生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_心筋梗塞後の結果を改善するための遠隔虚血コンディショニングの使用
出願番号:2013501973
年次:2013
IPC分類:A61B 17/132,A61B 17/12,A61K 45/00,A61P 9/10


特許情報キャッシュ

レディントン、アンドリュー JP 2013523240 公表特許公報(A) 20130617 2013501973 20110204 心筋梗塞後の結果を改善するための遠隔虚血コンディショニングの使用 ザ・ホスピタル・フォー・シック・チルドレン 501181075 THE HOSPITAL FOR SICK CHILDREN 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 本田 淳 100142907 レディントン、アンドリュー US 61/319,597 20100331 A61B 17/132 20060101AFI20130521BHJP A61B 17/12 20060101ALI20130521BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130521BHJP A61P 9/10 20060101ALI20130521BHJP JPA61B17/12 330A61B17/12A61K45/00A61P9/10 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW IB2011000368 20110204 WO2011121402 20111006 49 20121128 4C084 4C160 4C084AA17 4C084NA05 4C084ZA36 4C160DD03 4C160DD06 4C160DD43 4C160DD46 本発明は、心筋梗塞後の結果を改善するための遠隔虚血コンディショニングの使用に関する。 心筋梗塞(MI)の生存者は、MIに起因する心筋リモデリングに起因する心機能不全/心不全を起こすリスクが著しく大きい。このリモデリングは長期予後不良を伴い、MI後うっ血性心不全の患者は、5年間の追跡調査で示される死亡リスクが10倍高いと報告されている。心筋梗塞の治療は、虚血時間を短縮し、虚血後の再灌流中に生じる損傷を最小限に抑えることに重点が置かれてきた。従って、多くの療法は、心筋梗塞サイズをできるだけ縮小すること、またはその発生を完全に予防することを目的としてきた。最近、MIに伴って起こるような虚血性心臓損傷の影響を低減するために計画的な一過性虚血プレコンディショニングが提案された。このプレコンディショニングは本質的に、梗塞サイズを縮小し、このようにして予後を改善することにより、後の虚血イベント(MIなど)に対する心臓組織の耐性を誘導する可能性があると考えられてきた。実験プロトコルを示す概略図である。ラットを異なる群に無作為に割り付けた:1)シャム(Sham)群、ラットは偽手術を受け、介入は受けなかった;2)MI群、ラットは45分間の虚血とそれに続く再灌流を受け、コンディショニング療法は施されなかった;3)sPost群、1回のコンディショニング処置を虚血の終了前に施し、初期再灌流期間中も継続した;4)dPost群、1回のコンディショニング処置を4日目(再灌流の72時間後)に施した;5)rPost群、コンディショニングを第3群と同様に施した後、28日目まで2日おきに施した、および6)iPost群、コンディショニングを第3群と同様に施した後、28日目まで毎日施した。垂直方向の矢印は、安楽死の日付(それぞれ4日目および28日目)を示す。略称は全て、本文中と同じである。パネルA:MI後4日目の心臓の梗塞領域に浸潤するマクロファージ(上のパネル)と好中球(下のパネル)の数を示す、各ラット群の代表的な顕微鏡写真(倍率×400、スケールバー=50μm)である。パネルB:梗塞領域における浸潤マクロファージ(陽性ED−1染色)と好中球(陽性MPO染色)の数の定量分析を示す図である。パネルC:各ラット群の境界領域のMCP−1染色(茶色で示す)の代表的な心臓組織薄片(倍率×400、スケールバー=50μm)の顕微鏡写真である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルA:28日目の各ラット群から選択され、8−ヒドロキシデオキシグアノシン(8−OHdG、茶色の染色で示す)を標的にする免疫染色を行った左心室組織切片の顕微鏡写真(倍率×400、スケールバー=50μm)である。パネルB:28日目の各群の心筋MDA濃度の定量化を示す図である。パネルC:MI後28日目の各群のラットの血漿中TNF−α濃度(パネルA)および血漿中IL−1β濃度(パネルB)の定量分析を示す図である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルA:各群のラットのホスホ−IκBα、IκBα、およびGAPDH(左側)、ならびにホスホ−NFκB P65、NFκB P65およびGAPDH(右側)を示す代表的なウエスタンブロットバンドを示す図である。パネルB:ホスホ−IκBα対IκBαタンパク質発現比、およびホスホ−NFκB P65対NFκB P65タンパク質発現比の定量化を棒グラフ(添加対照としてGAPDH)で示した図である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルA:ホスホ−Smad2とSmad2の代表的なウエスタンブロットバンド、およびホスホ(phosphor)Smad2対全Smad2タンパク質発現比を棒グラフで示した図である。パネルB:各ラット群のTGF−1βを示した。GAPDHはタンパク質添加対照であった。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルA:各ラット群の心臓の境界領域内のマッソントリクローム染色を行った代表的な切片の顕微鏡写真(青色に染色、倍率×400、スケールバー=50μm)である。パネルB:各群の間質線維化の程度の定量分析を示す図である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルA:ヘマトキシリン−エオシンで染色した心筋細胞の断面積の変化を示す代表的な顕微鏡写真(倍率×400)である。パネルB:心筋細胞断面積(mm2)の定量的形態計測分析を示す図である。パネルC:α−MHC、β−MHCおよびANPのmRNA発現を示す図である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルD:α−MHC、β−MHCおよびANPのmRNA発現を示す図である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。パネルE:α−MHC、β−MHCおよびANPのmRNA発現を示す図である。データは平均±SDとして表し、略称は上記と同じである。対象の肢の周囲で縮径するように構成された空気で膨張可能なカフを備える、遠隔虚血コンディショニングシステムの一実施形態の概略図である。RICシステムの動作スキームの一実施形態のブロック図である。対象の肢の周囲で収縮するように構成されたカフの代替の実施形態を示す図である。パネルA:処置群の概略図である。パネルB:シャム群、処置を受けなかったMI群、MIの虚血期中にRICを受けたrIPerC群、MIの虚血期中およびその後2日おきにRICを受けたrPostC群、MIの虚血期中およびその後毎日RICを受けたiPostC群、および、反復麻酔の影響を調整するためにペントバルビタールナトリウムを投与したSP群の、MI後の85日間にわたるカプラン・マイヤー曲線(生存率)を示す図である。*はP<0.05(対MI群);#はP<0.001(対MI群)、&はP<0.05(対rIPerC群)を示す。 本発明は、一般に、MIに伴う心機能不全/心不全の発生および/または重症度を低減するための、および/またはその発症を遅延するための遠隔虚血コンディショニング(RIC)の使用に関する。本発明は、MIを起こしているまたはMIを起こした対象に対するRICの使用を考える。RICは、MIの前および/またはMI中および/またはMIの後に行うことができるが、但し、少なくとも1回のRIC(RICを1回だけ行う場合のRICを含む)はMI中またはMI後に行われるものとする。本発明はさらに、場合によっては、対象が2回以上のRIC療法を受けることを考える。幾つかの重要な実施形態では、本発明は、MI中、またはMI後、またはMI中とMI後に対象にRICを行うことを考える。幾つかの実施形態では、RICは、繰り返し、例えば、MI中に少なくとも1回、および、その後、毎日、隔日(即ち、1日おき)、2日おき、または3日おきに、少なくとも10日間、少なくとも20日間、少なくとも28日間、少なくとも30日間、またはそれより長期間行われる。 従って、一態様では、本発明は、MI中および/またはMI後に対象に反復RIC療法を行うことを含む方法を提供する。本方法は、MI後の心機能不全/心不全のリスクを低減すること、MI後の心機能不全/心不全に伴う症状の発生率、頻度および/または重症度を低減すること、および/または、心機能不全/心不全もしくはそれに伴う症状(MI後の運動制限、不整脈および、突然死を含むが、これらに限定されるものではない)の発症を遅延することを含む、MI後の対象の全体的結果を改善する方法であってもよいが、これらに限定されるものではない。これらの方法は、別の態様では、MIを有する対象に反復RIC療法を行うことを含み、反復RIC療法では、MI中および/またはMI後(直後を含む)に最初のRIC療法を行い、その最初のRIC療法の後、後続する1回以上のRIC療法を少なくとも6日おき、5日おき、4日おき、3日おき、2日おき、または1日おきに、または毎日行う。 一態様では、本発明は、MIを有する対象に反復RIC療法を行うことを含む方法を提供し、反復RIC療法では、MI中に最初のRIC療法を行い、その最初のRIC療法の後、後続するRIC療法を毎日行う。 一態様では、本発明は、MIを起こした対象に反復RIC療法を行うことを含む方法を提供する。一実施形態では、MI中、またはMIの36時間以内、24時間以内、12時間以内、6時間以内、3時間以内、2時間以内、または1時間以内に、任意選択的に局所または遠隔で対象にRIC療法を施した。 一態様では、本発明は、MI後に対象に反復RIC療法を行うことを含む方法を提供する。幾つかの実施形態では、反復RIC療法は、MIの1週間以内または1ヶ月以内に開始される。幾つかの実施形態では、対象は、MI中に、先行する虚血コンディショニングを受けなかった。 幾つかの実施形態では、対象は、MIの前に虚血コンディショニングを受けなかった。幾つかの実施形態では、対象は、MIの前に虚血コンディショニングを受けた。幾つかの実施形態では、MIの前の虚血コンディショニングは、局所または遠隔虚血コンディショニングであった。幾つかの実施形態では、MI中の虚血コンディショニングは、局所または遠隔虚血コンディショニングであった。本明細書で使用する場合、虚血コンディショニングとは対象に対して行われる計画的な療法であり、それは、MI中に「自然に」起こる虚血期および再灌流期を包含しないことを理解されたい。 幾つかの実施形態では、本方法は、MIに起因する梗塞サイズに影響を及ぼさない(例えば、梗塞サイズを縮小しない)(即ち、本方法により、梗塞サイズは比較的不変のままである)。 幾つかの実施形態では、MIに伴う虚血中に最初のRIC療法を行う。幾つかの実施形態では、MIに伴う虚血後の再灌流中に最初の遠隔虚血コンディショニング療法を行う。幾つかの実施形態では、MIに伴う虚血中にだけ、または、MIに伴う虚血中に行われる虚血中およびその後毎日、その後1日おき、その後2日おき、その後3日おき、その後4日おき、その後5日おき、またはその後6日おきに最初のRIC療法を行う。 幾つかの実施形態では、最初のRIC療法の後またはMIの後、2日おきに、1日おきに、または毎日、後続するRIC療法を行う。 幾つかの実施形態では、MIの後、1ヶ月以上、後続するRIC療法を行う。幾つかの実施形態では、反復RIC療法は、2日以上で1日2回以上(例えば、2回、3回、4回、または5回以上)のRIC療法を含む。 好ましい実施形態では、対象はヒトである。幾つかの実施形態では、対象は、本明細書により詳細に説明するように、再狭窄のリスクがない。幾つかの実施形態では、対象は高血圧症などの慢性の医学的症状を有していない。 1回のRIC療法当たりのサイクル数は、2サイクル、3サイクル、4サイクル、5サイクルまたは6サイクル以上であってもよく、各サイクルは超収縮期血圧と再灌流とを含む。幾つかの実施形態では、反復RIC療法の少なくとも1回のRIC療法は、少なくとも4サイクルを含む。幾つかの実施形態では、反復RIC療法の少なくとも1回のRIC療法は、5分間の超収縮期血圧と5分間の再灌流とを含むサイクルを2サイクル以上含む。幾つかの実施形態では、超収縮期血圧は、収縮期血圧より少なくともある絶対数(mmHg)だけ高い圧力であるか、または、それは収縮期血圧より高いパーセンテージである。超収縮期血圧は、収縮期血圧より5、10、15、20、25、30、35、40、45または50mmHg以上高い圧力であってもよい。幾つかの実施形態では、超収縮期血圧は、収縮期血圧より少なくとも15mmHg高い圧力であり、収縮期血圧より20、25、30、35、40、45または50mmHg以上高い範囲にわたってもよい。幾つかの実施形態では、超収縮期血圧は、収縮期血圧より1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%以上高い圧力である。これらのパーセンテージは収縮期血圧のパーセンテージを表し、そのため超収縮期血圧は、収縮期血圧の101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%の(またはそれより高い)レベルであると称することもできることを理解されたい。幾つかの実施形態では、超収縮期血圧は、ある絶対圧力またはほぼその絶対圧力であり、例えば、170もしくは約170、180もしくは約180、190もしくは約190、200もしくは約200、210もしくは約210、220もしくは約220、230もしくは約230mmHgであるか、またはそれより高い。幾つかの実施形態では、超収縮期血圧は、200mmHgもしくは約200mmHgの圧力である。 幾つかの実施形態では、反復RIC療法の各RIC療法は同じ部位で行う。幾つかの実施形態では、反復RIC療法は上肢で行う。一実施形態では、身体の異なる部位に配置される2つ以上の装置(2つ以上のカフなど)を使用して(例えば、各腕にカフを1つずつ、もしくは各脚にカフを1つずつ、または、片腕にカフを1つと片脚にカフを1つなど)、個々のRIC療法または反復RIC療法を行う。 前述の態様の幾つかの実施形態では、対象はさらに除細動器を使用して処置される。除細動器は、自動体外式除細動器(AED)であってもよい。 幾つかの実施形態では、本方法はさらに、対象にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を投与することを含む。本発明に適したACE阻害剤の例としては、カプトプリル、エナラプリル、ラミプリル、リシノプリル、キナプリル、フォシノプリル、ベナゼプリル、およびモエキシプリルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 幾つかの実施形態では、本方法はさらに、対象にアンジオテンシンII受容体遮断薬を投与することを含む。例としては、カンデサルタン、イルベサルチン、ロサルチン、テルミサルチン、およびバルサルタンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 幾つかの実施形態では、本方法はさらに、対象に抗血小板剤を投与することを含む。例としては、アスピリンおよびクロピドグレルが挙げられる。幾つかの実施形態では、本方法はさらに、対象にスタチンを投与することを含む。 様々な実施形態では、対象に前述のこれらの薬剤の2種類以上を投与してもよい。 