20150928BHJP C07C 255/19 20060101ALI20150928BHJP C07B 61/00 20060101ALN20150928BHJP JPC07C253/30C07C255/19C07B61/00 300 C07C 253/30 C07C 255/19 C07B 61/00 CAPLUS/REGISTRY(STN) 特開平06−157446(JP,A) 特表2002−536352(JP,A) 特開平04−091069(JP,A) 特開平09−188657(JP,A) 特開平08−143528(JP,A) 特開2000−229930(JP,A) Tetrahedron Letters,1998年,Vol.39,p.8563-8566,Table 2, Entry 7 Advanced Synthesis & Catalysis,2005年,Vol.347, No.11-13,p.1547-1552,Scheme 3 6 JP2012057099 20120321 WO2012128265 20120927 12 20140121 品川 陽子 本発明は、医薬及び農薬の中間体、並びに工業製品の中間体として有用なシアノ酢酸エステルの製造方法に関する。本発明において、シアノ酢酸エステルとは、一般式NCCH2COOR(式中、Rは炭素数1〜10の、直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び式−C2H4−O−R1(式中、R1は炭素数1〜8の、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基)からなる群より選ばれる基を示す)で表されるシアノ酢酸エステルを意味する。 従来、シアノ酢酸エステルの製造方法としては、シアノ酢酸とアルコールとを酸触媒存在下で、脱水エステル化反応させる方法が一般的である。例えば、特許文献1には、シアノ酢酸、ネオペンチルアルコール、硫酸及びトルエンを還流下に反応させ、生成水を共沸下に除去して、ネオペンチルα−シアノアセテートを製造したことが記載されている。また、特許文献2には、シアノ酢酸とC4〜C10アルカノールとを水性媒体中で、酸触媒の存在下、C4〜C10アルカノール/水共沸混合物を分離しながら反応させてC4〜C10アルキルシアノアセテートを製造する方法が記載されている。更に、特許文献3には、水性媒体中のエステル化反応において、当該エステル化がトルエン等の不活性共留剤の存在下に行われ、反応の間に、水と共留剤を蒸留除去する方法が記載されている。特開平4−91069号公報特開平6−157446号公報特開平9−188657号公報 しかしながら、特許文献1〜3に開示されるようなシアノ酢酸エステルの製造方法では、シアノ酢酸エステルの収率が低いという問題がある。また、特許文献1及び3に開示されるような製造方法では、有機溶剤としてトルエンを使用することから、副生成物が多く発生することや、毒性が強いという問題がある。また、特許文献2に開示されるような製造方法では、エステル化のために多量のアルコールを使用する必要があるという問題がある。 本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、シアノ酢酸エステルの収率が高く、副生成物の発生が少ないシアノ酢酸エステルの製造方法を提供することにある。 本発明者らは、シアノ酢酸とOH基を有する有機化合物とを有機溶剤中でエステル化反応させることによりシアノ酢酸エステルを製造する方法において、前記有機溶剤として、シアノ酢酸の溶解度が特定量以上である第一溶剤と、実質的に水に不溶である第二溶剤とを併用することにより、エステル化反応が効率的に進行し、シアノ酢酸エステルの収率が向上することを見出した。 すなわち、本発明は以下の通りである。1.シアノ酢酸と一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10の、直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び式−C2H4−O−R1(式中、R1は炭素数1〜8の、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基)からなる群より選ばれる基を示す)で表わされる有機化合物とを、前記有機化合物以外の有機溶剤中でエステル化反応させることによりシアノ酢酸エステルを製造する方法において、前記有機溶剤は、25℃におけるシアノ酢酸の溶解度が1[g/100g−溶剤]以上である第一溶剤と、25℃において実質的に水に不溶である第二溶剤から実質的に構成されることを特徴とするシアノ酢酸エステルの製造方法。2.上記第一溶剤の溶解度パラメーターが、6.0〜10.0であることを特徴とする上記1に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。3.上記シアノ酢酸1モルに対して、上記第一溶剤を20〜300質量部用いることを特徴とする上記1又は2に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。4.上記シアノ酢酸1モルに対して、上記第二溶剤を20〜150質量部用いることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。