別の態様では、本発明は、除細動器と、遠隔虚血コンディショニングを行う装置(例えば、本明細書に記載の自動装置など)とを含むキットを提供する。除細動器は、自動体外式除細動器(AED)であってもよい。 本発明の前述および他の態様および実施形態を本明細書でより詳細に検討する。 添付の図面は、縮尺通りに描くことを意図したものではない。図中、様々な図に示されている同一またはほぼ同一の構成要素はそれぞれ、同様の番号で表される。理解し易いように、全ての図面に全ての構成要素を標示しないこともある。 ここで本発明の様々な実施形態を例として添付の図面を参照して説明する: 本発明は、一部には、計画的に、場合によっては繰り返し、MI中および/またはMI後に、対象に一過性虚血の誘発と再灌流とからなるサイクルを行うことにより、MI後の心機能不全/心不全を低減、遅延、または完全に予防することができるという知見に基づく。本発明はまた、一部には、MI中(MIに伴う虚血中を含む)に、対象に一過性虚血の誘発と再灌流を行うことにより類似の効果が得られるという知見に基づく。本発明による一過性虚血の誘発および再灌流の使用により、MI後の対象の生存も向上する。 本発明は、MI後の心機能不全/心不全のリスクを低減する、その発症を遅延する、および/またはその重症度を低減する方法を提供する。本発明は、MIの結果として起こる心機能不全/心不全の改善または予防を目的とする。本発明は、MIを有するまたは有した対象に1回以上のRIC療法を施すことにより、それを行う。本発明の幾つかの態様では、これらの療法の少なくとも1回(対象が療法を1回だけ受ける場合の療法を含む)はMI中に行われる。これらは「パーコンディショニング」療法と称され、それらはMIの虚血期中および/またはそれに続く再灌流期に行うことができる。特定の実施形態では、対象はMI中(MIの虚血期中を含む)にRIC療法を受ける。本発明の前述の態様および他の態様では、MIの後に1回以上の療法を行ってもよい。これらは「ポストコンディショニング」療法と称される。従って、本発明の幾つかの方法は、このような対象がMIを起こしている時に、および任意選択的にMIの後に、対象にRICを行うことを含む。本発明の他の方法は、任意選択的に先行するMI中に対象にRIC療法が行われた場合、MIの後に対象にRICを行うことを含む。幾つかの実施形態では、MI中(例えば、MIの虚血期中、MIの再灌流期中、またはMIの虚血期および再灌流期中)に、および/またはMIが治まった直後(例えば、数時間以内、好ましくは1時間以内)、および/またはMIの後に(後述のように)RICを行ってもよい。幾つかの実施形態では、対象は、プレコンディショニングRIC療法(即ち、MIの前のRIC療法)を受けなかった。幾つかの実施形態では、対象は、1回以上のプレコンディショニングRIC療法を受けた。 従って、幾つかの態様では、本方法は、MI中にRICを行うこと、およびMI後に繰り返しRICを行うことを含む。幾つかの態様では、本方法は、MI中にRICを行わなかった場合でも、MI後に繰り返しRICを行うことを含む。本明細書では、このようなRICを、MI後のRICと称することがある。幾つかの実施形態では、MI後のRICは、MIの数日後、数週間後、または数ヶ月後に行われる。従って、MIと最初のRICの間の時間は、1日、2日、3日、4日、5日、もしくは6日、または1週間、2週間、3週間、もしくは4週間、または1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、もしくは6ヶ月以上、またはそれより長期間であってもよい。 幾つかの実施形態では、MI後に行われるRICが梗塞自体に影響を及ぼさない場合でも、前述のように、心機能が改善される、および/または心機能不全/心不全が低減される。即ち、梗塞サイズは、MI時の1回のRICの効果ほど、MI後のRICに影響を受けるようには見えない。幾つかの実施形態では、生存時間が延長される。 全く驚くべきことに、本発明により、MI中およびMI後に個体にRICを施すと、その対象は有害なリモデリングから保護されることが分かったが、さもなければ虚血および再灌流心臓損傷(例えば、最も典型的にはMIと共に起こる)の後に、有害なリモデリングが起こる。さらにより驚くべきことには、梗塞サイズに対して効果がない場合でも、この保護効果は達成される。即ち、リモデリングに対する長期効果は、MIに起因する梗塞サイズの変化(例えば、縮小)と関連しているようには見えない。 また、特に、以前は虚血コンディショニングは虚血イベントの前に行われなければならない(即ち、「プレコンディショニング」)と考えられたため、ポストコンディショニング療法が治療効果を提供することが分かったのは驚くべきことである。本発明は、対象が何らかの形態の虚血プレコンディショニングを受けたかどうかに関わらず、対象が虚血ポストコンディショニングから、少なくともこのようなポストコンディショニングがMIに伴う心機能不全/心不全を低減または予防する程度、治療効果を得ることができることを立証する。 実施例に記載のように、MI中に対象に1回のRIC療法を行うことによりMI後の治療効果を達成することができる。この療法は、MIの虚血期中および/またはMIの再灌流期中に行ってもよい。従って、本発明は、場合によっては、対象が、当該技術分野で公知のようにおよび後述のように、MIを有する対象であると確認された後、その対象を看護する人(医学的訓練を受けた職員を含むが、これに限定されるものではない)が、その対象にRIC療法を行うことを考える。以下により詳細に説明するように、この療法は、対象の遠隔位置に虚血−再灌流サイクルを1回、好ましくは2回以上行うことを含む。このような位置は好ましくはアクセスが容易であり、この療法は好ましくは非侵襲的療法である。通常、療法は、1つ以上の肢で皮膚に圧力を加えることにより(例えば、加圧カフまたは止血帯の使用により)行われる。 実施例で使用した実験モデルでは、MIの再灌流期中に1回のコンディショニング療法を行うと長期効果が得られたが、4日目に1回のコンディショニング療法を行っても(1日目にMIが始まる)効果がなかった。 従って、本発明の幾つかの実施形態では、心筋梗塞の30日以内、または20日以内、10日以内、または1日以内、または12時間以内、または6時間以内、または3時間以内、または2時間以内、1時間以内、30分以内、10分以内、または5分以内に、および/または心筋梗塞時にRIC療法を行う。 また驚くべきことに、MI後の対象に複数回のRIC療法を行うと、さらにより大きな効果が得られることが実施例からさらに分かる。より具体的には、MIの後に複数回のRIC療法を行うと、リモデリングの悪影響に対するより十分な保護と生存時間の延長が認められた。MIの後、3日に1回RICを行う方が、MI時に1回の療法を行うより十分な保護が得られることが分かった。重要なことには、梗塞サイズは2つの動物群間で有意差はなく、この早期のコンディショニング療法によって得られる有益な効果は、梗塞に対する効果と無関係であることが分かった。 さらに、MIの後に毎日RICを行う方が、それを3日に1回行う場合よりさらに十分な保護が得られ、生存率が向上することが分かった。 従って、本発明は、場合によっては、MIの後、少なくとも1週間に1回、少なくとも6日に1回、少なくとも5日に1回、少なくとも4日に1回、対象にRICを行うことを含み、好ましくはMI中にもRICを行う方法を提供する。幾つかの重要な実施形態では、MIの後、少なくとも3日に1回、少なくとも2日に1回、または少なくとも1日に(即ち、毎日)1回、対象に遠隔虚血コンディショニングを行い、好ましくはMI中にもRICを行う。 本明細書で使用する場合、例えば、「少なくとも3日に1回」におけるような「少なくとも1回」は、3日間で少なくとも1回のRIC療法を行うことを意味する。そのため、これは、毎日、1日おき、または2日おきにRICを行う場合を含む。代わりに、またはさらに、それは、3日間の1日目、2日目、および/または3日目に、1回以上のRIC療法を行う場合を含む。最も簡単な場合、2日おきに1回のRICを行う。しかし、本発明は、任意の所定の日にさらに頻回行うことを考えることを理解されたい。また、これと同じ意味が、前述のような、他の頻度で行われる療法にも適用されることも理解されたい。従って、明確にするために、「少なくとも毎日」は、毎日1回以上のRIC療法を行うことを意味する。 幾つかの実施形態では、1日で1回のRIC療法を行う。他の実施形態では、1日で2回以上(2回、3回、4回、または5回以上)のRIC療法を行う。 1日で行う場合であれ、または複数日で行う場合であれ、RIC療法は同じ位置で行ってもまたは異なる位置で行ってもよい。これらは2つの位置で交互に行ってもよく、またはそれらは3つ以上の位置を循環して行ってもよい。2つ以上の位置の使用は事前に決定されてもよく、または無作為であってもよい。幾つかの実施形態では、1つの位置または複数の位置を使用して1回の療法を行ってもよい。例えば、ヒト対象の上腕の1つの位置で1回の療法を行ってもよく、または2つの上腕位置(例えば、別々の上腕)を使用して同時にもしくは交互にそれを行ってもよい。複数の位置を使用する場合、2つ以上の装置を使用してもよい。 前述の療法は、療法の頻度が事前に決定され、同様に実施されるという点で本質的に規則的であると考えられる。療法と療法との間の時間は均一(もしくは同一)であっても、または異なってもよいことが明らかであるが、但し、このようなタイミングは事前に分かっているものとする。本発明は、2回の連続する療法の少なくとも2組が、第1の時間だけ間隔が空いており、2回の連続する療法の他の少なくとも2組が、第1の時間とは異なる第2の時間だけ間隔が空いているプロトコルを考える。 しかし、本発明は、MI後にランダムな間隔で複数回の療法を行うことを考えるが、但し、このような場合でも、療法は少なくとも毎週1回の頻度で行われるものとする。 遠隔虚血コンディショニング療法は、MIの後、任意の期間(1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、もしくは12ヶ月以下、またはそれより長期間を含むが、これらに限定されるものではない)にわたって行われてもよい。場合によっては、療法は、何年か(2年、3年、4年、5年以下、またはそれより長期間を含む)にわたって行われる。さらにまた他の場合、対象の余命にわたり、または対象にもはや高い心機能不全/心不全のリスクがないと判定されるまで療法を継続する。本明細書で使用する場合、高い心機能不全/心不全のリスクとは、MIを起こさなかった平均母集団のリスクより高いリスクである。従って、実施例は、実験的にシミュレートされたMIの後に30日以下行われるRIC療法の効果を示すが、本発明は、より短い「処置」時間とより長い「処置」時間の両方を考える。 本発明により「処置される」対象は、最小限、MIを起こしているか、または起こしたことがある。対象は、虚血プレコンディショニング(即ち、MIの前の虚血コンディショニング)を受けていてもまたは受けていなくてもよい。対象は、虚血コンディショニング(虚血プレコンディショニングを含む)の適応となる症状を有してもまたは有していなくてもよい。対象は、例えば、血管または身体内の他の脈管の拡幅または拡張を含む医療処置または介入の後、再狭窄のリスクがあっても、またはなくてもよい。このような医療処置または介入の例としては血管形成術またはステント留置術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。同様に、対象は、脈管損傷を誘発したまたは誘発する可能性がある医療介入を受けた対象であっても、またはそれを受けた対象でなくてもよい。対象に高血圧症など(但し、これに限定されるものではない)の慢性の医学的症状が見られても、もしくは見られなくてもよく、または対象が慢性の医学的症状の病歴を有しても、もしくは有していなくてもよい。本発明の対象は好ましくはヒトであるが、ヒト以外の対象も考えられる。 本明細書で使用する場合、「処置する」という用語は、対象がMI後に起こす場合がある心機能不全/心不全の可能性、発症時間、および/または重症度に対して良い効果または治療効果を有することを意味する。このような良い効果または治療に有益な効果は、対象を、本発明の方法を施さなかった母集団と比較することにより評価することができる。心機能不全/心不全の発生率、心機能不全/心不全の発症時間、および心機能不全/心不全の重症度に関して対象と母集団を比較することができる。心機能不全/心不全の兆候については以下により詳細に説明する。 従って、前述に基づいて、本発明は、MIを有している対象およびMIを既に有した対象に、特に、これらの後者の対象がMI時にまたはMI時近くに局所であれまたは遠隔であれ虚血コンディショニング療法を施された場合、RIC療法を行うことを考えることを理解すべきである。 当業者(開業医および救急医療従事者を含むが、これらに限定されるものではない)は、MIの特徴を熟知しているであろう。MIの症状としては、特に男性では、突然の胸の痛み(左腕または首の左側まで広がることが多い)、息切れ、悪心、嘔吐、動悸、発汗、および不安感が挙げられる。女性の症状は男性の症状と幾分異なり、通常、息切れ、衰弱、消化不良および疲労感が挙げられる。このような症状の有無に関わらず、例えば、心電図、血液マーカー検査(例えば、クレアチンキナーゼ、トロポニンTまたはI)、および心臓造影(胸部X線など)を使用してMIを検出することができる。MI診断のガイドラインには、WHO基準(即ち、20分より長く持続する虚血型胸痛の病歴、経時ECG追跡における変化、および血漿中心臓マーカー(クレアチンキナーゼMBおよびトロポニンなど)の上昇/低下)が含まれ、このような基準が2つ存在する場合および3つ存在する場合、それぞれMIの可能性が高いこと、および確実にMIであることを示す。 本明細書で使用する場合、「遠隔虚血コンディショニング療法」または「RIC療法」という用語は、対象に心臓以外の身体上の位置(即ち、「遠隔」位置)で行われる1つ以上の虚血−再灌流サイクルを指す。本明細書で使用する場合、RIC療法(または個々のRIC療法、本明細書ではこれらの用語を互換的に使用する)とは、一過性虚血イベントの誘発とそれに続く再灌流イベントを1サイクルとして少なくとも1サイクル行うことを意味する。従って、個々のRIC療法は、1、2、3、4、または5以上のこのようなサイクルからなってもよい。 本発明は、幾つかの態様では、対象に反復RIC療法を行うことを考える。本明細書で使用する場合、反復RIC療法とは、1日で行われる2回以上の個々のRIC療法、および/または複数日で行われる1回以上のRIC療法である。例えば、反復RIC療法は、1日でRIC療法を複数回行うこと、または複数日で1回のRIC療法を行うこと、または複数日で複数回のRIC療法を行うことを含んでもよい。反復RIC療法を1日で行う場合、個々の療法間の時間は、例えば、少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも40分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、または少なくとも6時間であってもよい。数日間にわたり反復RIC療法を行う場合、個々の療法間の時間は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または7日であってもよい。本明細書では、反復RIC療法全体をRICプロトコルと称する。 本明細書に記載の通り、反復RIC療法の中のRIC療法のいずれかまたは全てがタイミング、1回の療法当たりのサイクル数、超収縮期血圧、および位置などに関して同一である必要はない。 通常、RICは、上肢または下肢などの肢で行われるがそれに限定されない。反復RIC療法は身体の1つの部位で行われても、または複数の部位で行われてもよい。例えば、反復RIC療法は、右上腕で行われる第1のRIC療法と、それに続いて左上腕で行われる第2のRIC療法とを含んでもよい。反復RIC療法は、身体の離れた部位間で交互に行うことを含んでもよい。場合によっては、RIC療法を対象の2つの異なる部位で、時間的に重複して(同時を含む)行ってもよい。このような場合、後述のように2つの装置を使用してもよい。 心機能不全/心不全 心不全は、心臓が血液を全身に拍出できない状態、または肺に血液がうっ滞することを防止できない状態と定義される。心不全はうっ血性心不全と称されることが多く、収縮期心機能不全または拡張期心機能不全と関連している。それは、通常、徐々に進行し、心臓組織の損傷を引き起こす(例えば、MI)または心臓組織を通常より多く働かせる(もしくは酷使する)別の症状により誘発されるまたは増悪する場合ある。 従って、当業者に理解されるように、心不全は心機能不全を示し、本発明は、心不全が存在する時または存在しない時の心機能不全のリスクの低減、発症の遅延、予防および/または治療を考える。従って、本明細書では心不全の記述は、特記しない限り、心機能不全も包含するものとする。 本発明は、場合によっては、MIを有したまたはMIを有する対象の心機能不全/心不全のリスクを低減する方法を提供する。本方法は、心機能不全/心不全およびそれに伴う症状(これには、MIの結果として起こる運動不耐性、不整脈および突然死が挙げられるが、これらに限定されるものではない)の発現および/または重症度を低減することを目的とする。心機能不全/心不全の発現および重症度は、心機能不全/心不全に伴う症状または他の特徴を監視および測定することにより評価することができる。これらについては後述する。本方法により、このような症状を全部または一部予防する、このような症状の全部または一部の発症を遅延する、および/またはこのような症状の全部または一部の重症度を低減することができる。心機能不全/心不全のリスクの低減は、処置される対象の心機能不全/心不全に伴う症状または他の特徴を監視し、対象のこのような症状または特徴の数、発症および重症度を心機能不全/心不全の過去症例母集団(historical population)のデータと比較することにより判定することができる。例えば、MIを生き延びる対象は平均的母集団と比較して心機能不全/心不全を発現する可能性が高いことが知られている。本発明の方法は、このような心機能不全/心不全発現の可能性またはリスクを低減することを目的とする。 心機能不全/心不全の症状としては、息切れ(呼吸困難)、通常は異常な水分貯留の結果として起こる足部および脚部の腫脹(浮腫)、肺水腫、持続性の咳または喘鳴、低い運動耐性、運動していない時でも感じられる全身疲労感、心拍数の増加(または動悸)、食欲の不振、記憶喪失(または錯乱)、および悪心が挙げられる。これらの症状の1つ、および通常は2つ以上が、心機能不全/心不全を有する対象に現れる。本発明の方法は、これらの症状の1つ以上の発現の予防、発症の遅延、および/または重症度の低減を目的とする。 心機能不全/心不全は、前述の症状の1つ、および通常は2つ以上が現れることに基づいて診断することができる。心電図(ECGまたはEKG)、心エコー図(「心エコー」)、または心臓カテーテル検査などの検査で、心機能不全/心不全を診断することもできる、または心機能不全/心不全の疑いのある診断の確認を行うこともできる。例えば、心エコー図は、1回の拍動で左心室から駆出される血液の量または分率を測定することができる。これは駆出率と称される。正常な対象では、左心室の血液の約60%が駆出される。対象には、軽度に低下した駆出率(例えば、40〜45%)、中程度に低下した駆出率(例えば、30〜40%)、または重度に低下した駆出率(例えば、10〜25%)が見られることがある。従って、本発明の幾つかの態様では、本方法は、特に、対象の駆出率が正常である場合、または対象の駆出率の低下が軽度である場合、駆出率を維持することを目的とする。幾つかの態様では、本発明の方法は、最初に見られる駆出率に関わらず、駆出率低下の発生を遅延させることを目的とする。また、ストレステストを使用して心機能不全/心不全を診断してもよく、それらを前述の造影検査の1つ以上と組み合わせてもよい。例えば、ストレステストを心エコー図と組み合わせて、運動時間(exercise periods)の前、運動時間中、および/または運動時間の後に、心機能不全/心不全の監視および測定を行ってもよい。当業者(開業医、特に心臓病専門医を含む)は、これらの試験および心機能不全/心不全の診断におけるその使用に精通しているであろう。 本発明の方法により処置されることが意図されている対象はまた、1回以上のMIの病歴またはその根拠を有することが理解されるであろう。幾つかの態様では、対象に他の危険因子もしくは他の症状が見られても、もしくは見られなくてもよく、または対象が他の危険因子もしくは他の症状の病歴を有しても、もしくは有していなくてもよい。例えば、一実施形態では、対象が高血圧(高血圧症)の病歴を有していなくてもよく、および/または対象に高血圧(高血圧症)が見られなくてもよい。別の例として、一実施形態では、対象は、対象の動脈もしくは静脈などの管の拡張を目的とする医療処置または介入を受けていなくてもよい。このような介入の例としては、血管形成術、およびステント留置術などが挙げられる。 重要なことには、場合によっては、本発明の方法により得られる1つ以上の効果は、心筋梗塞サイズまたは体積に対するどのような効果とも無関係に生じる。即ち、実施例に記載のように、幾つかの実施形態では、RICの第1のサイクルがMI中またはその直後に適用される場合、梗塞サイズは、後続する慢性的RICによりあまり縮小されない可能性がある。しかし、驚くべきことに、梗塞サイズのさらなる縮小が起こらない場合でも、本発明の方法を使用して、心機能不全/心不全のリスク、発症、および/または重症度を低減することが依然として可能である。この知見を説明する特定の作用機序に限定されるものではないが、慢性的RICは、心筋梗塞後に起こる左室リモデリングを予防する、またはその程度を制限することができる。実施例に記載のように、MI後の反復RIC療法により、炎症反応を軽減する、酸化ストレスを低減する、および/またはMIに伴う肥大化および線維化シグナルを調節することができる。 従って、本発明の幾つかの方法は、心筋梗塞中および/または心筋梗塞後(直後を含む)に対象にRIC療法を行うことを含む。好ましくは、1回のRIC療法は心筋梗塞中に対象に行われる。これらの実施形態では、それは虚血期(もしくは虚血期間)中、または再灌流期(もしくは再灌流期間)に行われてもよく、またはそれは虚血期と再灌流期の両方と様々な程度、重なってもよい。コンディショニングは、心筋梗塞中に行われる場合、本明細書ではパーコンディショニングと称される。他の実施形態では、RIC療法は、心筋梗塞の虚血期間の終了の30分以内、1時間以内、2時間以内、3時間以内、4時間以内、5時間以内、6時間以内、8時間以内、10時間以内、12時間以内、18時間以内、または24時間以内に行われる。さらに他の実施形態では、RIC療法は、心筋梗塞の36時間以内、48時間以内、または60時間以内に行われる。 後続するRIC療法は毎日、1日おき、または2日おきに行ってもよい。これらのRIC療法は、1日1回、または1日2回以上(1日2回または1日3回以上を含む)行ってもよい。 追加の療法 本発明のRIC療法は、心機能不全/心不全のリスクまたは重症度の低減を目的とした他の療法または処置と併用してもよい。これらの療法には、線維素溶解剤、抗凝固剤、および血小板機能阻害剤を含む抗血小板薬療法、β遮断薬療法、ACE阻害剤療法、スタチン療法、アルドステロン拮抗薬療法(例えば、エプレレノン)、およびω−3−脂肪酸療法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。実施形態に応じて、これらの薬剤の1つ以上をMIの前、MI時、またはMIの後に投与してもよく、RIC療法および/またはプロトコルと重複してもまたは重複しなくてもよい。前述の療法および他の適した療法を以下により詳細に説明する。 線維素溶解剤は、通常、酵素作用でフィブリンを溶解することより血栓(例えば、血餅)を溶解する薬剤である。例としては、アンクロッド、アニストレプラーゼ、乳酸ビソブリン、ブリノラーゼ、ハーゲマン因子(即ち、第XII因子)フラグメント、モルシドミン、プラスミノーゲン活性化因子(ストレプトキナーゼ、組織型プラスミノーゲン活性化因子(TPA)およびウロキナーゼなど)、ならびにプラスミンおよびプラスミノーゲンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 抗凝固剤は、血餅の形成に不可欠な因子の産生、蓄積、開裂および/または活性化に負の影響を及ぼすことにより凝固経路を阻害する薬剤である。抗凝固剤としては、クマリンおよびクマリン誘導体(例えば、ワーファリンナトリウム)などのビタミンK拮抗体;未分画の形態と低分子量の形態の両方のヘパリンなどのグリコサミノグリカン;アルデパリンナトリウム、ビバリルジン、ブロムインジオン、クマリン、ダルテパリンナトリウム、デシルジン、ジクマロール、リヤポレートナトリウム、ナファモスタットメシレート、フェンプロクモン、スルファチド、チンザパリンナトリウム、Xa因子阻害剤、TFPI因子阻害剤、VIIa因子阻害剤、IXc因子阻害剤、Va因子阻害剤、VIIIa因子阻害剤、ならびに他の凝固因子の阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 血小板機能阻害剤は、成熟した血小板がその正常な生理学的役割(即ち、その正常な機能)を果たす能力を低下させる薬剤である。例としては、アカデシン、アナグレリド、アニパミル、アルガトロバン、アスピリン、クロピドグレル、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(非ステロイド系抗炎症剤および合成化合物FR−122047など)、ダナパロイドナトリム、塩酸ダゾキシベン、ジアデノシン5’,5’’’−P1,P4−四リン酸(Ap4A)類似体、デフィブロチド(difibrotide)、塩酸ジラゼプ、1,2−および1,3−グリセリルジニトレート、ジピリダモール、ドーパミンおよび3−メトキシチラミン、硫酸エフェガトラン、エノキサパリンナトリウム、グルカゴン、糖タンパク質IIb/IIIa拮抗体(Ro−43−8857およびL−700,462など)、イフェトロバン、イフェトロバンナトリウム、イロプロスト、イソカルバサイクリンメチルエステル、イソソルビド−5−モノニトレート、イタジグレル、ケタンセリンおよびBM−13.177、ラミフィバン、リファリジン、モルシドミン、ニフェジピン、オキサグレレート、PGE、血小板活性化因子拮抗体(レキシパファントなど)、プロスタサイクリン(PGI2)、ピラジン類、ピリジノールカルバメート、ReoPro(即ち、アブシキマブ)、スルフィンピラゾン、合成化合物であるBN−50727、BN−52021、CV−4151、E−5510、FK−409、GU−7、KB−2796、KBT−3022、KC−404、KF−4939、OP−41483、TRK−100、TA−3090、TFC−612およびZK−36374、2,4,5,7−テトラチアオクタン、2,4,5,7−テトラチアオクタン2,2−ジオキサイド、2,4,5−トリチアヘキサン、テオフィリン、ペントキシフィリン、トロンボキサンおよびトロンボキサン合成酵素阻害剤(ピコタミドおよびスロトロバンなど)、チクロピジン、チロフィバン、トラピジルおよびチクロピジン、トリフェナグレル、トリリノレイン、3−置換5,6−ビス(4−メトキシフェニル)−1,2,4−トリアジン、ならびに抗糖タンパク質IIb/IIIa抗体および米国特許第5,440,020号明細書に開示されているもの、ならびに抗セロトニン薬、クロプリドグレル;スルフィンピラゾン;アスピリン;ジピリダモール;クロフィブレート;ピリジノールカルバメート;PGE;グルカゴン;抗セロトニン薬;カフェイン;テオフィリン、ペントキシフィリン;チクロピジンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 抗炎症剤としては、アルクロフェナク;プロピオン酸アルクロメタゾン;アルゲストンアセトニド;アルファアミラーゼ;アムシナファル;アムシナフィド;アンフェナクナトリウム;塩酸アミプリロース;アナキンラ;アニロラク;アニトラザフェン;アパゾン;バルサラジド二ナトリウム;ベンダザック;ベノキサプロフェン;塩酸ベンジダミン;ブロメライン類;ブロペラモール;ブデソニド;カルプロフェン;シクロプロフェン;シンタゾン(Cintazone);クリプロフェン;プロピオン酸クロベタゾール;酪酸クロベタゾン;クロピラク;プロピオン酸クロチカゾン;酢酸コルメタゾン(Cormethasone Acetate);コルトドキソン;デフラザコート;デソニゾ;デスオキシメタゾン;ジプロピオン酸デキサメタゾン;ジクロフェナクカリウム;ジクロフェナクナトリウム;酢酸ジフロラゾン;ジフルミドンナトリウム(Diflumidone Sodium);ジフルニサル;ジフルプレドナート;ジフタロン;ジメチルスルホキシド;ドロシノニド;エンドリソン;エンリモマブ;エノリカムナトリウム;エピリゾール;エトドラク;エトフェナメート;フェルビナク;フェナモール;フェンブフェン; フェンクロフェナク;フェンクロラク;フェンドサル;フェンピパロン;フェンチアザク;フラザロン;フルアザコート;フルフェナム酸;フルミゾール;酢酸フルニソリド;フルニキシン;フルニキシンメグルミン;フルオコルチンブチル;酢酸フルオロメトロン(Fluorometholone Acetate);フルクアゾン;フルルビプロフェン;フルレトフェン;プロピオン酸フルチカゾン;フラプロフェン;フロブフェン;ハルシノニド;プロピオン酸ハロベタゾール;酢酸ハロプレドン;イブフェナク;イブプロフェン;イブプロフェンアルミニウム;イブプロフェンピコノール;イロニダップ(Ilonidap);インドメタシン;インドメタシンナトリウム;インドプロフェン;インドキソール;イントラゾール;酢酸イソフルプレドン(Isoflupredone Acetate);イソキセパック;イソキシカム;ケトプロフェン;塩酸ロフェミゾール;ロルノキシカム;エタボン酸ロテプレドール;メクロフェナム酸ナトリウム;メクロフェナム酸;二酪酸メクロリゾン(Meclorisone Dibutyrate);メフェナム酸;メサラミン;メセクラゾン;スレプタン酸メチルプレドニゾロン;モルニフルマート(Morniflumate);ナブメトン;ナプロキセン;ナプロキセンナトリウム;ナプロキソール;ニマゾン;オルサラジンナトリウム;オルゴテイン;オルパノキシン;オキサプロジン;オキシフェンブタゾン;塩酸パラニリン;ペントサンポリ硫酸ナトリウム;フェンブタゾンナトリウムグリセラート;ピルフェニドン;ピロキシカム;ケイ皮酸ピロキシカム;ピロキシカムオラミン;ピルプロフェン;プレドナザート;プリフェロン;プロドール酸;プロカゾン;プロキサゾール;クエン酸プロキサゾール;リメキソロン;ロマザリット;サルコレクス;サルナセジン;サルサレート;サリチル酸誘導体;塩化サングイナリウム;セクラゾン;セルメタシン;スドキシカム;スリンダク;スプロフェン;タルメタシン;タルニフルメート;タロサラート;テブフェロン;テニダップ;テニダップナトリウム;テノキシカム;テシカム;テシミド;テトリダミン;チオピナク;ピバル酸チキソコルトール;トルメチン;トルメチンナトリウム;トリクロニド;トリフルミダート;ジドメタシン;糖質コルチコイド;ゾメピラックナトリウムが挙げられる。好ましい抗炎症剤の1つにはアスピリンがある。 高脂血症治療剤としては、ゲムフィブロジル、コレスチラミン(cholystyramine)、コレスチポール、ニコチン酸、プロブコール、ロバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン(cirivastatin)などのスタチンが挙げられる。 直接トロンビン阻害剤としては、ヒルジン、ヒルゲン、ヒルログ、アガトロバン、PPACK、トロンビンアプタマーが挙げられる。 糖タンパク質IIb/IIIa受容体阻害剤には抗体と非抗体の両方があり、ReoPro(アブシキマブ(abcixamab))、ラミフィバン、チロフィバンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 カルシウムチャネル遮断薬には、高血圧、アンギナ、および心不整脈などの幾つかの心血管障害を含む様々な疾患のコントロールに重要な治療価値を有する、化学的に様々な種類の化合物がある(Fleckenstein,Cir.Res.v.52,(suppl.1),p.13−16(1983);Fleckenstein,Experimental Facts and Therapeutic Prospects,John Wiley,New York(1983);McCall,D.,Curr Pract Cardiol,v.10,p.1−11(1985))。