5.上記第一溶剤と第二溶剤の質量比(第一溶剤/第二溶剤)が、0.5〜3.0であることを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。6.上記有機化合物量が、シアノ酢酸1モルに対し、1〜2倍モルであることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。 本発明に係るシアノ酢酸エステルの製造方法は、上記一般式ROHで表される有機化合物以外の有機溶剤として、シアノ酢酸の溶解度が特定量以上の第一溶剤と、実質的に水に不溶である第二溶剤とを併用して、シアノ酢酸のエステル化反応を行う。この製造方法は、反応系内が均質であることや、エステル化により生成する水を分離し易いため、エステル化反応が効率的に進行し、結果としてシアノ酢酸エステルの収率が向上する。また、この製造方法によれば、マロン酸エステル等の副生成物の発生を抑制することもできる。 本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。 本発明に係るシアノ酢酸エステルの製造方法は、シアノ酢酸と一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10の、直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び式−C2H4−O−R1(式中、R1は炭素数1〜8の、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基)からなる群より選ばれる基を示す)で表される有機化合物とのエステル化反応を、該有機化合物以外の有機溶剤中で行う。詳しくは、この有機溶剤は、25℃におけるシアノ酢酸の溶解度が1[g/100g−溶剤]以上である第一溶剤と、25℃において実質的に水に不溶である第二溶剤とから実質的に構成される。有機溶剤が上記第一溶剤と上記第二溶剤とから「実質的に構成される」とは、有機溶剤が上記第一溶剤と上記第二溶剤の2成分から大部分構成されるが、上記エステル化反応に影響を与えない量の第3の溶剤成分を含有することは許容されることを意味する。なお、本発明で使用する有機溶剤は、原料であるシアノ酢酸及び上記一般式ROHの化合物に対して不活性な溶剤を意味する。1.一般式ROHで表される有機化合物 本発明に用いられる一般式ROH(式中、Rは炭素数1〜10の、直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基及び式−C2H4−O−R1(式中、R1は炭素数1〜8の、直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基、直鎖状又は分岐鎖状の不飽和炭化水素基、脂環式炭化水素基又は芳香族炭化水素基)からなる群より選ばれる基を示す)で表される有機化合物は、具体的には、脂肪族アルコール類、脂環族アルコール類、芳香族アルコール類、及びセロソルブ類からなる群より選択されるものであり、エステル化反応の原料となるものである。上記Rで表わされる基の炭素数は1〜10である。また、上記R1で表わされる基の炭素数は1〜8である。前記有機化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−エチルブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−デカノール、1−ノナノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、アリルアルコール、2−メチル−2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、2−メチル−4−ペンテン−1−オール、2−エチル−4−ペンテン−1−オール、2−エチル−5−ヘキセン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、2−(シクロヘキシルオキシ)エタノール、2−プロポキシエタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−イソブトキシエタノール、エチルブチルセロソルブ、2−t−ブトキシエタノール、及びエチレングリコールモノヘキシルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、シアノ酢酸の溶解度が高いことから、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、2−メトキシエタノール及び2−エトキシエタノールであることが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールであることがより好ましい。シアノ酢酸の溶解度が高い有機化合物の場合は、反応系が均質になり、エステル化反応に有利となる。 上記有機化合物量は、シアノ酢酸1モルに対し、1〜2倍モルであることが好ましく、1.1〜1.8倍モルであることがより好ましく、1.2〜1.6倍モルであることが更に好ましい。有機化合物量が、1倍モル未満では、未反応のシアノ酢酸が残存することとなり、シアノ酢酸エステルの収率が向上しない。一方、2倍モルを超えると、製造コストが高くなる場合がある。