カルシウムチャネル遮断薬は、細胞カルシウムチャネルを調節することによりカルシウムが細胞内に入るのを予防または緩徐化する異種群の薬物である。(Remington,The Science and Practice of Pharmacy,Nineteenth Edition,Mack Publishing Company,Eaton,PA,p.963(1995))。現在入手可能で、本発明に有用なカルシウムチャネル遮断薬の大部分は、3つの主要な化学的薬物群、即ち、ジヒドロピリジン類(ニフェジピンなど)、フェニルアルキルアミン類(ベラパミルなど)、およびベンゾチアゼピン類(ジルチアゼムなど)の1つに属する。本発明に有用な他のカルシウムチャネル遮断薬としては、アムリノン、アムロジピン、ベンシクラン、フェロジピン、フェンジリン、フルナリジン、イスラジピン、ニカルジピン、ニモジピン、ペルヘキシレン、ガロパミル、チアパミルおよびチアパミル類似体(1993RO−11−2933など)、フェニトイン、バルビツレート、ならびにペプチドであるダイノルフィン、ω−コノトキシン、およびω−アガトキシン等、および/またはこれらの薬学的に許容される塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 β−アドレナリン受容体遮断薬(β遮断薬としても知られる)は、狭心症、高血圧、および心不整脈におけるカテコールアミンの心血管作用に拮抗する薬物の一種である。β−アドレナリン受容体遮断薬としては、アテノロール、アセブトロール、アルプレノロール、ベフノロール、ベタキソロール、ブニトロロール、カルテオロール、セリプロロール、メドロキサロール(hedroxalol)、インデノロール、ラベタロール、レボブノロール、メピンドロール、メチプラノール、メチンドール、メトプロロール、メトリゾラノロール(metrizoranolol)、オクスプレノロール、ピンドロール、プロプラノロール、プラクトロール、プラクトロール、ソタロール、ナドロール、チプレノロール、トマロロール(tomalolol)、チモロール、ブプラノロール、ペンブトロール、トリメプラノール、2−(3−(1,1−ジメチルエチル)−アミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3−ピリデンカルボニトリルHCl、1−ブチルアミノ−3−(2,5−ジクロロフェノキシ)−2−プロパノール、1−イソプロピルアミノ−3−(4−(2−シクロプロピルメトキシエチル)フェノキシ)−2−プロパノール、3−イソプロピルアミノ−1−(7−メチルインダン−4−イルオキシ)−2−ブタノール、2−(3−t−ブチルアミノ−2−ヒドロキシ−プロピルチオ)−4−(5−カルバモイル−2−チエニル)チアゾール、7−(2−ヒドロキシ−3−t−ブチルアミンプロポキシ)フタリドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。前述の化合物は、異性体混合物として使用されても、またはそれらの各左旋性異性体もしくは右旋性異性体の形態で使用されてもよい。 多くの選択的「COX−2阻害剤」が当該技術分野で公知である。これらには、米国特許第5,474,995号明細書「Phenyl heterocycles as cox−2 inhibitors」;米国特許第5,521,213号明細書「Diaryl bicyclic heterocycles as inhibitors of cyclooxygenase−2」;米国特許第5,536,752「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,550,142号明細書「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,552,422号明細書「Aryl substituted 5,5 fused aromatic nitrogen compounds as anti−inflammatory agents」;米国特許第5,604,253号明細書「N−benzylindol−3−yl propanoic acid derivatives as cyclooxygenase inhibitors」;米国特許第5,604,260号明細書「5−methanesulfonamido−1−indanones as an inhibitor of cyclooxygenase−2」;米国特許第5,639,780号明細書「N−benzyl indol−3−yl butanoic acid derivatives as cyclooxygenase inhibitors」;米国特許第5,677,318号明細書「Diphenyl−1,2−3−thiadiazoles as anti−inflammatory agents」;米国特許第5,691,374号明細書「Diaryl−5−oxygenated−2−(5H)−furanones as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,698,584号明細書「3,4−diaryl−2−hydroxy−2,5−dihydrofurans as prodrugs to COX−2 inhibitors」;米国特許第5,710,140号明細書「Phenyl heterocycles as COX−2 inhibitors」;米国特許第5,733,909号明細書「Diphenyl stilbenes as prodrugs to COX−2 inhibitors」;米国特許第5,789,413号明細書「Alkylated styrenes as prodrugs to COX−2 inhibitors」;米国特許第5,817,700号明細書「Bisaryl cyclobutenes derivatives as cyclooxygenase inhibitors」;米国特許第5,849,943号明細書「Stilbene derivatives useful as cyclooxygenase−2 inhibitors」;米国特許第5,861,419号明細書「Substituted pyridines as selective cyclooxygenase−2 inhibitors」;米国特許第5,922,742「Pyridinyl−2−cyclopenten−1−ones as selective cyclooxygenase−2 inhibitors」;米国特許第5,925,631号明細書「Alkylated styrenes as prodrugs to COX−2 inhibitors」(これらの特許文献は全てMerck Frosst Canada,Inc.(Kirkland,CA)に譲渡されている)に記載のCOX−2阻害剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。その他のCOX−2阻害剤は、G.D.Searle&Co.(Skokie,IL)に譲渡され、「Substituted sulfonylphenylheterocycles as cyclooxygenase−2 and 5−lipoxygenase inhibitors.」と題された米国特許第5,643,933号明細書にも記載されている。 前述の多くのCOX−2阻害剤は選択的COX−2阻害剤のプロドラッグであり、薬理活性を有する選択的COX−2阻害剤に生体内で変換することによりその作用を及ぼす。前述のCOX−2阻害剤プロドラッグから生成される、薬理活性を有する選択的COX−2阻害剤は、国際公開第95/00501号パンフレット(1995年1月5日公開)、国際公開第95/18799号パンフレット(1995年7月13日公開)および米国特許第5,474,995号明細書(1995年12月12日発行)に詳述されている。「Human cyclooxygenase−2 cDNA and assays for evaluating cyclooxygenase−2 activity」と題された米国特許第5,543,297号明細書の教示から、当業者は薬剤が選択的COX−2阻害剤であるか、またはCOX−2阻害剤の前駆体であるか、従って本発明の一部となるかを判定することができるであろう。 アンジオテンシン系阻害剤は、アンジオテンシンIIの機能、合成または異化作用を妨げる薬剤である。これらの薬剤としては、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII拮抗薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、アンジオテンシンIIの異化作用を活性化させる薬剤、およびアンジオテンシンI(これから最終的にアンジオテンシンIIが誘導される)の合成を防止する薬剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。レニン−アンジオテンシン系は、血行動態および水・電解質平衡の調節に関与する。血液量、腎灌流圧、または血漿中Na+濃度を低下させる因子は、レニン−アンジオテンシン系を活性化させる傾向があり、これらのパラメータを上昇させる因子はその機能を抑制する傾向がある。 アンジオテンシンII拮抗薬は、アンジオテンシンII受容体に結合し、その活性を妨げることによりアンジオテンシンIIの活性を妨げる化合物である。アンジオテンシンII拮抗薬は周知であり、ペプチド化合物と非ペプチド化合物を含む。大部分のアンジオテンシンII拮抗薬は、僅かに構造が異なる同族体であり、フェニルアラニンの8位を他の何らかのアミノ酸で置換することによりその作動薬活性が減弱され;生体内での変性を緩徐化する他の置換により安定性を高めることができる。アンジオテンシンII拮抗薬の例としては、限定はされないが、ペプチド性化合物(例えば、サララシン[(San1)(Val5)(Ala8)]アンジオテンシン(1−8)オクタペプチドおよび関連類似体);N−置換イミダゾール−2−オン(米国特許第5,087,634号明細書);2−N−ブチル−4−クロロ−1−(2−クロロベンジル)イミダゾール−5−酢酸を含む酢酸イミダゾール誘導体(Long et al.,J.Pharmacol.Exp.Ther.247(1),1−7(1988)参照);4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−イミダゾ[4,5−c]ピリジン−6−カルボン酸および類似誘導体(米国特許第4,816,463号明細書);N2−テトラゾールβ−グルクロニド類似体(米国特許第5,085,992号明細書);置換ピロール、ピラゾール、およびトリアゾール(tryazoles)(米国特許第5,081,127号明細書);1,3−イミダゾールなどのフェノールおよび複素環誘導体(米国特許第5,073,566号明細書);イミダゾ縮合7員環複素環化合物(米国特許第5,064,825号明細書);ペプチド(例えば、米国特許第4,772,684号明細書);抗アンジオテンシンII抗体(例えば、米国特許第4,302,386号明細書);ビフェニル−メチル置換イミダゾールなどのアラールキルイミダゾール化合物(例えば、欧州特許第253,310号明細書、1988年1月20日);ES8891(N−モルホリノアセチル−(−1−ナフチル)−L−アラニル−(4,チアゾリル)−L−アラニル(35, 45)−4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−シクロ−ヘキサペンタノイル−N−ヘキシルアミド、三共株式会社、東京、日本);SKF108566(E−α−2−[2−ブチル−1−(カルボキシフェニル)メチル]1H−イミダゾール−5−イル[メチレン]−2−チオフェンプロピオン酸、Smith Kline Beecham Pharmaceuticals,PA);ロサルタン(DUP753/MK954,DuPont Merck Pharmaceutical Company);レミキレン(Remikirin)(RO42−5892,F.Hoffman LaRoche AG);A2作動薬(Marion Merrill Dow)および特定の非ペプチド複素環化合物(G.D.Searle and Company)が挙げられる。 ACE阻害剤としては、アミノ酸およびこれらの誘導体、ペプチド(ジ−およびトリ−ペプチドを含む)ならびに抗ACE抗体が挙げられ、これらはACEの活性を阻害し、それにより昇圧物質であるアンジオテンシンIIの生成を低減するまたはそれが生成されないようにすることによりレニン−アンジオテンシン系に介入する。ACE阻害剤は、高血圧、鬱血性心機能不全/心不全、心筋梗塞、および腎臓病を治療するために、医療上使用されてきた。ACE阻害剤として有用であることが知られている化合物の種類には、カプトプリル(米国特許第4,105,776号明細書)およびゾフェノプリル(米国特許第4,316,906号明細書)などのアシルメルカプトおよびメルカプトアルカノイルプロリン類、エナラプリル(米国特許第4,374,829号明細書)、リシノプリル(米国特許第4,374,829号明細書)、キナプリル(米国特許第4,344,949号明細書)、ラミプリル(米国特許第4,587,258号明細書)、およびペリンドプリル(米国特許第4,508,729号明細書)などのカルボキシアルキルジペプチド類、シラザプリル(米国特許第4,512,924号明細書)およびベナゼプリル(benazapril)(米国特許第4,410,520号明細書)などのカルボキシアルキルジペプチド模倣物、フォシノプリル(米国特許第4,337,201号明細書)およびトランドラプリル(trandolopril)などのホスフィニルアルカノイルプロリン類が挙げられる。 レニン阻害剤は、レニンの活性を妨げる化合物である。レニン阻害剤としては、アミノ酸およびその誘導体、ペプチドおよびその誘導体、ならびに抗レニン抗体が挙げられる。米国特許の対象となっているレニン阻害剤の例は以下の通りである:ペプチドの尿素誘導体(米国特許第5,116,835号明細書);非ペプチド結合により結合したアミノ酸(米国特許第5,114,937号明細書);ジ−およびトリ−ペプチド誘導体(米国特許第5,106,835号明細書);アミノ酸およびその誘導体(米国特許第5,104,869号明細書および米国特許第5,095,119号明細書);ジオールスルホンアミドおよびスルフィニル(米国特許第5,098,924号明細書);修飾ペプチド(米国特許第5,095,006号明細書);ペプチジルβ−アミノアシルアミノジオールカルバメート(米国特許第5,089,471号明細書);ピロールイミダゾロン(pyrolimidazolones)(米国特許第5,075,451号明細書);フッ素および塩素スタチン(statine)またはスタトン(statone)含有ペプチド(米国特許第5,066,643号明細書);ペプチジルアミノジオール(米国特許第5,063,208および米国特許第4,845,079号明細書);N−モルホリノ誘導体(米国特許第5,055,466号明細書);ペプスタチン誘導体(米国特許第4,980,283号明細書);N−複素環式アルコール(米国特許第4,885,292号明細書);抗レニンモノクローナル抗体(米国特許第4,780,401号明細書);および他の様々なペプチドおよびその類似体(米国特許第5,071,837号明細書、米国特許第5,064,965号明細書、米国特許第5,063,207号明細書、米国特許第5,036,054号明細書、米国特許第5,036,053号明細書、米国特許第5,034,512号明細書、および米国特許第4,894,437号明細書)。 HMG−CoA還元酵素阻害剤としては、スタチン、例えばシンバスタチン(米国特許第4,444,784号明細書)、ロバスタチン(米国特許第4,231,938号明細書)、プラバスタチンナトリウム(米国特許第4,346,227号明細書)、フルバスタチン(米国特許第4,739,073号明細書)、アトルバスタチン(米国特許第5,273,995号明細書)、セリバスタチン、ならびに米国特許第5,622,985号明細書、米国特許第5,135,935号明細書、米国特許第5,356,896号明細書、米国特許第4,920,109号明細書、米国特許第5,286,895号明細書、米国特許第5,262,435号明細書、米国特許第5,260,332号明細書、米国特許第5,317,031号明細書、米国特許第5,283,256号明細書、米国特許第5,256,689号明細書、米国特許第5,182,298号明細書、米国特許第5,369,125号明細書、米国特許第5,302,604号明細書、米国特許第5,166,171号明細書、米国特許第5,202,327号明細書、米国特許第5,276,021号明細書、米国特許第5,196,440号明細書、米国特許第5,091,386号明細書、米国特許第5,091,378号明細書、米国特許第4,904,646号明細書、米国特許第5,385,932号明細書、米国特許第5,250,435号明細書、米国特許第5,132,312号明細書、米国特許第5,130,306号明細書、米国特許第5,116,870号明細書、米国特許第5,112,857号明細書、米国特許第5,102,911号明細書、米国特許第5,098,931号明細書、米国特許第5,081,136号明細書、米国特許第5,025,000号明細書、米国特許第5,021,453号明細書、米国特許第5,017,716号明細書、米国特許第5,001,144号明細書、米国特許第5,001,128号明細書、米国特許第4,997,837号明細書、米国特許第4,996,234号明細書、米国特許第4,994,494号明細書、米国特許第4,992,429号明細書、米国特許第4,970,231号明細書、米国特許第4,968,693号明細書、米国特許第4,963,538号明細書、米国特許第4,957,940号明細書、米国特許第4,950,675号明細書、米国特許第4,946,864号明細書、米国特許第4,946,860号明細書、米国特許第4,940,800号明細書、米国特許第4,940,727号明細書、米国特許第4,939,143号明細書、米国特許第4,929,620号明細書、米国特許第4,923,861号明細書、米国特許第4,906,657号明細書、米国特許第4,906,624号明細書および米国特許第4,897,402号明細書(これらの特許の開示内容は参照により本明細書に援用される)に記載の他の多くのものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 本発明は、前述の薬剤のいずれかの1種類以上と本発明の反復RIC療法との併用を考えるものと理解されたい。 RIC 本明細書で使用する場合、RIC療法は、一過性虚血イベントの誘発とそれに続く再灌流イベントを1サイクルとして少なくとも1サイクル行うものである。通常、これらの療法は、対象の肢または周囲組織の血流を制限した後、血流制限を取り除き、血液を肢または組織に再灌流させることにより行われる。RIC療法は、通常、非侵襲的である。療法は、1サイクルまたは複数のサイクル(2サイクル、3サイクル、4サイクル、または5サイクル以上を含む)を含んでもよい。1つの重要な実施形態では、療法は、虚血と再灌流を1サイクルとして4サイクル含む。 血流制限は、通常、収縮期血圧より高い肢または組織への加圧力(即ち、超収縮期血圧)の形態を取る。それは、収縮期血圧より約5mmHg、約10mmHg、約15mmHg、約20mmHg以上高くてもよい(大きくてもよい)。収縮期血圧は対象により異なるため、虚血を誘発するのに必要な絶対圧力は対象により異なる。他の実施形態では、圧力は、例えば200mmHgに事前設定されてもよい。本発明はこれに関して限定されないため、任意の方法を使用して血流制限を達成してもよい。通常、膨張可能なカフを用いてそれを達成してもよいが、止血帯装置も適している。RICを行うための他の自動装置の例を後述する。 誘発される虚血イベントは一過性である。即ち、その持続時間は約1分、約2分、約3分、約4分、または約5分以上であってもよい。同様に、再灌流イベントの持続時間は約1分、約2分、約3分、約4分、または約5分以上であってもよい。実施例は、5分間の虚血とそれに続く5分間の再灌流を1サイクルとして4サイクル行った場合の運動機能に対する効果を示す。 肢を使用して行う場合、上肢を使用してもまたは下肢を使用してもよいが、上肢が好ましい場合もある。場合によっては、身体の2つの異なる部位で重複してまたは同時にRICを行う。 手動であってもまたは自動であっても、一過性の虚血と再灌流を誘発することができれば、どのような装置を使用してRICを行ってもよい。 その最も簡単な形態の1つでは、血圧計(即ち、対象の血圧を測定するのに通常使用される機器)を使用して本方法を実施してもよい。血圧計のカフを対象の肢(即ち、腕または脚)の周囲に配置し、肢の血流を閉塞するのに十分大きい圧力(即ち、対象の収縮期血圧より大きい圧力)になるまで膨張させる。規定の時間(本明細書では虚血持続時間と称される)、カフを膨張状態に維持して肢の血流を止める。虚血持続時間の後、一定時間(本明細書では再灌流持続時間と称される)、カフから圧力を解放して肢に血液を再灌流させる。その後、カフを再膨張させ、処置を直ぐに何回か繰り返す。 手動タイプの止血帯を使用して、本方法を同様に実施してもよい。PCT出願国際公開第83/00995号パンフレットおよび米国特許出願公開第20060058717号明細書に記載のものなどの装置を使用してもよい。 米国特許出願公開第20080139949号明細書に記載の別のシステムを使用してもよい。このシステムの利点は、医師と独立してそれを使用することができ、且つ、それが必要なRIC療法を自動的に誘発するということである。このシステムを一部、図8に例示しており、それにはカフ10、アクチュエータ12、制御装置14およびユーザ・インターフェース16が示されている。カフは、対象の肢15(対象の腕または脚など)の周囲に配置されるように構成されている。アクチュエータは、作動時に、カフを肢の周囲で縮径させ、肢の血流を閉塞する。制御装置は、サイクルを1回以上繰り返すことを含むプロトコルを実行する。サイクル自体は、カフを作動させて血流を止めること、虚血持続時間、カフを作動状態に維持すること、カフを解放すること、およびカフを弛緩状態に維持して再灌流させることを含む。 図9は、RICの実施に使用され得るスキームを表すブロック図を示す。スキームは、対象の肢の周囲にカフを配置することから開始する。次いで、システムを作動させ、制御装置によりプロトコルを開始する。一実施形態では、医療従事者がシステムを作動させる。別の実施形態では、対象がシステムを作動させてもよい。カフは縮径して、対象の肢に、収縮期血圧より高い初期圧力を加える。本明細書に記載のように、初期圧力はシステムのデフォルト値であってもよく、または特定のプロトコルにプログラムされてもよい。次いで、カフが収縮し、対象の収縮期血圧が測定される。これは対象のコロトコフ音または振動の発生を監視することにより達成されてもよい。代替として、または追加で、末端部遠隔センサ(例えば、血流の有無または血流の維持を検知する、指先に装着される装置)を使用してもよい。収縮期血圧を測定した後、システムはプロトコルの第1のサイクルを開始する。幾つかの実施形態では、プロトコルの初期部分として収縮期血圧を測定してもよい。本明細書で使用する場合、プロトコルおよび療法という用語は互換的に使用される。 サイクルが開始すると、カフが縮径し、プロトコルに定められた量だけ対象の収縮期血圧より高い目標の圧力を対象の肢に加える。これにより、対象の肢の血流が閉塞される。対象の肢に対する外部圧力が、プロトコルに定められた虚血持続時間、維持される。システムは、虚血持続時間中、対象の圧力解放基準を監視するが、これにはシステム電源異常、システム出力スパイク、およびクイックリリース機構の手動操作を含むことができる。システムはまた、虚血持続時間中、対象の肢の再灌流のあらゆる兆候に関して対象を監視し、それに従って、カフにより加えられる外部圧力を増加させ、このような再灌流を防止する。再灌流の兆候としては、コロトコフ音または振動の発生を挙げることができる。虚血持続時間の経過後、カフは対象の肢の周囲から圧力を解放し、再灌流させる。サイクルに定められた再灌流持続時間、再灌流させる。 初期サイクルは、通常、再灌流持続時間後に終了する。この時、次のサイクルが開始してもよく、その場合、カフが作動して、対象の肢の周囲で縮径し、再度、虚血持続時間、肢の血流を閉塞する。 図8に示すカフは対象の肢の周囲に配置され、作動時に肢の周囲で縮径するように構成されている。一実施形態では、スリーブは対象の上腕、腓腹、または大腿の周囲に巻き付けられ、所定の位置にぴったりと固定される。カフの一部は、対象の肢の周囲の所定の位置にスリーブを固定するのに使用することができる面ファスナタイプの材料を備えてもよい。アクチュエータは、対象の肢の血流を閉塞する点まで肢が締め付けられるように、カフを膨張させる。 図示するカフは、カフを膨張させ、対象の肢の周囲で縮径させる空気などの流体が入る膨張可能なブラダー(図示せず)を備える。ブラダーは、軟質プラスチックまたはゴムなどの空気不透過性材料で構成される。膨張時に空気がブラダーに入る、または収縮時に空気がブラダーから出ることができるように、ブラダーの一端に接続口18が設けられている。接続口は、空気ホースなどによるアクチュエータへの接続を容易にする係合機構を備えてもよい。これらの機構としては、ねじ、およびクリップ等を挙げることができる。図示する実施形態は、カフ内に配置された単一のブラダーを備えるが、他の実施形態も可能であることを理解されたい。例として、幾つかの実施形態によれば、別々のブラダーを必要としないように、布帛スリーブ自体が空気不透過性であってもよい。他の実施形態では、本発明の態様はこの点に関して限定されないため、共通のスリーブに複数の別々の膨張可能なブラダーを組み込んでもよい。 RICを受ける対象の全身サイズは非常に様々となる可能性があり、特に、本方法を適用できる種の範囲を考慮すると、非常に様々となる可能性がある。このばらつきを考慮すると、カフの幾つかの実施形態は、予想され得る様々な対象の肢の周囲寸法に適合するように、広範囲にわたり調節可能であることが望ましい場合がある。幾つかの実施形態によれば、カフは、3フィート以下の周囲寸法に適合し得るように、長さが3フィートより長い膨張可能な布帛スリーブを備える。カフの実施形態は、ずっと小さい対象(新生児を含む)の上腕または脚に適合するように、2インチ、1インチ、またはさらにはそれ以下の小さい幅を備えてもよい。しかし、本発明の態様はこの点に関して限定されないため、他の実施形態は、ずっと狭い範囲の肢サイズを取り囲むように構成できることも理解されたい。 対象の肢の周囲にカフを締め付けるまたはカフを解放するためのアクチュエータとして、様々な装置を使用することができる。図8の実施形態に示すように、アクチュエータは、膨張可能なカフに空気ホースを通して圧縮空気を供給する空気ポンプを備える。アクチュエータはまた、対象の肢の周囲でカフが緩むように、作動時に膨張可能なカフと外部環境との間の通路を開放し、カフから圧縮空気を逃がす排気弁20も備える。 空気ポンプは、圧縮空気を送給することができる任意の装置を備えてもよい。幾つかの実施形態によれば、空気ポンプはピストン圧縮機を備えるが、渦巻きポンプおよびスクロール圧縮機のような他の種類のポンプを使用することもできる。幾つかの実施形態によれば、ポンプは毎分0.1〜20立方フィートの速度、頭部圧力50psi以下の気流を供給するように構成されてもよい。しかし、本発明の態様はこの点に関して限定されないため、他の流量および/または圧力も可能である。 前述のように、アクチュエータは、対象の肢の周囲からカフを解放する解放機構を備えてもよい。図示する実施形態では、解放は、制御装置ハウジング内に配置される排気弁20を備える。図示するように、排気弁は、完全に閉鎖した位置と完全に開放した位置との間を迅速に移動し、カフから空気を迅速に放出して対象からカフを迅速に解放するソレノイドであってもよい。幾つかの実施形態によれば、例えば、カフの圧力を調節するために、または対象の血圧を測定するときに必要とされ得るような比較的制御された圧力解放を可能にするために、同じ排気弁または別の排気弁を、ゆっくり開放するように作動させてもよい。 本システムの実施形態は、対象の肢からカフを迅速に解放することを可能にする安全機構を備えてもよい。さらに、これらの実施形態の幾つかは、対象が不快感を感じるときなどに、対象が容易に作動させることができる。一実施形態では、安全解放機構22は、カフに、またはカフの近傍に配置された大きなボタンを備える。この点に関して、安全解放機構は対象の手が届く範囲にある。他の実施形態では、安全解放機構は、対象の空いている手に保持することができるものなどの、別個のアクチュエータを備えてもよい。安全解放機構の作動により空気カフの排気弁が開放し、それによりカフから空気を迅速に排出することができる。 本システムはまた、連続的に動作するカフ解放機構を備えることもできる。例として、カフから圧縮空気を連続的にゆっくりと放出するために、緩速排気弁を空気カフに組み込んでもよい。連続的な緩速解放機構は、電源異常、または、冗長安全機構が適切に作動することを妨げ得る他の事態に直面しても、対象の肢を安全に解放することができる。連続的な緩速解放機構は空気カフに限定されないため、空気で膨張可能なカフを使用しない実施形態に類似のタイプの機構を組み込んでもよい。システムはまた、圧力逆止弁を安全機構として備えてもよい。このような弁は最大設定値を上回る圧力を解放することにより作動することができる。最大設定値は、遠隔虚血コンディショニング中に使用される超収縮期血圧以上とし、200mmHg、210mmHg、220mmHg、230mmHg、240mmHg、または250mmHgであってもよいが、これらに限定されるものではない。システムは、圧力(例えば、カフ圧力および/または対象の血圧)を監視する、および、好ましくは、実時間であれまたは遠隔虚血コンディショニングの完了後であれ、このような圧力測定値を読み取るソフトウェアおよび/またはハードウェア構成要素を備えてもよい。このようにして、圧力の偏差を確認することができる。 本システムの実施形態は、プロトコルおよびシステム内の他の任意のセンサから情報を受け取り、アクチュエータを制御してRICを行う制御装置を備える。制御装置とプロトコルの組み合わせは、多くの方法のいずれかで実行することができる。例えば、一実施形態では、制御装置とプロトコルの組み合わせは、ハードウェア、ソフトウェア、またはこれらの組み合わせを使用して実行されてもよい。ソフトウェアで実行する場合、ソフトウェアコードは、1台のコンピュータに設けられたものであってもまたは複数のコンピュータに分配されたものであっても、任意の適したプロセッサまたはプロセッサの集合ですることが実行できる。本明細書に記載の機能を果たす任意の構成要素または構成要素の集合は、一般的に、本明細書に記載の機能を制御する1つ以上の制御装置と見なされることを理解されたい。1つ以上の制御装置は、専用のハードウェアを用いる、またはマイクロコードもしくはソフトウェアを使用して前述の機能を果たすようにプログラムされる汎用のハードウェア(例えば、1つ以上のプロセッサ)を用いるなどの多くの方法で実行することができる。1つ以上の制御装置は1つ以上のホストコンピュータ、1つ以上の記憶システム、または1つ以上の制御装置に連結された1つ以上の記憶装置を備え得る他の任意の種類のコンピュータに備えられていてもよい。一実施形態では、制御装置は、無線で、または電気ケーブルもしくは光ケーブルで離れた場所に通信する通信回路を備える。 