2.第一溶剤 本発明に用いられる第一溶剤は、上記一般式ROHで表される有機化合物以外の有機溶剤であり、かつ、25℃におけるシアノ酢酸の溶解度が1[g/100g−溶剤]以上である有機溶剤である。 上記第一溶剤は、25℃におけるシアノ酢酸の溶解度が1[g/100g−溶剤]以上(通常200[g/100g−溶剤]以下)であることが必要である。当該溶解度は10[g/100g−溶剤]以上であることが好ましく、20[g/100g−溶剤]以上であることがより好ましい。溶解度が1[g/100g−溶剤]未満では、シアノ酢酸が実質的に第一溶剤に溶解せず、反応系が不均質となるため、結果としてシアノ酢酸エステルの収率が向上しない。 なお、上記溶解度は、溶剤100gに溶解するシアノ酢酸の質量を表しており、測定方法は後述する。 上記第一溶剤の溶解度パラメーター(以下、「SP値」ともいう)は、6.0〜10.0であることが好ましく、6.5〜9.5であることがより好ましく、7.0〜9.5であることが更に好ましい。SP値が6未満では、シアノ酢酸の溶解性が劣る傾向にあるため、エステル化の反応の場が不均質となり、例えば、シアノ酢酸の溶解度が高いアルコール等をより過剰に使用するなどしないと良好なエステル化反応を進めることが難しくなる。一方、SP値が10を超えると、一般式ROHで表される有機化合物との親和性がよくなり、エステル化の際の脱水還流による留出水に、水と共に前記有機化合物の留出が多くなる。よって、エステル化反応が進みにくくなる場合がある。 本発明におけるSP値(δ)は、次式によって計算したものである。 SP値 δ={(△H−RT)/V}1/2 δ :SP値((cal/ml)1/2) △H:モル蒸発熱(cal/mol) R :気体定数(1.9871cal/mol・K) T :絶対温度(K) V :モル体積(ml/mol) また、混合系のSP値は、 δmix=Σ(φi・Vi・δi)/Σ(φi・Vi) δi :溶剤iのSP値 φi :溶剤iの容積分率 (ここで、Σφi=1) Vi :溶剤iのモル容積によって求められる。 表1に示した代表的な溶剤のSP値は、20℃におけるモル蒸発熱とモル体積の数値から算出したものである。尚、モル蒸発熱とモル体積は、『Excelで使える化学物質の物性』福井弘康著(丸善出版社発行)による。 第一溶剤としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤及びエーテル系溶剤等の極性溶剤を用いることができる。 具体的に例示すると、ケトン系溶剤としては、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン(SP値9.8)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン(SP値9.2)、メチルイソブチルケトン、メチル−n−アミルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、メチル−n−ヘプチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、プロピレンカーボネート等が挙げられる。 エステル系溶剤としては、酢酸メチル、酢酸エチル(SP値9.0)、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル(SP値8.7)、酢酸アミル、酢酸2−エチルヘキシル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリエチル、安息香酸エチル、シュウ酸ジエチル、炭酸ジエチル、フタル酸ジエチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。 アミド系溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。 エーテル系溶剤としては、エチレングリコール(SP値15.9)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール系溶剤の他、エチルイソアミルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、エチルベンジルエーテル、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル(SP値7.2)、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を混合して使用してもよい。 第一溶剤の使用量は、シアノ酢酸1モルに対して、20〜300質量部用いることが好ましく、30〜250質量部であることがより好ましく、40〜160質量部であることが更に好ましい。当該使用量が20質量部未満であると、反応系が均質に成りにくく、シアノ酢酸エステルの収率が向上しない場合がある。一方、300質量部を超えて用いてもシアノ酢酸エステルの収率は向上せず、生産コストが高くなる。3.第二溶剤 本発明に用いられる第二溶剤は、25℃において実質的に水に不溶である有機溶剤であり、当然ながら、上記一般式ROHで表される有機化合物以外の有機溶剤である。第二溶剤は、実質的に水に溶解しないため、エステル化反応において生成する水を分離し易くなり、結果としてシアノ酢酸エステルの収率が向上する。 