この点に関して、本発明の実施形態の実行の1つには、制御装置により実行されると本発明の実施形態の本明細書に記載の機能を果たすコンピュータプログラム(即ち、複数の命令)の形態のプロトコルがコード化された少なくとも1つのコンピュータ読み取り可能な媒体(例えば、コンピュータメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク、テープなど)が含まれることを理解されたい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、それに記憶されたプロトコルを任意のコンピュータシステム資源にロードし、本明細書に記載の本発明の態様を実行することができるように、携帯可能であってもよい。さらに、実行されると本明細書に記載の機能を果たすプロトコルまたは制御装置とは、ホストコンピュータで実行されるアプリケーションプログラムに限定されるものではないことを理解されたい。むしろプロトコルという用語は、本明細書では一般的な意味で使用され、本発明の本明細書に記載の態様を実行するようにプロセッサをプログラムするのに使用できる任意の種類のコンピュータコード(例えば、ソフトウェアまたはマイクロコード)を指す。 システムは、また、対象および/またはシステム自体の一部から情報を受け取る1つ以上のセンサ26を備えてもよい。このようなセンサは、処置される肢を含む、対象の任意の部分の血流に関する情報を受け取ることができる。これらのセンサは、また、空気カフ内の空気圧、カフにより加えられる圧力の直読値、または張力帯(tension band)の一部の張力などの、システムの他の動作パラメータに関する情報を受け取ることもできる。 空気カフは、カフ内の圧力を測定するセンサを備えてもよい。カフ圧力は、カフの下の肢の血管内に存在する圧力を直接示すことが多い。システムの制御装置は、本明細書に記載のようにサイクルの虚血持続時間中に維持されなければならない特定のカフ圧力を目標にするようにプログラムされることが多い。空気カフを備える実施形態では、圧力センサは、カフの加圧空間内、空気ホース、またはさらにはアクチュエータ自体の中のどこに配置されてもよい。圧力センサはまた、カフと対象の肢の外面との間の圧力を直接測定するようにカフの内面に配置されてもよい。使用中、カフは、目的の血管の圧力がより直接的に測定されるように、圧力センサが対象の動脈上に直接配置されるような向きに配置されてもよい。カフ幅、周囲長、および血圧測定時の圧力の関係について記載している、Noordin et al.J Bone Joint Surg Am,2009,91:2958−2967を参照することができる。 一実施形態では、システムは、また、コロトコフ音を検出するため、1つ以上の振動および/または超音波センサ28を備えてもよい。コロトコフ音は、一般に、収縮期と拡張期の間の圧力が対象の動脈に外部から加えられるときに存在するものと理解される。収縮期血圧は対象の血管の血流を完全に閉塞する圧力値と関連し、この点に関して、システムがそれをフィードバックとして使用し、システム内の圧力が血流を可能にするのに十分低い、または血流を閉塞するのに十分高いことを確認することができる。 カフを装着する肢の血流または再灌流の停止を確認するため、1つ以上のセンサを備えてもよい。例えば、幾つかの場合、カフを装着する肢の末端部(肢の手指または足指など)にパルスオキシメータ30を配置してもよい。パルスオキシメータは、対象の血管内の血液の脈動および酸素で飽和されているヘモグロビンのパーセンテージに関する情報を提供することができる。肢の血流が生じていないとき、パルスオキシメータは脈拍がないことを検出し、血流の閉塞が確認される。さらに、パルスオキシメータは、酸素で飽和されているヘモグロビンのパーセンテージも検出することができ、それは肢の血流が停止すると低下することになる。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、光電脈波変換器、超音波流量変換器、温度変換器、赤外線検出器、および近赤外線変換器などの他のセンサを使用して血流の停止を確認してもよいことを理解されたい。 前述のように、本システムは、制御装置により、システムの動作を指示するプロトコルを備える。プロトコルの実施形態には、カフ作動、虚血持続時間、カフ解放、および再灌流持続時間を含むサイクルが含まれる。プロトコルの多くの実施形態では、サイクルを複数回繰り返してもよい。さらに、プロトコルの幾つかの実施形態には、収縮期血圧の測定が含まれる。 サイクルのカフ作動部分は、対象の肢の周囲でカフを縮径させ、肢の血流を閉塞することを含む。カフの縮径は、目標とするカフ圧力設定値などのプロトコルからの命令を読み取る制御装置により、および制御装置を起動してカフを目標とする設定値に到達させることにより達成される。目標とする設定値の達成は、本明細書に記載のセンサおよび方法のいずれかにより検知されてもよい。 サイクルの虚血期の間、対象の肢の周囲で圧力を維持し、肢の血流の再灌流を防止する。虚血期の長さは虚血持続時間と称され、通常、医師または他の医療従事者により定められ、プロトコルにプログラムされる。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、虚血持続時間は数秒間と短くてもよく、または20分間と長くてもよく、またはさらにはそれより長くてもよい。幾つかの実施形態では、虚血持続時間は、同じプロトコル中、サイクル毎に異なるが、他の実施形態では虚血持続時間は一定である。 制御装置は、カフにより加えられる圧力を対象の収縮期血圧より高い設定値に維持するように作動する。カフの実施形態は、経時的に対象の肢に対して弛緩し、それにより圧力を低下させ、最終的に再灌流させることができる。これは、対象の肢の筋肉の弛緩、肢の周囲でのカフの伸張、および空気漏れ(意図的なまたは偶発的な)等を含む様々な要因によって起こり得る。この目的のために、センサが制御装置に圧力読取値をフィードバックとして提供してもよい。制御装置は、設定値と実際の圧力読取値との差を測定することができ、必要なコマンドをアクチュエータに与えて、誤差を補償することができる。 様々な方法を使用して、虚血持続時間中の制御装置の適切な設定値を定めることができる。一実施形態によれば、設定値は、医師(または他の医療従事者)により手動でプロトコルに入力される。あるいは、医師が対象の収縮期血圧に関する設定値を選択してもよい。一実施形態では、設定値は、対象の収縮期血圧より一定の圧力量高い値として、例えば、対象の収縮期血圧より5mmHg、10mmHg、15mmHg、20mmHg、25mmHg、30mmHg、35mmHgまたは他の任意の一定量高い値として選択されてもよい。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、他の実施形態では、設定値は対象の収縮期血圧のパーセンテージとして、例えば、101%、102%、103%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、111%、112%、1113%、114%、115%または収縮期血圧および他のパーセンテージとして定められてもよい。収縮期血圧より高い設定値は、医療従事者により設定されてもよく、対象の身体のサイズ、対象の肢のサイズ、対象の血圧、および血流停止の確認等を含む幾つかの要因に依存し得るが、これらに限定されるものではない。 プロトコルは、幾つかの実施形態によれば、対象の収縮期血圧を測定する段階を含む。センサで肢のコロトコフ音または振動の発生を監視しながら、カフを対象の肢の周囲で、収縮期血圧より高いと考えられる点から意図的に緩めてもよい。収縮期血圧を測定した後、プロトコルを通常の手順で継続してもよい。 収縮期血圧の測定は、任意選択的に、プロトコル中いつ行われてもよく、または全く行われなくてもよい。幾つかの実施形態によれば、各サイクルは、対象の収縮期血圧の測定から開始する。他の実施形態では、プロトコルの初期部分の間に1回だけ収縮期血圧を測定してもよい。さらに他の実施形態では、各サイクルのカフ解放部分の間、カフが解放される時に収縮期血圧を測定してもよい。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、さらに本明細書に記載のように、プロトコル中、収縮期血圧を全く測定しなくてもよい。 システムは、虚血持続時間中、圧力設定値を調節するように構成されてもよい。本明細書に記載のように、システムは再灌流の発生を検出するセンサを備えてもよい。一例として、これは、コロトコフ音または振動の存在を検出することにより達成されてもよい。虚血持続時間中のコロトコフ音の存在は、カフ圧力が収縮期血圧より低くなったか、または収縮期血圧が、以前は収縮期血圧よりも高かった設定値を越えたことを示す可能性がある。追加でまたは代替として、例えば、血流の有無を検出する指に装着される装置を含む、他の装置を使用してもよい。このような場合、制御装置は、新たに測定された収縮期血圧および/または他の情報に基づいて設定値を調節してもよく、この点に関して、さもなければ起こり得る望ましくない再灌流を検出および防止することができる。 サイクルのカフ解放部分は虚血持続時間の終わりに行われ、カフを拡張期血圧より低い点まで解放することを含む。 幾つかの実施形態によれば、カフの解放は、カフの圧力または張力の解放を含む。空気カフを使用する実施形態では、これは、単に排気弁を全開位置に移動させて、カフ圧力を迅速に低下させ、それに対応して対象の肢の周囲でカフを迅速に弛緩させることにより行われてもよい。しかし、本発明の態様はこの点に関して限定されないため、他の実施形態では、カフ弛緩は比較的緩速に、比較的制御して行われてもよいことを理解されたい。さらに、本明細書に記載のように、カフの解放は、コロトコフ音または振動の発生を監視し、対象の収縮期血圧を測定または確認しながら行ってもよい。 サイクルの実施形態では、カフ解放後に再灌流持続時間が続く。一定時間(再灌流持続時間と称される)肢に再灌流させる。虚血持続時間と同様に、様々な長さの時間、即ち5秒間、または1分間以上の短時間、および20分間、またはさらにはそれ以上の長時間、再灌流させてもよい。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、再灌流持続時間は、共通プロトコル中、毎サイクル一定であってもよく、またはサイクル毎に異なってもよい。 プロトコルは、任意の数のサイクルを備えてもよい。本明細書に記載のように、共通のサイクルを単に複数回、例えば、2回、3回、または4回以上繰り返して、プロトコルを完了してもよい。あるいは、異なるパラメータ(異なる虚血持続時間、再灌流持続時間、および虚血持続時間中の圧力設定値など)を有するように、プロトコルのサイクルをプログラムしてもよい。 幾つかの実施形態では、システムは、プロトコルの全段階のシステムパラメータ(カフ圧力または張力など)を記録するデータロギング機構を備えてもよい。また、動作の日時が記録されてもよい。また、対象を識別する個人情報などの他の特徴がシステムにより記録されてもよい。 システムの実施形態は、対象または医療従事者にプロトコルの進行に関して知らせる様々な機構を組み込んでもよい。可聴または可視インジケータがプロトコルの段階のいずれかに付随してもよい。例として、クロックが、プロトコルの所与の部分またはプロトコル全体に対する経過時間または残り時間を示してもよい。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、実施形態は、対象および/または医療従事者が常に情報を得ることができるようにする他の機構を備えてもよい。 幾つかの実施形態によれば、システムは、対象による改ざんまたは偶発的再プログラムを防止する機構を備える。例として、幾つかの実施形態では、コードを入力しないと再プログラム可能な機構にアクセスできないようにしてもよい。これにより、対象が誤ってプロトコルを再プログラムすること、または他にシステムの動作を妨げることを防止することができる。電子キーおよび機械的ロック等の他の装置を使用して偶発的再プログラムを防止してもよいことを理解されたい。 システムは様々な環境で使用されるように構成されてもよい。例として、システムは、容易に移動できるように、キャスター付きの移動式スタンドに取り付けられてもよい。スタンドは、制御装置、ユーザ・インターフェース、およびカフへの接続部品を対象に好都合な高さに配置することができる。他の実施形態では、システムは携帯用として構成される。このような実施形態では、システムは、持ち運びし易いようにスーツケースに容易に入るように構成されてもよい。 システムは、また、図1の実施形態に示す構成要素に限定されるものではない。例として、図10に示すもののような他の実施形態によれば、カフは、代替の機構で対象の肢を縮径するように構成されてもよい。図示する実施形態では、カフは、一端に配置されたラチェット機構を有する帯状体として構成されている。使用中、帯状体の自由端をラチェット機構に通して、帯状体を対象の肢の周囲に巻く。このような実施形態では、アクチュエータは、帯状体の自由端を引いてラチェット機構をさらに通るようにし、肢の周囲でカフを縮径させる、またはラチェット機構を解除して帯状体を解放し、肢から帯状体を解放する機構を備えてもよい。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、止血帯機構などのさらに他の機構も可能である。 図10を参照して前述したように、幾つかの実施形態は、膨張せず、別の機構により対象の肢の周囲に締め付けられる帯状体を備えるカフを有してもよい。このような機構では、アクチュエータは、帯状体に張力が加わるように、帯状体の一端を帯状体の他の部分に対して移動させるように構成された張力調整機構を備えてもよい。図示するように、機構は、ハウジング内で互いに至近距離に保持された対向するローラを備えてもよい。ハウジングは、帯状体の自由端を受け入れるスロットと、帯状体の反対側の端部に固定取り付けするための固定点を備えてもよい。帯状体の自由端をスロットに入れてローラの間に通す。電気モーターなどにより、ローラを互いに対して回転するように機械的に作動させ、自由端をハウジングを通して引き、このようにして対象の肢の周囲に帯状体を締め付けてもよい。 張力調整機構は、フリーホイールラチェット機構に取り付けられた対向するローラを備えてもよい。フリーホイール機構により、僅かな抵抗で帯状体をスロットを通して一方向に引くことが可能であるため、帯状体を迅速に引いて対象の肢の周囲にぴったりと配置することができる。フリーホイール機構はまた、この機構が解除されない限り、または対向するローラが作動しない限り、帯状体がスロットを通って緩む方向に移動することを防止する。本発明の態様はこの点に関して限定されないため、全ての実施形態がフリーホイール機構を備えるわけではないことを理解されたい。 対向するローラは、使用中、どちらかの方向に回転して帯状体の締め付けと緩めを行う。必要に応じて、ローラは、帯状体が特定の張力を達成するまで迅速に回転することができる。使用中、帯状体の張力を微調整するためにローラをさらに作動させてもよい。対象の肢からカフを解放する場合、ラチェット機構またはクラッチを解除して対向するローラが自由に動き、従って張力が迅速に解放されるようにしてもよい。 システムおよび/または装置は、対象間での汚染を防止するために、および対象間でシステムまたは装置を滅菌する必要がないように、使い捨て構成要素を備えてもよい。全システムまたは装置が使い捨てであってもよく、またはその構成要素の1つ以上が使い捨てであってもよい。使い捨て構成要素としては、システムの(1つ以上の)カフおよび/または(1つ以上の)カフ用のスリーブもしくはライナーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。 本発明の態様は、本明細書で説明するカフの実施形態に限定されるものではない。 材料および方法 動物。58週齢の雄性スプレーグ・ドーリー(SD)ラット、体重250g〜280g(Experimental Animal Center,Fudan University,Shanghai,P.R.China)を試験に用いた。動物実験のプロトコルは、National Institute of Healthにより出版され(NIH出版番号第85−23、1996年改訂)、Animal Care Committee of Shanghai Sixth Hospital,Shanghai Jiao Tong University School of Medicineにより認可された「The Guide for the Care of Use of Laboratory Animals」に準拠した。