ここで、本発明において、実質的に水に不溶とは、25℃における水に対する溶解度が1質量%未満であることを意味する。 第二溶剤としては、炭化水素系溶剤が挙げられる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの中でも、沸点が低く、比較的毒性の低いヘキサン、シクロヘキサン及びヘプタンが好ましい。沸点が高い場合は、エステル化反応の温度が高くなり、マロン酸エステル等の副生成物が多く発生する。 第二溶剤の使用量は、シアノ酢酸1モルに対して、20〜150質量部用いることが好ましく、30〜130質量部であることがより好ましく、40〜120質量部であることが更に好ましい。当該使用量が20質量部未満であると、エステル化反応で生成する水の分離がしにくく、シアノ酢酸エステルの収率が向上しない傾向にある。一方、150質量部を超えて用いてもシアノ酢酸エステルの収率は向上せず、生産コストが高くなる。 上記第一溶剤と、第二溶剤との質量比(第一溶剤/第二溶剤)は、0.5〜3.0であることが好ましく、0.8〜2.5であることがより好ましく、1.0〜2.0であることが更に好ましい。当該質量比が、0.5未満であると、反応系が均質に成りにくく、シアノ酢酸エステルの収率が向上しない場合がある。一方、3.0を超えると、エステル化反応で生成する水の分離がしにくく、シアノ酢酸エステルの収率が向上しない傾向にある。4.酸触媒 本発明のエステル化反応は、酸触媒の存在下で行われる。酸触媒としては、強い無機酸又は有機酸が用いられ、例えば、硫酸、塩酸、リン酸、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸等が挙げられる。入手の容易さやガラスライニング反応容器への腐食の点から、硫酸又はp−トルエンスルホン酸が好ましい。 酸触媒量は、シアノ酢酸1モルに対して、0.01〜0.5モルであることが好ましく、0.05〜0.3モルであることがより好ましい。 エステル化反応終了後は、水洗又は炭酸ナトリウムなどのアルカリ水溶液での洗浄で、酸触媒を除去することが望ましい。酸触媒の除去工程を省いてシアノ酢酸エステルの精製蒸留を行うとシアノ基が容易に加水分解し、マロン酸モノあるいはジエステルなどが副生し易くなる。5.エステル化反応 本発明に係るシアノ酢酸エステルの製造方法は、上記原料を用いて酸触媒の存在下、上記有機溶剤中でエステル化反応を行う。エステル化反応は、有機溶剤を還流させながら、生成した水を除去しつつ行う。還流温度は、一般式ROHで表される有機化合物の種類、並びに第一溶剤及び第二溶剤の種類により決定されるが、50〜100℃であることが好ましく、55〜90℃であることが好ましく、60〜80℃であることが更に好ましい。還流温度が50〜100℃の範囲から外れるときは、加圧あるいは減圧で調整することも可能であるが、大気下で還流することが、操作の容易さから好ましい。還流温度が50℃未満ではエステル化反応の進行が遅く、シアノ酢酸エステルの収率も向上しない場合がある。一方、100℃を超えると、マロン酸エステル等の副生成物が多く発生する場合がある。 エステル化反応は、留出液がもはや水を含有しなくなった時点で終了する。次に、反応液を冷却後、酸触媒を水洗、又はアルカリ性水溶液を用いて中和し、3相に分離した反応液を得る。分離した反応液のうち、上層(有機溶剤相)及び中層(シアノ酢酸エステル相)を蒸留精製することにより、高純度のシアノ酢酸エステルを得ることができる。 本発明について、実施例及び比較例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、本発明において、シアノ酢酸の溶解度、各種有機化合物の定量、及び水分量は、以下のようにして測定した。1.測定方法(1)シアノ酢酸の溶解度 シアノ酢酸の溶解度は、全て25℃で管理された室内にて測定した。 100mlビーカーに、約8gのシアノ酢酸(和光純薬特級品)を取り分け、その投入量を正確に計量し、攪拌子を用いて撹拌しながら測定する溶剤をできるだけゆっくりとシアノ酢酸が全て溶解するまで添加した。終点間際では10分間に0.5g程度の添加とした。終点までに投入した溶剤重量からシアノ酢酸の溶解度を算出した(単位;[g/100g−溶剤])。尚、溶剤添加中は、溶剤の揮発を抑えるためにビーカーにはフィルムラップを施した。 一方、n−ヘキサンなどの極めて溶解性が低い溶剤の場合は、約0.1g(精秤)のシアノ酢酸を50.0gの溶剤中で30分間攪拌した後にろ過分別し、ろ過残渣を乾燥して未溶解のシアノ酢酸を計量して溶解量を求めた。 表1に、代表的な有機化合物、第一溶剤及び第二溶剤のSP値及びシアノ酢酸の溶解度を示す。(2)有機化合物等の定量 有機化合物、各種溶剤、シアノ酢酸エステル及びマロン酸エステルの定量分析は、ガスクロマトグラフィーを用いて行った。定量にあたり、ジオキサンを内部標準液として、予め検量線を作成した。 <ガスクロマトグラフィーの測定条件> カラム; DB−1、膜厚5μm、長さ30m、ID 0.320mm、 スプリット比=1/30、INJ 240℃、 DET 260℃、 カラム温度 60℃×3分+7.5℃/min×27分+260℃×15分 検出器; FID 内標; ジオキサン(RT=5.9min.) 試料量; 0.4μL (3)水分量 カールフィッシャー法にて水分量を測定した。2.シアノ酢酸エステルの製造(1)実施例1 ジムロート冷却器、温度計及び攪拌翼を備えた1リットルの4つ口フラスコに、シアノ酢酸85g、エタノール64g、酢酸エチル100gを投入し、シアノ酢酸が溶解するまでよく撹拌した。次に、n−ヘキサン100gを加え、内温が30℃になるようにウォーターバスで調整した。更に、98%硫酸10gを加え、還流温度(62℃)まで1〜2℃/分の速度で昇温した。 還流が始まってから1時間後に、ディーン・スターク装置(h型)をジムロート冷却器と1リットルフラスコの間に設置して還流留出液をトラップし、下層がオーバーフローして反応容器に戻らないように下層を抜き取った。 還流が始まってから4時間後には留出液に水が含まれなくなったため、反応容器を室温まで冷却した。留出水の取得量は31.3gであった。その留出水中のエタノール量は12.5g、水分量は16.1gであった。 内温を室温に戻した後、16%炭酸ソーダ水溶液100gを投入してから、分液ロートに移し替えた。3層になっており、それぞれを分別回収し、上層75g、中層220g、下層124gの反応液を得た。 それぞれの反応液のシアノ酢酸エチル及びマロン酸ジエチルの質量%をガスクロマトグラフィーにて求めた。上記3層におけるシアノ酢酸エチルの含有量は、上層9.4%、中層44.6%、下層1.9%であり、上層と中層を合わせたシアノ酢酸エチルの収量は105.2g、同様に求めたマロン酸ジエチルの生成量は1.8gであった。仕込みシアノ酢酸に対して、収率(モル%)は、シアノ酢酸エチルが93.1モル%、マロン酸ジエチルは1.1モル%であった。 各種の評価結果は、表2にまとめて示した。(2)実施例2〜6 エステル化反応に用いる第一溶剤及び第二溶剤を表2に示すように変更する以外は、実施例1と同様の方法でシアノ酢酸エチルを製造した。得られたシアノ酢酸エチルについて、上記の方法にしたがって、評価した。それらの結果を表2に示す。(3)比較例1 ジムロート冷却器、温度計、窒素ガス吹き込み管及び攪拌翼を備えた1リットルの4つ口フラスコに、シアノ酢酸85g、エタノール64gを投入し、シアノ酢酸が溶解するまでよく撹拌した。次に、n−ヘプタン100gを加え、その後は実施例1と同様に操作してシアノ酢酸エチルを製造した。 その評価結果は、表2に示した。(4)比較例2、3 エステル化反応に用いる第一溶剤及び第二溶剤を表2に示すように変更する以外は、比較例1と同様の方法でシアノ酢酸エチルを製造した。得られたシアノ酢酸エチルについて、上記の方法にしたがって、評価した。それらの結果を表2に示す。 表2に示すように、実施例1〜6の製造方法では、シアノ酢酸エチルを高収率で得ることができた。また、副生成物であるマロン酸ジエチルの生成も抑制することができた。この程度のマロン酸ジエチル量であれば、蒸留精製により、十分に除去することが可能であり、最終的に高純度のシアノ酢酸エチルを得ることができる。 一方、第一溶剤を使用せず、第二溶剤のみを用いた比較例1及び2では、シアノ酢酸エチルの収率が低い。また、副生成物であるマロン酸ジエチルの生成率が高い結果となった。第一溶剤のみを用いた比較例3でも、シアノ酢酸エチルの収率は低かった。 本発明に係るシアノ酢酸エステルの製造方法は、シアノ酢酸エステルを高収率で得ることができる。加えて、マロン酸エステル等の副生成物の発生を抑制することができる。よって、医薬及び農薬の中間体、並びに工業製品の中間体として用いられるシアノ酢酸エステルの製造方法として有用である。 シアノ酢酸とエタノールとを、有機溶剤中でエステル化反応させることによりシアノ酢酸エステルを製造する方法において、前記有機溶剤は、25℃におけるシアノ酢酸の溶解度が20[g/100g−溶剤]以上である第一溶剤と、25℃における水に対する溶解度が1質量%未満である第二溶剤とから構成されることを特徴とするシアノ酢酸エステルの製造方法。 上記第一溶剤の下記式(1)により計算した溶解度パラメーターが、6.0〜10.0であることを特徴とする請求項1に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。 δ={(△H−RT)/V}1/2 (1)[式(1)において、δは溶解度パラメーター((cal/ml)1/2)、△Hはモル蒸発熱(cal/mol)、Rは気体定数(1.9871cal/mol・K)、Tは絶対温度(K)、Vはモル体積(ml/mol)を示す。] 上記シアノ酢酸1モルに対して、上記第一溶剤を20〜300質量部用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。 上記シアノ酢酸1モルに対して、上記第二溶剤を20〜150質量部用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。 上記第一溶剤と第二溶剤の質量比(第一溶剤/第二溶剤)が、0.5〜3.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。 上記有機化合物量が、シアノ酢酸1モルに対し、1〜2倍モルであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシアノ酢酸エステルの製造方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る