ラットは全て、実験前の馴化期間のため2週間飼育した。 手術準備。ペントバルビタールナトリウム(40mg/kg、IP)で麻酔し、気管内挿管した後、動物を室内空気で換気した(Animal Respirator DW−2000,Aloctt Biotech,Shanghai,P.R.China)。左第4肋間開胸により心臓を露出した。可逆的な冠動脈閉塞を行うために、左前下行冠動脈(LAD)を左心耳先端部の1〜2mm下で、6−0プロレン縫合糸で包囲し、その端部をポリエチレンチューブ(PE−50)に通してスネアを形成した。LAD閉塞の前に、動物に抗凝固処置を行い(150U/Kgヘパリンナトリウム)、リドカイン(4mg/Kg)を静脈内注射した。心虚血は、縫合糸の下の青白い領域またはECGで示されるST−T上昇により確認され、再灌流は、チアノーゼおよび血管陰影(vascular blush)の迅速な消失により特徴付けられた。プロトコルの終了時にスネアを除去し、閉胸し、動物を回復させ、意識が戻る直前にタムゲシック(tamgesic)(0.03mg/kg)を投与した。 実験プロトコル。麻酔後、全てのラットを次の6つの実験群に無作為に割り付けた: 1)MI群(MI対照)、長期観察を行うために、45分間LAD結紮した後、再灌流を行うことによりMIを生じさせた; 2)1回の遠隔虚血ポストコンディショニング(sPost)群(本明細書ではrIPerCとも称される)、虚血再灌流傷害の外科的処置中、麻酔下の動物に、指標虚血期間の終了20分前から、上大腿部の周囲にトルニケット(torniquet)を締めて後肢血流を閉塞し、5分間の閉塞とそれに続く5分間の解放を1サイクルとして4サイクル行うことにより、遠隔虚血ポストコンディショニングを施した。肢虚血は、止血帯の下の後肢の蒼白およびチアノーゼにより確認した; 3)遅延ポストコンディショニング(dPost)群、遅延遠隔ポストコンディショニングは、4日目(再灌流の72時間後)に施した。ここでも比較的低投与量のペントバルビタールナトリウム(30mg/Kg)でラットに麻酔をかけた。前述と同様に遠隔ポストコンディショニングを施した。また、ラットの意識が戻る前にテムゲシック(0.03mg/kg)を投与した; 4)反復遠隔ポストコンディショニング(rPost)群(本明細書ではrPostCとも称される)、最初の遠隔ポストコンディショニング(第2群と同一)の後、ポストコンディショニングを2日おきに28日間繰り返し、dPost群のラットで記載したのと同様に療法を施した; 5)集中的遠隔ポストコンディショニング(iPost)群(本明細書ではiPostCとも称される)、最初の遠隔ポストコンディショニング(第2群と同一)の後、前述したのと同じ遠隔ポストコンディショニング療法を毎日、28日間繰り返した; 6)シャム群、ラットは偽手術を受け、縫合糸による結紮は行わなかった。観察期間を終えた生存ラットは全て、再灌流後4日目(再灌流の72時間後)またプロトコル図にもこれを表示した)または28日目に犠牲にし、これらをそれぞれ、下記に概説し、図1に詳細に示す試験に用いた。 4日目および28日目の試験のために、遠隔虚血ポストコンディショニング療法に割り付けられた動物を4日目または28日目に、ポストコンディショニング処置の2時間後に安楽死させた。心エコー検査と侵襲的血行動態検査(後述)の両方を行い、安楽死直前のリモデリング過程を評価した。 安楽死の後、下大静脈から全血を採取し、心臓を回収した。心臓突然死を起こしたもの、特に心破裂に関する心臓突然死の可能性があるものを含む各ラットを慎重に解剖した。解剖後、28日目のものから得られた心臓のLV重量を記録し、LV重量と体重の比(LVMI)を算出した。組織学的検査を行うために、乳頭筋レベルでのLV心筋組織の1横断切片、約5mmを採取し、4%ホルマリンで固定した後、パラフィン包埋した。後で分析するために、残りのLV組織は液体窒素で新鮮凍結(snap frozen)して−80℃で貯蔵した。 生存試験。生存率を評価するために、さらに合計250匹のラットをMI群、RIPerC群、rPostC群、iPostC群およびSP群に割付け(各群にラット50匹)、偽手術したラット25匹を対照として用いた。ラットは全て12週間厳密に監視した。各ラットを慎重に解剖し、突然死、とりわけ心破裂に関する突然死の原因を調べた。生存率を解析し、処置の長期効果を評価した。 心エコー検査および血行動態試験。15−MHzプローブ(Acuson Sequoia 512)を備えた超音波装置を使用して、MI後28日目のものだけ経胸郭心エコー検査を行った。麻酔導入後、二次元心エコー検査とMモード心エコー検査の両方を得た。短軸像で、乳頭筋レベルでのLV拡張末期径(LVEDD)およびLV収縮末期径(LVESD)を測定した。左室内径短縮率(FS)も算出した。これらの値は全て、5つの連続する心周期の平均であり、測定値は、処置プロトコルに対して盲検化された2人の独立した研究者により解析された。その後、血行動態試験のため動物の心臓カテーテル検査を行った。予めヘパリン処置され、液体充填圧力変換器(MPA−CFS,Alcott Biotech,Shanghai,China)に接続された細いポリエチレンチューブを右頸動脈に挿入した後、チューブを左心室に進入させた。心拍数(HR)、左室最大収縮期圧および拡張末期圧(LVEDP)およびLV圧の最大上昇速度と最大低下速度(それぞれdP/dtmaxおよびdP/dtmin)を記録した。 心筋梗塞サイズの測定。4日目(再灌流の72時間後)にLADを再閉塞し、1%エバンスブルー1mlを大動脈と冠動脈に灌流した。その後、心臓を摘出し、PBSを灌流し、頂底(apical−basal)軸に垂直な面で横断薄切して、厚さ8mmの切片を得た。次いで、心臓切片を1%の2,3,5−トリフェニルテトラゾリウムクロライド(TTC)(Sigma)中で5〜10分間、37℃でインキュベートした。Image Jソフトウェアを使用して、各切片の梗塞領域(青白)、リスクのある領域(赤)、および全LV領域を測定した。全切片の梗塞領域重量の合計を全切片のLVリスク領域重量の合計で除し、100を乗ずることにより、梗塞サイズ(パーセンテージとして表す)を算出した。 MI後28日目の梗塞サイズを測定するために、乳頭筋レベルの心筋の中心部から得られた薄片を使用してLV領域を推定した。梗塞(繊維化領域として表す)の周囲長をトレースし、次式:梗塞周囲長(IP)のパーセンテージ=梗塞瘢痕の周囲長/[(心外膜周囲長+心内膜周囲長)/2]×100%[22]を使用して、MIサイズをLV領域に対し正規化した。 組織学的分析。免疫組織化学染色を行うために、脱パラフィン処理した組織切片を準備した。4日目から得られた心臓組織を使用して、好中球およびマクロファージ浸潤を定量化するために、抗ミエロペルオキシダーゼ一次抗体(MPO、1:50希釈、Abcam)、抗ED−1一次抗体(マクロファージに対する特異的マーカー、1:100希釈、Chemicon)および単球走化性タンパク質−1(MCP−1、1:100希釈、Abcam)を行った。28日目から得られた心臓組織を使用し、酸化ストレスにより生じるDNA損傷を定量化するために、抗8−ヒドロキシグアノシン抗体(8−OhdG、1:300希釈、Abcam)も使用した。陰性対照として、二次抗体のみとインキュベートした切片を用いた。切片は全てヘマトキシリンで対比染色した。 境界領域におけるコラーゲン沈着をマッソン染色法で定量化し、Image Jソフトウェアを使用して解析し、無作為化高倍率視野10箇所の平均コラーゲン染色パーセンテージとして表した。 さらに、LV中心部分の切片をヘマトキシリン−エオシン染色し、横断切断された中心核細胞(centrally−nucleated cells)の筋細胞断面積(CSA)を評価した。CSAを測定し、各サンプルのLV後壁(非梗塞領域)の50個の細胞の平均を求め、各群について合計4つのサンプルを分析した。 ウエスタンブロット。等量のタンパク質(50μg)を8〜16%Tris−glycineゲル(Novex,Invitrogen,CA,USA)で分離し、PVDF膜に移した。5%スキムミルクでブロッキングした後、ホスホ−Smad2、ホスホ−IκB−α(Ser32)、IκB−α、ホスホ−NF−κB−P65、NF−κB−P65(Cell Signaling Tech,USA)、およびTGF−β1およびSmad2(Santa Cruz,USA)に対する一次抗体を終夜4℃でインキュベートした後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗マウスまたは抗ウサギ二次抗体(1:2000)と共にインキュベートした。最後に、ECL検出キット(Amersham,Beverly,MA,USA)を使用して免疫反応を視覚化した。GAPDH強度(Cell Signaling Tech, USA)に対して、全てのタンパク質発現レベルを調整した。Image Jのソフトウェア(バージョン1.41、NIH,USA)を使用したデンシトメトリーによりバンドを定量化した。 リアルタイムRTポリメラーゼ連鎖反応。Trizol試薬(Invitrogen)を使用してLV組織150mgから全RNAを調製した後、クロロホルムで抽出し、イソプロパノールで沈殿した。ゲノムDNAは、DNアーゼI(0.1μl−1、37℃)と共に30分間インキュベートした後、酸フェノール−クロロホルムで抽出することにより除去した。260nmの分光光度吸収でRNAを定量化し、その純度をA260/A280比で確認し、変性アガロースゲル上でエチジウムブロマイド染色することにより完全性を評価した。次いで、オリゴ(dT)プライマーおよびSuperscript II逆転写酵素(RT,Invitrogen)を使用して全RNA(2μg)を逆転写した。 リアルタイムPCR定量化は、12.5ngのcDNAおよび濃度900nMのセンスプライマーとアンチセンスプラーマーの両方(Invitrogen)(最終容量25μl)で開始し、SYBR Greenマスターミックス(Applied Biosystem)を使用して行った。GeneAmp 7000検出システム機器(Applied Biosystems)で蛍光を監視し、解析した。PCR反応は、初期段階(95℃、10分)の後、3ステップサイクル手順(変性95℃、15秒;アニーリング60℃、30秒;伸長反応72℃、30秒)で42サイクル行った。mRNAレベルを定量化するためにΔCt値を得、各サンプルについて内在性対照(b−チューブリンmRNA)で正規化した。相対定量ΔΔCt法を使用して群間の比較を行った。オリゴヌクレオチドプライマーは、Primer Expressソフトウェア(Applied Biosystems)を使用して設計した。 使用したプライマーは次の通りである:α−MHC、センス(CTGCTGGAGAGGTTATTCCTCG)(配列番号1)およびアンチセンス(GGAAGAGTGAGCGGCGCATCAAGG)(配列番号2);β−MHC、センス(TGCAAAGGCTCCAGGTCTGAGGGC)(配列番号3)およびアンチセンス(GCCAACACCAACCTGTCCAAGTTC)(配列番号4);ANP、センス(CTCTGAGAGACGGCAGTGCT)(配列番号5)およびアンチセンス(TATGCAGAGTGGGAGAGGCA)(配列番号6);β−チューブリン、センス(TCACTGTGCCTGAACTTACC)(配列番号7)およびアンチセンス(GGAACATAGCCGTAAACTGC)(配列番号8)。 マロンジアルデヒド(MDA)濃度の測定。リスクのある領域から得られた心筋を、5mmol/Lのブチル化ヒドロキシトルエンを含有する20mmol/LのTris−HCl(pH7.4)1.0ml中で破砕した。市販のキット(カタログ番号437639、Calbiochem)を使用し、製造業者の導入に従って過酸化脂質をアッセイし、MDA濃度をタンパク質1グラム当たりのμMとして表した。 サイトカイン濃度。市販の固相サンドイッチELISAキット(R&D Systems,Minneapolis,USA)を使用し、製造業者の導入に従って血漿中インターロイキンTNF−α濃度および血漿中IL−1β濃度を評価した。各アッセイの検出限界は次の通りであった:TNF−α、16pg/mlおよびIL−1β、10pg/ml。 統計。値は全て平均±SDとして表した。データ解析は全て、SPSS 13.0統計ソフトウェアを使用して行った。一元ANOVAの後、Student−Newman−Keuls検定を用いた多重比較を使用して、様々なパラメータに対する処置の効果を判定した。標準的なカプラン・マイヤー分析で6つの群の経過観察中の生存率を解析し、ログランク検定を用いて生存曲線間の統計学的比較を行った。フィッシャーの正確確率法を使用して、群間の生存率の差を解析する。統計学的有意性をP<0.05と定めた。 結果 集中的ポストコンディショニングによる生存率の向上。84日間の観察期間中、rIPerC(またはsPost)、rPostC(またはrPost)およびiPostC(またはiPost)は、MI群およびSP群と比較して生存率が向上した(全てについて、P<0.05)。興味深いことに、iPostC群だけは早くもMIの28日後に生存率の向上が明らかになったが、rPostC群ではMIの56日後までこの効果は認められなかった。さらに、84日目にiPostCはRIPerC処置およびrPostC処置と比較して生存率が向上していた(それぞれP<0.05)。ペントバルビタールナトリウムを毎日投与しても、観察期間中、MI群と比較して有益な効果もまたは悪影響も見られなかった(P>0.05)(図11)。死亡したこれらの動物の解剖の結果、処置群では心破裂の発生は認められず、SP群では1例、およびMI群では1例発生したが、異なる群間の統計学的有意性はなかった(それぞれ、P>0.05)。 再灌流障害に対する保護の早期(Early Phase)。sPost、rPostおよびiPost処置群ではMI群と比較して、最初の72時間中の突然死が減少する傾向があったが、統計学的有意性はなかった(表参照、それぞれ>0.05)。十分に解剖検査を行ったが、動物のいずれにも心破裂の所見は認められなかった。各群の8匹のラットについて梗塞サイズを定量化した。エバンスブルーで示されるリスクのある領域は、5つの群間で類似していた(データは示していない)。sPost群のラット(35.63±4.21%)、rPost群のラット(33.88±3.52%)およびiPost群のラット(31.88±4.82%)では梗塞サイズが有意に縮小していた(全てP<0.05)が、これらの3つのPost群間では梗塞サイズに有意差はなく(それぞれP>0.05)、反復遠隔ポストコンディショニング処置は、1回のポストコンディショニング処置と比較して、梗塞サイズにさらなる効果を有するものではないことが分かった。対照的に、dPost(安楽死の2時間前に施した(4日目)場合)により、MI群(50.5±4.11%)と比較して梗塞サイズを変化させることはできなかった(42±4.54%、P>0.05)。 ポストコンディショニングにより変化した(Modulated)早期の炎症反応。免疫組織化学染色を行うために、4日目(再灌流の72時間後)に各群からそれぞれ5つの心臓を採取したが、シャム群では、それぞれED−1およびMPOを標的にする抗体を使用した梗塞領域へのマクロファージおよび好中球の浸潤が最小であった(図2A)。梗塞が起こった心筋にはマクロファージと好中球の両方による著しい浸潤が検出されたが(ED−1細胞、1722±217/mm2;MPO細胞、880±144/mm、それぞれp<0.001)、sPostラットではそれが減少した(それぞれp<0.001;図2B)。マクロファージおよび好中球の浸潤は、rPostおよびiPostによってさらに減少し(それぞれ、p<0.001)、iPost群のラットでは最大の効果が検出された((p<0.001;図2B)。 梗塞領域におけるMCP−1の発現レベルは、マクロファージおよび好中球の浸潤と全く同じパターンを示し、炎症細胞反応に対するrIPostの用量依存的効果が実証された(それぞれ、p<0.001;図2C)。dPost(検査の2時間前に施した場合)は、炎症反応の変化を全く示さなかった(図2)。 ポストコンディショニングによる遠隔期(Late Phase)の保護。MI群およびdPost群では、シャム群と比較して28日目の生存者が少なかった(それぞれ、P<0.05)が、sPostおよび反復ポストコンディショニング(rPostおよびiPost)処置群のラットは、シャム群のラットと比較して有意差を示さなかった(表参照、それぞれ、P>0.05)。28日目までの生存者の梗塞サイズは、4日目のものと類似のパターンを示した(それぞれP<0.05、表1)。 遠隔期の酸化ストレスおよび炎症反応。酸化ストレスにより誘発されるDNA損傷は、8−OHdG免疫染色により評価した。MIラットでは28日目に8−OHdGの発現が増加し、またrIPostにより8−OHdG強度の著しい用量依存的低減が起こった(図3A)が、dPostは8−OHdG発現に影響を及ぼさなかった(図3A)。 MDA測定は、8−OHdG強度の変化と同様であった(図3B)。しかし、sPostにより、28日目のTNF−α濃度およびIL−1β濃度は変化しなかった(それぞれ、P>0.001)が、それらはiPost群とrPost群の両方による反復で同程度に減少した(それぞれp<0.001、図3C)。 転写因子NF−κBの活性化。sPostにより、MI群と比較してIκBαおよびNF−κB p65のリン酸化が減少した。rPostとiPostの両方でIκBαおよびNF−κB p65のリン酸化の程度がさらに減少し(それぞれ、P<0.001)、iPost群のラットではNF−κBシグナル伝達の活性化が最も低いことが分かった(それぞれP<0.01、図4)。 反復ポストコンディショニングによる繊維化反応の変化。rIPostによるTGF−β1/Smad2シグナル伝達活性化の変化は、NF−κBシグナル伝達活性化に関する有益な効果のパターンと一致し(図5)、それはさらにマッソントリクローム染色で示される間質線維化の軽減により、さらに裏付けられた(図6)。 肥大反応。MI群に見られるLVMIの増加は、sPostにより軽減した(P<0.05;表)。rPostとiPostでは両方ともさらなる減少が検出され、iPostでは最も低いLVMIが認められた(それぞれP<0.001、表)。 これと共に、心筋細胞の平均断面積(CSA)は用量依存的に減少した(図7A、B)。肥大関連遺伝子発現の定量化により、ANPおよびβ−MHCの遺伝子発現の増加が軽減し、α−MHCの発現の減少がrIPostによって、ここでも用量依存的に回復することが分かった(図7C〜図7E)。しかし、処置(maneuver)を再灌流の72時間後まで遅延した場合、効果は認められなかった(図7A〜図7E)。 心臓の形状、機能および血行動態パラメータの改善。28日目に、MIラットは、シャムラットと比較してLVEDDが増加することにより証明されるように、有意なLV拡張を示した(P<0.05、表)。この形状変化に伴い、シャムラットと比較してFSが増加した(P<0.05、表)。sPostにより有害なLVリモデリングが有意に改善され、これは、MIラットと比較してLVEDDが減少し、FSが増加することにより反映されており(それぞれP<0.05、表)、rIPost療法を行った結果、LV室のサイズと機能はさらに改善され、rPostと比較してiPostでは最大の効果が達成された(それぞれ、P<0.05)。血行動態解析でも同じ効果パターンが示され、rIPostではMIおよびdPostと比較して用量依存的に改善された(表)。 考察 これは、遠隔コンディショニングが遠隔期LVリモデリングおよび生存を用量依存的に改善することを実証する最初の研究である。データから、虚血の最後の20分間に開始され再灌流期間まで継続する、早期の1回の遠隔パーコンディショニング処置により、LV拡張の低減および心機能の改善、ならびに心筋肥大および繊維化の減少により証明されるような、MI後のLVリモデリングに対する長期の保護がもたらされることが分かる。刺激を4日目まで遅延するとこの効果は失われ、この群の動物は、rIPostを受けなかったMI群のものと区別不可能となる。興味深いことに、さらに梗塞後の最初の28日間に反復rIPostを施しても、梗塞サイズのさらなる縮小は検出されなかったが、有害なLVリモデリングに対するさらなる保護が得られ、これは、早期に1回のポストコンディショニング処置を行ったものと比較して、炎症反応が軽減し、酸化ストレスが低下することと密接に関連していた。さらに、反復rIPostの保護効果は明らかに用量依存的であり、28の経過観察期間中、毎日rIPost療法を行うと、3日おきにrIPostを行う場合と比較してさらに著しい効果が得られる。これらの機能的効果により、84日目における生存が向上し、最初の28日間、毎日ポストコンディショニングを施した群では最大の効果が見られた。 虚血再灌流損傷は、活性酸素種(ROS)の過剰な産生および抗酸化物質活性の低下を招く[23]。再灌流時に発生するROSにより、膜脂質の酸化および過酸化を伴う細胞損傷が起こり、その結果としての「ROSにより誘発されるROSの発生」[24]により、局部炎症過程が連鎖的に生じ、これは虚血−再灌流損傷後の数日および数週間の間にさらに細胞損傷が起こる一因となる。虚血プレコンディショニングの現象は、Murry et al.によって最初に記載されて以来[25]、プレコンディショニングおよびポストコンディショニングが心臓保護効果を及ぼす基本的な機構を解明するために、広範囲にわたる研究が行われてきた。正確な機構はまだ完全には理解されていないが、ROS発生の減少[26−28]が、これらの方式によりもたらされる保護に最も重要であることについてはおおむね見解が一致している。さらに、連続的なROS発生および炎症がMI後のリモデリング過程においても重要である[29,30]ことは十分立証されている。肢虚血により誘発される遠隔プレコンディショニング、パーコンディショニングおよびポストコンディショニングは全て、実験モデル[5、14,15]、および臨床試験[31]において心筋損傷に対する強力な救急的(potent acute)保護を提供することが実証された。また、血中単球、白血球炎症誘発性経路の下方制御[21、32]、および10日間毎日施される場合、好中球接着食作用および炎症誘発性サイトカイン反応の低減に効果があるように見える。これらの知見は、酸化ストレスの低減(NF−kBリン酸化およびTGFβ1/Smad2シグナル伝達の活性化の低減)、炎症細胞の梗塞領域への移動の減少(直接およびMDA濃度および8−OHdG免疫染色の濃さの低下として観察された)および局所炎症性サイトカインシグナル伝達の低下(組織MCP−1発現の低下、血中TNF−αおよびIL−1β濃度の低下)と一致する。局所および血中炎症性細胞外液(milleau)の変化(modification)は、慢性的rIPostの慢性的効果に重要な可能性がある。MCP−1などの局所ケモカインは、単核細胞の漸増を誘発する原因となる。さらに、NF−κB経路の活性化により、TNF−αおよびIL−1βの標的遺伝子発現を上方制御することもできる[29,30,33]。梗塞サイズ縮小(この研究では、反復ポストコンディショニングの効果はパーコンディショニング単独の場合と比較して増大しなかった)の他にさらにこのような「抗炎症」効果がある。rIPost、局所酸化ストレスおよび血中細胞反応の間の因果関係を評価するために、さらに重点的な実験が必要となることが明らかであり、LV拡張および機能不全と筋細胞肥大が組み合わさった形態のリモデリングを改善するために、この実験的障害の後、最初の28日間この刺激を繰り返した場合、その全体的効果は、ヒトにおけるMI後の回復と明白な臨床的関連性を有する。 これに関して、他の遠隔コンディショニングプロトコルと同様に、これらの知見を臨床試験に速やかに移行することができる。一過性肢虚血による遠隔刺激は容易であるため、既に積極的な臨床試験が行われており、心臓および血管手術を受ける成人および小児で遠隔プレコンディショニングの効果が明らかになっている[7]。さらに、MIを起こしている成人でのパーコンディショニングのRCT(救急PCIの前に5分間の一過性肢虚血とそれに続く5分間の再灌流とからなるサイクルを4サイクル)の結果が、最近、要約の形態で報告された[34]。現在の研究で使用されている早期のコンディショニング刺激は、コンディショニング刺激を虚血中に開始し、初期再灌流期間中も継続するため、幾分、パーコンディショニングとポストコンディショニングの混成である。このようなものとして、それは、おそらく「実際の」期間をより適切に反映するが、PCIの成功後の再灌流期間におよぶ。後続するコンディショニング処置がポストコンディショニングとして記載されるのが最適であるかまたはプレコンディショニングとして記載されるのが最適であるかは多分に意味論であるが、慢性的虚血コンディショニングの効果についてはいかなる状況でもほとんど知られていないことを警告しておく。従って、どの臨床試験も、慢性的rIPost方式の悪影響についても、有益な効果についても慎重に評価を行わなければならない。 結論 要約すると、1回の遠隔パーコンディショニング処置と比較して、遠隔虚血ポストコンディショニングを慢性的に施すことにより、病理学的心室リモデリングに対するさらなる保護が得られ(これは梗塞サイズに対する効果とは無関係である)、MI後の生存を向上させることを示してきた。得られるこのような用量依存的保護は、酸化ストレス、炎症反応、ならびに、肥大化および線維化シグナル伝達の調節の改善と関連している。 参考文献 均等物 前述の明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であると考えられる。実施例は本発明の1つ以上の態様の例示に過ぎないため、本発明の範囲は記載した実施例に限定されるものではない。他の機能的に同等の実施形態も本発明の範囲に入ると考えられる。前述の説明から当業者には、本明細書に図示し記載するものの他に本発明の様々な変更形態が明らかとなるであろう。本発明の限定のそれぞれは、本発明の様々な実施形態を包含することができる。従って、いずれか1つの要素または要素の組み合わせを含む本発明の限定のそれぞれを本発明の各態様に含むことができることが予想される。本発明の適用は、前述した、または図面に示した構成要素の構成および配置の詳細に限定されるものではない。本発明は、他の実施形態、および様々な方法で実施または実行することが可能である。 また、本明細書で使用する語法および用語は、説明を目的とするものであって、本発明を限定するものと見なされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「備える」、または「有する」、「含有する」、「含む(involving)」およびこれらの変形の使用は、その後に記載されるものおよびそれらの均等物ならびに追加のものを包含することを意味する。 心筋梗塞後の対象に反復遠隔虚血コンディショニング療法(反復RIC療法)を行うこと、を含む方法。 前記反復RIC療法が、前記心筋梗塞の1週間以内または1ヶ月以内に開始される、 請求項1に記載の方法。 前記対象が、前記心筋梗塞の前に、先行する虚血コンディショニングを受けていない、 請求項1または2に記載の方法。 前記対象が、前記心筋梗塞中に、先行する虚血コンディショニングを受けていない、 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。 前記先行する虚血コンディショニングが、遠隔または局所虚血コンディショニングである、 請求項3または4に記載の方法。 前記対象が、先行する虚血コンディショニングを受けたことがある、 請求項1に記載の方法。 前記先行する虚血コンディショニングが心筋梗塞の前に行われる、 請求項6に記載の方法。 心筋梗塞後の対象に反復遠隔虚血コンディショニング療法(反復RIC療法)を行うこと、を含む方法であって、前記対象が前記心筋梗塞中に遠隔または局所で虚血コンディショニングを受けたことがある方法。 心機能不全および心不全の少なくとも一方の発生率を低減する、発症を遅延させる、および/または重症度を低減する方法であって、 心筋梗塞中または心筋梗塞後の対象に反復遠隔虚血コンディショニング療法(反復RIC療法)を行うことを含む方法。 心筋梗塞を有する対象に反復遠隔虚血コンディショニング療法(反復RIC療法)を行うこと、を含む方法であって、最初のRIC療法が前記心筋梗塞中に行われ、後続するRIC療法が前記最初のRIC療法の後、少なくとも2日おきに行われる方法。 心筋梗塞を有する対象に反復遠隔虚血コンディショニング療法(反復RIC療法)を行うこと、を含む方法であって、最初のRIC療法が前記心筋梗塞中に行われ、後続するRIC療法が前記最初のRIC療法の後、毎日行われる方法。 後続するRIC療法が、最初のRIC療法の後、1日おきに行われる、 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。 前記反復RIC療法が、2日おき、1日おき、または毎日行われる、 請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。 後続するRIC療法が、前記心筋梗塞の後1ヶ月以内に行われる、 請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。 反復RIC療法が、前記心筋梗塞の後1ヶ月以内に行われる、 請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。 前記反復RIC療法が、1日2回以上のRIC療法を1日以上で行うことを含む、 請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。 前記対象が、バルーン血管形成術もステント留置術も受けていない、 請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。 前記対象がヒトである、 請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。 最初のRIC療法が、心筋梗塞に伴う虚血中に行われる、 請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。 最初のRIC療法が、心筋梗塞に伴う虚血後の再灌流中に行われる、 請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。 前記反復RIC療法の少なくとも1回のRIC療法が少なくとも4サイクルを含み、各サイクルが超収縮期血圧と再灌流とを含む、 請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。 前記反復RIC療法の少なくとも1回のRIC療法が、5分間の超収縮期血圧と5分間の再灌流とを含むサイクルを2サイクル以上含む、 請求項1〜21のいずれか1項に記載の方法。 前記超収縮期血圧が、収縮期血圧より少なくとも15mmHg高い圧力または200mmHgの圧力である、 請求項21または22に記載の方法。 前記反復RIC療法の各RIC療法が、同じ部位で行われる、 請求項1〜23のいずれか1項に記載の方法。 前記反復RIC療法が上肢で行われる、 請求項1〜24のいずれか1項に記載の方法。 前記対象にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤を投与することをさらに含む、 請求項1〜25のいずれか1項に記載の方法。 前記対象にアンジオテンシンII受容体遮断薬を投与することをさらに含む、 請求項1〜26のいずれか1項に記載の方法。 前記対象に抗血小板療法を施すことをさらに含む、 請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法。 本発明は、遠隔虚血パーコンディショニングおよびポストコンディショニングの使用により、心機能不全/心不全の発生率および/または重症度を低減し、および/またはその発症を遅延し、全生存を向上する方法を提供する。 配列表


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